以下、本発明の実施の形態例に係る鞍乗り型車両の変速装置を図1〜図33を参照しながら説明する。
先ず、本実施の形態に係る変速装置が適用される鞍乗り型車両10について図1〜図33を参照しながら説明する。
図1に示すように、鞍乗り型車両である鞍乗り型車両10の車体フレーム12は、前輪14を軸支するフロントフォーク16を操向可能に支承するヘッドパイプ18と、該ヘッドパイプ18から後下がりに延びる左右一対のメインフレーム20と、両メインフレーム20の後部に連設されて下方に延びる左右一対のピボットプレート22とを有しており、ピボットプレート22に前端が揺動可能に支承されるスイングアーム24の後部に後輪26が軸支される。しかも、ピボットプレート22の下部及びスイングアーム24の前部間にはリンク28が設けられ、ピボットプレート22の上部及びリンク28間にはクッションユニット30が設けられる。
メインフレーム20及びピボットプレート22にはパワーユニット32が懸架されており、該パワーユニット32から出力される回転動力は前後に延びるドライブシャフト34を介して後輪26に伝達される。
パワーユニット32が備えるエンジン36(動力源)のエンジン本体38もしくは車体フレーム12には、サイドスタンド40が取付けられており、この実施の形態では、車体フレーム12における左側のピボットプレート22の下部にサイドスタンド40が取付けられる。従って、サイドスタンド40を立てて駐車したときに鞍乗り型車両10は左側に傾斜した状態となる。
また、フロントフォーク16の上端部には左右一対のハンドル42がそれぞれ取り付けられる。右側のハンドル42(図示略)のグリップ部はスロットルグリップとされ、その前方にはフロントブレーキレバーが配設される。左側のハンドル42のグリップ部前方にはクラッチを切るためのクラッチOFFスイッチ44(クラッチ操作子)が配設されている。
さらに、左右のピボットプレート22の後部には運転者用の左右のステップ46がステップホルダを介してそれぞれ取り付けられる。特に、左側のステップ46の前方には、マニュアル(足動)による変速操作(シフト操作)を行うシフトペダル48が配設される。
図2に示すように、エンジン36のエンジン本体38は、鞍乗り型車両10への搭載状態で前方に位置する前部バンク50Fと、該前部バンク50Fよりも後方に位置する後部バンク50Rとを有してV型の水冷式に構成されるものであり、両バンク50F、50Rに共通なクランクケース52に、鞍乗り型車両10の左右方向に沿うクランクシャフト54が回転自在に支承される。
クランクケース52は、上部ケース半体52a及び下部ケース半体52bが結合されて構成され、V字形をなすようにして前部及び後部シリンダブロック56F、56Rが上部ケース半体52aに一体に形成され、クランクシャフト54の軸線は上部ケース半体52a及び下部ケース半体52bの結合面58上に配置される。
前部バンク50Fは、前部シリンダブロック56Fと、前部シリンダブロック56Fに結合される前部シリンダヘッド60Fと、前部シリンダヘッド60Fに結合される前部ヘッドカバー62Fとで構成され、後部バンク50Rは、後部シリンダブロック56Rと、後部シリンダブロック56Rに結合される後部シリンダヘッド60Rと、後部シリンダヘッド60Rに結合される後部ヘッドカバー62Rとで構成され、クランクケース52の下部にはオイルパン64が結合される。
前部シリンダブロック56Fには、クランクシャフト54の軸線方向に並ぶ2つのシリンダボア66が形成されており、前部シリンダブロック56Fは、エンジン本体38の車体フレーム12への懸架状態でシリンダボア66の軸線を前上がりに傾斜させるようにしてクランクケース52に結合される。また、後部シリンダブロック56Rには、クランクシャフト54の軸線方向に並ぶ2つのシリンダボア66が形成されており、後部シリンダブロック56Rは、エンジン本体38の車体フレーム12への懸架状態で、各シリンダボア66の軸線を後上がりに傾斜させるようにしてクランクケース52に結合される。そして、前部バンク50Fの両シリンダボア66にそれぞれ摺動可能に嵌合されるピストン68と、後部バンク50Rの両シリンダボア66にそれぞれ摺動可能に嵌合されるピストン68とが、クランクシャフト54に共通に連接される。
図3に示すように、前部シリンダヘッド60Fには、各シリンダボア66毎に一対ずつの吸気弁70が一対ずつの弁ばね72で閉弁方向に付勢されて開閉作動可能に配設されるとともに、一対ずつの図示しない排気弁が弁ばねで閉弁方向に付勢されて開閉作動可能に配設されており、これらの吸気弁70及び排気弁は、前部バンク側動弁装置74Fによって開閉駆動される。
前部バンク側動弁装置74Fは、クランクシャフト54と平行な軸線を有して前部シリンダヘッド60Fに回転自在に支承されると共に吸気弁70の上方に配置されるカムシャフト76と、該カムシャフト76に設けられた複数(この実施の形態では4つ)の吸気側カム78及び吸気弁70間に介装されて前部シリンダヘッド60Fに摺動可能に嵌合される吸気側バルブリフタ80と、カムシャフト76に設けられた複数(この実施の形態では4つ)の図示しない排気側カムに転がり接触するローラを一端に有すると共に他端には各排気弁のステムの上端に当接するタペットねじが進退位置を調節可能として螺合されるロッカアームとを備え、ロッカアームは、カムシャフト76と平行な軸線を有して前部シリンダヘッド60Fに固定配置されるロッカシャフトで揺動可能に支承される。
後部シリンダヘッド60Rには、各シリンダボア66毎に一対ずつの吸気弁70及び一対ずつの排気弁が弁ばねで閉弁方向に付勢されて開閉作動可能に配設されており、これらの吸気弁70及び排気弁は、図示しない後部バンク側動弁装置によって開閉駆動される。
エンジン本体38の車体フレーム12への搭載状態でのクランクシャフト54の左側端部には、発電機82が連結される。この発電機82は、クランクシャフト54に固定されるロータ84と、ロータ84内に固定配置されるステータ86とで構成され、クランクケース52と、該クランクケース52の左側側面に結合される発電機カバー88とで構成される発電機収容室90に収容され、ステータ86は発電機カバー88に固定される。
しかも、ロータ84には、ロータ84側への動力伝達を可能とした一方向クラッチ92を介して歯車94が連結されており、この歯車94には、図示しない始動モータからの動力が伝達される。
一方、エンジン本体38の車体フレーム12への搭載状態でのクランクケース52の右側側面には、クランクケース52との間にクラッチ室96を形成するクラッチカバー98が結合される。クラッチ室96内で、クランクシャフト54には、駆動スプロケット100、102が固設される。一方の駆動スプロケット100は、前部バンク側動弁装置74Fにおけるカムシャフト76に、クランクシャフト54の回転動力を1/2の減速比で伝達する前部バンク側調時伝動機構104の一部を構成する。前部バンク側調時伝動機構104は、駆動スプロケット100と、カムシャフト76に設けられる被動スプロケット106とに無端状のカムチェーン108が巻き掛けられる。また、他方の駆動スプロケット102は、図示しない後部バンク側動弁装置における吸気側および排気側カムシャフトにクランクシャフト54の回転動力を1/2の減速比で伝達する後部バンク側調時伝動機構110の一部を構成する。この後部バンク側調時伝動機構110は、駆動スプロケット102と、前記吸気側及び排気側カムシャフトにそれぞれ設けられる被動スプロケット(図示せず)とに、無端状のカムチェーン112が巻き掛けられる。
そして、前部シリンダブロック56F及び前部シリンダヘッド60Fには、カムチェーン108を走行させるカムチェーン室114が形成され、後部シリンダブロック56R及び後部シリンダヘッド60Rには、カムチェーン112を走行させるカムチェーン室(図示せず)が形成される。
クランクシャフト54及びドライブシャフト34間の動力伝達経路には、図4に示すように、第1実施の形態に係る変速装置(以下、第1変速装置200Aと記す)が設置され、クランクシャフト54側から順に一次減速機構202(図3参照)、クラッチ装置204(クラッチ機構)、歯車変速機構206(変速機構)及び駆動伝達シャフト210を備えており、一次減速機構202及びクラッチ装置204はクラッチ室96に収容され、歯車変速機構206はクランクケース52内に収容される。
歯車変速機構206は、図4に示すように、クランクシャフト54(図3参照)とそれぞれ平行に配置されるメインシャフト212及びカウンタシャフト214(出力軸)を有する。なお、駆動伝達シャフト210もクランクシャフト54と平行に配置されている。クランクシャフト54、メインシャフト212、カウンタシャフト214は、上部ケース半体52a(図2参照)と下部ケース半体52bとの結合面58に対応した位置に配置され、カウンタシャフト214の前方、且つ、下方に駆動伝達シャフト210が配置されている。クランクシャフト54のカムチェーン室114(図3参照)側の端には、一次減速機構202のクランク側駆動歯車216が固定され、クランク側駆動歯車216はメインシャフト212のメイン側被動歯車218と噛み合っている。メイン側被動歯車218は、後述のように、メインシャフト212上にメインシャフト212と相対回転自在に設けられ、クラッチ装置204に接続されており、このクラッチ装置204の作動によってクランクシャフト54とメインシャフト212との間の動力の伝達が断続可能となっている。メイン側被動歯車218には、駆動スプロケット220が係合され、この駆動スプロケット220は、クラッチ装置204オンオフとは無関係にメイン側被動歯車218と一体に回転し、図2に示すように、オイルポンプ222のポンプ軸に固定された被動スプロケット224に駆動チェーン226を介してメインシャフト212の回転を伝達し、オイルポンプ222を駆動する。
図4に示すように、メインシャフト212には、6速分の駆動ギヤm1〜m6(第1、第2の入力軸に設けた複数の歯車群)が設けられ、カウンタシャフト214には6速分の従動ギヤn1〜n6(歯車群と噛合う歯車群、出力軸の歯車)が設けられ、各駆動ギヤm1〜m6及び従動ギヤn1〜n6は、対応する変速段同士で互いに噛み合い、それぞれ各変速段に対応する変速歯車対を構成する。
クランクケース52(図3参照)の後方には、ミッションケース228が一体に連なり、第1変速装置200Aは、ミッションケース228内に、クランクシャフト54(図3参照)からの入力を断接するクラッチ装置204、及び、変速を行なうギヤシフト装置208(変速チェンジ機構)を備えている。鞍乗り型車両10は、クラッチ装置204及びギヤシフト装置208を制御するECU230(電子制御ユニット:制御装置)を有し、クラッチ装置204、ギヤシフト装置208及びECU230を主たる構成要素としての第1変速装置200Aが構成されている。なお、図4においては、図示の複雑化を避けるために、ECU230への配線を省略している。
第1変速装置200Aは、内シャフト212m(一方の動力伝達軸)及び外シャフト212n(他方の動力伝達軸)を有する内外二重構造の上述したメインシャフト212と、該メインシャフト212と平行に配置されるカウンタシャフト214及び駆動伝達シャフト210と、メインシャフト212及びカウンタシャフト214に跨って配置される上記変速ギヤ群m1〜m6、n1〜n6と、メインシャフト212の右端部に同軸配置されるクラッチ装置204と、該クラッチ装置204に作動用油圧を供給する油圧供給装置(図5参照)とを有している。メインシャフト212、カウンタシャフト214、変速ギヤ群m1〜m6、n1〜n6及び駆動伝達シャフト210を備えた集合体をトランスミッション232とする。
メインシャフト212は、図4に示すように、左右に延在する内シャフト212mの右側部を外シャフト212n内に相対回転可能に挿通されている。該内シャフト212mはベアリングを介して外シャフト212nに回転可能に支持される。内シャフト212m及び外シャフト212nの外周には、変速ギヤ群における6速分の駆動ギヤm1〜m6が振り分けて配置される。一方、カウンタシャフト214の外周には、変速ギヤ群における6速分の従動ギヤn1〜n6が配置される。各駆動ギヤm1〜m6及び従動ギヤn1〜n6は、対応する変速段同士で互いに噛み合い、それぞれ各変速段に対応する変速ギヤ対を構成する。各変速ギヤ対は、1速から6速の順に減速比が小さくなる(高速ギヤとなる)。
内シャフト212mの左端部はミッションケース228の左側壁に至り、該左側壁にボールベアリング234を介して回転可能に支持されている。一方、内シャフト212mの右側部は、ミッションケース228の右側壁を貫通してクラッチ室96内に臨み、該内シャフト212mの左右中間部が、同じく右側壁を貫通する外シャフト212nの左右中間部及びボールベアリング236を介して、ミッションケース228の右側壁に回転可能に支持されている。クラッチ室96は、クラッチ装置204を外側から覆うクラッチカバー98により構成されている。
