JP5911800B2 - 高分子検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、微小孔を備えた基体、及び基体の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、微生物又は細胞体をトラップする微小吸引孔を備えた基体、及び基体の製造方法に関する。また、より詳しくは、本発明は、脂質膜を形成する微小孔を備えた基体、及び基体の製造方法に関する。
本願は、2010年7月16日に、日本に出願された特願2010−161870号及び2010年9月30日に、日本に出願された特願2010−221440号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
生物から採取した細胞や培養細胞を物理的に捕捉し、細胞の電気生理学的測定を行う方法として、パッチクランプ法が知られている。細胞を物理的に捕捉する従来方法として、樹脂製のウェル108の側面に設けた孔で細胞101を吸引する方法(図45)が知られている(非特許文献1)。非特許文献1には、孔で捕捉した細胞の振る舞いを装置の裏面から高倍率な顕微鏡を用いて直接観察する方法、および孔で捕捉した細胞の細胞膜等を電気生理学的に測定することが可能な装置が開示されている。これらは、新たな生物的な特性を解明する手段として有効になりつつある。
一般に、パッチクランプ法においては、前記孔の吸着部(開口部)と細胞膜とを密着させて、1ギガオーム以上の強固なシール(高抵抗性シール)を達成することが要求される。このような高抵抗性シールを形成するためには、細胞膜と吸着部とのシールを安定させる必要があり、吸着部の口径の微細化、および段差や継ぎ目の無い孔形状が求められる。
非特許文献1に開示された細胞捕捉用装置は、樹脂(PDMS)で形成される2つの部材を貼り合わせて、その貼り合わせの界面に微細孔を設けた基体を有する。前記基体には流体を溜める空間が設けられている。この空間は、前記基体を打抜く(punching)ことによって形成されている。この打抜きの際、予め基体内に形成されていた前記微細孔を前記空間に開口させる。
前記細胞捕捉用装置は、樹脂を打抜く手法によって製造されているため、細胞を捕捉するための前記微細孔の吸着部(開口部)の形状を、所望の形状に加工することが困難である。また、基体に複数の吸着部(開口部)を形成する場合は、複数の吸着部(開口部)の形状を均一に形成することが困難である。また、前記基体が樹脂であるため、短径2μm程度よりも微小な孔を形成することが難しい。さらに、前記微細孔は2つの部材を貼り合わせて形成されているため、前記吸着部にも2つの部材を貼り合わせた継ぎ目や段差が存在する。このような継ぎ目や段差があると、細胞を安定に捕捉し難いことがある。つまり、前記細胞捕捉用装置に形成される微細孔や吸着部の大きさや形状は精度が低いため、所望どおりに細胞を捕捉することが難しいという問題がある。
また、電気生理学的測定を行う場合においては、細胞膜と吸着部とのシールが不安定となるため、高精度な電気生理学的測定が難しい、という問題がある。
さらに、細胞よりも更にサイズの小さな微生物(短辺がナノオーダー)を捕捉するためには、前記微細孔の吸着部(開口部)における短辺の径を、少なくともナノオーダーで高精度に形成する必要がある。しかしながら、非特許文献1は複数の樹脂基板110,112を貼り合わせて構成しているため、ナノオーダーで吸着部(開口部)を加工することが困難である。
一方、細胞中に極微量しか含まれないたんぱく質などの高分子を検出する手法として、従来ウエスタンブロッティングや特許文献1の手法が知られている。しかしながら、タンパクなどの移動距離は、分子量によってその移動距離は異なるが、おおよそ100nm〜350nm程度と極めて短い。そのため、検出領域の体積が大きいウエスタンブロッティングでは、抗体が極微量のたんぱく質と接触し補足するには多量の細胞が必要である。一方、特許文献1の手法では、流路がPDMSを含む側壁であるため、流路短径をナノオーダーで加工するのは困難である。そのため、ミクロンオーダーの短径を有する流路の解析成分(検出部)に極微量のたんぱく質が接触する確率は低く、所望の量のたんぱく質を得るには多量の細胞が必要である。また、特許文献1に開示されている装置は、前記流路が2つの部材を貼り合わせて形成されているため、流路インプット端にも2つの部材を貼り合わせた継ぎ目や段差が存在し、細胞と流路インプット端とのシールが不安定となる。そのため、細胞を吸引した際に、細胞と流路との間に隙間ができ、極微量のたんぱく質が流路内に侵入せず、外部に漏れ出る可能性がある。上述のように、いずれの手法においても多量の細胞を必要とし、患者等からの細胞片を採取しないと検出することができないという課題がある。
特表2008−539711
Adrian Y. Lau, et al. Lab Chip, 2006, 6, 1510-1515
電気生理学的測定を安定的に行い、かつ精度を高めるためには、細胞を捕捉する孔の面積を小さくすることが有効となりうる。このため、従来の孔の口径(2〜4μm程度)よりも小さい口径を有する孔を備えた装置、及び前記装置の製造方法の開発が望まれている。
また、従来の孔の口径(2〜4μm程度)よりも小さい口径を有する孔において、細胞膜と同様な脂質二重膜を人工的に再構成できる装置、及び前記装置の製造方法の開発が望まれている。
また、上記のように、微生物又は細胞等の微粒子を捕捉する用途や、脂質膜を形成する用途等に使用できる、微小孔を備えた装置、及び前記装置の製造方法の開発が望まれている。
一方、少量の細胞などから効率よく、微量しか含まれないたんぱく質などの高分子を定量的に検出するために、ナノ流路を有し、流路インプット端に継ぎ目がなく、また、蛍光標識が観察できるように透明な基材で形成される装置及び前記装置の製造方法の開発が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、微生物又は細胞を捕捉する孔が単一基材によって形成され、捕捉された微生物又は細胞の観察が容易な微生物又は細胞を捕捉するための基体、及び基体の製造方法を提供する。
また、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、脂質膜を形成する孔が単一基材によって形成され、脂質膜を容易に形成できるとともに、形成した脂質膜を安定に保つことができる、脂質膜を形成するための基体、及び基体の製造方法を提供する。
また、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、微生物又は細胞等の微粒子等の微粒子を捕捉することができ、脂質膜を形成することができる等の複数の用途に利用可能な、微小孔を備えた基体、及び基体の製造方法を提供する。
本発明の第1態様は、微生物又は細胞を捕捉するための基体であって、基材と、微生物又は細胞を含む流体を流入させる空間と、前記空間と前記基材の外部とを連通する微小吸引孔と、を含み、前記空間は前記基材内に設けられ、前記基材のうち、少なくとも前記微小吸引孔を構成する部位は、単一の部材で形成される。
前記第1態様においては、前記単一の部材が、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち、少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
前記第1態様においては、前記単一の部材がシリコン、ガラス、石英、又はサファイアで形成されていることが好ましい。
前記第1態様においては、前記微小吸引孔が、前記基体にレーザーを照射して改質された部分を、さらにエッチング処理で除去して形成されることが好ましい。
本発明の第2態様は、前記第1態様に記載の、微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法であって、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーを、前記単一の部材の前記微小吸引孔となる領域に照射することによって、前記領域に改質部を形成する工程A1と、前記単一の部材に、前記空間を形成する工程A2と、前記単一の部材から前記改質部をエッチングによって除去する工程A3と、を少なくとも有する。
本発明の第3態様は、前記第1態様に記載の、微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法であって、前記単一の部材に、前記空間を形成する工程B1と、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーを、前記単一の部材の前記微小吸引孔となる領域に照射することによって、前記領域に改質部を形成する工程B2と、前記単一の部材から前記改質部をエッチングによって除去する工程B3と、を少なくとも有することが好ましい。
前記第2態様又は第3態様においては、前記レーザー光の照射強度が改質部に周期構造が形成されうるレーザー照射強度の下限値以下で、かつ、改質部のエッチング耐性を低下させうるレーザー照射強度の下限値以上に設定されていることが好ましい。
前記第2態様又は第3態様においては、前記レーザー光がレンズによって集光されることが好ましい。
本発明の第4態様は、脂質膜を形成するための基体であって、基材と、脂質を含む液体を流入させる空間と、前記空間と前記基材の外部とを連通する微小孔と、を含み、前記空間は前記基材内に設けられ、前記基材のうち、少なくとも前記微小孔を構成する部位は、単一の部材から形成される。
前記第4態様においては、前記単一の部材が、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
前記第4態様においては、前記単一の部材がシリコン、ガラス、石英、又はサファイアで形成されていることが好ましい。
前記第4態様においては、前記微小孔が、前記基体にレーザーを照射して改質された部分を、さらにエッチング処理で除去して形成されることが好ましい。
本発明の第5態様は、前記第4態様に記載の、脂質膜を形成するための基体の製造方法であって、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーを、前記単一の部材の前記微小孔となる領域に照射することによって、前記領域に改質部を形成する工程A1と、前記単一の部材に、前記空間を形成する工程A2と、前記単一の部材から前記改質部をエッチングによって除去する工程A3と、を少なくとも有する。
本発明の第6態様は、前記第4態様に記載の、脂質膜を形成するための基体の製造方法であって、前記単一の部材に、前記空間を形成する工程B1と、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーを、前記単一の部材の前記微小孔となる領域に照射することによって、前記領域に改質部を形成する工程B2と、前記単一の部材から前記改質部をエッチングによって除去する工程B3と、を少なくとも有することが好ましい。
前記第5態様又は第6態様においては、前記レーザー光の照射強度が改質部に周期構造が形成されうるレーザー照射強度の下限値以下で、かつ、改質部のエッチング耐性を低下させうるレーザー照射強度の下限値以上に設定されていることが好ましい。
前記第5態様又は第6態様においては、前記レーザー光がレンズによって集光されることが好ましい。
本発明の第7態様は、基体であって、基材と、流体を流入させる空間と、前記空間と前記基材の外部とを連通する微小孔と、を含み、前記空間は前記基材内に設けられ、前記基材のうち、少なくとも前記微小孔を構成する部位は、単一の部材から形成される。
前記第7態様においては、前記単一の部材が、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
前記第7態様においては、前記単一の部材がシリコン、ガラス、石英、又はサファイアで形成されていることが好ましい。
前記第7態様においては、前記微小孔が、前記基体にレーザーを照射して改質された部分を、さらにエッチング処理で除去して形成されることが好ましい。
本発明の第8態様は、前記第7態様に記載の基体の製造方法であって、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーを、前記単一の部材の前記微小孔となる領域に照射することによって、前記領域に改質部を形成する工程A1と、前記単一の部材に、前記空間を形成する工程A2と、前記単一の部材から前記改質部をエッチングによって除去する工程A3と、を少なくとも有する。
本発明の第9態様は、前記第7態様に記載の基体の製造方法であって、前記単一の部材に、前記空間を形成する工程B1と、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーを、前記単一の部材の前記微小孔となる領域に照射することによって、前記領域に改質部を形成する工程B2と、前記単一の部材から前記改質部をエッチングによって除去する工程B3と、を少なくとも有することが好ましい。
前記第8態様又は第9態様においては、前記レーザー光の照射強度が改質部に周期構造が形成されうるレーザー照射強度の下限値以下で、かつ、改質部のエッチング耐性を低下させうるレーザー照射強度の下限値以上に設定されていることが好ましい。
前記第8態様又は第9態様においては、前記レーザー光がレンズによって集光されることが好ましい。
本発明の第10態様は、高分子を検出する装置であって、基材と、空間と、前記空間と前記基材の外部とを連通するナノ流路と、含み、前記空間は前記基材内に設けられ、前記基材のうち、少なくとも前記ナノ流路を構成する部位は単一の部材で構成されており、前記ナノ流路は空間の側面に略水平に配置されることが好ましい。
前記第10態様においては、前記ナノ流路の短径が0.05〜1.00μmの範囲であることが好ましい。
前記第10態様においては、前記ナノ流路の長径が1〜6μmの範囲であることが好ましい。
前記第10態様においては、前記ナノ流路の総長が20〜50000μmの範囲であることが好ましい。
前記第10態様においては、前記ナノ流路の内壁に高分子を検出するための解析成分が配置されていることが好ましい。
前記第10態様においては、前記ナノ流路の内壁と前記解析成分との間に吸着成分が配置されていることが好ましい。
本発明の微生物又は細胞を捕捉するための基体は、基材の外部から微小吸引孔を吸引することによって、微生物又は細胞を含む流体が流入された空間に開口する、微小吸引孔の一端からなる吸着部に、前記微生物又は細胞を吸着して捕捉することを可能とする。前記吸着部は、単一の部材で形成されるため、継ぎ目がなく、段差を実質的になくすことができる。このため、トラップした微生物又は細胞を前記吸着部に十分に密着し、前記微生物又は細胞がトラップされた状態を安定に継続することができる。したがって、前記微生物又は細胞の観察が容易であり、電気生理学的測定を行う際には、高精度の測定が可能である。
前記単一の部材が、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち、一般に使用される加工用レーザー光線の波長(0.1μm〜10μm)の少なくとも一部を透過させる場合、前記レーザー光線を照射して、前記単一の部材を改質して加工することができる。また、前記単一の部材が前記波長の光のうち少なくとも一部の可視光線(0.36μm〜0.83μm)を透過させる場合には、前記単一の部材を通して、前記トラップした微生物又は細胞を、顕微鏡等を用いて光学的に観察することがより容易になる。さらには、前記単一の部材が前記波長の光のうち少なくとも一部の紫外光あるいは可視光線(0.1μm〜0.83μm)を透過させる場合には、蛍光色素によって染色された微生物又は細胞内の組織を蛍光観察することができる。
ここで、「前記単一の部材が、特定波長の光を透過させる」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てのことをいう。
前記単一の部材がシリコン、ガラス、石英、又はサファイアで形成される部材である場合には、前記微小吸引孔の加工精度をさらに高めることができ、前記吸着部をナノオーダーの口径で形成することが可能である。このため、前記トラップした細胞と前記吸着部との間で高抵抗性シールを形成することが、比較的容易である。この際、前記微小吸引孔を有する前記吸着部がガラス、石英、サファイアで形成される場合、絶縁性を付与する処理を行う工程を必要としない。高抵抗性シールを形成し、トラップした細胞の電気生理学的測定を行う場合は、前記細胞の内外の電位差(膜電位)等を測定する方法を、当該基体に適宜用いて測定することも可能である。前記吸着部を形成する材料がガラス、石英である場合、トラップした細胞の電気生理学的測定を行う場合は、前記細胞と前記吸着部とのギガオームオーダーの高抵抗シールが実現されるため、より高精度の測定が可能である。
前記微小吸引孔を形成する方法が、レーザー照射による基材の改質及びエッチング処理による改質部の除去を行う方法である場合、基材に微小吸引孔を精度よく、且つ高密度で配置した基体を形成することができる。
本発明の微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法は、単一の部材に、微小吸引孔を形成し、前記微小吸引孔の一端を、前記基体に内在する空間に連通させることを可能とする。また、前記微小吸引孔の一端からなる前記吸着部を、ナノオーダーの口径サイズで形成することも可能とする。
本発明の脂質膜を形成するための基体は、脂質を含む液体を流入させる空間に露呈する、微小孔の開口部において、脂質膜を形成することを可能とする。さらに、前記微小孔内の流体を介して、形成した脂質膜に圧力を加える、或いは圧力を減じる操作をすること。この操作により、脂質膜の安定性を高めたり、脂質膜の厚さや形状を制御したりできる。前記開口部は、単一の部材で形成されるため、継ぎ目がなく、段差を実質的に無くすことができる。このため、形成した脂質膜を安定に維持できる。したがって、前記脂質膜の観察が容易であり、前記脂質膜にイオンチャネルやイオンポンプ等の膜タンパク質を導入して電気生理学的測定を行う際には、高精度の測定が可能である。
前記単一の部材が、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち、一般に使用される加工用レーザー光線の波長(0.1μm〜10μm)の少なくとも一部を透過させる場合、前記レーザー光線を照射して、前記単一の部材を改質して加工することができる。また、前記単一の部材が前記波長の光のうち少なくとも一部の可視光線(0.36μm〜0.83μm)を透過させる場合には、前記単一の部材を通して、前記形成した脂質膜を、顕微鏡等を用いて光学的に観察することがより容易である。さらには、前記単一の部材が前記波長の光のうち少なくとも一部の紫外光あるいは可視光線(0.1μm〜0.83μm)を透過させる場合には、蛍光色素によって標識された膜タンパク質等の生体分子の前記脂質膜中における挙動を蛍光観察することができる。
ここで、「前記単一の部材が、特定波長の光を透過させる」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てのことをいう。
前記単一の部材がシリコン、ガラス、石英、又はサファイアで形成される部材である場合には、前記微小孔の加工精度をさらに高めることができ、前記開口部をナノオーダーの口径で形成することが可能である。このため、前記形成した脂質膜と前記開口部との間で高抵抗性シールを形成することが、比較的容易である。この際、前記微小孔の開口部を形成する材料がガラス、石英、サファイアである場合、絶縁性を付与する処理を行う工程を必要としない。高抵抗性シールを形成し、脂質膜に導入した膜タンパク質等の電気生理学的測定を行う場合は、前記脂質膜の内外の電位差(膜電位)等を測定する方法を、前記基体に適宜用いて測定することも可能である。前記開口部を形成する材料がガラス、石英である場合、形成した脂質膜に導入した膜タンパク質等の電気生理学的測定を行う場合は、前記脂質膜と前記開口部とのギガオームオーダーの高抵抗シールが実現されるため、より高精度の測定が可能である。
前記微小孔を形成する方法が、レーザー照射による基材の改質及びエッチング処理による改質部の除去を行う方法である場合、基材に微小孔を精度よく、且つ高密度で配置した基体を形成することができる。
本発明の脂質膜を形成するための基体の製造方法は、単一の部材に、微小孔を形成し、前記微小孔の一端を、前記基体に内在する空間に連通させることを可能とする。また、前記微小孔の一端からなる前記開口部を、ナノオーダーの口径サイズで形成することも可能とする。
また、本発明の基体、及び前記製造方法は、微生物又は細胞等の微粒子を捕捉すること、脂質膜を形成すること等の複数の用途に利用可能な、微小孔を備えた基体を提供する。
本発明の基体が微粒子を捕捉する用途で用いられる場合の効果は、次の通りである。
本発明の基体は、基材の外部から微小孔(微小吸引孔)を吸引することによって、微粒子を含む流体が流入された空間に開口する、微小孔(微小吸引孔)の一端からなる吸着部に、前記微粒子を吸着して捕捉することを可能とする。前記吸着部は、単一の部材で形成されるため、継ぎ目がなく、段差を実質的に無くすことができる。このため、トラップした微粒子を前記吸着部に十分に密着し、微粒子がトラップされた状態を安定に継続することができる。したがって、前記微粒子の観察が容易である。さらに、前記微粒子が微生物又は細胞である場合、その電気生理学的測定を高精度に行うことが可能である。
前記単一の部材が、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち、一般に使用される加工用レーザー光線の波長(0.1μm〜10μm)の少なくとも一部を透過させる場合、前記レーザー光線を照射して、前記単一の部材を改質して加工することができる。また、前記単一の部材が前記波長の光のうち少なくとも一部の可視光線(0.36μm〜0.83μm)を透過させる場合には、前記単一の部材を通して、前記トラップした微粒子を、顕微鏡等を用いて光学的に観察することがより容易である。さらには、前記単一の部材が前記波長の光のうち少なくとも一部の紫外光あるいは可視光線(0.1μm〜0.83μm)を透過させる場合には、蛍光色素によって標識した微粒子を蛍光観察することができる。
ここで、「前記単一の部材が、特定波長の光を透過させる」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てのことをいう。
前記単一の部材がシリコン、ガラス、石英、又はサファイアで形成される部材である場合には、前記微小孔(微小吸引孔)の加工精度をさらに高めることができ、前記吸着部をナノオーダーの口径で形成することが可能である。このため、前記トラップした細胞(微粒子)と前記吸着部との間で高抵抗性シールを形成することが、比較的容易である。この際、前記微小孔(微小吸引孔)を有する前記吸着部を形成する材料がガラス、石英、サファイアである場合、絶縁性を付与する処理を行う工程を必要としない。高抵抗性シールを形成し、トラップした細胞(微粒子)の電気生理学的測定を行う場合は、前記細胞の内外の電位差(膜電位)等を測定する方法を、前記基体に適宜用いて測定することも可能である。前記吸着部を形成する材料がガラス、石英である場合、トラップした細胞(微粒子)の電気生理学的測定を行う場合は、前記細胞と前記吸着部とのギガオームオーダーの高抵抗シールが実現されるため、より高精度の測定が可能である。
前記微小孔(微小吸引孔)を形成する方法が、レーザー照射による基材の改質及びエッチング処理による改質部の除去を行う方法である場合、基材に微小孔(微小吸引孔)を精度よく、且つ高密度で配置した基体を形成することができる。
本発明の基体の製造方法は、単一の部材に、微小孔(微小吸引孔)を形成し、前記微小孔(微小吸引孔)の一端を、前記基体に内在する空間に連通させることを可能とする。また、前記微小孔(微小吸引孔)の一端からなる前記吸着部を、ナノオーダーの口径サイズで形成することを可能とする。
本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 図1のA−A線に沿う断面図である。 図2の断面図において、微生物又は細胞体が吸着部にトラップされた様子を示す模式図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 図10のA−A線に沿う断面図である。 図11の断面図において、微生物又は細胞体が吸着部にトラップされた様子を示す模式図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 図13のA−A線に沿う断面図である。 図13の断面図において、微生物又は細胞体が吸着部にトラップされた様子を示す模式図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 図1のA−A線に沿う断面図である。 図2の断面図において、微生物又は細胞体が吸着部にトラップされた様子を示す模式図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す概略斜視図である。 図6のA−A線に沿う断面図である。 図7の断面図において、微生物又は細胞体が吸着部にトラップされた様子を示す模式図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す概略斜視図である。 図11のA−A線に沿う断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す概略斜視図である。 図15のA−A線に沿う断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す概略上面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す概略上面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す概略上面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例を示す概略上面図である。 本発明にかかる細胞等に含まれる微量なたんぱく質等の高分子を検出するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 図36のA−A線に沿う断面図である。 図37の断面図において、細胞等が吸着部に捕捉された様子を示す模式図である。 図37の断面図において、細胞等がナノ流路内に充填された様子を示す模式図である。 本発明にかかる細胞等に含まれる微量なたんぱく質等の高分子を検出するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる細胞等に含まれる微量なたんぱく質等の高分子を検出するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 レーザー照射方法Sを示す模式的な斜視図である。 レーザー照射エネルギーと形成される改質部(酸素欠乏部)との関係を模式的に示す図である。 レーザー照射エネルギーと形成される改質部(酸素欠乏部)との関係を模式的に示す図である。 レーザー照射エネルギーと形成される改質部(酸素欠乏部)との関係を模式的に示す図である。 レーザー照射エネルギーと形成される改質部(酸素欠乏部)との関係を模式的に示す図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 従来のパッチクランプ法で使用されている装置構成の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 図46のA−A線に沿う断面図である。 本発明にかかる基体における脂質膜の形成方法の一例を示す模式的な断面図である。 本発明にかかる基体における脂質膜の形成方法の一例を示す模式的な断面図である。 本発明にかかる基体における脂質膜の形成方法の一例を示す模式的な断面図である。 本発明にかかる基体における脂質膜の形成方法の一例を示す模式的な断面図である。 本発明にかかる基体における脂質膜の形成方法の一例を示す模式的な断面図である。 本発明にかかる基体における脂質膜の形成方法の一例を示す模式的な断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的斜視図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 図55のA−A線に沿う断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 図57のA−A線に沿う断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 図59のA−A線に沿う断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 図59のA−A線に沿う断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 図59のA−A線に沿う断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す模式的な斜視図である。 図59のA−A線に沿う断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す概略上面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す概略上面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す概略上面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例を示す概略上面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 レーザー照射方法Sを示す模式的な斜視図である。 レーザー照射エネルギーと形成される改質部(酸素欠乏部)との関係を模式的に示す図である。 レーザー照射エネルギーと形成される改質部(酸素欠乏部)との関係を模式的に示す図である。 レーザー照射エネルギーと形成される改質部(酸素欠乏部)との関係を模式的に示す図である。 レーザー照射エネルギーと形成される改質部(酸素欠乏部)との関係を模式的に示す図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の製造方法の一例を示す概略断面図である。
