以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。本発明に係る用紙搬送装置を備えた本発明に係る画像形成装置の第1実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同装置の全体構成を説明する構成図、図2は同装置の要部平面説明図、図3は同装置の要部正面図である。
この画像形成装置であるインクジェット記録装置は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド1と図示しないステーとでキャリッジ3を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ7(図2)によってタイミングベルトを介して図2で矢示方向に移動走査される。
このキャリッジ3には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェットヘッドからなる記録ヘッド4を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド4を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、インクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ3には、記録ヘッド4に各色のインクを供給するための各色のサブタンク5を交換可能に搭載している。このサブタンク5にはインク供給チューブ6を介して図示しないメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
一方、給紙トレイなどの用紙積載部11に積載した用紙12を給紙するための給紙部として、用紙積載部11から用紙12を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)13及び給紙コロ13に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド14を備え、この分離パッド14は給紙コロ13側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙12を記録ヘッド4の下方側で搬送するための搬送部として、用紙12を静電吸着して搬送するための搬送ベルト21と、給紙部からガイド22を介して送られる用紙12を搬送ベルト21との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ23と、略鉛直上方に送られる用紙12を略90°方向転換させて搬送ベルト21上に倣わせるための上記搬送ガイド22と、押さえ部材24で搬送ベルト21側に付勢された先端加圧コロ25とを備えている。また、搬送ベルト21表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ26を備えている。
ここで、搬送ベルト21は、無端又は繋ぎ合わされた(これらを「無端状」という。)ベルトであり、搬送ローラ27とテンションを与えたテンションローラ28との間に掛け渡されて、搬送ローラ27を副走査モータ31(図2)で回転駆動することによって矢示A方向(ベルト搬送方向)に周回するように構成している。
この搬送ベルト21は、図4に示すように、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40μm程度の樹脂材、例えばETFEピュア材で形成した用紙吸着面を形成する表層21aと、この表層21aと同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)21bとを有している。
搬送ベルト21の絶縁層(表層)21aの厚みが誘電率に影響し、厚みが厚くなると誘電率が下がり帯電した際にベルトに載る電荷の量が減る。実験によれば、この表層21aの厚みは60μm以下とすることで所望の静電吸着力が得られたが、製造上ばらつく膜厚の範囲を考慮し、また、実機にてベルトに発生する傷によってもこの層厚みが0とならない範囲で、極力薄くすることで静電吸着力をより向上させることができる。
また、搬送ベルト21の裏層(中抵抗層、アース層)21bの厚みは直接静電的な作用には影響しないが、ベルトの総厚みが厚くなると、剛性が増しベルトを実機上で張ったときにベルトの平面度を確保することが困難になり、一方所要の強度を確保する上ではあまり薄くできない。実験によると、裏層21bの厚みとしては40〜200μm程度が好ましい。
