JP6172021B2 - 細胞整列チップ、その製造方法、標的細胞の検出方法、標的細胞の検出装置および細胞捕捉不良領域の検出方法 - Google Patents

細胞整列チップ、その製造方法、標的細胞の検出方法、標的細胞の検出装置および細胞捕捉不良領域の検出方法 Download PDF

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本発明は、細胞整列チップおよびその製造方法、細胞整列チップを用いた標的細胞の検出方法および前記標的細胞の検出方法を行うための標的細胞の検出装置、ならびに細胞整列チップにおける細胞捕捉不良領域の検出方法に関する。
循環腫瘍細胞(CTC)や循環血管内皮細胞(CEC)、循環血管内皮前駆細胞(CEP)、各種幹細胞など(以下「標的細胞」ともいう)は、病態に応じて血液中に存在する。たとえば、血液中を循環する癌細胞であるCTCを検出することは、癌転移の早期発見の観点から非常に有用である。しかし、標的細胞は血液中に極めて稀にしか存在せず、検出することは極めて難しい。
そこで近年、様々な標的細胞の検出方法が提案されている。たとえば、検体中(例えば血液)に標的細胞が存在するか否かを検査する場合に、検体に由来する細胞懸濁液を、複数の凹部(以下「マイクロチャンバー」ともいう)を有する細胞整列チップに提供して、マイクロチャンバー内に細胞を収容した後、収容された各細胞を分析する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、マイクロチャンバー外の領域に細胞が付着してしまった場合、一部の細胞についてしか分析を行うことができない。それにより、検体に含まれる全細胞を分析できない可能性がある。このようなマイクロチャンバー外の領域への細胞の付着を防止する手段として、マイクロチャンバー外の領域に表面処理を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、細胞を収容するための複数の微細穴(マイクロチャンバー)を有するプレ・バイオチップ(細胞整列チップ)が開示されている。このプレ・バイオチップでは、微細穴に細胞を収容するために、微細穴内の領域に抗体などを固定化している。また、微細穴以外の領域に細胞が付着することを防止するために、微細穴以外の領域をエチレンジアミンなどのブロッキング剤で処理している。このようにすることで、すべての細胞を微細穴に効率的に収容することができる。微細穴に収容された細胞は、蛍光色素で標識されており、蛍光顕微鏡などにより観察される。
特開2005−214889号公報
しかしながら、特許文献1に記載のプレ・バイオチップには、ブロッキング剤のパターニングが失敗した場合に、細胞の分析を適切に行うことができないという問題がある。すなわち、プレ・バイオチップの製造時に、微細穴外の領域に加えて微細穴内の一部の領域も誤ってブロッキング剤で処理してしまった場合、微細穴内のブロッキング剤で処理されている領域には、細胞は付着しないはずである。ところが、特許文献1に記載のプレ・バイオチップでは、ブロッキング剤のパターニングに欠陥が生じているかどうかがわからないため、微細穴内からの蛍光はすべて微細穴内に収容された細胞からの蛍光であるものとして細胞の分析を行うことになる。したがって、微細穴内のブロッキング剤で処理されている領域に自家蛍光を有する異物(例えば埃や塵、気泡など)が存在する場合、細胞の分析結果が誤ったものになってしまうおそれがある。このような問題は、特にCTCなどの希少な細胞の場合に顕著になる。その測定される少ない個数が重要となるため、少数であっても発光異物が存在するだけで分析結果に大きな影響を及ぼしてしまう。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、細胞整列チップにおいてブロッキング剤のパターニング欠陥が生じた場合であっても、細胞の分析を高精度に行うことができる、標的細胞の検出方法および検出装置を提供することを目的とする。また、本発明は、前記標的細胞の検出方法に用いられる細胞整列チップおよびその製造方法を提供することも目的とする。また、本発明は、前記細胞整列チップにおける細胞捕捉不良領域の検出方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、ブロッキング剤と色素とを組み合わせてブロッキング層を形成することで上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下の細胞整列チップに関する。
[1]基板と、前記基板上に配置されている、標的細胞を捕捉するための複数の細胞捕捉領域と、前記基板上の前記細胞捕捉領域とは異なる領域に配置されている細胞非捕捉領域と、を有し、前記細胞非捕捉領域には、細胞の非特異的結合を抑制するためのブロッキング剤および色素を含有するブロッキング層が配置されている、細胞整列チップ。
[2]前記基板は、第1の面に複数の凹部を有し、前記細胞捕捉領域は、前記凹部内に配置され、前記細胞非捕捉領域は、前記第1の面の前記凹部外に配置されている、[1]に記載の細胞整列チップ。
[3]前記色素は、蛍光色素である、[1]または[2]に記載の細胞整列チップ。
[4]前記蛍光色素の最大蛍光波長は、300nm以下または900nm以上である、[3]に記載の細胞整列チップ。
また、本発明は、以下の標的細胞の検出方法に関する。
[5]基板上に配置されている標的細胞を捕捉するための複数の細胞捕捉領域と、前記基板上の前記細胞捕捉領域とは異なる領域に配置されている細胞非捕捉領域と、を有し、前記細胞非捕捉領域には、細胞の非特異的結合を抑制するためのブロッキング剤および色素を含有するブロッキング層が配置されている、細胞整列チップを準備する工程と、前記細胞捕捉領域に、蛍光色素で標識された標的細胞を捕捉させる工程と、前記色素を検出することで、前記ブロッキング層の位置を検出する工程と、前記蛍光色素に対する励起光を少なくとも前記細胞捕捉領域に照射し、前記蛍光色素から放出される蛍光を検出する工程と、前記蛍光の検出結果から、検出された前記ブロッキング層の位置における前記蛍光の検出結果を除くことで、前記細胞捕捉領域に捕捉された前記標的細胞を標識する前記蛍光色素からの蛍光の検出結果を算出する工程と、を含む、標的細胞の検出方法。
