以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、画像形成装置の例として、記録ヘッドを搭載したキャリッジを用紙に対して平行に移動させながら、上記記録ヘッドから記録液を下向きに吐出することにより用紙に対して印刷を行うインクジェットプリンタを例として説明する。尚、本実施形態において、インクジェットプリンタは、入力された印刷データに基づいてCMYK(Cyan Mgenta Yellow Key Plate)の描画情報を生成し、生成された描画情報に基づいて画像形成出力を実行する。
本実施形態に係るインクジェットプリンタは、印刷動作中にカバーが開放されると印刷動作を中断し、そして、カバーが閉じられると印刷動作を再開するが、この印刷動作の再開時に、キャリッジを印刷時の移動速度よりも低速で主走査方向に移動させることを要旨とする。このため、本実施形態に係るインクジェットプリンタによれば、印刷動作の再開時にキャリッジが低速で移動するので、仮に、キャリッジに搭載されたインクヘッドのノズルが用紙に引っ掛かっても、ノズル形成面を損傷したり、記録媒体が縒れたり破れたりすることにより紙詰まりが発生することを防止することができる。
まず、図1を参照して、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の内部構成及び機構部について説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1を上方から見たときの透過図である。
図1に示すように本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、搬送ベルト101、主走査グベルト102、エンコーダスケール103、スライドレール104、主走査モータ105、駆動プーリ106、従動プーリ107、用紙108、搬送ローラ109、テンションローラ110、副走査モータ111、搬送駆動プーリ112、搬送ローラプーリ113、副走査ベルト114、エンコーダホイール115、エンコーダセンサ116、エンコーダセンサ117、記録ヘッド118、キャリッジ119を備えている。
スライドレール104は、図1に示す主走査方向と平行に固定されたガイド部材であり、キャリッジ119を図1に示す主走査方向に摺動自在に保持する。キャリッジ119は、スライドレール104により図1に示す主走査方向に摺動自在に保持され、主走査モータ105により、駆動プーリ106と従動プーリ107との間に渡されている主走査ベルト102を介して移動走査する。即ち、ここでは、スライドレール104はキャリッジ主走査移動部として機能する
また、キャリッジ119は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための記録ヘッド118を備えている。さらに、記録ヘッド118は、各色独立した4個の液滴吐出ヘッドからなる。尚、記録ヘッド118は、各色の液滴を吐出する4個のノズル列を有する1個の液滴吐出ヘッドを備えるように構成されていても良い。
これら4個の液滴吐出ヘッドはそれぞれ、図1に示す副走査方向に対して平行に配置され、また、図1に示す主走査方向に対して平行に配列されており、インク吐出方向を下方に向けて記録ヘッド118に装着されている。
本実施形態に係る記録ヘッド118を構成する液滴吐出ヘッドはインクジェットヘッドであり、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータ等、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段を備えたもの等が使用される。
本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドを全て同時に駆動させる以外に、時間的に分割して駆動させることができる。そのため、インクジェットプリンタ1が、記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドを全て同時に駆動させる場合に生じる、各液滴吐出ヘッド間のクロストークの影響による記録品位の低下や、一時的に大電流が必要になることによる電源の大容量化等の問題を、各液滴吐出ヘッドを時間的に分割して駆動させることにより避けることができる。
また、本実施形態に係る記録ヘッド118は、図示しないドライバICを備え、図2に示す制御部200との間で図示しないワイヤハーネスを介して接続されている。そして、ドライバICが図2に示す制御部200から上記ワイヤハーネスを介して信号を受け取り、受け取った信号に基づいて図示しないモータを制御することにより、記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドは駆動される。
尚、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、図示しないキャッピング部を備え、インクジェットプリンタ1の非記録中において、記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドのノズル形成面をキャッピングすることによりノズル形成面付近における湿度を高く保ち、記録液の乾燥を防ぐことができる。キャッピング部の位置については後述する。