外シャフト212nは内シャフト212mよりも短く、その左端部はミッションケース228の左右中間部で終端する。外シャフト212nにおけるミッションケース228の右側壁よりも左方に位置する部位には、偶数変速段(2速、4速、6速)に対応する駆動ギヤm2、m4、m6が支持される。一方、内シャフト212mにおける外シャフト212nの左端(外側入力軸の端部)よりも左方に位置する部位には、奇数変速段(1速、3速、5速)に対応する駆動ギヤm1、m3、m5が支持される。
カウンタシャフト214の左右端部は、ミッションケース228の左右側壁にベアリング238及び240を介して回転可能に支持される。カウンタシャフト214の右端部にはギヤ242が連結され、ギヤ242は駆動伝達シャフト210のギヤ244と常時噛み合っている。駆動伝達シャフト210は、ミッションケース228の左右側壁にベアリング246及び248を介して回転可能に支持される。駆動伝達シャフト210には、トルクダンパ250が配置される。トルクダンパ250は、トルク変動が加わった場合にそれを緩和するものであり、駆動伝達シャフト210に軸方向に移動可能にスプライン結合された円筒部材252を備えている。駆動伝達シャフト210には、ばね受け部材254が固定され、円筒部材252とばね受け部材254との間にコイルばね256が設けられ、円筒部材252がギヤ244側に付勢されている。
駆動伝達シャフト210の左端部には、駆動傘歯車258が一体的に設けられ、駆動傘歯車258は、軸部260の前端に一体に設けられた被動傘歯車262に噛み合う。軸部260は、車体の前後方向に延びるドライブシャフト34(図1)に連結され、これによって、駆動伝達シャフト210の回転がドライブシャフト34に伝達される。
カウンタシャフト214におけるミッションケース228の内側に位置する部位には、変速ギヤ群における各変速段に対応する従動ギヤn1〜n6が、各駆動ギヤm1〜m6と同様の順に支持される。内シャフト212m及びカウンタシャフト214の内部には、オイルポンプ222からのオイルを供給するシャフト内油路がそれぞれ形成され、これらシャフト内油路を介して各変速ギヤ群に適宜オイルが供給される。
メインシャフト212の右端部には、クラッチ装置204が同軸配置されている。クラッチ装置204は、エンジン36のクランクシャフト54(図3参照)とメインシャフト212との間に設けられ、クランクシャフト54とメインシャフト212との接続状態を調整する。
このクラッチ装置204は、互いに同軸に隣接配置される油圧式の奇数段側のディスククラッチ及び偶数段側のディスククラッチ(以下、単に第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bと記す)(クラッチ機構)を有し、これら第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bは内シャフト212m及び外シャフト212nの右端に同軸に設けられている。第1クラッチ264aは内シャフト212mに設けられ、第2クラッチ264bは外シャフト212nに設けられている。
第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bが共有するクラッチアウタ266には、クランクシャフト54のクランク側駆動歯車216に噛み合うメイン側被動歯車218が同軸に設けられ、これらクランク側駆動歯車216及びメイン側被動歯車218を介して、クラッチアウタ266にクランクシャフト54からの回転駆動力が入力される。クラッチアウタ266に入力された回転動力は、第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bの接続状態に応じて内シャフト212m及び外シャフト212nに個別に伝達される。
第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bの接続状態は、図2及び図5に示す油圧供給装置268からの油圧供給の有無により個別に制御される。
油圧供給装置268は、図2及び図5に示すように、クラッチ制御装置270と、オイルパン64内のオイル272(図5参照)をくみ上げてクラッチ装置204に供給する上述したオイルポンプ222とを有する。クラッチ制御装置270は、第1電磁制御弁274aと、第2電磁制御弁274bとを有する。
第1電磁制御弁274a及び第2電磁制御弁274bは、図2に示すように、前後及び上下方向で異なる位置に配置される。しかも、第1電磁制御弁274a及び第2電磁制御弁274bのうち、第2電磁制御弁274bが第1電磁制御弁274aよりも上方、且つ、クランクシャフト54よりも上方に配置され、下方に配置される第1電磁制御弁274aの少なくとも一部、この実施の形態では大部分がクランクシャフト54よりも前方に配置される。
図5に示すように、第1電磁制御弁274aは、オイルポンプ222からのオイル272をECU230からの指示(第1クラッチ容量出力値Sc1)に基づいて第1クラッチ264aに対して出し入れする。第1クラッチ264aにオイル272が供給されることで、メインシャフト212の内シャフト212mとクランクシャフト54とが接続され、第1クラッチ264aからオイル272が抜き取られることで、上記接続が切断される。第1クラッチ264aから抜き取られたオイル272はオイルパン64に戻される。
第2電磁制御弁274bは、オイルポンプ222からのオイル272をECU230からの指示(第2クラッチ容量出力値Sc2)に基づいて第2クラッチ264bに対して出し入れする。第2クラッチ264bにオイル272が供給されることで、メインシャフト212の外シャフト212nとクランクシャフト54とが接続され、第2クラッチ264bからオイル272が抜き取られることで、上記接続が切断される。第2クラッチ264bから抜き取られたオイル272はオイルパン64に戻される。
通常、第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bのうち、一方を接続状態とすると共に他方を切断状態とし、内シャフト212m及び外シャフト212nの一方に連結された何れかの変速ギヤ対を用いてトランスミッション232内の動力伝達を行うと共に、内シャフト212m及び外シャフト212nの他方に連結された変速ギヤ対の中から次に用いるものを予め選定し、この状態から第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bにおいて接続状態の一方のクラッチを切断状態とし、切断状態であった他方のクラッチを接続状態とすることで、トランスミッション232の動力伝達が予め選定した変速ギヤ対を用いたものに切り替わり、これにより、トランスミッション232のシフトアップ又はシフトダウンがなされる。
詳細には、1速、3速及び5速では第1クラッチ264aが接続され、2速、4速及び6速では第2クラッチ264bが接続される。すなわち、クラッチ装置204では、1速から6速まで1段毎に交互に第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bを断接して変速を行なっている。特に、シフトアップ又はシフトダウンの過程においては、後述するように、第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bが両方とも接続される。
図4に示すように、トランスミッション232は、各変速段に対応する駆動ギヤm1〜m6と従動ギヤn1〜n6とが常に噛み合った常時噛み合い式である。各ギヤm1〜m6、n1〜n6は、その支持シャフト(メインシャフト212、カウンタシャフト214)に対して一体回転可能な固定ギヤと、支持シャフトに対して相対回転可能、且つ、軸方向で移動不能なフリーギヤと、支持シャフトに対して一体回転可能、且つ、軸方向で移動可能なスライドギヤとに大別される。具体的には、駆動ギヤm1及びm2は固定ギヤとされ、駆動ギヤm3及びm4はスライドギヤとされ、駆動ギヤm5及びm6はフリーギヤとされている。また、従動ギヤn1〜n4はフリーギヤとされ、従動ギヤn5及びn6はスライドギヤとされている。以下、駆動ギヤm3及びm4並びに従動ギヤn5及びn6をスライドギヤ、駆動ギヤm5及びm6並びに従動ギヤn1〜n4をフリーギヤという。各スライドギヤは、その支持軸に対してスプライン嵌合されている。
スライドギヤm3(内側入力軸に設けた歯車)の側面には軸方向に突出するドグが設けられ、該ドグはフリーギヤm5のドグ穴に結合可能である。スライドギヤn5には、軸方向の両側にそれぞれドグが設けられ、一方のドグはフリーギヤn1のドグ穴に結合可能であり、他方のドグはフリーギヤn3のドグ穴に結合可能である。
スライドギヤm4(外側入力軸の端部に設けた歯車)にはドグが設けられ、該ドグはフリーギヤm6のドグ穴に結合可能である。また、スライドギヤm4にはドグと反対側へ軸方向に突出するドグが設けられており、該ドグは、スライドギヤm3に設けられたドグ穴に結合可能である。
スライドギヤn6には、両側にそれぞれドグが設けられ、一方のドグはフリーギヤn2のドグ穴に結合可能であり、他方のドグはフリーギヤn4のドグ穴に結合可能である。
各ドグ及び各ドグ穴は、対応するスライドギヤ及びフリーギヤ同士が近接した際に互いに相対回転不能に係合し、スライドギヤ及びフリーギヤ同士が離間した際に上述の係合を解除する。そして、各ドグを介して各スライドギヤの何れかと対応するフリーギヤとが相対回転不能に係合することでフリーギヤが支持シャフトに固定され、メインシャフト212及びカウンタシャフト214間で1速〜6速の何れかの変速ギヤ対を選択的に用いた動力伝達が可能となる。なお、各スライドギヤ及びフリーギヤ間の係合が全て解除された状態では、メインシャフト212及びカウンタシャフト214間の動力伝達が不能となり、ニュートラル状態となる。
外シャフト212nの左端に設けられた駆動ギヤm4と、駆動ギヤm4に隣接する内シャフト212mの駆動ギヤm3とは、駆動ギヤm4及び駆動ギヤm3が互いに近づくようにスライドされて、駆動ギヤm4のドグが駆動ギヤm3のドグ穴に結合されることで一体に連結される。この状態では、外シャフト212nと内シャフト212mとが駆動ギヤm3及びm4を介して一体に連結されており、外シャフト212n及び内シャフト212mは同期して一体に回転可能である。また、駆動ギヤm4及び駆動ギヤm3が互いに離れるようにスライドされると、駆動ギヤm4のドグと駆動ギヤm3のドグ穴との結合が解除され、外シャフト212nと内シャフト212mとの連結は解除される。
すなわち、駆動ギヤm4のドグ及び駆動ギヤm3のドグ穴は、外シャフト212nと内シャフト212mとの連結状態を切り換え可能なドグ式クラッチ(同期させる手段)を構成しており、このドグ式クラッチは、外シャフト212n及び内シャフト212mの回転を同期させる手段である。
次に、ギヤシフト装置208を説明する。図4に示すように、ギヤシフト装置208は、メインシャフト212及びカウンタシャフト214と平行に配置された円筒状のシフトドラム278の回転により4つのシフトフォーク(第1シフトフォーク280a、第2シフトフォーク280b、第3シフトフォーク280c及び第4シフトフォーク280d)を軸方向で移動させ、メインシャフト212及びカウンタシャフト214間の動力伝達に用いる変速ギヤ対(変速段)を切り換える。シフトドラム278の外周面には、第1シフトフォーク280a〜第4シフトフォーク280dが嵌合する4本のカム溝(第1カム溝282a、第2カム溝282b、第3カム溝282c及び第4カム溝282d)がそれぞれ形成されている。第1カム溝282a〜第4カム溝282dは、シフトドラム278の周方向に沿って形成されている。
第2シフトフォーク280bは、メインシャフト212側に延び、スライドギヤm3の凹所P3に嵌り、第3シフトフォーク280cは、スライドギヤm4の凹所P4に嵌る。また、第1シフトフォーク280a及び第4シフトフォーク280dはカウンタシャフト214側に延び、第1シフトフォーク280aは、スライドギヤn5の凹所P5に嵌り、第4シフトフォーク280dは、スライドギヤn6の凹所P6に嵌る。第1シフトフォーク280a〜第4シフトフォーク280dの基端側は、一対のシフトフォークロッド(第1シフトフォークロッド284a及び第2シフトフォークロッド284b)にそれぞれ軸方向で移動可能に支持されている。第1シフトフォーク280a〜第4シフトフォーク280dの基端側には、シフトドラム278の第1カム溝282a〜第4カム溝282dに係合する摺動突部286がそれぞれ設けられている。
シフトドラム278の図4中の右端は、シフトドラム278の回転量を制御するラチェット機構288(間欠送り機構)を介してシフトスピンドル290(連動軸)に連結されている。