このように二層構成として搬送ベルト21の全面裏側に抵抗制御をした層21bを設けることで、予め絶縁層である表層21aに電荷を形成した後、ベルトに吸着させる用紙が接触すると電荷を更に供給し、用紙と搬送ベルト21との間の静電的な吸着力を増加させることができる。仮に、絶縁層単層の場合、その吸着力は二層の場合に比べて半減し、また、単層の場合には用紙がベルトに接触し始める位置がベルト内側に配置されるアースローラに対向する位置でなければならないが、二層にすることにより、このような制約がなくなる。
この場合、この表層21aとしては表面抵抗1E+10Ω/□以上のものを使用し、裏層21bとしては表面抵抗1E+08Ω/□以下のものを使用することで、所望の静電吸着力が得られた。
帯電ローラ26は、搬送ベルト21の表層に接触し、搬送ベルト21の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nをかけている。また、搬送ローラ27はアースローラの役目も担っており、搬送ベルト22の中抵抗層と接触配置され、接地ライン29を介して接地している。
さらに、記録ヘッド4で記録された用紙12を排紙するための排紙部として、搬送ベルト22から用紙12を分離するための分離部41と、排紙される用紙12をストックする排紙トレイ42とを備えている。
次に、このインクジェット記録装置の制御部の概要について図5を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部は、プリンタコントローラ70と、主走査モータ7及び副走査モータ31を駆動するためのモータドライバ81と、記録ヘッド4(インクジェットヘッド)を駆動するためのヘッドドライバ(ヘッド駆動回路、ドライバICで構成)82等とを備えている。
プリンタコントローラ70は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの印刷データ等をケーブル或いはネットを介して受信するインターフェース(以下「I/F」という)72と、CPU、ROM、RAM及びI/F等からなる主制御部73と、各種データの記憶等を行うRAM74と、各種データ処理のためのルーチン等を記憶したROM75と、記録ヘッド4への駆動波形を発生させる駆動信号発生回路77と、ドットパターンデータ(ビットマップデータ)に展開された印字データ及び駆動波形等をヘッドドライバ84に送信するためのI/F78、モータ駆動データをモータドライバ81に送信し、帯電ローラ26に対する高電圧(帯電電圧)を印加する高圧回路83の出力を制御する信号を送信するためのI/F79等とを備えている。
主制御部73には、図2に示すように副走査モータ31で回転駆動される搬送ローラ27の軸27aに固定したスリット板32とフォトセンサ33で構成したエンコーダ34の出力、図示しない操作パネルに設けた使用する用紙の種別を指定する用紙種別指定手段(スイッチ或いはメニュー選択で構成している。)35などの各種センサ、スイッチ類からの信号も入力される。また、使用する用紙の種別を指定する情報はホスト側のプリンタドライバなどからも与えることができる。主制御部73はこれらの搬送ローラ27の回転量すなわち搬送ベルト21の移動量、指定された用紙種別に基づいて、高圧回路83を制御して搬送ベルト21の帯電を制御する。
RAM74は各種バッファ及びワークメモリ等として用いる。ROM75は主制御部73によって実行する各種制御ルーチンとフォントデータ及びグラフィック関数、各種手続き、用紙種別と搬送ベルト21に形成する帯電電圧パターンの帯電幅の関係などの固定情報(テーブル)等を記憶している。
主制御部73は、I/F72に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、この解析結果(中間コードデータ)をRAM74の所定のエリアに記憶し、記憶した解析結果からROM75に格納したフォントデータを用いて画像出力するためのドットパターンデータを生成し、RAM74の異なる所定のエリアに再び記憶する。なお、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してこの記録装置に転送する場合には、単にRAM74に受信したビットマップの画像データを格納する。