[6]前記基板は、第1の面に複数の凹部を有し、前記細胞捕捉領域は、前記凹部内に配置され、前記細胞非捕捉領域は、前記第1の面の前記凹部外に配置されている、[5]に記載の標的細胞の検出方法。
[7]前記色素は、前記標的細胞を標識する前記蛍光色素と最大蛍光波長が異なる蛍光色素である、[5]または[6]に記載の標的細胞の検出方法。
[8]前記標的細胞を標識する前記蛍光色素の最大蛍光波長は、300nmを超え、かつ900nm未満であり、前記ブロッキング層に含有される前記蛍光色素の最大蛍光波長は、300nm以下または900nm以上である、[7]に記載の標的細胞の検出方法。
また、本発明は、以下の細胞整列チップの製造方法に関する。
[9]基板を準備する工程と、前記基板上に、標的細胞を捕捉するための複数の細胞捕捉領域と、前記細胞捕捉領域とは異なる領域に位置し、かつ細胞の非特異的結合を抑制するためのブロッキング剤および色素を含有するブロッキング層を所定のパターンで配置された細胞非捕捉領域と、を形成する工程と、を含む、細胞整列チップの製造方法。
[10]前記色素を検出することで、前記ブロッキング層の形成パターンを確認する工程をさらに含む、[9]に記載の細胞整列チップの製造方法。
さらに、本発明は、以下の標的細胞の検出装置に関する。
[11]基板上に配置されており、かつ蛍光色素で標識された標的細胞を捕捉している複数の細胞捕捉領域と、前記基板上の前記細胞捕捉領域とは異なる領域に配置されている細胞非捕捉領域と、を有し、前記細胞非捕捉領域には、細胞の非特異的結合を抑制するためのブロッキング剤および色素を含有するブロッキング層が配置されている、細胞整列チップを保持するためのホルダーと、前記ブロッキング層の位置を検出するための光を少なくとも前記細胞捕捉領域に照射する第1光照射部と、前記蛍光色素に対する励起光を少なくとも前記細胞捕捉領域に照射する第2光照射部と、前記色素からの応答光を検出する第1光検出部と、前記蛍光色素から放出される蛍光を検出する第2光検出部と、前記第1光検出部および前記第2光検出部の検出結果に基づいて、前記細胞捕捉領域に捕捉された前記標的細胞を標識する前記蛍光色素からの蛍光の検出結果を算出する処理部と、を有し、前記処理部は、前記第1光検出部の検出結果から前記ブロッキング層の位置を検出し、前記第2光検出部の検出結果から、検出された前記ブロッキング層の位置における前記蛍光の検出結果を除くことで、前記細胞捕捉領域に捕捉された前記標的細胞を標識する前記蛍光色素からの蛍光の検出結果を算出する、標的細胞の検出装置。
さらに、本発明は、以下の細胞捕捉不良領域の検出方法に関する。
[12]基板と、前記基板上に配置されている、標的細胞を捕捉するための複数の細胞捕捉領域と、前記基板上の前記細胞捕捉領域とは異なる領域に配置されている細胞非捕捉領域と、を有し、前記細胞非捕捉領域には、細胞の非特異的結合を抑制するためのブロッキング剤および色素を含有するブロッキング層が配置されている、細胞整列チップを準備する工程と、前記色素を検出することで、前記ブロッキング層の位置を検出する工程と、検出された前記ブロッキング層の位置と前記細胞捕捉領域とが重複する領域を検出することで、その上に前記ブロッキング層が配置されている前記細胞捕捉領域である細胞捕捉不良領域を検出する工程と、を含む、細胞捕捉不良領域の検出方法。
本発明によれば、細胞整列チップにおいてブロッキング剤のパターニング欠陥が生じた場合であっても、細胞の分析を高精度に行うことができる。したがって、本発明によれば、血液などの検体中に極めて稀に存在する標的細胞の有無をより高精度に検査することができる。
図1Aは、実施の形態に係る細胞整列チップの平面図であり、図1Bは、図1Aに示されるA−A線の断面図である。 図2Aは、マイクロチャンバーチップの平面図であり、図2Bは、枠体の平面図であり、図2Cは、天板の平面図である。 図3Aは、マイクロチャンバーチップの部分拡大断面図であり、図3Bは、細胞捕捉時のマイクロチャンバーチップの部分拡大断面図である。 図4Aは、ブロッキング層形成前の基板の部分拡大断面図であり、図4Bは、ブロッキング層形成後の基板の部分拡大断面図である。 図5は、実施の形態に係る標的細胞の検出装置の構成を示す図である。 図6は、実施の形態の変形例に係る細胞整列チップの断面模式図である。 図7Aは、正常にブロッキング層が形成された後のマイクロチャンバー周辺の蛍光顕微鏡写真であり、図7Bは、パターニング欠陥を有するブロッキング層が形成された後のマイクロチャンバー周辺の蛍光顕微鏡写真である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[細胞整列チップ]
図1は、本発明の一実施の形態に係る細胞整列チップ100を示す図である。図1Aは、細胞整列チップ100の平面図であり、図1Bは、図1Aに示されるA−A線の断面図である。図1Aおよび図1Bに示されるように、細胞整列チップ100は、マイクロチャンバーチップ110、枠体120および天板130を有する。
図2Aは、マイクロチャンバーチップ110の平面図であり、図2Bは、枠体120の平面図であり、図2Cは、天板130の平面図である。図1Bに示されるように、マイクロチャンバーチップ110、枠体120および天板130をこの順で積層することで、液体が流れる流路121が形成される。
(マイクロチャンバーチップ)
図2Aに示されるように、マイクロチャンバーチップ110は、一方の面(第1の面)に複数のマイクロチャンバー111(凹部)が形成されている基板112と、基板112上に配置されたブロッキング層113とを有する。また、機能的観点からは、マイクロチャンバーチップ110は、標的細胞を捕捉するための複数の細胞捕捉領域114と、細胞捕捉領域114とは異なる領域に配置されている細胞非捕捉領域115とを有する。本実施の形態に係るマイクロチャンバーチップ110では、細胞捕捉領域114は、マイクロチャンバー111内に配置され、細胞非捕捉領域115は、基板112の前記一方の面(第1の面)のマイクロチャンバー111外に配置されている。ブロッキング層113は、細胞非捕捉領域115、すなわち基板112表面のマイクロチャンバー111外の領域に配置されている。