シフトスピンドル290のミッションケース228から突出した先端部290aには、図1に示すように、シフトレバー292の基端部が嵌合固定され、このシフトレバー292がシフトロッド294を介してシフトペダル48と連係される。
具体的には、シフトスピンドル290の先端部290aにシフトレバー292の基端部であるボス部292aがセレーション嵌合される。ボス部292aにはスリットが設けられ、このスリットをボルトを用いて締め付けることで、シフトレバー292とシフトスピンドル290とが固定される。シフトレバー292の先端側は後方に向かって延び、その先端部292b(チェンジペダル軸)にはシフトロッド294の上端部が回動自在に連結される。
シフトペダル48はその基端部48aがピボットプレート22の下端部に回動自在に支持され、先端側が斜め後上方に向かって延びるように設けられる。なお、シフトペダル48の先端部48bは、左側のステップ46に乗せた運転者の左足で操作可能な位置に配置される。このシフトペダル48の基端部48aと先端部48bとの間にシフトロッド294の下端部が回動可能に連結され、シフトペダル48、シフトロッド294及びシフトレバー292によるシフトリンク機構が形成される。そして、シフトペダル48の操作により、シフトロッド294及びシフトレバー292を介して、図4に示すように、シフトスピンドル290及びシフトアーム296が一定角度回転する。
一方、図4、図6及び図7に示すように、シフトドラム278の一端には、該シフトドラム278と共に回動するシフトドラムセンター298が同軸のボルト300並びに偏心位置に取り付けられたシフトドラムピン302とによって固定されている。このシフトドラムセンター298は、図6に示すように、シフトドラム278と対向する部分に、外周に沿って複数のノッチが形成された花びら状の突出部304(ストッパ受け部)を有し、シフトドラム278に対して反対側の部分に、後述するラチェット機構288の一部が収容される収容部306を有する。
図7に示すように、突出部304の外周には、上述した凹所P3〜P6をそれぞれニュートラル位置に位置させるための中立ノッチNNが形成され、この中立ノッチNNから例えば反時計方向に第1凸部K1を隔てて第1ノッチN1が形成され、第1ノッチN1から第2凸部K2を隔てて第2ノッチN2が形成され、第2ノッチN2から第3凸部K3を隔てて第3ノッチN3が形成され、第3ノッチN3から第4凸部K4を隔てて第4ノッチN4が形成され、第4ノッチN4から第5凸部K5を隔てて第5ノッチN5が形成され、第5ノッチN5から第6凸部K6を隔てて第6ノッチN6が形成されている。そして、第1ノッチN1〜第6ノッチN6のピッチ(中心角θ a )はそれぞれ略60度(59度〜61度)となっている。また、中立ノッチNNと第1ノッチN1間並びに中立ノッチNNと第6ノッチN6間の各ピッチ(中心角θ b )は、それぞれ略30度(29度〜31度)となっている。
シフトドラムセンター298の突出部304に設けられた中立ノッチNN、第1ノッチN1〜第6ノッチN6には、ストッパアーム308(ストッパ部)が選択的に係合される。このストッパアーム308は、図6に示すように、シフトドラム278及びシフトドラムセンター298の軸線と平行な軸線を有する支軸310でクランクケース52における上部ケース半体52a(図6参照)に基端部が回動可能に軸支されるアーム312と、中立ノッチNN、第1ノッチN1〜第6ノッチN6の1つに係合するようにしてアーム312の先端に軸支されるローラ314とから構成される。
これらノッチのうち、中立ノッチNNは、ローラ314の係合状態を安定化させるために円弧状に凹んで形成される。その他の第1ノッチN1〜第6ノッチN6は、ノッチの底部がわずかに湾曲されているほかはほぼ直線状に近い曲線にて形成されている。つまり、代表的に第1ノッチN1をみると、第1ノッチN1の底部から第2凸部K2の頂部にかけてほぼ傾斜面に近い曲面とされる。
図6及び図7に示すように、アーム312の基端部及び上部ケース半体52a間には、ねじりばね316が設けられており、アーム312、すなわち、ストッパアーム308は、ローラ314を中立ノッチNN、第1ノッチN1〜第6ノッチN6の1つに係合させるべく、ねじりばね316が発揮するばね力により、シフトドラムセンター298の回動中心に向けて付勢される。
シフトドラムセンター298は、ニュートラルから第1速への変更及び第1速からニュートラルへの変更の際は、ラチェット機構288によって、略30度だけ回動駆動し、第1速から第2速、第2速から第3速等のように変速する際には、ラチェット機構288によって、略60度だけ回動駆動する。
ラチェット機構288は、シフトドラムセンター298と同軸の軸線まわりに回動することを可能として、シフトドラムセンター298内に少なくとも一部が配置されるドラムシフタ318と、図8及び図9に示すように、ドラムシフタ318の半径方向に起倒するようにしてドラムシフタ318に対称的に装着される一対のラチェットパウル320と、これらラチェットパウル320を起立方向にそれぞれ付勢する一対のばね322と、ラチェットパウル320を係合させることを可能としてシフトドラムセンター298の内周に周方向等間隔に設けられる係合凹部324と、ドラムシフタ318の回動に応じたラチェットパウル320の起伏状態をガイドする固定のガイドプレート326とを有する。
ドラムシフタ318は、シフトドラムセンター298をシフトドラム278の一端に同軸に結合するボルト300(図6参照)の軸線まわりに回動することを可能として支承される。
図8に示すように、ラチェットパウル320は、ばね322によって起立方向に付勢されるものであり、起立時に先端部をドラムシフタ318の外周から突出させ、倒伏時には先端部がドラムシフタ318の外周と略同一位置となる。
シフトドラムセンター298の内周には、複数個(この実施の形態では6個)の係合凹部324が周方向に等間隔をあけて設けられており、ストッパアーム308が、第1ノッチN1〜第6ノッチN6のうちの1つに係合している状態で、各係合凹部324のうち、相対向する2つの係合凹部324にそれぞれラチェットパウル320の先端部を選択的に係合させることができる。
図6に示すように、ガイドプレート326は、シフトドラムセンター298を上部ケース半体52aとの間に挟む位置で、一対のボルトによって上部ケース半体52aに締結されるものであり、このガイドプレート326には、図8に示すように、ドラムシフタ318に対応したガイド孔328が設けられる。
このガイド孔328は、シフトドラムセンター298及びドラムシフタ318の回動軸線、すなわち、ボルトの軸線330を中心としてドラムシフタ318の外周よりも大径に形成される大径円弧部328aと、該大径円弧部328aの中央部からドラムシフタ318の外周よりも内方に突出する規制突部328bと、ボルトの軸線330を中心としてドラムシフタ318の外周よりも小径に形成される小径円弧部328cと、大径円弧部328aの両端及び小径円弧部328cの両端間を結ぶ段部328dとから構成されるものであり、大径円弧部328aの周方向長さは、図7に示すように、2つのラチェットパウル320の先端部がそれぞれ係合している2つの係合凹部324間に対応する長さに設定される。
しかも、段部328dは、係合凹部324に係合しているラチェットパウル320がドラムシフタ318の回動に応じて小径円弧部328c側に移動したときに当該ラチェットパウル320に当接し、該ラチェットパウル320を倒伏側に押圧する。段部328dは、シフトドラムセンター298の内周よりも外方に配置されている。
図6及び図7に示すように、シフトスピンドル290には、シフトスピンドル290に基端部が固定され、シフトスピンドル290の半径方向に沿ってドラムシフタ318側に延びるシフトアーム296が固定されている。このシフトアーム296は、シフトスピンドル290の半径方向に長く延び、該シフトアーム296の先端部に設けられた長孔状の係合孔334に、ドラムシフタ318の回動軸線からオフセットした位置で該ドラムシフタ318に植設された係合ピン336が係合される。
また、図7に示すように、シフトアーム296の基端部には、シフトアーム332と略L字状をなすようにしてシフトスピンドル290の半径方向に延びるアーム338が一体に連設されており、このアーム338の先端部には長孔340が設けられる。
一方、図6及び図7に示すように、クランクケース52における上部ケース半体52aには、長孔340に挿通されるピン342が植設されており、ピン342を両側から挟む一対の挟み腕344aを両端に有する挟みばね344が、シフトスピンドル290を囲繞するようにしてシフトアーム296及びアーム338と、上部ケース半体52aとの間に配置される。これによりシフトアーム296及びアーム338は、長孔340の周方向中心及びシフトスピンドル290の軸線を結ぶ直線上にピン342が並ぶ中立位置に付勢されることになる。
従って、例えばニュートラルから第1速への変更においては、図7の状態から、シフトスピンドル290の回動に伴うラチェット機構288の回動駆動によってシフトドラムセンター298が回動し、図10に示すように、ストッパアーム308のローラ314が第1ノッチN1に入り込み、その後、図11に示すように、挟みばね344の付勢によって、ドラムシフタ318が元の位置に回動復帰することで、ラチェット機構288のリセット動作が行われ、その後、ストッパアーム308のローラ314が第1ノッチN1の底部に位置することで(ニュートラルの位置から略30度回動した段階)、シフトドラムセンター298の回動が停止することになる。
これは、例えば第1速から第2速への変更についても同様であり、図11の状態から、シフトスピンドル290の回動に伴うラチェット機構288の回動駆動によってシフトドラムセンター298が回動し、図12に示すように、ストッパアーム308のローラ314が第2ノッチN2に入り込み、その後、図13に示すように、挟みばね344の付勢によって、ドラムシフタ318が元の位置に回動復帰することで、ラチェット機構288のリセット動作が行われ、その後、ストッパアーム308のローラ314が第2ノッチN2の底部に位置することで(第1ノッチN1の底部の位置から略60度回動した段階)、シフトドラムセンター298の回動が停止することになる。これは、第2速から第4速、第4速から第5速等においても同様であり、また、第2速から第1速等のシフトダウン操作においても同様である。
そして、第1変速装置200AのECU230は、図14に示すように、ギヤポジション判定部346と、目標ギヤポジション判定部348と、走行状態判定部350と、接続クラッチ判定部354と、第1クラッチ容量演算部356Aとを有する。
ギヤポジション判定部346は、シフトドラム278の回転角を検出するドラム回転角センサー358(ギヤ位置センサー)からのドラム回転角信号Saと、奇数段インギヤ情報テーブル360と、偶数段インギヤ情報テーブル362とに基づいて、現在のギヤポジションを判定し、ギヤポジション判定値Daとして出力する。ギヤポジション判定値Daは、「N−N」、「1−N」、「1−2」、「N−2」、「3−2」、「3−N」、「3−4」等であり、−の前段が奇数段の状態、−の後段が偶数段の状態を示す。
また、現在のギヤポジションとドラム回転角信号Sa(電圧値Va)との関係は、例えば図15及び図16に示すように、ギヤポジション判定値Daがシフトアップするに応じてドラム回転角信号(電圧値Va)が比例的に上昇する関係となっている。なお、図16は、シフトドラム278の回転角に応じた、シフトドラムセンター298の突出部の形状(花びら形状)、奇数段側ギヤのインギヤ状態、偶数段側ギヤのインギヤ状態、ギヤポジション判定値Da、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)の変化を示す説明図である。
また、図16において、Laは、ノッチの底部から変速方向に隣接する凸部の頂部までのシフトドラム278の移動量(角度)を示し、Lbは、ノッチの底部から変速方向に隣接する凸部を超え、次段への変速を許可されるポイント(変速許可しきい値)までのシフトドラム278の移動量(角度)を示し、Lcは、ノッチの底部から変速方向に隣接する凸部を超え、ピン342がアーム338の長孔340の周縁に当接することによる、シフトペダル48がシフトアップ側のストッパー位置に到達するまでのシフトドラム278の移動量(角度)を示す。La、Lb及びLcに付されている符号+及び−は、「+」がシフトアップを示し、「−」がシフトダウンを示す。
奇数段インギヤ情報テーブル360は、図17Aに示すように、1速ギヤがインギヤ状態になっているドラム回転角信号Sa(電圧値Va)の第1電圧範囲V1f〜V1e、3速ギヤがインギヤ状態になっている第3電圧範囲V3f〜V3e、5速ギヤがインギヤ状態になっている第5電圧範囲V5f〜V5eが登録されている。
