上述した鋼管矢板100の継手30においては、漏洩防止板60が円形メス継手40の内面に密着した状態となっていることによって、円形メス継手40とT形オス継手50との隙間からモルタル7が漏洩することがないと言われている。しかし、実施工の施工環境は様々であり、例えば、鋼管矢板100を海上施工した場合、鋼管矢板壁で囲まれた内域と外域との潮位差(水位差)や鋼管矢板壁に作用する波力により継手30内に水流が発生して、部分的に漏洩防止板60が円形メス継手40の内面に密着しない場合がある。この場合には、漏洩防止板60によるモルタル7の漏洩防止効果が部分的に損なわれるという問題が発生する。
漏洩防止板60の下端は、一般に水底面下1m程度とされている。ウォータージェットやエアリフトにより継手30内の排土及び洗浄を行うときには、T形オス継手50のウェブ部50aの両面側の漏洩防止板60の下端よりも上方の水底地盤を残存させるように慎重に施工が行われている。このウェブ部50aの両面側の残存土砂が底蓋となることによって、継手30の内部空間の水底面よりも上方まで充填したモルタル7が、漏洩防止板60の下端を経由して水中に漏洩することはない。しかし、実施工においては、ウェブ部50aの両面側の残存土砂が脱落又は流出する場合がある。この場合には、モルタル7を充填する際の底蓋の役目が失われて、モルタル7の充填に非常に手間がかかるという問題が発生する。
以上のような問題は、鋼管矢板100の継手30に頻繁に発生する問題ではなく、発生の頻度は比較的小さい。そして、このような問題が発生した場合には、二回以上に分けてモルタル7を充填することもできるが、一般的には、水底面下の継手30の内部空間にモルタル7を直に充填して、水底面よりも上方の継手30の内部空間には、袋体(モルタルジャケット)にモルタル7を充填する施工方法が採用されている。このような問題が発生する頻度は比較的小さいものの、モルタル7の漏洩位置を特定できないため、突発的にモルタル7の漏洩が発生した場合には、モルタル7の充填に非常に手間がかかって、度々、工程の遅延を招くという問題が発生していた。
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、筒形のメス継手と、フランジ部に可撓性の漏洩防止板が取り付けられたT形のオス継手とを嵌合させた継手の内部空間に継手充填材を充填するときに、継手充填材が漏洩防止板の幅方向の両端及び下端を経由して漏洩する漏洩位置を、継手充填材の充填前又は充填中に特定して、継手充填材の漏洩防止対策を必要最小限の範囲に速やかにかつ計画的に実施することを可能とする鋼管矢板の継手充填材の施工方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る鋼管矢板の継手充填材の施工方法の構成上の特徴は、水底地盤に打ち込まれた隣接する二本の鋼管矢板のうちの一方の鋼管の外周面に水面上の所定の高さから水底地盤の所定の深さまでの高さ区間に連続して設けられ、周の一部に高さ方向に連続したスリットが形成された断面筒形を呈するメス継手と、隣接する二本の前記鋼管矢板のうちの他方の鋼管の外周面に前記高さ区間に連続して設けられ、継手嵌合時に前記メス継手の前記スリットに挿入されるウェブ部、及び継手嵌合時に該メス継手の内面に幅方向の両端が密着可能な可撓性の帯状の漏洩防止板が取り付けられたフランジ部を有する断面T形を呈するオス継手と、を嵌合させることによって、前記メス継手の内部空間が、該メス継手の内面と前記オス継手の前記フランジ部と該オス継手の前記漏洩防止板とにより区画された第一空間と、該メス継手の内面と該フランジ部と該漏洩防止板と該オス継手の前記ウェブ部とにより区画され該ウェブ部の両面側にそれぞれ配置された第二空間及び第三空間と、該漏洩防止板の下端よりも下方の第四空間とに四分割され、前記メス継手と前記オス継手とを嵌合させた継手の前記第一空間及び前記第四空間を洗浄して土砂を排除した後、該第一空間及び該第四空間に止水用の継手充填材を充填するときに、該継手充填材が前記漏洩防止板の幅方向の両端及び下端を経由して前記第二空間及び前記第三空間に漏洩しないように施工を行う鋼管矢板の継手充填材の施工方法であって、
前記第一空間及び前記第四空間の土砂を排除した後、前記第二空間及び前記第三空間に残存土砂が存在しているか否かを確認する残存土砂確認工程と、前記第一空間及び前記第四空間に前記継手充填材を充填するときに、該継手充填材が前記第二空間及び前記第三空間に漏洩する漏洩位置を、該継手充填材の充填前又は充填中に該第二空間及び該第三空間の高さ方向において特定する漏洩位置特定工程と、前記漏洩位置特定工程により特定した前記第二空間及び前記第三空間の前記漏洩位置に、漏洩防止材を密実に設置する漏洩防止材設置工程と、前記漏洩防止材の設置後に前記継手充填材を前記継手の天端まで充填する継手充填工程と、を備えることである。
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載の鋼管矢板の継手充填材の施工方法において、前記漏洩位置特定工程において、前記残存土砂が存在していない前記第二空間及び前記第三空間の各下端を前記漏洩位置として特定すると共に、前記継手充填材の充填前に孔内撮影装置により前記第一空間を高さ方向に視認して、前記残存土砂が存在している範囲を除いた前記第二空間及び前記第三空間の高さ方向の全範囲のうちで前記メス継手の内面に前記漏洩防止板が密着していない高さ方向の範囲を前記漏洩位置として特定することである。
