本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法は、型内発泡成形に用いられる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法であって、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール又はスピログリコールの少なくとも一種を含有し且つガラス転移温度Tgが100〜130℃である非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部、及び、固有粘度が0.8〜1.1である結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂10〜900重量部を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂と架橋剤とを押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練して押出発泡させて熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を製造し、この熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を粒子状に切断することを特徴とする。
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法に用いられる熱可塑性ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールとをエステル化反応させて得られた鎖状ポリエステルであり、非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂と結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂とを含んでいる。
熱可塑性ポリエステル系樹脂が結晶性又は非晶性であるかは下記の要領によって測定する。先ず、熱可塑性ポリエステル系樹脂の試料を示差走査型熱量計(DSC)を用いてJIS K7121に準拠して10℃/分の昇温速度で−100℃から300℃まで加熱溶融させ、300℃にて10分間に亘って保持し、次に、熱可塑性ポリエステル系樹脂の試料を10℃/分の降温速度で−100℃まで降温する。次に、熱可塑性ポリエステル系樹脂の試料を10℃/分の昇温速度にて−100から300℃まで加熱溶融させ、この二回目の昇温工程において、融解ピークを示さないものを非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂とし、融解ピークを示したものを結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂とする。
非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、上述の測定方法において、非晶性と判断され、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール又はスピログリコールの少なくとも一種を含有し且つガラス転移温度Tgが100〜130℃であることが必要である。非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を構成しているジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸などが挙げられ、芳香族ジカルボン酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシジカルボン酸などが挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸などが挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。
非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂は、そのジオール成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール又はスピログリコールの少なくとも一種を含有している。
非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂は、ジオール成分として上記成分を含有していることによって、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を用いて得られた発泡成形体は優れた耐熱性及び緩衝性を有している。
非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂のジオール成分中において、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール又はスピログリコールの少なくとも一種の総含有量は、少なすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を用いて得られる発泡成形体の耐熱性又は緩衝性が低下することがあるので、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、60モル%以上が特に好ましい。
非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂は、そのジオール成分として上記以外のジオール成分を含有していてもよい。このようなジオール成分としては、脂肪族ジオール又は脂環族ジオールが用いられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられ、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましく、エチレングリコールとジエチレングリコールの双方を含有していることがより好ましい。脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
本発明において、熱可塑性ポリエステル系樹脂のモノマー成分は、例えば、熱可塑性ポリエステル系樹脂をトリフルオロ酢酸−dと重クロロホルムとの1:1(重量比)混合溶液に溶解させ、更に、混合溶液にテトラメチルシランを標品として混合し、FT−NMRを用いて測定することができる。なお、FT−NMRとしては、例えば、バリアン社から商品名「300MG型」にて市販されている装置を用いることができる。
非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは、低すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を用いて得られる発泡成形体の耐熱性が低下し、高すぎると、型内発泡成形時に熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の熱融着性が低下するので、100〜130℃に限定され、105〜120℃が好ましく、108〜120℃がより好ましく、110〜120℃が特に好ましい。
このように、本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法で製造される熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子は、高いガラス転移温度Tgを有する非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を含有していることから、この熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形して得られる発泡成形体は、結晶化度を上昇させるための工程を要することなく十分な耐熱性を有しており、仮に結晶化度を上昇させるための工程を行ったとしても従来に比して短い時間で完了させることができ、本発明の製造方法で製造された熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子によれば、発泡成形体の製造時間の短縮化を図ることができる。
非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは、分子鎖中に大きな極性基を有する構造を導入し、又は、分子鎖中に分子の回転運動が抑制される構造のモノマー成分を導入することで上げることができる。即ち、非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール成分又はスピログリコール成分の含有量を多くすることによって上げることができる。非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは、鎖長が長い置換基を有する構造のモノマー成分を導入することで下げることができる。
