JP5903220B2 - 微粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、凝集剤の使用量を抑制しつつ、水性溶媒中で合成した微粒子を効率よく分離回収でき、且つ、乾燥後の微粒子を容易に1次粒子に解砕でき、生産性が高い微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
前記微粒子重合工程は、重合によって微粒子含有液を調製する工程であり、この微粒子含有液は通常水性溶媒中で単量体を重合することにより調製される。なお、微粒子含有液とは、微粒子を合成した後の重合反応液、又は重合反応液中の水性溶媒量を適宜加減したものを指す。
前記水性溶媒は、水を50質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。前記水性溶媒は、水溶性有機溶媒を含んでもよい。特に、粒子径3μm以下の微粒子を製造する場合には、水溶性有機溶媒を含むことが好ましい。この場合、水溶性有機溶媒の含有量は水性溶媒100質量%中、1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、5質量%以下が好ましく、より好ましくは4質量%以下である。水溶性有機溶媒は、25℃の水100質量部に1質量部以上溶解する。前記水溶性有機溶媒としては、例えば、低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、沸点が低いため揮発しやすく、乾燥後の粒子に残存しにくい点と、取扱いの容易さの点で、炭素数4以下のアルコールが好ましい。炭素数4以下の低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールが挙げられる。特に炭素数が3であるIPA、n−プロピルアルコールが好ましく、中でも、沸点のより低いIPAは重合体微粒子を乾燥させる際に揮発しやすいため、最も好ましい。
懸濁重合とは、一般的には、単量体成分又は単量体成分及び非単量体成分を含有する単量体組成物を、水性溶媒に分散、懸濁させることにより得られた液滴懸濁体組成物を重合することにより、重合体粒子が水中に分散含有されてなる分散液(微粒子含有液)を得る方法である。液滴懸濁体組成物を調製する際には、単量体組成物を水中に懸濁させる手段として従来公知の分散、懸濁方法、装置を採用することができる。例えば、T.K.ホモミクサー、ラインミキサー(例えばエバラマイルダー(登録商標))等の高速攪拌機が使用できる。ここで、上記単量体組成物の液滴の粒子径を制御し、安定化させるためには、液滴懸濁体組成物の調製時に、分散安定剤を共存させることが好ましい。
前記凝集工程では、微粒子含有液に凝集剤を加える。微粒子含有液としては、重合反応液、又は重合反応液中の水性溶媒量を適宜加減したもののいずれでもよいが、重合反応液をそのまま用いることが好ましい。また、重合反応液中の水性溶媒量を加減する方法としては、例えば、重合反応液にさらに水性溶媒を添加したり、重合反応液を加熱、減圧して、水性溶媒の一部を除去すればよい。
無機系アンモニウム塩を存在させることで、粒子表面の帯電量が低下するため、微粒子の凝集性が向上し、固液分離が容易となる。また、無機系アンモニウム塩を存在させることで、凝集、乾燥後の粒子を解砕しやすくなる理由は必ずしも明らかでないが、微粒子を乾燥する際に、無機系アンモニウム塩が粒子表面に存在することで、粒子間に適度な隙間が作られ、微粒子同士が結着することが抑制され、乾燥後に容易に1次粒子に解砕できると考えられる。
前記固液分離工程では、微粒子を沈降させて、上澄み液を除去して微粒子のケーキを得る。上述したように、本発明では、凝集工程において無機系アンモニウム塩を存在させているため、微粒子の凝集性(沈降性)が高まり、固液分離が効率よく行える。
微粒子を沈降させる方法としては、自然沈降法、遠心沈降法が挙げられる。これらの中でも、より効率よく微粒子を沈降できることから遠心沈降法が好適である。
遠心沈降を採用する場合、印加される遠心力(重力加速度)は、1000G以上が好ましく、より好ましくは1500G以上、さらに好ましくは1800G以上である。印加される遠心力が大きい程、分離能が向上し、より微細な粒子も効率よく回収できる。なお、遠心力の上限は特に限定されないが、例えば、4000G(好ましくは3000G、より好ましくは2500G)等の遠心力が小さい程、本発明の効果が顕著となる。なお、遠心沈降を採用する場合、遠心力を印加する時間は、適宜調整すればよいが、通常1分間〜30分間である。
前記乾燥工程では、得られたケーキを乾燥する。乾燥方法は特に限定されず、自然乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。乾燥後の微粒子は、必要に応じて解砕を施してもよい。