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
<微生物又は細胞を捕捉するための基体の第一実施形態>
[基体10A]
図1は、本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体(以下では、単に「基体」と呼ぶことがある。)の第一実施形態である基体10Aの斜視図である。図2及び3は、図1のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体10Aは微生物又は細胞Tをトラップする微小吸引孔1を備えた基体である。基体10Aには、基材4内に設けられ、微生物又は細胞Tを含む流体Rを流入させる空間(ウェル2)と、ウェル2と基材4の外部とを連通する微小吸引孔1とを含み、基材4のうち、少なくとも微小吸引孔1を構成する部位は、単一の部材で形成される。
基体10Aでは、基材4の上面側にウェル2が設けられている。前記ウェル2が、前記微生物又は細胞Tを流入させる空間を構成している。
ウェル2の側面2aに、微小吸引孔1の第1端部1aが露呈する吸着部Sが形成される。ウェル2の上面又は下面2bの少なくとも一部分は、吸着部Sにトラップされた微生物又は細胞Tを光学的に観察できるように、開口するか或いは透明な部材(不図示)で構成される。また、基体10Aの、少なくとも微小吸引孔1を構成する部位は、単一の部材で形成される。
このようにウェル2の側面2aに微小吸引孔1が開口していると、基材のウェル2の下面2bまたは上面から観察した際に、微小吸引孔1と観察対象物が重ならないため、微生物又は細胞Tを容易に観察することができる。
捕捉した微生物又は細胞を基材の下面から観察する場合、観察対象と対物レンズとの距離(ワーキングディスタンス)を調整して観察対象物に焦点を合わせる。しかしながら、基材下面と観察対象物との距離が、観察するのに必要とされるワーキングディスタンスより大きい場合、観察対象物に焦点を結ぶことができない。その様な事態を避けるため、基材下面を研磨などして基材厚さを薄くし、基材下面と観察対象物との距離を短くすることができる。しかしながら、ウェルの下面2bに開口する微小吸引孔を形成した場合、ウェルの下面2bと基材下面との間に微小吸引孔が存在するため、基材下面を研磨などして基材を薄くすることが難しい場合がある。したがって基体10Aのように、微小吸引孔はウェルの側面2aに開口している方が好ましい。
本発明において、観察対象である微生物又は細胞Tを含む流体Rは特に制限されず、例えば血液、細胞培養液、飲料用液体、河川水等が挙げられる。また、黴等を含む空気も流体Rに含まれる。
ここで「前記空間に流体Rを流入させる」とは、前記空間の外部から前記空間に流体Rを入れることを意味する。流入された流体Rは、前記空間に留まって滞留(又は完全に静止)してもよいし、前記空間の外へ流出してもよい。後者の場合、連続的に流体Rを前記空間に流入させることによって、流体Rの流れが前記空間において生じる。このことは、本発明にかかる基体の全てに適用される。
図1に示す基体10Aにおいては、前記単一の部材は、微小吸引孔1を構成するだけでなく、基材4全体を構成している。
前記単一の部材の材料としては、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小吸引孔1を形成する際に、加工性に優れた材料であるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。
更には、前記単一の部材の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に捕捉した微生物又は細胞Tを観察する場合、上記の材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、前記単一の部材の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、前記単一の部材の材料は、加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。このようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで、改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、捕捉した微生物又は細胞Tを、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図1では、基材4を構成する単一の部材は透明なガラス基板である。
図2及び3に示すように、微小吸引孔1はウェル2と基材4の外部とを連通する。微小吸引孔1の第1端部1aはウェル2の側面2aに露呈し(開口し)、吸着部Sをなす。微小吸引孔1の第2端部1bは基材4の側面に露呈しており、第1端部とは反対の位置に設けられた端部である。
本発明において、微小吸引孔1が前記空間(ウェル2)と基材4の外部とを連通する際、図1の基体10Aように微小吸引孔1の第2端部1bが基材4の側面(外部)に露呈し、開口しても良い。さらに、例えば後述する基体(図28)における微小吸引孔31αのように、微小吸引孔31αの第2端部が、第一流路33αに開口し、その第一流路33αを介して、基材34の外部へ連通しても良い。また、外部と連通する流路は第一流路33αに限定されず、その他の経路(例えば流路、ウェル等)を介して、第2端部が基材34の外部へ連通してもよい。
ここで説明した「前記空間と前記基材の外部とを連通する微小吸引孔」の意味は、本発明にかかる基体の全てに適用される。
基材4の外部に露呈する、微小吸引孔1の第2端部1b側から、ウェル2内の流体Rを吸引することによって、流体Rに含まれる微生物又は細胞を、吸着部Sに捕捉することができる。前記吸引の動力は特に制限されないが、例えばシリンジやポンプ等の吸引部(不図示)を微小吸引孔1の第2端部1bに接続することによって供給することができる。
微小吸引孔1は、単一のガラス基板4に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を持たない貫通孔である。当然に、微小吸引孔の端部における吸着部Sについても、継ぎ目や貼り合わせ面は存在しない。このため、微生物又は細胞Tと吸着部Sとの密着力を十分に高められる。また、微小吸引孔1及び微小吸引孔1の周辺部は、単一のガラス基板4に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を持たない貫通孔であるため、前記ガラス基板4の変形や薬液によるダメージなどから、貼り合わせ面における剥離や破損が生じない。よって、前記ガラス基板4を、加熱消毒や薬液消毒を繰り返して行ったとしても、前記ガラス基板4が破損することがない。これは、日常的に加熱消毒や薬液消毒を行うことが必要とされる、微生物又は細胞を捕捉する基体にとって、特に優れた特徴であるといえる。更には、微小吸引孔1に近い位置において屈折率差が生じないので、吸着部Sからの光をより集光させ易い。そのため、捕捉された微生物又は細胞を、容易に観察することができる。ここで「吸着部S」とは、ウェル2の側面2aにおける、微生物又は細胞Tが接触若しくは近接する領域をいう。
吸着部Sを構成する、微小吸引孔1の第1端部1aの、ウェル2の側面2aにおける孔のその直径が0.02μm〜5μmの範囲であることが好ましい。その中でも、細胞よりもサイズの小さい微生物に対しては、直径が0.02〜0.8μmの範囲であることがより好ましい。楕円又は略楕円の場合には、前記孔の短径(最も短い口径)が0.02μm〜5μmの範囲であれば、微生物又は細胞Tをトラップすることができる。つまり、前記孔の短径は、微生物又は細胞Tが微小吸引孔1を通り抜けることができない程度にすればよい。例えば赤血球細胞(6〜8μm)をトラップする場合には、前記短径を1μm程度にすればよく、納豆菌(枯草菌;0.7〜2μm)をトラップする場合には、前記短径を0.2μm程度にすればよい。
前記短径の範囲としては、0.02μm〜2μmであることが好ましい。その中でも、細胞よりもサイズの小さい微生物の捕捉のためには、直径が0.02〜0.8μmの範囲であることがより好ましい。
上記範囲の下限値未満であると、吸着部Sの吸引力が弱すぎて微生物又は細胞Tをトラップすることができない恐れがある。上記範囲の上限値超であると、微生物又は細胞Tが、微小吸引孔11を通り抜けてしまい、トラップできない恐れがある。
一方、前記孔の長径(最も長い口径)は、トラップする微生物又は細胞Tの大きさによって適宜調整すればよく、例えば0.2μm〜10μmの範囲であることが挙げられる。さらに電気生理学的な測定を行う場合には、長径を細胞や微生物のサイズよりも小さくすることが好ましく、例えば0.2〜5μmの範囲であることが挙げられる。
前記孔の孔径の短辺をナノオーダーで高精度に加工することにより、細胞よりも更にサイズの小さな微生物を捕捉することが可能となり、従来集団として観察されていた微生物を単独あるいは数匹のみで観察することが可能となる。その結果、今まで解明されてこなかった微生物の様々な生体的な特性を確認する手段となりうる。さらに孔の吸着部の径を微小化することにより、細胞の電気生理学的特性を測定する際に、細胞膜と吸着部との安定したシール性が実現されるため、電気生理学的特性の測定を安定して行うことが可能である。
図2及び3において、微小吸引孔1は、ウェル2の側面2aに対して略垂直となるように形成されている。しかし、必ずしも略垂直である必要はなく、基体10Aの設計に合わせて、単一のガラス基板4において自由に配置可能である。
更には微小吸引孔1の第1端部1aに近い位置の口径を微小吸引孔1の口径よりもわずかに広げて加工することも可能である。このとき微生物又は細胞Tの一部が微小吸引孔1の第1端部に入り込んだ状態で捕捉が可能となるため、ウェル2に流れがあるときでもより安定して長時間の捕捉が可能となる。ここではウェル2に対して説明をしているが、後述する第二流路22を有する構造等においても適用される。
微小吸引孔1は、基体10Aに複数配置されていてもよい。各々の微小吸引孔1に対して吸着部Sが各々備わるため、複数の微生物又は細胞Tをトラップすることができる。
微小吸引孔1を複数配置する場合、隣り合う微小吸引孔1同士の間隔が、捕捉する微生物又は細胞Tの大きさを考慮して設けられることが好ましい。例えば、大きさが3μm程度の微生物又は細胞Tを捕捉する場合は、微小吸引孔1同士の間隔を、6μm以上とする。その結果、捕捉した複数の微生物又は細胞T同士が近接しないため、観察や電気生理学的測定を容易に行うことができる。
一つのウェル2に複数の微小吸引孔1が配置されるとき、一つの微小吸引孔1の第2端部1b側にそれぞれ独立したシリンジやポンプ等の吸引部(不図示)を接続することによって、微小吸引孔1の吸引を個別に制御することが可能である。そのため、微小吸引孔1による微生物あるいは細胞Tの捕捉を独立して制御出来る。
基材4の材料がシリコン、ガラス、石英、又はサファイアなどであると、それらの材料は加工性に優れるので、複数の微小吸引孔1を密集させて配置することが可能である。
基体10Aでは、ウェル2の下面2bはガラス基板からなる基材4で構成されている。
下面2bに対向する、ウェル2の上面は開口されて蓋を有さない。そのため、この下面2b又は上面から、顕微鏡等によって、吸着部Sにトラップされた微生物又は細胞Tを光学的に観察することができる。なお、前記上面は必ずしも無蓋である必要はなく、プラスチック、樹脂やガラス等の部材からなる蓋によって、覆われていてもよい(不図示)。ウェル2内に存在する微生物又は細胞Tの捕捉を観察しながら行うことが可能であるため、例えば、細胞を捕捉するときには吸引力を強くし、捕捉された後、細胞膜が破れない程度に弱くするなど微生物や細胞の状態に応じて適切に吸引力を調整することが可能である。
トラップした微生物又は細胞Tの電気生理学的測定を行う場合には、例えばウェル2及び微小吸引孔1b側にそれぞれ電極(不図示)を配置すればよい。或いは、細胞外バッファーや細胞内液などを介し外部の電極を用いてもよい。吸着部Sは単一のガラス基板4で形成されるので、細胞Tの細胞膜に対して高抵抗性シールを形成することが可能である。したがって、従来公知のパッチクランプ法が適用できる。このとき、吸着部Sを構成する微小吸引孔1の第1端部1a側の孔の口径を、従来のパッチピペット等の孔の口径(2〜4μm程度)よりも小さくすることによって、従来よりも精度の高い電気生理学的測定を行うことができる。
[基体10B]
本発明の微生物又は細胞を捕捉するための基体の実施形態は、図4の基体10Bにも示される。基体10Bでは、基材4の上面側に流路3が設けられている。前記流路3は、前記微生物又は細胞Tを流入及び流通させる空間である。
基体10Aにおけるウェル2と比べて、基体10Bにおける流路3の方がより大量の流体Rを流入及び流通させることができる。
基体10Bの他の構成については、基体10Aと同様である。
[基体10C]
本発明の微生物又は細胞を捕捉するための基体の実施形態は、図5の基体10Cにも示される。基体10Cでは、基材4の上面側に微小吸引孔1の第2端部1bが設けられている。つまり、微小吸引孔1の第2端部1bは、基材4の側面に限らず、任意の面に設けることができる。
基体10Cの他の構成については、基体10Aと同様である。
[基体10D]
本発明の微生物又は細胞を捕捉するための基体の実施形態は、図6の基体10Dにも示される。基体10Dでは、ウェル2の下面2bに微小吸引孔1の第1端部1aからなる吸着部が設けられている。つまり、微小吸引孔1の第1端部1aは、前記空間を構成するウェル2の側面に限らず、任意の面に設けることができる。
吸着部を空間の下面(底面)に設けた場合には、流体Rに含まれる微生物又は細胞が重くて沈降する場合、それらを捕捉し易いという利点がある。基体10Dの他の構成については、基体10Aと同様である。
[基体10E]
本発明の微生物又は細胞を捕捉するための基体の実施形態は、図7の基体10Eにも示される。基体10Eでは、ウェル2の下面2bに微小吸引孔1の第1端部1aが設けられている。このとき、各微小吸引孔1の第1端部1aは分岐して二つに分かれ、ウェル2の下面2bに第2端部1bの二倍の数の吸着部を形成している。つまり、微小吸引孔1の第1端部1aは、分岐して前記空間の複数の位置に開口していてもよい。この構成によって、多数の吸着部を空間に配置することができ、より多くの微生物又は細胞を捕捉することができる。また、第1端部1aの数は第2端部1bの数の1倍又は2倍に限られず、所望の数を配置することができる。
基体10Eの他の構成については、基体10Aと同様である。
[基体10F]
本発明の微生物又は細胞を捕捉するための基体の実施形態は、図8の基体10Fにも示される。基体10Fでは、基材4の上面にウェル2が二つ配置されて、各ウェル2に対して微小吸引孔1の分岐した第1端部1aがそれぞれ一つずつ配置されている。ウェル2を二つ有する構成によって、各ウェル2にウェル1とは異なる流体Rを流入させることができるので、多検体処理に適している。ウェル2の数は1又は2に限られず、所望の数を配置することができる。
基体10Fの他の構成については、基体10Aと同様である。
[基体10G]
本発明の微生物又は細胞を捕捉するための基体の実施形態は、図9の基体10Gにも示される。基体10Gでは、基材4の上面にウェル2α,2βが2つ配置されて、各ウェル2の側面に対して微小吸引孔1の第1端部1aと第2端部1bとがそれぞれ配置されている。この場合、第1端部1aが開口するウェル2αに微生物又は細胞を含む流体Rを流入させる。これに対して、第2端部2bが開口するウェル2βには、吸引部を直接的に又は間接的に別途接続する。この場合、ウェル2βを陰圧にすることで、ウェル2αに流入した流体Rを、ウェル2β側へ引き込むことができる。このとき、流体R中の微生物又は細胞を、ウェル2αの側面に開口する第1端部1aからなる吸着部Sに捕捉することができる。つまり、微小吸引孔1の第2端部1bは、基材の側面又は一面に限らず、上記のように、基材4の上面に設けられた凹部(ウェル2β)の側面に設けることもできる。また、ウェルの数は2つに限られず、所望の数を配置することができる。
基体10Gの他の構成については、基体10Aと同様である。
なお、基体10A〜10Gのウェル2又は流路3は、無蓋である必要は無く、適宜蓋を設けてもよい(不図示)。蓋を設けることによって、流体Rをウェル2内に保持し易くなり、或いは流路3における流体Rの流通性を高められる場合がある。
[基体10H]
本発明の微生物又は細胞を捕捉するための基体の実施形態は、図10の基体10Hにも示される。図11及び12は、図10のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体10Hは、前述の基体10Cの構成に、基材4の上面に基板6を貼り合せて形成される。基材4の上面には、ウェル2が設けられている。基板6において、そのウェル2と対向する位置は、くり貫かれて貫通し、上面へ開口している。この構成によれば、基板6の厚み分だけ、ウェル2の容積を増やすことができ、流入させる流体Rの量を増加させられる。また、基材4の上面には、微小吸引孔1の第2端部1bが配置されている。基板6において、その第2端部1bと対向する位置に、流路7が設けられている。この構成によれば、流路7に直接的又は間接的に吸引部を接続することによって、ウェル2内の流体Rを、微小吸引孔1を介して、流路7へ引き込んで吸引することができる。この際、流体R中の微生物又は細胞を吸着部Sにおいて捕捉できる。なお、基板6が透明な部材によって形成される場合、上面側からまたは下面側からの、どちらからでも観察が可能である。
基体10Hの他の構成については、基体10Aと同様である。
前記基板6の材料は特に制限されず、例えばPDMS、PMMA等の樹脂基板、シリコン基板、及びガラス基板が挙げられる。基材4と同じ材料で形成される場合、容易に貼り合わせることが可能である。基材4と基板6の貼り合せは公知の方法で行えばよい。
[基体10I]
本発明の微生物又は細胞を捕捉するための基体の実施形態は、図13の基体10Iにも示される。図14及び15は、図13のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体10Iは、前述の基体10Bの構成に、基材4の上面に基板6を貼り合せて形成される。基材4の上面には、流路3が設けられている。この構成によれば、流路3に必要なだけの流体Rを流入及び流通させられる。また、基材4の上面には、微小吸引孔1の第2端部1bが配置されている。基板6において、その第2端部1bと対向する位置に、流路7が設けられている。この構成によれば、流路7に直接的又は間接的に吸引部を接続することによって、流路3内の流体Rを、微小吸引孔1を介して、流路7へ引き込んで吸引することができる。この際、流体R中の微生物又は細胞を吸着部Sにおいて捕捉できる。
基体10Iの他の構成については、基体10Bと同様である。
前記基板6の材料は特に制限されず、例えばPDMS、PMMA等の樹脂基板、シリコン基板、及びガラス基板が挙げられる。基材4と同じ材料で形成される場合、容易に貼り合わせることが可能である。基材4と基板6の貼り合せは公知の方法で行えばよい。
<微生物又は細胞を捕捉するための基体の第二実施形態>
図16は、本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の第二実施形態である基体20の斜視図である。図17及び18は、図16のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体20は微生物又は細胞Tをトラップする微小吸引孔11を備えた、微生物又は細胞を捕捉するための基体である。基体20には、微生物又は細胞Tを含む流体Rを流入させる、基材14に内在する空間を構成するウェル12、内部を陰圧にすることが可能な第一流路13、及びウェル12と第一流路13とを連通する微小吸引孔11、が少なくとも備えられている。前記微小吸引孔11は、第一流路13を通じて、基材14の外部へ連通する。ウェル12の側面12aに、微小吸引孔11の第1端部11aが露呈する吸着部Sが形成される。ウェル12の上面又は下面12bの少なくとも一部分は、吸着部Sにトラップされた微生物又は細胞Tを光学的に観察可能なように、開口するか或いは透明な部材(不図示)で構成される。基材14のうち、少なくとも微小吸引孔11を構成する部位は、単一の部材で形成される。
図16に示す基体20においては、前記単一の部材は、微小吸引孔11を構成するだけでなく、基材14全体を構成している。
前記単一の部材の材料は、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小吸引孔11の加工性に優れるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受け難い、非結晶質である方が好ましい。
更には、前記単一の部材の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に捕捉した微生物又は細胞Tを観察する場合、上記の材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、前記単一の部材の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、前記単一の部材の材料は加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。このようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで、改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、捕捉した微生物又は細胞Tを、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図16では、基材14を構成する単一の部材は透明なガラス基板である。
図17及び18に示すように、微小吸引孔1はウェル12と第一流路13とを連通する。微小吸引孔11の第1端部11aはウェル12の側面12aに露呈し(開口し)、吸着部Sをなす。微小吸引孔11の第2端部11bは第一流路13の側面に露呈している。
微小吸引孔11は、単一のガラス基板4に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を有さない貫通孔である。当然に、微小吸引孔の端部における吸着部Sについても、継ぎ目や貼り合わせ面は存在しない。ここで「吸着部S」とは、ウェル12の側面12aにおける、微生物又は細胞Tが接触若しくは近接する領域をいう。
吸着部Sを構成する、微小吸引孔11の第1端部11aの、ウェル12の側面12aにおける孔の形状は、矩形、三角形、楕円、又は円のいずれであってもよい。前記孔の短径(最も短い口径)が0.02μm〜5μmの範囲であれば、微生物又は細胞Tをトラップすることができる。その中でも、細胞よりもサイズの小さい微生物に対しては、短径が0.02〜0.8μmの範囲であることが好ましい。つまり、前記孔の短径は、微生物又は細胞Tが微小吸引孔11を通り抜けることができない程度にすればよい。例えば赤血球細胞(6〜8μm)をトラップする場合には、前記短径を1μm程度にすればよく、納豆菌(枯草菌;0.7〜2μm)をトラップする場合には、前記短径を0.2μm程度にすればよい。
前記短径の範囲としては、0.02μm〜2μmであることが好ましい。
上記範囲の下限値未満であると、吸着部Sの吸引力が弱すぎて微生物又は細胞Tをトラップすることができない恐れがある。上記範囲の上限値超であると、微生物又は細胞Tが、微小吸引孔11を通り抜けてしまい、トラップできない恐れがある。
一方、前記孔の長径(最も長い口径)は、トラップする微生物又は細胞Tの大きさによって適宜調整すればよく、例えば0.2μm〜10μmの範囲が挙げられる。
図17及び18において、微小吸引孔11は、ウェル12の側面12aに対して略垂直となるように形成されている。しかし、必ずしも略垂直である必要はなく、基体20の設計に合わせて、単一のガラス基板14において自由に配置可能である。
微小吸引孔11は、基体20に複数配置されていてもよい。各々の微小吸引孔11に対して吸着部Sが各々備わるため、複数の微生物又は細胞Tをトラップすることができる。