また、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、印刷動作中に装置本体のカバーが開放されると印刷動作を一旦停止し、キャリッジ119をキャッピング位置まで移動させる。そして、インクジェットプリンタ1は、記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドのノズル形成面を上記キャッピング部によりキャップする。尚、カバーの開閉は、図示しないカバー開閉センサにより検知される。
このような構成とすることにより、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、印刷動作中に装置本体のカバーが開放されて印刷動作を一旦停止した場合であっても、ノズル形成面の保湿が行われるので、各液滴吐出ヘッド内の記録液の乾燥による吐出不良を防止することができ、安定した吐出性能を維持することができる。
尚、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、カバーが開放されて印刷動作を一旦停止して、キャッピングされた後にカバーが閉じられると、印刷動作を停止した状態に戻り、その状態から印刷動作を再開するように構成されている。
また、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、スライドレール104の両端に図示しないキャリッジ上昇機構及びキャリッジ降下機構を備える。これにより、キャリッジ119は上下に昇降することができるので、記録対象となる用紙の厚さに応じてプラテンギャップが自動的に調整される構成となっている。ここで、プラテンギャップとは、搬送ベルト101の表面と記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドとの垂直方向における間隔のことである。尚、キャリッジ上昇機構、キャリッジ降下機構及びキャリッジ119の自動昇降については後述する。
従って、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1によれば、厚い用紙に対して印刷を行っている場合であっても、各液滴吐出ヘッドのノズルが用紙に引っ掛かってノズル形成面を損傷したり、記録媒体が縒れたり破れたりすることにより紙詰まりが発生することを防ぐことができる。
さらに、キャリッジ119にはエンコーダセンサ117が設けられている。エンコーダセンサ117は、図1に示すように主走査方向に沿って備え付けられているエンコーダスケール103のスリットを検出することにより、キャリッジ119の主走査方向の位置を検知するためのリニアエンコーダとして構成されている。
搬送ベルト101は、無端状ベルトであり、搬送ローラ109とテンションローラ110との間に掛け渡されて構成されている。搬送ベルト101は、副走査モータ112により、搬送駆動プーリ112と搬送ローラプーリ113との間に渡された副走査ベルト114を介して搬送ローラ109が回転駆動することによって、図1に示す副走査方向に周回移動する。
また、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、この搬送ベルト101の表面を帯電させるための帯電手段である図示しない帯電ローラを備えている。この帯電ローラは、搬送ベルト101の表層に接触し、搬送ベルト101の回動に従動して回転するように配置されている。
尚、搬送ベルト101は1層構造若しくは2層以上の複層構造のいずれかにより構成され、2層以上の複層構造である場合には、用紙108や帯電ローラに接触する側は絶縁層で形成され、その反対側は導電層で形成される。一方、搬送ベルト101が1層構造の場合には、用紙108や上記帯電ローラに接触する側とその反対側とで導電性に差異がないので、層全体が絶縁材料で形成される。そして、搬送ローラ109はアースの役割を果たすアースローラとしても機能し、搬送ベルト101の裏層と接触するように配置されている。
このような構成により、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、給紙された用紙108を搬送ベルト101に静電吸着して記録ヘッド118による記録領域まで搬送することができる。
このとき、上記帯電ローラは、図2に示すAC(Alternaiting Current)バイアス供給部210からプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように交番する電圧が印加される。これにより、搬送ベルト101は、図1に示す副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電する。このプラスとマイナスが交互に帯電した搬送ベルト101上に用紙108が給送されると、用紙108は搬送ベルト101に静電吸着され、搬送ベルト101の周回移動によって図1に示す副走査方向に搬送される。
