JP4692330B2 - 重合トナーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において静電潜像を現像するために用いられる重合トナーの製造方法に関する。
静電潜像をトナーで現像することで所望の画像を形成する方法が広く実施されている。例えば、電子写真法では、感光体に形成された静電潜像を、着色樹脂粒子に必要に応じて外添剤やキャリア等の他の粒子を配合してなるトナーで現像してトナー像を形成し、次いで、紙やOHPシート等の記録材に該トナー像を転写した後、トナーを定着させて印刷物を得る。
近年、電子写真法を用いた複合機、ファクシミリ、及びプリンター等の画像形成装置に対し、カラー化のニーズが高まってきている。カラー印刷では、写真等の高解像度且つ鮮明な色調の再現が求められる画像の印刷も行うことから、それに対応しうるカラートナーが求められている。
また、このようなトナーに対しては、温度や湿度などの環境の変化による画質劣化防止の観点からの環境安定性や、印刷コストの低減の観点から印字耐久性、消費電力低減の観点から低温定着性等、様々な特性が要求されている。
トナーの面から解像度を高めるには、良好なドット再現性と転写性を両立できることから、小粒径で球形のトナーが適している。そのようなトナーとして、着色剤や重合性単量体を含有する重合性単量体組成物を重合することによって製造するトナー(以下このような製造方法を重合法、その方法により得られるトナーを重合トナーと称することがある。)が提案されている。従来の粉砕法では、製造されたトナーの粒形分布が広く、製造コストやエネルギー消費等の面から生産効率が悪く、特に粒径の小さいトナーを製造する際には、収率が著しく低下する。これに対し、重合法は、球形のトナーを容易に製造でき、且つ粒径分布をシャープにできることから、上述の高解像度化の要求に応えることができる。
重合法の範疇に属するトナー製造方法としては、懸濁重合法、乳化重合凝集法などが挙げられる。
懸濁重合法では、まず、重合性単量体、着色剤、及び必要に応じてその他の添加物を混合して、重合性単量体組成物とし、それを、分散安定化剤を有する水系媒体中に分散する。次に、重合性単量体組成物が分散した水系媒体を、高速攪拌機等を用い、高いシェアをかけることにより、重合性単量体組成物の液滴形成を行なう。その後、液滴形成された重合性単量体組成物が分散した水系媒体を重合開始剤の存在下に重合し、濾過材による濾過、洗浄、乾燥を経て、着色樹脂粒子を得る。さらに、この着色樹脂粒子に、キャリアや無機微粒子等の外添剤を混合し、重合トナーとしている。
上述したように、重合法によって着色樹脂粒子を形成する場合には、粉砕法に比べ、粒子を形成する段階(重合法では液滴形成及び重合を行う段階、一方、粉砕法では粉砕を行う段階)においてシャープな粒径分布にできる。
しかし、重合トナーの製造において、着色樹脂粒子の重合の際に、目的とする着色樹脂粒子のほかに、サブミクロンオーダーの着色剤の含まれていない微小な樹脂粒子が副生してしまう(本発明では、以下、この副生する微小な樹脂粒子のことを、副生微粒子ともいう。)。
このような副生微粒子が発生すると、得られた着色樹脂粒子を水系媒体から濾過する際に、遊離した副生微粒子の一部が濾過材に目詰まりし、濾過速度を低下させたり、脱水が不十分になるなど、脱水不良を起こすという問題がある。
また、副生微粒子を多く含んだ着色樹脂粒子から重合トナーを製造し、その重合トナーを印刷に用いると、副生微粒子は粒径が非常に小さいことから付着力が大きく、現像機内の部材に付着しやすい。多数枚の印字を行なうと、この付着した副生微粒子が次第に蓄積し、部材にフィルミング(固着)する。現像ブレードにフィルミングした場合、現像ロール上の均一なトナー層形成が出来なくなり、画像に縦スジが発生しやすくなる。現像ロールや感光体にフィルミングした場合、紙等の転写材上にかぶりが発生し、トナーの耐久性低下をもたらす。
このため、トナーの製造工程において、副生微粒子の発生を抑制する方法、或いは、副生微粒子を効率良く除去する方法の開発が望まれている。
副生微粒子の発生を防止する方法として、特許文献1には、重合性単量体、着色剤、及び、該重合性単量体に可溶でかつ水系媒体に可溶な重合禁止剤を含有する、重合性単量体組成物を、水系媒体中で懸濁させたのち、重合してトナーを製造する方法が提案されている。しかし、この方法では、用いる着色剤によっては、副生微粒子の発生を防止することが出来ない場合があり、副生微粒子はそのままトナーに含有され、その結果得られるトナーは、印字耐久性が劣っているという問題があった。
一方、重合後に副生微粒子を除去する方法として、特許文献2には、樹脂粒子と着色剤粒子を水系媒体中で融着して着色樹脂粒子を生成させた後、そのまま直接、外側回転筒及び該外側回転筒内に相対的に回転自在に設けられたスクリューコンベアを有するデカンタ型遠心分離機を用いて該着色樹脂粒子を濾別する方法が開示されている。しかし、この方法では、着色樹脂粒子に付着した副生微粒子の除去が、ある程度は、可能であるが、不十分であった。
