JP3763157B2 - ニトリルヒドラターゼ、その遺伝子及びその利用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニトリルヒドラタ−ゼ、その遺伝子及びその利用等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、微生物等の生体触媒が、化学反応の触媒として盛んに利用されている。ニトリル化合物をアミド化合物に変換させる場合にも、微生物を用いた製造方法が知られている。
本発明者らはすでに熱安定性にすぐれたニトリル水和活性を有する微生物を利用することにより、ニトリル化合物をアミド化合物に変換させる反応の効率を向上させることに成功している(特開平7-255494) 。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、熱安定性にすぐれたニトリル水和活性を有する微生物を調製するためにかかる時間は必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような状況を鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、熱安定性にすぐれたニトリル水和活性を有する微生物からアクリロニトリルをアクリルアミドに変換する能力を有する新規な蛋白質の単離・精製に成功し、そして該蛋白質のアミノ酸配列情報に基づいてその遺伝子を探索し、新規な遺伝子を見出した。さらに該遺伝子を宿主細胞に導入することに成功し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、「
1.下記の理化学的性質を有することを特徴とする蛋白質(以下、本発明蛋白質と記す。)。
(1)2種のサブユニット(以下、サブユニットα、βと記す。)から構成される蛋白質であって、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動による各サブユニットの分子量が、以下のとおりである。
サブユニットα 分子量 25,000±1000ダルトン
サブユニットβ 分子量 26,000±1000ダルトン
(2)アクリロニトリルをアクリルアミドに変換する水和活性を有する。
2.配列番号1で示されるアミノ酸配列を有することを特徴とするサブユニットα。
3.配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを特徴とするサブユニットα遺伝子。
4.配列番号3で示される塩基配列を有することを特徴とするサブユニットα遺伝子。
5.配列番号2で示されるアミノ酸配列を有することを特徴とするサブユニットβ。
6.配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを特徴とするサブユニットβ遺伝子。
7.配列番号4で示される塩基配列を有することを特徴とするサブユニットβ遺伝子。
8.前項2及び5記載の2種のサブユニットから構成されることを特徴とする蛋白質。
9.前項3及び6記載の遺伝子を含有することを特徴とする核酸断片。
10.前項3記載の遺伝子、前項6記載の遺伝子又は前項9記載の核酸断片を含有することを特徴とするプラスミド(以下、本発明プラスミドと記す。)。
11.前項3記載の遺伝子、前項6記載の遺伝子又は前項9記載の核酸断片を含有するプラスミドで宿主細胞を形質転換させて得られる形質転換体(以下、本発明形質転換体と記す。)。
12.前項11記載の形質転換体を培養し、該形質転換体が有する外来性の遺伝情報に対応した蛋白質を産生させ、産生させた蛋白質を含有する培養物から該蛋白質を分離することを特徴とする蛋白質の製造方法。
13.ニトリル化合物に、前項1記載の蛋白質又は該蛋白質を含有する培養物あるいはその処理物を作用させ、該ニトリル化合物をアミド化合物に変換させることを特徴とするアミド化合物の製造方法。
」を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、例えば、大腸菌のような増殖速度が極めて速い宿主細胞に熱安定性にすぐれたニトリル水和活性を付与することを可能にし、(1) 該宿主細胞を短時間内に大量に調製すること、(2) 熱安定性にすぐれたニトリル水和活性を有する宿主細胞を新規に創造するために要する時間を遺伝子工学技術の利用により短くすることを可能にする。
【0006】
本発明蛋白質は、下記の理化学的性質を有する。
【0007】
(1)2種のサブユニット(サブユニットα、β)から構成される蛋白質であって、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動による各サブユニットの分子量が、以下のとおりである。
サブユニットα 分子量 25,000±1000ダルトン
サブユニットβ 分子量 26,000±1000ダルトン
ここでサブユニットとは、非共有結合で会合した複数個の構成成分から成り立ち、かつ、一つの機能発現単位である会合体の構成成分のことを意味する。