重合反応液を、界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標)N−08」)の1%水溶液により希釈したものを測定試料として、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)を用いて、30000個の粒子の粒子径を測定し、体積基準の平均粒子径を求めた。
製造例で得られた微粒子について、ウルトラピクノメーター1000(ユアサアイオニクス社製)を用いて真密度を測定した。
試料(ケーキ又は上澄み液)を質量既知のアルミカップに入れ、精密天秤で試料質量を測定した。このアルミカップを130℃に熱したホットプレート上で1時間加熱した。加熱後アルミカップ中の乾燥残渣の質量を精密天秤で秤量した。下記式により試料中の固形分量を求めた。
固形分量(%)=100×加熱後の乾燥残渣質量/加熱前の試料質量
容器に解砕後の微粒子5gを量り取り、ここにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBSNa)15質量%水溶液10g、イオン交換水100gを加えた。超音波洗浄器を用いて、容器に5分間超音波を照射して微粒子を分散させた後、この微粒子分散液を目開き75μmの金網ふるいに通した。金網ふるい上に残留したふるい上微粒子を乾燥させ、その質量を測定し、下記式により粗大粒子量を求めた。
粗大粒子量(%)=100×ふるい上微粒子の総質量(g)/5(g)
シェル用懸濁液の調整
フラスコにポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標)NF−08」)0.35部を溶解させておいた脱イオン水溶液181部を仕込み、さらにスチレン(St)34部とDVB−570(ジビニルベンゼン純度57%品、新日鐵化学社製)2.5部との混合物を加えた。T.K.ホモミクサー(懸垂型;プライミクス社製)を用いて、フラスコ中の混合液を4500rpmで2分間攪拌して、シェル用懸濁液を調製した。
別のフラスコに前記ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩2.4部を溶解させておいた脱イオン水溶液331部を仕込んだ。
メチルメタクリレート(MMA)216部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)24部、イソプロピルアルコール12部、ラウリルパーオキサイド4.8部をよく攪拌してコア用混合物を調製し、これを上記フラスコに加えた。T.K.ホモミクサーを用いて、7000rpmで20分間攪拌して、フラスコ中の混合液を均一な懸濁液とした。この懸濁液を攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器、温度計、及び滴下ロートを備えたフラスコに移し、脱イオン水600部をさらに加えた。窒素ガスを吹き込みながら、温度を65℃に設定した油浴にフラスコを漬けて、フラスコ内を昇温し、コアの重合を開始した。
コアの重合を開始した後、フラスコ内温が油浴温度(65℃)を超えてピーク温度に達し、極大値を示した直後に、滴下ロートを用いて上記シェル用懸濁液を滴下した。滴下終了後に油浴温度を75℃に設定してフラスコ内温を75℃に昇温し、1時間反応させた。その後、さらに油浴温度を85℃に設定してフラスコ内温を85℃に昇温し、この温度で3時間攪拌を続けた後、冷却した。反応終了後の微粒子懸濁液(重合反応液)について、コールターマルチサイザーで測定したところ、生成した微粒子の体積平均粒子径は1.2μmであった。重合反応液中の微粒子濃度は17.5質量%であった。
反応終了後の微粒子懸濁液(pH4.2)を15℃に冷却した。冷却した微粒子懸濁液に5%NaOHを11.9部投入し、30秒間攪拌した後、直ちに0.3%硫酸アルミニウム水溶液(硫酸バンド)を凝集剤として46部(微粒子100質量部に対して、硫酸アルミニウム0.05質量部)投入し30分間攪拌し、さらに2%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液40部を投入し30分間攪拌して微粒子を凝集させた。
なお、凝集剤投入時の微粒子懸濁液のpHは11.5であり、凝集剤を投入して30分攪拌後の液のpHは8.5、APSを投入して30分攪拌後の液のpHは4.7であった。
微粒子を凝集させた液を、卓上小型遠心分離機(「NT−4」、松本製器製)を使用して、ケーキと上澄み液に遠心分離した。遠心分離は、2000Gで、5分間行った。ケーキ、上澄み液の固形分は、それぞれ50質量%、0.2質量%であった。
得られたケーキを温度80℃に設定した熱風乾燥機で8時間(水分量が0.1質量%以下になるまで)乾燥し、ジェット粉砕機(日本ニューマチック社製、「ラボジェット(登録商標)」)を用いて、粉砕圧0.1MPaで、約1時間かけて解砕して微粒子を得た。得られた微粒子について、粗大粒子量を測定した。