なお、本発明において、熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは下記の要領で測定したものをいう。熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載されている方法で測定した値をいう。例えば、示差走査熱量計装置(エスアイアイナノテクノロジー社製 商品名「DSC6220型」)を用い、アルミニウム製の測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充填して、窒素ガス流量30mL/分の条件下にて試料を昇温速度10℃/分にて290℃まで加熱した後、試料を降温速度10℃/分にて290℃から30℃まで冷却し、更に、試料を昇温速度10℃/分にて30℃から290℃まで加熱してDSC曲線を測定し、測定されたDSC曲線におけるJIS K7121:1987に規定の補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度Tgとする。図1にDSC曲線の一例を示した。なお、本発明では、DSC曲線の変曲点においてガラス転移温度Tgを算出するが、DSC曲線の変曲点を挟んだ低温側の平行部と、高温側の平行部との差Δ(mW)が0.02mW以下である場合はガラス転移温度Tgとみなさない。
非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、小さすぎると、押出発泡性が低下して熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造が困難となり、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造することができたとしても、連続気泡率が高くなり、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の二次発泡性が低下することがある。非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、大きすぎると、押出発泡時の負荷が大きくなりすぎて熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の生産性が低下したり、又は、得られる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡倍率が低下し、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を用いて得られる発泡成形体の発泡倍率が低下して軽量性が低下し又は緩衝性が低下することがあるので、0.5〜1.0が好ましく、0.5〜0.8がより好ましく、0.6〜0.75が特に好ましく、0.63〜0.75が最も好ましい。
熱可塑性ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、JIS K7367−5(2000)に準拠して測定された値をいう。具体的には、熱可塑性ポリエステル系樹脂を133Paの真空度で40℃にて15時間に亘って乾燥させる。
熱可塑性ポリエステル系樹脂から0.1000gを試料として取り出して20mLのメスフラスコに入れ、メスフラスコに混合溶媒(フェノール50重量%、1,1,2,2−テトラクロロエタン50重量%)約15mLを添加する。メスフラスコ内の試料をホットプレート上に載置して約130℃に加熱して溶融させる。試料を溶融させた後に室温まで冷却し、体積が20mLとなるように調製し試料溶液(試料濃度:0.500g/100mL)を作製する。
試料溶液8mLをホールピペットで粘度計に供給し、25℃の水が入れられた水槽を用いて試料の温度を安定させた後、試料の流下時間を測定する。試料溶液の濃度変更は、順次、粘度計内に混合溶媒8mLを添加して混合し希釈して希釈試料溶液を作製する。そして、希釈試料溶液の流下時間を測定する。試料溶液とは別に上記混合溶媒の流下時間を測定する。
下記の計算式に基づいて熱可塑性ポリエステル系樹脂の固有粘度を算出する。混合溶媒の流下時間(t0)と試料溶液の流下時間(t)から以下を算出する。
相対粘度(ηr) =t/t0
比粘度 (ηsp)=(t−t0)/t0=ηr−1
還元粘度=ηsp/C
試料溶液の濃度C(g/100mL)を種々、変更した希釈試料溶液の測定結果から、縦軸を還元粘度とし横軸を試料溶液の濃度Cとしてグラフを作成し、得られた直線関係をC=0に外挿した縦軸切片から固有粘度[η]を求める。
非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、例えば、イーストマン・ケミカル・カンパニー社から商品名「トライタン FX−100」(芳香族ジカルボン酸成分:テレフタル酸、ジオール成分:1,4−シクロヘキサンジメタノール79モル%及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール21モル%、ガラス転移温度Tg:108℃、固有粘度:0.72)及び商品名「トライタン FX−200」(芳香族ジカルボン酸成分:テレフタル酸、ジオール成分:1,4−シクロヘキサンジメタノール65モル%及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール35モル%、ガラス転移温度Tg:118℃、固有粘度:0.64)にて市販されており、三菱ガス化学社から商品名「アルテスタ45」(芳香族ジカルボン酸:テレフタル酸、ジオール成分:スピログリコール44モル%、エチレングリコール53モル%及びジエチレングリコール3モル%、ガラス転移温度Tg:111℃、固有粘度:0.72)にて市販されている。
非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂の合成方法としては、例えば、特表2008−544022号公報、特開2012−1589号公報に記載されているが、これらに限定されるものではない。以下に具体的な合成方法の一例を説明する。撹拌機付き熱媒循環式エステル化反応器に、ジカルボン酸とジオールとを供給した上でトリエチルアミンを加え、0.1〜0.3MPaの加圧下にて200〜270℃にて水を系外に排除しながらジカルボン酸とジオールとのエステル化反応を行い、エステル化合物及びオリゴマーの混合物を得る。このエステル化合物及びオリゴマーの混合物を撹拌機付き重縮合器に輸送し、これに重縮合触媒として三酸化アンチモンなどの触媒を添加する。続いて、エステル化合物及びオリゴマーの混合物を窒素雰囲気下、常圧にて200〜270℃で撹拌する。しかる後、エステル化合物及びオリゴマーの混合物を200〜270℃に保ったまま反応系の圧力を徐々に下げて第一段目の初期重縮合を行ってプレポリマーを製造する。次に、プレポリマーを冷却水中にストランド状に吐出して急冷し、ストランドカッターでチップ化してシリンダー形状のチップを得る。なお、チップ化時、重縮合器出口からノズル細孔までの樹脂温度は約270℃とし、約30分以内に全量をチップ化する。続いて、得られたチップを直ちに減圧乾燥機にて約50〜150℃で熱処理し、振動式篩分工程及び気流分級工程によって処理して、微粉体及びフィルム状物を除去しプレポリマーを得る。次に、プレポリマーを窒素雰囲気下で予熱後、連続固相重合反応器に送り、窒素雰囲気下、約200〜250℃で固相重合することによって上記非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を製造することができる。
結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂は、上述の測定方法において、結晶性と判断されればよく、芳香族ジカルボン酸とジオールとの間でエステル化反応をさせて得られた鎖状ポリエステルが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシジカルボン酸などが挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
ジオールとしては、脂肪族ジオール又は脂環族ジオールが用いられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられ、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレートなどが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。なお、結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、小さすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造時に破泡を生じてしまい、得られる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の連続気泡率が高くなり、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の二次発泡性が低下することがあり、大きすぎると、押出発泡時の負荷が大きくなりすぎて熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の生産性が低下し、又は、得られる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡倍率が低下し、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を用いて得られる発泡成形体の軽量性又は緩衝性が低下することがあるので、0.8〜1.1に限定され、0.83〜1.05が好ましく、0.85〜1.05がより好ましい。