ウェル12の下面12bはガラス基板14で構成されている。下面12bに対向する、ウェル12の上面は開口されて蓋を有さない。そのため、この下面12b又は上面から、顕微鏡等によって、吸着部Sにトラップされた微生物又は細胞Tを光学的に観察することができる。なお、前記上面は必ずしも無蓋である必要はなく、プラスチックや樹脂、ガラス等の部材からなる蓋によって、覆われていてもよい(不図示)。
第一流路13の下面13bはガラス基板14で構成され、第一流路13の上面13cは、プラスチックやガラス等の部材15から構成されている。これにより、第一流路13は半密閉状態の空間となる。第一流路13の上流側には、微小吸引孔11の第2端部11bが露呈して開口している。第一流路13の下流側には、第一流路13の内部を陰圧にすることが可能なシリンジやポンプ等の陰圧部が備えられている(不図示)。したがって、ウェル12の上面から流入された流体Rが、第一流路13の内部を陰圧にすることによって、微小吸引孔11を介して第一流路13側へ引き込まれる。このとき、流体Rに含まれる微生物又は細胞Tを、微小吸引孔1の第1端部11aで構成される吸着部Sに引き寄せて、トラップすることができる(図18)。
図17及び18に示すように、ウェル12の側面12aの一部を部材15が構成していてもよい。これによって、ウェル12の深さを部材15の厚みによって適宜調整することができる。
例えば、部材15を複数積層することによって、ウェル12を深くすることができる。
さらに、図19に示すように、積層した部材15の高さ(厚さ)を利用して、第一流路13の下流側を基体20の上面に配置することも可能である。
部材15の材料としては特に制限されず、PDMS、PMMA等の樹脂基板や、ガラス基板を使用することができる。
なお、ウェル12の側面12a及び第一流路13の上面13cを構成する部材は、観察に用いられる光線(例えば可視光線)を透過させない材料で構成されても良い。微生物又は細胞の捕捉のみを目的とする場合は、必ずしも観察に用いられる光線を透過させる必要はない。観察に用いられる光線を透過させる部材を用いると、上面から光学的に観察が可能となるため好ましい。
トラップした微生物又は細胞Tの電気生理学的測定を行う場合には、例えば図20に示すように、ウェル12及び第一流路13にそれぞれ電極16,17を配置することができる。または、細胞外バッファーや細胞内液などを介し外部の電極を用いて電気生理学的測定を行うことができる。吸着部Sは単一のガラス基板14からなるので、細胞Tの細胞膜に対して高抵抗性シールを形成することが可能である。したがって、従来公知のパッチクランプ法が適用できる。このとき、吸着部Sを構成する微小吸引孔11の第1端部11aからなる孔の口径を、従来のパッチピペット等の孔の口径(2〜4μm程度)よりも小さくすることによって、従来よりも精度の高い電気生理学的測定を行うことができる。
なお、電極16,17は、ウェル12及び第一流路13に連通する別の流路、例えば、後述する第四流路及び第五流路の少なくとも一方に配置されていてもよい。
<微生物又は細胞を捕捉するための基体の第三実施形態>
図21は、本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の第三実施形態である基体30の斜視図である。図22及び23は、図21のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体30は微生物又は細胞Tをトラップする微小吸引孔21を備えた微生物又は細胞を捕捉するための基体である。基体30には、微生物又は細胞Tを含む流体Rを流入させる、基材24に内在する空間を構成する第二流路22、内部を陰圧にすることが可能な第三流路23、及び第二流路22と第三流路23とを連通する微小吸引孔21、が少なくとも備えられている。前記微小吸引孔21は、第一流路23を通じて、基材24の外部へ連通する。第二流路22の側面22aに、微小吸引孔21の第1端部21aが露呈する吸着部Sが形成され、第二流路22の上面22c又は下面22bの少なくとも一部分は、吸着部Sにトラップされた微生物又は細胞Tを光学的に観察可能なように、透明な部材25で構成されている。基材24のうち、少なくとも微小吸引孔21を構成する部位は、単一の部材で形成される。
図21に示す基体30においては、前記単一の部材は、微小吸引孔21を構成するだけでなく、基材24全体を構成している。
前記単一の部材の材料は、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小吸引孔21の加工性に優れるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。
更には、前記単一の部材の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に捕捉した微生物又は細胞Tを観察する場合、上記の材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、前記単一の部材の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、前記単一の部材の材料は加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。前記単一の部材の材料がこのようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで、改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、捕捉した微生物又は細胞Tを、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図21では、基材24を構成する単一の部材は透明なガラス基板である。
図22及び23に示すように、微小吸引孔21は第二流路22と第三流路23とを連通する。微小吸引孔21の第1端部21aは第二流路22の側面22aに露呈し(開口し)、吸着部Sをなす。微小吸引孔21の第2端部21bは第三流路23の側面に露呈している。
微小吸引孔21は、単一のガラス基板24に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を有さない貫通孔である。当然に、微小吸引孔の端部における吸着部Sについても、継ぎ目や貼り合わせ面は存在しない。ここで「吸着部S」とは、第二流路22の側面22aにおける、微生物又は細胞Tが接触若しくは近接する領域をいう。
吸着部Sを構成する、微小吸引孔21の第1端部21aの、第二流路22の側面22aにおける孔の形状は、矩形、三角形、楕円、又は円のいずれであってもよい。前記孔の短径(最も短い口径)が0.02μm〜5μmの範囲であれば、微生物又は細胞Tをトラップすることができる。その中でも、細胞よりもサイズの小さい微生物に対しては、短径が0.02〜0.8μmの範囲であることが好ましい。つまり、前記孔の短径は、微生物又は細胞Tが微小吸引孔21を通り抜けることができない程度にすればよい。例えば赤血球細胞(6〜8μm)をトラップする場合には、前記短径を1μm程度にすればよく、納豆菌(枯草菌;0.7〜2μm)をトラップする場合には、前記短径を0.2μm程度にすればよい。
前記短径の範囲としては、0.02μm〜2μmであることが好ましい。
上記範囲の下限値未満であると、吸着部Sの吸引力が弱すぎて微生物又は細胞Tをトラップすることができない恐れがある。上記範囲の上限値超であると、微生物又は細胞Tが、微小吸引孔21を通り抜けてしまい、トラップできない恐れがある。
一方、前記孔の長径(最も長い口径)は、トラップする微生物又は細胞Tの大きさによって適宜調整すればよく、例えば0.2μm〜10μmの範囲が挙げられる。
図22及び23において、微小吸引孔21は、第二流路22の側面22aに対して略垂直となるように形成されている。しかし、必ずしも略垂直である必要はなく、基体30の設計に合わせて、単一のガラス基板24において自由に配置可能である。
微小吸引孔21は、基体30に複数配置されていてもよい。各々の微小吸引孔21に対して吸着部Sが各々備わるため、複数の微生物又は細胞Tをトラップすることができる。
第二流路22の下面22bはガラス基板24で構成されている。下面22bに対向する第二流路22の上面22cは、プラスチックやガラス等の部材25で構成されている。この上面22c又は下面22bから、顕微鏡等よって、吸着部Sにトラップされた微生物又は細胞Tを光学的に観察することができる。
第三流路23の下面23bはガラス基板24で構成され、第三流路23の上面23cは部材25から構成されている。これにより、第三流路23は半密閉状態の空間となる。第三流路23の上流側には、微小吸引孔21の第2端部21bが露呈して開口している。第三流路23の下流側には、第三流路23の内部を陰圧にすることが可能なシリンジやポンプ等の陰圧部が備えられている(不図示)。したがって、第二流路22の上流側F1から、第二流路22の下流側F2へ流入された流体Rの一部が、第三流路23の内部を陰圧にすることによって、微小吸引孔21を介して第三流路23側へ引き込まれる。このとき、流体Rに含まれる微生物又は細胞Tを、微小吸引孔21の第1端部21aで構成される吸着部Sに引き寄せて、トラップすることができる(図23)。
また、図24に示すように、第二流路22の側面22aの一部を部材25が構成していてもよい。これによって、第二流路22における流体Rの流量を部材25の厚みによって適宜調整することができる。
例えば、部材25を複数積層することによって、第二流路22の径を大きくすることができる。さらに、積層した部材25の高さ(厚さ)を利用して、第三流路23の下流側を基体30の上面に配置することも可能である。
部材25の材料としては特に制限されず、PDMS、PMMA等の樹脂基板や、ガラス基板を使用することができる。
なお、第三流路23の上面23cを構成する部材は、観察に用いられる光線(例えば可視光線)を透過させない材料で構成されても良い。微生物又は細胞の捕捉のみを目的とする場合は、前記部材は必ずしも観察に用いられる光線を透過させる必要はない。観察に用いられる光線を透過させる部材を用いると、上面から光学的に観察が可能となるため好ましい。
トラップした微生物又は細胞Tの電気生理学的測定を行う場合には、例えば図25に示すように、第二流路22及び第三流路23にそれぞれ電極26,27を配置することができる。または、細胞外バッファーや細胞内液などを介し外部の電極を用いて電気生理学的測定を行うことができる。吸着部Sは単一のガラス基板24からなるので、細胞Tの細胞膜に対して高抵抗性シールを形成することが可能である。したがって、従来公知のパッチクランプ法が適用できる。このとき、吸着部Sを構成する微小吸引孔21の第1端部21aからなる孔の口径を、従来のパッチピペット等の孔の口径(2〜4μm程度)よりも小さくすることによって、従来よりも精度の高い電気生理学的測定を行うことができる。
なお、電極26,27は、第二流路22及び第三流路23に連通する別の流路、例えば、後述する第四流路及び第五流路の少なくとも一方に配置されていてもよい。
第三実施形態の基体30では、第二実施形態の基体20におけるウェル12に代えて、第二流路22を採用している。第二流路22には、連続的に流体Rを流通させることができるので、ウェル22を採用した場合に比べて使用できる流体Rを絶えず流し続けることが可能となる。
<微生物又は細胞を捕捉するための基体の第四実施形態>
図26は、本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の第四実施形態である基体40の斜視図である。図27は、図26のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体40は微生物又は細胞Tをトラップする微小吸引孔31を備えた微生物又は細胞を捕捉するための基体である。基体40には、微生物又は細胞Tを含む流体Rを流入させる、基材34に内在する空間を構成するウェル32、内部を陰圧にすることが可能な第一流路33、及びウェル32と第一流路33とを連通する微小吸引孔31、が少なくとも備えられている。前記微小吸引孔31は、第一流路33を通じて、基材34の外部へ連通する。
ウェル32の側面32aに、微小吸引孔31の第1端部31aが露呈する吸着部Sが形成され、ウェル32の上面又は下面32bの少なくとも一部分は、吸着部Sにトラップされた微生物又は細胞Tを光学的に観察可能なように、開口するか或いは透明な部材35で構成される。基材34のうち、少なくとも微小吸引孔31を構成する部位は、単一の部材で形成される。
図26に示す基体40においては、前記単一の部材は、微小吸引孔31を構成するだけでなく、基材34全体を構成している。
前記単一の部材の材料は、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小吸引孔31の加工性に優れるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。
更には、前記単一の部材の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に捕捉した微生物又は細胞Tを観察する場合、上記の材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、前記単一の部材の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。このようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで、改質部を形成することができる。
また、可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。可視光領域の光を透過させることによって、捕捉した微生物又は細胞Tを、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図26では、基材34を構成する単一の部材は透明なガラス基板である。
図27に示すように、微小吸引孔31はウェル32と第一流路33とを連通する。微小吸引孔31の第1端部31aはウェル32の側面32aに露呈し(開口し)、吸着部Sをなす。微小吸引孔31の第2端部31bは第一流路33の側面に露呈している。
微小吸引孔31は、単一のガラス基板34に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を有さない貫通孔である。当然に、微小吸引孔の端部における吸着部Sについても、継ぎ目や貼り合わせ面は存在しない。ここで「吸着部S」とは、ウェル32の側面32aにおける、微生物又は細胞Tが接触若しくは近接する領域をいう。
吸着部Sを構成する、微小吸引孔31の第1端部31aの、ウェル32の側面32aにおける孔の形状は、矩形、三角形、楕円、又は円のいずれであってもよい。前記孔の短径(最も短い口径)及び長径(最も長い口径)の説明は、前述の第二実施形態の基体20における孔の説明と同様である。
図27において、微小吸引孔31は、ウェル32の側面32aに対して略垂直となるように形成されている。しかし、必ずしも略垂直である必要はなく、基体40の設計に合わせて、単一のガラス基板34において自由に配置可能である。
微小吸引孔31は、基体40に複数配置されていてもよい。例えば、図28に示すように、基体40の高さ(厚さ)方向に、複数の微小吸引孔31を並列配置してもよい。この例では、各々の微小吸引孔31に対して、吸着部S及び第一流路33α,33βが各々備わるため、各吸着部Sの動作を独立に制御することができ、複数の微生物又は細胞Tを各吸着部Sにトラップすることができる。
ウェル32の下面32bは部材35で構成されている。下面32bに対向する、ウェル32の上面は開口されて蓋を有さない。そのため、この下面32b又は上面から、顕微鏡等によって、吸着部Sにトラップされた微生物又は細胞Tを光学的に観察することができる。なお、前記上面は必ずしも無蓋である必要はなく、プラスチックや樹脂、ガラス等の部材からなる蓋によって、覆われていてもよい(不図示)。
第一流路33の下面33bは、プラスチックやガラス等の部材35で構成され、第一流路33の上面33cは、ガラス基板34から構成されている。これにより、第一流路33は半密閉状態の空間なる。第一流路33の上流側には、微小吸引孔31の第2端部31bが露呈して開口している。第一流路33の下流側には、第一流路33の内部を陰圧にすることが可能なシリンジやポンプ等の陰圧部が備えられている(不図示)。したがって、ウェル32の上面から流入された流体Rが、第一流路33の内部を陰圧にすることによって、微小吸引孔31を介して第一流路33側へ引き込まれる。このとき、流体Rに含まれる微生物又は細胞Tを、微小吸引孔31の第1端部31aで構成される吸着部Sに引き寄せて、トラップすることができる(不図示)。このメカニズムは、第二実施形態の基体20と同様である。
図29に示すように、ウェル32の側面32aの一部を部材36が構成していてもよい。これによって、ウェル32の深さを部材36の厚みによって適宜調整することができる。
例えば、部材36を複数積層することによって、ウェル32を深くすることができる。
さらに、積層した部材36の高さ(厚さ)を利用して、第一流路33の下流側を基体40の上面に配置することも可能である。
部材35,36の材料としては特に制限されず、PDMS、PMMA等の樹脂基板や、ガラス基板を使用することができる。
なお、ウェル32の側面32a及び第一流路33の上面33cを構成する部材は、観察に用いられる光線(例えば可視光線)を透過させない材料で構成されても良い。微生物又は細胞の捕捉のみを目的とする場合は、前記部材は必ずしも観察に用いられる光線を透過させる必要はない。観察に用いられる光線を透過させる部材を用いると、上面から光学的に観察が可能となるため好ましい。
トラップした微生物又は細胞Tの電気生理学的測定を行う場合には、ウェル32及び第一流路33等に電極を配置して、第二実施形態の基体20で説明した様に行うことができる。
<微生物又は細胞を捕捉するための基体の第五実施形態>
図30は、本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の第五実施形態である基体50の斜視図である。図31は、図30のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体50は微生物又は細胞Tをトラップする微小吸引孔41を備えた微生物又は細胞を捕捉するための基体である。基体50には、微生物又は細胞Tを含む流体Rを流入させる、基材44に内在する空間を構成する第二流路42、内部を陰圧にすることが可能な第三流路43、及び第二流路42と第三流路43とを連通する微小吸引孔41、が少なくとも備えられている。前記微小吸引孔41は、第三流路43を通じて、基材44の外部へ連通する。第二流路42の側面42aに、微小吸引孔41の第1端部41aが露呈する吸着部Sが形成され、第二流路42の上面42c及び下面42bの少なくとも一部分は、吸着部Sにトラップされた微生物又は細胞Tを光学的に観察可能なように、透明な部材45で構成される。基材44のうち、少なくとも微小吸引孔41を構成する部位は、単一の部材で形成される。
図30に示す基体50においては、前記単一の部材は、微小吸引孔41を構成するだけでなく、基材44全体を構成している。
前記単一の部材の材料は、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小吸引孔11の加工性に優れるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。
更には、前記単一の部材の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に捕捉した微生物又は細胞Tを観察する場合、上記材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、前記単一の部材の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、前記単一の部材の材料は加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。前記単一の部材の材料がこのようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで、改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、捕捉した微生物又は細胞Tを、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図30では、基材44を構成する単一の部材は透明なガラス基板である。
図31に示すように、微小吸引孔41は第二流路42と第三流路43とを連通する。微小吸引孔41の第1端部41aは第二流路42の側面42aに露呈し(開口し)、吸着部Sをなす。微小吸引孔41の第2端部41bは第三流路43の側面に露呈している。
微小吸引孔41は、単一のガラス基板44に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を有さない貫通孔である。当然に、微小吸引孔の端部における吸着部Sについても、継ぎ目や貼り合わせ面は存在しない。ここで「吸着部S」とは、第二流路42の側面42aにおける、微生物又は細胞Tが接触若しくは近接する領域をいう。
吸着部Sを構成する、微小吸引孔41の第1端部41aの、第二流路42の側面42aにおける孔の形状は、矩形、三角形、楕円、又は円のいずれであってもよい。前記孔の短径(最も短い口径)及び長径(最も長い口径)の説明は、前述の第二実施形態における孔の説明と同様である。
図31において、微小吸引孔41は、第二流路42の側面42aに対して略垂直となるように形成されている。しかし、必ずしも略垂直である必要はなく、基体50の設計に合わせて、単一のガラス基板44において自由に配置可能である。
微小吸引孔41は、基体50に複数配置されていてもよい。各々の微小吸引孔41に対して吸着部Sが各々備わるため、複数の微生物又は細胞Tをトラップすることができる。
第二流路42の下面42bはプラスチックや樹脂、ガラス等の部材45で構成されている。下面42bに対向する第二流路42の上面42cは、ガラス基板からなる基材44で構成されている。この上面42c及び下面42bの少なくとも一方から、顕微鏡等によって、吸着部Sにトラップされた微生物又は細胞Tを光学的に観察することができる。
第三流路43の下面43bは部材45で構成され、第三流路43の上面43cはガラス基板44から構成されている。これにより、第三流路43は半密閉状態の空間なる。第三流路43の上流側には、微小吸引孔41の第2端部41bが露呈して開口している。第三流路43の下流側には、第三流路43の内部を陰圧にすることが可能なシリンジやポンプ等の陰圧部が備えられている(不図示)。したがって、第二流路42の上流側F1から、第二流路42の下流側F2へ流入された流体Rの一部が、第三流路43の内部を陰圧にすることによって、微小吸引孔41を介して第三流路43側へ引き込まれる。このとき、流体Rに含まれる微生物又は細胞Tを、微小吸引孔41の第1端部41aで構成される吸着部Sに引き寄せて、トラップすることができる(不図示)。このメカニズムは、第二実施形態の基体20と同様である。
部材45の材料としては特に制限されず、PDMS、PMMA等の樹脂基板や、ガラス基板を使用することができる。
なお、第三流路43の下面43bを構成する部材は、観察に用いられる光線(例えば可視光線)を透過させない材料で構成されても良い。微生物又は細胞の捕捉のみを目的とする場合は、前記部材は必ずしも観察に用いられる光線を透過させる必要はない。観察に用いられる光線を透過させる部材を用いると、上面から光学的に観察が可能となるため好ましい。
トラップした微生物又は細胞Tの電気生理学的測定を行う場合には、第二流路42及び第三流路43等に電極を配置して、第二実施形態の基体20で説明した様に行うことができる。あるいは、細胞外バッファーや細胞内液などを介し外部の電極を用いて電気生理学的測定を行うことができる。
図32は、本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例である基体20Aの模式的な上面図(上面から見た透視図)である。この上面図におけるウェル12、微小吸引孔11、及び第一流路13の配置構成は、前述の第二実施形態の基体20及び第四実施形態の基体40等に適用可能である。
ガラス基板14には、ウェル12と第一流路13がそれぞれ4セット配置されている。
ウェル12と第一流路13とが微小吸引孔11を介して連通していることは、前述の通りである。吸着部Sの位置は、「X」の印で示してある。
一つのウェル12に複数の第一流路13が配置されることも可能であり、この際、一つの第一の流路13に対して微小吸引孔11はそれぞれ少なくとも一つ以上を設ける。このように一つのウェル12に複数の第一流路13が配置される形状である場合、それぞれの第一流路13に対して、独立にシリンジやポンプ等の吸引部(不図示)を接続することによって、独立して第一流路13の吸引を制御することが可能となる。そのため、微小吸引孔11による微生物あるいは細胞Tの捕捉を独立して制御出来る。
図33は、本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例である基体20Aの模式的な上面図(上面から見た透視図)である。この上面図における第二流路22、微小吸引孔21、及び第三流路23の配置構成は、前述の第三実施形態の基体30及び第五実施形態の基体50等に適用可能である。
ガラス基板24には、第二流路22と第三流路23がそれぞれ3セット配置されている。第二流路22と第三流路23とが微小吸引孔21を介して連通していることは、前述の通りである。吸着部Sの位置は、「X」の印で示してある。
第二流路22の上流側F1から、流体Rが流入されて、第二流路22の下流側F2へ流通する。
一つの第二流路22に複数の第三流路23を配置することも可能であり、この際、一つの第三の流路23に対して微小吸引孔21はそれぞれ少なくとも一つ以上を設ける。このように一つの第二流路22に複数の第三流路23が配置される形状である場合、それぞれの第三流路23に対して、独立にシリンジやポンプ等の吸引部(不図示)を接続することによって、独立して第三流路23の吸引を制御することが可能である。そのため、微小吸引孔21による微生物あるいは細胞Tの捕捉を独立して制御出来る。
図34は、本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例である基体30Bの模式的な上面図(上面から見た透視図)である。この上面図における第二流路22、微小吸引孔21、第三路23、及び第五流路28の配置構成は、前述の第三実施形態の基体30及び第五実施形態の基体50等に適用可能である。
ガラス基板24に配置された、第二流路22と第三流路23とが微小吸引孔21を介して連通していることは、前述の通りである。吸着部Sの位置は、「X」の印で示してある。吸着部Sが設けられた領域Wは、第二流路22の流路幅が拡張されている。このため、第二流路22の上流側F1から、流体Rが流入されて、第二流路22の下流側F2へ流通する際、領域Wにおいて、流体Rを滞留させることができる。前記滞留によって、流体Rに含まれる微生物又は細胞Tを、吸着部Sにトラップすることが容易になる。また領域Wの蓋を開口させることで、ウェルとして機能させることも可能である。