SDS−ポリアクリルアミド電気泳動の方法は、D.E.Garfinの方法(「メソッド・イン・エンザイモロジー、vol.182 」、アカデミック・プレス、1990年)等に記載される通常の方法により行うことができる。例えば、市販の自動電気泳動装置ファストシステム(ファルマシア社製)を用いたSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動がある。具体的には、0.06M Tris-Cl (pH6.8) 、2% SDS、10% グリセロール、0.025%ブロモフェノール・ブルーを含むバッファー0.95mlに、2-メルカプトエタノール0.05mlを加え、サンプルバッファをまず調製する。調製されたサンプルバッファで試料蛋白質液を希釈し、100 ℃、5 分間加熱を行う。加熱したサンプルは、直ちに、自動電気泳動装置ファストシステムを用いて分析を行う。電気泳動にはPhastGel Gradient 10-15 とPhastGel SDS buffer strip を用いることができる。電気泳動後の染色は、CBB 染色、あるいは銀染色を、上記ファストシステムの取扱説明書に従って行う。このようにしてSDS−ポリアクリルアミド電気泳動を行うことができる。
【0008】
(2)アクリロニトリルをアクリルアミドに変換する水和活性を有する。
上記の水和活性の測定方法は、例えば、特開平7-255494等に記載される通常の方法により行うことができる。具体的には、0.9ml の2.78% アクリロニトリル溶液(50mMリン酸カリウムバッファー、pH7.7 )に酵素液0.1ml を加えて、10℃、10分間反応を行い、2 規定の塩酸0.1ml を加えて反応を停止し、反応液の一部を下記の条件のガスクロマトグラフィーで分析し、生成したアクリルアミドを測定する。
(ガスクロマトグラフィー分析条件)
カラム :パックドカラム
担体 :Propak type Q (mesh 80-100)
長さ :1.1m
カラム温度 :210 ℃
キャリアガス流量 :50ml/min
サンプル注入量 :2 μl
【0009】
本発明蛋白質は、例えば次の方法により得ることができる。
【0010】
公知な微生物であるバチルス・スミシー(Bacillus smithii)SC-J05-1株(特開平7-255494、工業技術院生命工学工業技術研究所 寄託番号FERM BP-4935) を、一般細菌における通常の培養に使用される炭素源や窒素源、有機ないし無機塩等を適宜含む各種の培地を用いて培養する。炭素源としては、グルコース、グリセロール、デキストリン、シュークロース、有機酸、動植物油、糖蜜等が挙げられる。窒素源としては、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor )、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸、硝酸ナトリウム、尿素などの有機または無機窒素源等が挙げられる。有機ないし無機塩としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸物、酢酸塩、炭酸塩類およびリン酸塩類、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素一カリウム、リン酸水素二カリウム等を挙げることができる。さらに、ニトリル水和活性をもつ酵素を大量に得るために、イソバレロニトリル、クロトノニトリル等のニトリル化合物、クロトンアミド等のアミド化合物を培地に添加するのが好ましい。添加量としては、例えば、培地100ml に対して、約10mg〜約1gを挙げることができる。
培養は、一般細菌における通常の方法に準じて行い、固体培養、液体培養(試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter )培養、培養タンク等)いずれも可能である。特に、ジャーファーメンターを用いる場合、無菌空気を導入する必要があり、通常、培養液量の約0.1 〜約2 倍/ 分の通気条件を用いる。培養温度は、微生物が生育する範囲で適宜変更できるが、例えば、約40℃〜約55℃の範囲の培養温度、約5 〜約7 の培地pHで培養することが好ましい。培養時間は、種々の培養条件によって異なるが、通常約1 〜約7 日間が望ましい。具体的には、本微生物を上述の組成の培地10mlを試験管を用いて45℃にて前培養し、これを1.8 lのニトリル化合物やアミド化合物を含む培地を用いて、ジャーファーメンターに接種して45℃本培養を行う。菌体量が、660nm の吸光度で約3程度に達するまで培養する。培養後、遠心分離により分離された菌体を塩化リゾチーム等の菌体溶解酵素を使用する方法によって溶菌する。溶菌物を遠心分離し、ピペット等を用いて上清を回収する。つぎに、回収された上清をPhenyl SepharoseHPカラム( ファルマシア社製) 等による疎水クロマトグラフィー、Q Sepharose FastFlowカラム( ファルマシア社製) 等によるイオン交換クロマトグラフィー、Superdex200 カラム( ファルマシア社製) 等によるゲル濾過クロマトグラフィー等の方法を組み合わせて用いることにより精製を行い、本発明蛋白質を単一な状態で調製することができる。
【0011】
また、後述する本発明形質転換体を培養し、該形質転換体が有する外来性の遺伝情報に対応した蛋白質を産生させ、産生させた蛋白質を含有する培養物から該蛋白質を分離することによっても調製することができる。
【0012】
本発明蛋白質は、前述のように、α、βの2種類のサブユニットから構成されており、各サブユニットは、例えば下記のアミノ酸配列を有する。
1.サブユニットαは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する。