そして、主制御部73は、記録ヘッド4の1行分に相当するドットパターンデータが得られると、この1行分のドットパターンデータを、発振回路からのクロック信号CLKに同期して、I/F78を介してヘッドドライバ82にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ82に送出する。
駆動信号発生回路77は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM75で構成することもできる。)と、このROMから読み出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成している。
ヘッドドライバ82は、主制御部73からのクロック信号及び印字信号であるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値を主制御部73からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)とからなり、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的にヘッド4に印加する。
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙12が1枚ずつ分離給紙され、この給紙された用紙12は搬送ガイド22で案内され、搬送ベルト21とカウンタローラ23、先端コロ25との間で順次挟まれて給送される。
このとき、主制御部73によって高圧回路(高圧電源)83から帯電ローラ26に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すよう、つまり交番する電圧が印加される。これにより、図6に示すように、搬送ベルト21の表面(絶縁層21a)が交番する極性の帯状の電圧パターン(これを「帯電電圧パターン」という。)91で帯電される。すなわち、搬送ベルト21は周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅(帯電幅あるいは帯電ピッチという)で帯状に交互に帯電される。
ここで、搬送ベルト21上に形成される電荷による用紙吸着の様子について図7を参照して説明すると、同図(a)に示すように帯電ローラ26によって、搬送ベルト21の絶縁層21aにプラスとマイナスの電荷が同電位で、ある帯電ピッチ(帯電幅)で帯電されて帯電電圧パターン91が形成される。
この状態で、同図(b)に示すように、用紙12が接触し始めたとき、搬送ベルト21表面にはベルト21上のプラス電荷からマイナス電荷に向かって磁力線90が発生している。この磁力線92の影響で用紙12の搬送ベルト21と接触している側とその反対側には同極の電荷が誘電される。用紙12の搬送ベルト21と接触する側の磁力密度は高く、用紙12の搬送ベルト21と非接触面側の密度は疎となる。そのとき、用紙12の下側と上側で電荷の差異が生じて、その差異分、搬送ベルト21と吸着する向きに力が作用する(マクセル応力)。これにより、用紙12が搬送ベルト21に吸着され、搬送ベルト21の周回移動によって用紙12が副走査方向に搬送される。
この場合、搬送ベルト21上に形成する帯電電圧パターン91の帯電ピッチLの制御は、図6にも示すように、搬送ローラ27の回動量を検出するエンコーダ34の出力に基づいて搬送ベルト21の搬送量(移動量)を求め(換算し)、主制御部73によって搬送ローラ27を駆動する副走査モータ31を制御して、搬送ベルト21の移動量を制御するとともに、搬送ベルト21を帯電させる帯電装置(帯電ローラ)26に高圧を印加する高圧回路(高圧電源)83の出力をプラスもしくはマイナスに切替制御することによって行う。
このようにプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト21で用紙12を搬送して停止させ、キャリッジ3を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド4を駆動することにより、停止している用紙12にインク滴を吐出して1行分を記録する。そして、1行分の記録が終了したときに、搬送ベルト21を駆動して用紙12を所定量搬送させた後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙12の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙12を排紙トレイ42に排紙する。