押出機に供給する結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂の量は、少なすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造する場合に熱可塑性ポリエステル系樹脂の改質が不十分となって押出発泡性が改善されず、押出発泡が困難となり、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子が得られたとしても、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の連続気泡率が高くなり、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の二次発泡性が低下し、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を用いて得られる発泡成形体の軽量性又は機械的強度が低下し、多すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を用いて得られる発泡成形体の緩衝性又は耐衝撃性が低下するので、非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部に対して10〜900重量部に限定され、40〜240重量部が好ましく、40〜90重量部がより好ましく、40〜60重量部が特に好ましい。
そして、本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法に用いられる上記非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂及び結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂は互いに混合し易いので、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造時の発泡性に優れており、得られる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子は、連続気泡率が低く発泡性に優れ且つ高発泡倍率とすることができる。従って、本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法によって製造された熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を型内発泡成形に用いることによって、軽量性及び機械的強度に優れた発泡成形体を製造することができる。
結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂及び非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂は押出機内において架橋剤によって架橋して改質される。結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂及び非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を架橋剤と共に押出機中で溶融混練して熱可塑性ポリエステル系樹脂を改質することで、押出発泡性の低い上記非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を含んでいても熱可塑性ポリエステル系樹脂の押出発泡性が改善され、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を容易に製造することができる。架橋剤としては、公知のものが用いられ、例えば、酸無水物基を有する化合物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物などが挙げられ、酸無水物基を有する化合物が好ましい。なお、架橋剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
酸無水物基を有する化合物としては、特に限定されず、例えば、芳香族、脂環族、脂肪族の何れに属するものであってもよく、ハロゲン化酸無水物であってもよい。酸無水物基を有する化合物としては、例えば、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。なお、酸無水物基を有する化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂及び結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を改質するために押出機に供給される架橋剤の量は、少なすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂の溶融時の溶融粘度が低く、熱可塑性ポリエステル系樹脂の押出発泡時に破泡を生じることがあり、多すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂の溶融時の溶融粘度が高くなりすぎて、熱可塑性ポリエステル系樹脂の押出発泡が困難となり、又は、発泡倍率の高い熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造が困難となることがあるので、非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂及び結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂の総量100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜1重量部がより好ましく、0.1〜0.4重量部が特に好ましい。
本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法は、非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂及び結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂と架橋剤とを押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練して押出発泡させて熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を製造し、この熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を粒子状に切断して熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造する。
本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法としては、非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂及び結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂を架橋剤と共に押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練する工程と、上記押出機の前端に取り付けたノズル金型から熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を押出発泡させながら切断して粒子状切断物を製造する工程と、上記粒子状切断物を冷却する工程とを有することが好ましく、以下にこの製造方法について説明するが、本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
先ず、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造に用いられる製造装置の一例について説明する。図2中、押出機の前端にはノズル金型1が取り付けられている。ノズル金型1は、熱可塑性ポリエステル系樹脂を押出発泡させて均一微細な気泡を形成でき好ましい。そして、図3に示したように、ノズル金型2の前端面1aには、ノズルの出口部11、11・・・が複数個、同一仮想円A上に等間隔毎に形成されている。なお、押出機の前端に取り付けるノズル金型は、ノズル内において熱可塑性ポリエステル系樹脂が発泡しなければ、特に限定されない。
ノズル金型1のノズルの数は、少なすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造効率が低下する。ノズル金型1のノズルの数は、多すぎると、互いに隣接するノズルから押出発泡される熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物同士が接触して合体し、或いは、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を切断して得られる粒子状切断物同士が合体することがある。従って、ノズル金型1のノズルの数は、2〜80個が好ましく、5〜60個がより好ましく、8〜50個が特に好ましい。