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2に記載の鋼管矢板の継手充填材の施工方法において、前記漏洩位置特定工程において、前記残存土砂が存在していない前記第二空間及び前記第三空間の各下端を前記漏洩位置として特定すると共に、前記継手充填材の充填中に該継手充填材の充填天端が上昇しなくなった初回には、前記第二空間及び前記第三空間の両下端を前記漏洩位置として特定することである。
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項3に記載の鋼管矢板の継手充填材の施工方法において、前記漏洩位置特定工程において、前記継手充填材の充填中に該継手充填材の前記充填天端が上昇しなくなった二回目以降には、前記第二空間及び前記第三空間における該継手充填材の該充填天端と同一の高さを前記漏洩位置として特定することである。
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の鋼管矢板の継手充填材の施工方法において、前記漏洩防止材は、水膨潤性材料により形成されていることである。
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項5に記載の鋼管矢板の継手充填材の施工方法において、前記漏洩位置に設置された前記漏洩防止材が該漏洩位置の内面に密着するまでの期間、該漏洩防止材を真水で養生する養生工程を備えていることである。
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の鋼管矢板の継手充填材の施工方法において、前記漏洩防止材設置工程において、前記継手の天端から前記漏洩位置まで届く長さの挿入棒を前記漏洩防止材に回転係合により取り付けて該漏洩防止材を該漏洩位置に設置した後、該挿入棒を逆回転することにより該漏洩防止材と該挿入棒との係合を解除して該挿入棒のみを該継手から抜き取ることである。
請求項1に係る鋼管矢板の継手充填材の施工方法によれば、断面筒形を呈するメス継手の内部空間が、メス継手の内面とT形を呈するオス継手のフランジ部及び可撓性を有する漏洩防止板とにより区画された第一空間と、オス継手のウェブ部の両面側にそれぞれ配置された第二空間及び第三空間と、漏洩防止板の下端よりも下方の第四空間とに四分割されている。そして、漏洩位置特定工程において、第一空間及び第四空間に継手充填材を充填するときに、継手充填材が第二空間及び第三空間に漏洩する漏洩位置を、継手充填材の充填前又は充填中に第二空間及び第三空間の高さ方向において特定すると共に、漏洩防止材設置工程において、第二空間及び第三空間の特定した漏洩位置に、漏洩防止材を密実に設置する。
したがって、請求項1に係る発明によれば、継手充填材の充填前又は充填中に、継手充填材が漏洩防止板の幅方向の両端及び下端を経由して第二空間及び第三空間に漏洩する漏洩位置を特定できるため、継手充填材の漏洩防止対策を必要最小限の範囲に速やかにかつ計画的に実施することが可能である。これにより、継手充填材の漏洩にともなう工程の遅延を最小限に抑えることができる。
請求項2に係る鋼管矢板の継手充填材の施工方法によれば、漏洩位置特定工程において、第一に残存土砂が存在していない第二空間及び第三空間の各下端を漏洩位置として特定する。第二に継手充填材の充填前に孔内撮影装置により第一空間を高さ方向に視認して、残存土砂が存在している範囲を除いた第二空間及び第三空間の高さ方向の全範囲のうちでメス継手の内面に漏洩防止板が密着していない高さ方向の範囲を漏洩位置として特定する。したがって、継手充填材の充填前に、第二空間及び第三空間の各下端の漏洩位置、及び第二空間及び第三空間の高さ方向の漏洩位置に、漏洩防止材を密実に設置することが可能である。これにより、継手充填材の充填を開始した後に施工が中断されることがほとんどなく、継手充填材の漏洩にともなう工程の遅延を最小限に抑える効果が向上する。
また、請求項2に係る発明によれば、第二空間の漏洩位置と、第三空間の漏洩位置とを個々に特定することができるため、第二空間及び第三空間の同一高さのウェブ部の両面側に一対の漏洩防止材を設置することに限定されず、ウェブ部の両面側のうちの漏洩位置が特定された一面側のみに漏洩防止材を設置することができる。これにより、漏洩防止材の設置コストを縮減することができる。さらに、請求項2に係る発明によれば、継手の高さ方向において、メス継手の内面に漏洩防止板が密着しているか否かを孔内撮影装置により視認して記録することができるため、この記録を継手の止水性が確実に得られていることを立証するための品質記録として活用することも可能である。