製造例1のシェルの重合において、シェル用懸濁液を滴下した後に油浴温度を75℃に設定してフラスコ内温を75℃に昇温し、1時間反応させた。その後、さらに油浴温度を85℃に設定してフラスコ内温を85℃に昇温し、この温度で2時間攪拌を続け、さらに2%APS水溶液40部を添加し、さらに85℃で1時間攪拌を続けた後、冷却した。反応終了後の微粒子懸濁液(重合反応液)について、コールターマルチサイザーで測定したところ、生成した微粒子の体積平均粒子径は1.2μmであった。重合反応液中の微粒子濃度は17.5質量%であった。
なお、凝集剤投入時の微粒子懸濁液のpHは9.1であり、凝集剤を投入して30分攪拌後の液のpHは4.7であった。
微粒子を凝集させた液を、製造例1と同様にして、ケーキと上澄み液に遠心分離した。ケーキ、上澄み液の固形分は、それぞれ50質量%、0.2質量%であった。得られたケーキを製造例1と同様にして乾燥、解砕し、粗大粒子量を測定した。
製造例1の粒子の凝集操作において、2%APS水溶液を添加しなかったこと以外は、製造例1と同様にして微粒子を凝集させた。なお、凝集剤投入時の微粒子懸濁液のpHは11.5であり、凝集剤を投入して30分攪拌後の液のpHは8.5であった。微粒子を凝集させた液を、製造例1と同様にして、ケーキと上澄み液に遠心分離した。ケーキ、上澄み液の固形分は、それぞれ45質量%、0.5質量%であった。得られたケーキを製造例1と同様にして乾燥、解砕し、粗大粒子量を測定した。
製造例1の粒子の凝集操作において、0.3%硫酸アルミニウム水溶液46部に代えて、0.6%硫酸アルミニウム水溶液46部(微粒子100質量部に対して、硫酸アルミニウム0.10質量部)を投入したこと、2%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液40部を投入しなかったこと以外は製造例1と同様にして微粒子を凝集させた。なお、凝集剤投入時の微粒子懸濁液のpHは11.5であり、凝集剤を投入して30分攪拌後の液のpHは7.2であった。微粒子を凝集させた液を、製造例1と同様にして、ケーキと上澄み液に遠心分離した。ケーキ、上澄み液の固形分は、それぞれ45質量%、0.2質量%であった。得られたケーキを製造例1と同様にして解砕し、粗大粒子量を測定した。
製造例4は、凝集剤量を増加させた場合であるが、製造例3に比べて、上澄み液に残存する固形分量を低減できている。しかし、乾燥、解砕後の粗大粒子量が著しく増大しており、乾燥時に微粒子同士が強固に結着してしまい、1次粒子に解砕することが困難であることがわかる。
Claims (8)
- 水性溶媒中で単量体を重合し、微粒子含有液を調製する重合工程、
前記微粒子含有液に、凝集剤を添加する凝集工程、
凝集した微粒子を沈降させて、ケーキを得る固液分離工程、及び、
得られたケーキを乾燥する乾燥工程を含む微粒子の製造方法であって、
前記凝集工程において、無機系アンモニウム塩と凝集剤との質量比(無機系アンモニウ
ム塩/凝集剤)を1.0以上として、微粒子含有液に無機系アンモニウム塩を存在させる
とともに、
凝集剤としてアルミニウム塩、鉄塩、2価以上の金属錯体から選ばれる無機系凝集剤又
は高分子凝集剤を用いることを特徴とする微粒子の製造方法。 - 前記微粒子含有液中の微粒子の体積平均粒子径が、3μm以下である請求項1に記載の
微粒子の製造方法。 - 水性溶媒中でラジカル重合可能なビニル基含有単量体を重合し、微粒子含有液を調製す
る重合工程、
前記微粒子含有液に、凝集剤を添加する凝集工程、
凝集した微粒子を沈降させて、ケーキを得る固液分離工程、及び、
得られたケーキを乾燥する乾燥工程を含む微粒子の製造方法であって、
前記微粒子含有液中の微粒子の体積平均粒子径が、3μm以下であり、
前記凝集工程において、無機系アンモニウム塩と凝集剤との質量比(無機系アンモニウ
ム塩/凝集剤)を1.0以上として、微粒子含有液に無機系アンモニウム塩を存在させることを特徴とする微粒子の製造方法。 - 前記凝集剤の使用量を微粒子100質量部に対して1質量部以下とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
- 前記無機系アンモニウム塩が、過硫酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム及び炭酸アンモニウムよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
- 前記凝集剤が、無機系凝集剤である請求項1〜5のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
- 前記微粒子含有液が、界面活性剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
- 前記凝集工程において、前記微粒子含有液のpHを11以上に調整した後、前記凝集剤を添加する請求項1〜7のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
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