ガラス基板24には第五流路28が配置されている。第五流路28は第三流路23と連通するように交差している。第五流路28の上流側F3から下流側F4へ、所望の薬液又はガスを流通させることによって、第三流路23内にも前記薬液又はガスを拡散流入させることができる。また、第三流路23内に拡散した薬液をガスへ置換することも可能である。
第五流路28が第三流路23に連通する場所や、第五流路28の形状は特に限定されない。そのため、例えば、微小吸引孔21に近い位置に第五流路28を配置することも可能であり、第五流路28と第三流路23はそれぞれの機能を代替することが可能である。また第五流路28はF3側あるいはF4側のみを有する構成も可能であり、F3あるいはF4のいずれかの機能を第三流路23が果たすことも可能であるし、複数の第五流路28や複数に分岐した第五流路28が配置されてもよい。
図35は、本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の一例である基体30Cの模式的な上面図(上面から見た透視図)である。この上面図における第二流路22、微小吸引孔21、第三流路23、第五流路28、及び第四流路29の配置構成は、前述の第三実施形態の基体30及び第五実施形態の基体50等に適用可能である。
ガラス基板24に配置された、第二流路22と第三流路23とが微小吸引孔21を介して連通していることは、前述の通りである。吸着部Sの位置は、「X」の印で示してある。
ガラス基板24に配置された第五流路28は、第三流路23と連通するように交差している。第五流路28の上流側F3から下流側F4へ、所望の薬液又はガスを流通させることによって、第三流路23内にも前記薬液又はガスを拡散流入させることができる。また、第三流路23内に拡散した薬液をガスへ置換することも可能である。
第五流路28が第三流路23に連通する場所や、第五流路28の形状は特に限定されない。そのため、例えば、微小吸引孔21に近い位置に第五流路28を配置することも可能であり、第五流路28と第三流路23はそれぞれの機能を代替することが可能である。また第五流路28はF3側あるいはF4側のみを有する構成も可能であり、F3あるいはF4のいずれかの機能を第三流路23が果たすことも可能であるし、複数の第五流路28や複数に分岐した第五流路28が配置されてもよい。
また、ガラス基板24に配置された第四流路29は、第二流路22と連通している。第四流路29から第二流路22へ、所望の薬液又はガスを流通させることによって、第二流路22内にも前記薬液又はガスを拡散流入させることができる。つまり、前記薬液又はガスを、吸着部Sにトラップされた微生物又は細胞Tへ接触させることができる。なお、図35では、第二流路22の上流側はF5で示し、下流側はF6で示してある。
第四流路29が第二流路22に連通する場所や、第四流路の形状は特に限定されない。
そのため、微小吸引孔21に近い位置に第四流路29を配置することも可能であり、第四流路29と第二流路22の上流側(F5側)はそれぞれの機能を代替することが可能である。また複数の第四流路29や複数に分岐した第四流路29が第二流路22に連通し、配置されてもよい。
第四流路29は、第二流路22に代えてウェルに連通するように設けることも可能である。つまり、図35において、第二流路22をウェルに置き換えた構成とすることもできる。
<微量な高分子を検出するための基体の第一実施形態>
[基体60]
図36は、本発明にかかる細胞等に含まれる微量なたんぱく質等の高分子を検出するための基体(以下では、単に「基体」と呼ぶことがある。)の第一実施形態である基体60の斜視図である。図37、38A、及び38Bは、図36のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体60は細胞等を補足し、細胞等に含まれる微量の高分子を検出するナノ流路201を備えた基体である。基体60には、基材204内に設けられ、基材204の上面側に前記細胞等を含む流体を流入するマイクロ流路203A及びマイクロ流路203Bと、マイクロ流路203Aとマイクロ流路203Bとを連通するナノ流路201とを含み、前記基材204のうち、少なくともナノ流路201を構成する部位は、単一の部材で形成される。また、ナノ流路201はマイクロ流路203A及び203Bの側面203Aa及び203Baに存在し、上面、下面に接していない。さらに、前記単一の部材は、解析成分(検出部)によって検出された高分子を光学的に観察できるように、透明な部材(不図示)で構成される。
基体60では、基材204の上面側にマイクロ流路203A及び203Bが設けられている。前記マイクロ流路203A又は203Bが、前記細胞等を流入させる空間を構成している。また、図36にはマイクロ流路が2つ設けられているが、マイクロ流路の形状及び数は限定されない。細胞等を流入できる空間が設けられていればよく、例えば、図1又は図49のような構造であっても良い。
検出した高分子を基材204の下面から観察する場合、観察対象と対物レンズとの距離(ワーキングディスタンス)を調整して観察対象物に焦点を合わせる。しかしながら、基材下面と観察対象物との距離が、観察するのに必要とされるワーキングディスタンスより大きい場合、観察対象物に焦点を結ぶことができない。その様な事態を避けるため、基材の下面を研磨などして基材の厚さを薄くし、基材下面と観察対象物との距離を短くすることができる。しかしながら、マイクロ流路の下面203Ab又は203Bbに開口するナノ流路を形成した場合、マイクロ流路の下面203Ab又は203Bbと基材の下面との間にナノ流路が存在するため、基材の下面を研磨などして基材を薄くすることが難しい場合がある。したがって基体60のように、ナノ流路はマイクロ流路の側面203Aa又は203Baに開口している方が好ましい。さらに、ナノ流路は、観察対象物を容易に捕捉するために、マイクロ流路の側面203Aa又は203Baの中ほどの高さに開口している方が好ましい。
本発明は、細胞から高分子を検出するためだけに制限されず、検出対象として、その他のイオンや、化合物を数分子レベルしか含まない液体内から検出することも可能である。例えば、ATP、カルシウム、脂質分子、薬剤、抗がん剤の耐性を数分子レベルしかない液体内から検出することも可能である。その他に、例えば、血液、汗や尿などに極微量含まれる化学物質や生体高分子を分子カウンティングすることも可能であり、このような高濃度な液体でもグラディエントで検出することが可能である。また、細胞を壊さずにイオンチャンネルやトランスポーターから放出される微量なイオンや化合物をアクティブに検出することも可能である。
図36に示す基体60においては、前記単一の部材は、ナノ流路201を構成するだけでなく、基材204全体を構成している。
前記単一の部材の材料としては、例えばガラス、石英、又はサファイアなどが挙げられる。これらの材料は、ナノ流路201を形成する際に、加工性に優れた材料であるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。また、前記材料は顕微鏡等を用いて検出した高分子を光学的に観察する場合、可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させため、より観察に適している。
また、前記単一の部材の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、前記単一の部材の材料は加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。前記単一の部材の材料がこのようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで、改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、検出した高分子を、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。さらには、前記単一部材が前記波長の光のうち少なくとも一部の紫外光あるいは可視光線(0.1μm〜0.83μm)を透過させる場合には、蛍光色素によって染色された高分子を蛍光観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図36では、基材204を構成する単一の部材は透明なガラス基板である。
図37,38A及び38Bに示すように、ナノ流路201はマイクロ流路203Aとマイクロ流路203Bとを連通する。ナノ流路201の第1端部201aはマイクロ流路203Aの側面203Aaに露呈し(開口し)、吸着部Sをなす。ナノ流路201の第2端部201bはマイクロ流路203Bの側面203Baに露呈している。
本発明において、ナノ流路201がマイクロ流路203Aとマイクロ流路203Bとを連通する際、図39、40に示す基体に設けられるナノ流路211及び221のように、分岐した構造を有していても良い。その場合、ナノ流路の容積を増やすことができ、直径が数十μm程度の細胞等から微量の高分子を検出する場合であっても、前記構造を有することで前記細胞の体積以上の容積を持つナノ流路を形成することが可能であり、ナノ流路内に前記細胞等を充填することができる。従って、前記構造を有することで、大きな細胞からでも微量の高分子を検出することができる。なお、分岐したナノ流路は図39のように分岐されたままでも、図40のように途中で合流してもよい。また、ナノ流路の構造は前記の構造に限られず、例えば、屈曲する構造であったり、複数に分岐する構造であったりしても良い(不図示)。このほかに、例えば、ナノ流路201の第1端部201a以外の箇所が幅1μm以下の空間を設け接合された構造でもよい(不図示)。また、ナノ流路に近い位置にマニュピュレート用のマイクロ流路を設けることも可能である(不図示)。この場合、一辺は細胞の寸法よりも小さいことが好ましい。
流路203Bに露呈する、ナノ流路201の第2端部201b側から、流路203A内の流体Rを吸引することによって、流体Rに含まれる細胞T´を、吸着部Sに捕捉(図38A)することができる。前記吸引の動力は特に制限されないが、例えばシリンジやポンプ等の吸引部(不図示)をナノ流路201の第2端部201bに接続することによって供給することができる。また、ナノ流路201の容積は、捕捉された細胞の体積よりも大きいことが好ましい。その場合、吸着部Sに捕捉された細胞T´をナノ流路201中に充填し(図38B)、前記充填された細胞等に含まれる高分子をあらかじめナノ流路の内壁に直接的又は間接的に形成された抗体などの解析成分(検出部)に検出させることができる。
ナノ流路201は、単一のガラス基板204に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を持たない貫通孔である。当然に、ナノ流路の端部における吸着部Sについても、継ぎ目や貼り合わせ面は存在しない。このため、細胞と吸着部Sとの密着力を十分に高められる。また、ナノ流路201及びナノ流路201の周辺部は、単一のガラス基板204に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を持たない貫通孔であるため、前記ガラス基板204の変形や薬液によるダメージなどから、貼り合わせ面における剥離や破損が生じない。よって、前記ガラス基板204を、加熱消毒や薬液消毒を繰り返して行ったとしても、前記ガラス基板204が破損することがない。これは、日常的に加熱消毒や薬液消毒を行うことが必要とされる、細胞等を検出する基体にとって、特に優れた特徴であるといえる。更には、ナノ流路201に近い位置に屈折率差が生じないので、吸着部Sからの光をより集光させ易い。そのため、検出された高分子を容易に観察することができる。ここで「吸着部S」とは、マイクロ流路203Aの側面203Aaにおける、細胞等が接触若しくは近接する領域をいう。
吸着部Sを構成する、ナノ流路の第1端部201aの、マイクロ流路203Aの側面203Aaにおける孔の形状及び、マイクロ流路203Aの側面203Aaに平行方向の断面の形状は楕円であることが好ましい。この場合には、前記孔の短径(最も短い口径)が0.05μm〜1.00μmの範囲であれば、拡散長の短い高分子をナノ流路内で確実に抗体などの解析成分(検出部)によって検出することができる。また、前記解析成分(検出部)をナノ流路201の内壁に配置する際、前記解析成分(検出部)がナノ流路内壁に接触する確率を上げるには、前記短径の範囲が、0.05μm〜0.70μmであることが好ましい。さらに、0.05〜0.40μmの範囲であるとより好ましい。上記範囲の下限値未満であると、圧力損失により吸着部Sの吸引力が弱くなり、細胞を捕捉することができない恐れがある。一方、上記範囲の上限値以上であると、微量な高分子を検出するのが困難である。
一方、前記孔及び断面の長径(最も長い口径)は、捕捉する細胞の大きさによって適宜調整すればよく、全ての細胞を対象とすると1μm〜6μmの範囲であることが挙げられる。さらに、1〜4μmの範囲であるとより好ましい。上記範囲の下限値未満であると、圧力損失により吸着部Sの吸引力が弱くなり、細胞を捕捉することができない恐れがある。一方、上記範囲の上限値以上であると、細胞等の内容物が外部に漏れる可能性がある。
さらに、前記ナノ流路201の総長は、前記短径及び長径から、ナノ流路201の容積が捕捉する細胞等の体積以上になるように、適宜調整すればよく、容積、圧力損失の影響を考慮すると、ナノ流路201の総長は20〜50000μmであることが好ましい。さらに20〜25000μmであるとより好ましい。同様に、ナノ流路201の第1端部201aと第2端部201bとの距離は20〜10000μmであることが好ましい。さらに20〜6000μmであるとより好ましい。
また、マイクロ流路203A及び203Bの深さは、6μm以上であることが好ましく、細胞等の寸法以上となるように適宜調整すればよい。
本発明を用いた具体例として、検出対象として白血球細胞(直径10μm程度)を用いる場合は、短径が約0.20μm、長径が約3μm、長さが約1.3μmのナノ流路であると良い。このようなナノ流路の容積は細胞の体積に対して1.5倍程度となり、高分子の検出が容易である。
前記孔の孔径の短辺をナノオーダーで高精度に加工する場合、ナノオーダーサイズの高分子を検出することが可能となり、従来多量の細胞を必要としていた細胞中に極微量しか含まれないたんぱく質などの高分子を単数あるいは少量の細胞から検出することが可能となる。その結果、患者のなどへの負荷を最低限に抑えることが可能である。さらに吸着部の孔の径を微小化する場合、細胞と吸着部との安定したシール性が実現されるため、高分子の検出を安定して行うことが可能である。
図37、38A、及び38Bにおいて、ナノ流路201は、マイクロ流路203Aの側面203Aaに対して略垂直となるように形成されている。しかし、必ずしも略垂直である必要はなく、基体60の設計に合わせて、単一のガラス基板204において自由に配置可能である。また、ナノ流路201は略水平に配置される。ナノ流路201が略水平であることによって、解析成分(検出部)によって検出された高分子を蛍光標識などによって容易に観察することができる。
また、ナノ流路201は、基体60に複数配置されていてもよい。この場合、各々のナノ流路201に対して吸着部Sが各々備わるため、複数の細胞等を捕捉し、高分子を効率よく検出することができる。また、一つのマイクロ流路203Aに複数のナノ流路201が配置されるとき、一つのナノ流路201の第2端部201b側にそれぞれ独立したシリンジやポンプ等の吸引部(不図示)を接続することによって、ナノ流路201の吸引を個別に制御することが可能である。そのため、ナノ流路201による高分子の検出を独立して制御出来る。さらに、基材204の材料がガラス、石英、又はサファイアなどであると、それらの材料は加工性に優れるので、複数のナノ流路201を密集させて配置することが可能である。
基体60では、マイクロ流路203A及びマイクロ流路203Bの下面203Ab及び203Bbはガラス基板により形成される基材204で構成されている。
下面203Ab又は203Bbに対向する、マイクロ流路203Aの上面は開口されて蓋を有さない。そのため、この下面203Ab又は203Bb又は上面から、顕微鏡等によって、吸着部Sに捕捉された細胞等を光学的に観察することができる。なお、前記上面は必ずしも無蓋である必要はなく、プラスチック、樹脂やガラス等の部材で形成される蓋によって、覆われていてもよい(不図示)。マイクロ流路203A内に存在するたんぱく質の検出を観察しながら行うことが可能であるため、例えば、細胞を捕捉するときには吸引力を強くし、捕捉された後、細胞膜が破れない程度に弱くするなど状態に応じて適切に吸引力を調整することが可能である。
捕捉した細胞等の電気生理学的測定を行う場合には、例えばマイクロ流路203A及びナノ流路の第2端部201b側にそれぞれ電極(不図示)を配置すればよい。或いは、細胞外バッファーや細胞内液などを介し外部の電極を用いてもよい。吸着部Sは単一のガラス基板204で形成されるので、細胞等に対して高抵抗性シールを形成することが可能である。したがって、従来公知のパッチクランプ法が適用できる。このとき、吸着部Sを構成するナノ流路201の第1端部201a側の孔の口径を、従来のパッチピペット等の孔の口径(2〜4μm程度)よりも小さくすることによって、従来よりも精度の高い電気生理学的測定を行うことができる。
<微量の高分子の検出方法>
細胞中の極微量のたんぱく質を検出するにはたとえば抗体を用いたサンドイッチ法を適用することができる。具体的な検出方法を以下に示す。
まず、目的たんぱく質(抗原)に対する抗体(捕獲抗体)をナノ流路201の内壁に吸着させ、高分子、例えばスキムミルク、pegなどを用いてナノ流路201の内壁のブロッキングを行う。このとき、あらかじめナノ流路の内壁に抗体を効率よく形成するために、シランカップリング材等による疎水表面処理を施し、吸着膜を形成しておくことが好ましい。続いて、ナノ流路201の内壁に試料溶液および捕獲抗体とは別のエピトープを認識する一次抗体を加える。この1次抗体には、アルカリフォスファターゼ、βガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼなどの酵素結合を検出するための酵素が遺伝子的もしくは化学的に連結されている。また、これ以外にも、ビオチン-アビジンやDIG等を利用して検出することも可能である。この時点で、捕獲抗体、抗原、及び一次抗体で形成される複合体がナノ流路201の内壁に形成されている。そして、反応しなかった抗原および一次抗体を洗い流し、発色あるいは発光試薬などの酸素の基質を加えることによって、顕微鏡などにより酵素反応の生成物を検出することができる。
上述のサンドイッチ法を行うには、同一たんぱく質を異なるエピトープで認識する抗体が必要となる。また、抗体の立体障害を考えると、近位ではなく遠位(アミノ酸配列上ではなく立体構造上の遠位)を認識する抗体を使用するが好ましい。また、同一たんぱく質を捕獲抗体と一次抗体の2種類の抗体を用いるため、特異性が非常に高く、目的たんぱく質を高精度で検出することが可能である。
一方、上述の抗体などの解析成分(検出部)をナノ流路の内壁へ配置した後、基体を乾燥させることで、抗原の検出効果を長時間保持することが可能である。従って、ナノ流路の内壁に解析成分(検出部)を配置した状態で基体を保存することが可能である。
なお、ここでは解析成分として抗体が用いられているが、例えば、ペプチド、特定の材料に特異的に吸着する高分子などを用いることもでき、限定されない。その他の解析成分としては、例えば、機能性DNAまたは機能性RNA等も挙げられる。この場合、前記機能性DNAまたは機能性RNAの例としてはアプタマーが挙げられ、前記アプタマーはATP等の解析に用いることが可能である。また、前記アプタマーには、前記機能性DNAアプタマーまたはRNAアプタマーの代わりに、ペプチドアプタマーを使用することも可能である。
次に、本発明にかかる微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法を説明する。
<微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法(第一実施形態)>
本発明の製造方法の第一実施形態を、前述の基体20を例にとって説明する。この場合、前記製造方法は、図41A〜Dで示すように、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーLを、単一の部材59において、微小吸引孔55となる領域に照射する。そして、前記領域に改質部51を形成する工程A1(図41A)と、単一の部材59に、前記空間をなすウェル57及び第一流路58(又は前記空間をなす第二流路57及び第三流路58)を構成する凹部53,54若しくは貫通孔を形成する工程A2(図41B)と、単一の部材59から改質部51をエッチングによって除去する工程A3(図41C)と、を少なくとも有する。
[工程A1]
レーザーL(レーザー光L)は、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光を用いることが好ましい。例えばチタンサファイアレーザー、前記パルス幅を有するファイバーレーザーなどを用いることができる。ただし部材59が透過させる波長を使用することが必要である。より具体的には、部材59に対する透過率が60%以上のレーザー光を使用することが好ましい。
前記レーザーL(レーザー光L)は、加工用レーザーとして使用される一般的な波長領域(0.1〜10um)の光を適用することができる。その中でも、被加工部材である部材59を透過する必要がある。部材59を透過する波長のレーザー光を適用することによって、部材59に対して改質部51を形成することができる。
部材59の材料は、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小吸引孔55を形成する際に、加工性に優れた材料であるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。
更には、部材59の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に捕捉した微生物又は細胞Tを観察する場合、上記の材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、部材59の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、部材59の材料は加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。部材59の材料がこのようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで、改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、捕捉した微生物又は細胞Tを、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図41A〜Dでは、単一の部材59は透明なガラス基板である(以下、ガラス基板59と呼ぶ)。
以下では、部材59がガラス基板である場合について説明するが、部材59の材料がその他の部材、例えばシリコン、石英、又はサファイアの場合であっても、同様に行うことができる。後述する行程A2においては、加工性が良好なシリコン、石英、ガラスがより好適である。
ガラス基板59は、例えば石英からなるガラス基板、珪酸塩を主成分とするガラス、又はホウ珪酸ガラスからなるガラス基板等を用いることができる。合成石英からなるガラス基板が、加工性が良いため好適である。また、ガラス基板59の厚さは特に制限されない。
レーザー光Lの照射方法としては、図41Aに示す方法が挙げられる。すなわち、ガラス基板59の内部に集光して焦点を結ぶようにレーザー光Lを照射して、前記焦点を矢印方向に走査することによって、ガラスが改質された改質部51を形成する。
微小吸引孔55となる領域に、前記焦点をガラス基板59内部で走査することによって、所望の形状の改質部51を形成することができる。
ここで、「改質部」とは、エッチング耐性が低くなり、エッチングによって選択的に又は優先的に除去される部分を意味する。
レーザー光Lを照射する際、照射強度をガラス基板59の加工閾値に近い値又は加工閾値未満に設定すると共に、レーザー光Lの偏波方向(電場方向)を走査方向に対して垂直となるように設定することが好ましい。このレーザー照射方法を、以下ではレーザー照射方法Sと呼ぶ。
レーザー照射方法Sを、図42で説明する。レーザー光Lの伝播方向は矢印Zであり、前記レーザー光Lの偏波方向(電場方向)は矢印Yである。レーザー照射方法Sでは、レーザー光Lの照射領域を、前記レーザー光Sの伝播方向と、前記レーザー光Sの偏波方向に対して垂直な方向により構成される平面50a内とする。これと共に、レーザー照射強度をガラス基板59の加工閾値に近い値又は加工閾値未満とする。
このレーザー照射方法Sによって、ガラス基板59内にナノオーダーの口径を有する改質部51を形成することができる。例えば、短径が20nm程度、長径が0.2μm〜5μm程度の略楕円形状の断面を有する改質部51が得られる。この略楕円形状は、レーザーの伝播方向に沿った方向が長軸で、レーザーの電場方向に沿った方向が短軸となる。レーザー照射の条件によっては、前記断面は矩形に近い形状となることもある。
レーザー照射強度をガラス基板59の加工閾値以上とした場合、得られる改質部51は周期構造を伴って形成される可能性がある。すなわち、ピコ秒オーダー以下のパルスレーザーを加工閾値以上で集光照射させることで、集光部で電子プラズマ波と入射光の干渉が起こり、レーザーの偏波に対して垂直であり、偏波方向に沿って周期性をもつ周期構造が自己形成的に形成される。
形成された周期構造はエッチング耐性の低い層となる。例えば石英の場合、酸素が欠乏した層と酸素が増えた層が周期的に配列され(図43C及び図43D)、酸素欠乏部のエッチング耐性が低くなっており、エッチングを行うと周期的な凹部及び凸部が形成される。このような周期的な凹部及び凸部は、後述する微小吸引孔55の形成においては不要である。
一方、前述のレーザー照射方法Sのように、レーザー照射強度をガラス基板59の加工閾値未満、且つガラス基板59を改質してエッチング耐性を低下させうるレーザー照射強度の下限値以上とすれば、前記周期構造は形成されず、レーザー照射によって一つの酸素欠乏部(エッチング耐性の低い層)が形成される(図43A及び図43B)。これのエッチングを行うと、一つの微小吸引孔55を形成することができる。
前述のレーザー照射方法Sは、微小吸引孔55の形状を楕円又は略楕円とすることができる。また、エッチングによってその短径をナノオーダーサイズで制御することが可能となる。楕円又は略楕円形状での短径を微生物サイズよりも小さくすることで、微生物を捕捉することが出来る。このとき長径はナノオーダーサイズよりも大きくすることもできるため、微小吸引孔55に流入する流体の圧力損失を小さく出来る。また、細胞や微生物を捕捉する前準備として、微小吸引孔55に、あらかじめ流体を充填させる必要がある。この場合、孔が微細であるほど毛細管力が大きくなるため、微小吸引孔55から、流体が空間などの外部に出てこなくなる弊害が発生する場合がある。しかしながら、微小吸引孔55を楕円又は略楕円とすることで、微生物を捕捉するのに十分な短径においても毛細管力は抑制され、流体が空間などの外部に出てこなくなる弊害を抑制することができる。