請求項3に係る鋼管矢板の継手充填材の施工方法によれば、漏洩位置特定工程において、継手充填材の充填中に継手充填材の充填天端が上昇しなくなった初回には、第二空間及び第三空間の両下端を漏洩位置として特定する。たとえ第二空間及び第三空間の両下端に残存土砂が存在している場合であっても、水底面よりも上方の第一空間に継手充填材を充填することにより発生する継手内の圧力によって、第二空間及び第三空間の残存土砂が漏出する場合がある。この場合、残存土砂による底蓋の役目が失われて、継手充填材が漏洩防止板の下端を経由して第二空間及び第三空間に漏洩する。
継手充填材の充填天端が上昇しないことのみから、第二空間及び第三空間の高さ方向において漏洩位置を厳密に特定することはできない。しかし、施工順序として漏洩防止材の設置は、想定される最下方の漏洩位置から行う必要があるため、請求項3に係る発明においては、第二空間及び第三空間の両下端を漏洩位置として特定して、第二空間及び第三空間の下端のウェブ部の両面側に一対の漏洩防止材を設置する。ただし、第二空間及び第三空間の各下端に残存土砂が存在している場合や、既に他の漏洩防止材が設置済みの場合には、残存土砂や設置済みの他の漏洩防止材を除去することなく、漏洩防止材の設置が可能な第二空間及び第三空間の最下方の位置に漏洩防止材を設置してもよい。請求項3に係る発明によれば、継手充填材が漏洩防止板の下端を経由して第二空間及び第三空間に漏洩することを確実に防止して、継手充填材の漏洩にともなう工程の遅延を最小限に抑えることができる。
請求項4に係る鋼管矢板の継手充填材の施工方法によれば、漏洩位置特定工程において、継手充填材の充填中に継手充填材の充填天端が上昇しなくなった二回目以降には、第二空間及び第三空間における継手充填材の充填天端と同一の高さを漏洩位置として特定する。請求項3に係る発明において、漏洩防止板の下端を経由しての継手充填材の漏洩は防止できているため、継手充填材の充填天端が再度上昇しなくなった原因は、漏洩防止板の幅方向の両端を経由しての継手充填材の漏洩に限定される。そして、継手充填材は、充填可能な流動性を有している材料であることを勘案すると、継手充填材の充填天端が上昇しないとき、継手充填材の充填天端は、メス継手の内面に漏洩防止板が密着していない位置と同一の高さにあると推定することが妥当である。
よって、第二空間及び第三空間における継手充填材の充填天端と同一の高さを漏洩位置として特定して、第二空間及び第三空間のウェブ部の両面側に一対の漏洩防止材を設置する。請求項4に係る発明によれば、継手充填材が漏洩防止板の幅方向の両端を経由して第二空間及び第三空間に漏洩することを確実に防止して、継手充填材の漏洩にともなう工程の遅延を最小限に抑えることができる。
請求項5に係る鋼管矢板の継手充填材の施工方法によれば、漏洩防止材は、水膨潤性材料により形成されている。水膨潤性材料は、材料内に水を吸収して膨潤することによって、複雑な形状の空間に合わせて形状を変化させることが可能な材料である。したがって、水膨潤性材料により形成された漏洩防止材を用いることによって、第二空間及び第三空間の複雑な形状の内面に漏洩防止材を密着させて、漏洩位置となる空間を確実に閉塞させることができる。
請求項6に係る鋼管矢板の継手充填材の施工方法によれば、水膨潤性材料により形成された漏洩防止材を用いる場合に、漏洩防止材が漏洩位置の内面に密着するまでの期間、漏洩防止材を真水(淡水)で養生する。水膨潤性材料の膨潤性は、接触する水質により変化する。例えば、海水中では、水膨潤性材料の重量膨潤率が真水中の1/3程度まで低下することがある。したがって、水膨潤性材料により形成された漏洩防止材を真水で養生することにより、漏洩防止材の膨潤率を高めて、第二空間及び第三空間の複雑な形状の内面に漏洩防止材をより確実に密着させることができる。
請求項7に係る鋼管矢板の継手充填材の施工方法によれば、漏洩防止材に対して回転により係合し、逆回転により係合が解除される挿入棒を使用して漏洩防止材の設置を行い、漏洩防止材の設置後に挿入棒のみを継手から抜き取る。これにより、漏洩防止材を設置するための挿入棒を回収して再利用することが可能である。
<第一実施形態>
図1〜6に基づき、本発明の第一実施形態について説明する。本実施形態における鋼管矢板の継手充填材の施工方法により施工された鋼管矢板壁は、産業廃棄物又は一般廃棄物を海面埋め立て処分する処分場の遮水性護岸壁に用いられる。図1に示すように、複数本の鋼管矢板1が海上施工により施工されて、海底面GLよりも下方の所定の深度まで打ち込まれている。隣接する鋼管矢板1同士は、継手3により連結され、鋼管2と継手3とが交互に直線状に並んだ鋼管矢板壁が構築されている。
図2に図1におけるA−A線で切断した断面図を示す。また、図3に図2におけるB−B線で切断した断面図を示す。図2及び3は、図1に示している4本の鋼管矢板1のうちの2本の連結状況を拡大して示している。鋼管矢板1は、鋼管2と、円形メス継手4と、T形オス継手5と、漏洩防止板6とを備えている。また、円形メス継手4とT形オス継手5とが嵌合した継手3の内部には、モルタル7(継手充填材)が充填され、水膨潤性ゴム10(漏洩防止材)が設置されている。