同様に、偶数段インギヤ情報テーブル362は、図17Bに示すように、2速ギヤがインギヤ状態になっている第2電圧範囲V2f〜V2e、4速ギヤがインギヤ状態になっている第4電圧範囲V4f〜V4e、6速ギヤがインギヤ状態になっている第6電圧範囲V6f〜V6eが登録されている。
そして、ギヤポジション判定部346は、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)が、奇数段インギヤ情報テーブル360及び偶数段インギヤ情報テーブル362のいずれの電圧範囲にも入っていなければ「N−N」、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)が第1電圧範囲V1f〜V1eに入り、第2電圧範囲V2f〜V2eに入っていなければ「1−N」、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)が第1電圧範囲V1f〜V1e及び第2電圧範囲V2f〜V2eに入っていれば「1−2」というように判定する。
このギヤポジション判定値Daは、鞍乗り型車両10のハンドル42間に設置されたメータ表示部364に供給され、該メータ表示部364の所定表示領域に、ギヤポジション判定値Daに対応した文字、数字が表示される。なお、ギヤポジション判定値Daが「N−N」であれば、ニュートラルを示す「N」が表示され、ギヤポジション判定値Daが「1−N」、「1−2」であれば、2つのクラッチのうちの接続されるクラッチ側の変速段に応じて、現在の変速段が表示される。以下、同様である。
目標ギヤポジション判定部348は、ドラム回転角センサー358からのドラム回転角信号Saと、ギヤポジション判定部346からのギヤポジション判定値Daと、シフトスピンドル290の回転角を検出するスピンドル回転角センサー366(図4も参照)からのスピンドル回転角信号Sbとに基づいて次に位置する目標ギヤポジションを判定し、目標ギヤポジション値Dbとして出力する。スピンドル回転角信号Sbは、例えばシフトペダル48の操作方向と操作量に応じた正負の電圧値を採用することができる。例えばシフトペダル48をシフトアップの方向に操作した場合は、スピンドル回転角センサー366から正の電圧値が出力され、シフトペダル48をシフトダウンの方向に操作した場合は、スピンドル回転角センサー366から負の電圧値が出力される。目標ギヤポジション値Dbは、初期値(ニュートラル状態)が「0」、第1速が「1」、第2速が「2」、第3速が「3」、第4速が「4」、第5速が「5」、第6速が「6」である。
走行状態判定部350は、エンジン36の回転数を検出するエンジン回転数センサー368からのエンジン回転数信号neと、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサー370からのスロットル開度信号thと、鞍乗り型車両10の車速を検出する車速センサー372からの車速信号vrとに基づいて、鞍乗り型車両10の走行状態、すなわち、鞍乗り型車両10が停車状態、又は鞍乗り型車両10が発進しようとしている状態であるかを判定する。この走行状態判定部350からは、停車状態の場合にクラッチの切断要求を示す信号(停車時クラッチ切断要求信号Sc)が出力される。
なお、ギヤポジション判定部346では、ギヤポジション判定値Daがニュートラル(N−N)になっているかどうかを判定する。ニュートラルになっていれば、メータ表示部364に、ニュートラル状態であることを示す表示を出力する。
接続クラッチ判定部354は、ドラム回転角センサー358からのドラム回転角信号Sa(電圧値Va)と、上述した奇数段インギヤ情報テーブル360と、偶数段インギヤ情報テーブル362と、ギヤポジション判定部346からのギヤポジション判定値Daと、目標ギヤポジション判定部348からの目標ギヤポジション値Dbと、走行状態判定部350からの停車時クラッチ切断要求信号Scと、クラッチOFFスイッチ44からの操作信号Sdとに基づいて、第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bのうち、次に接続すべきクラッチを判定し、接続クラッチ判定値Dcとして出力する。もちろん、第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bを共に切断することも判定する。
接続クラッチ判定値Dcは、例えば第1クラッチ264aを接続する場合は「1」、第2クラッチ264bを接続する場合は「2」、第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bを共に切断する場合は「0」が使用される。
第1クラッチ容量演算部356Aは、ギヤポジション判定部346からのギヤポジション判定値Daと、目標ギヤポジション判定部348からの目標ギヤポジション値Dbと、接続クラッチ判定部354からの接続クラッチ判定値Dcと自動発進、変速制御に必要な情報(エンジン回転数センサー368からのエンジン回転数信号ne、スロットル開度センサー370からのスロットル開度信号th、車速センサー372からの車速信号vr、エンジントルク判定値等)とに基づいて、第1クラッチ264aを断接するための容量(第1クラッチ容量C1)及び第2クラッチ264bを断接するための容量(第2クラッチ容量C2)を演算する。第1クラッチ容量C1は、第1クラッチ容量出力値Sc1として第1電磁制御弁274aに供給され、第2クラッチ容量C2は、第2クラッチ容量出力値Sc2として第2電磁制御弁274bに供給される。
ここで、第1変速装置200Aの処理動作について図18〜図20のフローチャート並びに図16のタイミングチャートも参照しながら説明する。
先ず、図18のステップS1において、ギヤポジション判定部346は、ドラム回転角センサ358からのドラム回転角信号Sa(電圧値Va)に基づいて、現在のギヤポジションを判定して、ギヤポジション判定値Daとして出力する。これについては詳述したので、具体的な処理については省略する。
次に、ステップS2において、目標ギヤポジション判定部348による目標ギヤポジション判定に入る。
この目標ギヤポジション判定は、先ず、図19のステップS101において、ドラム回転角センサー358からのドラム回転角信号Sa(電圧値Va)がシフトアップ変速の許可しきい値以上であるか否かを判別する。この判別は、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)の変化が増加方向(シフトアップの操作方向)を示し、且つ、シフトペダル48のシフトアップ操作に伴ってシフトドラム278が回転して、ストッパアーム308のローラ314がシフトドラムセンター298の凸部の頂部を越え、且つ、ラチェット機構288のドラムシフタ318が元の位置に戻ってラチェット機構288がリセットされた時点のシフトドラム278の回転角(電圧値)以上となったかどうかで行われる。例えば図16に示すように、第1速から第2速へのシフトアップを想定したとき、シフトペダル48のシフトアップ操作に伴ってシフトドラム278が回転して、ストッパアーム308のローラ314がシフトドラムセンター298の第2凸部K2の頂部を越え、且つ、ラチェット機構288がリセットされた時点のシフトドラム278の回転角(電圧値V12U)以上となったかどうかで行われる。同様に、第2速から第3速へのシフトアップの場合は、ストッパアーム308のローラ314がシフトドラムセンター298の第3凸部K3の頂部を越え、且つ、ラチェット機構288がリセットされた時点のシフトドラム278の回転角(電圧値V23U)以上となったかどうかで行われる。
上述のステップS101において、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)がシフトアップ変速の許可しきい値以上であると判別された場合は、次のステップS102に進み、目標ギヤポジション値Dbを現在の目標ギヤポジション値Dbより1速上げる。すなわち、現在の目標ギヤポジション値Db+1を今回の目標ギヤポジション値Dbとする。
一方、上述のステップS101において、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)がシフトアップ変速の許可しきい値以上でないと判別された場合は、次のステップS103に進み、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)がシフトダウン変速の許可しきい値以下であるか否かを判別する。この判別は、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)の変化が減少方向(シフトダウンの操作方向)を示し、且つ、シフトペダル48のシフトダウン操作に伴ってシフトドラム278が回転して、ストッパアーム308のローラ314がシフトドラムセンター298の凸部の頂部を越え、且つ、ラチェット機構288のドラムシフタ318が元の位置に戻ってラチェット機構288がリセットされた時点のシフトドラム278の回転角(電圧値)以下となったかどうかで行われる。例えば図16に示すように、第2速から第1速へのシフトダウンを想定したとき、シフトペダル48のシフトダウン操作に伴ってシフトドラム278が逆方向に回転して、ストッパアーム308のローラ314がシフトドラムセンター298の第2凸部K2の頂部を越え、且つ、ラチェット機構288がリセットされた時点のシフトドラム278の回転角(電圧値V21D)以下になったかどうかで行われる。
上述のステップS103において、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)がシフトダウン変速の許可しきい値以下であると判別された場合は、次のステップS104に進み、目標ギヤポジション値Dbを現在の目標ギヤポジション値Dbより1速下げる。すなわち、現在の目標ギヤポジション値Db−1を今回の目標ギヤポジション値Dbとする。
上述のステップS103において、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)がシフトダウン変速の許可しきい値以下でないと判別された場合は、次のステップS105に進み、目標ギヤポジション値Dbを現在の目標ギヤポジション値Dbに維持する。
上述のステップS101及びステップS103においては、ドラム回転角センサー358からのドラム回転角信号Saに基づいて判定したが、スピンドル回転角センサー366からのスピンドル回転角信号Sbに基づいて判定してもよい。この場合、ある変速段から次の変速段に移る際のシフトペダル48の操作量、特に、ストッパアーム308のローラ314がシフトドラムセンター298の凸部の頂部を越え、且つ、ラチェット機構288のドラムシフタ318が元の位置に戻ってラチェット機構288がリセットされた時点までの操作量(電圧値)を予め求めておき、スピンドル回転角信号Sb(電圧値)が予め求めておいた電圧値となった時点でシフトアップ変速の許可しきい値以上、あるいはシフトダウン変速の許可しきい値以下と判定すればよい。なお、スピンドル回転角信号Sbのみでは、現在の変速段を検知することができないため、別途カウンタを設置して、シフトアップ操作毎にカウンタ値を増加させ、シフトダウン操作毎にカウンタ値を減少させることで、カウンタ値から変速段を検知することが可能となる。
もちろん、ドラム回転角信号Saとスピンドル回転角信号Sbとを併用して判定してもよい。この場合、スピンドル回転角信号Sbによってシフトダウンの操作方向を判定することで、演算速度を速めることができる。
上述のステップS102、ステップS104又はステップS105での処理が終了した段階で、図18のステップS3に進み、接続クラッチ判定部354による接続クラッチ判定に入る。