2.サブユニットβは、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する。
尚、本発明では、これらのアミノ酸配列が、各々のサブユニットの機能を損しない範囲において置換、追加、除去、修飾等がある均等な配列を含むことは言うまでもない。
【0013】
各々のサブユニットは、例えば次の方法により得ることができる。
前述のようにして調製された本発明蛋白質を、YMC-Pack ProteinRP(ワイエムシー社製)等の逆相液体クロマトカラムを用いて、トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルをの濃度溶出勾配させた条件での高速液体クロマトグラフィー等の方法により精製を行い、本発明蛋白質の各々のサブユニットを単一の状態で調製することができる。YMC-Pack ProteinRP(ワイエムシー社製)の逆相液体クロマトカラムを用いた場合、先に溶出してくるものが、αサブユニットで、後から溶出してくるものがβサブユニットである。
【0014】
そして、各々のサブユニット遺伝子は、
1.サブユニットα遺伝子:
配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列(例えば、配列番号3で示される塩基配列)を有する。
2.サブユニットβ遺伝子:
配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列(例えば、配列番号4で示される塩基配列)を有する。
【0015】
従って本発明蛋白質の遺伝子は、サブユニットα遺伝子、即ち、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子、及びサブユニットβ遺伝子、即ち、配列番号3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子を含有する核酸断片である。
【0016】
このような本発明蛋白質の遺伝子は、例えば次の方法により得ることができる。
【0017】
(1)サブユニットのN末端アミノ酸配列の決定
まず、前述のようにして調製された本発明蛋白質の各々のサブユニットを試料として、例えば「新生化学実験講座1・タンパク質I」(日本生化学会編、東京化学同人、1990年)等に記載される通常の方法によって各々のサブユニットのN末端アミノ酸配列の一部を決定する。
(2)本発明蛋白質のDNA プローブの作成
前項(1)により決定されたN末端アミノ酸配列より推定される塩基配列に基づき、例えば、配列番号7で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをDNA自動合成装置を用いる通常の方法により合成する。尚、DNA プローブとなるオリゴヌクレオチドの塩基配列の設計方法としては、例えば「モレキュラー・クローニング」(J.Sambrookら、コールド・スプリング・ハーバー、1989年)がある。
つぎに合成されたオリゴヌクレオチドを、例えば「モレキュラー・クローニング」(J.Sambrookら、コールド・スプリング・ハーバー、1989年)等に記載される通常の方法によって放射性同位元素で標識することによってDNA プローブを調製する。
(3)染色体DNA ライブラリーの作成と組換え体DNA の選別:
前述の微生物であるバチルス・スミシー(Bacillus smithii)SC-J05-1株より、例えば「新 細胞工学実験プロトコール」(東京大学医科学研究所制癌研究部編、秀潤社、1993年)等に記載される通常の方法によって染色体DNA を調製し、例えば「新 細胞工学実験プロトコール」(東京大学医科学研究所制癌研究部編、秀潤社、1993年)に記載される公知の方法に準じてファージライブラリーを作製する。
作製されたファージライブラリーから前項(2)で調製されたDNA プローブを用いたプラークハイブリダイゼーション法[「モレキュラー・クローニング」(J.Sambrookら、コールド・スプリング・ハーバー、1989年)]によって選択し、目的とするサブユニット遺伝子を含む組換え体DNA を選抜する。つぎに同様な手順で、選抜された組換え体DNA をDNA プローブとして用いて、目的とするサブユニット遺伝子全てを含む組換え体DNA を選抜する。このようにして選抜された組換え体DNA (ファージに含まれる染色体由来の核酸断片)を市販のプラスミドへ組換え、目的とする本発明蛋白質の遺伝子を含有するプラスミドを取得する。
(4)制限酵素地図の作製と塩基配列の解析:
前項(3)で取得されたプラスミドを精製した後、それを用いて、例えば「モレキュラー・クローニング」(J.Sambrookら、コールド・スプリング・ハーバー、1989年)等に記載される通常の方法によって制限酵素地図を作製し、目的とする本発明蛋白質の遺伝子の含まれている領域を決定する。つぎに、例えば「モレキュラー・クローニング」(J.Sambrookら、コールド・スプリング・ハーバー、1989年)等に記載される通常の方法によって目的とする本発明蛋白質の遺伝子の領域の塩基配列を解析する。尚、前項(1)で決定されたN末端アミノ酸配列から予想される塩基配列を含むことは、例えばGenetyx-Mac (ソフトウエア開発社製)などの通常の遺伝子解析ソフトウエアを用いる方法で再確認することができる。
【0018】