また、特許文献3には、重合後の着色樹脂粒子の分散液から、効率的な固液分離により、水分含有率が小さく、副生微粒子が除去された着色樹脂粒子を得る製造方法として、酸洗浄後の着色樹脂粒子の分散液を、そのまま直接、スクリュー式縦型遠心分離機を用い、その際の遠心力及び遠心回転の条件を規定して固液分離を行う方法が開示されている。しかし、この方法によっても、着色樹脂粒子に付着した副生微粒子の除去が、不十分であった。
特開平5−100484号公報 特開2003−131426号公報 特開2004−133326号公報
本発明の課題は、重合時に発生し着色樹脂粒子に付着した副生微粒子が極めて少なく、耐久印字を行なっても、フィルミングが起こらず耐久性が良い、重合トナーを安定的かつ効率良く製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討したところ、重合工程により得られた反応生成液に界面活性剤を添加して洗浄することによって、副生微粒子を効率良く除去することが可能となり、副生微粒子の残留が非常に少ない着色樹脂粒子が得られるという知見を得た。
すなわち本発明は、重合性単量体及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含有する水系媒体中に分散させた状態で重合することにより着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)を得る重合工程、及び該重合工程で得られた着色樹脂粒子を洗浄する洗浄工程を含む重合トナーの製造方法において、
該洗浄工程が、界面活性剤洗浄工程、該界面活性剤洗浄工程後の水洗浄工程、及び該水洗浄工程後の脱水工程を有し、
該界面活性剤洗浄工程において、該重合工程により得られた着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)に界面活性剤を添加した後、該水系分散液(1)から、液体サイクロン、及び/又はデカンタ型遠心分離機を用いて液相を分離して界面活性剤洗浄した着色樹脂粒子を得て、
該水洗浄工程において、該界面活性剤洗浄した着色樹脂粒子を水系媒体に分散させて水系分散液(2)を調製した後、該水系分散液(2)を、ベルトフィルター、ロータリーフィルター、及びフィルタープレスからなる群より選ばれる少なくとも1つを用いて濾過して液相を分離して水洗浄した着色樹脂粒子を得て、
該脱水工程において、該水洗浄した着色樹脂粒子そのものを脱水するか、又は該着色樹脂粒子を水系媒体に分散させて水系分散液(3)を調製した後、該水系分散液(3)を脱水することにより、脱水した着色樹脂粒子を得ることを特徴とする重合トナーの製造方法である。
本発明においては、洗浄工程中に界面活性剤洗浄工程を設ける。該界面活性剤洗浄工程においては、重合工程により得られた着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)に界面活性剤を添加した後、該水系分散液(1)から液相を分離して界面活性剤洗浄することによって、大量の副生微粒子を容易に除去し、その残留を非常に少なくすることができる。
重合工程により得られた着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)に界面活性剤を添加することによって、着色樹脂粒子の表面に付着していた副生微粒子が液相中に脱離し、再付着を起こさずに安定な浮遊状態を維持するため、該水系分散液(1)の固液分離を行うと、大量の副生微粒子を含有する液相を容易に分離、除去することができ、副生微粒子の残留が非常に少ない着色樹脂粒子を回収できる。
また、界面活性剤洗浄工程においては、固液分離処理される分散液中に多量の副生微粒子が存在するので、濾過を行う方法では濾過材の目詰まりが起こりやすい。そのため、遠心力をかけた強制的沈殿を行う液体サイクロン、及び/又はデカンタ型遠心分離機を用いることにより、副生微粒子を効率良く除去することができる。
さらに、水洗浄工程においては、該水洗浄工程で洗浄される水系分散液は、すでに副生微粒子の混在量が非常に少なくなっているので、濾過原理に基づく分離方式又は分離装置を用いるとしても、濾過材の目詰まりは生じ難い。そのため、濾過原理を利用したベルトフィルター、ロータリーフィルター、及びフィルタープレスからなる群より選ばれる少なくとも1つを用いることにより、洗浄作業を効率良く行うことができる。
上記の重合トナー製造方法においては、該重合工程後、且つ、該水洗浄工程前に、上記分散安定化剤を除去する分散安定化剤除去工程をさらに含んでいてもよく、該分散安定化剤除去工程は、該界面活性剤洗浄工程とは別個独立して、又は該界面活性剤洗浄工程と同時並行に行われる。
上記製造方法の界面活性剤洗浄工程においては、重合工程により得られた着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)にさらに分散安定化剤を溶解させる成分を添加した後、該水系分散液(1)から液相を分離することにより、該界面活性剤洗浄工程と同時並行に、分散安定化剤除去工程を行うことができる。
この場合は、界面活性剤洗浄工程で必要な固液分離と、分散安定化剤除去工程で必要な固液分離を一つの固液分離作業で行なうので、作業の効率がよい。
該界面活性剤洗浄工程において用いる界面活性剤の添加量が、水系分散液(1)に含まれる固形分重量100重量部に対して、0.01〜0.4重量部の範囲にあることが好ましい。