ノズル金型1におけるノズルの出口部11の直径は、小さすぎると、押出圧力が高くなりすぎて押出発泡が困難となることがある。ノズル金型1におけるノズルの出口部11の直径は、大きすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の径が大きくなって金型への充填性が低下することがある。従って、ノズル金型1におけるノズルの出口部11の直径は、0.2〜2mmが好ましく、0.3〜1.6mmがより好ましく、0.4〜1.2mmが特に好ましい。
ノズル金型1のランド部の長さは、ノズル金型1のノズルにおける出口部11の直径の4〜30倍が好ましく、ノズル金型1のノズルにおける出口部11の直径の5〜20倍がより好ましい。これは、ノズル金型のランド部の長さがノズル金型のノズルの出口部直径に比較して小さすぎると、フラクチャーが発生して安定的に押出発泡することができないことがあるからである。ノズル金型のランド部の長さがノズル金型のノズルの出口部直径に比較して大きすぎると、ノズル金型に大きな圧力が加わり過ぎて押出発泡ができない場合があるからである。
そして、ノズル金型1の前端面1aにおけるノズルの出口部11で囲まれた部分には、回転軸2が前方に向かって突出した状態に配設されており、この回転軸2は、後述する冷却部材4を構成する冷却ドラム41の前部41aを貫通してモータなどの駆動部材3に連結されている。
更に、上記回転軸2の後端部の外周面には一枚又は複数枚の回転刃5が一体的に設けられており、全ての回転刃5は、その回転時には、ノズル金型1の前端面1aに常時、接触した状態となる。なお、回転軸2に複数枚の回転刃5が一体的に設けられている場合には、複数枚の回転刃5は回転軸2の周方向に等間隔毎に配列されている。又、図3では、一例として、四個の回転刃5を回転軸2の外周面に一体的に設けた場合を示した。
そして、回転軸2が回転することによって回転刃5は、ノズル金型1の前端面1aに常時、接触しながら、ノズルの出口部11が形成されている仮想円A上を移動し、ノズルの出口部11から押出された熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を順次、連続的に切断可能に構成されている。
又、ノズル金型1の少なくとも前端部と、回転軸2とを包囲するように冷却部材4が配設されている。この冷却部材4は、ノズル金型1よりも大径な正面円形状の前部41aと、この前部41aの外周縁から後方に向かって延設された円筒状の周壁部41bとを有する有底円筒状の冷却ドラム41とを備えている。
更に、冷却ドラム41の周壁部41bにおけるノズル金型1の外方に対応する部分には、冷却液42を供給するための供給口41cが内外周面間に亘って貫通した状態に形成されている。冷却ドラム41の供給口41cの外側開口部には冷却液42を冷却ドラム41内に供給するための供給管41dが接続されている。
冷却液42は、供給管41dを通じて、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に沿って斜め前方に向かって供給されるように構成されている。そして、冷却液42は、供給管41dから冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に供給される際の流速に伴う遠心力によって、冷却ドラム41の周壁部41b内周面に沿って螺旋状を描くように前方に向かって進む。そして、冷却液42は、周壁部41bの内周面に沿って進行中に、徐々に進行方向に直交する方向に広がり、その結果、冷却ドラム41の供給口41cより前方の周壁部41bの内周面は冷却液42によって全面的に被覆された状態となるように構成されている。
なお、冷却液42としては、粒子状切断物を冷却することができれば、特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられるが、使用後の処理を考慮すると、水が好ましい。
そして、冷却ドラム41の周壁部41bの前端部下面には、その内外周面間に亘って貫通した状態に排出口41eが形成されている。排出口41eの外側開口部には排出管41fが接続されている。熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子及び冷却液42が排出口41eを通じて連続的に排出されるように構成されている。
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子は押出発泡によって製造される。例えば、非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂及び結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂を架橋剤と共に押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練した後、押出機の前端に取り付けたノズル金型1から熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を押出発泡させながら回転刃5によって切断し熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造する。
なお、上記押出機としては、従来から汎用されている押出機であれば、特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機、複数の押出機を連結させたタンデム型の押出機が挙げられる。
又、上記発泡剤としては、従来から汎用されているものが用いられる。上記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどの化学発泡剤;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などの物理発泡剤などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。なお、発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
そして、押出機に供給される発泡剤量は、少なすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を所望発泡倍率まで発泡させることができないことがある。押出機に供給される発泡剤量は、多すぎると、発泡剤が可塑剤として作用することから溶融状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂の粘弾性が低下し過ぎて発泡性が低下し良好な熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を得ることができない場合がある。従って、押出機に供給される発泡剤量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜4重量部がより好ましく、0.3〜3重量部が特に好ましい。
なお、押出機には気泡調整剤が供給されることが好ましい。このような気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末、タルクなどが好ましい。
又、押出機に供給される気泡調整剤の量は、少なすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の気泡が粗大となり、得られる発泡成形体の外観が低下することがある。押出機に供給される気泡調整剤の量は、多すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂を押出発泡させる際に破泡を生じて熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の独立気泡率が低下することがある。従って、押出機に供給される気泡調整剤の量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜3重量部がより好ましく、0.1〜2重量部が特に好ましい。
そして、ノズル金型1から押出発泡された熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物は引き続き切断工程に入る。熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物の切断は、回転軸2を回転させることによって、ノズル金型1の前端面1aに配設された回転刃5を回転させて行われる。回転刃5の回転数は2000〜10000rpmが好ましい。回転刃は、一定の回転数で回転させることが好ましい。
全ての回転刃5はノズル金型1の前端面1aに常時、接触しながら回転しており、ノズル金型1から押出発泡された熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物は、回転刃5と、ノズル金型1におけるノズルの出口部11端縁との間に生じる剪断応力によって、一定の時間間隔毎に大気中において切断されて粒子状切断物とされる。この時、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物の冷却が過度とならない範囲内において、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物に水を霧状に吹き付けてもよい。