鋼管2は、外径が800〜1200mmの断面円形筒状を呈している。図2に示すように、鋼管2は、海面WL(水面)の上方の所定の高さから海底面GL(水底面)の下方の遮水層C(粘性土よりなる水底地盤)を貫いて遮水層Cの下方の非遮水層S(砂質土よりなる水底地盤)の所定の深さまで到達する長さを有している。継手3は、鋼管2の天端よりも若干下方から遮水層Cの所定の深さまでの高さ区間に連続して形成されている。したがって、継手3を構成する円形メス継手4及びT形オス継手5もこの高さ区間に連続して形成されている。
円形メス継手4は断面円形筒状を呈しており、周の一部に高さ方向に連続したスリット4aが形成されている。円形メス継手4の断面寸法は、外径が165.2mm、肉厚が9mm、スリット4aの開口幅が30±5mmとされている。円形メス継手4は、外周面のスリット4aから最も離れた位置を鋼管2の外周面に当接させた状態で、鋼管2の外周面に溶接により取り付けられている。
T形オス継手5は断面T形を呈しており、継手3の嵌合時に円形メス継手4のスリット4aに挿入されるウェブ部5aと、円形メス継手4の内部空間R0(図4(a)示)に挿入されるフランジ部5bとを有している。T形オス継手5の断面寸法は、ウェブ部5aが67mm×9mm、フランジ部5bが85mm×9mmとされている。T形オス継手5は、ウェブ部5aの一端を上述した円形メス継手4が取り付けられた鋼管2の外周面に当接させた状態で、一本の鋼管2の外周面の円形メス継手4から最も離れた位置に溶接により取り付けられている。図2に示すように、T形オス継手5の天端5Uは、円形メス継手4の天端4Uと同一高さにあり、T形オス継手5の下端5Lは、円形メス継手4の下端4Lよりもやや上方にある。
漏洩防止板6は、ゴム製で可撓性を有し帯状を呈している。漏洩防止板6の断面寸法は、幅が250mm、厚さが6mmとされている。漏洩防止板6の上端は、T形オス継手5の天端5Uと同一高さにあり、漏洩防止板6の下端は、海底面GLよりも深さLdだけ下方にある。一般に、深さLdは1m程度とされている。図4(a)に示すように、継手3の嵌合前の状態において、漏洩防止板6の面は平坦であり、漏洩防止板6の幅方向の各端部6a,6aは、T形オス継手5のフランジ部5bの幅方向の両側から幅方向に長く突出している。図4(b)に示すように、継手3の嵌合時には、漏洩防止板6の面を湾曲させた状態で、円形メス継手4の内部空間R0にT形オス継手5のフランジ部5bを挿入することによって、漏洩防止板6の幅方向の各端部6a,6aが円形メス継手4の内面に密着可能となっている。
漏洩防止板6には、一対の取付孔(図示せず)が高さ方向に複数個形成されている。フランジ部5bには、この取付孔に対応した位置にボルトが溶接されている。このボルトに止水ゴム8を外嵌した後、この取付孔を利用して漏洩防止板6がフランジ部5bにボルト固定されている。フランジ部5bと漏洩防止板6とにより止水ゴム8が挟圧されていることによって、漏洩防止板6に形成された取付孔を水が通過しないようになっている。
図2〜4に示すように、隣接する二本の鋼管矢板1,1の円形メス継手4とT形オス継手5とが嵌合することによって、円形メス継手4の内部空間R0が、第一空間R1と、第二空間R2と、第三空間R3と、第四空間R4とに四分割されている。第一空間R1は、円形メス継手4の内面とT形オス継手5のフランジ部5bと漏洩防止板6とにより区画された断面略半円形を呈する空間である。第二空間R2及び第三空間R3は、円形メス継手4の内面とT形オス継手5のフランジ部5bと漏洩防止板6とT形オス継手5のウェブ部5aとにより区画されウェブ部5aの両面側にそれぞれ配置された断面略1/4円形を呈する空間である。第四空間R4は、円形メス継手4の内部空間R0における漏洩防止板6の下端6bよりも下方の断面円形を呈する空間である。
図2に示すように、モルタル7は、第一空間R1及び第四空間R4に充填される。隣接する二本の鋼管矢板1,1の打ち込み直後には、第一空間R1、第二空間R2、第三空間R3及び第四空間R4に海底地盤である遮水層Cが残存している。このため、モルタル7の充填に先立って、ウォータージェットやエアリフトにより第一空間R1及び第四空間R4の排土及び洗浄を行う。上述したとおり、第二空間R2及び第三空間R3の残存土砂は、モルタル7の漏洩を防止するための底蓋としての役目を担っている。したがって、第二空間R2及び第三空間R3に土砂を残存させるように慎重に排土及び洗浄が行われる。ただし、本実施形態においては、図2に示すように、第二空間R2及び第三空間R3の残存土砂が脱落又は流出してしまった状況を想定している。
本実施形態においては、第一空間R1及び第四空間R4にモルタル7を充填する前に、第一空間R1及び第四空間R4に充填するモルタル7が漏洩防止板6の幅方向の各端部6a,6a及び下端6bを経由して第二空間R2及び第三空間R3に漏洩する漏洩位置K1及びKLを特定する(図2示)。そして、特定した漏洩位置K1及びKLに水膨潤性ゴム10を設置する。図4(b)に示すように、設置直後の水膨潤性ゴム10は、第二空間R2及び第三空間R3の内面に密着していない。水膨潤性ゴム10の表面に真水(淡水)を供給しつつ養生することによって、水膨潤性ゴム10を適切に膨潤させることが可能であり、図3に示すように、水膨潤性ゴム10を複雑な形状の第二空間R2及び第三空間R3の内面に密着させることができる。