図1Bに示されるように、基板112のマイクロチャンバー111が形成されている面(第1の面)は、液体(例えば細胞懸濁液や洗浄液、染色液など)が流れる流路121の底面となる。各マイクロチャンバー111は、流路121に対して開口している。マイクロチャンバー111の数および配置は、特に限定されない。本実施の形態では、図2Aに示されるように、マイクロチャンバー111は、流路121の中央部にマトリックス状に配置されている。
基板112の素材は、特に限定されない。基板112の素材は、マイクロチャンバー111内に収容される細胞の種類に応じて適宜選択されうる。たとえば、マイクロチャンバー111内に収容される細胞に好適な荷電状態や親水性、疎水性などを考慮して、基板112の素材を選択すればよい。基板112の素材の例には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィンコポリマーなどの樹脂が含まれる。基板112の厚みは、必要な強度を確保できれば特に限定されず、マイクロチャンバー111の深さなどに応じて適宜設定されうる。
マイクロチャンバー111の形状は、1個または2個以上の細胞を収容(捕捉)することができれば特に限定されない。マイクロチャンバー111の形状の例には、円柱、多角柱、逆円錐台、逆多角錐台が含まれる。また、マイクロチャンバー111の大きさは、特に限定されず、収容される細胞の種類や各マイクロチャンバーに収容される細胞の数などに応じて適宜設定されうる。通常は、マイクロチャンバー111の大きさは、マイクロチャンバー111の底面に10〜15個程度の細胞が付着できる大きさであることが好ましい。たとえば、マイクロチャンバー111の開口径は、20〜150μmの範囲内であり、マイクロチャンバー111の深さは、20〜100μmの範囲内である。
マイクロチャンバー111に収容される細胞の種類は、特に限定されない。マイクロチャンバーに収容される細胞の例には、循環腫瘍細胞(CTC)や循環血管内皮細胞(CEC)、循環血管内皮前駆細胞(CEP)、循環胎児細胞、抗原特異的T細胞、各種幹細胞などが含まれる。
前述のとおり、ブロッキング層113は、細胞非捕捉領域115、すなわち基板112表面のマイクロチャンバー111外の領域に配置されている。ブロッキング層113は、細胞の非特異的結合を防止するためのブロッキング剤と、ブロッキング層113の位置を外部から検出可能とするための色素とを含有する。ブロッキング層113は、ブロッキング剤の効果により、基板112への細胞の非特異的結合を抑制する。これにより、細胞は、相対的にマイクロチャンバー111内に収容されやすくなる。
図3Aは、マイクロチャンバーチップ110の部分拡大断面図であり、図3Bは、マイクロチャンバー111が細胞10を収容している時のマイクロチャンバーチップ110の部分拡大断面図である。図3Aに示されるように、本実施の形態に係るマイクロチャンバーチップ110では、基板112表面のマイクロチャンバー111外の領域(細胞非捕捉領域115)にブロッキング層113が配置されている。図3Bに示されるように、マイクロチャンバー111内に位置する細胞捕捉領域114には、細胞10が捕捉される。しかしながら、ブロッキング層113の形成プロセスにおいてパターニング欠陥が生じる場合がある。このような場合、ブロッキング層113がマイクロチャンバー111内に形成されてしまうことがある。その場合には、マイクロチャンバー111内にも細胞非捕捉領域115(ブロッキング層113)が存在することになる。このように、ブロッキング層113が配置されている細胞捕捉領域114を「細胞捕捉不良領域」ともいう。
ブロッキング剤の種類は、細胞の非特異的結合を抑制できれば特に限定されない。ブロッキング剤の例には、カゼイン、スキムミルク、アルブミン(ウシ血清アルブミンを含む)、ゼラチン、ポリエチレングリコールなどの高分子化合物;リン脂質、エチレンジアミンやアセトニトリルなどの低分子化合物などが含まれる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
色素は、ブロッキング層113の位置を外部から検出可能とするために、ブロッキング層113に添加される。色素は、ブロッキング剤と結合していてもよいし、ブロッキング剤と別個に添加されていてもよい。色素の種類は、特に限定されず、ブロッキング層113の検出方法に応じて適宜選択されうる。色素の例には、顔料や染料などの着色剤;ローダミンやFITC、APC、PE,Alexa Fluor(登録商標)などの蛍光色素、などが含まれる。蛍光色素の最大蛍光波長は、特に限定されないが、例えば300nm以下または900nm以上である。
ブロッキング層113の厚みは、細胞の非特異的吸着を抑制することができ、かつ外部からブロッキング層113を検出可能であれば特に限定されない。
(枠体)
図1Bおよび図2Bに示されるように、枠体120は、マイクロチャンバーチップ110と天板130との間に配置されている、貫通孔122を有する薄板である。貫通孔122の形状は、マイクロチャンバー111上に細胞懸濁液を流すことが可能であれば、特に限定されず、用途に応じて適宜選択されうる。また、枠体120の厚みは、特に限定されず、所望の流路121の高さ(深さ)に応じて適宜設定される。たとえば、枠体120の厚みは、50〜500μmの範囲内である。流路121の高さを50〜500μmの範囲内とすることで、細胞整列チップ100のマイクロチャンバー111以外の面に付着した細胞を、流路121内を流れる液体の力で容易に剥離させることが可能となる。また、流路121内の細胞による目詰まりの発生を防止しつつ、流路121内の細胞懸濁液中の細胞がマイクロチャンバー111内に沈降するまでの時間を短縮することもできる。