なお、キャリッジ3の移動方向の一端側の記録領域を外れた位置には、記録ヘッド4の吐出不良を回復するための回復装置を配置し、待機中にはこの回復装置側に移動してキャッピング手段で記録ヘッド4をキャッピングし、ノズル部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止し、また、記録途中などでも記録と関係しないインク滴を吐出させることにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持するようにしている。
また、吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で記録ヘッド4のノズルを密封し、チューブを通して吸引手段でノズルからインクとともに気泡等を吸い出し、ノズル面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去して吐出不良を回復するための処理を行う。
そこで、このインクジェット記録装置における帯電電圧パターンの制御について図8以降をも参照して説明する。
図8を参照して、主制御部73は、用紙種別指定手段35又はホスト側のプリンタドライバから与えられた用紙種別情報を取り込み、ROM75に格納している用紙種別と帯電ピッチとのテーブルから指定された用紙種別に対応する帯電ピッチ情報を取り込む。
そして、取り込んだ帯電ピッチ情報と、エンコーダ34で検出される搬送ローラ27の回動量(搬送ベルト21の移動量)に基づいて、高圧電源83の出力のオン/オフ及びプラス/マイナスの切り替え制御を行って帯電ローラ26に印加する電圧の極性を切り換えることにより、搬送ベルト21の帯電電圧パターン91の帯電ピッチLを搬送する用紙12の種別に応じたピッチに制御する。
すなわち、搬送ベルトによる用紙に対する吸着力は、搬送ベルト表面に帯電している電位幅によって影響を受け、搬送する対象物の表面抵抗によって、搬送ベルト上の電荷の影響で誘電分極する率(速度)が変わり静電的な吸着力が変化する。つまり、用紙の含水分量や表面材質の影響で、表面抵抗が異なると、プラスとマイナスの交番電荷を形成したベルトへの静電吸着力が異なる。
ここで、用紙の表面抵抗は用紙の種別(種類)によって大別することができるので、用紙の種別に応じて帯電ピッチを調整する(異ならせる)ことによって、搬送する用紙に応じた適切な帯電ピッチで搬送ベルトを帯電させることができる。これにより、搬送ベルトによる安定した吸着力を発生させることができて、高い搬送品質が得られ、したがってまた高い画質で画像形成することができる。
また、用紙の表面抵抗は、環境条件(温度、湿度など)によっても変動することから、環境条件を検出する手段(温度センサ、湿度センサ)を設けて、検出した環境条件に基づいて帯電ピッチを制御することで、より適切な吸着力が得られるようになる。
ここで、搬送する用紙が普通紙の場合について説明すると、普通紙の表面抵抗は一般的には1E+07Ω/□程度である。この普通紙の場合には、上述した静電吸着力(マクセル応力)に加えて、搬送ベルト21上の電荷と逆極性の電荷が用紙12のベルト21と接触している面に誘電され、ベルト21上の電荷と搬送用紙12上に誘電された電荷同士が互いに静電的に引っ張り合い用紙12をベルト21に吸着させる力が本方式の静電吸着には作用する。この誘電電荷による吸着力はマクセル応力に対してより強い吸着をもたらす。
この誘電電荷は、搬送用紙の表面抵抗によってその発生割合が変化する。表面抵抗が高くなる(1E+10Ω/□を越える)と、誘電電荷の発生が少なく、用紙の吸着は上述したマクセル応力に依存することになる。
また、誘電電荷による吸着力は、帯電幅(帯電ピッチL)が4mm以上30mm以下の範囲内では、帯電幅が広くなるほど高くなる傾向にある。これに対して、マクセル応力は、プラスとマイナスの切り換えポイントが多いほど、つまり帯電ピッチが短いほど、その吸着力は効率的となる。
そこで、搬送物の表面抵抗が1E+10Ω/□以下であるときには、帯電幅を4mm以上30mm以下とすることで、一般的に普通紙を安定して搬送することができるようになる。つまり、普通紙を搬送するときの帯電幅は4mm以上30mm以下とすることが安定搬送の上で好ましい。
一方、OHPなどの樹脂を含む用紙(以下、単に「OHP」という。)は、搬送ベルト21との接触面に何らかの抵抗制御に至る薬剤を塗布していない限り、その表面抵抗は、少なくとも1E+10Ω/□を越える値となり、上述した1E+07Ω/□程度の表面抵抗である普通紙等と比較すると、OHPをベルト21に吸着させる力が弱い。