図5及び6に基づき、第一空間R1及び第四空間R4にモルタル7を充填するときの施工方法について説明する。図6は、本実施形態における施工方法のフローチャートを示している。継手3の嵌合直後をフローチャートのSTARTとしている。ステップS1において、第一空間R1及び第四空間R4の排土及び洗浄を行った後、ステップS2において、第一空間R1及び第四空間R4の洗浄状態のビデオ撮影を行う。図5(a)に示すように、第一空間R1及び第四空間R4のビデオ撮影には、ボアホールカメラ11(孔内撮影装置)を使用する。
ステップS3において、漏洩防止板6に土砂が付着していたり、第四空間R4の下端(円形メス継手4の下端4L)に土砂が堆積していたりする状況が視認された場合には、継手3内の洗浄不良であるため、ステップS1に戻って第一空間R1及び第四空間R4の排土及び洗浄を再度実施する。ステップS3において、継手3内の洗浄不良が視認されなかった場合には、ステップS4に進む。
ステップS4において、ボアホールカメラ11を使用して、漏洩防止板6の幅方向の各端部6a,6aが円形メス継手4の内面に密着しているかどうかの確認を行う。ここで、漏洩防止板6が高さ方向の全区間で円形メス継手4の内面に密着していることが視認された場合には、ステップS5に進む。また、漏洩防止板6が円形メス継手4の内面に密着していない箇所が視認された場合には、ステップS6に進んで、漏洩防止板6が円形メス継手4の内面に密着していない高さを記録した後、ステップS7に進む。本実施形態においては、漏洩防止板6が円形メス継手4の内面に密着していない高さとして、図5に示す位置J1が記録される。
ステップS5において、第二空間R2及び第三空間R3に残存土砂が存在しているかどうかの確認を行う。ステップS5は、本発明の残存土砂確認工程に相当する。この確認は、第二空間R2及び第三空間R3に上方から棒やレッド(錘付きロープ)を挿入して、第二空間R2内及び第三空間R3内の地盤高を測深することにより行うことができる。第二空間R2及び第三空間R3の両方に残存土砂が存在している場合には、ステップS10に進んで、第一空間R1及び第四空間R4へのモルタル7の充填を開始する。
一方、ステップS5において、第二空間R2及び第三空間R3のいずれか一方に残存土砂が存在していなかった場合には、ステップS7に進む。ステップS7において、ステップS5及び6により得られた情報に基づいて、第二空間R2及び第三空間R3の高さ方向において漏洩位置を特定する。第一に残存土砂が存在していない第二空間R2及び第三空間R3の各下端(漏洩防止板6の下端6b)を漏洩位置KLとして特定する。第二に残存土砂が存在している範囲を除いた第二空間R2及び第三空間R3の高さ方向の全範囲のうちで漏洩防止板6が円形メス継手4の内面に密着していない高さ方向の範囲を漏洩位置K1として特定する。ステップS7は、本発明の漏洩位置特定工程に相当する。その後、ステップS8に進む。
ステップS8において、漏洩位置KL及びK1に水膨潤性ゴム10を設置した後、上述したように、水膨潤性ゴム10の表面に真水を供給しつつ養生する。そして、ステップS9において、水膨潤性ゴム10の膨潤が完了した後、ステップS10に進んで、第一空間R1及び第四空間R4へのモルタル7の充填を開始する。ステップS8及びS9は、本発明の漏洩防止材設置工程に相当する。
水膨潤性ゴム10の養生に際して、設置後の水膨潤性ゴム10への真水の供給は、例えば、水膨潤性ゴム10に届くように第二空間R2及び第三空間R3の上方から注水管を配管して行うことができる。また、膨潤前の水膨潤性ゴム10の断面寸法が、第二空間R2及び第三空間R3の断面寸法に対して小さい場合には、水膨潤性ゴム10が膨潤して第二空間R2及び第三空間R3の内面に密着するまでに長い養生期間が必要となる。この場合、水膨潤性ゴム10を事前に真水に浸して適度に膨潤させた後に、水膨潤性ゴム10を漏洩位置KL及びK1に設置することにより、養生期間の短縮を図ることができる。また、第二空間R2及び第三空間R3の断面形状に合わせた断面形状の水膨潤性ゴム10を用いることにより、水膨潤性ゴム10の膨潤率が小さい段階で水膨潤性ゴム10を第二空間R2及び第三空間R3の内面に密着させて、養生期間の短縮を図ることもできる。
図5(b)は、漏洩位置KLに設置した水膨潤性ゴム10の膨潤が完了した後、上方の漏洩位置K1に水膨潤性ゴム10を設置している状況を示している。図5(b)に示すように、水膨潤性ゴム10の設置には、T形オス継手5の天端5Uから漏洩位置K1まで届く長さの挿入棒12を使用する。挿入棒12は鋼棒であり、挿入棒12の下端にはナット14が溶接されている。水膨潤性ゴム10の上部にはネジ13が固定されている。ネジ13にナット14を螺合することにより、水膨潤性ゴム10と挿入棒12とが連結されている。漏洩位置K1に水膨潤性ゴム10を設置した後、挿入棒12の上方にクランプ15を取り付けて、クランプ15をT形オス継手5の天端5Uに引っ掛けることにより水膨潤性ゴム10の設置高さを保持する。水膨潤性ゴム10の膨潤が完了した後には、クランプ15を取り外して、挿入棒12を逆回転してネジ13とナット14との螺合を外す。そして、挿入棒12を回収して再利用する。