枠体120の素材は、特に限定されず、公知のマイクロプレートなどと同じ素材であってもよい。枠体120の素材の例には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィンコポリマーなどの樹脂が含まれる。また、枠体120は、両面に粘着性を有するシリコンシート(両面シール)などであってもよい。枠体120として両面シールを使用することで、マイクロチャンバーチップ110、枠体120および天板130を容易に固定することができる。
枠体120の貫通孔122の内面は、流路121の側面となる。そのため、枠体120の貫通孔122の内面は、細胞整列チップ100の使用時には細胞懸濁液と接触する。したがって、枠体120の貫通孔122の内面は、必要に応じて表面処理されていてもよい。表面処理の例には、プラズマ処理、コロナ放電処理、親水性ポリマーやタンパク質、脂質などによるコーティング処理が含まれる。たとえば、枠体120の貫通孔122の内面は、細胞の非特異的結合を防止するためのブロッキング処理が施されてもよい。ブロッキング剤の例には、カゼイン、スキムミルク、アルブミン(ウシ血清アルブミンを含む)、ゼラチン、ポリエチレングリコールなどの高分子化合物;リン脂質、エチレンジアミンやアセトニトリルなどの低分子化合物などが含まれる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(天板)
図1Bおよび図2Cに示されるように、天板130は、枠体120の上に配置されている、第1の貫通孔131および第2の貫通孔132を有する薄板である。第1の貫通孔131および第2の貫通孔132は、それぞれ、外部と連通している。第1の貫通孔131は、流路121内に液体を導入するための導入口131となる。第2の貫通孔132は、流路121内から液体を排出するための排出口132となる。通常、導入口131は、流路121の一端に連通する。また、排出口132は、流路121の他端に連通する。導入口131および排出口132の形状は、特に限定されない。また、天板130の厚みも、必要な強度を確保できれば特に限定されない。
天板130の素材は、特に限定されないが、蛍光顕微鏡などを用いて外部から流路121内を観察する観点からは、光透過性を有する素材であることが好ましい。天板130の素材の例には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィンコポリマーなどの樹脂が含まれる。また、枠体120と同様に、天板130の流路121の天面となる面も表面処理(例えばブロッキング処理)されていてもよい。
(製造方法)
本実施の形態に係る細胞整列チップ100の製造方法は、特に限定されない。以下、本実施の形態に係る細胞整列チップ100の製造方法の一例について説明する。
本実施の形態に係る細胞整列チップ100は、例えば、1)複数のマイクロチャンバー111を有する基板112、枠体120および天板130を準備する第1工程と、2)複数のマイクロチャンバー111を有する基板112、枠体120および天板130を積層する第2工程と、3)複数のマイクロチャンバー111を有する基板112上にブロッキング層113を形成する第3工程と、を行うことにより製造されうる。第2工程と第3工程とは、どちらを先に行ってもよい。また、第1〜第3工程を行った後に、ブロッキング層113の形成パターンを確認する工程をさらに行ってもよい。
第1工程では、複数のマイクロチャンバー111を有する基板112、枠体120および天板130を準備する。基板112にマイクロチャンバー111を形成する方法は、特に限定されない。基板112にマイクロチャンバー111を形成する方法の例には、金型成形法やリソグラフィ法、収束イオンビーム(FIB)を用いる方法などが含まれる。また、マイクロチャンバー111が形成されたフィルムを基板112に貼り付けてもよいし、マイクロチャンバー111が既に形成された市販の基板を購入してもよい。
また、前述のとおり、枠体120は、貫通孔122を有し、天板130は、導入口131および排出口132を有する(図2Bおよび図2C参照)。枠体120に貫通孔122を形成する方法、ならびに枠体120に導入口131および排出口132を形成する方法は、特に限定されない。枠体120に貫通孔122を形成する方法ならびに天板に導入口131および排出口132を形成する方法の例には、金型形成法やリソグラフィ法、収束イオンビーム(FIB)を用いる方法などが含まれる。
第2工程では、基板112、枠体120および天板130をこの順番で積層し、互いに固定する。これらを固定する方法は、特に限定されないが、観察やメンテナンスの観点から互いに取り外し可能に固定されることが好ましい。固定方法の例には、係合による固定、螺子を用いた固定、粘着剤を用いた固定が含まれる。前述のとおり、第2工程は、第3工程の後に行ってもよい。
第3工程では、基板112表面に、ブロッキング層113を所定のパターンで形成する。より具体的には、基板112表面のマイクロチャンバー111外の領域にブロッキング層113を形成する。これにより、ブロッキング層113を形成されなかった領域(マイクロチャンバー111内の領域)は細胞捕捉領域114となり、ブロッキング層113を形成された領域(マイクロチャンバー111外の領域)は細胞非捕捉領域115となる。図4Aは、ブロッキング層113形成前の基板112の部分拡大断面図であり、図4Bは、ブロッキング層113形成後の基板112の部分拡大断面図である。