この接続クラッチ判定は、先ず、図20のステップS201において、クラッチOFFスイッチ44が操作されているか否かを判別する。クラッチOFFスイッチ44が操作されていなければ、次のステップS202に進み、目標ギヤポジション値Dbが「0」であるか否かを判別する。目標ギヤポジション値Dbが「0」でなければ、ステップS203に進み、鞍乗り型車両10の停車時クラッチ切断状態であるか否かが判別される。この判別は、停車時クラッチ切断要求があるかどうかで行われる。鞍乗り型車両10の停車時クラッチ切断状態でなければ、次のステップS204に進み、ギヤポジション判定値Daが「N−N」であるか否かを判別する。ギヤポジション判定値Daが「N−N」でなければ、次のステップS205に進み、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)と奇数段インギヤ情報テーブル360に登録された電圧範囲とを参照して、奇数段側のギヤがインギヤ状態であるか否かを判別する。ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)が、奇数段インギヤ情報テーブル360に登録された電圧範囲に入っていれば、奇数段側のギヤがインギヤ状態と判別して次のステップS206に進み、今度は、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)と偶数段インギヤ情報テーブル362に登録された電圧範囲とを参照して、偶数段側のギヤがインギヤ状態であるか否かを判別する。ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)が、偶数段インギヤ情報テーブル362に登録された電圧範囲に入っていれば、偶数段側のギヤがインギヤ状態と判別して次のステップS207に進む。
ステップS207では、ギヤポジション判定値Daの奇数段の値を奇数レジスタに格納し、ギヤポジション判定値Daの偶数段の値を偶数レジスタに格納する。そして、|目標ギヤポジション値−奇数レジスタの値|>|目標ギヤポジション値−偶数レジスタの値|であれば、ステップS208に進み、接続クラッチ判定値Dcを、第2クラッチ264bを接続することを示す「2」にする。逆に、|目標ギヤポジション値−奇数レジスタの値|>|目標ギヤポジション値−偶数レジスタの値|でなければ、ステップS209に進み、接続クラッチ判定値Dcを、第1クラッチ264aを接続することを示す「1」にする。
一方、上述のステップS206において、偶数段側のギヤがインギヤ状態でないと判別された場合は、ステップS209に進み、接続クラッチ判定値Dcを、第1クラッチ264aを接続することを示す「1」にする。
上述のステップS205において、奇数段側のギヤがインギヤ状態でないと判別された場合は、ステップS210に進み、偶数段側のギヤがインギヤ状態であるか否かが判別される。偶数段側のギヤがインギヤ状態であれば、上述のステップS208に進み、接続クラッチ判定値Dcを、第2クラッチ264bを接続することを示す「2」にする。
他方、上述したステップS201において、クラッチOFFスイッチ44が操作されていると判別された場合、あるいは、ステップS202において、目標ギヤポジション値Dbが「0」であると判別された場合、あるいは、ステップS203において、鞍乗り型車両10の停車時クラッチ切断状態であると判別された場合、あるいは、ステップS204において、ギヤポジション判定値Daが「N−N」であると判別された場合、あるいは、ステップS210において、偶数段側のギヤがインギヤ状態でない、すなわち、奇数段側のギヤ及び偶数段側のギヤがいずれもインギヤ状態でないと判別された場合は、ステップS211に進み、接続クラッチ判定値Dcを、第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bを共に切断することを示す「0」にする。
上述のステップS208、ステップS209又はステップS211での処理が終了した段階で、図18のステップS4に進み、第1クラッチ容量演算部356Aでの処理に入る。
この第1クラッチ容量演算部356Aでの処理は、接続クラッチ判定部354からの接続クラッチ判定値Dcに応じた演算処理を行う。すなわち、接続クラッチ判定値Dcが「1」であれば、ステップS401に進み、第1クラッチ264aを接続させるため、あるいは第1クラッチ264aでの接続状態を維持させるためのクラッチ容量(第1クラッチ容量C1及び第2クラッチ容量C2)を演算する。第1クラッチ容量C1及び第2クラッチ容量C2の演算は、鞍乗り型車両の発進、停止、走行中等のあらゆるシチュエーションにおいて最適な乗車感覚となるように、各種パラメータ(エンジン回転数、スロットル開度、車速、ギヤポジション、クラッチ入力トルク値、ギヤレシオ等)を用いて算出される。
得られた第1クラッチ容量C1は、図5に示すように、第1クラッチ容量出力値Sc1として油圧供給装置268の第1電磁制御弁274aに供給される。第1電磁制御弁274aは、供給される第1クラッチ容量出力値Sc1に基づいて、第1クラッチ264aを接続する方向に、あるいは第1クラッチ264aでの接続状態を維持するために、第1クラッチ264aに供給される油圧を制御する。第2クラッチ容量C2は、第2クラッチ容量出力値Sc2として油圧供給装置268の第2電磁制御弁274bに供給される。第2電磁制御弁274bは、供給される第2クラッチ容量出力値Sc2に基づいて、第2クラッチ264bを切断する方向に、あるいは第2クラッチ264bでの切断状態を維持するために、第2クラッチ264bに供給される油圧を制御する。特に、第2クラッチ264bの接続状態から第1クラッチ264aの接続状態に切り替わったときに、クラッチの持ち替えが開始される。
接続クラッチ判定値Dcが「2」であれば、図18のステップS402に進み、第2クラッチ264bを接続させるため、あるいは第2クラッチ264bでの接続状態を維持させるためのクラッチ容量(第1クラッチ容量C1及び第2クラッチ容量C2)を演算し、第1クラッチ容量出力値Sc1及び第2クラッチ容量出力値Sc2として、第1電磁制御弁274a及び第2電磁制御弁274bに出力する。
第1電磁制御弁274aは、供給される第1クラッチ容量出力値Sc1に基づいて、第1クラッチ264aを切断する方向に、あるいは第1クラッチ264aでの切断状態を維持するために、第1クラッチ264aに供給される油圧を制御する。第2電磁制御弁274bは、供給される第2クラッチ容量出力値Sc2に基づいて、第2クラッチ264bを接続する方向に、あるいは第2クラッチ264bでの接続状態を維持するために、第2クラッチ264bに供給される油圧を制御する。特に、第1クラッチ264aの接続状態から第2クラッチ264bの接続状態に切り替わったときに、クラッチの持ち替えが開始される。
接続クラッチ判定値Dcが「0」であれば、図18のステップS403に進み、第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bを共に切断するため、あるいは第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bでの切断状態を維持させるためのクラッチ容量(第1クラッチ容量C1及び第2クラッチ容量C2)を演算し、第1クラッチ容量出力値Sc1及び第2クラッチ容量出力値Sc2として第1電磁制御弁274a及び第2電磁制御弁274bに出力する。
ここで、第1速から第2速にシフトアップする動作について、図21及び図22のタイミングチャートも参照しながら説明する。なお、図21及び図22は、シフトペダル48の操作位置(操作量)に伴うドラム回転角信号Sa(電圧値Va)、ギヤポジション判定値Da、目標ギヤポジション値Db、接続クラッチ判定値Dc、第1クラッチ容量出力値(Nm)、第2クラッチ容量出力値(Nm)、車速(km/h)、エンジン回転数(r/m)の変化を示すタイミングチャートである。
また、図21において、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)の「1−N」は、ストッパアーム308のローラ314がシフトドラムセンター298の第1ノッチN1の底部に位置した状態を示し、「1−2」は、ストッパアーム308のローラ314が第2凸部K2の頂部に位置した状態を示し、「N−2」は、ストッパアーム308のローラ314がシフトドラムセンター298の第2ノッチN2の底部に位置した状態を示す。
先ず、時点t1において、第1速走行中に、運転者によってシフトペダル48がシフトアップ側に操作開始される。
時点t2において、シフトペダル48のシフトアップ側への操作により、「1−N」に位置していたシフトドラム278が「N−2」方向に動き出す。
時点t3において、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)から導き出されるギヤポジション判定値Daが「1−2」となる。ここでは、後にシフトドラム278が確実に「N−2」の位置に位置決めされるか不明であるため、第2速への変速は行わない。図16の矢印Yaに示すように、ストッパアーム308のローラ314が第2凸部K2の頂部を乗り越える手前でシフトペダル48が戻されることもあるため、クラッチの持ち替えは開始しない。
次に、時点t4、つまり、ストッパアーム308のローラ314が第2凸部K2を乗り越え、且つ、ラチェット機構288のドラムシフタ318が元の位置に戻ってラチェット機構288がリセットされた時点、すなわち、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)がシフトアップ変速の許可しきい値V12U以上となった時点で、目標ギヤポジション値Dbを「1」から「2」に更新する。これにより、接続クラッチ判定値Dcが第2クラッチ264bを接続させる値「2」に切り替わり、変速(クラッチ持ち替え)を開始する。
目標ギヤポジション値Dbが「2」になった上記時点t4で、ギヤポジション判定値Daは「1−2」であるため、接続クラッチ判定値Dcが「2」となり、上限値であった第1クラッチ容量出力値Sc1が低下する方向に変化し、代わりに下限値であった第2クラッチ容量出力値Sc2が上昇する方向に変化し、クラッチの持ち替えが実行される。
シフトペダル48がシフトアップ操作のストッパー位置に到達した段階から、慣性によってシフトドラム278が回転を続け、ストッパアーム308のローラ314が第2ノッチN2の底部に向けて相対的に移動することになる。その途中の時点t5において、ギヤポジション判定値Daが「N−2」に変わり、第1クラッチ容量出力値Sc1は下限値となる。
その後、ストッパアーム308のローラ314が第2ノッチN2の底部に位置決めされた時点t6において、第2速への変速動作が完了し、第2速での走行となる。
上述した時点t3以後において、図22の時点t7に示すように、シフトペダル48がニュートラル位置に戻り始めた場合は、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)も「1−N」の方向に戻り出す。
その後の時点t8において、シフトペダル48がニュートラル位置に戻ると、ドラム回転角信号(電圧値)は「1−N」に対応した電圧値V1Nとなり、第2速への変速動作は行われない。
上述した動作は、第2速から第3速、第3速から第4速、第4速から第5速、第5速から第6速へのシフトアップにおいても同様である。また、第6速から第5速、第5速から第4速、第4速から第3速、第3速から第2速、第2速から第1速へのシフトダウンにおいても同様である。
ここで、シフトペダル48による変速動作、主に、ニュートラル状態から第1速、第2速、・・・第6速と順次シフトアップする変速動作について、シフトフォーク(第1シフトフォーク280a〜第4シフトフォーク280d)、カム溝(第1カム溝282a〜第4カム溝282d)を中心に、図4、図23を参照しながら説明する。図23は、カム溝の展開図である。
先ず、エンジン36の始動時に、第1シフトフォーク280a〜第4シフトフォーク280dは、対応する第1カム溝282a〜第4カム溝282d中において、図23のシフトポジション、すなわち、C/N−N、M/N−Nの位置にある。ここで、Cはカウンタシャフト214、Mはメインシャフト212を指し、「−」の前段は奇数段の状態、「−」の後段は偶数段の状態を示している。また、Nは変速段の各ドグが抜けたニュートラル状態を示す。従って、C/N−Nは、カウンタシャフト214において奇数段も偶数段も、ドグが抜けたシフトポジションであり、M/N−Nは、メインシャフト212において奇数段も偶数段も、ドグが抜けたシフトポジションである。
第1カム溝282a〜第4カム溝282dには、ニュートラル状態となるNの位置を基準として、左右に各1段ずれた段部が連続的に形成されており、各摺動突部286が第1カム溝282a〜第4カム溝282d内の左段、中央段、右段のいずれかに位置することで、対応する各スライドギヤが軸方向の3箇所に選択的に移動される。
鞍乗り型車両10のエンジン36が稼働状態であり、且つ、停車時には、第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bは両方とも切断状態に保たれている。そして、運転者がシフトペダル48を操作することで、第1変速装置200Aは、トランスミッション232をニュートラル状態から第1速に変速し、この状態からエンジン36のエンジン回転数の上昇に対応させてクラッチ装置204を接続状態に制御することで、鞍乗り型車両10を発進させる。