また、搬送ベルト101の上部裏側には、記録ヘッド118による記録領域に図示しない記録時ガイド部材が配置されている。この記録時ガイド部材は、記録ヘッド118による記録面に対して平行に配置されている。さらに、上記記録時ガイド部材は、搬送ベルト101を支持する2つのローラ(搬送ローラ109とテンションローラ110)の接線よりも記録ヘッド118側に突出するように配置されている。このような構成により、搬送ベルト101は、記録ヘッド118による記録領域において、高精度な平面性を維持するようになっている。
そして、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、この搬送ベルト101の副走査方向の位置を検知するためのエンコーダセンサ116を図1に示す位置に備えている。即ち、エンコーダセンサ116は、搬送ローラ109と同軸に備え付けられているエンコーダホイール115のスリットを検出することにより、搬送ベルト101の副走査方向の位置を検知するためのホイールエンコーダとして構成されている。
上記の内部構成及び機構部の他、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、インクジェットプリンタ1の状態を視覚的に表示する出力インタフェースや、ユーザがインクジェットプリンタ1を直接操作し、若しくはインクジェットプリンタ1に対して情報を入力する際の入力インタフェースを備える。
また、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、SD(Secure Digital)メモリーカード等の外部記憶媒体から情報を受け取るためのインタフェースや、ネットワーク経由で外部から情報を受け取るためのネットワークインタフェースを備える。
さらに、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、ホスト装置との間でデータを送受信するためのUSB(Universal Serial Bus)などの通信回路部(インタフェース)が設けられるとともに、画像形成装置全体の制御を司る制御部を構成する制御回路基板が設けられている。制御部については、図2を参照して後述する。
このように構成されたインクジェットプリンタ1は、上記記録時ガイド部材が配置されている位置において給紙された用紙108を停止し、描画情報に基づいてキャリッジ119をスライドレール104に沿って走査させながら記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドを駆動させることにより給紙された用紙108にインク滴を吐出させて1行分を記録する。
1行分の記録が終了したら、インクジェットプリンタ1は、給紙された用紙108を所定量搬送し、同様にして次の行の記録を行う。そして、インクジェットプリンタ1は、図2に示す制御部200において記録終了信号を受信するか、給紙された用紙108の後端が記録ヘッド118による記録領域を通過したことを知らせる信号を受信することにより、記録動作を終了して用紙108を図示しない排紙トレイに排紙する。
インクジェットプリンタ1が記録動作を終了すると、キャリッジ119は上記キャッピング位置に移動し、記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドがキャッピング部によりキャップされる。尚、液滴吐出ヘッドがキャッピング部でキャップされている状態においては、キャリッジ119は降下した状態、つまり通常状態にある。
次に、図2を参照して本実施形態に係るインクジェットプリンタ1のハードウェア構成及び機能構成を説明する。図2は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1のハードウェア構成及び機能構成を模式的に示すブロック図である。尚、図2においては、電気的接続を実線の矢印で示している。また、図2において、図1と同様の符号を付す構成については、同一または相当部を示すものとし、詳細な説明を省略する。
図2に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、プリンタドライバ100、搬送ベルト101、主走査モータ105、副走査モータ111、記録ヘッド118、キャリッジ119、帯電ローラ120、制御部200、操作パネル300、ヘッドドライバ400、リニアエンコーダ600、ホイールエンコーダ800により構成されている。
プリンタドライバ100は、PC(Personal Computer)等の情報処理端末や、イメージスキャナ等の画像読取装置、デジタルカメラ等の撮像装置等のホスト装置において印刷データを生成し、制御部200に入力する。
また、本実施形態に係るプリンタドライバ100は、インクジェットプリンタ1が印刷の対象とする用紙の厚さを設定し、その設定情報を制御部200に入力する。ここで、用紙の厚さの設定とは、例えば、普通紙、封筒、ハガキ等を設定することが挙げられる。即ち、ここでは、プリンタドライバ100は用紙設定部として機能する。そして、インクジェットプリンタ1は、この設定情報に基づき用紙の厚さに応じてキャリッジ119の高さを自動的に調整して印刷を実行する。
