しかしながら、上記従来の特許文献1に記載された車両のドア構造にあっては、車両衝突時のラッチ解除防止用のカウンタウェイトによってドア構造が重量化して、車両の低燃費化に反したり、高コスト化するといった懸念があった。また、特許文献2に記載された車両のドア構造にあっては、カウンタウェイトを使用せずに重量の増加を防ぐことはできるものの、車両の衝突時に、補強ビームの取付ブラケットの湾曲状の上縁部に乗り上げた接続ロッド(連結ロッド)の下端部が、取付ブラケットの湾曲状の上縁部に沿って車両前方(補強ビーム長手方向)に滑って取付ブラケットから離脱し兼ねないという懸念があった。
また、特許文献3に記載された車両のドア構造にあっては、車両の衝突時に、ラッチプッシュロッド(連結ロッド)の途中に固定した金属板の突出部がドアアウタパネルの断面ハット状のリンフォースの広い内部空間の下端縁に係合するために、衝突の弾みで突出部がリンフォースの広い内部空間を上向きに大きく移動した場合に、突出部が再度下向きに移動した際にリンフォースの内部空間の下端縁から離脱し兼ねないという懸念があった。
また、特許文献4に記載された車両のドア構造にあっては、車両の衝突部に、車両内側に向けて変形したドアアウタパネルが、オープンロッド(連結ロッド)に固定された係合部材を車両内向きに押してドアサッシュの変位規制部材まで長い距離を水平に移動させなければならず、移動が不十分な場合はオープンロッドの下向きの変位規制を行うことができず、それを防ぐために係合部材を長く突出させた場合は、重量が増加してしまうという懸念があった。
また、特許文献4における車両の衝突時にオープンロッドの係合部材をドアアウタパネルとドアサッシュとの間に挟み込んだ状態でドアサッシュの変位規制部材に係合させることに関し、オープンロッドは周方向にある程度回転したり軸方向にある程度スライドするように支持されたものであるので、車両衝突時にオープンロッドの係合部材の位置が車両の前後方向や上下方向にずれやすく、その場合にドアサッシュの変位規制部材との係合がうまく行われにくいという懸念があった。
本発明は、上記した点に鑑み、車両の衝突時に、ドアアウタハンドルとラッチとを連結する連結ロッドのラッチ解除方向の移動を確実に阻止して、ドア側のラッチと車体側のストライカとの不意な係合解除の防止精度を高めることのできる車両のドア構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両のドア構造は、ドアアウトサイドハンドルとドアラッチ装置とを連結するドアラッチ開き用の連結ロッドに突出部材が設けられ、該連結ロッドよりもドアアウタパネル寄りに配置された板金部材に、該突出部材の突出先端に対向して孔部が貫通して設けられ、車両の衝突時に、該ドアアウタパネルが車両内側に変形して該板金部材が該ドアアウタパネルに押されて車両内側に移動した際に、該孔部が該突出部材に係合して、ドアラッチと車体側のストライカとの係合を解除する方向への該連結ロッドの移動が規制されることを特徴とする。
上記構成により、車両の衝突時に、突出部材が孔部に係合して孔部の下端に当接することで、突出部材及び連結ロッドの下方(ドアラッチとストライカとの係合解除方向)への移動が確実に規制される。突出部材が孔部に係合することで、突出部材の係合の確実性や係合位置(位置規制位置)の精度が高まり、ドアラッチとストライカとの係合解除が確実に防止される。孔部は矩形状であることが好ましい。ドアアウタパネルの変形に伴う車両内側への板金部材の移動が増大した時や、自車が他の車両に追突される位置や方向によってドアアウタパネルの変形方向が異なる時に、孔部の三方の内端すなわち上端、前端、後端によって突出部材の移動が規制されて、孔部の下端と突出部材との係合外れが防止され、突出部材及び連結ロッドの下方への移動が確実に規制される。孔部はプレス加工によって高い形状精度、高い位置精度で形成可能である。
請求項2に係る車両のドア構造は、請求項1記載の車両のドア構造において、前記板金部材が、前記ドアアウタパネルの面剛性を高めるためのリインフォースメントであることを特徴とする。