また、PCR により本発明蛋白質の遺伝子を取得することも可能である。鋳型として、バチルス・スミシー(Bacillus smithii)SC-J05-1株の菌体あるいは菌体から調製した染色体DNA を用いる。PCR に用いるプライマーDNA は、配列番号4 で示される塩基配列の5'末端側配列に相補する約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドと配列番号3で示される塩基配列の3'末端側塩基配列に相当する約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドの組み合わせ、あるいは、配列番号4 で示される塩基配列の5'末端側配列に相当する約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドと配列番号3で示される塩基配列の3 ' 末端側配列に相補する約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドの組み合わせを、通常の方法で合成して用いる。PCR は、例えば、GeneAmpXL PCR kit (パーキンエルマー社製)等を用いて、GeneAmpPCR2400(パーキンエルマー社製)等を用いることによっても調製することができる。
【0019】
サブユニット遺伝子(サブユニットα遺伝子、サブユニットβ遺伝子)は、本発明蛋白質の遺伝子を適当な制限酵素により切り出すか、それともPCR により取得することも可能である。鋳型として、バチルス・スミシー(Bacillus smithii)SC-J05-1株の菌体あるいは菌体から調製した染色体DNA を用いる。PCR に用いるプライマーDNA は、サブユニットα遺伝子の場合、配列番号3で示される塩基配列の5'末端側配列に相補する約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドと配列番号3で示される塩基配列の3'末端側塩基配列に相当する約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドの組み合わせ、あるいは、配列番号3で示される塩基配列の5'末端側配列に相当する約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドと配列番号3で示される塩基配列の3 ' 末端側配列に相補する約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドの組み合わせを通常の方法で合成して用いる。また、サブユニットβ遺伝子の場合、配列番号4 で示される塩基配列の5'末端側配列に相補する約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドと配列番号4 で示される塩基配列の3'末端側塩基配列に相当する約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドの組み合わせ、あるいは、配列番号4 で示される塩基配列の5'末端側配列に相当する約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドと配列番号4 で示される塩基配列の3 ' 末端側配列に相補する約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドの組み合わせを通常の方法で合成して用いる。PCR は、例えば、GeneAmpXL PCR kit (パーキンエルマー社製)等を用いて、GeneAmpPCR2400(パーキンエルマー社製)等を用いることによっても調製することができる。
【0020】
本発明蛋白質を製造には、例えば、下記の方法をあげることができる。
1.配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するサブユニットα遺伝子及び配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するサブユニットβ遺伝子を含有する核酸断片を含有するプラスミドで宿主細胞を形質転換させて得られる形質転換体を培養し、該形質転換体が有する外来性の遺伝情報に対応した蛋白質を産生させ、産生させた蛋白質を含有する培養物から本発明蛋白質を分離する。
2.配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するサブユニットα遺伝子を含有するプラスミド及び配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するサブユニットβ遺伝子を含有するプラスミドの両者で宿主細胞を形質転換させて得られる形質転換体(両者のプラスミドを含有する)を培養し、該形質転換体が有する外来性の遺伝情報に対応した蛋白質を産生させ、産生させた蛋白質を含有する培養物から本発明蛋白質を分離する。
3.配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するサブユニットα遺伝子を含有するプラスミドで宿主細胞を形質転換させて得られる形質転換体を培養し、該形質転換体が有する外来性の遺伝情報に対応した蛋白質を産生させ、産生させた蛋白質を含有する培養物からサブユニットαを分離する。一方で、配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するサブユニットβ遺伝子を含有するプラスミドで宿主細胞を形質転換させて得られる形質転換体を培養し、該形質転換体が有する外来性の遺伝情報に対応した蛋白質を産生させ、産生させた蛋白質を含有する培養物からサブユニットβを分離する。つぎに分離された両者のサブユニットを混合し、本発明蛋白質を再構築する。