制御部200は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、NVRAM(Non Volatile RAM)204、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)205、I/O(Input/Output)206、ホストI/F(Interface)207、ヘッド制御部208、主走査モータ駆動部209、ACバイアス供給部210、副走査モータ駆動部211を備える。
CPU201は演算手段であり、インクジェットプリンタ1全体の動作を制御する。即ち、CPU201は、キャリッジ119の移動動作や用紙108の搬送動作、記録ヘッド118の移動動作等に関する制御を行う。ROM202は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。
RAM203は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU201が情報を処理する際の作業領域として用いられる。NVRAM204は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納される。
このようなハードウェア構成において、ROM202やNVRAM204若しくは図示しない光学ディスク等の記憶媒体に格納されたプログラムがRAM203に読み出され、CPU201がRAM203にロードされたプログラムに従って演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の機能を実現する機能ブロックが構成される。即ち、ソフトウェア制御部は、キャリッジ主走査移動制御部として機能する。
ASIC205は、インクジェットプリンタ1全体を制御する各種インタフェースや、画像処理回路、画像データの入出力を制御する回路を内蔵し、CPU201によって制御される。即ち、ASIC205は、画像データに対する各種信号処理、データの並び替え処理等を行う画像処理やその他インクジェットプリンタ1全体を制御するための入出力信号を処理する。
I/O206は、リニアエンコーダ600及びホイールエンコーダ800からの検出パルスや、図示しないカバー開閉センサからの検知信号を制御部200に入力する。また、I/O206は、その他の各種センサからの検知信号を制御部200に入力する。ホストI/F207は、上記ホスト装置とネットワークやUSBケーブル等を介してデータの送受信を行う。
ヘッド制御部208は、記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドを駆動するための駆動波形を生成すると共に、各液滴吐出ヘッドの圧力発生手段を選択駆動させる画像データ及びそれに伴う各種データをヘッドドライバ400に出力する。主走査モータ駆動部209は主走査モータ105を駆動させる。ACバイアス供給部210は帯電ローラにACバイアスを供給する。副走査モータ駆動部211は副走査モータ111を駆動させる。
操作パネル300は、ユーザがインクジェットプリンタ1の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。また、操作パネル300は、インクジェットプリンタ1の状態を視覚的に表示する出力インタフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザがインクジェットプリンタ1を直接操作し、若しくはインクジェットプリンタ1に対して情報を入力する際の入力インタフェースでもある。即ち、操作パネル300は、ユーザによる操作を受けるための画像を表示する機能を含む。
また、本実施形態に係る操作パネル300をユーザが操作することにより、インクジェットプリンタ1が印刷の対象とする用紙の厚さを設定し、その設定情報を制御部200に入力することでインクジェットプリンタ1は用紙の厚さを設定することができる。即ち、ここでは、操作パネル300は用紙設定部として機能する。そして、インクジェットプリンタ1は、この設定情報に基づき用紙の厚さに応じてキャリッジ119の高さを自動的に調整して印刷を実行する。
尚、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1においては、プリンタドライバ100、操作パネル300の両方において用紙の厚さが設定されない場合には、デフォルトの用紙の厚さが設定される。ここで、デフォルトの用紙の厚さとは、例えば、最も厚さが薄い用紙として登録されている用紙の厚さや、ユーザが予めインクジェットプリンタ1に登録した用紙の厚さ、普通紙として登録されている用紙の厚さ等が挙げられる。
ヘッドドライバ400は、シリアルに入力される記録ヘッド118の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて、ヘッド制御部208の図示しない駆動波形生成部から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドの圧力発生手段に対して印加することで記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドを駆動する。