ステップS10において、第一空間R1及び第四空間R4へのモルタル7の充填を継続すると、ステップS11において、モルタル7の充填天端がやがて継手3の天端(円形メス継手4の天端4U)に到達してモルタル7の充填が完了する。そして、フローチャートを終了する。テップS10及びS11は、本発明の継手充填工程に相当する。
本実施形態によれば、円形メス継手4の内部空間R0が、第一空間R1と、第二空間R2と、第三空間R3と、第四空間R4とに四分割されている。そして、第一空間R1及び第四空間R4にモルタル7を充填するときに、モルタル7が第二空間R2及び第三空間R3に漏洩する漏洩位置を、モルタル7の充填前に第二空間R2及び第三空間R3の高さ方向において特定すると共に、特定した漏洩位置K1及びKLに、水膨潤性ゴム10を密実に設置する。漏洩位置K1及びKLの特定にあたっては、第一に残存土砂が存在していない第二空間R2及び第三空間R3の各下端(漏洩防止板6の下端6b)を漏洩位置KLとして特定する。第二にモルタル7の充填前にボアホールカメラ11により第一空間R1を高さ方向に視認して、残存土砂が存在している範囲を除いた第二空間R2及び第三空間R3の高さ方向の全範囲のうちで漏洩防止板6が円形メス継手4の内面に密着していない高さ方向の範囲を漏洩位置K1として特定する。
したがって、モルタル7の充填前に、モルタル7が漏洩防止板6の幅方向の各端部6a,6a及び下端6bを経由して第二空間R2及び第三空間R3に漏洩する漏洩位置を特定できるため、モルタル7の漏洩防止対策を必要最小限の範囲に速やかにかつ計画的に実施することが可能である。また、モルタル7の充填前に、漏洩位置に水膨潤性ゴム10を密実に設置することが可能であるため、モルタル7の充填を開始した後に施工が中断されることがほとんどない。これらにより、モルタル7の漏洩にともなう工程の遅延を最小限に抑えることができる。さらに、継手3の高さ方向において、円形メス継手4の内面に漏洩防止板6が密着しているか否かをボアホールカメラ11により視認して記録することができるため、この記録を継手3の止水性が確実に得られていることを立証するための品質記録として活用することも可能である。
また、材料内に水を吸収して膨潤することによって、複雑な形状の空間に合わせて形状を変化させることが可能な水膨潤性ゴム10を漏洩防止材として使用しているため、第二空間R2及び第三空間R3の複雑な形状の内面に水膨潤性ゴム10を密着させて、漏洩位置となる空間を確実に閉塞させることができる。また、水膨潤性ゴム10を真水で養生していることにより、水膨潤性ゴム10の膨潤率を高めて、第二空間R2及び第三空間R3の複雑な形状の内面に水膨潤性ゴム10をより確実に密着させることができる。また、水膨潤性ゴム10の設置に使用する挿入棒12が水膨潤性ゴム10に回転係合により取り付けられているため、挿入棒12を回収して再利用することが可能であり経済的である。
<第二実施形態>
図7及び8に示すように、本実施形態は、第一実施形態において第二空間R2及び第三空間R3に設置した水膨潤性ゴム10を隙間充填用ブラシ20(漏洩防止材)に変更すると共に、第一空間R1及び第四空間R4にモルタル7を充填している最中に、モルタル7が第二空間R2及び第三空間R3に漏洩する漏洩位置を特定する実施形態である。本実施形態における鋼管2、継手3、円形メス継手4、T形オス継手5、漏洩防止板6及びモルタル7は、第一実施形態と同様の構成よりなるため説明を省略する。
図7(a)に示すように、隙間充填用ブラシ20は、煙突掃除に用いられる直径150mm程度のナイロン製のブラシであって、円柱状の立体形状を呈している。この隙間充填用ブラシ20を、隙間充填用ブラシ20よりも断面寸法が小さい第二空間R2及び第三空間R3に押し込むことによって、第二空間R2及び第三空間R3の漏洩位置となる空間が閉塞する。
本実施形態においては、モルタル7の充填に際して、第一空間R1及び第四空間R4の排土及び洗浄を行った結果、モルタル7の充填を開始する前には、第二空間R2及び第三空間R3の残存土砂が存在しており(図示せず)、モルタル7の充填を開始した後に、この残存土砂が脱落又は流出してしまった状況を想定している。そして、第一空間R1及び第四空間R4にモルタル7を充填している最中に、第一空間R1及び第四空間R4に充填するモルタル7が漏洩防止板6の幅方向の各端部6a,6a及び下端6bを経由して第二空間R2及び第三空間R3に漏洩する漏洩位置K1,K2及びKLを特定する(図7示)。そして、特定した漏洩位置K1,K2及びKLに隙間充填用ブラシ20を設置する。なお、本実施形態においては、図7に示すように、位置J1及びJ2の二箇所で漏洩防止板6が円形メス継手4の内面に密着していないものとする。また、本実施形態においては、位置J1及びJ2の視認を行っていない点で第一実施形態と施工方法が異なっている。
図7及び8に基づき、第一空間R1及び第四空間R4にモルタル7を充填するときの施工方法について説明する。図8は、本実施形態における施工方法のフローチャートを示している。継手3の嵌合直後をフローチャートのSTARTとしている。ステップSS1において、第一空間R1及び第四空間R4の排土及び洗浄を行った後、ステップSS2において、第二空間R2及び第三空間R3に残存土砂が存在しているかどうかの確認を行う。ステップSS2は、本発明の残存土砂確認工程に相当する。第二空間R2及び第三空間R3の両方に残存土砂が存在している場合には、ステップSS6に進んで、第一空間R1及び第四空間R4へのモルタル7の充填を開始する。