上記構成により、面剛性向上のためのリインフォースメントは、車両の衝突時にドアアウタパネルの変形に追従しやすく、確実に車両内側に移動して、孔部と突出部材とを確実に係合させる。リインフォースメントは、側面衝突時の衝撃を吸収しドアの変形を抑制するドアビーム(インパクトビームやインパクトバー)ではない。
請求項3に係る車両のドア構造は、請求項2記載の車両のドア構造において、前記リインフォースメントが、車両外側に向けて開いた断面ハット状に形成され、断面ハット状部分における車両内側の壁部に前記孔部を有していることを特徴とする。
上記構成により、リインフォースメントがドアアウタパネルに向けて開いた形状となっているため、車両衝突時のドアアウタパネルの変形をリインフォースメントが一層広い範囲で受けて車両内側に向けて確実に移動し、孔部と連結ロッドの突出部材との係合を一層確実に行わせる。リインフォースメントの車両外側を向く壁面は、ドアアウタパネルとの間に隙間を存して配置され、その隙間にマスチックシーラーが部分的に充填塗布されて、リインフォースメントがドアアウタパネルに接着され、ドアアウタパネルの面剛性が高められる。
請求項4に係る車両のドア構造は、請求項1〜3の何れかに記載の車両のドア構造において、前記突出部分が、車両側方から見て車両幅方向にドアサッシュと重なるように、該ドアサッシュと前記板金部材との間に配置されていることを特徴とする。
上記構成により、車両の衝突時に、連結ロッドとその突出部材が車両内側に向けて移動しようとしても、突出部材の突出先端とは反対側の端部(基端)がドアサッシュに当接して、車両内側への突出部材の移動がドアサッシュによって規制されて、板金部材の孔部と連結ロッドの突出部材との係合が一層確実に行われる。
請求項1記載の発明によれば、板金部材の孔部に連結ロッドの突出部材を係合させることで、孔部の四方の内端で突出部材の四方向への移動を規制して、ラッチ解除方向への連結ロッドの移動を確実に阻止して、ドア側のラッチと車体側のストライカとの不意な係合解除の防止精度を高めることができる。
請求項2記載の発明によれば、車両の衝突時に比較的剛性の低いリインフォースメントをドアアウタパネルの変形に追従させて車両内側に確実に移動させることができるので、孔部と連結ロッドの突出部材との係合を確実に行わせて、不意なラッチ解除を確実に防ぐことができる。
請求項3記載の発明によれば、リインフォースメントが車両外側に向けて開いた形状となっているので、車両の衝突時にリインフォースメントがドアアウタパネルの変形を広い範囲で受けて車両内側に向けて一層確実に移動して、孔部と連結ロッドの突出部材との係合を一層確実に行わせて、不意なラッチ解除を一層確実に防ぐことができる。
請求項4記載の発明によれば、車両の衝突時に、連結ロッドの突出部材の車両内側への移動をドアサッシュで規制して、板金部材の孔部と連結ロッドの突出部材との係合を一層確実に行わせて、不意なラッチ解除を一層確実に防ぐことができる。
図1〜図5は、本発明に係る車両のドア構造の一実施形態を示すものである。本実施形態では自動車のサイドドアとして車両右側のフロントドアについて説明する。本発明は車両左側のフロントドアや左右のリヤドアについても適用される。
図1は、サイドドア1の金属製のドアアウタパネル2を車両内側から見たものであり、ドアアウタパネル2のベルトライン3の後方下側にドアアウトサイドハンドル4が配設され、サイドドア1の窓枠5の後部サッシュ6から下方にドアサッシュ部(ドアサッシュ)7が延設され、アウトサイドハンドル4の下側においてドアサッシュ部7に対向して、不図示のドアインナパネルの車両外側の面に沿ってドアラッチ装置8がドアアウタパネル2とドアインナパネルとの間に配設され、ドアアウトサイドハンドル4の下側においてドアアウタパネル2の車両内側の面2aに沿ってドアアウタパネル2の凹み(ベカつき)防止用のリインフォースメント(以下単にリインフォースと言う)9が水平よりも少し前上がりに傾斜してドアアウタパネル2の後端側2bから前端側2cにかけて配設されている。