エッチング耐性が低い層(石英又はガラスにおいては酸素欠乏部)がレーザー照射によって一つだけ形成されるときにおいても(本明細書では改質部51と呼ぶ。)、前記酸素欠乏部は極めてエッチングされやすい層となる。このことは、本発明者らの鋭意検討によって見出された。
したがって、前記加工閾値は、前記周期構造が形成されうるレーザー照射強度の下限値(前記周期構造が形成されないレーザー照射強度の範囲における上限値)と定義される。今後、後述する「加工下限閾値」との混同を避けるため、前記加工閾値は、加工上限閾値と呼ぶこととする。
また、前記「ガラス基板59を改質してエッチング耐性を低下させうるレーザー照射強度の下限値」とは、エッチング処理により、ガラス基板59に微小吸引孔55をあけることができる限界値である。この下限値よりも低いと、レーザー照射によってエッチング耐性の低い層が形成出来ないため、微小吸引孔55があかない。今後、前記レーザー照射強度の下限値は、「加工下限閾値」と呼ぶこととする。
すなわち、「加工上限閾値」とは、基材内に照射したレーザー光の焦点(集光域)において、基材とレーザー光との相互作用によって生じる電子プラズマ波と入射するレーザー光との干渉が起こり、前記干渉によって基材に縞状の改質部が自己形成的に形成されうるレーザー照射強度の下限値である。
また、「加工下限閾値」とは、基材内に照射したレーザー光の焦点(集光域)において、基材を改質した改質部を形成し、後工程であるエッチング処理によって選択的又は優先的にエッチングされうる程度に、前記改質部のエッチング耐性を低下させうるレーザー照射強度の下限値である。この加工下限閾値よりも低いレーザー照射強度でレーザー照射した領域は、後工程であるエッチング処理において選択的又は優先的にエッチングされ難い。このため、エッチング後に微細孔となる改質部を形成するためには、下限閾値以上で上限閾値以下のレーザー照射強度に設定することが好ましい。
加工上限閾値及び加工下限閾値は、レーザー光の波長、レーザー照射対象である基材の材料(材質)及びレーザー照射条件によって概ね決定される。しかし、レーザー光の偏波方向と走査方向との相対的な向きが異なると、加工上限閾値及び加工下限閾値も多少異なる場合がある。例えば、偏波方向に対して走査方向が垂直の場合と、偏波方向に対して走査方向が平行の場合とでは、加工上限閾値及び加工下限閾値が異なる場合がある。したがって、使用するレーザー光の波長及び使用する基材において、レーザー光の偏波方向と走査方向との相対関係を変化させた場合の、それぞれの加工上限閾値及び加工下限閾値を、予め調べておくことが好ましい。
前記偏波としては直線偏波に関して詳細に説明したが、多少の楕円偏波成分を持つレーザーパルスを用いても同様な構造(改質部)が形成されることが容易に想像できる。
レーザー光Lの焦点を走査する方法は特に限定されないが、一度の連続走査によって形成できる改質部51は前記レーザー光の伝播方向(矢印Z方向)と、前記レーザー光の偏波方向(矢印Y方向)に対して垂直な方向により構成される平面50a内に限定される。この平面内であれば任意の形状で改質部を形成することができる。
ここで、図42では、レーザー光Lの伝播方向は、ガラス基板59の上面に対して垂直である場合を示したが、必ずしも垂直である必要はない。前記上面に対して所望の入射角で、レーザーLを照射してもよい。
一般に、改質された部分のレーザーの透過率は、改質されていない部分のレーザーの透過率とは異なる。そのため、改質された部分で透過させたレーザー光の焦点位置を制御することは通常困難である。したがって、レーザー照射する側の面から見て、奥に位置する領域から改質部を形成していくことが望ましい。
また、レーザーの偏波方向(矢印Y方向)を適宜変更することによって、ガラス基板59内に、3次元方向に任意形状を有する改質部を形成することも可能である。
また、図42で示すように、レーザー光Lをレンズ52を用いて集光して、前述の様に照射することによって改質部51を形成してもよい。
前記レンズとしては、例えば屈折式の対物レンズや屈折式のレンズを使用することができるが、他にも例えばフレネル、反射式、油浸、水浸式で照射することも可能である。また、例えばシリンドリカルレンズを用いれば、一度にガラス基板59の広範囲にレーザー照射することが可能である。また、例えばコニカルレンズを用いればガラス基板59の垂直方向に広範囲に一度にレーザー光Lを照射することができる。ただしシリンドリカルレンズを用いた場合には、レーザー光Lの偏波はレンズが曲率を持つ方向に対して水平である必要がある。
レーザー照射条件Sの具体例としては、以下の各種条件が挙げられる。例えばチタンサファイアレーザー(レーザー媒質としてサファイアにチタンをドープした結晶を使用したレーザー)を用いる。照射するレーザー光は、例えば波長800nm、繰返周波数200kHzを使用し、レーザー走査速度1mm/秒としてレーザー光Lを集光照射する。これらの波長、繰返周波数、走査速度の値は一例であり、本発明はこれに限定されず任意に変えることが可能である。
集光に用いるレンズ52としては、例えばN.A.<0.7未満の対物レンズを用いることが好ましい。より微小な微小吸引孔55を形成させるためには、ガラス基板59に照射する際のパルス強度は、加工上限閾値に近い値、たとえば80nJ/pulse程度以下のパワーであることが好ましい。それ以上のパワーであると周期構造が形成され、エッチングによってそれらが繋がるため、ナノオーダーの口径を有する微小吸引孔55を形成することが困難となる、あるいは前記周期構造がそのまま形成されてしまうことがある。また、N.A.≧0.7であっても加工が可能であるが、スポットサイズがより小さくなり、レーザーフルエンスが大きくなるため、より小さなパルス強度でのレーザー照射が求められる。
[工程A2]
つぎに、単一のガラス基板59に、前記空間を形成するウェル57及び第一流路58(又は空間を形成する第二流路57及び第三流路58)を構成する凹部53,54若しくは貫通孔を形成する。前記凹部53,54を形成する方法としては、次の方法が例示できる。
まず、ガラス基板59の上面に、例えばフォトリソグラフィなどによってレジスト52をパターニングする。つづいて、ドライエッチング、ウェットエッチング、又はサンドブラスト等の方法によって、ガラス基板59の上面におけるレジスト52がパターニングされていない領域を、所定の深さに達するまでエッチングして除去する(図41B)。最後に、不要となったレジスト52を剥離すると、第一凹部53及び第二凹部54が形成されたガラス基板59が得られる。この例では、第一凹部53がウェル57となり、第二凹部54が第一流路58となる場合を示した。
工程A2においては、形成する第一凹部53及び第二凹部54の側面に、工程A1で形成した改質部51の断面を露呈させることが好ましい。後段の工程A3におけるエッチング処理によって、微小吸引孔55を形成させることがより容易となる。
また、工程A2において、凹部53,54を形成する代わりに、貫通孔を形成してもよい。この場合、ガラス基板59内の、第一流路及び第二流路となる領域を微小ドリル(レーザードリル)等によってガラス基板59の表面から掘削して貫通孔を形成することで、第一流路(第二流路及び第三流路)を形成してもよい。また、このドリルによる掘削方法と、種々のエッチング法とを組み合わせて使用しても良い。
[工程A3]
つぎに、単一のガラス基板59から、工程A1で形成した改質部51をエッチングによって除去する(図41C)。
エッチング方法としては、ウェットエッチングが好ましい。凹部53,54(若しくは貫通孔)の側面に露呈する断面を有する改質部51は、エッチング耐性が低くなっているため、選択的又は優先的にエッチングすることができる。
このエッチングは、ガラス基板59の改質されていない部分に比べて、改質部51が非常に速くエッチングされる現象を利用する方法であり、結果として改質部51の形状に応じた微小吸引孔55を形成することができる。
前記エッチング液は特に限定されず、例えばフッ酸(HF)を主成分とする溶液、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸等を用いることができる。また、部材59の材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
前記エッチングの結果、ナノオーダーの口径を有する微小吸引孔55を、ガラス基板59内の所定位置に、第一凹部53と第二凹部54とを連通するように、形成することができる。
微小吸引孔55のサイズとしては、例えば、短径が20nm〜200nm程度、長径が0.2μm〜5μm程度の略楕円形状の断面を有する貫通孔とすることができる。エッチング処理の条件によっては、前記断面は矩形に近い形状となることもある。
前記ウェットエッチングの処理時間を調整することによって、微小吸引孔55のサイズを制御することが可能である。
前記処理時間を短くすることによって、前記短径を数nm〜数十nmにすることも理論的には可能である。これとは逆に、前記処理時間を長くすることによって、前記短径を1μm〜2μm程度に、前記長径を5μm〜10μm程度とすることもできる。
つぎに、形成された第二凹部54を覆うように、部材56をガラス基板59の上面に貼り合わせることによって、第一流路58を形成することができる(図41D)。
形成された第一凹部53は、そのままでもウェル57として使用できるが、図41Dに示すようにウェル57の上面を開口させつつ、部材56をガラス基板59に貼り合わせることによって、ウェル57の深さを適宜調整することが可能である。
一方、第一凹部53を覆うように部材56をガラス基板59の上面に貼り合わせることによって、ウェル57の代わりに第二流路57を形成することもできる(不図示)。この場合、第一流路68は、第三流路68と読み替える。
部材56とガラス基板59の上面とを貼り合わせる方法は、部材56の材料に応じて、公知の方法で行えばよい。
また、前記貼り合わせの際に、電気生理学的測定用の電極や配線等を、第一流路58内に適宜設置することもできる。
部材56の材料としては特に制限されず、PDMS、PMMA等の樹脂基板や、ガラス基板を使用することができる。また、部材56の材料は、観察に用いられる光線(例えば可視光線)を透過させない材料で構成されても良い。微生物又は細胞の捕捉のみを目的とする場合は、前記材料は必ずしも観察に用いられる光線を透過させる必要はない。観察に用いられる光線を透過させる部材を用いると、上面から光学的に観察が可能となるため好ましい。
なお、第一流路58を形成するために使用する、第二凹部54を覆う部材としては、必ずしも観察に用いられる光線を透過させる部材である必要はなく、観察に用いられる光線を透過させない部材であってもよい。
工程A2及び工程A3におけるエッチングとしては、ウェットエッチングやドライエッチングが適用できる。ウェットエッチングにおいては、例えば、1%以下のフッ酸を用いるのが最も好ましいが、その他の酸や塩基性を有する材料を用いてもよい。
前記ドライエッチングのうち、等方性エッチング法としては、例えばバレル型プラズマエッチング、平行平板型プラズマエッチング、ダウンフロー型ケミカルドライエッチング、などの各種ドライエッチング方式が挙げられる。
異方性ドライエッチング法としては、反応性イオンエッチング(以下RIE)を用いる方法として、例えば平行平板型RIE、マグネトロン型RIE、ICP型RIE、NLD型RIEなどを使用することができる。RIE以外にも例えば中性粒子ビームを用いたエッチングを使用することが可能である。また、異方性ドライエッチング法を用いる場合には、プロセス圧力を上げる等の手法によって、イオンの平均自由行程を短くし、等方性エッチングに近い加工も可能である。
使用するガスは例えばフロロカーボン系、SF系ガス、CHF3、フッ素ガス、塩素ガス、など材料を化学的にエッチングすることができるガスが主で、それらに適宜その他のガス、例えば酸素、アルゴン、ヘリウムなどを混合し使用することが可能である。また、その他のドライエッチング方式による加工も可能である。
工程A2においては、異方性エッチングがより好ましく、工程A3においては、等方性エッチングがより好ましい。
<微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法(第二実施形態)>
本発明の製造方法の第二実施形態を、前述の基体20を例にとって説明する。この場合、前記製造方法は、図44A〜Eで示すように、単一の部材69に、前記空間を形成するウェル67及び第一流路68(又は前記空間を形成する第二流路67及び第三流路68)を構成する凹部63,64若しくは貫通孔を形成する工程B1(図44B)と、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーLを、単一の部材69の微小吸引孔65となる領域に照射することによって、該前記領域に改質部61を形成する工程B2(図44C)と、単一の部材69から改質部61をエッチングによって除去する工程B3(図44D)と、を少なくとも有する。
部材69の材料は、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小吸引孔65を形成する際に、加工性に優れた材料であるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。
更には、前記部材69の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に捕捉した微生物又は細胞Tを観察する場合、上記の材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、部材69の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、部材69の材料は加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。部材69の材料がこのようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで、改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、捕捉した微生物又は細胞Tを、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記基材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図44A〜Eでは、単一の部材69は透明なガラス基板である(以下、ガラス基板69と呼ぶ)。
[工程B1]
工程B1は、本発明の製造方法の第一態様における工程A2と同様に行うことができる。すなわち、ガラス基板69の上面に、フォトリソグラフィによってレジスト62をパターニングする(図44A)。つづいて、ドライエッチング、ウェットエッチング、又はサンドブラスト等の方法によって、ガラス基板69の上面におけるレジスト62がパターニングされていない領域を、所定の深さに達するまでエッチングして除去する(図44B)。最後に、不要となったレジスト62を剥離すると、第一凹部63及び第二凹部64が形成されたガラス基板59が得られる。この例では、第一凹部63がウェル67となり、第二凹部64が第一流路68となる場合を示した。
また、工程B1において、凹部63,64を形成する代わりに、基板内部に流路を形成してもよい。この場合、ガラス基板69内の、第一流路及び第二流路となる領域をドリル(レーザードリル)やピコ秒オーダー以下の時間幅を有するレーザー改質とその選択的なエッチング等によってガラス基板69の表面から掘削して貫通孔を形成することで、第一流路(第二流路及び第三流路)を形成してもよい。また、このドリルによる掘削方法と、種々のエッチング法と組み合わせて使用しても良い。
[工程B2]
つぎに、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーLを、単一のガラス基板69の微小吸引孔65となる領域に照射することによって、前記領域に改質部61を形成する(図44C)。
具体的には、本発明の製造方法の第一態様における工程A1と同様に行うことができる。このとき、第一凹部63及び第二凹部64の側面に露呈する部位にレーザー光Lを集光照射して改質部61を形成する場合は、液浸露光によってレーザー光Lを照射することが、より望ましい(図44C)。前記側面に露呈する部位に形成される改質部61の形状(微小吸引孔65の端部の形状)の精度を高めることができる。
[工程B3]
つづいて、単一のガラス基板69から、工程B2で形成した改質部61をエッチングによって除去する(図44D)。
エッチング方法としては、ウェットエッチングが好ましい。凹部63,64(若しくは貫通孔)の側面に露呈する断面を有する改質部61は、エッチング耐性が低くなっているため、選択的又は優先的にエッチングすることができる。
具体的には、本発明の製造方法の第一態様における工程A3と同様に行うことができる。
前記エッチングの結果、ナノオーダーの口径を有する微小吸引孔65を、ガラス基板69内の所定位置に、第一凹部63と第二凹部64とを連通するように、形成することができる。
つぎに、形成された第二凹部64を覆うように、部材66をガラス基板69の上面に貼り合わせることによって、第一流路68を形成することができる(図44E)。
形成された第一凹部63は、そのままでもウェル67として使用できるが、図44Eに示すようにウェル67の上面を開口させつつ、部材66をガラス基板69に貼り合わせることによって、ウェル67の深さを適宜調整することが可能である。
一方、第一凹部63を覆うように部材66をガラス基板69の上面に貼り合わせることによって、ウェル67の代わりに第二流路67を形成することもできる(不図示)。この場合、第一流路68は、第三流路68と読み替える。
部材66とガラス基板69の上面とを貼り合わせる方法は、部材66の材料に応じて、公知の方法で行えばよい。
また、前記貼り合わせの際に、電気生理学的測定用の電極や配線等を、第一流路68内に適宜設置することもできる。
部材66の材料としては特に制限されず、PDMS、PMMA等の樹脂基板や、ガラス基板を使用することができる。また、部材66の材料は、観察に用いられる光線(例えば可視光線)を透過させない材料で構成されても良い。微生物又は細胞の捕捉のみを目的とする場合は、前記材料は必ずしも観察に用いられる光線を透過させる必要はない。観察に用いられる光線を透過させる部材を用いると、上面から光学的に観察が可能となるため好ましい。
なお、第一流路68を形成するために使用する、第二凹部64を覆う部材としては、必ずしも観察に用いられる光線を透過させる部材である必要はなく、観察に用いられる光線を透過させない部材であってもよい。
<脂質膜を形成するための基体の第一実施形態>
[基体10A−1]
図46は、本発明にかかる、脂質膜を形成するための基体(以下では、単に「基体」と呼ぶことがある。)の第一実施形態である基体10A−1の斜視図である。図47は、図46のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体10A−1は脂質膜を形成する微小孔1を備えた基体である。基体10A−1には、基材4内に設けられ、脂質を含む液体Pを流入させる空間(ウェル2)と、ウェル2と基材4の外部とを連通する微小孔1とを含み、基材4のうち、少なくとも微小孔1を構成する部位は、単一の部材で形成される。
ここで「前記空間に脂質を含む液体Pを流入させる」とは、前記空間の外部から前記空間に液体Pを入れることを意味する。流入された液体Pは、前記空間に留まって滞留(又は完全に静止)してもよいし、前記空間の外へ流出してもよい。後者の場合、連続的に液体Pを前記空間に流入させることによって、液体Pの流れが前記空間において生じる。このことは、本発明にかかる基体の全てに適用される。
基体10A−1では、基材4の上面側にウェル2が設けられている。前記ウェル2が、前記脂質を含む液体を流入させる空間を構成している。
ウェル2の側面2aに、微小孔1の第1端部1aが露呈する開口部Uが形成される。ウェル2の上面又は下面2bの少なくとも一部分は、前記開口部Uに形成された脂質膜Mを光学的に観察可能なように、開口するか或いは透明な部材(不図示)で構成される。また、基体10A−1の、少なくとも微小孔1を構成する部位は、単一の部材で形成される。
このようにウェル2の側面2aに微小孔1が開口している場合、基体10A−1の上面から観察することで、脂質膜Mの形成過程をウェル2の側面側から容易に観察できるため、脂質膜Mの形成における制御が容易となる。或いは前記側面2aに対して斜めの角度から、開口部Uに形成した脂質膜Mを観察することも出来る。
本発明において、液体Pに含まれる脂質としては特に制限されず、例えば、細胞膜に含まれる脂質であるリン脂質がある。リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン等が挙げられる。これらの両親媒性の脂質を用いると、微小孔1の開口部Uに、脂質二重膜構造を有する脂質膜Mを形成することができる。この際、脂質成分として、コレステロールを添加すると、脂質膜の強度を高められることがある。
本発明において、液体Pに含まれる脂質を溶解する溶媒としては、脂質を溶解できれば特に制限されないが、水と混和しない溶媒が好ましい。脂質膜Mを容易に形成できる。このような溶媒としては、例えば、ヘキサデカン等の有機溶媒、スクアレン(スクワレン)等の油脂が挙げられる。
図46に示す基体10A−1においては、前記単一の部材は、微小孔1を構成するだけでなく、基材4全体を構成している。
前記単一の部材の材料としては、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小孔1を形成する際に、加工性に優れた材料であるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。
更には、前記単一の部材の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に捕捉した微生物又は細胞Tを観察する場合、上記の材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
これらの材料は溶媒を吸収しないため、脂質膜形成の際に、開口部の口径が変化したり、微小孔の体積が変化したりすることは、ほとんど起こらない。このことは、微小孔1の開口部Uがナノスケールの単位(nm)で形成されている場合には、決定的に重要な要素である。ナノスケールの開口部Uは、溶媒を吸収して膨張すると容易に閉じてしまう。開口部Uの形状や大きさが変化しないことによって、形成した脂質膜のサイズが実験毎に変化することないため、再現性の高い実験が可能である。
なお、開口部Uを構成する材料が溶媒を吸収して膨張する場合、ナノスケールの開口部Uを形成することは困難である。しかしマイクロスケールの単位(μm)で形成することは可能である。
本発明の微小孔1の開口部Uは貼り合わせ面の無い単一の部材で構成されている。つまり、開口部Uの周囲は線膨張係数の等しい部材で構成されている。このため、基体10A−1の使用温度が変わったり、基体10A−1の温度とは異なる温度の液体を空間2(ウェル2)に流入したりした際に生じ得る、開口部Uに近い位置に急激な温度変化が起きた場合にも、開口部Uが貼りあわせ面で破断する恐れが無い。さらに、開口部Uに貼り合せ面がないので、開口部Uの薬液に対する化学耐性も高い。このため、貼り合せ面を侵食するような薬液であっても使用することができる。
また、形成した脂質膜を光学顕微鏡等で観察する場合、開口部Uに貼り合せ面があると、前記貼り合せ面が光を反射して観察の邪魔になる場合がある。本発明の微小孔1の開口部Uは貼り合せ面を持たない単一の部材で形成されるため、観察の邪魔になる反射光が生じる恐れが無い。
また、前記単一の部材の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、前記単一の部材の材料は、加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。前記単一の部材の材料がこのようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで、改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、形成した脂質膜Mを、前記単一部材を透して光学顕微鏡等用いて容易に光学的に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図46では、基材4を構成する単一の部材は透明なガラス基板である。
図47に示すように、微小孔1はウェル2と基材4の外部とを連通する。微小孔1の第1端部1aはウェル2の側面2aに露呈し(開口し)、開口部Uをなす。微小孔1の第2端部1bは基材4の側面に露呈している。
本発明において、微小孔1が前記空間(ウェル2)と基材4の外部とを連通する際、図46の基体10A−1のように微小孔1の第2端部1bが基材4の側面(外部)に露呈し、開口しても良い。さらに、例えば後述する基体(図69)における微小孔31αのように、微小孔31αの第2端部が、第一流路33αに開口し、その第一流路33αを介して、基材34の外部へ連通しても良い。また、外部と連通する流路は第一流路33αに限定されず、その他の経路(例えば流路、ウェル等)を介して、第2端部が基材34の外部へ連通してもよい。
ここで説明した「前記空間と前記基材の外部とを連通する微小孔」の意味は、本発明にかかる基体の全てに適用される。
本発明の基体における開口部Uに脂質膜Mを形成する方法としては、次に説明する方法が例示できる。
まず、ウェル2(空間2)に生理学的食塩水等やpH緩衝液等のバッファ液5を入れて、微小孔1の第2端部1b側からシリンジやポンプ等の吸引部(不図示)によって、微小孔1内にバッファ液5を流入させる(図48A)。この際、微小孔1の孔径が小さいほど、他端部1bからバッファ液5が出てこない場合がある。この場合、例えばエタノールなどの毛細管力の小さな液体を予め、ウェル2(空間2)側から流入させ、他端部1bから前記液体を出し、その後、前記液体をバッファ液5と置換することが必要となる。つづいて、ウェル2から、ピペット等(不図示)を使用してバッファ液5を除去する。この際、微小孔1内のバッファ液5において、開口部Uに表面張力で水面を露呈させる(図48B)。
つぎに、ウェル2に前記脂質を含む液体Pを流入し、開口部Uにおいて、液体Pとバッファ液5の水面を接触させる。この際、液体Pに含まれる脂質分子が、分子中の極性部をバッファ液5側に向けて、バッファ液5の水面に付着する。これにより、バッファ液5の水面は、脂質分子によって覆われる(図48C)。
その後、ウェル2から、ピペット等を使用して液体Pを除去すると、開口部Uに留まるバッファ液5の水面には、前記付着した脂質分子で形成される脂質膜Mが形成される(図48D)。
さらに、ウェル2内に、バッファ液5を流入させると、ウェル2内のバッファ液5と微小孔1内のバッファ液5とが、開口部Uの脂質膜Mによって隔たれた状態となる(図48E)。
この状態における脂質膜Mは、少なくとも前記脂質分子で形成される脂質二重膜構造及び前記脂質分子で形成される単層の脂質膜構造の一方をとりうる。この状態において、微小孔1内のバッファ液5に、シリンジやポンプ等によって、圧力を加える又は圧力を減じる操作を行うことによって、脂質膜Mの厚さを制御でき、脂質二重膜構造を形成することも可能である(図48F)。この圧力操作の際は、ウェル2側を密閉しておくことが好ましい。それにより、脂質膜Mに対して十分な圧力変化を起こすことができる。