上記のうち、適する方法は第1又は2項記載の方法であり、最も適する方法は第1項記載の方法である。
【0021】
ここで、各遺伝子を含有するプラスミドは、形質転換させる宿主細胞において通常用いられるベクタ−に目的の遺伝子を通常の遺伝子工学技術により組み込むことにより構築できる。例えば、大腸菌を宿主細胞とする場合には、用いるベクターとしては、pUC119(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)等をあげることができる。
【0022】
このようにして調製されたプラスミドで宿主細胞を形質転換させる方法は、形質転換させる宿主細胞に応じて通常用いられる方法であればよく、例えば、大腸菌を宿主細胞とする場合には、「モレキュラー・クローニング」(J.Sambrookら、コールド・スプリング・ハーバー、1989年)等に記載される通常の方法をあげることができる。
【0023】
得られる形質転換体を培養する方法は、形質転換させた宿主細胞に応じて通常用いられる方法であればよく、例えば、大腸菌を宿主細胞とする場合には、「モレキュラー・クローニング」(J.Sambrookら、コールド・スプリング・ハーバー、1989年)等に記載される通常の方法を用いることができる。
【0024】
形質転換体は、培養により該形質転換体が有する外来性の遺伝情報に対応した蛋白質を産生する。つぎに、産生された蛋白質を含有する培養物から該蛋白質を分離する。分離の方法としては、まず菌体を破砕し、つぎに該蛋白質をクロマトグラフィー等の方法を用いる方法がある。例えば、菌体を破砕して該蛋白質を溶液を取得するためには、超音波処理やガラスビーズを添加した乳鉢やアルミナを用いた磨砕、フレンチプレス、リゾチーム酵素を用いた方法などを挙げることができる。破砕した液より該蛋白質を分離するためには、硫安などを用いた塩析、有機溶媒やポリエチレングリコール等の有機ポリマーによる沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーや、電気泳動による分画等の方法を挙げることができる。必要に応じて、これらの方法を組み合わせて用いることができる。
【0025】
つぎに、ニトリル化合物に、本発明蛋白質又は該蛋白質を含有する培養物あるいはその処理物を作用させ、該ニトリル化合物をアミド化合物に変換させることによりアミド化合物の製造方法について説明する。
【0026】
ここで、「その処理物」とは形質転換体を超音波、ホモジェナイザーおよびフレンチプレス等の通常用いられる処理方法により破砕された形質転換体破砕物もしくは酵素、あるいは形質転換体、形質転換体破砕物、酵素等を共有結合、イオン結合、吸着などにより担体に結合させる担体結合法、高分子の網目構造のなかに閉じ込める包括法等の固定化の方法によって不溶化し、容易に分離可能な状態に加工したもの(以下、固定化物と記す。)を意味している。
【0027】
本発明で対象となるニトリル化合物としては、例えば、n- ブチロニトリル、n- バレロニトリル、イソブチロニトリル、アセトニトリル、ピバロニトリル等の脂肪族ニトリル化合物、2ークロロプロピオニトリル等のハロゲン原子を含むニトリル化合物、アクリロニトリル、クロトノニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和結合を含む脂肪族ニトリル化合物、ラクトニトリル、マンデロニトリル等のヒドロキシニトリル化合物、2−フェニルグリシノニトリル等のアミノニトリル化合物、ベンゾニトリル、シアノピリジン等の芳香族ニトリル化合物、マロノニトリル、スクシノニトリル、アジポニトリル等のジニトリル化合物があげられる。好ましくは、n- ブチロニトリル、n- バレロニトリル、イソブチロニトリル、アセトニトリル、ピバロニトリル、2ークロロプロピオニトリル、アクリロニトリル、クロトノニトリル、メタクリロニトリル、ベンゾニトリル、2−シアノピリジン、3ーシアノピリジン、4ーシアノピリジン、マロノニトリル、スクシノニトリルまたはアジポニトリルがあげられる。
【0028】
これらニトリル化合物に、本発明蛋白質又は該蛋白質を含有する培養物あるいはその処理物を作用させ、該ニトリル化合物をアミド化合物に変換させる。反応温度は、例えば、約0 ℃〜約70℃、好ましくは、約0 ℃〜約50℃を、反応pHは、例えば約5 〜約10、好ましくは、約6 〜約9 を、反応時間は、例えば、約10分間〜約72時間を挙げることができる。反応pHを上記範囲内で維持することにより、アミド化合物を高濃度に精製蓄積させることも可能である。
反応液からのアミド化合物の回収は、一般に知られている任意の方法で行うことができる。例えば、反応液から本発明蛋白質または該蛋白質を含有する培養物あるいはその処理物を遠心分離等により除いた後、活性炭、あるいはイオン交換樹脂等による処理により、不純物等を除去する。その後、減圧濃縮あるいは蒸留濃縮することにより析出させた結晶をメタノール等の有機溶媒を用いて再結晶させれば目的のアミド化合物を得ることができる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその実施例によって限定されるものではない。なお、実施例において下記の略語を用いた。