リインフォース9は薄板金属で断面ハット状にプレス成形され、アウトサイドハンドル4の下側に配置される短いリインフォース部分10と、短いリインフォース部分10の前端部に溶接又は接着等で固定されてドアアウタパネル2の前端側2cに向けて配置される長いリインフォース部分11とで構成されている。短いリインフォース部分10の後半側10aはドアラッチ装置8に対向して配置されている。本例のリインフォース9は車両衝突時のドアアウタパネル2の強度を高めるためのものではなく、ドアアウタパネル2の面剛性を上げて凹み(ベカつき)を防止するためのものであり、薄肉に形成されている。
図2に図1の矢視A図を示す如く、ドアアウトサイドハンドル4の車両外側の不図示のグリップ部に一体に続く枠状のアーム部12が車両内側に向けて突出し、アーム部12の上側にベルクランク13が車両前後方向に沿う軸部14で車両上下方向に回動自在に支持され、ベルクランク13の一端部(下端部)13aがアーム部12内に係合し、ベルクランク13の下端部13aの突出先端がアーム部12の車両内側の壁部12aの車両外側の面に当接し、ベルクランク13の他端部(上端部)13bの車両前後方向に沿う孔部13cに連結ロッド15の上端の折り曲げ部15aが回動自在に係合し、連結ロッド15はドアアウタパネル2とドアサッシュ部7との間において略車両上下方向に沿って配置され、連結ロッド15の下半部はリインフォース9の後側の短いリインフォース部分10とドアサッシュ部7との間に配置され、連結ロッド15の下端の折り曲げ部15b(図3)がドアラッチ装置8の不図示のラッチオープンレバーに係合している。
連結ロッド15に隣接してアウトサイドハンドル4のキーシリンダ16の回動操作でドア1を施錠解錠するための細い第二の連結ロッド17がラッチ装置8にかけて配設されている。第二の連結ロッド17については本発明とは無関係であるので説明を省略する。
本発明においては、アウトサイドハンドル4のベルクランク13とラッチ装置8とを連結する連結ロッド15の途中(長手方向中間部)に金属製の突出部材18(図2)を溶接等で固定して設け、突出部材18はリインフォース9の後側の短いリインフォース部分(以下単にリインフォースと言う)10に向けて突出し、車両の側面衝突時に突出部材18を進入係合させる矩形状の孔部19をリインフォース10に車両幅方向に貫通して設けている。
本例の突出部材18(図2)は金属板を打ち抜き且つ屈曲させて矩形状に形成され、車両外側に向かいリインフォース10の孔部19に対向して位置する一方の長い突出部18aと、断面円形の連結ロッド15の半周面に沿って固定される中間の屈曲部18bと、車両内側に向かう他方の短い突出部18cとで構成されている。長い突出部18aは、図3(図1のB−B縦断面図)に示す如く略正方形状ないしそれよりも横長に形成され、略水平な下端18d及び上端18eと略垂直な先端18fとを有している。各端18d〜18fは正確には各端面である。
図2の如く、車両の衝突時に突出部材18の長い突出部18aを係合させるリインフォース10の孔部19は、車両前後方向(リインフォース10の長手方向)に横長に形成され、長辺側の下端19aと上端19bと短辺側の前端19cと後端19dとを有している。各端19a〜10dは正確には各端面である。孔部19の下端19aと上端19bとの間隔は、連結ロッド15の突出部材18の下端18d(図3)と上端18eとの間隔よりも概ね1.5倍程度広く形成されている。
図2,図3の如く、突出部材18の突出先端18fはリインフォース10の孔部19に対向し、孔部19よりも車両内側の方向に少しの間隔をあけて離間して位置している。突出部材18は孔部19の高さ方向中間部に対向して位置し、本例においては、突出部材18の下端18dから孔部19の下端19aまでの垂直距離は、突出部材18の上端18eから孔部19の上端19bまでの垂直距離よりも大きく規定されている。突出部材18の突出方向の仮想線は孔部19の車両内側の開口(符号19で代用)にほぼ直交している。