詳細には、運転者がシフトペダル48を操作することで、シフトドラム278が回転し、第1シフトフォーク280a及び第4シフトフォーク280dがカウンタシャフト214側に対応する第1カム溝282a及び第4カム溝282dに沿って矢印方向に移動してC/N−NからC/1−Nに至り、第2シフトフォーク280b及び第3シフトフォーク280cがメインシャフト212側に対応する第2カム溝282b及び第3カム溝282cに沿って矢印方向に移動してM/1−Nに至る。
具体的には、C/1−Nでは、第1シフトフォーク280aがニュートラル位置からシフトドラム278の左端側に一段移動されることでスライドギヤn5がフリーギヤn1側に移動され、一方、第4シフトフォーク280dは、ニュートラル位置のままである。また、M/1−Nでは、第2シフトフォーク280b及び第3シフトフォーク280cは、いずれもニュートラル位置のままである。これにより、C/1−Nでは、第1速による動力伝達が可能な状態となる。具体的には、カウンタシャフト214の奇数段側においてスライドギヤn5のドグがフリーギヤn1のドグ穴に結合された状態(ギヤn1がインギヤされた状態)となり、一方、偶数段側では、ドグ抜けの状態にある。すなわち、C/1−Nでは、フリーギヤn1がスライドギヤn5によってカウンタシャフト214に固定され、また、内シャフト212mに設けられた第1クラッチ264aのみが接続され、クランクシャフト54からの出力は、内シャフト212mによって1速ギヤを介してカウンタシャフト214に伝達される。ここで、インギヤされた状態とは、そのギヤと対のギヤをそのギヤによって駆動可能な状態を指し、ドグ抜けの状態とは、ドグによる結合がなく、対の関係にある歯車間で動力の伝達が行われない状態を指している。
運転者が第2速にシフトアップさせるべく、シフトペダル48を操作してシフトドラム278を回転させると、途中のギヤポジションC/1−2及びM/1−2において、第4シフトフォーク280dのみが第4カム溝282dに沿ってシフトドラム278の右端側に一段移動することで、スライドギヤn6がフリーギヤn2側に移動し、カウンタシャフト214の偶数段側においてスライドギヤn6のドグがフリーギヤn2のドグ穴に結合された状態(ギヤn2がインギヤされた状態)となる。すなわち、C/1−2及びM/1−2においては、カウンタシャフト214の奇数段側がギヤn1にインギヤし、偶数段側がギヤn2にインギヤした状態となる。この段階は予備変速段階であり、第1クラッチ264aのみが接続され、第2クラッチ264bの接続は解除されている。
運転者がさらにシフトペダル48を操作してシフトドラム278を回転することで、ギヤポジションC/N−2及びM/N−2に向かって移動する過程において、第1シフトフォーク280aがニュートラル位置に移動し、さらに、第1クラッチ264aの接続が解除されながら、第2クラッチ264bへの接続に移行する。そして、ギヤポジションがC/N−2及びM/N−2となった段階で、カウンタシャフト214の奇数段側がドグ抜けし、偶数段側がギヤn2にインギヤした状態となる。すなわち、C/N−2では、フリーギヤn2がスライドギヤn6によってカウンタシャフト214に固定され、また、外シャフト212nに設けられた第2クラッチ264bのみが接続され、クランクシャフト54からの出力は、外シャフト212nによって2速ギヤを介してカウンタシャフト214に伝達される。
以下同様に、ギヤポジションC/3−2及びM/3−2では、カウンタシャフト214の奇数段側がギヤn3にインギヤし、偶数段側がギヤn2にインギヤした状態となる。この段階は予備変速段階であり、第2クラッチ264bのみが接続され、第1クラッチ264aの接続は解除されている。
ギヤポジションC/3−N及びM/3−Nでは、カウンタシャフト214の偶数段側がドグ抜けし、奇数段側がギヤn3にインギヤした状態となる。すなわち、フリーギヤn3がスライドギヤn5によってカウンタシャフト214に固定され、また、内シャフト212mに設けられた第1クラッチ264aのみが接続され、クランクシャフト54からの出力は、内シャフト212mによって3速ギヤを介してカウンタシャフト214に伝達される。
ギヤポジションC/3−4及びM/3−4では、カウンタシャフト214の奇数段側がギヤn3にインギヤし、偶数段側がギヤn4にインギヤした状態となる。この段階は予備変速段階であり、第1クラッチ264aのみが接続され、第2クラッチ264bの接続は解除されている。
ギヤポジションC/N−4及びM/N−4では、カウンタシャフト214の奇数段側がドグ抜けし、偶数段側がギヤn4にインギヤした状態となる。すなわち、フリーギヤn4がスライドギヤn6によってカウンタシャフト214に固定され、また、外シャフト212nに設けられた第2クラッチ264bのみが接続され、クランクシャフト54からの出力は、外シャフト212nによって4速ギヤを介してカウンタシャフト214に伝達される。
ギヤポジションC/5−4では、カウンタシャフト214の奇数段側がドグ抜けし、偶数段側がギヤn4にインギヤした状態となり、ギヤポジションM/5−4では、メインシャフト212の奇数段側がギヤm5にインギヤし、偶数段側がドグ抜けした状態となる。この段階は予備変速段階であり、第2クラッチ264bのみが接続され、第1クラッチ264aの接続は解除されている。
ギヤポジションC/5−Nでは、カウンタシャフト214の奇数段側及び偶数段側が共にドグ抜けした状態となり、ギヤポジションM/5−Nでは、メインシャフト212の奇数段側がギヤm5にインギヤし、偶数段側がドグ抜けした状態となる。すなわち、カウンタシャフト214のスライドギヤn5に係合するフリーギヤm5がスライドギヤm3によってメインシャフト212の内シャフト212mに固定され、また、内シャフト212mに設けられた第1クラッチ264aのみが接続され、クランクシャフト54からの出力は、内シャフト212mによって5速ギヤを介してカウンタシャフト214に伝達される。
ギヤポジションC/5−6及びM/5−6では、メインシャフト212の奇数段側がギヤm5にインギヤし、偶数段側がギヤm6にインギヤした状態となる。この段階は予備変速段階であり、第1クラッチ264aのみが接続され、第2クラッチ264bの接続は解除されている。
ギヤポジションC/N−6及びM/N−6では、メインシャフト212の奇数段側がドグ抜けし、偶数段側がギヤm6にインギヤした状態となる。すなわち、カウンタシャフト214のスライドギヤn6に係合するフリーギヤm6がスライドギヤm4によってメインシャフト212の外シャフト212nに固定され、また、外シャフト212nに設けられた第2クラッチ264bのみが接続され、クランクシャフト54からの出力は、外シャフト212nによって6速ギヤを介してカウンタシャフト214に伝達される。
このように、第1変速装置200Aにおいては、鞍乗り型車両10の第1変速装置200Aを構成するギヤシフト装置208を運転者のシフトペダル操作によるマニュアル操作(足動操作)のみにより駆動されるものとし、クラッチ装置204を奇数段と偶数段の変速ギヤに割り当てた第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bで構成して、これらをギヤシフト装置208の変速位置に応じて断接を電子制御したので、クラッチ装置204における駆動力を途切れをなくすことを可能としながら、ギヤシフト装置208の変速を、運転者のマニュアル操作のみに依存させることにより、変速完了までの時間に遅れを感じさせずに、しかも、ギヤシフト装置208の電子駆動装置(モータ等)を削減でき、第1変速装置200Aの小型化、軽量化を図ることができる。すなわち、従来のDCT(デュアルクラッチトランスミッション)車に対し、センサー及びアクチュエータ類を追加することなく、運転者のシフトペダル操作によって直接行われるギヤの入れ替えと連動してクラッチの持ち替え(変速)を実施可能となり、運転者の変速意思に対して遅れのない変速が実行可能となり、しかも、変速時の駆動力断続を少なく、素早く、ショックを少なくすることができる。また、シフトアクチュエータやフルオートマチック車に必要だったスイッチ類も廃止可能となり、重量、コストの低減にも有利となる。
また、ギヤシフト装置208のシフトドラム278の回転角を検知するドラム回転角センサー358の検知結果に基づいて、運転者の変速指令を検知して第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bを断接制御するようにしたので、ドラム回転角センサー358を利用して第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bの断接タイミングを検知できる。その結果、運転者の変速指令を検知する別のセンサを追加することなく、センサの個数増加の抑制と、ECU230の回路構成並びにアルゴリズムの簡素化を図ることができる。
また、シフトスピンドル290の回転角を検出するスピンドル回転角センサー366を設け、このスピンドル回転角センサー366の検出結果に基づいて、運転者の変速指令を検知してクラッチ装置204を制御することで、運転者の変速意思を確実に検知することができ、変速精度の向上を図ることができる。
クラッチ装置204の断接制御を、ドラム回転角センサー358の検知角度がノッチの凹部から次の凸部の頂部までの角度を超えて所定角度を超えた場合に開始することで、運転者による変速操作の完了のタイミングで変速操作が行われたことを認知してクラッチ装置204を制御するので、変速動作に基づいた確実なクラッチ制御を精度高く行うことができる。
クラッチ装置204の断接制御を開始する所定角度を、ラチェット機構288がリセットされる角度とシフトペダル48がストッパー位置に到達する角度の間に設定することで、変速装置の確実な変速動作が行われた状態で、クラッチ装置204の断接制御を行うようにして、変速操作に伴って確実なクラッチ制御を行うことが可能となる。
また、シフトドラム278の正転、反転に拘わらず、次の凸部までの角度を超えた所定角度を検知して、クラッチ装置204の断接制御を開始することで、シフトアップ及びシフトダウンのそれぞれで変速動作に基づいた確実なクラッチ制御を精度高く行うことができる。
シフトドラム278の正転、反転に拘わらず、所定角度を同一にすることで、クラッチ装置204の断接の開始タイミングの差がなく、シフトアップ又はシフトダウンでのクラッチ装置204の断接の違和感を運転者に与えることがない。
一般に、奇数段/偶数段共にインギヤ状態のギヤポジションに留まると、フリクションの増加、次の変速時のギヤ打音、ショック増加等の問題が生じる。しかし、第1変速装置200Aでは、シフトペダル48のマニュアル操作においても、シフトドラムセンター298により、奇数段/偶数段共にインギヤ状態のギヤポジションに留まることがないように位置が規制されるため、上述のような問題は生じない。
また、シフトペダル48をストッパー位置まで操作した際に、前段のギヤが抜けてしまうと、クラッチの持ち替え前に前段のギヤが抜けてしまうおそれがある。しかし、第1変速装置200Aでは、シフトペダル48の操作によるマニュアル変速時に、ストッパー位置まで操作しても、奇数段/偶数段共にインギヤポジションを維持可能となり、クラッチの持ち替えを確実に実行することができる。
シフトペダル48の操作が不確実な場合(例えばストッパアーム308のローラ314が複数のノッチ間の凸部を乗り越えないでシフトペダル48を元に戻す等)には、変速(クラッチの持ち替え)を実施することがなくなり、より確実な変速(クラッチの持ち替え)が可能となる。
また、ドラム回転角センサー358と併用してスピンドル回転角センサー366を用いることで、シフトペダル48によるギヤ送りのセンシングの精度が向上し、さらに確実な変速(クラッチの持ち替え)が可能となる。
次に、第2の実施の形態に係る変速装置(以下、第2変速装置200Bと記す)について図24〜図33を参照しながら説明する。
この第2変速装置200Bは、図24に示すように、上述した第1変速装置200Aとほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
すなわち、第2変速装置200Bは、図24に示すように、クラッチOFFスイッチ44に代えてクラッチレバー374(操作量センサーを含む:クラッチ操作子)を有する。図25に示すように、第2変速装置200BのECU230は、第1変速装置200Aと同様のギヤポジション判定部346、目標ギヤポジション判定部348、走行状態判定部350及び接続クラッチ判定部354に加えて、クラッチ制御モード判定部376と、マニュアル操作クラッチ容量演算部378と、マニュアル操作クラッチ判定部380と、第2クラッチ容量演算部356Bとを有する。
クラッチ制御モード判定部376は、クラッチレバー374の操作量を監視し、操作量が所定量以上となった時点でマニュアルのクラッチ操作として判定し、それ以外を自動クラッチ操作として判定する。