尚、上述したヘッド制御部208の駆動波形生成部は、ROM202に格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び増幅器等で構成され、1つの駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動波形をヘッドドライバ400に対して出力する。
また、ヘッドドライバ400は、例えば、クロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、レベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含む。
そして、ヘッドドライバ400は、上記アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで、駆動波形に含まれる所要の駆動パルスを選択的に記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドの圧力発生手段に印加する。
主走査モータ105は、主走査モータ駆動部209からの信号に従い、主走査ベルト102を介してキャリッジ119をスライドレール104に沿って、つまり、図1に示す主走査方向に移動走査させる。副走査モータ111は、副走査モータ駆動部211からの信号に従い、副走査ベルト114を介して搬送ローラ109を回転駆動させることにより、搬送ベルト101を図1に示す副走査方向に周回移動させる。
このような構成とすることにより、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1において、CPU201は、ホストI/F207が受信した受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ってヘッド制御部208に転送し、ヘッド制御部208から所要のタイミングでヘッドドライバ400に画像データや駆動波形を出力する。
尚、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM202にフォントデータを格納することにより行われても良いし、ホスト側のプリンタドライバ100で画像データをビットマップデータに展開して制御部200に転送することにより行われるようにしても良い。図2における説明では、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、プリンタドライバ100で行われるようにしている。
次に、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1における、キャリッジ降下機構、キャリッジ上昇機構及びキャッピング部の位置関係について図3を参照して説明する。図3は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1を上方から見たときの透過図である。
図3に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1において、キャリッジ降下機構はキャリッジ119の移動範囲における右側に位置し、キャリッジ上昇機構はキャリッジ119の移動範囲における左側に位置する。
また、図3に示すように、キャッピング部はキャリッジ降下機構とキャリッジ上昇機構との間であって、キャリッジ降下機構側に位置している。尚、キャリッジ降下機構、キャリッジ上昇機構及びキャッピング部はいずれも記録ヘッド118による記録領域の外側に位置する。尚、図3に示す位置関係は、左右逆に構成されていても良い
以下、本実施形態において、キャリッジ降下機構の位置をキャリッジ降下位置、キャリッジ上昇機構の位置をキャリッジ上昇位置、キャッピング部の位置をキャッピング位置とする。尚、キャリッジ降下機構及び上昇機構については後述する。
このように構成されたインクジェットプリンタ1は、厚い用紙に対してはキャリッジ119を上昇させた状態(以下、「上昇状態」とする)で印刷を行い、一方、薄い用紙に対してはキャリッジ119を降下させた状態(以下、「降下状態」とする)で印刷を行う。尚、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、非記録中においては、キャリッジ119を降下させた状態でキャッピング位置にて記録ヘッド118の各ノズル形成面を覆うことによりキャッピングを行う。
次に、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が厚い用紙に対して印刷動作を行う処理について図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が厚い用紙に対して印刷を行う処理手順を説明するためのフローチャートである。
図4に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が厚い用紙に対して印刷を行うにはまず、ソフトウェア制御部は、主走査モータ駆動部209を介して主走査モータ105を制御することにより、キャリッジ119をキャッピング位置からキャリッジ上昇位置まで移動させ、降下状態から上昇状態へ遷移させる(S401)。