微小孔1は、単一のガラス基板4に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を持たない貫通孔である。当然に、微小孔の端部における開口部Uについても、継ぎ目や貼り合わせ面は存在しない。このため、脂質膜Mと開口部Uとの密着力を十分に高められる。また、微小孔1及び微小孔1の周辺部は、単一のガラス基板4に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を持たない貫通孔であるため、ガラス基板4の変形や薬液によるダメージなどから、貼り合わせ面における剥離や破損が生じない。よって、ガラス基板4を、加熱消毒や薬液消毒を繰り返して行ったとしても、ガラス基板4が破損することがない。これは、日常的に加熱消毒や薬液消毒を行うことが必要とされる、膜脂質を形成する基体にとって、特に優れた特徴であるといえる。更には、微小孔1に近い位置において屈折率差が生じないので、開口部Uからの光をより集光させ易い。そのため、形成された脂質膜Mを、容易に観察することができる。ここで「開口部U」とは、ウェル2の側面2aにおいて、微小孔1の第1端部1aが開口し、脂質膜Mが形成される領域をいう。
開口部Uを構成する、微小孔1の第1端部1aの、ウェル2の側面2aにおける孔の形状は、どの様な形状でもよく、例えば、円又は略円、楕円又は略楕円、矩形、又は三角形、とすることができる。孔の形状が円又は略円の場合には、その直径又は長径が0.02μm〜5μmの範囲であることが好ましい。また、形成した脂質膜Mについて、パッチクランプ法による電気生理学的測定を行う場合においても、直径又は長径が0.02〜5μmの範囲であることがより好ましい。より小さい面積の脂質膜Mを形成することによって、より精密な電気生理学的測定を行うことができる。このため、より好適には直径又は長径が0.02〜3μmの範囲であることが挙げられる。
上記範囲の下限値未満であると、開口部Uの面積が小さすぎて、適切に脂質膜Mが形成されない恐れがある。上記範囲の上限値超であると、微小孔1と脂質膜Mとのシール性が下がり、長時間の安定した脂質膜形成が出来ない恐れがある。
前記微小孔の孔径をナノオーダーで高精度に加工することにより、従来よりも更にサイズの小さな脂質膜を形成することが可能となり、従来、複数の分子の集合体として観察されていた膜タンパク質の機能を単一分子で観察することが可能となる。その結果、今まで解明されてこなかった膜タンパク質の様々な分子特性を確認する手段となりうる。さらに孔の開口部の径を微小化することにより、脂質膜に導入された膜タンパク質の電気生理学的特性を測定する際に、脂質膜と開口部との安定したシール性が実現されるため、電気生理学的特性の測定を安定して行うことが可能である。
図47において、微小孔1は、ウェル2の側面2aに対して略垂直となるように形成されている。しかし、必ずしも略垂直である必要はなく、基体10A−1の設計に合わせて、単一のガラス基板4において自由に配置可能である。
微小孔1は、基体10A−1に複数配置されていてもよい。各々の微小孔1に対して開口部Uが各々備わるため、複数の脂質膜Mを形成できる。
一つのウェル2に複数の微小孔1が配置されるとき、一つの微小孔1の第2端部1b側にそれぞれ独立したシリンジやポンプ等の吸引部(不図示)を接続することによって、微小孔1の吸引を個別に制御することが可能である。そのため、微小孔1における脂質膜Mの形成および維持を独立して制御出来る。
基材4の材料がシリコン、ガラス、石英、又はサファイアなどであると、それらの材料は加工性に優れるので、複数の微小孔1を密集させて配置することが可能である。
基体10A−1では、ウェル2の下面2bはガラス基板からなる基材4で構成されている。下面2bに対向する、ウェル2の上面は開口されて蓋を有さない。そのため、この下面2b及び上面の少なくとも一方から、顕微鏡等の光学的観察部によって、開口部Uに形成された脂質膜Mを観察することができる。なお、前記上面は必ずしも無蓋である必要はなく、プラスチック、樹脂やガラス等の部材で形成される蓋によって、覆われていてもよい(不図示)。開口部Uにおける脂質膜Mの形成を観察しながら行うことが可能であるため、脂質膜Mの状態に応じて適切に吸引力を調整することが可能である。
形成した脂質膜Mの電気生理学的測定を行う場合には、例えばウェル2及び微小孔1b側にそれぞれ電極(不図示)を配置すればよい。或いは、バッファ液などを介し外部の電極を用いてもよい。開口部Uは単一のガラス基板4形成されるで、脂質膜Mに対して高抵抗性シールを形成することが可能である。したがって、従来公知のパッチクランプ法が適用できる。このとき、開口部Uを構成する微小孔1の第1端部1a側の孔の口径を、従来のパッチピペット等の孔の口径(2〜4μm程度)よりも小さくすることによって、従来よりも精度の高い電気生理学的測定を行うことができる。
[基体10B−1]
本発明の脂質膜を形成するための基体の実施形態は、図49の基体10B−1にも示される。基体10B−1では、基材4の上面側に流路3が設けられている。前記流路3は、前記脂質を含む液体Pを流入及び流通させる空間である。
基体10A−1におけるウェル2と比べて、基体10B−1における流路3の方がより大量の液体Pを流入及び流通させることができる。また、流路3(空間2)における溶液の交換が行い易いという利点がある。前述の脂質膜Mの形成方法で説明したように、バッファ液5、前記脂質を含む液体P等の複数の溶液を、開口部Uに順次接触させる操作がより容易になる。
基体10B−1の他の構成については、基体10A−1と同様である。
[基体10C−1]
本発明の脂質膜を形成するための基体の実施形態は、図50の基体10C−1にも示される。基体10C−1では、基材4の上面側に微小孔1の第2端部1bが設けられている。つまり、微小孔1の第2端部1bは、基材4の側面に限らず、任意の面に設けることができる。
基体10C−1の他の構成については、基体10A−1と同様である。
[基体10D−1]
本発明の脂質膜を形成するための基体の実施形態は、図51の基体10D−1にも示される。基体10D−1では、ウェル2の下面2bに微小孔1の第1端部1aからなる開口部が設けられている。つまり、微小孔1の第1端部1aは、前記空間を構成するウェル2の側面に限らず、任意の面に設けることができる。
開口部を空間の下面(底面)に設けた場合には、開口部に形成した脂質膜Mを基体の上面から観察し易いという利点がある。基体10D−1の他の構成については、基体10A−1と同様である。
[基体10E−1]
本発明の脂質膜を形成するための基体の実施形態は、図52の基体10E−1にも示される。基体10E−1では、ウェル2の下面2bに微小孔1の第1端部1aが設けられている。このとき、各微小孔1の第1端部1aは分岐して二つに分かれ、ウェル2の下面2bに第2端部1bの二倍の数の開口部を形成している。つまり、微小孔1の第1端部1aは、分岐して前記空間の複数の位置に開口していてもよい。この構成によって、多数の開口部を空間に配置することができ、より多くの脂質膜Mを形成することができる。また、第1端部1aの数は第2端部1bの数の1倍又は2倍に限られず、所望の数を配置することができる。
基体10E−1の他の構成については、基体10A−1と同様である。
[基体10F−1]
本発明の脂質膜を形成するための基体の実施形態は、図53の基体10F−1にも示される。基体10F−1では、基材4の上面にウェル2が二つ配置されて、各ウェル2に対して微小孔1の分岐した第1端部1aがそれぞれ一つずつ配置されている。ウェル2を二つ有する構成によって、各ウェル2にウェル1とは異なる液体Pを流入させることができるので、多検体処理に適している。ウェル2の数は1又は2に限られず、所望の数を配置することができる。
基体10F−1の他の構成については、基体10A−1と同様である。
[基体10G−1]
本発明の脂質膜を形成するための基体の実施形態は、図54の基体10G−1にも示される。基体10G−1では、基材4の上面にウェル2α,2βが二つ配置されて、各ウェル2の側面に対して微小孔1の第1端部1aと第2端部1bとがそれぞれ配置されている。この場合、第1端部1aが開口するウェル2αに前記脂質を含む液体Pを流入させる。これに対して、第2端部2bが開口するウェル2βには、吸引部を直接的に又は間接的に別途接続する。この場合、ウェル2βを陰圧にして、ウェル2αに流入した液体Pを、ウェル2β側へ引き込むことができる。よって、例えば、前述の脂質膜Mの形成方法によって、ウェル2αの側面に開口する第1端部1aからなる開口部Uに脂質膜Mを形成することができる。つまり、微小孔1の第2端部1bは、基材の側面又は一面に限らず、上記のように、基材4の上面に設けられた凹部(ウェル2β)の側面に設けることもできる。また、ウェルの数は2つに限られず、所望の数を配置することができる。
基体10G−1の他の構成については、基体10A−1と同様である。
なお、基体10A−1〜10G−1のウェル2又は流路3は、無蓋である必要は無く、適宜蓋を設けてもよい(不図示)。蓋を設けることによって、液体Pをウェル2内に保持し易くなり、或いは流路3における液体Pの流通性を高められる場合がある。また、開口部Uに形成した脂質膜Mに対する前記圧力操作の際は、流路3側を密閉しておくことが好ましい。それにより、脂質膜Mに対して十分な圧力変化を起こすことができる。
[基体10H−1]
本発明の脂質膜を形成するための基体の実施形態は、図55の基体10H−1にも示される。図56は、図55のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体10H−1は、前述の基体10C−1の構成に加えて、基材4の上面に基板6を貼り合せて形成される。基材4の上面には、ウェル2が設けられている。基板6において、そのウェル2と対向する位置は、くり貫かれて貫通し、上面へ開口している。この構成によれば、基板6の厚み分だけ、ウェル2の容積を増やすことができ、流入させる液体Pの量を増加させられる。また、基材4の上面には、微小孔1の第2端部1bが配置されている。基板6において、その第2端部1bと対向する位置に、流路7が設けられている。この構成によれば、流路7に直接的又は間接的に吸引部を接続することによって、ウェル2内の液体Pを、微小孔1を介して、流路7へ引き込んで吸引することができる。よって、例えば、前述の脂質膜Mの形成方法によって、微小孔1の第1端部1aにおける開口部Uで、脂質膜Mを形成できる。なお、基板6を透明な部材によって形成される場合、上面側からまたは下面側からの、どちらからでも観察が可能である。
基体10H−1の他の構成については、基体10A−1と同様である。
前記基板6の材料は特に制限されず、例えばPDMS、PMMA等の樹脂基板、シリコン基板、及びガラス基板が挙げられる。基材4と同じ材料で形成される場合、容易に貼り合わせることが可能である。基材4と基板6の貼り合せは公知の方法で行えばよい。
[基体10I−1]
本発明の脂質膜を形成するための基体の実施形態は、図57の基体10I−1にも示される。図58は、図57のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体10I−1は、前述の基体10B−1の構成に加えて、基材4の上面に基板6を貼り合せて形成される。基材4の上面には、流路3が設けられている。この構成によれば、流路3に、バッファ液、前記脂質を含む液体Pを順次、流入及び流通させられる。また、基材4の上面には、微小孔1の第2端部1bが配置されている。基板6において、その第2端部1bと対向する位置に、流路7が設けられている。この構成によれば、流路7に直接的又は間接的に吸引部を接続することによって、流路3内の液体Pを、微小孔1を介して、流路7へ引き込んで吸引することができる。よって、例えば、前述の脂質膜Mの形成方法によって、微小孔1の第1端部1aにおける開口部Uで、脂質膜Mを形成できる。
基体10I−1の他の構成については、基体10B−1と同様である。
前記基板6の材料は特に制限されず、例えばPDMS、PMMA等の樹脂基板、シリコン基板、及びガラス基板が挙げられる。基材4と同じ材料で形成される場合、容易に貼り合わせることが可能である。基材4と基板6の貼り合せは公知の方法で行えばよい。
<脂質膜を形成するための基体の第二実施形態>
図59は、本発明にかかる、脂質膜を形成するための基体の第二実施形態である基体20−1の斜視図である。図60は、図59のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体20−1は脂質膜Mを形成する微小孔11を備えた、脂質膜を形成するための基体である。基体20−1には、前記脂質を含む液体Pを流入させる、基材14に内在する空間を構成するウェル12、内部を陰圧にすることが可能な第一流路13、及びウェル12と第一流路13とを連通する微小孔11、が少なくとも備えられている。前記微小孔11は、第一流路13を通じて、基材14の外部へ連通する。ウェル12の側面12aに、微小孔11の第1端部11aが露呈する開口部Uが形成され、ウェル12の上面又は下面12bの少なくとも一部分は、開口部Uに形成された脂質膜Mを光学的に観察可能なように、開口するか或いは透明な部材(不図示)で構成される。基材14のうち、少なくとも微小孔11を構成する部位は、単一の部材で形成される。
図59に示す基体20−1においては、前記単一の部材は、微小孔11を構成するだけでなく、基材14全体を構成している。
前記単一の部材の材料は、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小孔11の加工性に優れるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受け難い、非結晶質である方が好ましい。
更には、前記単一の部材の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に脂質膜Mを観察する場合、上記の材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、前記単一の部材の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、前記単一の部材の材料は、加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。前記単一の部材の材料がこのようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで、改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、形成した脂質膜Mを、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図59では、基材14を構成する単一の部材は透明なガラス基板である。
図60に示すように、微小孔1はウェル12と第一流路13とを連通する。微小孔11の第1端部11aはウェル12の側面12aに露呈し(開口し)、開口部Uをなす。微小孔11の第2端部11bは第一流路13の側面に露呈している。
微小孔11は、単一のガラス基板4に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を有さない貫通孔である。当然に、微小孔の端部における開口部Uについても、継ぎ目や貼り合わせ面は存在しない。ここで「開口部U」とは、ウェル12の側面12aにおいて、微小孔11の第1端部11aが開口し、脂質膜Mが形成される領域をいう。
開口部Uを構成する、微小孔11の第1端部11aの、ウェル12の側面12aにおける孔の形状は、矩形、三角形、楕円、又は円のいずれであってもよい。前記孔の直径又は長径が0.02μm〜5μmの範囲であれば、脂質膜Mを容易に形成することができる。また、形成した脂質膜Mについて、パッチクランプ法による電気生理学的測定を行う場合においても、短径が0.02〜5μmの範囲であることが好ましい。より小さい面積の脂質膜Mを形成することによって、より精密な測定を行うことができる。このため、より好適には直径又は長径が0.02〜3μmの範囲であることが挙げられる。
上記範囲の下限値未満であると、開口部Uの面積が小さすぎて、適切に脂質膜Mが形成されない恐れがある。上記範囲の上限値超であると、微小孔11と脂質膜Mとのシール性が下がり、長時間の安定した脂質膜形成が出来ない恐れがある。
図60において、微小孔11は、ウェル12の側面12aに対して略垂直となるように形成されている。しかし、必ずしも略垂直である必要はなく、基体20−1の設計に合わせて、単一のガラス基板14において自由に配置可能である。
微小孔11は、基体20−1に複数配置されていてもよい。各々の微小孔11に対して開口部Uが各々備わるため、複数の脂質膜Mを形成できる。
ウェル12の下面12bはガラス基板14で構成されている。下面12bに対向する、ウェル12の上面は開口されて無蓋となっている。この下面12b及び上面の少なくとも一方から、顕微鏡等の光学的観察部によって、開口部Uに形成された脂質膜Mを観察することができる。なお、前記上面は必ずしも無蓋である必要はなく、プラスチックや樹脂、ガラス等の部材で形成される蓋によって、覆われていてもよい(不図示)。
第一流路13の下面13bはガラス基板14で構成され、第一流路13の上面13cは、プラスチックやガラス等の部材15から構成されている。これにより、第一流路13は半密閉状態の空間となる。第一流路13の上流側には、微小孔11の第2端部11bが露呈して開口している。第一流路13の下流側には、第一流路13の内部を陰圧にすることが可能なシリンジやポンプ等の陰圧部が備えられている(不図示)。したがって、ウェル12の上面から流入された液体Pが、第一流路13の内部を陰圧にすることによって、微小孔11を介して第一流路3側へ引き込まれる。よって、例えば、前述の脂質膜Mの形成方法によって、微小孔11の第1端部1aにおける開口部Uで、脂質膜Mを形成できる。
図60に示すように、ウェル12の側面12aの一部を部材15が構成していてもよい。これによって、ウェル12の深さを部材15の厚みによって適宜調整することができる。
例えば、部材15を複数積層することによって、ウェル12を深くすることができる。
さらに、図61に示すように、積層した部材15の高さ(厚さ)を利用して、第一流路13の下流側を基体20の上面に配置することも可能である。
部材15の材料としては特に制限されず、PDMS、PMMA等の樹脂基板や、ガラス基板を使用することができる。
なお、ウェル12の側面12a及び第一流路13の上面13cを構成する部材は、観察に用いられる光線(例えば可視光線)を透過させない材料で構成されても良い。脂質膜Mの形成のみを目的とする場合は、部材15の材料は必ずしも観察に用いられる光線を透過させる必要はない。観察に用いられる光線を透過させる部材を用いると、上面から光学的に観察が可能となるため好ましい。
形成した脂質膜Mの電気生理学的測定を行う場合には、例えば図62に示すように、ウェル12及び第一流路13にそれぞれ電極16,17を配置することができる。または、バッファ液などを介し外部の電極を用いて電気生理学的測定を行うことができる。開口部Uは単一のガラス基板14で形成されるので、脂質膜Mに対して高抵抗性シールを形成することが可能である。したがって、従来公知のパッチクランプ法が適用できる。このとき、開口部Uを構成する微小孔11の第1端部11aからなる孔の口径を、従来のパッチピペット等の孔の口径(2〜4μm程度)よりも小さくすることによって、従来よりも精度の高い電気生理学的測定を行うことができる。
なお、電極16,17は、ウェル12及び第一流路13に連通する別の流路、例えば、後述する第四流路及び第五流路の少なくとも一方に配置されていてもよい。
<脂質膜を形成するための基体の第三実施形態>
図63は、本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の第三実施形態である基体30−1の斜視図である。図64は、図63のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体30−1は脂質膜Mを形成する微小孔21を備えた脂質膜を形成するための基体である。基体30−1には、前記脂質を含む液体Pを流入させる、基材24に内在する空間を構成する第二流路22、内部を陰圧にすることが可能な第三流路23、及び第二流路22と第三流路23とを連通する微小孔21、が少なくとも備えられている。前記微小孔21は、第一流路23を通じて、基材24の外部へ連通する。第二流路22の側面22aに、微小孔21の第1端部21aが露呈する開口部Uが形成され、第二流路22の上面22c又は下面22bの少なくとも一部分は、開口部Uに形成された脂質膜Mを光学的に観察可能なように、透明な部材25で構成されている。基材24のうち、少なくとも微小孔21を構成する部位は、単一の部材で形成される。
図63に示す基体30−1においては、前記単一の部材は、微小孔21を構成するだけでなく、基材24全体を構成している。
前記単一の部材の材料は、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小孔21を形成する際に、加工性に優れた材料であるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。
更には、前記単一の部材の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に脂質膜Mを観察する場合、可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、前記単一の部材の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、前記単一の部材の材料は、加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。前記単一の部材の材料がこのようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、形成した脂質膜Mを、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図63では、基材24を構成する単一の部材は透明なガラス基板である。
図64に示すように、微小孔21は第二流路22と第三流路23とを連通する。微小孔21の第1端部21aは第二流路22の側面22aに露呈し(開口し)、開口部Uをなす。微小孔21の第2端部21bは第三流路23の側面に露呈している。
微小孔21は、単一のガラス基板24に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を有さない貫通孔である。当然に、微小孔の端部における開口部Uについても、継ぎ目や貼り合わせ面は存在しない。ここで「開口部U」とは、第二流路22の側面22aにおいて、微小孔21の第1端部21aが開口し、脂質膜Mが形成される領域をいう。
開口部Uを構成する、微小孔21の第1端部21aの、第二流路22の側面22aにおける孔の形状は、矩形、三角形、楕円、又は円のいずれであってもよい。前記孔の直径又は長径が0.02μm〜5μmの範囲であれば、脂質膜Mを容易に形成することができる。また、形成した脂質膜Mについて、パッチクランプ法による電気生理学的測定を行う場合においても、直径が0.02〜5μmの範囲であることが好ましい。より小さい面積の脂質膜Mを形成することによって、より精密な測定を行うことができる。このため、より好適には直径又は長径が0.02〜3μmの範囲であることが挙げられる。
上記範囲の下限値未満であると、開口部Uの面積が小さすぎて、適切に脂質膜Mが形成されない恐れがある。上記範囲の上限値超であると、微小孔21と脂質膜Mとのシール性が下がり、長時間の安定した脂質膜形成が出来ない恐れがある。
図63において、微小孔21は、第二流路22の側面22aに対して略垂直となるように形成されている。しかし、必ずしも略垂直である必要はなく、基体30−1の設計に合わせて、単一のガラス基板24において自由に配置可能である。
微小孔21は、基体30−1に複数配置されていてもよい。各々の微小孔21に対して開口部Uが各々備わるため、複数の脂質膜Mを形成できる。
第二流路22の下面22bはガラス基板24で構成されている。下面22bに対向する第二流路22の上面22cは、プラスチックやガラス等の部材25で構成されている。この上面22c又は下面22bから、顕微鏡等の光学的観察部によって、開口部Uに形成された脂質膜Mを観察することができる。
第三流路23の下面23bはガラス基板24で構成され、第三流路23の上面23cは部材25から構成されている。これにより、第三流路23は半密閉状態の空間となる。第三流路23の上流側には、微小孔21の第2端部21bが露呈して開口している。第三流路23の下流側には、第三流路23の内部を陰圧にすることが可能なシリンジやポンプ等の陰圧部が備えられている(不図示)。したがって、第二流路22の上流側F1から、第二流路22の下流側F2へ流入された液体Pの一部が、第三流路23の内部を陰圧にすることによって、微小孔21を介して第三流路23側へ引き込まれる。よって、例えば、前述の脂質膜Mの形成方法によって、微小孔21の第1端部21aにおける開口部Uで、脂質膜Mを形成できる。
また、図65に示すように、第二流路22の側面22aの一部を部材25が構成していてもよい。これによって、第二流路22における液体Pの流量を部材25の厚みによって適宜調整することができる。
例えば、部材25を複数積層することによって、第二流路22の径を大きくすることができる。さらに、積層した部材25の高さ(厚さ)を利用して、第三流路23の下流側を基体30の上面に配置することも可能である。
部材25の材料としては特に制限されず、PDMS、PMMA等の樹脂基板や、ガラス基板を使用することができる。
なお、第三流路23の上面23cを構成する部材は、観察に用いられる光線(例えば可視光線)を透過させない材料で構成されても良い。脂質膜Mの形成のみを目的とする場合は、部材25の材料は必ずしも観察に用いられる光線を透過させる必要はない。観察に用いられる光線を透過する部材を用いると、上面から光学的に観察が可能となるため好ましい。
形成した脂質膜Mの電気生理学的測定を行う場合には、例えば図66に示すように、第二流路22及び第三流路23にそれぞれ電極26,27を配置することができる。または、バッファ液などを介し外部の電極を用いて電気生理学的測定を行うことができる。開口部Uは単一のガラス基板24で形成されるので、脂質膜Mに対して高抵抗性シールを形成することが可能である。したがって、従来公知のパッチクランプ法が適用できる。このとき、開口部Uを構成する微小孔21の第1端部21aからなる孔の口径を、従来のパッチピペット等の孔の口径(2〜4μm程度)よりも小さくすることによって、従来よりも精度の高い電気生理学的測定を行うことができる。
なお、電極26,27は、第二流路22及び第三流路23に連通する別の流路、例えば、後述する第四流路及び第五流路の少なくとも一方に配置されていてもよい。
第三実施形態の基体30−1では、第二実施形態の基体20−1におけるウェル12に代えて、第二流路22を採用している。第二流路22には、連続的に液体Pを流通させることができるので、ウェル22を採用した場合に比べて使用できる液体Pを絶えず流し続けることが可能となる。また、流路22における溶液の交換が行い易いという利点がある。前述の脂質膜Mの形成方法で説明したように、バッファ液、前記脂質を含む液体P等の複数の溶液を、開口部Uに順次接触させる操作がより容易になる。