表面抵抗が高いことによって、誘電分極による静電作用よりも搬送ベルト21上のプラスとマイナスの電荷の切り替わるエッジ部で発生するマックスウェル応力による執着作用が支配的となる。すなわち、表面抵抗が高い搬送物に対しては、より多くのプラスとマイナスの切り替わり点を有する、つまり帯電幅が狭い方が、より高い吸着力を発生させることができる。
そこで、搬送物の表面抵抗が1E+10Ω/□を越えるときには、帯電幅を2mm以上8mm以下の範囲内とすることで安定した搬送を行うことができる。つまり、OHPを搬送する場合の帯電幅は2mm以上8mm以下の範囲内とすることが好ましい。なお、帯電幅2mmを下限としているのは後述するように2mm未満では帯電電荷が相殺されて未帯電と同じになるためである。
次に、搬送ベルト21の帯電開始タイミングと用紙12の搬送ベルト21上への給送タイミングの関係について説明する。
上述したインクジェット記録装置では、搬送する用紙12は給紙コロ13によって積載された用紙群から分離して搬送される。ここで、用紙12を連続して印字する場合、あるいは複数枚目の印字では、保持される用紙12の先端が、徐々に搬送方向にせり出し、用紙12の先端が搬送ベルト21の近傍に位置するようになる場合がある。
また、画像形成装置のレイアウトによっては、用紙積載位置から搬送ベルトと用紙12の接触開始点までの距離と、搬送ベルト上の帯電装置(帯電ローラ)から印字用紙との接触開始点までの距離と比較して、前者の方が短い場合もあり得る。
この両者の場合、用紙先端部に相対する搬送ベルト表面に電荷を形成することができなくなる。
そこで、用紙12に印字するために印字用紙12を分離給紙する前に、給紙コロ13を駆動しない状態で、搬送ベルト21を駆動し、かつ高圧電源83からの出力を帯電装置(帯電ローラ)26に印加して、搬送ベルト21の帯電を行うようにする。
このようにして、予め搬送ベルト21上に所望の帯電ピッチで電荷を形成した後、給紙コロ13を駆動して、印字用紙12を分離給紙し、搬送ベルト21に用紙12を吸着した状態で、記録ヘッド4の直下まで、用紙12を搬送させて、印字を開始する。
これにより、搬送ベルトに用紙との接触領域で未帯電領域が生じることが防止されて、用紙の安定した搬送を行うことができる。
次に、用紙サイズと搬送ベルトの全周長との関係と帯電制御について説明する。
搬送ベルト21を一定速で連続駆動しながら搬送ベルト21への帯電を行うと、帯電ローラ26に印加する高圧電源83の出力は一定の周波数で良くなり、このような出力を発生する高圧電源83の仕様は簡易になる。
ここで、搬送ベルト21に予め電荷を形成し、その形成された電荷によってのみ搬送させると、搬送ベルト21の全周長が搬送する用紙12のサイズよりも短い場合には、一旦用紙12が搬送ベルト21に吸着し、搬送ベルト21と用紙12が分離した部分が更にその同じ用紙12の異なる部分を吸着することになる。
この場合、一度搬送ベルト21に吸着した用紙12が離れると、搬送ベルト21上の電荷は減衰する。したがって、搬送ベルト21の全周長より長い用紙12を搬送する際は、その用紙12の後端側では常に吸着力が低い状態となってしまうことになる。
そこで、ここでは、搬送ベルト21を停止して記録ヘッド4による画像形成を行っているときには帯電ローラ26による搬送ベルト21の帯電も中止するが、改行のために搬送ベルト21を所望量移動させるときには、搬送ベルト21への帯電を行うようにしている。これにより、用紙に対するベルト上の電荷を常に一定にすることができて、安定した吸着力を得ることができる。
このように改行中(搬送ベルト21の所要量の移動中)にも帯電を行うようにした場合、画像形成装置では改行量が複数存在する場合がある。例えば、ある一つのノズルピッチでノズルピッチ以上の画素密度で画像を形成する場合や、ノズルピッチ以上の画素密度で画像を形成する場合などがある。つまり、用紙を送る改行量がその画素密度に応じて複数存在するということになる。
一方、静電吸着搬送方式の用紙吸着力は、プラス及びマイナスそれぞれの帯電電圧パターンのベルト搬送方向の幅(帯電ピッチ)によって異なり、用紙の種類によって、また環境によって最適な帯電ピッチが存在する。
そのため、1改行時に同じ極性の帯電電圧が印加されると、最適な帯電ピッチの実現が不可能となる。そこで、図9に示すように、画像形成時の改行のために搬送ベルト21を駆動する量(改行量)が、帯電ピッチの整数倍でない場合、また、1改行量よりも帯電ピッチが短い場合には、同図(a)に示すように副走査モータ31を駆動して搬送ベルト21を駆動(移動)しているときに、同図(b)に示すように高圧電源(P.P)83の出力のプラスとマイナスを切り換えるようにする。