すなわち、クラッチレバー374には操作量センサー382が接続され、クラッチレバー374の操作量に応じた電圧値Vcを出力する。具体的には、図26に示すように、操作量センサー382の出力電圧値Vcは、クラッチレバー374の握り込み状態から開放状態に向けて比例的に増加する。出力電圧値Vcのダイナミックレンジのうち、レバー遊びに対応した電圧範囲及び突き当て余裕を考慮した電圧範囲を除く有効上限電圧値Vmaxから有効下限電圧値Vminの範囲を有効範囲としている。従って、クラッチ制御モード判定部376は、出力電圧値Vcが有効上限電圧値Vmax以下となった時点で、マニュアルのクラッチ操作に入ったと判定する。
マニュアル操作クラッチ容量演算部378は、操作量センサー382の出力電圧値Vc(有効範囲にある出力電圧値)に基づいて、マニュアル操作クラッチ容量Cmを演算する。具体的には、図26に示すように、操作量センサー382の出力電圧値Vcとマニュアル操作クラッチ容量Cmとの関係は、有効下限電圧値Vminに対応した容量値を0、有効上限電圧値Vmaxに対応した容量値を最大値Cmaxとし、出力電圧値Vcが増加するに従って容量値Cmが比例的に増加する関係となっている。つまり、マニュアル操作クラッチ容量演算部378は、操作量センサー382の出力電圧値Vcと図26に示す比例関係に基づいて、マニュアル操作クラッチ容量Cmを演算する。
マニュアル操作クラッチ判定部380は、ドラム回転角センサー358からのドラム回転角信号Sa(電圧値Va)と、上述した奇数段インギヤ情報テーブル360と、偶数段インギヤ情報テーブル362と、ギヤポジション判定部346からのギヤポジション判定値Daと、目標ギヤポジション判定部348からの目標ギヤポジション値Dbと、マニュアル操作クラッチ容量演算部378からのマニュアル操作クラッチ容量Cmとに基づいて、第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bのうち、次にマニュアル操作の対象とすべきクラッチを判定し、マニュアル操作クラッチ判定値Ddとして出力する。この場合も、マニュアル操作クラッチ判定値Ddは、例えば第1クラッチ264aを接続する場合は「1」、第2クラッチ264bを接続する場合は「2」が使用される。
第2クラッチ容量演算部356Bは、クラッチ制御モード判定部376からの判定結果が、自動クラッチ操作を示す場合に、第1変速装置200Aの第1クラッチ容量演算部356Aと同様の処理を行って第1クラッチ容量C1及び第2クラッチ容量C2を演算する。すなわち、自動制御下でのクラッチ容量を演算する。一方、クラッチ制御モード判定部376からの判定結果が、マニュアルクラッチ操作を示す場合に、自動制御下での第1クラッチ容量C1及び第2クラッチ容量C2と、マニュアル操作クラッチ容量Cmとに基づいて、マニュアル操作下での第1クラッチ容量C1m及び第2クラッチ容量C2mを演算する。第1クラッチ容量C1又はC1mは、第1クラッチ容量出力値Sc1として第1電磁制御弁274aに供給され、第2クラッチ容量C2又はC2mは、第2クラッチ容量出力値Sc2として第2電磁制御弁274bに供給される。
ここで、第2変速装置200Bの処理動作について図27〜図32のフローチャート並びに図33のタイミングチャートも参照しながら説明する。なお、図33はシフトドラムセンター298の回転に伴って、奇数段ギヤ及び偶数段ギヤのインギヤ状態(後述する)、ギヤポジション判定値及びドラム回転角センサからのドラム回転角信号(電圧値)が変化する様子を示すタイミングチャートである。
先ず、図27のステップS501において、ギヤポジション判定部346は、ドラム回転角センサ358からのドラム回転角信号Sa(電圧値Va)に基づいて、現在のギヤポジションを判定して、ギヤポジション判定値Daとして出力する。これについては、上述した第1変速装置200Aのギヤポジション判定部346と動作が同じであるため、具体的な処理については省略する。
次に、ステップS502において、目標ギヤポジション判定部348による目標ギヤポジション判定に入る。
この目標ギヤポジション判定は、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)と、ギヤポジション判定部346からのギヤポジション判定値Daと、シフトスピンドル290の回転角を検出するスピンドル回転角センサー366からのスピンドル回転角信号Sbとに基づいて次に位置する目標ギヤポジションを判定し、目標ギヤポジション値Dbとして出力する。この目標ギヤポジション判定についても、上述した第1変速装置200Aの目標ギヤポジション判定部348と動作が同じであるため、具体的な処理については省略する。
次に、ステップS503において、クラッチ制御モード判定部376からの判定値に基づいて、自動によるクラッチ操作であるか、あるいは、マニュアルによるクラッチ操作であるか否かを判別する。そして、判定値が自動によるクラッチ操作を示す「0」であれば、次のステップS504に進み、接続クラッチ判定部354による接続クラッチ判定に入る。
この接続クラッチ判定は、先ず、図28のステップS601において、目標ギヤポジション値Dbが「0」であるか否かを判別する。目標ギヤポジション値Dbが「0」でなければ、ステップS602に進み、鞍乗り型車両10の停車時クラッチ切断状態であるか否かが判別される。この判別は、停車時クラッチ切断要求があるかどうかで行われる。鞍乗り型車両10の停車時クラッチ切断状態でなければ、次のステップS603に進み、ギヤポジション判定値Daが「N−N」であるか否かを判別する。ギヤポジション判定値Daが「N−N」でなければ、次のステップS604に進み、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)と奇数段インギヤ情報テーブル360に登録された電圧範囲とを参照して、奇数段側のギヤがインギヤ状態であるか否かを判別する。ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)が、奇数段インギヤ情報テーブル360に登録された電圧範囲に入っていれば、奇数段側のギヤがインギヤ状態と判別して次のステップS605に進み、今度は、ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)と偶数段インギヤ情報テーブル362に登録された電圧範囲とを参照して、偶数段側のギヤがインギヤ状態であるか否かを判別する。ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)が、偶数段インギヤ情報テーブル362に登録された電圧範囲に入っていれば、偶数段側のギヤがインギヤ状態と判別して次のステップS606に進む。
ステップS606では、ギヤポジション判定値Daの奇数段の値を奇数レジスタに格納し、ギヤポジション判定値Daの偶数段の値を偶数レジスタに格納する。そして、|目標ギヤポジション値−奇数レジスタの値|>|目標ギヤポジション値−偶数レジスタの値|であれば、ステップS607に進み、接続クラッチ判定値Dcを、第2クラッチ264bを接続することを示す「2」にする。逆に、|目標ギヤポジション値−奇数レジスタの値|>|目標ギヤポジション値−偶数レジスタの値|でなければ、ステップS608に進み、接続クラッチ判定値Dcを、第1クラッチ264aを接続することを示す「1」にする。
一方、ステップS605において、偶数段側のギヤがインギヤ状態でないと判別された場合は、ステップS608に進み、接続クラッチ判定値Dcを、第1クラッチ264aを接続することを示す「1」にする。
上述のステップS604において、奇数段側のギヤがインギヤ状態でないと判別された場合は、ステップS609に進み、偶数段側のギヤがインギヤ状態であるか否かが判別される。偶数段側のギヤがインギヤ状態であれば、上述のステップS607に進み、接続クラッチ判定値Dcを、第2クラッチ264bを接続することを示す「2」にする。
他方、上述したステップS601において、目標ギヤポジション値Dbが「0」であると判別された場合、あるいは、ステップS602において、鞍乗り型車両10の停車時クラッチ切断状態であると判別された場合、あるいは、ステップS603において、ギヤポジション判定値Daが「N−N」であると判別された場合、あるいは、ステップS609において、偶数段側のギヤがインギヤ状態でない、すなわち、奇数段側のギヤ及び偶数段側のギヤのいずれもインギヤ状態でないと判別された場合は、ステップS610に進み、接続クラッチ判定値Dcを、第1クラッチ264a及び第2クラッチ264b共に切断することを示す「0」にする。
図27のステップS503において、マニュアルによるクラッチ操作であると判別された場合は、ステップS505に進み、マニュアル操作クラッチ判定部380によるマニュアル操作下でのマニュアル操作対象となるクラッチ判定に入る。
このマニュアル操作クラッチ判定は、先ず、図29のステップS701において、奇数段側のギヤがインギヤ状態であるか否かを判別する。この判別方法は上述したので、ここでは省略する。奇数段側のギヤがインギヤ状態でなければ、ステップS702に進み、今度は、偶数段側のギヤがインギヤ状態であるか否かを判別する。この判別方法も上述したので、ここでは省略する。偶数段側のギヤがインギヤ状態でない、すなわち、奇数段側のギヤ及び偶数段側のギヤがいずれもインギヤ状態でないと判別された場合は、次のステップS703に進み、マニュアル操作クラッチ判定値Ddを、第1クラッチ264aをマニュアル操作の主対象とすることを示す「1」にする。
上述したステップS702において、偶数段側のギヤがインギヤ状態であれば、ステップS704に進み、マニュアル操作クラッチ判定値Ddを、第2クラッチ264bをマニュアル操作の主対象とすることを示す「2」にする。
上述したステップS701において、奇数段側のギヤがインギヤ状態であれば、ステップS705に進み、今度は、偶数段側のギヤがインギヤ状態であるか否かを判別する。この判別方法も上述したので、ここでは省略する。偶数段側のギヤがインギヤ状態でなければ、ステップS706に進み、マニュアル操作クラッチ判定値Ddを、第1クラッチ264aをマニュアル操作の主対象とすることを示す「1」にする。
上述したステップS705において、偶数段側のギヤがインギヤ状態であると判別された場合は、ステップS707に進み、ギヤポジション判定値Daの奇数段の値を奇数レジスタに格納し、ギヤポジション判定値Daの偶数段の値を偶数レジスタに格納する。そして、|目標ギヤポジション値−奇数レジスタの値|>|目標ギヤポジション値−偶数レジスタの値|であれば、ステップS708に進み、マニュアル操作クラッチ判定値Ddが偶数段側クラッチ、すなわち、「2」であるか否かを判別する。偶数段側クラッチでなければ、ステップS709に進み、マニュアル操作クラッチ容量Cmがクラッチを切断する容量(クラッチOFF容量)以下であるか否かを判別する。マニュアル操作クラッチ容量CmがクラッチOFF容量を超えていれば、ステップS710に進み、マニュアル操作クラッチ容量Cmがクラッチを接続する方向に変化しているか否かを判別する。マニュアル操作クラッチ容量Cmがクラッチを接続する方向に変化していなければ、次のステップS711に進み、マニュアル操作クラッチ判定値Ddを、第1クラッチ264aをマニュアル操作の主対象とすることを示す「1」にする。
上述したステップS708において、マニュアル操作クラッチ判定値Ddが偶数段側クラッチであると判別された場合、あるいは、ステップS709において、マニュアル操作クラッチ容量CmがクラッチOFF容量以下であると判別された場合、あるいは、ステップS710において、マニュアル操作クラッチ容量Cmがクラッチを接続する方向に変化していると判別された場合は、ステップS712に進み、マニュアル操作クラッチ判定値Ddを、第2クラッチ264bをマニュアル操作の主対象とすることを示す「2」にする。
一方、上述したステップS707において、|目標ギヤポジション値−奇数レジスタの値|>|目標ギヤポジション値−偶数レジスタの値|でないと判別された場合は、ステップS713に進み、マニュアル操作クラッチ判定値Ddが奇数段側クラッチ、すなわち、「1」であるか否かを判別する。奇数段側クラッチでなければ、ステップS714に進み、マニュアル操作クラッチ容量CmがクラッチOFF容量以下であるか否かを判別する。マニュアル操作クラッチ容量CmがクラッチOFF容量を超えていれば、ステップS715に進み、マニュアル操作クラッチ容量Cmがクラッチを接続する方向に変化しているか否かを判別する。マニュアル操作クラッチ容量Cmがクラッチを接続する方向に変化していなければ、次のステップS716に進み、マニュアル操作クラッチ判定値Ddを、第2クラッチ264bをマニュアル操作の主対象とすることを示す「2」にする。