TE:Tris-HCl(10mM),EDTA(1mM),pH8.0
【0030】
実施例1 (ニトリルヒドラターゼの精製とN末端アミノ酸配列の決定)
Bacillus smithii SC-J05-01(工業技術院生命工学工業技術研究所 寄託番号FERM BP-4935) を、培地(グリセロール 20g/L 、KH2 PO4 4g/L、K 2 HPO 4 6g/L、FeSO4 -7H 2O 0.01 g/L 、CoCl2 -6H 2 O 0.01g/L、MnSO4 -3H 2 O 0.01g/L、ZnSO4 -7H 2 O 0.01g/L、ポリペプトン 3.64g/L 、麦芽エキス 2.18g/L)で、45℃、72時間培養した後、遠心分離(8000 rpm 、15min )により集菌した。菌体を、100mM のリン酸緩衝液(pH7.0 )で洗浄後、再度集菌し、100mM のリン酸緩衝液(pH7.0 )に懸濁した。この懸濁液に終濃度が 5mg/L になるよう塩化リゾチーム(生化学工業社製)を加え、30℃、1時間放置した後、遠心分離(35,000rpm 、30min 、Type50.2Tiローター(ベックマン社製))して、上清を回収した。
回収された上清液に、終濃度が 20%(W/V) になるように硫安を加え、Phenyl Sepahrose HP カラム(2.6 x 10cm、ファルマシア社製)にて分画した。まず、1.5M硫安を含む、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0) でカラムを十分洗浄した後、硫安濃度1.5Mから0Mまでの濃度溶出勾配を行い、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換する水和活性を有する画分(以下、活性画分と記す。)を得た。
この活性画分を、20mM Bis-Tris Propane 緩衝液(pH7.0) に対して透析を行ったのち、同液で平衡化したQ Sepahrose FastFlowカラム(2.6cm x 10cm 、ファルマシア社製)にて分画した。カラムを同液で洗浄後、0 から0.6M のNaClの濃度勾配溶出を行ない、活性画分を得た。
この画分を、150mM のNaClを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0) で平衡化したSuperdex200 カラム(2.6x60cm 、ファルマシア社製)に供した。分画したメインピークは、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換する水和活性を示し、単一な状態である精製蛋白質を得た。該精製蛋白質を、SDS 電気泳動(PhastGel Gradient 10-15 とPhastGel SDS buffer strip を用いて自動電気泳動装置ファストシステム(ファルマシア社製)で行った)で解析したところ、2種のサブユニット(サブユニットα、β)から構成される蛋白質であって、各サブユニットの分子量が、
サブユニットα 分子量 25,000±1000ダルトン
サブユニットβ 分子量 26,000±1000ダルトン
であることが明らかになった。
つぎに、得られた精製蛋白質を、0.1 %トリフルオロ酢酸を含む30% アセトニトリルで平衡化したYMC-Pack C4-AP(AP803、250x4.6mm 、ワイエムシィ社製) に供し、アセトニトリル濃度を30% から60% までの濃度溶出勾配を行い、2種類のサブユニットに分画した。得られた画分それぞれを凍結乾燥し、水に溶解後、プロテインシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル473A)でエドマン分解し、N末端からのアミノ酸配列を決定した。この結果、サブユニットαのN末端アミノ酸配列は配列番号1で示されるアミノ酸配列を有すること、及びサブユニットβのN末端アミノ配列は配列番号2で示されるアミノ酸配列を有することが明らかになった。
【0031】
実施例2 (遺伝子の単離と塩基配列の決定)
(1)染色体DNA の調製
Bacillus smithii SC-J05-1 株(工業技術院生命工学工業技術研究所 寄託番号FERM BP-4935) を、実施例1で用いた培地で、45℃で培養後、遠心分離(6000rpm 、10min )により集菌した。該菌体を1mg/mlの塩化リゾチーム(生化学工業社製)、25μg/mlRNaseA(シグマ社製)を含むTEN バッファー(10mM Tris-HCl(pH7.6)、1mM EDTA(pH8.0) 、10mM NaCl )に懸濁し、37℃で20分間インキュベートした。その後、終濃度が1%(w/v)になるようSDS を加え、55℃、10分間インキュベートした。次に、等量のTE飽和フェノールを加え、ゆっくりとかき混ぜたのち、遠心分離(10,000rpm 、10min )し、上層を回収する。回収した上層液に、等量のTE飽和フェノール・クロロホルム溶液を加え、ゆっくりかき混ぜたのち、遠心分離(10,000rpm 、10min )し、上層を回収した。