そして、1改行中に所望の帯電ピッチを帯電しきらずに改行が終了してしまった場合には、その次の改行にて残りの帯電しきれていない分を同じ極性で帯電する。図9の例ではS1の部分で前の改行で残った分を帯電し、またその改行でもS2で残りが生じているので更に次の改行でS3の部分で帯電している。
このように、1改行中に帯電の極性を搬送ベルトの移動量に応じて切り替えることで、一定幅の帯電ピッチを形成している途中で、改行が停止した場合でも、所望の帯電ピッチを形成することができ、用紙の吸着力を安定して得ることができ、搬送安定性が得られる。
また、改行中(搬送ベルト21の所要量の移動中)にも帯電を行うようにした場合、図10に示すように、画像形成時の改行のために搬送ベルト21を駆動する量(改行量)が、帯電ピッチの整数倍となるように帯電ピッチを設定することもできる。
ここで、改行量は、形成しようとする画像の画素密度と、ヘッド4のノズルピッチ及びノズルの使用数によって決まる。通常、インクジェットヘッドによる画像形成装置においては、形成しうる画素密度を複数選択可能である。帯電ピッチをこの画像形成装置が有している改行量全てに対する最大公約数の1/n(n=整数)とすることで、図10に示すように必ず1改行中に帯電ピッチの形成が完了する。このようにすれば、前述した図9に示すような、極短い時間での帯電を行う必要がなくなる。
すなわち、図9で説明した例では、1改行中に帯電の極性切り替えを行うので、その改行量が帯電ピッチの整数倍でない場合には、同じ極性の帯電が2改行にまたがって印加されることになる。そのとき、図9に示すように、極短い時間の帯電電圧の印加(同図中特にS4で示す部分)が行われることが考えられ、そのときに帯電される電荷量としては、所期の量に満たない場合がある。
つまり、極短い時間での帯電では、高圧電源83の出力は所望の電位に立ち上がっていても、帯電ローラ26を介して、搬送ベルト21上に所望の帯電電位が形成されているということにはならない。このとき、帯電電位が所望のレベルより低い電位しかのっていないということになり、このように帯電部の電位が上がりきらずに改行が終了し帯電が終了する場合がある。
これに対して、図10に示すように、改行量が帯電ピッチの整数倍になるように帯電ピッチを設定することで、同極の帯電が2改行にまたがることなく、所望の帯電ピッチは一度に帯電されるため、搬送ベルト上の電荷量を所望量得ることができ、電位レベルの安定化を図ることができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置について図11を参照して説明する。
この実施形態では、搬送ベルト21上の残留電荷を除去する除電ブラシなどの除電装置38を設けている。なお、除電装置38は装置筐体などに電気的に接続している。
したがって、搬送ベルト21上にプラスとマイナスの電荷を形成しつつ、搬送ベルト21を駆動すると、除電装置38によって分離部後の搬送ベルト21上の電荷が除去される。これにより、帯電ローラ26によって搬送ベルト21上を帯電するときには、搬送ベルト21上に常に電荷が載っていない状態となり、帯電の安定化と搬送ベルト21の耐久性の向上を図ることができる。
すなわち、搬送ベルト21上の全面に、所望の帯電ピッチでプラスとマイナス交互の電位(帯電電圧パターン)を形成した場合、搬送する用紙12と接触している部分は用紙12との乖離が行われるとベルト表面の電位は下がる。
しかしながら、用紙12と接触しない用紙と用紙の間に相当するベルト表面の電位は帯電時の電位が載っている。その状態で更に帯電を実施した場合で、帯電部のベルト上の電位極性に対して逆の極性を印加する場合、印加電位のおよそ2倍の電位差がその部分で生じることになる。
一般に、印加時、ベルト表面に帯電のアタックよって発生する絶縁層の微小破壊があるが、上述したように印加電位の2倍相当の電位差で印加が行われた場合、そのアタックはより強くなり、ベルトの耐久性に悪影響を与える可能性がある。そこで、除電装置38を設けることによって帯電時には電荷が乗っていない状態とすることにより、このように印加電位の2倍相当の電位差で印加が行われることを防止して耐久性を向上することができる。
また、用紙12を搬送する上で、次に述べるように、用紙12の特定部位に相対する搬送ベルト部位に電荷を形成したくない場合がある。そのようなときには、帯電後除電する機構を有することで、ベルト上の特定部位にのみ電荷をのせる制御が可能となる。