ノズル金型1のノズル内において熱可塑性ポリエステル系樹脂が発泡しないようにしている。そして、熱可塑性ポリエステル系樹脂は、ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出された直後は、未だに発泡しておらず、吐出されてから僅かな時間が経過した後に発泡を始める。従って、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物は、ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する、未発泡部に先んじて押出された発泡途上の発泡部とからなる。
ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出されてから発泡を開始するまでの間、未発泡部はその状態を維持する。この未発泡部が維持される時間は、ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力や、発泡剤量などによって調整することができる。ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力が高いと、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物はノズル金型1から押出されてから直ぐに発泡することはなく未発泡の状態を維持する。ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力の調整は、ノズルの直径、押出量、熱可塑性ポリエステル系樹脂の溶融粘度及び溶融張力によって調整することができる。発泡剤量を適正な量に調整することによって金型内部において熱可塑性ポリエステル系樹脂が発泡することを防止し、未発泡部を確実に形成することができる。
そして、全ての回転刃5はノズル金型1の前端面1aに常時、接触した状態で熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を切断していることから、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物は、ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出された直後の未発泡部において切断されて粒子状切断物が製造される。
又、上述したように、回転刃5は一定の回転数で回転しているが、回転刃5の回転数は、2000〜10000rpmが好ましく、2000〜9000rpmがより好ましく、2000〜8000rpmが特に好ましい。
これは、回転刃5が2000rpmを下回ると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を回転刃5によって確実に切断することができず、粒子状切断物同士が合着し、或いは、粒子状切断物の形状が不均一となることがあるからである。
一方、回転刃5の回転数が10000rpmを上回ると下記の問題点を生じ易くなるからである。第一の問題点は、回転刃による切断応力が大きくなって、粒子状切断物がノズルの出口部から冷却部材に向かって飛散される際に、粒子状切断物の初速が速くなる。その結果、粒子状切断物を切断してから、粒子状切断物が冷却部材に衝突するまでの時間が短くなり、粒子状切断物の発泡が不充分となって、得られる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡倍率が低くなることがある。第二の問題点は、回転刃及び回転軸の摩耗が大きくなって回転刃及び回転軸の寿命が短くなることがあるからである。
そして、上述のようにして得られた粒子状切断物は、回転刃5による切断応力によって切断と同時に冷却ドラム41に向かって飛散され、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面を被覆する冷却液42に直ちに衝突する。粒子状切断物は、冷却液42に衝突するまでの間も発泡をし続けており、粒子状切断物は発泡によって略球状に成長している。従って、得られる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子は略球状である。熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を金型内に充填して型内発泡を行うにあたって、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子は金型内への充填性に優れ、金型内に熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を均一に充填することができ、均質な発泡成形体を得ることができる。
一方、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面は全面的に冷却液42で被覆されているが、この冷却液42は、供給管41dを通じて、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に沿って斜め前方に向かって供給され、供給管41dから冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に供給される際の流速に伴う遠心力によって、冷却ドラム41の周壁部41b内周面に沿って螺旋状を描くように前方に向かって進み、そして、冷却液42は、周壁部41bの内周面に沿って進行中に、徐々に進行方向に直交する方向に広がり、その結果、冷却ドラム41の供給口41cより前方の周壁部41bの内周面は冷却液42によって全面的に被覆された状態となっている。
上述のように、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を回転刃5によって切断した後に、粒子状切断物を直ちに冷却液42によって冷却していることから、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子が過度に発泡するのを防止している。
更に、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を回転刃5によって切断して得られた粒子状切断物は冷却液42に向かって飛散させられる。上述の通り、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に沿って流れている冷却液42は螺旋状に旋回しながら流れている。従って、冷却液42の表面に対して斜交し且つ冷却液42の流れの上流側から下流側に向かって粒子状切断物Pを冷却液42に衝突させて冷却液42に進入させるようにすることが好ましい(図4参照)。なお、図4において、冷却液の流れ方向を「F」として示した。
このように、粒子状切断物を冷却液42内に進入させるときに、粒子状切断物を冷却液42の流れを追う方向から冷却液42に進入させているので、粒子状切断物は冷却液42の表面に弾かれることなく、粒子状切断物は冷却液42内に円滑に且つ確実に進入して冷却液42によって冷却されて熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子が製造される。
従って、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子は、冷却ムラや収縮のない略球状の形態を有し、型内発泡成形時に優れた発泡性を発揮する。そして、粒子状切断物は、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物の切断後に直ちに冷却されているので、結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化度の上昇度合いは小さいと共に非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を含んでいる。従って、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子は、全体として結晶化度が低いため、優れた熱融着性を有しており、得られる発泡成形体は優れた機械的強度を有している。そして、型内発泡成形時に熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を構成している結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化度を上昇させて耐熱性を向上させることができ、得られる発泡成形体は優れた耐熱性を有している。
冷却液42の温度は、低すぎると、冷却ドラム41の近傍に位置するノズル金型が過度に冷却されて、熱可塑性ポリエステル系樹脂の押出発泡に悪影響が生じることがある。冷却液42の温度は、高すぎると、粒子状切断物の冷却が不十分となることがある。従って、冷却液42の温度は10〜40℃が好ましい。