上記製造方法の脱水工程においては、該着色樹脂粒子又は該水系分散液(3)に、遠心力をかけた強制的濾過を行って脱水することが好ましい。より具体的な分離方式又は分離装置としては、例えば、サイホンピーラー型遠心分離機を用いることができる
本発明では、着色樹脂粒子中に混在する副生微粒子の量を非常に少なくしてから脱水工程を行うので、脱水装置の濾過材の目詰まり、及び脱水不良が極めて起こり難い。
本発明によれば、洗浄工程により得られた着色樹脂粒子1個あたりの表面に存在する、粒子径50nm〜300nmの副生微粒子の個数(副生微粒子数)を40個以下とすることも可能である。
本発明は、洗浄工程において、界面活性剤を用いて洗浄することを特徴とし、トナーの製造方法のなかでも重合法に属する手法全般に適用できるが、特に、懸濁重合法により得られた着色樹脂粒子を洗浄するために好適に用いられる。
上記製造方法の界面活性剤洗浄工程においては、該デカンタ型遠心分離機を用い、遠心力1000〜3000Gの範囲内、且つ、外側回転筒とスクリューコンベアの回転数の差が1分間当たり5〜30回転の範囲内の条件下で該水系分散液(1)から該液相を分離することが好ましい。
本発明の重合トナーの製造方法によれば、重合工程により得られた着色樹脂粒子を洗浄する工程で、大量の副生微粒子を効率良く除去することができる。
そのため、洗浄工程の最後に行われる脱水工程において脱水装置の濾過材の目詰まり、及び脱水不良を起こしにくくなり、トナーの生産性が向上する。
さらに、副生微粒子の混在量が非常に少ない重合トナーが得られるため、印字耐久性が向上する。
従って、本発明の製造方法によれば、優れた印字性能を有する重合トナーを安定的かつ効率良く製造することができる。
本発明の重合トナー製造方法は、重合性単量体及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含有する水系媒体中に分散させた状態で重合することにより着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)を得る重合工程、及び該重合工程で得られた着色樹脂粒子を洗浄する洗浄工程を含む重合トナーの製造方法において、
該洗浄工程が、界面活性剤洗浄工程、該界面活性剤洗浄工程後の水洗浄工程、及び該水洗浄工程後の脱水工程を有し、
該界面活性剤洗浄工程において、該重合工程により得られた着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)に界面活性剤を添加した後、該水系分散液(1)から液相を分離して界面活性剤洗浄した着色樹脂粒子を得て、
該水洗浄工程において、該界面活性剤洗浄した着色樹脂粒子を水系媒体に分散させて水系分散液(2)を調製した後、該水系分散液(2)から液相を分離して水洗浄した着色樹脂粒子を得て、
該脱水工程において、該水洗浄した着色樹脂粒子そのものを脱水するか、又は該着色樹脂粒子を水系媒体に分散させて水系分散液(3)を調製した後、該水系分散液(3)を脱水することにより、脱水した着色樹脂粒子を得ることを特徴とする。
重合トナーの製造方法においては、重合反応を含む処理手順により着色樹脂粒子を形成する重合工程、該重合工程後に、分散安定化剤、副生微粒子、或いは未反応単量体等の不純物を除去する洗浄工程、及び、該洗浄工程後に、水系媒体を除去する脱水工程が行われる。
本発明は、洗浄工程において、界面活性剤を用いて洗浄することを特徴とし、トナーの製造方法のなかでも重合法に属する手法全般に適用できるが、特に、懸濁重合法により得られた反応生成液を洗浄するために好適に用いられる。
以下、重合工程において懸濁重合法を行う場合を例に挙げて、各手順を順次説明する。
(1)重合性単量体組成物の調製工程
懸濁重合法による場合は、先ず、重合性単量体、着色剤、さらに必要に応じて帯電制御剤やその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物を調製する。着色剤及びその他の添加物は、重合性単量体に溶解、または可能な限り均一且つ微細に分散されるように、混合が行なわれることが好ましい。このような混合を行なうため、メディア式分散機を用いることが好ましい。
本発明で重合性単量体は、重合可能な化合物をいう。
重合性単量体の主成分として、モノビニル単量体を使用することが好ましい。モノビニル単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、及びα−メチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸、及びメタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド化合物;エチレン、プロピレン、及びブチレン等のオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、及びフッ化ビニル等のハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン;酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、及びビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、及びメチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、及びN−ビニルピロリドン等の含窒素ビニル化合物;が挙げられる。これらのモノビニル単量体は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、モノビニル単量体として、スチレン、スチレン誘導体、及びアクリル酸もしくはメタクリル酸の誘導体が、好適に用いられる。