次に、この装置で表面抵抗の高い(1E+12Ω/□を越える)高抵抗搬送物である用紙を搬送するときの帯電領域の制御について図12を参照して説明する。
この場合には、搬送する用紙12の先端位置を検出し、この用紙12の先端位置の検出結果と用紙12のサイズに基づいて、図12に示すように、用紙12の先端部(50mm以下)と後端部(100mm以下)の領域に相当する搬送ベルト21の領域にのみ帯電を行い、その間は未帯電領域93としている。
この装置では、上述したように搬送ベルト21上の電荷を除去する除電装置38を備えているので、搬送ベルト21上の帯電を行わない未帯電領域93には電荷が形成されない。
したがって、高抵抗搬送物の用紙12を搬送するときには、用紙12の先端部分及び後端部分のみ静電的に搬送ベルト21と吸着して搬送される。高抵抗搬送物の用紙12は、多くの場合樹脂を含んで構成されており、インクによる画像形成で、用紙の姿勢が崩れるとはなく、用紙の中央部付近は、静電的にベルトに吸着させる必要性が低い。先端部分は、コロによって用紙の姿勢が保たれた状態ではないときに画像を形成する必要があるために静電的に吸着し、後端側は、その理由に加えて、印字した後の用紙を確実に排紙トレイ42に排出させる作用が要求されるために静電的に吸着させる。
このようにして、高抵抗搬送物の用紙を搬送するときには、用紙の先端部及び後端部のみを静電的に搬送ベルトと吸着しているため、この用紙が搬送ベルトから剥離される際も、剥離放電によっては、用紙の先端部及び後端部のみに電荷が用紙表面に発生する。このような用紙を排紙トレイ上に積載しても、剥離放電による帯電範囲が狭いので、既に排出され積載している高抵抗搬送物との静電的な吸着が発生することなく、スタックが可能となる。
すなわち、表面抵抗の高い(1E+12Ω/□を越える)用紙を搬送ベルトに静電的に吸着させて搬送する場合、用紙が搬送ベルトと乖離する際に用紙の表面電荷が移動しにくいために、搬送ベルト上の電荷と剥離放電が発生する。この剥離放電が発生すると、用紙の搬送ベルトと接触していた面が帯電する。その結果、用紙が搬送ベルトから分離されて排紙トレイに排紙されたときに、既に排紙トレイに積載保持されている用紙と静電的に張り付き、排紙トレイに積載されている用紙を押し出したり、搬送中の用紙の搬送抵抗となり搬送性に悪影響をもたらす。
そこで、高抵抗搬送物の用紙を搬送する際には、用紙の先端部及び後端部に相当するベルト部位にのみ帯電を行い、用紙が搬送ベルトに対して、自身の先端部及び後端部のみ静電的に吸着し、それ以外の部分は電荷が乗っていない状態とすることで、剥離放電によって用紙に発生する帯電領域を搬送上問題ないレベルで抑制し、積載保持部での既に積載された用紙との静電吸着を抑止し、積載性の向上及び、搬送性の向上を果たすことができる。
さらに、搬送ベルト上に形成する帯電電圧パターンの帯電ピッチを2mm以下とすることで、搬送ベルト上に電荷が載っていない状況を作ることができる。ベルト上に形成した電荷を次の逆極性の帯電を行うことで相殺させるということであるが、この帯電は、ベルト上に残留電荷がある状態のベルトに対しても同様に、除電する作用が働く。
高抵抗搬送物を搬送する際は、上述した図12に示すような帯電制御を実施するが、除電装置の効果によっては、未帯電領域93にもある程度の残留電荷は存在することがある。このようなときは、2mmピッチ以下の高周波の帯電を印加することで、強制的に除電し、除電装置がなくとも、未帯電領域を形成することができる。
つまり、帯電制御動作としては、図12に示すように、用紙先端部に相当するベルト帯電範囲は通常の帯電ピッチで印加を行い、未帯電領域を帯電するタイミングでは、高周波の印加を行って除電し、用紙後端側に相当するベルト表面に対しては、再び通常の帯電ピッチで印加を行うようにすれば良い。このように用紙先端部からの距離に応じて帯電ピッチを制御することによって、用紙の所要領域にのみ帯電電圧パターン91を形成することができる。
なお、上記実施形態においては、本発明をキャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
また、本発明に係る画像形成装置は、インクジェットプリンタ以外にも、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などにも適用することができる。さらに、インク以外の液体、例えばレジスト、医療分野におけるDNA試料を吐出させる画像形成装置にも適用することができる。