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の嵩密度は、小さすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の連続気泡率が上昇して、型内発泡成形における発泡時に熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に必要な発泡力を付与することができない虞れがある。熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の嵩密度は、大きすぎると、得られる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の気泡が不均一となって、型内発泡成形時における熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡性が不充分となることがある。従って、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の嵩密度は、0.05〜0.7g/cm3が好ましく、0.07〜0.6g/cm3がより好ましく、0.08〜0.5g/cm3が特に好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の嵩密度は、ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力、又は、発泡剤量などによって調整することができる。ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力の調整は、ノズルの直径、押出量及び熱可塑性ポリエステル系樹脂の溶融粘度によって調整することができる。
なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。即ち、JIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の嵩密度を測定することができる。
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の嵩密度(g/cm3)
=〔試料を入れたメスシリンダーの質量(g)−メスシリンダーの質量(g)〕/〔メスシリンダーの容量(cm3)〕
得られた熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子は、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物をその未発泡部で切断して形成されている。熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を切断した部分の表面には気泡断面は全く存在しないか或いは存在していても僅かである。その結果、得られる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の表面全面は、気泡断面が全く存在しないか或いは僅かに存在しているだけである。従って、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子は、発泡ガスの抜けがなく優れた発泡性を有していると共に連続気泡率も低く、更に、表面の熱融着性にも優れている。
又、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の連続気泡率は、高すぎると、型内発泡成形時に熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡圧が不足し、二次発泡粒子同士の熱融着が不十分となって、発泡成形体が得られなかったり、又は、発泡成形体の機械的強度や外観性が低下することがある。従って、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の連続気泡率は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の連続気泡率の調整は、押出機からの熱可塑性ポリエステル系樹脂の押出発泡温度、又は、押出機への発泡剤の供給量などを調整することによって行われる。
ここで、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の連続気泡率は下記の要領で測定される。先ず、体積測定空気比較式比重計の試料カップを用意し、この試料カップの80%程度を満たす量の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の全重量A(g)を測定する。次に、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子全体の体積B(cm3)を比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定する。なお、体積測定空気比較式比重計は、例えば、東京サイエンス社から商品名「1000型」にて市販されている。
続いて、金網製の容器を用意し、この金網製の容器を水中に浸漬し、この水中に浸漬した状態における金網製の容器の重量C(g)を測定する。次に、この金網製の容器内に上記熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を全量入れた上で、この金網製の容器を水中に浸漬し、水中に浸漬した状態における金網製の容器とこの金網製容器に入れた熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の全量とを併せた重量D(g)を測定する。
そして、下記式に基づいて熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の見掛け体積E(cm3)を算出し、この見掛け体積Eと上記熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子全体の体積B(cm3)に基づいて下記式により熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の連続気泡率を算出することができる。なお、水1gの体積を1cm3 とした。
E=A+(C−D)
連続気泡率(%)=100×(E−B)/E
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子における結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂部分の結晶化度は、高すぎると、型内発泡成形時に発泡粒子同士の熱融着性が低下することがあるので、15%未満が好ましく、13%以下がより好ましい。熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の結晶化度は、ノズル金型1から熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物が押出されてから粒子状切断物が冷却液42に衝突するまでの時間、又は、冷却液42の温度によって調整することができる。
ここで、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子における結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂部分の結晶化度は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載されている方法で測定した値をいう。例えば、示差走査熱量計装置(エスアイアイナノテクノロジー社製 商品名「DSC6220型」)を用い、アルミニウム製の測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、試料を窒素ガス流量30mL/分の条件下にて30℃で2分間に亘って保持した後、試料を速度10℃/分で30℃から290℃まで昇温した時のDSC曲線を得た。その時の基準物質はアルミナを用いた。熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子における結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂部分の結晶化度は、融解ピークの面積から求められる融解熱量(mJ/mg)と結晶化ピークの面積から求められる結晶化熱量(mJ/mg)の差を結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂の完全結晶の理論融解熱量ΔH0で徐して求められる割合である。例えば、ポリエチレンテレフタレートのΔH0は140.1mJ/mgである。熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子における結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂部分の結晶化度は下記式に基づいて算出される。
結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂部分の結晶化度(%)
=100×(│融解熱量(mJ/mg)│−│結晶化熱量(mJ/mg)│)/(ΔH0(mJ/mg)×熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子中に含有されている結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂の重量百分率(重量%)/100)