一方、ステップSS2において、第二空間R2及び第三空間R3のいずれか一方に残存土砂が存在していなかった場合には、ステップSS3に進む。ステップSS3において、残存土砂が存在していない第二空間R2及び第三空間R3の各下端(漏洩防止板6の下端6b)を漏洩位置KLとして特定する。ステップSS3は、本発明の漏洩位置特定工程に相当する。その後、第一実施形態と同様に、ステップSS4において、漏洩位置KLに水膨潤性ゴム10を設置した後、水膨潤性ゴム10を養生する。そして、ステップSS5において、水膨潤性ゴム10の膨潤が完了した後、ステップSS6に進んで、第一空間R1及び第四空間R4へのモルタル7の充填を開始する。ステップSS4及びSS5は、本発明の漏洩防止材設置工程に相当する。ただし、本実施形態においては、ステップSS3、SS4及びSS5を経由することなく、ステップSS2からステップSS6に進むことを想定している。
ステップSS6において、第一空間R1及び第四空間R4へのモルタル7の充填を継続して、ステップSS7において、モルタル7を充填している最中に、モルタル7の充填天端7aが上昇するかどうかの確認を行う。ステップSS7において、モルタル7の充填天端7aが問題なく上昇するときには、モルタル7の充填を継続する。そして、ステップSS8において、モルタル7の充填天端7aがやがて継手3の天端(円形メス継手4の天端4U)に到達してモルタル7の充填が完了する。そして、フローチャートを終了する。
一方、ステップSS7において、モルタル7の充填天端7aが上昇しないことが確認された場合には、ステップSS9において、モルタル7の充填を中断する。そして、ステップSS10において、第二空間R2及び第三空間R3の両下端(漏洩防止板6の下端6b)を漏洩位置KLとして特定する。ここで、漏洩位置KLを特定した理由は、海底面GLよりも上方の第一空間R1にモルタル7を充填することにより発生する継手3内の圧力によって、第二空間R2及び第三空間R3の残存土砂が漏出した可能性があるからである。また、施工順序として隙間充填用ブラシ20の設置は、想定される最下方の漏洩位置から行う必要があるためである。ステップSS10は、本発明の漏洩位置特定工程に相当する。
その後、ステップSS11において、漏洩位置KLに隙間充填用ブラシ20を設置する。図7(a)に示すように、隙間充填用ブラシ20の設置には、第一実施形態において使用した挿入棒12を使用する。挿入棒12、挿入棒12の下端に溶接されるナット14、及び隙間充填用ブラシ20の上部に固定されるネジ13の構成については、第一実施形態と同様であるため説明を省略する。隙間充填用ブラシ20の設置後には、挿入棒12を逆回転してネジ13とナット14との螺合を外す。そして、挿入棒12を回収して再利用する。ステップSS11は、本発明の漏洩防止材設置工程に相当する。
なお、本実施形態においては、ステップSS11を実行する前には、第二空間R2及び第三空間R3の両下端に、他の漏洩防止材が設置されていないため、ステップSS11においては、隙間充填用ブラシ20を第二空間R2及び第三空間R3の両下端(最下方)に設置することができる。仮にステップSS11を実行するときに、第二空間R2及び第三空間R3の各下端に残存土砂が存在している場合や、既に他の漏洩防止材が設置済みの場合には、残存土砂や設置済みの他の漏洩防止材を除去することなく、隙間充填用ブラシ20の設置が可能な第二空間R2及び第三空間R3の最下方の位置に隙間充填用ブラシ20を設置してもよい。
その後、ステップSS12に進んで、第一空間R1及び第四空間R4へのモルタル7の充填を再開する。ステップSS12において、第一空間R1及び第四空間R4へのモルタル7の充填を継続して、ステップSS13において、モルタル7を充填している最中に、モルタル7の充填天端7aが上昇するかどうかの確認を行う。ステップSS13を繰り返し実行している最中に、モルタル7の充填天端7aが上昇しないことが確認された場合には、ステップSS14において、モルタル7の充填を再度中断する。
その後、ステップSS15において、第二空間R2及び第三空間R3におけるモルタル7の充填天端7aと同一の高さを漏洩位置K2として特定する。ここで、漏洩位置K2を特定した理由は、モルタル7が充填可能な流動性を有している材料であることを勘案すると、モルタル7の充填天端7aが上昇しないとき、モルタル7の充填天端7aは、円形メス継手4の内面に漏洩防止板6が密着していない位置J2と同一の高さにあると推定することが妥当であると考えるからである。ステップSS15は、本発明の漏洩位置特定工程に相当する。