リインフォース10は、上下(高さ)方向中央の壁部10bと、中央の壁部10bの上下に続く各傾斜壁部10cと、各傾斜壁部10cに続く上下のフランジ壁10dとで縦断面ハット状に構成され、中央の壁部10bはドアアウタパネル2の車両内側の面2aに対向し、ドアアウタパネル2との間に断面略台形状の空間20(図3)を有している。中央の壁部10bの後部側に孔部19が設けられ、孔部19はリインフォース10の内側の空間20に連通し、空間20内に、連結ロッド15に固定された突出部材18を収容可能である。上下のフランジ壁10dはマスチックシーラー21でドアアウタパネル2の内面2aに接着固定されている。孔部19よりも後方のフランジ壁10eは不図示のインナパネルの車両外側の面に溶接等で固定される。マスチックシーラー21は塗布時に弾性を有し、ドアパネル2の塗装時の熱で硬化して、リインフォース10(9)をドアアウタパネル2に固定する。
図2,図3において、サイドドア1は閉じられ、アウトサイドハンドル4の不図示のグリップは不図示のばね部材で車両内側に向けて付勢され、グリップのアーム部12は車両内側に向けて突出し、不図示のばね部材の付勢力でベルクランク13が軸部14を中心に図2で反時計回り(図3で時計回り)に回動し、連結ロッド15は上向きに付勢され、連結ロッド15に固定された突出部材18はリインフォース10の孔部19の高さ方向ほぼ中央部分に対向して孔部19よりも車両内側に離間して位置している。
また、図4に図1のC−C横断面図を示す如く、連結ロッド15に固定された突出部材18の長い突出部18aはリインフォース10の孔部19に向けてドアアウタパネル2の内面2aとは直交する方向に突出し、長い突出部18aの突出先端18fは孔部19との間に隙間22を存して対向し、突出部材18の車両内側に向かう短い突出部18cはドアサッシュ7に向けて突出し、短い突出部18cは横断面略コの字状のドアサッシュ7の車両外側の壁部7aに直交する方向に突出し、短い突出部18cの突出先端18c’はドアサッシュ7の車両外側の壁部7aとの間に隙間23を存して対向している。このように、ドアアウタパネル2とドアサッシュ7との間に突出部材18と、突出部材18を固定した連結ロッド15の固定部分15cとが配置されている。
ドアサッシュ7の内部には不図示のガラスランが配置され、ガラスランに沿って不図示の窓ガラスが不図示のウィンドレギュレータで昇降自在に配置される。ドアサッシュ7の車両内側には横断面略L字状のドアラッチ装置8の車両前後方向に沿う部分8aが隙間24を存して対向している。ドアラッチ装置8の車両前後方向に沿う部分8aの車両内側の面8bと車両幅方向に沿う部分8cの後端側の面8dとが金属製の不図示のドアインナパネルに固定され、リインフォース10の孔部19よりも後方の後端側のフランジ壁10eの車両内側の面(符号10eで代用)とドアアウタパネル2の後端側の車両内側の面2aとが不図示のドアインナパネルの車両外側の面に接着等で固定される。
図4の如く、リインフォース10の孔部19は、リインフォース10の高さ方向中央の壁部10bにおける車両外側に向けて凹んだ壁部分10b’に設けられ、凹んだ壁部分10b’は前後の傾斜壁10e,10fで中央の壁部10bと後端側のフランジ壁10eに続いている。凹んだ壁部分10b’に対向して突出部材18と連結ロッド15,17とドアサッシュ7とドアラッチ装置8とが車両内側に向けて順次配置されている。車両の衝突時に、連結ロッド15を凹んだ壁部分10b’に収容ないし当接させることで、連結ロッド15の突出部材18の車両前後方向の位置ずれが防止され、突出部材18と孔部19との係合性が高まる。
図5の如く、車両の側面衝突時に、衝突のエネルギでドアアウタパネル2が車両内側に向けて矢印Fの如く押し込まれて変形し(変形部を符号2bで示す)、ドアアウタパネル2に固定されたリインフォース10がドアアウタパネル2と一体に車両内側に向けて押し込まれ、連結ロッド15に固定された突出部材18の長い突出部18aがリインフォース10の孔部19に進入係合する(正確にはリインフォース10の孔部19が突出部材18の長い突出部18aに係合する)。