上述したステップS713において、マニュアル操作クラッチ判定値Ddが奇数段側クラッチであると判別された場合、あるいは、ステップS714において、マニュアル操作クラッチ容量CmがクラッチOFF容量以下であると判別された場合、あるいは、ステップS715において、マニュアル操作クラッチ容量Cmがクラッチを接続する方向に変化していると判別された場合は、上述したステップS706に進み、マニュアル操作クラッチ判定値Ddを、第1クラッチ264aをマニュアル操作の主対象とすることを示す「1」にする。
図27のステップS504での接続クラッチ判定部354による自動制御下での接続クラッチ判定又はステップS505でのマニュアル操作クラッチ判定部380によるマニュアル操作下でのマニュアル操作対象となるクラッチ判定が終了した段階で、次のステップS506に進み、第2クラッチ容量演算部356Bでの処理に入る。
第2クラッチ容量演算部356Bでの処理は、先ず、図30のステップS801において、クラッチ制御モード判定部376からのモード判定値に基づいて、自動によるクラッチ操作(自動モード)であるか否かを判別する。モード判定値が自動によるクラッチ操作を示す「0」であれば、次のステップS802に進み、図18におけるステップS4に示すように、接続クラッチ判定部354からの接続クラッチ判定値Dcに応じたクラッチ容量の演算処理を行う。すなわち、接続クラッチ判定値Dcが「1」であれば、ステップS901に進み、第1クラッチ264aを接続させるため、あるいは第1クラッチ264aでの接続状態を維持させるためのクラッチ容量値を演算する。すなわち、自動制御下における第1クラッチ264aのクラッチ容量(以下、第1自動クラッチ容量Ca1と記す)及び自動制御下における第2クラッチ264bのクラッチ容量(以下、第2自動クラッチ容量Ca2と記す)を演算する。接続クラッチ判定値Dcが「2」であれば、ステップS902に進み、第2クラッチ264bを接続させるため、あるいは第2クラッチ264bでの接続状態を維持させるためのクラッチ容量(第1自動クラッチ容量Ca1及び第2自動クラッチ容量Ca2)を演算する。接続クラッチ判定値Dcが「0」であれば、ステップS903に進み、第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bを共に切断するため、あるいは第1クラッチ264a及び第2クラッチ264bでの切断状態を維持させるためのクラッチ容量を演算する。
ステップS803において、ステップS901〜903のいずれかの処理で得られた第1自動クラッチ容量Ca1を第1クラッチ容量出力値Sc1とし、ステップS804において、第2自動クラッチ容量Ca2を第2クラッチ容量出力値Sc2とする。得られた第1クラッチ容量出力値Sc1及び第2クラッチ容量出力値Sc2は、第1電磁制御弁274a及び第2電磁制御弁274bに出力される。
一方、上述したステップS801において、クラッチ制御モード判定部376からの判定値がマニュアルによるクラッチ操作(マニュアルモード)を示すと判別された場合は、次のステップS805に進み、マニュアル操作クラッチ判定部380からのマニュアル操作クラッチ判定値Ddとマニュアル操作に応じたクラッチ容量の演算処理を行う。
具体的には、この演算処理は、マニュアル操作クラッチ判定値Ddが「1」であれば、ステップS904に進み、第1クラッチ264aをマニュアル操作の主対象としてクラッチ容量を演算する。具体的には、図31のステップS1001において、第1クラッチ容量出力値Sc1がマニュアル操作クラッチ容量Cmに移行済みか否かを判別する。この判別は、後述するステップS1003を介してステップS1005及びステップS1006での処理を行ったかどうかで行われる。この場合、フラグ情報を使用して判別するようにしてもよい。例えば同一の目標ギヤポジション値Dbにおいて、初めてステップS1005及びステップS1006での処理を行った場合に、フラグ情報として移行済みを示す「1」とし、クラッチ制御モードがマニュアルモードから自動モードに変わった時点、あるいはマニュアル操作クラッチ判定値Ddが切り換わった時点で、フラグ情報を「0」にリセットする等である。そして、フラグ情報が「1」であれば、移行済みとして判別し、「0」であれば、移行していないと判別する。
ステップS1001において、移行していないと判別された場合は、ステップS1002に進み、マニュアルモード中における自動制御の第1クラッチ264aのクラッチ容量(マニュアルモード時第1自動クラッチ容量Ca1)を演算する。このステップS1002では、マニュアルモード中における自動制御の第2クラッチ264bのクラッチ容量(マニュアルモード時第2自動クラッチ容量Ca2)と合わせて車体挙動への影響が最小となるように演算が行われる。
その後、ステップS1003において、マニュアルモード時第1自動クラッチ容量Ca1とマニュアル操作クラッチ容量Cmとを比較する。マニュアルモード時第1自動クラッチ容量Ca1≧マニュアル操作クラッチ容量Cmでなければ、次のステップS1004に進み、マニュアルモード時第1自動クラッチ容量Ca1を第1クラッチ容量出力値Sc1とする。
上述のステップS1003において、マニュアルモード時第1自動クラッチ容量Ca1≧マニュアル操作クラッチ容量Cmであると判別された場合は、ステップS1005に進み、マニュアル操作クラッチ容量Cmを第1クラッチ容量出力値Sc1とし、次のステップS1006において、マニュアルモード時第1自動クラッチ容量Ca1をマニュアル操作クラッチ容量Cmに書き換える。
ステップS1004での処理又はステップS1006での処理が終了した段階で、ステップS1007に進み、マニュアルモード中における自動制御の第2クラッチ264bのクラッチ容量(マニュアルモード時第2自動クラッチ容量Ca2)を演算する。このステップS1007においても、マニュアルモード時第1自動クラッチ容量Ca1と合わせて車体挙動への影響が最小となるように演算が行われる。そして、次のステップS1008において、マニュアルモード時第2自動クラッチ容量Ca2を第2クラッチ容量出力値Sc2とする。
一方、マニュアル操作クラッチ判定値Ddが「2」であれば、図30のステップS905に進み、第2クラッチ264bをマニュアル操作の主対象としてクラッチ容量を演算する。具体的には、図32のステップS1101において、第2クラッチ容量出力値Sc2がマニュアル操作クラッチ容量Cmに移行済みか否かを判別する。この判別も、上述したステップS1001と同様に、後述するステップS1103を介してステップS1105及びステップS1106での処理を行ったかどうかで行われる。
ステップS1101において、移行していないと判別された場合は、ステップS1102に進み、マニュアル操作中における自動制御の第2クラッチ264bのクラッチ容量(マニュアルモード時第2自動クラッチ容量Ca2)を演算する。このステップS1102では、マニュアルモード時第1自動クラッチ容量Ca1と合わせて車体挙動への影響が最小となるように演算が行われる。
その後、ステップS1103において、マニュアルモード時第2自動クラッチ容量Ca2とマニュアル操作クラッチ容量Cmとを比較する。マニュアルモード時第2自動クラッチ容量Ca2≧マニュアル操作クラッチ容量Cmでなければ、次のステップS1104に進み、マニュアルモード時第2自動クラッチ容量Ca2を第2クラッチ容量出力値Sc2とする。
上述のステップS1103において、マニュアルモード時第2自動クラッチ容量Ca2≧マニュアル操作クラッチ容量Cmであると判別された場合は、ステップS1105に進み、マニュアル操作クラッチ容量Cmを第2クラッチ容量出力値Sc2とし、次のステップS1106において、マニュアルモード時第2自動クラッチ容量Ca2をマニュアル操作クラッチ容量Cmに書き換える。
ステップS1104での処理又はステップS1106での処理が終了した段階で、ステップS1107に進み、マニュアルモード時第1自動クラッチ容量Ca1を演算する。このステップS1107においても、マニュアルモード時第2自動クラッチ容量Ca2と合わせて車体挙動への影響が最小となるように演算が行われる。そして、次のステップS1108において、マニュアルモード時第1自動クラッチ容量Ca1を第1クラッチ容量出力値Sc1とする。
そして、ステップS1001〜ステップS1008あるいはステップS1101〜ステップS1108を経て得られた第1クラッチ容量出力値Sc1及び第2クラッチ容量出力値Sc2は、第1電磁制御弁274a及び第2電磁制御弁274bに出力される。
ここで、第1速から第2速にシフトアップする動作について、図33のタイミングチャートも参照しながら説明する。なお、図33は、シフトペダル48の操作位置(操作量)に伴うドラム回転角信号Sa(電圧値Va)、ギヤポジション判定値Da、目標ギヤポジション値Db、接続クラッチ判定値Dc(マニュアル操作クラッチ判定値Dd)、クラッチレバー374の操作量センサー382の出力電圧値(Vc)、第1クラッチ容量出力値Sc1(第1自動クラッチ容量Ca1、マニュアル操作クラッチ容量Cm)、第2クラッチ容量出力値Sc2(第2自動クラッチ容量Ca2、マニュアル操作クラッチ容量Cm)の変化を示すタイミングチャートである。
先ず、第1速走行中での例えば時点t11においては、運転者によるクラッチレバー374が操作されていないことから、自動制御モードによって、第1クラッチ容量出力値Sc1として第1自動クラッチ容量Ca1が出力され、第2クラッチ容量出力値Sc2として第2自動クラッチ容量Ca2が出力される。
第1速走行中において、運転者がクラッチレバー374を操作して操作量センサー382の出力電圧値Vcが有効上限電圧値Vmaxとなった時点t12からマニュアル操作モードTwになり、第1クラッチ容量出力値Sc1としてマニュアル操作クラッチ容量Cmが出力され、第2クラッチ容量出力値Sc2として第2自動クラッチ容量Ca2が出力される。これにより、第1クラッチ264aは、クラッチレバー374の操作量に応じて徐々に切断されていくことになる。この状態は、目標ギヤポジション値Dbが変更されるまで、すなわち、運転者がシフトペダル48を操作して、ストッパアーム308のローラ314が第2凸部K2を乗り越え、且つ、ラチェット機構288のドラムシフタ318が元の位置に戻ってラチェット機構288がリセットされた時点t4(ドラム回転角信号Sa(電圧値Va)がシフトアップ変速の許可しきい値V12U以上となった時点)まで続く。
時点t4において、目標ギヤポジション値Dbが「1」から「2」に変更されることから、時点t4以降は、第2クラッチ容量出力値Sc2としてマニュアル操作クラッチ容量Cmが出力され、第1クラッチ容量出力値Sc1として第1自動クラッチ容量Ca1が出力される。これにより、第2クラッチ264bは、クラッチレバー374の操作量に応じて徐々に接続されていくことになる。
そして、操作量センサー382の出力電圧値Vcが有効上限電圧値Vmaxとなった時点t13でマニュアル操作モードTwが終了し、再び自動制御モードになり、第1クラッチ容量出力値Sc1として第1自動クラッチ容量Ca1が出力され、第2クラッチ容量出力値Sc2として第2自動クラッチ容量Ca2が出力される。
このように、第2変速装置200Bにおいては、上述した第1変速装置200Aと同様の効果を奏するほか、発進時/停車時など、より運転者の意思を反映した制御が可能となり、ローンチ発進やウィリー等にも適用可能となる。
自動クラッチ制御とマニュアルクラッチ制御への移行を違和感なく行うことが可能となる。クラッチレバー374の操作により、自動クラッチ制御からマニュアルクラッチ制御への移行時に、クラッチ容量が連続的に切り替わるため、違和感のない切り替えが可能となる。インギヤ停車状態におけるマニュアルクラッチ制御から自動クラッチ制御への切り替え時に、意図しない車両の動き出しを防ぐことが可能となる。
また、運転者の意思に応じてクラッチ装置204の断接制御を可能にするクラッチレバー374を備え、制御装置230がこのクラッチレバー374の操作信号を受けて、クラッチ断接指令を出力するようにし、クラッチ装置204を制御装置230による自動制御に変えて、運転者の意思に応じて断接制御できるようにしたので、自動クラッチ操作からマニュアルクラッチ操作まで可能なクラッチ装置204を、クラッチレバー374の追加と制御装置230の小規模の変更で構成することができ、低コストで一機種で複数種の操作が可能な鞍乗り型車両10を提供することができる。
クラッチレバー374を電子式のスイッチ手段としたので、従来の機械式に比べて操作荷重を低減することができ、簡素なスイッチ手段による操作が可能となり、運転操作の負荷低減を図ることができる。
なお、本発明に係る鞍乗り型車両の変速装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。