キャリッジ119が上昇状態に遷移したら、搬送ベルト101は、ソフトウェア制御部が副走査モータ駆動部211を介して副走査モータ111を制御することにより、用紙108を記録ヘッド118による記録領域まで搬送する(S402)。用紙が記録領域まで搬送されると、ソフトウェア制御部は、主走査モータ駆動部209を介して主走査モータ105を制御することにより、キャリッジ119をキャリッジ上昇位置から記録領域まで移動させる(S403)。
キャリッジ119が記録領域まで移動すると、インクジェットプリンタ1は給紙された用紙に対して印刷を開始する(S404)。そして、インクジェットプリンタ1は、印刷が終了したら(S405)、記録済みの用紙を排紙する(S406)。
インクジェットプリンタ1が用紙を排紙すると、ソフトウェア制御部は、主走査モータ駆動部209を介して主走査モータ105を制御することにより、キャリッジ119を、印刷を終了した位置からキャリッジ降下位置まで移動させ、上昇状態から降下状態へ遷移させる(S407)。
キャリッジ119が降下状態に遷移したら、ソフトウェア制御部は、主走査モータ駆動部209を介して主走査モータ105を制御することにより、キャリッジ119をキャッピング位置に移動させる(S408)。そして、キャリッジ119がキャッピング位置に移動したら、インクジェットプリンタ1は記録ヘッド118の各ノズル形成面を覆うことによりキャッピングを行い(S409)、厚い用紙に対する印刷処理を終了する。
以上が、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が厚い用紙に対して印刷を行う処理手順である。
即ち、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、厚い用紙に対して印刷を行う際にはまず、キャリッジ119を降下状態のままキャッピング位置から一旦、キャリッジ上昇位置まで移動させて、キャリッジ119を降下状態から上昇状態に遷移させた後、キャリッジ119を記録ヘッド118による記録領域に移動させ、厚い用紙に対する印刷を開始する。
そして、厚い用紙に対する印刷動作を終えたら、つまり、キャリッジ119が上昇状態で印刷動作を終えたら、インクジェットプリンタ1は、キャリッジ119を上昇状態のまま印刷動作終了位置から一旦、キャリッジ降下位置まで移動させてキャリッジ119を降下状態に遷移させた後、キャリッジ119をキャッピング位置まで移動させてキャッピングを行う。
次に、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が厚い用紙に対する印刷動作の途中にカバーが開放されて印刷動作を中断する処理について図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が厚い用紙に対する印刷動作の途中にカバーが開放されて印刷動作を中断する処理手順を説明するためのフローチャートである。
図5に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が厚い用紙に対する印刷動作の途中にカバーが開放されて印刷動作を中断するにはまず、図4のS401〜S404と同様の処理により印刷を開始する(S501〜S504)。そして、インクジェットプリンタ1の印刷動作中にカバーが開放されたら、I/O206がカバー開閉センサからカバーが開放されたことを通知する信号を検知し(S505/YES)、インクジェットプリンタ1は印刷動作を停止する(S506)。
インクジェットプリンタ1が印刷動作を停止したら、ソフトウェア制御部は、主走査モータ駆動部209を介して主走査モータ105を制御することにより、キャリッジ119を、印刷動作を停止した位置からキャリッジ降下位置まで移動させ、上昇状態から降下状態へ遷移させる(S507)。
キャリッジ119が降下状態に遷移したら、インクジェットプリンタ1は、図4に示すS408、S409と同様の処理を行い(S508、S509)、カバーが開放されたことにより印刷動作を中断する場合の処理を終了する。
以上が、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が厚い用紙に対する印刷動作の途中にカバーが開放されて印刷動作を中断する処理手順である。
次に、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が、厚い用紙に対する印刷動作の途中にカバーが開放されて印刷動作を中断した後、カバーが閉じられて印刷動作を再開する処理について図6を参照して説明する。図6は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が、厚い用紙に対する印刷動作の途中にカバーが開放されて印刷動作を中断した後、カバーが閉じられて印刷動作を再開する処理手順を説明するためのフローチャートである。
図6に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が厚い用紙に対する印刷動作の途中にカバーが開放されて印刷動作を中断した後、カバーが閉じられて印刷動作を再開するにはまず、インクジェットプリンタ1のカバーが閉じられることによりI/O206がカバー開閉センサからカバーが閉じられたことを通知する信号を検知する(S601/YES)。