車両の側面衝突時に、図2,図3のアウトサイドハンドル4のグリップには、衝撃によって生じる慣性力で外向きに引き出す力が作用し、ベルクランク13が軸部14を中心に図2で時計回り(図3で反時計回り)に回動し、ベルクランク13に水平な上端部15aを連結された連結ロッド15が、ドアラッチ装置8のラッチと車体側のストライカの係合を解除する方向(ラッチ解除方向)に押し下げられようとするが、図5の如く、連結ロッド15に固定された突出部材18の車両外側を向く長い突出部18aの下端18dがリインフォース10の孔部19の下端19aに当接して、連結ロッド15の矢印D方向のそれ以上の押し下げが阻止され、ラッチとストライカの不意な係合解除が防止される。
また、突出部材18の車両内側を向く短い突出部18cの突出先端18c’がドアサッシュ7の車両外側の壁面7aに当接して、それ以上の突出部材18の車両内側への移動が阻止され、突出部材18の車両外側を向く長い突出部18aとリインフォース10の孔部19との係合状態が維持され、連結ロッド15のラッチ解除方向(矢印D方向)の押し下げが確実に阻止される。
以下に本発明の特徴部分について詳細に説明する。
本発明は、前記従来の特許文献3,4におけると同様に、金属製の連結ロッド15に設けた突出部材18を相手側に引っ掛ける(係合させる)ことで、ドア側のラッチと車体側のストライカとの不意な係合解除を阻止するものであるが、突出部材18を引っ掛ける相手部品は、前記従来の特許文献におけるような板金部材の上縁端末や断面ハット形状部の下壁ではなく、板金部材(リインフォース)10に穿った孔部19であることを特徴としている。
従来における板金部材の上縁端末や断面ハット形状部の下壁は加工製造上、精度を高めることが難しいが、本発明の板金部材10の孔部19は加工による精度が安定する。これにより、ドア側のラッチと車体側のストライカとの不意な係合解除を確実に阻止するための孔部19と突出部材18のレイアウト(配置)が精度良く且つ簡単に行われる。
基本的な原理は、車両の側面衝突時にサイドドア1が車両内側に変形し、補強用の板金部材(リインフォース)10が同じく車両内側に押し込まれ、金属製の連結ロッド15に設けた突出部材18を相手側(リインフォース10の孔部19)に引っ掛けることで、ラッチとストライカの係合解除方向への連結ロッドの移動を阻止するものである。従って、前記従来の特許文献4に記載されたように、連結ロッド15に固定された突出部材18は、車両内側から見た状態で、ドアサッシュ7と重なっていた方が、ドアサッシュ7と板金部材10で連結ロッド15の突出部材18を挟み込む形となるので、より効果が確実に発揮される。
しかし、車両の側面衝突時のエネルギは強大で、サイドドア1の変形を制御し、ドアサッシュ1と板金部材10で連結ロッド15の突出部材18を確実に挟み込むレイアウト設定にすることは、例えば特許文献4記載の車両のドア構造においては困難であった。特に連結ロッド15は、上下をそれぞれドアアウトサイドハンドル4、ドアラッチ装置8と連結しているが、その連結状態は回転支持やスライド支持であり、位置や方向を確実に規制している構造ではないことが多い。そのため、連結ロッド15はサイドドア1内において正規位置からの許容されるズレが比較的大きく、また、連結ロッド15は回転方向(周方向)にも自由度があるため、連結ロッド15に設けた突出部材18の先端18fが車両の側面衝突時にどのような挙動をするかを制御するのは難しかった。
例えば、車両の側面衝突時の挙動として、他の車両が自車のドアアウトサイドハンドル4より下方に衝突した場合、ドアラッチ装置8が車両内側に押し込まれ、一方、アウトサイドハンドル4は衝突されていないのでその場に留まることで、それぞれの部品4,8の相対位置が離れ、連結ロッド15が上方に引っ張られる挙動を示すことが衝突初期にしばしば見られる。この挙動自体はラッチとストライカの係合解除方向に連結ロッド15を変位させる動きではないため、直接、ラッチとストライカの係合解除につながる訳ではないが、一旦上方に引っ張られた連結ロッド15は、その後の衝突エネルギの伝播により今度は下方の、ラッチとストライカの係合解除方向に移動する(押される)場合がある。