1/10倍容量の3M酢酸アンモニウム溶液を加えたのち、2 倍容量のエタノールを加え、析出してくるDNA をガラス棒で巻き取った。このDNA を70% (v/v)エタノールでリンスし、次に80% (v/v)エタノール、100%エタノールでリンスしたのち、風乾した。このDNA を、25μg/mlRNaseA(シグマ社製)、20μg/mlPrteoinaseK (ベーリンガーマンハイム社製)を含むTEN バッファーに懸濁し、37℃で12時間インキュベートした。これに、等量のTE飽和フェノール・クロロホルム溶液を加え、ゆっくりかき混ぜたのち、遠心分離(10,000rpm 、10min )し、上層を回収した。1/10倍容量の3M酢酸アンモニウム液を加えたのち、2 倍容量のエタノールを加え、析出してくるDNAをガラス棒で巻き取た。このDNAを70% (v/v)エタノールでリンスし、次に80% (v/v)エタノール、100%エタノールでリンスしたのち、風乾し、TEバッファーに懸濁した。300ml の培養液から、約3mg の染色体DNA を得た。
(2)染色体DNA ライブラリの作製
得られた染色体50μg を制限酵素Sau3AIで37℃、1 時間分解し、アガロース電気泳動(0.7%濃度)を行った。7kb から4kb までの大きさのDNA をアガロースゲルから切り出し、GeneClean II(BIO101社製)で精製した。
このDNA とλZAPII DNA (スタラタジーン社製)を、キット付属の説明書に従い、DNA リガーゼを用い結合した。結合したDNA は、ギガパックゴールドパッケージングキット(スタラタジーン社製)を用いて、キット付属の説明書に従い、λ粒子中にパッケージングをした。すなわち、λZAPII DNA10 μg を、DNA リガーゼを用いて連結後、XhoIで切断した。このDNA を、10mM dTTP 、10mM dCTP 、Klenow緩衝液、Klenowフラグメントと混ぜ、30分間、室温でインキュベート後、65℃、15分間加熱した。また、Sau3AIで部分分解した染色体DNA10 μg を、10mM dATP 、10mM dGTP 、Klenow緩衝液、Klenowフラグメントと混ぜ、30分間、室温でインキュベート後、65℃、15分間加熱した。
それぞれのDNA を、等量のTE飽和フェノール・クロロホルム溶液を加えて抽出後、1/1 0 容量の3M酢酸アンモニウムを加え、2.5 容量のエタノールを加え、-80 ℃で、30分冷却後、遠心分離(10,000rpm 、10min )し、によりDNA を回収した。回収したDNA を、DNA リガーゼを用いて連結後、λファージにパッケージングした。
(3)プローブDNA の作製
実施例1で決定されたN末端アミノ配列をもとに、配列番号7で示されるオリゴヌクレオチドを合成した。オリゴヌクレオチドの合成は、DNA 自動合成装置(アプライドバイオシステムズ社製、モデル380A)を用いて行った。合成したDNA を、MEGALABEL キット(宝酒造社製)を用いて放射性同位元素で標識した。
(4)遺伝子の単離
染色体DNA ライブラリからのスクリーニングは、Colony/Plaque Screen(NEN 社製)を用いて、添付の説明書に従って行った。すなわち、大腸菌XL1-Blue MRF' を、LB培地(NaCl 5g/L 、トリプトン 10g/L、酵母エキス 5g/L )で培養した後、遠心分離(8000 rpm 、15min )により集菌した。集菌後、菌体を10mM MgSO 4 に懸濁した。この菌懸濁液と染色体DNA ライブラリを含むλファージを感染させた。感染後、50℃に加温した0.7%寒天を含むNZY 培地(NaCl 5g/L 、MgSO4 -H2 O 2g/L、酵母エキス 5g/L 、NZアミン 10g/L)と混ぜ、直径150mm のNZY 寒天プレートの上に重層した。1 枚のプレートに、約20,000程度のファージをまき、37℃でプラークが出現するまでインキュベートした。プレート上に発生したプラークを、プレート当たり2枚の割合でColony/Plaque Screenメンブレンに移し取った後、0.5M NaOH を含む溶液で5 分間、2回処理し、1.0M Tris-HCl 溶液で5 分間、2回中和した後、2x SSCでColony/Plaque Screenメンブレンをリンスして、濾紙上で風乾した。
Colony/Plaque Screenメンブレンは、2xSSC に浸した後、65℃に加温した1%(w/v)SDS、1%(w/v) デキストラン硫酸(ファルマシア社製)、1M塩化ナトリウム液に、12時間浸して、前処理とした。これに(3)で標識したプローブを加え、さらに18時間振とうしながら浸した。6xSSC 、0.1%SDS(w/v)溶液で20分間、3回メンブレンを洗浄した後、58℃の6xSSC で10分間洗浄して、余分なプローブDNA を除いた。メンブレン上に吸着したプローブに相当する位置から、ファージをパスツールピペットで吸い取り、単一のプラークとして分離できるまで、上記の作業を繰り返し、目的とするDNA の断片が含まれるファージを単離した。このDNA 断片をさらにプローブとして用いて、同様のファージからのハイブリダイゼーションを行うことにより、目的とするDNA を含むファージを単離した。
【0032】
実施例3 (形質転換体の取得と解析)
実施例2で選抜したファージを、λZAPII のマニュアルにしたがって、プラスミドに組換えた。得られたプラスミドを、pBS5と命名した。この組換えプラスミドを大腸菌より抽出して、制限酵素EcoRI 、SacI等を用いて切断し、図1に示される制限酵素地図を作成した。