ブロッキング層113の形成方法は、特に限定されない。ブロッキング層113の形成方法の例には、流路法やコンタクトプイリンティング法、フォトリソグラフィ法、インクジェット法などが含まれる。たとえば、第2工程の後に第3工程を行う場合は、流路法によりブロッキング層113を形成することができる。この場合、ブロッキング剤および色素を含有する溶液(ブロッキング溶液)を流路121に導入する。このとき、ブロッキング溶液の流速が好適であれば、マイクロチャンバー111内に気泡が残り、マイクロチャンバー111外の領域のみにブロッキング層113が形成される。また、第2工程の前に第3工程を行う場合は、コンタクトプリンティング法やフォトリソグラフィ法、インクジェット法などによりブロッキング層113を形成することができる。コンタクトプリンティング法を利用する場合、別の平板にブロッキング溶液を塗布し、ある程度乾燥させて、半乾きのブロッキング層113を形成する。この平板を基板112表面に押し当てることで、ブロッキング層113が基板112表面に転写される。このとき、平板はマイクロチャンバー111内の領域に接触しないため、マイクロチャンバー111外の領域のみにブロッキング層113が形成される。ブロッキング溶液の濃度は、マイクロチャンバー111外の領域に形成できれば特に限定されない。ブロッキング溶液の濃度は、ブロッキング層113の形成方法に応じて適宜調整されうる。
任意に行われる第4工程では、ブロッキング層113に含まれる色素を検出することで、ブロッキング層113の形成パターンを確認する。たとえば、ブロッキング層113に顔料や染料などの着色剤が添加されている場合は、可視光を照射して反射光(応答光)を検出することで、ブロッキング層113の形成パターンを確認することができる。また、ブロッキング層113に蛍光色素が添加されている場合は、励起光を照射して蛍光(応答光)を検出することで、ブロッキング層113の形成パターンを確認することができる。
以上の手順により、本実施の形態に係る細胞整列チップ100を製造することができる。
[標的細胞の検出方法]
次に、本実施の形態に係る細胞整列チップ100を用いて、標的細胞を検出する装置および方法について説明する。
図5は、細胞整列チップ100を用いて標的細胞を検出するための、標的細胞の検出装置200の構成を示す模式図である。図5に示されるように、検出装置200は、ホルダー210、第1光照射部220、第2光照射部230、光検出部240、および処理部250を有する。検出装置200には、細胞整列チップ100が装着される。
ホルダー210は、細胞整列チップ100を所定の位置に保持する。また、ホルダー210の下には、移動部215が配置されている。移動部215は、ホルダー210をX軸方向に移動させるX軸移動機構216と、ホルダー210をY軸方向に移動させるY軸移動機構217とを有する。移動部215は、ホルダー210を水平方向(XY方向)に移動させることで、ホルダー210に保持された細胞整列チップ100を水平方向(XY方向)に移動させることができる。
第1光照射部220は、ブロッキング層113の位置を検出するための光を、細胞整列チップ100のマイクロチャンバー111を含む領域に照射する。第1光照射部220に用いられる光源の種類は、特に限定されず、ブロッキング層113が含有する色素の種類などに応じて適宜選択すればよい。光源の種類の例には、レーザーダイオードやハロゲンランプ、タングステンランプ、LEDなどが含まれる。
第2光照射部230は、標的細胞を標識した蛍光色素に対する励起光を、細胞整列チップ100のマイクロチャンバー111を含む領域に照射する。第2光照射部230の光源の種類は、特に限定されず、蛍光色素の最大励起波長などに応じて適宜選択すればよい。ただし、細胞整列チップ100の自家蛍光の影響を排除する観点から、励起光の波長は、長波長であることが好ましい。なお、ブロッキング層113に蛍光色素が含有される場合には、ブロッキング層113に含有される蛍光色素に対する励起光の波長、および標的細胞を標識した蛍光色素に対する励起光の波長を含む光を出射することができる、1つの光照射部(光源)と波長カットフィルターとを組み合わせることで、第1光照射部220および第2光照射部230を実現してもよい。
光検出部240は、第1光照射部220から照射された光による色素からの応答光、および第2光照射部230から照射された励起光により蛍光色素から放出される蛍光を検出する。光検出部240に用いられる検出器の種類は、色素からの応答光、および蛍光色素から放出される蛍光を検出することができれば特に限定されない。光検出部240に用いられる検出器の例には、光電子増倍管やフォトダイオードなどが含まれる。なお、本実施の形態では、1つの光検出部240で、色素からの応答光、および蛍光色素から放出される蛍光を検出するが、2つの光検出部で、色素からの応答光、および蛍光色素から放出される蛍光を別個に検出してもよい。この場合、検出装置200は、色素からの応答光を検出する第1光検出部と、蛍光色素から放出される蛍光を検出する第2光検出部とを有する。
図5に示されるように、第1光照射部220から細胞整列チップ100までの光路上には、第1レンズ221、ハーフミラー223および対物レンズ225が、第1光照射部220側から順番に配置されている。第1光照射部220から照射された光は、第1レンズ221を通過した後、ハーフミラー223により細胞整列チップ100に向けて反射される。ハーフミラー223で反射された励起光は、対物レンズ225により細胞整列チップ100のマイクロチャンバー111を含む領域に集光される。
また、第2光照射部230から細胞整列チップ100までの励起光の光路上には、第2レンズ231、ダイクロイックミラー232、ハーフミラー223および対物レンズ225が、第2光照射部230側から順番に配置されている。第2光照射部230から照射された励起光は、第2レンズ231を通過した後、ダイクロイックミラー232で細胞整列チップ100に向けて反射される。ダイクロイックミラー232で反射された励起光は、ハーフミラー223を通過した後、対物レンズ225により細胞整列チップ100のマイクロチャンバー111を含む領域に集光される。