上記では、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造する方法として、図2〜4に示した製造装置を用いた場合を説明したが、上記製造方法に限定されず、例えば、(1)非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂及び結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂と、架橋剤とを押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練して熱可塑性ポリエステル系樹脂を架橋剤によって改質した後、押出機の前端に取り付けたノズル金型から押出発泡によってストランド状の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を製造し、このストランド状の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を冷却した後にペレタイザーなどを用いて熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を粒子状に切断して熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造する方法、(2)非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂及び結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂と、架橋剤とを押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練して熱可塑性ポリエステル系樹脂を架橋剤によって改質した後、押出機の前端に取り付けたTダイから熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物として熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを製造し、この熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを冷却した後に熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを粒子状に切断して熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造する方法、(3)非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂及び結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂と架橋剤とを押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練して熱可塑性ポリエステル系樹脂を架橋剤によって改質した後、押出機の前端に取り付けたサーキュラダイから円環状の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を製造し、この円環状の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物をその押出方向に内外周面間に亘って連続的に切断して円環状の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出物を展開して熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを製造した後、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを粒子状に切断して熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造する方法などであってもよい。
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を金型のキャビティ内に充填して加熱し、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を発泡させることによって、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を二次発泡させて得られた二次発泡粒子同士をそれらの発泡圧によって互いに熱融着一体化させて熱融着性に優れ且つ所望形状を有する発泡成形体を得ることができる。上記型内発泡成形中に、結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化度を上昇させて、耐熱性に優れた発泡成形体を得ることができる。なお、金型内に充填した熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の加熱媒体としては、特に限定されず、水蒸気の他に、熱風、温水などが挙げられる。
本発明の製造方法で製造された熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形して得られる発泡成形体も本発明の一つである。
更に、型内発泡成形前に、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に更に不活性ガスを含浸させて、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡力を向上させてもよい。このように熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡力を向上させることにより、型内発泡成形時に熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子同士の熱融着性が向上し、得られる発泡成形体は更に優れた機械的強度を有する。なお、上記不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられ、二酸化炭素が好ましい。
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる方法としては、例えば、常圧以上の圧力を有する不活性ガス雰囲気下に熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を置くことによって熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子中に不活性ガスを含浸させる方法が挙げられる。このような場合、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を金型内に充填する前に不活性ガスを含浸させてもよいが、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を金型内に充填した後に金型ごと不活性ガス雰囲気下に置き、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させてもよい。
そして、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる時の温度は5〜40℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。これは、温度が低すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子が冷却され過ぎて、型内発泡成形時において熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を充分に加熱することができず、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子同士の熱融着性が低下し、得られる発泡成形体の機械的強度が低下することがあるからである。温度が高すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子への不活性ガスの含浸量が低くなり、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に充分な発泡性を付与することができないことがあると共に、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の結晶化が促進され、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の熱融着性が低下し、得られる発泡成形体の機械的強度が低下することがあるからである。
又、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる時の圧力は0.2〜2.0MPaが好ましく、0.25〜1.5MPaがより好ましい。不活性ガスが二酸化炭素である場合には、0.2〜1.5MPaが好ましく、0.25〜1.2MPaがより好ましい。これは、圧力が低すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子への不活性ガスの含浸量が低くなり、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に充分な発泡性を付与することができず、得られる発泡成形体の機械的強度が低下することがあるからである。
一方、圧力が高すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の結晶化度が上昇し、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の熱融着性が低下し、得られる発泡成形体の機械的強度が低下することがあるからである。