<脂質膜を形成するための基体の第四実施形態>
図67は、本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の第四実施形態である基体40−1の斜視図である。図68は、図67のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体40−1は脂質膜Mを形成する微小孔31を備えた脂質膜を形成するための基体である。基体40−1には、前記脂質を含む液体Pを流入させる、基材34に内在する空間を構成するウェル32、内部を陰圧にすることが可能な第一流路33、及びウェル32と第一流路33とを連通する微小孔31、が少なくとも備えられている。前記微小孔31は、第一流路33を通じて、基材34の外部へ連通する。ウェル32の側面32aに、微小孔31の第1端部31aが露呈する開口部Uが形成され、ウェル32の上面又は下面32bの少なくとも一部分は、開口部Uに形成された脂質膜Mを光学的に観察可能なように、開口するか或いは透明な部材35で構成される。基材34のうち、少なくとも微小孔31を構成する部位は、単一の部材で形成される。
図67に示す基体40−1においては、前記単一の部材は、微小孔31を構成するだけでなく、基材34全体を構成している。
前記単一の部材の材料は、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小孔31を形成する際に、加工性に優れた材料であるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。
更には、前記単一の部材の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に脂質膜Mを観察する場合、上記の材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、前記単一の部材の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、前記単一の部材の材料は、加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。前記単一の部材の材料がこのようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで、改質部を形成することができる。
また、前記単一の部材の材料は、可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一の部材の材料が可視光領域の光を透過させることによって、形成した脂質膜Mを、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図67では、基材34を構成する単一の部材は透明なガラス基板である。
図68に示すように、微小孔31はウェル32と第一流路33とを連通する。微小孔31の第1端部31aはウェル32の側面32aに露呈し(開口し)、開口部Uをなす。微小孔31の第2端部31bは第一流路33の側面に露呈している。
微小孔31は、単一のガラス基板34に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を有さない貫通孔である。当然に、微小孔の端部における開口部Uについても、継ぎ目や貼り合わせ面は存在しない。ここで「開口部U」とは、ウェル32の側面32aにおいて、微小孔31の第1端部31aが開口し、脂質膜Mが形成される領域をいう。
開口部Uを構成する、微小孔31の第1端部31aの、ウェル32の側面32aにおける孔の形状は、矩形、三角形、楕円、又は円のいずれであってもよい。前記孔の直径又は長径が0.02μm〜5μmの範囲であれば、脂質膜Mを容易に形成することができる。また、形成した脂質膜Mについて、パッチクランプ法による電気生理学的測定を行う場合においても、直径が0.02〜5μmの範囲であることが好ましい。より小さい面積の脂質膜Mを形成することによって、より精密な測定を行うことができる。このため、より好適には直径又は長径が0.02〜3μmの範囲であることが挙げられる。
上記範囲の下限値未満であると、開口部Uの面積が小さすぎて、適切に脂質膜Mが形成されない恐れがある。上記範囲の上限値超であると、微小孔31と脂質膜Mとのシール性が下がり、長時間の安定した脂質膜形成が出来ない恐れがある。
図68において、微小孔31は、ウェル32の側面32aに対して略垂直となるように形成されている。しかし、必ずしも略垂直である必要はなく、基体40−1の設計に合わせて、単一のガラス基板34において自由に配置可能である。
微小孔31は、基体40−1に複数配置されていてもよい。例えば、図69に示すように、基体40−1の高さ(厚さ)方向に、複数の微小孔31を並列配置してもよい。この例では、各々の微小孔31に対して、開口部U及び第一流路33α,33βが各々備わるため、各開口部Uの動作を独立に制御することができ、複数の脂質膜Mを各開口部Uに形成することができる。
ウェル32の下面32bは部材35で構成されている。下面32bに対向する、ウェル32の上面は開口されて無蓋となっている。この上面又は下面32bから、顕微鏡等の光学的観察部によって、開口部Uに形成された脂質膜Mを観察することができる。
なお、前記上面は必ずしも無蓋である必要はなく、プラスチックや樹脂、ガラス等の部材で形成される蓋によって、覆われていてもよい(不図示)。
第一流路33の下面33bは、プラスチックやガラス等の部材35で構成され、第一流路33の上面33cは、ガラス基板34から構成されている。これにより、第一流路33は半密閉状態の空間となる。第一流路33の上流側には、微小孔31の第2端部31bが露呈して開口している。第一流路33の下流側には、第一流路33の内部を陰圧にすることが可能なシリンジやポンプ等の陰圧部が備えられている(不図示)。したがって、ウェル32の上面から流入された液体Pが、第一流路33の内部を陰圧にすることによって、微小孔31を介して第一流路33側へ引き込まれる。よって、例えば、前述の脂質膜Mの形成方法によって、微小孔31の第1端部31aにおける開口部Uで、脂質膜Mを形成できる。
図70に示すように、ウェル32の側面32aの一部を部材36が構成していてもよい。これによって、ウェル32の深さを部材36の厚みによって適宜調整することができる。
例えば、部材36を複数積層することによって、ウェル32を深くすることができる。
さらに、積層した部材36の高さ(厚さ)を利用して、第一流路33の下流側を基体40−1の上面に配置することも可能である。
部材35,36の材料としては特に制限されず、PDMS、PMMA等の樹脂基板や、ガラス基板を使用することができる。
なお、ウェル32の側面32a及び第一流路33の上面33cを構成する部材は、観察に用いられる光線(例えば可視光線)を透過させない材料で構成されても良い。脂質膜Mの形成のみを目的とする場合は、部材35,36の材料が必ずしも観察に用いられる光線を透過させる必要はない。部材35,36の材料が観察に用いられる光線を透過させる部材を用いると、上面から光学的に観察が可能となるため好ましい。
形成した脂質膜Mの電気生理学的測定を行う場合には、ウェル32及び第一流路33等に電極を配置して、第二実施形態の基体20−1で説明した様に行うことができる。
<脂質膜を形成するための基体の第五実施形態>
図71は、本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の第五実施形態である基体50−1の斜視図である。図72は、図71のA−A線に沿う断面を示す模式図である。
基体50−1は脂質膜Mを形成する微小孔41を備えた脂質膜を形成するための基体である。基体50−1には、前記脂質を含む液体Pを流入させる、基材44に内在する空間を構成する第二流路42、内部を陰圧にすることが可能な第三流路43、及び第二流路42と第三流路43とを連通する微小孔41、が少なくとも備えられている。前記微小孔41は、第三流路43を通じて、基材44の外部へ連通する。第二流路42の側面42aに、微小孔41の第1端部41aが露呈する開口部Uが形成され、第二流路42の上面42c又は下面42bの少なくとも一部分は、開口部Uに形成された脂質膜Mを光学的に観察可能なように、透明な部材45で構成されている。基材44のうち、少なくとも微小孔41を構成する部位は、単一の部材で形成される。
図71に示す基体50においては、前記単一の部材は、微小孔41を構成するだけでなく、基材44全体を構成している。
前記単一の部材の材料は、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小孔41を形成する際に、加工性に優れた材料であるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。
更には、前記単一の部材の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に脂質膜Mを観察する場合、上記の材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、前記単一の部材の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、前記単一の部材の材料は、加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。前記単一の部材の材料がこのようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、形成した脂質膜Mを、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図71では、基材44を構成する単一の部材は透明なガラス基板である。
図72に示すように、微小孔41は第二流路42と第三流路43とを連通する。微小孔41の第1端部41aは第二流路42の側面42aに露呈し(開口し)、開口部Uをなす。微小孔41の第2端部41bは第三流路43の側面に露呈している。
微小孔41は、単一のガラス基板44に形成されており、継ぎ目又は貼り合わせ面を有さない貫通孔である。当然に、微小孔の端部における開口部Uについても、継ぎ目や貼り合わせ面は存在しない。ここで「開口部U」とは、第二流路42の側面42aにおいて、微小孔41の第1端部41aが開口し、脂質膜Mが形成される領域をいう。
開口部Uを構成する、微小孔41の第1端部41aの、第二流路42の側面42aにおける孔の形状は、矩形、三角形、楕円、又は円のいずれであってもよい。前記孔の直径又は長径が0.02μm〜5μmの範囲であれば、脂質膜Mを容易に形成することができる。また、形成した脂質膜Mについて、パッチクランプ法による電気生理学的測定を行う場合は、直径が0.02〜5μmの範囲であることが好ましい。より小さい面積の脂質膜Mを形成することによって、より精密な測定を行うことができる。このため、より好適には直径又は長径が0.02〜3μmの範囲であることが挙げられる。
上記範囲の下限値未満であると、開口部Uの面積が小さすぎて、適切に脂質膜Mが形成されない恐れがある。上記範囲の上限値超であると、微小孔41と脂質膜Mとのシール性が下がり、長時間の安定した脂質膜形成が出来ない恐れがある。
図72において、微小孔41は、第二流路42の側面42aに対して略垂直となるように形成されている。しかし、必ずしも略垂直である必要はなく、基体50−1の設計に合わせて、単一のガラス基板44において自由に配置可能である。
微小孔41は、基体50−1に複数配置されていてもよい。各々の微小孔41に対して開口部Uが各々備わるため、複数の脂質膜Mを形成できる。
第二流路42の下面42bはプラスチックや樹脂、ガラス等の部材45で構成されている。下面42bに対向する第二流路42の上面42cは、ガラス基板で形成される基材44で構成されている。この上面42c及び下面42bの少なくとも一方から、顕微鏡等の光学的観察部によって、形成された脂質膜Mを観察することができる。
第三流路43の下面43bは部材45で構成され、第三流路43の上面43cはガラス基板44から構成されている。これにより、第三流路43は半密閉状態の空間となる。
第三流路43の上流側には、微小孔41の第2端部41bが露呈して開口している。第三流路43の下流側には、第三流路43の内部を陰圧にすることが可能なシリンジやポンプ等の陰圧部が備えられている(不図示)。したがって、第二流路42の上流側F1から、第二流路42の下流側F2へ流入された液体Pの一部が、第三流路43の内部を陰圧にすることによって、微小孔41を介して第三流路43側へ引き込まれる。よって、例えば、前述の脂質膜Mの形成方法によって、微小孔41の第1端部41aにおける開口部Uで、脂質膜Mを形成できる。
部材45の材料としては特に制限されず、PDMS、PMMA等の樹脂基板や、ガラス基板を使用することができる。
なお、第三流路43の下面43bを構成する部材は、観察に用いられる光線(例えば可視光線)を透過させない材料で構成されても良い。脂質膜Mの形成のみを目的とする場合は、部材45の材料は必ずしも観察に用いられる光線を透過させる必要はない。観察に用いられる光線を透過させる部材を用いると、上面から光学的に観察が可能となるため好ましい。
形成した脂質膜Mの電気生理学的測定を行う場合には、第二流路42及び第三流路43等に電極を配置して、第二実施形態の基体20−1で説明した様に行うことができる。あるいは、バッファ液などを介し外部の電極を用いて電気生理学的測定を行うことができる。
図73は、本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例である基体20A−1の模式的な上面図(上面から見た透視図)である。この上面図におけるウェル12、微小孔11、及び第一流路13の配置構成は、前述の第二実施形態の基体20−1及び第四実施形態の基体40−1等に適用可能である。
ガラス基板14には、ウェル12と第一流路13がそれぞれ4セット配置されている。
ウェル12と第一流路13とが微小孔11を介して連通していることは、前述の通りである。開口部Uの位置は、「X」の印で示してある。
一つのウェル12に複数の第一流路13が配置されることも可能であり、この際、一つの第一の流路13に対して微小孔11はそれぞれ少なくとも一つ以上を設ける。このように一つのウェル12に複数の第一流路13が配置される形状である場合、それぞれの第一流路13に対して、独立にシリンジやポンプ等の吸引部(不図示)を接続することによって、独立して第一流路13の吸引を制御することが可能となる。そのため、微小孔11による脂質膜Mの形成を独立して制御出来る。
図74は、本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例である基体30A−1の模式的な上面図(上面から見た透視図)である。この上面図における第二流路22、微小孔21、及び第三流路23の配置構成は、前述の第三実施形態の基体30−1及び第五実施形態の基体50−1等に適用可能である。
ガラス基板24には、第二流路22と第三流路23がそれぞれ3セット配置されている。第二流路22と第三流路23とが微小孔21を介して連通していることは、前述の通りである。開口部Uの位置は、「X」の印で示してある。
第二流路22の上流側F1から、液体Pが流入されて、第二流路22の下流側F2へ流通する。
一つの第二流路22に複数の第三流路23を配置することも可能であり、この際、一つの第三の流路23に対して微小孔21はそれぞれ少なくとも一つ以上を設ける。このように一つの第二流路22に複数の第三流路23が配置される形状である場合、それぞれの第三流路23に対して、独立にシリンジやポンプ等の吸引部(不図示)を接続することによって、独立して第三流路23の吸引を制御することが可能である。そのため、微小孔21による脂質膜Mの形成を独立して制御出来る。
図75は、本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例である基体30B−1の模式的な上面図(上面から見た透視図)である。この上面図における第二流路22、微小孔21、第三路23、及び第五流路28の配置構成は、前述の第三実施形態の基体30−1及び第五実施形態の基体50−1等に適用可能である。
ガラス基板24に配置された、第二流路22と第三流路23とが微小孔21を介して連通していることは、前述の通りである。開口部Uの位置は、「X」の印で示してある。開口部Uが設けられた領域Wは、第二流路22の流路幅が拡張されている。このため、第二流路22の上流側F1から、液体Pが流入されて、第二流路22の下流側F2へ流通する際、領域Wにおいて、液体Pを滞留させることができる。前記滞留によって、前述の脂質膜Mの形成方法において、液体Pに含まれる脂質分子を、開口部Uに付着させて、脂質膜Mの形成が容易になる。また領域Wの蓋を開口させることで、ウェルとして機能させることも可能である。
ガラス基板24には第五流路28が配置されている。第五流路28は第三流路23と連通するように交差している。第五流路28の上流側F3から下流側F4へ、所望の薬液又はガスを流通させることによって、第三流路23内にも前記薬液又はガスを拡散流入させることができる。また、第三流路23内に拡散した薬液をガスへ置換することも可能である。
第五流路28が第三流路23に連通する場所や、第五流路28の形状は特に限定されない。そのため、例えば、微小孔21に近い位置に第五流路28を配置することも可能であり、第五流路28と第三流路23はそれぞれの機能を代替することが可能である。また第五流路28はF3側あるいはF4側のみを有する構成も可能であり、F3あるいはF4のいずれかの機能を第三流路23が果たすことも可能であるし、複数の第五流路28や複数に分岐した第五流路28が配置されてもよい。
図76は、本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の一例である基体30C−1の模式的な上面図(上面から見た透視図)である。この上面図における第二流路22、微小孔21、第三流路23、第五流路28、及び第四流路29の配置構成は、前述の第三実施形態の基体30−1及び第五実施形態の基体50−1等に適用可能である。
ガラス基板24に配置された、第二流路22と第三流路23とが微小孔21を介して連通していることは、前述の通りである。開口部Uの位置は、「X」の印で示してある。
ガラス基板24に配置された第五流路28は、第三流路23と連通するように交差している。第五流路28の上流側F3から下流側F4へ、所望の薬液又はガスを流通させることによって、第三流路23内にも前記薬液又はガスを拡散流入させることができる。また、第三流路23内に拡散した薬液をガスへ置換することも可能である。
第五流路28が第三流路23に連通する場所や、第五流路28の形状は特に限定されない。そのため、例えば、微小孔21に近い位置に第五流路28を配置することも可能であり、第五流路28と第三流路23はそれぞれの機能を代替することが可能である。また第五流路28はF3側あるいはF4側のみを有する構成も可能であり、F3あるいはF4のいずれかの機能を第三流路23が果たすことも可能であるし、複数の第五流路28や複数に分岐した第五流路28が配置されてもよい。
また、ガラス基板24に配置された第四流路29は、第二流路22と連通している。第四流路29から第二流路22へ、所望の薬液又はガスを流通させることによって、第二流路22内にも前記薬液又はガスを拡散流入させることができる。つまり、前記薬液又はガスを、開口部Uに形成された脂質膜Mへ接触させることができる。なお、図76では、第二流路22の上流側はF5で示し、下流側はF6で示してある。
第四流路29が第二流路22に連通する場所や、第四流路29の形状は特に限定されない。そのため、微小孔21に近い位置に第四流路29を配置することも可能であり、第四流路29と第二流路22の上流側(F5側)はそれぞれの機能を代替することが可能である。また複数の第四流路29や複数に分岐した第四流路29が第二流路22に連通し、配置されてもよい。
第四流路29は、第二流路22に代えてウェルに連通するように設けることも可能である。つまり、図76において、第二流路22をウェルに置き換えた構成とすることもできる。
次に、本発明にかかる脂質膜を形成するための基体の製造方法を説明する。
<脂質膜を形成するための基体の製造方法(第一実施形態)>
本発明の製造方法の第一実施形態を、前述の基体20−1を例にとって説明する。この場合、前記製造方法は、図77A〜Dで示すように、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーLを、単一の部材59において、微小孔55となる領域に照射する。そして、前記領域に改質部51を形成する工程A1(図77A)と、単一の部材59に、前記空間をなすウェル57及び第一流路58(又は前記空間をなす第二流路57及び第三流路58)を構成する凹部53,54若しくは貫通孔を形成する工程A2(図77B)と、単一の部材59から改質部51をエッチングによって除去する工程A3(図77C)と、を少なくとも有する。
[工程A1]
レーザーL(レーザー光L)は、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光を用いることが好ましい。例えばチタンサファイアレーザー、前記パルス幅を有するファイバーレーザーなどを用いることができる。ただし部材59を透過する波長を使用することが必要である。より具体的には、部材59に対する透過率が60%以上のレーザー光を使用することが好ましい。
前記レーザーL(レーザー光L)は、加工用レーザーとして使用される一般的な波長領域(0.1〜10um)の光を適用することができる。その中でも、被加工部材である部材59を透過する必要がある。部材59を透過する波長のレーザー光を適用することによって、部材59に対して改質部51を形成することができる。
部材59の材料は、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小孔55を形成する際に、加工性に優れた材料であるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。
更には、前記部材59の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に脂質膜Mを観察する場合、上記材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、部材59の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、部材59の材料は、加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。部材59の材料がこのようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザー照射を照射することで、改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、形成した脂質膜Mを、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記部材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図77A〜Dでは、単一の部材59は透明なガラス基板である(以下、ガラス基板59と呼ぶ)。
以下では、部材59がガラス基板である場合について説明するが、部材59がその他の材料、例えばシリコン、石英、又はサファイアで形成される場合であっても、同様に行うことができる。後述する行程A2においては、加工性が良好なシリコン、石英、ガラスがより好適である。
ガラス基板59は、例えば石英で形成されるガラス基板、珪酸塩を主成分とするガラス、ホウ珪酸ガラスで形成されるガラス基板等を用いることができる。合成石英で形成されるガラス基板が、加工性が良いため好適である。また、ガラス基板59の厚さは特に制限されない。
レーザー光Lの照射方法としては、図77Aに示す方法が挙げられる。すなわち、ガラス基板59の内部に集光して焦点を結ぶようにレーザー光Lを照射して、前記焦点を矢印方向に走査することによって、ガラスが改質された改質部51を形成する。
微小孔55となる領域に、前記焦点をガラス基板59内部で走査することによって、所望の形状の改質部51を形成することができる。
ここで、「改質部」とは、エッチング耐性が低くなり、エッチングによって選択的に又は優先的に除去される部分を意味する。
レーザー光Lを照射する際、照射強度をガラス基板59の加工上限閾値に近い値又は加工上限閾値未満に設定すると共に、レーザー光Lの偏波方向(電場方向)を走査方向に対して垂直となるように設定することが好ましい。このレーザー照射方法を、以下ではレーザー照射方法Sと呼ぶ。
レーザー照射方法Sを、図78で説明する。レーザー光Lの伝播方向は矢印Zであり、前記レーザー光Lの偏波方向(電場方向)は矢印Yである。レーザー照射方法Sでは、レーザー光Lの照射領域を、前記レーザー光の伝播方向と、前記レーザー光の偏波方向に対して垂直な方向により構成される平面50a内とする。これと共に、レーザー照射強度をガラス基板59の加工上限閾値に近い値又は加工上限閾値未満とする。
このレーザー照射方法Sによって、ガラス基板59内にナノオーダーの口径を有する改質部51を形成することができる。例えば、短径が20nm程度、長径が0.2μm〜5μm程度の略楕円形状の断面を有する改質部51が得られる。この略楕円形状は、レーザーの伝播方向に沿った方向が長軸で、レーザーの電場方向に沿った方向が短軸となる。レーザー照射の条件によっては、前記断面は矩形に近い形状となることもある。
レーザー照射強度をガラス基板59の加工上限閾値以上とした場合、得られる改質部51は周期構造を伴って形成される可能性がある。すなわち、ピコ秒オーダー以下のパルスレーザーを加工上限閾値以上で集光照射させることで、集光部で電子プラズマ波と入射光の干渉が起こり、レーザーの偏波に対して垂直であり、偏波方向に沿って周期性をもつ周期構造が自己形成的に形成される。
形成された周期構造はエッチング耐性の低い層となる。例えば石英の場合、酸素が欠乏した層と酸素が増えた層が周期的に配列され(図79C及び図79D)、酸素欠乏部のエッチング耐性が弱くなっており、エッチングを行うと周期的な凹部及び凸部が形成されうる。このような周期的な凹部及び凸部は、後述する微小孔55の形成においては不要である。
一方、前述のレーザー照射方法Sのように、レーザー照射強度をガラス基板59の加工上限閾値未満、且つガラス基板59を改質してエッチング耐性を低下させうるレーザー照射強度の下限値(加工下限閾値)以上とすれば、前記周期構造は形成されず、レーザー照射によって一つの酸素欠乏部(エッチング耐性の低い層)が形成される(図79A及び図79B)。これのエッチングを行うと、一つの微小孔55を形成することができる。
前述のレーザー照射方法Sは、微小孔55の形状を楕円又は略楕円とすることができる。また、エッチングによってその短径をナノオーダーサイズで制御することが可能となる。楕円又は略楕円形状での短径をナノオーダーサイズとすることで、脂質膜をより容易に形成し易くなることがある。このとき長径はナノオーダーサイズよりも大きくすることもできるため、微小吸引孔55に流入する流体の圧力損失を小さく出来る。また、脂質膜を形成する前準備として、微小吸引孔55に、あらかじめバッファ液等の液体を充填させる必要がある。この場合、孔が微細であるほど毛細管力が大きくなるため、微小吸引孔55から、液体が空間などの外部に出てこなくなる弊害が発生する場合がある。しかしながら、微小孔55を楕円又は略楕円とすることで、脂質膜を形成するのに十分な短径においても毛細管力は抑制され、液体が空間などの外部に出てこなくなる弊害を抑制することができる。