そして、細胞整列チップ100から光検出部240までの光路上には、対物レンズ225、ハーフミラー223、ダイクロイックミラー232、フィルター235、ピンホール236および第3レンズ237が、細胞整列チップ100側から順番に配列されている。色素からの応答光および蛍光色素から放出される蛍光は、対物レンズ225、ハーフミラー223、およびダイクロイックミラー232を通過した後、第3レンズ237により検出部240の受光面に結像される。このとき、微弱な光(例えば蛍光)を検出する場合には、必要に応じて、ダイクロイックミラー232と第3レンズ237との間にフィルター235およびピンホール236が配置されていてもよい。フィルター235の種類の例には、励起光カットフィルターや減光フィルターなどが含まれる。励起光カットフィルターは、励起光や外光などを遮断し、S/N比を向上させる。減光フィルターは、蛍光強度を光検出器240に合わせて調整する。ピンホール236は、励起光の焦点(マイクロチャンバー111内)からの蛍光以外の光を遮断し、S/N比を向上させる。ピンホール236の形状は、特に限定されず、例えば円形や矩形などである。ピンホール236の大きさは、使用する光学素子に応じて適宜設定される。
処理部250は、光検出部240の検出結果に基づいて、細胞捕捉領域114に捕捉された標的細胞を標識する蛍光色素からの蛍光の検出結果を算出する。処理機の種類の例には、演算装置、記憶装置、入力装置および出力装置を含む公知のコンピュータやマイコンなどが含まれる。
次に、以上の構成からなる検出装置200を使用して、標的細胞を検出する方法について説明する。
まず、細胞整列チップ100を準備し、検出装置200のホルダー210に設置する。
次いで、細胞整列チップ100の細胞捕捉領域114に、蛍光色素で標識された標的細胞を捕捉させる。具体的には、細胞懸濁液を導入口131から流路121内に導入して、流路121内を細胞懸濁液で満たす。次いで、細胞整列チップ100を一定時間(例えば1〜15分間)静置する。これにより、細胞懸濁液に含まれる細胞の一部をマイクロチャンバー111内(細胞捕捉領域114上)に沈降させることができるが、残部の細胞はマイクロチャンバー111外(細胞非捕捉領域115上)に沈降してしまう。そこで、所定の送液圧を所定の時間発生させるワンショット送液工程と、送液圧を発生させない静置工程とを含む間欠送液を行い、マイクロチャンバー111外の細胞を移動させることで、マイクロチャンバー111外の細胞をマイクロチャンバー111内に回収する。
次いで、標的細胞を蛍光色素で標識するための染色液(例えば、蛍光色素で標識された抗体の溶液)を流路121内に導入する。これにより、マイクロチャンバー111内に回収された細胞を蛍光色素で標識することができる。この後、少なくとも1回は洗浄液(例えばリン酸緩衝液)を用いて、マイクロチャンバー111内に回収された細胞や流路121などを洗浄する。染色液の種類は、標的細胞の種類に応じて適宜選択される。
次いで、第1光照射部220は、マイクロチャンバー111を含む領域に光を照射するとともに、光検出部240は、ブロッキング層113に含有された色素による応答光を検出する。光検出部240の検出結果は、処理部250に送られる。処理部250は、光検出部240の検出結果に基づいて、ブロッキング層113の位置を検出する。このとき、処理結果からブロッキング層113の形成パターンを確認してもよい。なお、細胞整列チップ100に細胞懸濁液を導入する前に、予めブロッキング層113の形成パターンの確認を行ってもよい。この場合、細胞懸濁液を導入する前に、第1光照射部220はマイクロチャンバー111を含む領域に光を照射し、光検出部240は応答光を検出する。処理部250は、検出されたブロッキング層113の位置と細胞捕捉領域114とが重複する領域を検出して、細胞捕捉不良領域を検出することもできる。
次いで、第2光照射部230は、マイクロチャンバー111を含む領域に、細胞を標識した蛍光色素に対する励起光を照射するとともに、光検出部240は、蛍光色素から放出される蛍光を検出する。光検出部240の検出結果は、処理部250に送られる。
次いで、処理部250は、光検出部240の検出結果に基づいて、蛍光の検出結果から、前述したブロッキング層113の位置における蛍光の検出結果を除く処理を行う。前述のとおり、ブロッキング層113の形成プロセスにおいてパターニング欠陥が生じ、ブロッキング層113がマイクロチャンバー111内に形成されてしまうことがある。しかし、ブロッキング層113に含有されているブロッキング剤によって、ブロッキング層113への細胞の付着は防止されるはずである。そのため、ブロッキング層113で蛍光が検出された場合、その蛍光は、自家蛍光を有する異物(例えば埃や塵、気泡など)に由来するものであると考えられる。また、前述のとおり、ブロッキング層113に含有されている色素によって、マイクロチャンバー111内のブロッキング層113の位置(細胞捕捉不良領域の位置)は検出することができる。したがって、仮にブロッキング層113のパターニング欠陥が生じたとしても、マイクロチャンバー111内の蛍光の検出結果から、ブロッキング層113の位置(細胞捕捉不良領域の位置)における蛍光の検出結果を除くことで、このような異物による影響を排除することができる。その結果として、細胞の分析を高精度に行うことができる。上記処理により、細胞捕捉領域114に捕捉された標的細胞を標識する蛍光色素からの蛍光を算出することができる。
なお、ブロッキング層113に含有される色素として、標的細胞を標識する蛍光色素と蛍光波長が異なる蛍光色素を用いてもよい。蛍光色素で標識された標的細胞がマイクロチャンバー111内に捕捉された後でも、標的細胞を標識する蛍光色素と区別してブロッキング層113の位置を検出することができる。たとえば、標的細胞を標識する蛍光色素の最大蛍光波長は、300nmを超え、かつ900nm未満であり、ブロッキング層113に含有される蛍光色素の最大蛍光波長は、300nm以下または900nm以上である。
また、標的細胞は、蛍光波長の異なる2種以上の蛍光色素により標識されていてもよい。このようにすることで、細胞捕捉領域114に自家蛍光を有する不要物が存在する場合であっても、標的細胞と不要物とを区別することができる。
以上の構成によれば、ブロッキング層113のパターニング欠陥が生じた場合であっても、マイクロチャンバー111内における細胞捕捉領域114および細胞非捕捉領域115の位置を判別し、細胞の分析を高精度に行うことができる。
なお、上記実施の形態では、図1Bに示されるように、流路121を有する閉鎖系の細胞整列チップ100について説明した。しかしながら、本発明に係る細胞整列チップは、開放系の細胞整列チップであってもよい。たとえば、マイクロチャンバーチップ110は、そのままの状態で本発明に係る細胞整列チップ(開放系の細胞整列チップ)として使用されうる。