常に車両内側に押し込まれながら一度上方に引き上げられ、その後下方に移動する(押される)挙動を示す連結ロッド15の突出部材18の突出部18aを確実に引っ掛けるように相手部品(突出部材18を係合させる相手部品)をレイアウトすることは、前記従来の車両のドア構造では困難であった。本発明では、連結ロッド15の突出部材18を引っ掛ける方向が連結ロッド15の下方への移動だけではなく、連結ロッド15の上方への移動においても、孔部19の上辺(上端)19bと突出部材18の上辺(上端)18eを引っ掛ける(当接させる)ことで可能となり、一層連結ロッド15の動きを規制でき、連結ロッド15の動きを最小限に抑えることができる。そのため、ラッチとストライカの係合解除を阻止するための、連結ロッド15を引っ掛けて止めることの確実性が増し、実際に起こり得るさまざまな形態での側面衝突に対する、ラッチとストライカの係合解除の阻止の信頼性が向上する。
孔部19をあけて連結ロッド15の突出部材18を引っ掛ける役割をする板金部材10は、その機能(ラッチとストライカの係合解除の阻止)のためだけに設定するのではなく、ドアアウタパネル2の凹み(ベカつき)の補強のためにも使用することができる。連結ロッド15の突出部材18を引っ掛けるためには、よりドアアウタパネル2と同期して側面衝突時のエネルギを受けてスムーズに車両内側に押し込まれる必要があるため、板金部材10自体は強固である必要がなく、薄い鋼板で十分である。
薄い鋼板(板金部材)10の断面はハット型とし、その上下がドアアウタパネル2に近く、中央がドアアウタパネル2から離れたハット型とすることが好ましい。そのハット形状部の中央部に孔部19を設ける。連結ロッド15の突出部材18と板金部材10の孔部19とは通常使用(操作)時には引っ掛からないように設定する。連結ロッド15の動きの車両前後方向へのばらつきを考慮して、孔部19は四角であることが好ましい。ドアアウタパネル2に近い板金部材10の上下のフランジ部10dはマスチックシーラー21でドアアウタパネル2と接着することで、側面衝突時に車両内側へ押し込まれるドアアウタパネル2の挙動と同期して、より早く所定の引っ掛ける位置まで移動させることができる。
また、断面ハット型のリインフォース10を上下方向で対称形状とすることで、車両の左右のドア1に共通使用可能となる。また、ドア1の前後方向で凹み(ベカつき)防止のリインフォース9を分割し、後方のリインフォース10を上述の断面ハット形状にしておくことで、前方のリインフォース11の形状を変化させて、ドア1の大きさが異なる他のモデルでも共通使用することができる。
なお、上記実施形態においては、金属製の連結ロッド15に同じく金属製の突出部材18を溶接したが、連結ロッド15に固定する突出部材18は金属製でなくともよく、相手側の孔部19に引っ掛けて連結ロッド15の動きを止めるための強度を有していれば、樹脂製でもその他の材料でも問題はない。また、連結ロッド15の長手方向中間部を略コの字状に屈曲させて突出部材18とすることも可能である。また、板金部材10の孔部19は矩形状であることが好ましいが、連結ロッド15の突出部材18の四方向(上下前後)の移動を阻止できれば、丸孔や三角孔等でも使用可能である。
上記実施形態により、以下の効果が奏される。第一に、ドアアウトサイドハンドル4とドアラッチ装置8とを連結する連結ロッド15に突出部材18を設け、車両の衝突時に突出部材18と引っ掛かるように孔部19をあけた板金部材10を車両前後もしくは上下方向に設定することで、車両の側面衝突時のドア1の変形により、連結ロッド15の突出部材18を板金部材10の孔部19に引っ掛けて、連結ロッド15の挙動を抑え込んで制御することができる。
第二に、連結ロッド15の突出部材18を車両側方から見てドアサッシュ7と重なるように設定したことで、孔部19のあいた板金部材10とドアサッシュ7とで連結ロッド15やその突出部材18を挟み込んで、突出部材18を孔部19に引っ掛ける挙動の確実性と信頼性を向上させることができる。第三に、孔部19をあけた板金部材10を上下方向又は前後方向で対称な形状とし、また、ドア1の前後方向に渡って配置する場合は分割して最小の形状とすることで、板金部材10を左右のドア1で共通使用したり、他モデルでも共通使用することができ、板金部材10のコスト低減を図ることができる。