エッチング耐性が低い層(石英又はガラスにおいては酸素欠乏部)がレーザー照射によって一つだけ形成されるときにおいても(本明細書では改質部51と呼ぶ。)、前記酸素欠乏部は極めてエッチングのされやすい層となる。このことは、本発明者らの鋭意検討によって見出された。
したがって、前記加工上限閾値は、前記周期構造が形成されうるレーザー照射強度の下限値(前記周期構造が形成されないレーザー照射強度の範囲における上限値)と定義される。
また、前記「ガラス基板59を改質してエッチング耐性を低下させうるレーザー照射強度の下限値(加工下限閾値)」とは、エッチング処理により、ガラス基板59に微小孔55をあけることができる限界値である。この下限値よりも低いと、レーザー照射によってエッチング耐性の弱い層が形成出来ないため、微小孔55があかない。
すなわち、「加工上限閾値」とは、基材内に照射したレーザー光の焦点(集光域)において、基材とレーザー光との相互作用によって生じる電子プラズマ波と入射するレーザー光との干渉が起こり、前記干渉によって基材に縞状の改質部が自己形成的に形成されうるレーザー照射強度の下限値である。
また、「加工下限閾値」とは、基材内に照射したレーザー光の焦点(集光域)において、基材を改質した改質部を形成し、後工程であるエッチング処理によって選択的又は優先的にエッチングされうる程度に、前記改質部のエッチング耐性を低下させうるレーザー照射強度の下限値である。この加工下限閾値よりも低いレーザー照射強度でレーザー照射した領域は、後工程であるエッチング処理において選択的又は優先的にエッチングされ難い。このため、エッチング後に微細孔となる改質部を形成するためには、下限閾値以上で上限閾値以下のレーザー照射強度に設定することが好ましい。
加工上限閾値及び加工下限閾値は、レーザー光の波長、レーザー照射対象である基材の材料(材質)及びレーザー照射条件によって概ね決定される。しかし、レーザー光の偏波方向と走査方向との相対的な向きが異なると、加工上限閾値及び加工下限閾値も多少異なる場合がある。例えば、偏波方向に対して走査方向が垂直の場合と、偏波方向に対して走査方向が平行の場合とでは、加工上限閾値及び加工下限閾値が異なる場合がある。したがって、使用するレーザー光の波長及び使用する基材において、レーザー光の偏波方向と走査方向との相対関係を変化させた場合の、それぞれの加工上限閾値及び加工下限閾値を、予め調べておくことが好ましい。
前記偏波としては直線偏波に関して詳細に説明したが、多少の楕円偏波成分を持つレーザーパルスを用いても(改質部)が形成されることが容易に想像できる。
レーザー光Lの焦点を走査する方法は特に限定されないが、一度の連続走査によって形成できる改質部51は前記レーザー光の伝播方向(矢印Z方向)と、前記レーザー光の偏波方向(矢印Y方向)に対して垂直な方向により構成される平面50a内に限定される。この平面内であれば任意の形状で改質部を形成することができる。
ここで、図78では、レーザー光Lの伝播方向は、ガラス基板59の上面に対して垂直である場合を示したが、必ずしも垂直である必要はない。前記上面に対して所望の入射角で、レーザーLを照射してもよい。
一般に、改質された部分のレーザーの透過率は、改質されていない部分のレーザーの透過率とは異なる。そのため、改質された部分で透過させたレーザー光の焦点位置を制御することは通常困難である。したがって、レーザー照射する側の面から見て、奥に位置する領域にから改質部を形成していくことが望ましい。
また、レーザーの偏波方向(矢印Y方向)を適宜変更することによって、ガラス基板59内に、3次元方向に任意形状を有する改質部を形成することも可能である。
また、図78で示すように、レーザー光Lをレンズ52を用いて集光して、前述の様に照射することによって改質部51を形成してもよい。
前記レンズとしては、例えば屈折式の対物レンズや屈折式のレンズを使用することができるが、他にも例えばフレネル、反射式、油浸、水浸式で照射することも可能である。また、例えばシリンドリカルレンズを用いれば、一度にガラス基板59の広範囲にレーザー照射することが可能である。また、例えばコニカルレンズを用いればガラス基板59の垂直方向に広範囲に一度にレーザー光Lを照射することができる。ただしシリンドリカルレンズを用いた場合には、レーザー光Lの偏波はレンズが曲率を持つ方向に対して水平である必要がある。
レーザー照射条件Sの具体例としては、以下の各種条件が挙げられる。例えばチタンサファイアレーザー(レーザー媒質としてサファイアにチタンをドープした結晶を使用したレーザー)を用いる。照射するレーザー光は、例えば波長800nm、繰返周波数200kHzを使用し、レーザー走査速度1mm/秒としてレーザー光Lを集光照射する。これら波長、繰返周波数、走査速度の値は一例であり、本発明はこれに限定されず任意に変えることが可能である。
集光に用いるレンズ52としては、例えばN.A.<0.7未満の対物レンズを用いることが好ましい。より微小な微小吸引孔55を形成させるためには、ガラス基板59に照射する際のパルス強度は、加工上限閾値に近い値、たとえば80nJ/pulse程度以下のパワーであることが好ましい。それ以上のパワーであると周期構造が形成され、エッチングによってそれらが繋がるため、ナノオーダーの口径を有する微小吸引孔55を形成することが困難となる、あるいは前記周期構造がそのまま形成されてしまうことがある。また、N.A.≧0.7であっても加工が可能であるが、スポットサイズがより小さくなり、レーザーフルエンスが大きくなるため、より小さなパルス強度でのレーザー照射が求められる。
[工程A2]
つぎに、単一のガラス基板59に、前記空間形成するウェル57及び第一流路58(又は空間形成する第二流路57及び第三流路58)を構成する凹部53,54若しくは貫通孔を形成する。前記凹部53,54を形成する方法としては、次の方法が例示できる。
まず、ガラス基板59の上面に、例えばフォトリソグラフィなどによってレジスト52をパターニングする。つづいて、ドライエッチング、ウェットエッチング、又はサンドブラスト等の方法によって、ガラス基板59の上面におけるレジスト52がパターニングされていない領域を、所定の深さに達するまでエッチングして除去する(図77B)。最後に、不要となったレジスト52を剥離すると、第一凹部53及び第二凹部54が形成されたガラス基板59が得られる。この例では、第一凹部53がウェル57となり、第二凹部54が第一流路58となる場合を示した。
工程A2においては、形成する第一凹部53及び第二凹部54の側面に、工程A1で形成した改質部51の断面を露呈させることが好ましい。後段の工程A3におけるエッチング処理によって、微小孔55を形成させることがより容易となる。
また、工程A2において、凹部53,54を形成する代わりに、貫通孔を形成してもよい。この場合、ガラス基板59内の、第一流路及び第二流路となる領域を微小ドリル(レーザードリル)等によってガラス基板59の表面から掘削して貫通孔を形成することで、第一流路(第二流路及び第三流路)を形成してもよい。また、このドリルによる掘削方法は、種々のエッチング法と組み合わせて使用しても良い。
[工程A3]
つぎに、単一のガラス基板59から、工程A1で形成した改質部51をエッチングによって除去する(図77C)。
エッチング方法としては、ウェットエッチングが好ましい。凹部53,54(若しくは貫通孔)の側面に露呈する断面を有する改質部51は、エッチング耐性が低くなっているため、選択的又は優先的にエッチングすることができる。
このエッチングは、ガラス基板59の改質されていない部分に比べて、改質部51が非常に速くエッチングされる現象を利用する方法であり、結果として改質部51の形状に応じた微小孔55を形成することができる。
前記エッチング液は特に限定されず、例えばフッ酸(HF)を主成分とする溶液、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸等を用いることができる。また、部材59の材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
前記エッチングの結果、ナノオーダーの口径を有する微小孔55を、ガラス基板59内の所定位置に、第一凹部53と第二凹部54とを連通するように、形成することができる。
微小孔55のサイズとしては、例えば、短径が20nm〜200nm程度、長径が0.2μm〜5μm程度の略楕円形状の断面を有する貫通孔とすることができる。エッチング処理の条件によっては、前記断面は矩形に近い形状となることもある。
前記ウェットエッチングの処理時間を調整することによって、微小孔55のサイズを制御することが可能である。
前記処理時間を短くすることによって、前記短径を数nm〜数十nmにすることも理論的には可能である。これとは逆に、前記処理時間を長くすることによって、前記短径を1μm〜2μm程度に、前記長径を5μm〜10μm程度とすることもできる。
つぎに、形成された第二凹部54を覆うように、部材56をガラス基板59の上面に貼り合わせることによって、第一流路58を形成することができる(図77D)。
形成された第一凹部53は、そのままでもウェル57として使用できるが、図77Dに示すようにウェル57の上面を開口させつつ、部材56をガラス基板59に貼り合わせることによって、ウェル57の深さを適宜調整することが可能である。
一方、第一凹部53を覆うように部材56をガラス基板59の上面に貼り合わせることによって、ウェル57の代わりに第二流路57を形成することもできる(不図示)。この場合、第一流路68は、第三流路68と読み替える。
部材56とガラス基板59の上面とを貼り合わせる方法は、部材56の材料に応じて、公知の方法で行えばよい。
また、前記貼り合わせの際に、電気生理学的測定用の電極や配線等を、第一流路58内に適宜設置することもできる。
部材56の材料としては特に制限されず、PDMS、PMMA等の樹脂基板や、ガラス基板を使用することができる。また、部材56の材料は、観察に用いられる光線(例えば可視光線)を透過させない材料で構成されても良い。脂質膜の形成のみを目的とする場合は、部材56の材料が必ずしも観察に用いられる光線を透過させる必要はない。観察に用いられる光線を透過させる部材を用いると、上面から光学的に観察が可能となるため好ましい。
なお、第一流路58を形成するために使用する、第二凹部54を覆う部材としては、必ずしも観察に用いられる光線を透過させる部材である必要はなく、観察に用いられる光線を透過させない部材であってもよい。
工程A2及び工程A3におけるエッチングとしては、ウェットエッチングやドライエッチングが適用できる。ウェットエッチングにおいては、例えば、1%以下のフッ酸を用いるのが最も好ましいが、その他の酸や塩基性を有する材料を用いてもよい。
前記ドライエッチングのうち、等方性エッチング法としては、例えばバレル型プラズマエッチング、平行平板型プラズマエッチング、ダウンフロー型ケミカルドライエッチング、などの各種ドライエッチング方式が挙げられる。
異方性ドライエッチング法としては、反応性イオンエッチング(以下RIE)を用いる方法として例えば平行平板型RIE、マグネトロン型RIE、ICP型RIE、NLD型RIEなどを使用することができる。RIE以外にも例えば中性粒子ビームを用いたエッチングを使用することが可能である。また、異方性ドライエッチング法を用いる場合には、プロセス圧力を上げる等の手法によって、イオンの平均自由行程を短くし、等方性エッチングに近い加工も可能である。
使用するガスは例えばフロロカーボン系、SF系ガス、CHF3、フッ素ガス、塩素ガス、など材料を化学的にエッチングすることができるガスが主で、それらに適宜その他のガス、例えば酸素、アルゴン、ヘリウムなどを混合し使用することが可能である。また、その他のドライエッチング方式による加工も可能である。
工程A2において、異方性エッチングがより好ましく、工程A3においては、等方性エッチングがより好ましい。
<脂質膜を形成するための基体の製造方法(第二実施形態)>
本発明の製造方法の第二実施形態を、前述の基体20−1を例にとって説明する。この場合、前記製造方法は、図80A〜Eで示すように、単一の部材69に、前記空間形成するウェル67及び第一流路68(又は前記空間形成する第二流路67及び第三流路68)を構成する凹部63,64若しくは貫通孔を形成する工程B1(図80B)と、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーLを、単一の部材69の微小孔65となる領域に照射することによって、前記領域に改質部61を形成する工程B2(図80C)と、単一の部材69から改質部61をエッチングによって除去する工程B3(図80D)と、を少なくとも有する。
部材69の材料は、例えばシリコン、ガラス、石英、サファイアなどが挙げられる。これらの材料は、微小孔65を形成する際に、加工性に優れた材料であるので好ましい。なかでも、結晶方位による加工異方性の影響を受けにくい非結晶質である方が好ましい。
更には、部材69の材料にガラス、石英、サファイアを採用し、顕微鏡等を用いて光学的に形成した脂質膜を観察する場合、上記の材料は可視光線(波長0.36μm〜0.83μm)を透過させるため、より観察に適している。
また、部材69の材料は、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
具体的には、部材69の材料は、加工用レーザー光として使用される一般的な波長領域(0.1μm〜10μm)の、少なくとも一部領域の光を透過させることが好ましい。部材69の材料がこのようなレーザー光を透過させる場合、後述するように、前記部材にレーザーを照射することで、改質部を形成することができる。
また、前記単一部材は可視光領域(約0.36μm〜約0.83μm)の光を透過させることが、より好ましい。前記単一部材が可視光領域の光を透過させる場合、形成した脂質膜を、前記単一部材を透して肉眼で容易に観察することができる。
なお、本発明における「透過(透明)」とは、前記部材に光を入射して、前記基材から透過光が得られる状態の全てをいう。
図80A〜Eでは、単一の部材69は透明なガラス基板である(以下、ガラス基板69と呼ぶ)。
[工程B1]
工程B1は、本発明の製造方法の第一態様における工程A2と同様に行うことができる。すなわち、ガラス基板69の上面に、フォトリソグラフィによってレジスト62をパターニングする(図80A)。つづいて、ドライエッチング、ウェットエッチング、又はサンドブラスト等の方法によって、ガラス基板69の上面におけるレジスト62がない領域を、所定の深さに達するまでエッチングして除去する(図80B)。最後に、不要となったレジスト62を剥離すると、第一凹部63及び第二凹部64が形成されたガラス基板59が得られる。この例では、第一凹部63がウェル67となり、第二凹部64が第一流路68となる場合を示した。
また、工程B1において、凹部63,64を形成する代わりに、基板内部に流路を形成してもよい。この場合、ガラス基板69内の、第一流路及び第二流路となる領域をドリル(レーザードリル)やピコ秒オーダー以下の時間幅を有するレーザー改質とその選択的なエッチング等によってガラス基板69の表面から掘削して貫通孔を形成することで、第一流路(第二流路及び第三流路)を形成してもよい。また、このドリルによる掘削方法と、種々のエッチング法と組み合わせて使用しても良い。
[工程B2]
つぎに、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーLを、単一のガラス基板69の微小孔65となる領域に照射することによって、前記領域に改質部61を形成する。
具体的には、本発明の製造方法の第一態様における工程A1と同様に行うことができる。このとき、第一凹部63及び第二凹部64の側面に露呈する部位にレーザー光Lを集光照射して改質部61を形成する場合は、液浸露光によってレーザー光Lを照射することが、より望ましい(図80C)。前記側面に露呈する部位に形成される改質部61の形状(微小孔65の端部の形状)の精度を高めることができる。
[工程B3]
つづいて、単一のガラス基板69から、工程B2で形成した改質部61をエッチングによって除去する(図80D)。
エッチング方法としては、ウェットエッチングが好ましい。凹部63,64(若しくは貫通孔)の側面に露呈する断面を有する改質部61は、エッチング耐性が低くなっているため、選択的又は優先的にエッチングすることができる。
具体的には、本発明の製造方法の第一態様における工程A3と同様に行うことができる。
前記エッチングの結果、ナノオーダーの口径を有する微小孔65を、ガラス基板69内の所定位置に、第一凹部63と第二凹部64とを連通するように、形成することができる。
つぎに、形成された第二凹部64を覆うように、部材66をガラス基板69の上面に貼り合わせることによって、第一流路68を形成することができる(図80E)。
形成された第一凹部63は、そのままでもウェル67として使用できるが、図80Eに示すようにウェル67の上面を開口させつつ、部材66をガラス基板69に貼り合わせることによって、ウェル67の深さを適宜調整することが可能である。
一方、第一凹部63を覆うように部材66をガラス基板69の上面に貼り合わせることによって、ウェル67の代わりに第二流路67を形成することもできる(不図示)。この場合、第一流路68は、第三流路68と読み替える。
部材66とガラス基板69の上面とを貼り合わせる方法は、部材66の材料に応じて、公知の方法で行えばよい。
また、前記貼り合わせの際に、電気生理学的測定用の電極や配線等を、第一流路68内に適宜設置することもできる。
部材66の材料としては特に制限されず、PDMS、PMMA等の樹脂基板や、ガラス基板を使用することができる。また、部材66の材料は、観察に用いられる光線(例えば可視光線)を透過させない材料で構成されても良い。脂質膜の形成のみを目的とする場合は、部材66の材料が必ずしも観察に用いられる光線を透過させる必要はない。観察に用いられる光線を透過させる部材を用いると、上面から光学的に観察が可能となるため好ましい。
なお、第一流路68を形成するために使用する、第二凹部64を覆う部材としては、必ずしも観察に用いられる光線を透過する部材である必要はなく、観察に用いられる光線を透過させない部材であってもよい。
以上で説明したように、本発明の基体は、基材と、前記基材内に設けられ、流体(液体又は気体)を流入させる空間と、前記空間と前記基材の外部とを連通する微小孔と、を含み、前記基材のうち、少なくとも前記微小孔を構成する部位は、単一の部材で形成される。
本発明の基体において、前記単一の部材が、波長0.1μm〜10μmを有する光のうち少なくとも一部の波長を有する光を透過させることが好ましい。
本初の基体において前記単一の部材の材料がシリコン、ガラス、石英、又はサファイアであることが好ましい。
本発明の基体において、前記微小孔は、前記基体にレーザーを照射して改質された部分を、さらにエッチング処理で除去して形成されることが好ましい。
本発明の製造方法は、前述のように、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーを、前記単一の部材の前記微小孔となる領域に照射することによって、前記領域に改質部を形成する工程A1と、前記単一の部材に、前記空間を形成する工程A2と、前記単一の部材から前記改質部をエッチングによって除去する工程A3と、を少なくとも有するのが好ましい。
また、本発明の基体の製造方法は、前述のように、前記単一の部材に、前記空間を形成する工程B1と、ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザーを、前記単一の部材の前記微小孔となる領域に照射することによって、前記領域に改質部を形成する工程B2と、前記単一の部材から前記改質部をエッチングによって除去する工程B3と、を少なくとも有することが好ましい。
以上で説明した本発明の基体は、微生物又は細胞等の微粒子を捕捉することができ、脂質膜を形成することができる等の複数の用途に利用可能である。
また、本発明の基体の製造方法によれば、微生物又は細胞等の微粒子を捕捉することができ、脂質膜を形成することができる等の複数の用途に利用可能な、微小孔を備えた基体を提供できる。
本発明の基体が捕捉する前記微粒子としては、前記流体に含まれれば特に制限されず、前記流路が流通可能であることが好ましい。例えば、微生物、細胞、有機物質、無機物質で形成される粒子等が挙げられる。前記微生物としては、細菌、真菌、黴、大型のウイルス等が例示される。前記細胞としては、赤血球、白血球等の浮遊培養可能な細胞が例示される。前記有機物質で形成される粒子としては、樹脂や多糖類等の高分子で形成される粒子、活性炭粒子等が例示される。前記無機物質で形成される粒子としては、シリカ粒子や金コロイド粒子等の金属粒子が例示される。
前記有機物質で形成される粒子、及び前記無機物質で形成される粒子は、その表面又は内部に抗体分子等を結合させた機能性粒子であってもよい。
前記有機物質で形成される粒子の形状、及び前記無機物質で形成される粒子の形状は、特に制限されない。例えば、球、立方体、直方体、多面体、ドーナッツ形の立体、ひも状の立体等、あらゆる立体形状の粒子が本発明の微粒子に含まれる。
前記有機物質で形成される粒子、及び前記無機物質で形成される粒子の大きさは、前記吸着部を構成する微小孔の第1端部の開口径(短径)よりも大きければ、特に制限されない。つまり、微小孔を通過する大きさでなければよい。
本発明の基体が捕捉する微粒子としては、微生物又は細胞が好ましい。微生物又は細胞は、表面形状が比較的柔軟に変化する。このため、吸着部Sに充分に密着させて、より強力に吸着することが可能である。さらに、前記微粒子が微生物又は細胞である場合、その電気生理学的測定を高精度に行うことが可能である。
本発明の基体が、前記微粒子を捕捉する実施態様は、前述の通り、前記微粒子が微生物又は細胞である場合を例にして説明した通りである。すなわち、前記微粒子が、微生物又は細胞以外の微粒子である場合であっても、前記微粒子が微生物又は細胞である場合と同様に、本発明の基体における吸着部において、微生物又は細胞以外の前記微粒子を捕捉できる。
また、本発明の基体の製造方法は、本発明の微生物又は細胞を捕捉するための基体の製造方法と同様に、実施可能である。
本発明の微生物又は細胞を捕捉するための基体及び前記基体の製造方法は、水や空気等に含まれる微生物又は細胞をトラップして、種々の観察、分析、及び測定を行うためのマイクロ流体デバイス等の使用及び製造に広く利用することができる。
本発明の脂質膜を形成するための基体及び前記基体の製造方法は、微小な脂質膜を形成して、種々の観察、分析、及び測定を行うためのマイクロ流体デバイス等の使用及び製造に広く利用することができる。
本発明の基体及び前記基体の製造方法は、水や空気等に含まれる微生物又は細胞等の微粒子をトラップしたり、脂質膜を形成したりして、種々の観察、分析、及び測定を行うためのマイクロ流体デバイス等の使用及び製造に広く利用することができる。
1…微小吸引孔,微小孔、1a…微小吸引孔の第1端部,微小孔の第1端部、1b…微小吸引孔の第2端部,微小孔の第2端部、2…ウェル、2a…ウェルの側面、2b…ウェルの下面、S…吸着部、T…微生物又は細胞、R…流体、T´…高分子を含む細胞、3…流路、4…基材、6…基板、7…流路、10A〜10I…基体、11…微小吸引孔,微小孔、11a…微小吸引孔の第1端部,微小孔の第1端部、11b…微小吸引孔の第2端部,微小孔の第2端部、12…ウェル、12a…ウェルの側面、12b…ウェルの下面、13…第一流路、14…基材、15…部材、16…電極、17…電極、20…基体、21…微小吸引孔,微小孔、21a…微小吸引孔の第1端部,微小孔の第1端部、21b…微小吸引孔の第2端部,微小孔の第2端部、22…第二流路、22a…第二流路の側面、22b…第二流路の下面、22c…第二流路の上面、23…第三流路、23b…第三流路の下面、23c…第三流路の上面、24…基材、25…部材、26…電極、27…電極、28…第五流路、29…第四流路、30…基体、31…微小吸引孔,微小孔、31a…微小吸引孔の第1端部,微小孔の第1端部、31b…微小吸引孔の第2端部,微小孔の第2端部、32…ウェル、32a…ウェルの側面、32b…ウェルの下面、33…第一流路、33b…第一流路の下面、33c…第一流路の上面、34…基材、35,36…部材、40…基体、41…微小吸引孔,微小孔、41a…微小吸引孔の第1端部,微小孔の第1端部、41b…微小吸引孔の第2端部,微小孔の第2端部、42…第二流路、42a…第二流路の側面、42b…第二流路の下面、42c…第二流路の上面、43…第三流路、43b…第三流路の下面、43c…第三流路の上面、44…基材、45…部材、50…基体、20A…基体、30A…基体、30B…基体、30C…基体、51…改質部、52…レジスト、53…第一凹部、54…第二凹部、55…微小吸引孔,微小孔、56…部材、57…ウェル、58…第一流路、59…ガラス基板、60…基体、61…改質部、62…レジスト、63…第一凹部、64…第二凹部、65…微小吸引孔,微小孔、66…部材、67…ウェル、68…第一流路、69…ガラス基板、101…細胞、104…電極、105…電極、108…樹脂製ウェル、110…樹脂製基板、112…樹脂製基板、201…ナノ流路、201a…ナノ流路201の第1端部、201b…ナノ流路201の第2端部、203A…マイクロ流路、203B…マイクロ流路、203Aa…マイクロ流路203Aの側面、203Ba…マイクロ流路203Bの側面、203Ab…マイクロ流路203Aの下面、203Bb…マイクロ流路203Bの下面、204…基材、211…ナノ流路、221…ナノ流路、U…開口部、10A−1〜10I−1…基体、20−1…基体、30−1…基体、40−1…基体、50−1…基体、20A−1…基体、30A−1…基体、30B−1…基体、30C−1…基体。

Claims (5)

  1. 高分子を検出する装置であって、
    基板と、
    空間と、
    前記空間と前記基板の外部とを連通するナノ流路と、を含み、
    前記空間は前記基板の一方の面に開口するウェル又は、前記ナノ流路よりも太いマイクロ流路によって構成され、前記基板のうち、少なくとも前記ナノ流路が形成された部位は単一の部材で形成され、
    前記ウェル又はマイクロ流路は前記基板の厚み方向に沿う内側面を有し、該内側面に前記ナノ流路が開口し、前記ナノ流路は前記内側面に対して略垂直に配置され
    前記ナノ流路の内壁に高分子を検出するための解析成分が配置されていることを特徴とする、高分子検出装置。
  2. 前記ナノ流路の短径が0.05〜1.00μmの範囲であることを特徴とする、請求項に記載の高分子検出装置。
  3. 前記ナノ流路の長径が1〜6μmの範囲であることを特徴とする、請求項又はに記載の高分子検出装置。
  4. 前記ナノ流路の総長が20〜50000μmの範囲であることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の高分子検出装置。
  5. 前記ナノ流路の内壁と前記解析成分との間に吸着膜が配置されていることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の高分子検出装置。
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