そして、I/O206がカバーが閉じられたことを検知すると、ソフトウェア制御部は、主走査モータ駆動部209を介して主走査モータ105を制御することにより、キャリッジ119をキャッピング位置からキャリッジ上昇位置まで移動させ、降下状態から上昇状態へ遷移させる(S602)。
キャリッジ119が上昇状態に遷移したら、ソフトウェア制御部は主走査モータ駆動部209を介して主走査モータ105を制御することにより、キャリッジ119を、印刷動作を再開する位置まで移動させる(S603)。キャリッジ119が印刷動作を再開する位置に移動したら、インクジェットプリンタ1は印刷を再開する(S604)。
そして、インクジェットプリンタ1は印刷を終了したら(S605)、図4に示すS406〜S409と同様の処理を行い(S606〜S609)、カバーが閉じられることにより印刷動作を再開する処理を終了する。
以上が、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が厚い用紙に対する印刷動作の途中にカバーが開放されて印刷動作を中断した後、カバーが閉じられて印刷動作を再開する処理手順である。
即ち、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、厚い用紙に対する印刷動作の途中にカバーが開放されて印刷動作を中断した後、カバーが閉じられて印刷動作を再開する際にはまず、キャリッジ119を降下状態のままキャッピング位置から一旦、キャリッジ上昇位置まで移動させて、キャリッジ119を降下状態から上昇状態に遷移させる。そして、キャリッジ119が上昇状態に遷移したら、キャリッジ119を、印刷動作を停止した時の位置まで移動させる。
ここで、このように構成されたインクジェットプリンタ1において問題となるのが、カバーが閉じられることにより厚い用紙に対する印刷動作を再開する際に、キャリッジ119が降下状態のままキャッピング位置からキャリッジ上昇位置へ移動することである。即ち、このような場合には、キャリッジ119が降下状態のまま厚い用紙の上を通過することになるので、記録ヘッド118の各液滴吐出ヘッドのノズルが用紙に引っ掛かることによりノズル形成面が損傷したり、記録媒体が縒れたり破れたりすることにより紙詰まりが発生するといった問題が生じる。
そこで、このように構成されたインクジェットプリンタ1において、本実施形態に係る要旨の一つは、厚い用紙に対する印刷動作の途中でカバーが開放されて印刷動作を中断した後に、カバーが閉じられて印刷動作を再開する際に、キャリッジ119を降下状態のままキャッピング位置からキャリッジ上昇位置へ移動させるときの移動速度を印刷動作中の移動速度よりも低くすることにある。
従って、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1によれば、封筒のような厚い用紙に対する印刷動作の途中にカバーが開放されて印刷動作を中断した後に、カバーが閉じられて印刷動作を再開した場合であっても、インクヘッドのノズル形成面の損傷を軽減させると共に紙詰まりの発生回数を減少させることができる。
このような本実施形態の要旨の一つであるキャリッジ119の低速移動の処理は、ソフトウェア制御部が主走査モータ駆動部209を介して主走査モータ105を制御することにより行われる。
次に、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1のキャリッジ119とスライドレール104の摺動部について図7を参照して説明する。図7は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1のキャリッジ119を主走査方向から見たときの側面図である。尚、図7においては、キャリッジ119は降下状態にあるものとする。
本実施形態に係るインクジェットプリンタ1において、キャリッジ119は、図7に示す摺動部A、B及びCによってスライドレール104により支持されている。摺動部Aは、摺動部Bを回転軸としたキャリッジ119の自重による回転を受け止める面である。摺動部Bは、摺動部Aを回転軸としたキャリッジ119の自重による回転を受け止める面であり、また、キャリッジ119の副走査方向における位置を決定する面である。摺動部Cは、キャリッジ119の高さを決定する面である。
また、図7に示すように、キャリッジ119は支持部130において、回転カム部材121を主走査方向に平行に保持する。回転カム部材121は回転軸122を備え、この回転軸122を軸として図7に示す矢印の方向に回転自在に支持部130に保持されている。そして、回転カム部材121が回転軸122を軸として回転することにより、キャリッジ119が昇降するように構成されている。尚、回転カム部材121については後述する。
次に、キャリッジ119が昇降する機構について図8及び図9を参照して説明する。図8は、図7に示すキャリッジ119を図7に向かって左斜め上から見たときの斜視図である。図9は、図7に示すキャリッジ119を図7に向かって左側から副走査方向に見たときの側面図である。尚、図8、図9においては、キャリッジ119は降下状態にあるものとする。