ホットオフセット改善のために、モノビニル単量体とともに、任意の架橋性単量体を用いることが好ましい。架橋性単量体とは、2つ以上の重合可能な官能基を持つモノマーのことをいう。
本発明では、架橋性単量体を、モノビニル単量体100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜2重量部の割合で用いることが望ましい。
また、さらに、重合性単量体の一部として、マクロモノマーを用いると、保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000の反応性の、オリゴマーまたはポリマーである。
マクロモノマーは、モノビニル単量体を重合して得られる重合体のTgよりも、高いTgを有する重合体を与えるものが好ましい。マクロモノマーの量は、モノビニル単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部である。
本発明では、着色剤を用いるが、カラートナー(通常、ブラックトナー、シアントナー、イエロートナー、マゼンタトナーの4種類のトナーが用いられる。)を作製する場合、ブラック着色剤、シアン着色剤、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤をそれぞれ用いることができる。
本発明において、ブラック着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等の顔料を用いることができる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、その誘導体、及びアントラキノン化合物等が利用できる。具体的には、C.I.PigmentBlue2、同3、同6、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17:1、及び同60等が挙げられ、重合の安定性がよく、着色力があることから、C.I.PigmentBlue15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、及び同17:1等の銅フタロシアンニン化合物が好ましく、C.I.PigmentBlue15:3がさらに好ましい。
イエロー着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ顔料、縮合多環顔料等の化合物が用いられる。具体的には、C.I.PigmentYellow3、同12、同13、同14、同15、同17、同62、同65、同73、同74、同83、同93、同97、同120、同138、同155、同180、同181、同185、及び同186等が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ顔料、縮合多環顔料等の化合物が用いられる。具体的には、C.I.PigmentRed31、48、同57:1、同58、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同144、同146、同149、同150、同163、同170、同184、同185、同187、同202、同206、同207、同209、同251、及びC.I.PigmentViolet19等が挙げられる。重合の安定性がよく、着色力があることから、C.I.PigmentRed31、同48、同57:1、同58、同60、同63、同64、同68、同112、同114、同146、同150、同163、同170、同185、同187、同206、及び同207等のモノアゾ顔料が同様に好ましい。
それぞれの着色剤の添加量は、モノビニル単量体100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部である。
帯電制御剤としては、各種の正帯電性または負帯電性の帯電制御剤を用いることができる。例えば、カルボキシル基または含窒素基を有する有機化合物の金属錯体、含金属染料、及びニグロシン等の樹脂でない帯電制御剤;4級アンモニウム基又は4級アンモニウム塩の基含有共重合体、スルホン酸基又は4級スルホン酸塩の基含有共重合体、及びカルボキシル基又はカルボン酸塩の基含有共重合体等の帯電制御樹脂;等を用いることができる。中でも、トナーの印字耐久性が良好になることから、帯電制御剤は、帯電制御樹脂を含むことが好ましい。帯電制御剤のうち、樹脂でない帯電制御剤と、帯電制御樹脂を併用しても良いし、帯電制御樹脂を単独で用いても良い。帯電制御樹脂を単独で用いることがより好ましい。帯電制御樹脂として、4級アンモニウム基若しくは4級アンモニウム塩の基含有共重合体、又はスルホン酸基若しくはスルホン酸塩の基含有共重合体を用いることが、さらに、好ましい。