更に、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる時間は、10分〜72時間が好ましく、15分〜64時間がより好ましく、20分〜48時間が特に好ましい。不活性ガスが二酸化炭素である場合には、20分〜24時間が好ましい。これは、含浸時間が短すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを充分に含浸させることができないからである。一方、含浸時間が長すぎると、発泡成形体の製造効率が低下するからである。
このように、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを5〜40℃で且つ0.2〜2.0MPaの圧力下にて含浸させることによって、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の結晶化度の上昇を抑えつつ、発泡性を向上させることができ、よって、型内発泡成形時に、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子同士を充分な発泡力で強固に熱融着一体化させることができ、機械的強度に優れた発泡成形体を得ることができる。
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に上述の要領で不活性ガスを含浸させた後、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を予備発泡させて予備発泡粒子とした上で、予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填して加熱し、予備発泡粒子を発泡させることによって発泡成形体を成形してもよい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる要領と同様の要領で、予備発泡粒子に不活性ガスを更に含浸させてもよい。
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を得る方法としては、例えば、不活性ガスを含浸させた熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を55〜90℃に加熱することによって発泡させて予備発泡粒子を製造する方法が挙げられる。
上述のように、本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形によって得られた発泡成形体は、軽量性、耐熱性、緩衝性及び機械的強度に優れており、特に、高温環境下での耐荷重性に優れていることから、例えば、自動車、航空機、鉄道車輛及び船舶などの輸送機器の部品に好適に用いることができる。自動車部品としては、例えば、エンジン付近に用いられる部品、外装材などに好適に用いることができる。
更に、発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化することによって複合発泡体として用いてもよい。複合発泡体は、耐熱性及び機械的強度に更に優れており、輸送機器の部品の他に、自動車、航空機、鉄道車輛及び船舶などの輸送機器の本体を構成する構造部材を含めた輸送機器構成用部材として広範囲に用いることができ、又、建築資材としても好適に用いることができる。自動車の本体を構成する構造部材としては、例えば、ドアパネル、ドアインナー、バンパー、フェンダー、フェンダーサポート、エンジンカバー、ルーフパネル、トランクリッド、フロアパネル、センタートンネル、クラッシュボックスなどが挙げられる。例えば、従来、鋼板で作製されていたドアパネルに複合発泡体を用いると、鋼板製ドアパネルと略同一の剛性を有するドアパネルが大きく軽量化できるため、自動車の軽量化の高い効果が得られる。
表皮材としては、繊維強化材、金属シート、合成樹脂フィルムなどが挙げられ、繊維強化材が好ましい。
金属シートとしては、特に限定されず、例えば、アルミニウムシート、ステンレスシート、鉄シート、鋼シート、チタニウムシートなどが挙げられ、軽量性及び機械的強度の双方に優れているので、アルミニウムシートが好ましい。なお、アルミニウムシートには、アルミニウムを50重量%以上含有しているアルミニウム合金シートも含まれる。金属シートの厚みは、薄すぎると、機械的強度が低下することがあり、厚すぎると、軽量性が低下するので、0.1〜0.5mmが好ましく、0.2〜0.5mmがより好ましい。
合成樹脂フィルムとしては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルムなどが挙げられる。
繊維強化材を構成している繊維としては、特に限定されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、金属繊維などが挙げられ、優れた機械的強度及び耐熱性を有していることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。
繊維強化材の形態としては、特に限定されず、例えば、織物、編物、不織布、繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)をポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂糸又はガラス繊維糸などのステッチ糸で結束(縫合)してなる面材などが挙げられる。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。
繊維強化材は、(1)織物、編物若しくは不織布同士又はこれらを任意の組み合わせで複数枚、積層してなる多層面材、(2)繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)をポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂糸又はガラス繊維糸などのステッチ糸で結束(縫合)してなる複数枚の面材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた面材同士をポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂糸又はガラス繊維糸などのステッチ糸で一体化(縫合)してなる多層面材であってもよい。
繊維強化材には合成樹脂が含浸されていることが好ましい。合成樹脂としては、未硬化の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂を予備重合した樹脂などが挙げられ、耐熱性、弾性率及び耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤などの添加剤が含有されていてもよい。なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
又、熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。
繊維強化材中における合成樹脂の含有量は、少なすぎると、繊維強化材を構成している繊維同士の結合が弱くなり、得られる複合体の機械的強度が低下することがあり、多すぎると、繊維強化材を構成している繊維間に存在する合成樹脂の量が多くなりすぎ、かえって繊維強化材の機械的強度が低下し、得られる複合体の機械的強度が低下することがあるので、20〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。
繊維強化材中に合成樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、(1)繊維強化材を合成樹脂中に浸漬して繊維強化材中に合成樹脂を含浸させる方法、(2)繊維強化材に合成樹脂を塗布し、繊維強化材に合成樹脂を含浸させる方法などが挙げられる。
発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化させる方法としては、特に限定されず、例えば、(1)発泡成形体の表面に接着剤を介して表皮材を積層一体化する方法、(2)発泡成形体の表面に、熱可塑性樹脂が含浸された繊維強化材を積層し、繊維強化材中に含浸させた熱可塑性樹脂をバインダーとして発泡成形体の表面に繊維強化材を積層一体化する方法、(3)発泡成形体の表面に、未硬化の熱硬化性樹脂が含浸された繊維強化材を積層し、繊維強化材中に含浸させた熱硬化性樹脂をバインダーとし、熱硬化性樹脂を硬化させて発泡成形体の表面に繊維強化材を積層一体化する方法、(4)発泡成形体の表面に、加熱されて軟化状態の表皮材を配設し、発泡成形体の表面に表皮材を押圧させることによって表皮材を必要に応じて発泡成形体の表面に沿って変形させながら発泡成形体の表面に積層一体化させる方法、(5)繊維強化合成樹脂シートの成形で一般的に適用される方法などが挙げられ、発泡成形体は高温環境下における耐荷重性に優れていることから、上記(4)の方法も好適に用いることができる。
繊維強化合成樹脂シートの成形で用いられる方法としては、例えば、オートクレーブ法、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、PCM(Prepreg Compression Molding)法、RTM(Resin Transfer Molding)法、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法などが挙げられる。