pBS5のうち、ニトリルヒドラターゼ遺伝子の領域のDNA を、PRISM kit (アプライドバオテクノロジー社)と自動塩基配列解析装置373A(アプライドバオテクノロジー社)を用いて塩基配列を解析した。また、得られた塩基配列はGenetyx-Mac/ATSQ、Genetyx-Mac (ソフトウエア開発社)で解析した。解析して得られた親株由来の塩基配列は、配列番号2(サブユニットα)及び4(サブユニットβ)に示す通りであった。
なお、この塩基配列から予想されるアミノ酸配列は、配列表の配列番号1及び2で示したアミノ酸配列に完全に一致し、このDNA 断片上にサブユニットα、サブユニットβの遺伝子の両方が存在することが明らかになった。
【0033】
実施例4 (形質転換体を用いた本発明蛋白質の生産とニトリル化合物のアミド化合物への変換)
pBS5を大腸菌JM109 に形質転換し、その形質転換体を、アンピシリン50mg/ml 含有のLB培地2ml に植菌し、一夜培養し、この培養物を10mg/LのCoCl2 -6H 2 O 、10mg/ml のMnCl2 -nH 2 O 、アンピシリン50mg/Lを含有するLB培地に1%(v/v) 接種した。対象実験として、pBluescriptII を大腸菌JM109 株に形質転換した形質転換体を同様に処した。30℃で3.6 時間培養後、終濃度が1mM になるようIPTGを添加し、さらに22時間培養した。培養した後、培養菌体を遠心分離(8000 rpm 、15min )により集菌した。集菌後、50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.7) に再懸濁した。懸濁液100 μl に、28mg/ml のアクリロニトリル水溶液を900 μl加えて、10℃で、27時間反応させた。反応後、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、対象試験のJM109/pBluescriptII では、アクリルアミドは生成していなかったが、ニトリルヒドラターゼ遺伝子を有するJM109/pBS5では、反応液中にアクリルアミドが生成しており、本発明蛋白質のニトリル水和活性が確認できた。即ち、増殖速度が極めて速い大腸菌に熱安定性にすぐれたニトリル水和活性を付与することができた。
【0034】
【発明の効果】
本発明は、熱安定性にすぐれたニトリル水和活性を有する蛋白質、その遺伝子等を提供し、さらに遺伝子工学技術の利用により、熱安定性にすぐれたニトリル水和活性を有する宿主細胞を短時間内に調製することを可能にする。
【配列表】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、プラスミドpBS5の制限酵素地図を示す。
Claims (12)
- 下記の理化学的性質を有することを特徴とする蛋白質。
(1)2種のサブユニット(以下、サブユニットα、βと記す。)から構成される蛋白質であって、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動による各サブユニットの分子量が、以下のとおりである。
サブユニットα 分子量 25,000±1000ダルトン
サブユニットβ 分子量 26,000±1000ダルトン
(2)アクリロニトリルをアクリルアミドに変換する水和活性を有する。
(3)サブユニットαが、配列番号1で示されるアミノ酸配列若しくはこれに対してサブユニットの機能を損しない範囲において置換、追加、除去がある均等な配列からなる。
(4)サブユニットβが、配列番号2で示されるアミノ酸配列若しくはこれに対してサブユニットの機能を損しない範囲において置換、追加、除去がある均等な配列からなる。 - 配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるサブユニットα。
- 配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるサブユニットα遺伝子。
- 配列番号3で示される塩基配列からなるサブユニットα遺伝子。
- 配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるサブユニットβ。
- 配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるサブユニットβ遺伝子。
- 配列番号4で示される塩基配列からなるサブユニットβ遺伝子。
- 請求項2及び5記載の2種のサブユニットから構成されることを特徴とする蛋白質。
- 請求項3及び6記載の遺伝子を含有することを特徴とする核酸断片。
- 請求項3の遺伝子、請求項6記載の遺伝子又は請求項9記載の核酸断片を含有することを特徴とするプラスミド。
- 請求項3の遺伝子、請求項6記載の遺伝子又は請求項9記載の核酸断片を含有するプラスミドで宿主細胞を形質転換させて得られる形質転換体。
- 請求項11記載の形質転換体を培養し、該形質転換体が有する外来性の遺伝情報に対応した蛋白質を産生させ、産生させた蛋白質を含有する培養物から該蛋白質を分離することを特徴とする蛋白質の製造方法。
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