帯電制御剤は、モノビニル単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜8重量部の割合で用いられる。
その他の添加物として、分子量調整剤を使用することが好ましい。分子量調整剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類が挙げられる。分子量調整剤は、重合開始前または重合途中に添加することができる。上記分子量調整剤の量は、モノビニル単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部であり、更に好ましくは0.1〜5重量部である。
更に、その他の添加物として、定着時におけるトナーの定着ロールからの離型性を改善できるので、離型剤を添加することが好ましい。
離型剤としては、一般にトナーの離型剤として用いられるものであれば、特に限定されない。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、及び低分子量ポリブチレン等の低分子量ポリオレフィンワックス;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、及びホホバ等の天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、及びペトロラクタム等の石油ワックス;モンタン、セレシン、及びオゾケライト等の鉱物ワックス;フィッシャートロプシュワックス等の合成ワックス;ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールエステル等のエステル化合物;等が挙げられる。
上記離型剤は、モノビニル単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部用いられ、更に好ましくは1〜20重量部用いられる。
(2)液滴形成工程
本発明では、以上のようにして得られた、重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行なう。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、インライン型乳化分散機(荏原製作所製、商品名「エバラマイルダー」)、高速乳化・分散機(特殊機化工業製、商品名「T.K.ホモミクサー MARK II型」)等の強攪拌が可能な装置を用いて行なう。
本発明において、重合工程及び洗浄工程で用いる水系媒体は、水単独でもよいが、水に溶解可能な溶剤を併用することもできる。水に溶解可能な溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類等が挙げられる。
本発明において、水系媒体には、分散安定化剤を含有させる。分散安定化剤としては、硫酸バリウム、及び硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、及び酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等の金属化合物等の酸又はアルカリに溶解する無機化合物が挙げられる。さらに、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、及びゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤;両性界面活性剤;等の有機高分子化合物を併用しても良い。上記分散安定化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記分散安定化剤の中でも、金属化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定化剤は、着色樹脂粒子の粒径分布を狭くすることができ、洗浄後の分散安定化剤残存量が少ないので、得られる重合トナーは、画像を鮮明に再現することができ、環境安定性を悪化させないので好ましい。
分散安定化剤は水系媒体100部に対して0.1〜20部、好ましくは0.2〜10部用いることが好ましい。
本発明において、重合性単量体組成物の重合を行なう重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩、アゾ化合物、有機過酸化物が挙げられる。これらの中で、残留重合性単量体を少なくすることができ、印字耐久も良いことから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
重合開始剤は、重合性単量体組成物が水系媒体中へ分散される前に、重合性単量体組成物へ添加されても良く、前記のように分散された後、液滴形成前に添加されても良い。
重合性単量体組成物の重合に用いられる、重合開始剤の添加量は、モノビニル単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部であり、さらに好ましくは0.3〜15重量部であり、最も好ましくは1.0〜10重量部である。