また、上記実施の形態では、図4Bに示されるように、細胞捕捉領域114がマイクロチャンバー111内に配置されている細胞整列チップ100について説明した。しかしながら、本発明に係る細胞整列チップ100は、細胞を収容するための凹部(マイクロチャンバー)111を有していなくてもよい。たとえば、図6に示されるように、平板状の基板112上に細胞捕捉領域114および細胞非捕捉領域115を配置してもよい。この場合も、細胞非捕捉領域115のみにブロッキング層113が配置される。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
1.細胞整列チップの作製
(1)流路法を用いた細胞整列チップの作製
基板として、一方の面に複数のマイクロチャンバー(開口径100μm、深さ50μm)が形成されているポリスチレン基板(厚み1mm)を準備した。基板のマイクロチャンバーが形成されている面上に、枠体としての粘着シール(厚み100μm)と、天板としてのアクリル板(厚み3mm)を積層して、細胞整列チップを作製した。
牛血清アルブミン(BSA;ブロッキング剤)を終濃度が0.1%となるように、ローダミン(蛍光色素)を終濃度が0.001%となるように酢酸緩衝液に加えて、ブロッキング溶液を調製した。天板に形成されている導入口からブロッキング溶液を40mL/分の流速で流路内に導入し、30分静置することで、流路内のマイクロチャンバー外の領域にBSAおよびローダミンを含むブロッキング層を形成した。このとき、マイクロチャンバー内には気泡が存在するため、基本的にはマイクロチャンバー内にはブロッキング層は形成されないはずである。その後、導入口から超純水を40mL/分の流速で流路内に導入し、流路内面を洗浄した。洗浄後、天板に形成されている排出口から流路内の流体を100mL/分の流速で2分間吸引することで、流路内面を十分乾燥させた。
(2)コンタクトプリンティング法を用いた細胞整列チップの作製
前述のポリスチレン基板と同面積のポリジメチルシロキサン(PDMS)基板を前述のブロッキング溶液に30分間浸漬した。浸漬後、PDMS基板を超純水で洗浄し、パターニング用スタンプとした。
このスタンプを、前述のポリスチレン基板のマイクロチャンバーが形成されている面上に押圧して、マイクロチャンバー外の領域にBSAおよびローダミンを含むブロッキング層を転写した。このとき、基本的にはマイクロチャンバー内にはブロッキング層は転写されないはずである。この後、スタンプをポリスチレン基板から離し、ブロッキング層を乾燥させた。次いで、基板のマイクロチャンバーが形成されている面上に、枠体としての粘着シール(厚み100μm)と、天板としてのアクリル板(厚み3mm)を積層して、細胞整列チップを作製した。
2.細胞整列チップの評価
各細胞整列チップについて、ブロッキング層内の蛍光色素からの蛍光を検出することで、ブロッキング層の位置を確認した。細胞整列チップを蛍光顕微鏡に設置し、細胞整列チップに励起光(波長550nm)を照射し、蛍光輝度の分布を測定した。図7Aは、ブロッキング層が正常にパターニングされている場合のマイクロチャンバー周辺の蛍光顕微鏡写真であり、図7Bは、ブロッキング層が正常にパターニングされていない場合のマイクロチャンバー周辺の蛍光顕微鏡写真である。これらの写真では、ローダミン由来の蛍光が検出された領域(ブロッキング層)を黒色で示し、蛍光が検出されなかった領域(細胞捕捉領域)を白色で示している。図7Aに示されるように、マイクロチャンバー外の輝度に対するマイクロチャンバー内の輝度が1/5以下であるマイクロチャンバーを正常チャンバーと評価した。一方、図7Bに示されるように、マイクロチャンバー外の輝度に対するマイクロチャンバー内の輝度が1/5より大きいチャンバーをエラーチャンバーと評価した。図7Bに示されるエラーチャンバーでは、マイクロチャンバー内の一部の領域にブロッキング層が形成されてしまっている。
3.細胞整列チップを用いた細胞の検出
エタノールを終濃度が30%となるようにリン酸緩衝液に加え、プレウェット溶液を調製した。導入口から流路内へ1mL/分の流速でプレウェット溶液を導入して、マイクロチャンバー内の気泡を除去した。その後、導入口から流路内へ1mL/分の流速でリン酸緩衝液を導入して、流路内を洗浄した。
2×10個のヒト白血球をリン酸緩衝液に懸濁して細胞懸濁液を調製した。導入口から流路内へ100μL/分の流速で細胞懸濁液を導入した。その後、100μL/分の流速で0.3μLの細胞懸濁液を送液する作業を40回繰り返し(間欠送液)、流路内の白血球をマイクロチャンバー内に収容した。さらにその後、リン酸緩衝液を100μL/分の流速で導入することで、マイクロチャンバー内の細胞を単層化した。
BSAを終濃度が3%となるように、1%Tweenを終濃度が3%となるようにリン酸緩衝液に加え、さらにFITC標識の抗ヒトCD45抗体およびHoechst(DNAに結合する蛍光色素)を加えて細胞染色溶液を調製した。導入口から流路内へ100μL/分の流速で細胞染色溶液を導入し、30分間静置した。その後、導入口から流路内へリン酸緩衝液を導入して、流路内を洗浄した。
マイクロチャンバー内に細胞を収容した細胞整列チップを蛍光顕微鏡に設置し、細胞整列チップに波長350nm(Hoechst用)および波長500nm(FITC用)の励起光を照射した。このとき、細胞整列チップの評価において、正常チャンバーの全領域、およびエラーチャンバーのうちブロッキング層が形成されていない領域では、両波長の励起光で蛍光が検出された場合には、標的細胞からの蛍光であると判定し、一方の波長の励起光のみで蛍光が検出された場合には、標的細胞ではなく不要物からの自家蛍光であると判定した。また、エラーチャンバーのうちブロッキング層が形成されている領域で検出された蛍光も、標的細胞ではなく不要物からの自家蛍光であると判定した。
本発明に係る細胞整列チップ、標的細胞の検出方法および標的細胞の検出装置は、例えば疾患の検査などに有用である。