その後、ステップSS11において、漏洩位置K2に隙間充填用ブラシ20を設置する(図7(b)示)。そして、ステップSS12に進んで、モルタル7の充填を再度再開し、ステップSS13において、モルタル7の充填天端7aが上昇するかどうかの確認を再度行う。本実施形態においては、ステップSS13を繰り返し実行している最中に、モルタル7の充填天端7aが、図7(b)における位置J1と同一の高さとなったときには、再度ステップSS14に進む。そして、ステップSS15において、第二空間R2及び第三空間R3におけるモルタル7の充填天端7aと同一の高さを漏洩位置K1として特定する。そして、SS11及びSS12を経由して、再度ステップSS13に進む。
再度ステップSS13に進んだときには、モルタル7の充填天端7aは、図7(b)における位置J1を越える高さとなっているため、モルタル7の充填天端7aが問題なく上昇する。ステップSS13は、モルタル7の充填天端7aが継手3の天端(円形メス継手4の天端4U)に到達するまで繰り返し実行される。そして、上述したステップSS8を経由して、フローチャートを終了する。ステップSS12からステップSS13を経由してステップSS8に至る工程は、本発明の継手充填工程に相当する。
本実施形態によれば、第一空間R1及び第四空間R4にモルタル7を充填するときに、モルタル7が第二空間R2及び第三空間R3に漏洩する漏洩位置を、モルタル7の充填中に第二空間R2及び第三空間R3の高さ方向において特定すると共に、特定した漏洩位置K1,K2及びKLに、隙間充填用ブラシ20を密実に設置する。ここで、モルタル7の充填中に、モルタル7の充填天端7aが上昇しなくなった初回には、第二空間R2及び第三空間R3の両下端を漏洩位置KLとして特定する。モルタル7の充填中に、モルタル7の充填天端7aが上昇しなくなった二回目には、モルタル7の充填天端7aと同一の高さを漏洩位置K2として特定する。モルタル7の充填中に、モルタル7の充填天端7aが上昇しなくなった三回目には、モルタル7の充填天端7aと同一の高さを漏洩位置K1として特定する。
したがって、モルタル7の充填中に、モルタル7が漏洩防止板6の幅方向の各端部6a,6a及び下端6bを経由して第二空間R2及び第三空間R3に漏洩する漏洩位置を、隙間充填用ブラシ20を設置する施工順序に合わせて順次確実に特定できるため、モルタル7の漏洩防止対策を必要最小限の範囲に速やかにかつ計画的に実施することが可能である。よって、モルタル7の充填が中断される時間を最小限に抑えて、モルタル7の漏洩にともなう工程の遅延を最小限に抑えることができる。
<その他の実施形態>
本発明の鋼管矢板の継手充填材の施工方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができることは言うまでもない。
例えば、第一及び第二実施形態においては、鋼管矢板1の継手3として、円形メス継手4とT形オス継手5とを嵌合させたP−T継手と呼ばれる継手3を使用しているが、継手の構造はこれに限定されない。図9(b)に示したように、角形メス継手41とT形オス継手51とを嵌合させたL−T継手と呼ばれる継手31において、第一及び第二実施形態を実施することもできる。
また、第一及び第二実施形態においては、継手充填材としてモルタル7を用いているが、継手充填材はこれに限定されない。例えば、継手充填材としてアスファルトを用いることもできる。継手充填材としてアスファルトを用いる場合には、アスファルトが100℃以上の高温で充填されることから、100℃以上の耐熱性を有する漏洩防止板及び漏洩防止材を用いる必要がある。
また、第一実施形態においては、漏洩防止材として水膨潤性ゴム10を使用し、第二実施形態においては、漏洩防止材として隙間充填用ブラシを使用しているが、漏洩防止材はこれらに限定されない。例えば、漏洩防止材として、スポンジ、袋体(モルタルジャケット)へのモルタル充填、袋体へ流体を充填して膨らます簡易パッカー、布(ウエス)、布等を空間に詰めた上部に瞬結性グラウトなどを適用することができる。
また、第一実施形態においては、図3に示すように、第二空間R2及び第三空間R3の同一高さのウェブ部5aの両面側に一対の水膨潤性ゴム10を設置しているが、水膨潤性ゴム10の設置は一対に限定されない。第一実施形態においては、ボアホールカメラ11を使用することによって、漏洩防止板6の幅方向の各端部6a,6aのうちのいずれの側が円形メス継手4の内面に密着していないのかを視認できる。したがって、第二空間R2及び第三空間R3のいずれの側が漏洩位置となっているのかを特定することができる。この場合、ウェブ部5aの両面側のうちの漏洩位置が特定された一面側のみに水膨潤性ゴム10を設置することができる。これにより、漏洩防止材の設置コストを縮減することができる。
また、第一空間R1及び第四空間R4にモルタル7を充填する前に、モルタル7が第二空間R2及び第三空間R3に漏洩する漏洩位置を特定する第一実施形態と、モルタル7を充填している最中に、モルタル7が第二空間R2及び第三空間R3に漏洩する漏洩位置を特定する第二実施形態とを組み合わせることが可能である。第一実施形態と第二実施形態とを組み合わせる場合には、図6に示したステップS10以降の工程を図8に示したステップSS6以降の工程に置き換えればよい。このような組み合わせを行うことによって、モルタル7を充填する前の漏洩防止対策と、モルタル7を充填している最中の漏洩防止対策とが併用されるため、漏洩防止対策の確実性がより向上する。