(3)重合工程
上記のとおり液滴形成工程で得られた、重合性単量体組成物の液滴を含有する水系媒体を加熱し、重合を開始する。重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
なお、液滴を安定に分散させた状態で重合を行うために、重合工程において液滴を形成又は安定化するための分散処理を継続しながら重合反応を進行させても良い。
着色樹脂粒子は、そのままで及び外添剤を添加して重合トナーとして用いてもよいが、この着色樹脂粒子をコア層とし、その外側にコア層と異なるシェル層を作ることで得られる、所謂コアシェル型(または、「カプセル型」ともいう。)の着色樹脂粒子とすることが好ましい。コアシェル型の着色樹脂粒子は、低軟化点の物質よりなるコア層を、それより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができる。
上記コアシェル型の着色樹脂粒子を製造する方法としては、特に制限はなく従来公知の方法によって製造することができる。in situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
in situ重合法によるコアシェル型の着色樹脂粒子の製造法を以下に説明する。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
シェル用重合性単量体としては、前述の重合性単量体と同様なものが使用できる。その中でも、スチレン、メチルメタクリレート等のTgが80℃を超える重合体が得られる単量体を、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
シェル用重合性単量体の重合に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸金属塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、及び2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等の水溶性のアゾ化合物;等の水溶性重合開始剤を挙げることができる。重合開始剤の量は、シェル用重合性単量体100重量部に対して、好ましくは、0.1〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部である。
シェル層の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
(4)洗浄工程
本発明において、洗浄工程は、少なくとも界面活性剤洗浄工程と、該界面活性剤洗浄工程後の水洗浄工程、及び該水洗浄工程後の脱水工程とを含む。界面活性剤洗浄工程は、主に副生微粒子を除去するために行い、水洗浄工程は仕上げの洗浄を行い、脱水工程は、できるだけ多くの水系媒体を除去するために行う。
洗浄工程は、必要に応じて、さらに何らかの特別な洗浄工程を含んでいても良い。特別な洗浄工程は、界面活性剤洗浄工程又は水洗浄工程では充分に除去できない不純物を除去するために行い、例えば、分散安定化剤を除去するために酸洗浄工程又はアルカリ洗浄工程が行われる。
(4−1)界面活性剤洗浄工程
重合工程により得られた着色樹脂粒子には、着色樹脂粒子と共に大量の副生微粒子を含んでいる場合がある。この副生微粒子を除去するために、本発明においては、洗浄工程中比較的初期の段階に界面活性剤洗浄工程を設ける。該界面活性剤洗浄工程においては、重合工程により得られた着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)に界面活性剤を添加した後、該水系分散液(1)から液相を分離して界面活性剤洗浄することによって、大量の副生微粒子を容易に除去し、その残留を非常に少なくすることができる。
従来、重合工程により得られた反応生成液は、濾過や遠心沈殿等の固液分離により洗浄を行っているが、副生微粒子を除去することは非常に困難である。固液分離により回収した着色樹脂粒子を水系媒体で再分散し、洗浄を繰り返すことにより、副生微粒子の除去効果を改善できるが、完全に除去することはできない。何回も洗浄を繰り返すと、洗浄工程の効率を落としてしまうという問題もある。従来の洗浄法では、着色樹脂粒子の表面に大量の副生微粒子が付着した状態で水系媒体中に分散しており、その状態のまま固液分離を行っても、副生微粒子は着色樹脂粒子と共に固形分中に残留し、液相と共に洗い流される副生微粒子の量が少なかった。
これに対して、本発明の界面活性剤洗浄工程においては、重合工程により得られた着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)に界面活性剤を添加することによって、着色樹脂粒子の表面に付着していた副生微粒子が液相中に脱離し、再付着を起こさずに安定な浮遊状態を維持するため、該水系分散液(1)の固液分離を行うと、大量の副生微粒子を含有する液相を容易に分離、除去することができ、副生微粒子の残留が非常に少ない着色樹脂粒子を回収できる。