図8、図9に示すように、キャリッジ119は支持部130において、回転カム部材121を主走査方向に平行に保持する。回転カム部材121は、図8、図9に示すように、回転軸122を備え、この回転軸122を軸として図7、図8に示す矢印の方向に回転自在に支持部130に保持されている。
また、回転カム部材121は、図8、図9に示すように、回転誘導部材123a及び123bを回転軸122の主走査方向の両端に備える。この回転誘導部材123a及び123bは、図8、図9に示すように螺旋構造を有し、回転軸122に巻きつくように構成されている。
さらに、回転カム部材121は、図8、図9に示すように、回転軸122に可変摺動部材124a及び124bを備える。可変摺動部材124a及び124bは、図8、図9に示すように、回転誘導部材123aと回転誘導部材123bとの間に、回転軸122に対して垂直に備えられる。尚、可変摺動部材124aと可変摺動部材124bとは同一の大きさ、形状、機能を有し、さらに、同一の向きで回転軸122に備えられているので、特に区別しない限りはまとめて可変摺動部材124とする。
また、図9に示すように、スライドレール104はその内部にキャリッジ上昇位置にキャリッジ上昇機構125aを、キャリッジ降下位置にキャリッジ降下機構125bを備える。尚、キャリッジ上昇機構125a及びキャリッジ降下機構125bは、スライドレール104の内部に固定された固定押部材で構成されている。
ここで、可変摺動部材124の形状及び機能について図10を参照して説明する。図10は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の可変摺動部材124を主走査方向から見たときの側面図である。尚、図10においては、キャリッジ119は降下状態にあるものとする。
可変摺動部材124は、図10に示すように、略扇形であって片方の径がもう一方の径よりも短く構成され、弧に沿って短い径の側から長い径の側に向かうに従って所定の割合で徐々に径が長くなるように構成されている。尚、可変摺動部材124は、キャリッジ119が降下状態にあるときには、図10に示す摺動部Eで図7に示す摺動部Cにおいてスライドレール104と接触してキャリッジ119を降下状態に保っている。
このように構成された回転カム部材121において、キャリッジ119がキャリッジ上昇位置まで移動することにより、回転誘導部材123aが図9に示すキャリッジ上昇機構125aに螺旋方向に沿って接触することになる。即ち、キャリッジ119がキャリッジ上昇位置まで移動することにより、回転カム部材121は回転誘導部材123aの螺旋方向に従って回転する。
そして、回転カム部材121がこのように回転した結果、可変摺動部材124が図10に示す摺動部Dで図7に示す摺動部Cにおいてスライドレール104と接触することにより、キャリッジ119は降下状態から上昇状態に遷移する。
反対に、キャリッジ119が上昇状態にある場合には、キャリッジ119がキャリッジ降下位置まで移動することにより、回転誘導部材123bが図9に示すキャリッジ降下機構125bに螺旋方向に沿って接触することになる。即ち、キャリッジ119がキャリッジ降下位置まで移動することにより、回転カム部材121は、回転誘導部材123bの螺旋方向に従って回転する。
そして、回転カム部材121がこのように回転した結果、可変摺動部材124が図10に示す摺動部Eで図7に示す摺動部Cにおいてスライドレール104と接触することにより、キャリッジ119は上昇状態から降下状態に遷移する。
以上説明したように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、厚い用紙に対する印刷動作の途中にカバーが開放されて印刷動作を中断した後に、カバーが閉じられて印刷動作を再開する際に、キャリッジ119を降下状態のままキャッピング位置からキャリッジ上昇位置へ移動させるときの移動速度を印刷動作中の移動速度よりも低くするように構成されている。
従って、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1によれば、封筒のような厚い用紙に対する印刷動作の途中にカバーが開放されて印刷動作を中断した後に、カバーが閉じられて印刷動作を再開した場合であっても、インクヘッドのノズル形成面の損傷を軽減させると共に紙詰まりの発生回数を減少させることができる。
尚、上記実施の形態においては、インクジェットプリンタについて説明しているが、特にこれに限られることは無く、キャリッジを備えるプリンタ、ファクシミリ、スキャナ、複写機として利用可能なMFP(MultiFunction Peripheral:複合機)であっても適用可能である。
また、上記実施形態においては、印刷動作の中断と再開の原因をカバー開閉として説明しているが、例えば、ユーザにより操作パネル300の停止ボタンが押されて印刷動作を中断した後に、再開ボタンが押されて印刷動作を再開する等、他の原因によって印刷動作が中断された後に、印刷動作を再開するように構成されていても良い。
さらに、上記実施形態においては、インクジェットプリンタ1が印刷の対象とする用紙の厚さは、プリンタドライバ100により設定されるか、若しくは、ユーザが操作パネル300を操作することにより設定されるとして説明したが、インクジェットプリンタ1に用紙の厚さを検知するセンサを備え、自動で用紙の厚さが設定される構成としても良い。