10 細胞
100 細胞整列チップ
110 マイクロチャンバーチップ
111 マイクロチャンバー
112 基板
113 ブロッキング層
114 細胞捕捉領域
115 細胞非捕捉領域
120 枠体
121 流路
122 貫通孔
130 天板
131 導入口
132 排出口
200 標的細胞の検出装置
210 ホルダー
215 移動部
216 X軸移動機構
217 Y軸移動機構
220 第1光照射部
221 第1レンズ
223 ハーフミラー
225 対物レンズ
230 第2光照射部
231 第2レンズ
232 ダイクロイックミラー
235 フィルター
236 ピンホール
237 第3レンズ
240 光検出部
250 処理部

Claims (12)

  1. 基板と、
    前記基板上に配置されている、標的細胞を捕捉するための複数の細胞捕捉領域と、
    前記基板上の前記細胞捕捉領域とは異なる領域に配置されている細胞非捕捉領域と、
    を有し、
    前記細胞非捕捉領域には、細胞の非特異的結合を抑制するためのブロッキング剤および色素を含有するブロッキング層が配置されている、
    細胞整列チップ。
  2. 前記基板は、第1の面に複数の凹部を有し、
    前記細胞捕捉領域は、前記凹部内に配置され、
    前記細胞非捕捉領域は、前記第1の面の前記凹部外に配置されている、
    請求項1に記載の細胞整列チップ。
  3. 前記色素は、蛍光色素である、請求項1または請求項2に記載の細胞整列チップ。
  4. 前記蛍光色素の最大蛍光波長は、300nm以下または900nm以上である、請求項3に記載の細胞整列チップ。
  5. 基板上に配置されている標的細胞を捕捉するための複数の細胞捕捉領域と、前記基板上の前記細胞捕捉領域とは異なる領域に配置されている細胞非捕捉領域と、を有し、前記細胞非捕捉領域には、細胞の非特異的結合を抑制するためのブロッキング剤および色素を含有するブロッキング層が配置されている、細胞整列チップを準備する工程と、
    前記細胞捕捉領域に、蛍光色素で標識された標的細胞を捕捉させる工程と、
    前記色素を検出することで、前記ブロッキング層の位置を検出する工程と、
    前記蛍光色素に対する励起光を少なくとも前記細胞捕捉領域に照射し、前記蛍光色素から放出される蛍光を検出する工程と、
    前記蛍光の検出結果から、検出された前記ブロッキング層の位置における前記蛍光の検出結果を除くことで、前記細胞捕捉領域に捕捉された前記標的細胞を標識する前記蛍光色素からの蛍光の検出結果を算出する工程と、
    を含む、標的細胞の検出方法。
  6. 前記基板は、第1の面に複数の凹部を有し、
    前記細胞捕捉領域は、前記凹部内に配置され、
    前記細胞非捕捉領域は、前記第1の面の前記凹部外に配置されている、
    請求項5に記載の標的細胞の検出方法。
  7. 前記色素は、前記標的細胞を標識する前記蛍光色素と最大蛍光波長が異なる蛍光色素である、請求項5または請求項6に記載の標的細胞の検出方法。
  8. 前記標的細胞を標識する前記蛍光色素の最大蛍光波長は、300nmを超え、かつ900nm未満であり、
    前記ブロッキング層に含有される前記蛍光色素の最大蛍光波長は、300nm以下または900nm以上である、
    請求項7に記載の標的細胞の検出方法。
  9. 基板を準備する工程と、
    前記基板上に、標的細胞を捕捉するための複数の細胞捕捉領域と、前記細胞捕捉領域とは異なる領域に位置し、かつ細胞の非特異的結合を抑制するためのブロッキング剤および色素を含有するブロッキング層を所定のパターンで配置された細胞非捕捉領域と、を形成する工程と、
    を含む、細胞整列チップの製造方法。
  10. 前記色素を検出することで、前記ブロッキング層の形成パターンを確認する工程をさらに含む、請求項9に記載の細胞整列チップの製造方法。
  11. 基板上に配置されており、かつ蛍光色素で標識された標的細胞を捕捉している複数の細胞捕捉領域と、前記基板上の前記細胞捕捉領域とは異なる領域に配置されている細胞非捕捉領域と、を有し、前記細胞非捕捉領域には、細胞の非特異的結合を抑制するためのブロッキング剤および色素を含有するブロッキング層が配置されている、細胞整列チップを保持するためのホルダーと、
    前記ブロッキング層の位置を検出するための光を少なくとも前記細胞捕捉領域に照射する第1光照射部と、
    前記蛍光色素に対する励起光を少なくとも前記細胞捕捉領域に照射する第2光照射部と、
    前記色素からの応答光を検出する第1光検出部と、
    前記蛍光色素から放出される蛍光を検出する第2光検出部と、
    前記第1光検出部および前記第2光検出部の検出結果に基づいて、前記細胞捕捉領域に捕捉された前記標的細胞を標識する前記蛍光色素からの蛍光の検出結果を算出する処理部と、
    を有し、
    前記処理部は、前記第1光検出部の検出結果から前記ブロッキング層の位置を検出し、前記第2光検出部の検出結果から、検出された前記ブロッキング層の位置における前記蛍光の検出結果を除くことで、前記細胞捕捉領域に捕捉された前記標的細胞を標識する前記蛍光色素からの蛍光の検出結果を算出する、
    標的細胞の検出装置。
  12. 基板と、前記基板上に配置されている、標的細胞を捕捉するための複数の細胞捕捉領域と、前記基板上の前記細胞捕捉領域とは異なる領域に配置されている細胞非捕捉領域と、を有し、前記細胞非捕捉領域には、細胞の非特異的結合を抑制するためのブロッキング剤および色素を含有するブロッキング層が配置されている、細胞整列チップを準備する工程と、
    前記色素を検出することで、前記ブロッキング層の位置を検出する工程と、
    検出された前記ブロッキング層の位置と前記細胞捕捉領域とが重複する領域を検出することで、その上に前記ブロッキング層が配置されている前記細胞捕捉領域である細胞捕捉不良領域を検出する工程と、
    を含む、細胞捕捉不良領域の検出方法。
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