界面活性剤洗浄工程において洗浄される、重合工程により得られた着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)としては、通常、重合工程により得られた反応生成液そのものを用いる。ただし、該反応生成液に若干変更を加えた調製物であっても、反応生成液に含まれる固形分をそのまま含むか、固形分の組成が反応生成物のものから変化しているが副生微粒子を未だ大量に含む水系分散液であるならば、界面活性剤洗浄の対象となる。例えば、該反応生成液に水系媒体を加えて希釈したもの、或いは、重合工程により得られた反応生成液から固形分を分離、回収後、水系媒体で再分散したものなども、水系分散液(1)に含まれる。
界面活性剤洗浄工程において用いる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等、従来公知の如何なる界面活性剤を用いても良い、副生微粒子除去の観点から、アニオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。特に、少量の添加量で副生微粒子を除去するために、アニオン系界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましく、ノニオン系界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル類がより好ましい。
界面活性剤洗浄工程において用いる界面活性剤の添加量は、着色樹脂粒子100gに対して0.01g〜0.4gの範囲が好ましく、0.05g〜0.3gの範囲がより好ましい。
水系分散液(1)に含まれる着色樹脂粒子の質量を正確に特定できない場合には、水系分散液(1)に含まれる固形分の質量を着色樹脂粒子の質量とみなしても良いし、重合工程に用いる重合性単量体の仕込み量に、着色剤の仕込み量を加えた質量を着色樹脂粒子の質量とみなしても良い。
界面活性剤の添加量が上記範囲よりも多い場合には、最終的に得られるトナー中に多量の界面活性剤が残留して高温高湿下での印字品質に悪影響を及ぼし、かぶり等の問題を生じるおそれがある。一方、添加量が上記範囲よりも少ない場合には、副生微粒子の除去が効率良く行われないために、洗浄工程の最終段階で行う脱水工程で濾布等の濾過材の目詰まりが頻発するおそれがある。また、副生微粒子の除去が効率良く行われないことにより、フィルミングを発生させて印字耐久性の劣化を招き、印字面のかぶりや白筋等を引き起こすおそれがある。
水系分散液(1)に界面活性剤を添加した後に行われる固液分離の方法は、着色樹脂粒子を含有する固形分と、該着色樹脂粒子よりも小粒径の副生微粒子を含有する液相を分離できる方法であれば如何なる方法でも良く、沈殿又は濾過の原理を用いる様々な方法の中から適宜選び採用すればよい。より具体的な分離方式又は分離装置としては、例えば、ベルトフィルター、ロータリーフィルター、フィルタープレス、バスケット型遠心分離機等の濾過原理に基づくもの、或いは、液体サイクロン、デカンタ型遠心分離機等の沈殿原理に基づくものが挙げられる。この段階では、固液分離処理される分散液中に多量の副生微粒子が存在するので、濾過を行う方法では濾過材の目詰まりが起こりやすい。そのため、副生微粒子を効率良く除去する観点から、液体サイクロン、デカンタ型遠心分離機等の遠心力をかけた強制的沈殿を行う方式又は装置を用いることが好ましい。なお、固液分離の効率化を図るために、方式の異なる分離機を2種以上組み合わせて使用しても良い。
デカンタ型遠心分離機の基本構造を図1に示す。図に示したデカンタ型遠心分離機は、外側回転筒、及び該外側回転筒内に相対回転自在に設けられたスクリューコンベアを有する。図に示したデカンタ型遠心分離機では、固液分離を行なう水系分散液(1)は、スクリューコンベア3内に設けられたフィードチューブ1を通って外側回転筒2内に供給される。該回転筒を高速回転させ、該水系分散液(1)に高遠心力を与えると、外側回転筒2内壁に該水系分散液(1)中の着色樹脂粒子が、沈降分離される。沈降分離された着色樹脂粒子は、外側回転筒と同軸上で、かつわずかな回転差を有して回転するスクリューコンベア3の羽根9によって掻き寄せられて順次、固形物排出口4の方向に進み、固形物排出口から排出される。一方、着色樹脂粒子から分離された液相(分離液)は、液面を調整するダムプレート5からオーバーフローして排出され、副生微粒子もいっしょに排出される。
液体サイクロンは、液体中に懸濁する固体と液体を遠心力を利用して分離する装置である。サイクロンは、一般に円筒部と円錐部とからなる外筒に原液が接線方向に供給され、外筒内に生じる旋回流による遠心力によって、懸濁液が外筒(円錐部)の下端部に集められ、下端出口から固形分濃度が高い濃縮液が排出される。一方、外筒(円筒部)の上端に配置された内筒からは固形分濃度の低い清澄液が排出される。
上記デカンタ型遠心分離機等の遠心力をかける強制的沈殿を行う場合には、遠心力の程度が変わると、副生微粒子を除去する能力も変わってくる。副生微粒子を効率良く除去する観点から、遠心沈殿による固液分離装置の遠心力は、1000〜3000Gの範囲内(これらの範囲は、外側回転筒の半径が7.50cmのデカンタ型遠心分離機を用いた場合、3453rpm〜5981rpmに相当する)であることが好ましい。
これは処理する分散液の固形分濃度が極端に低い場合(たとえば5%未満)には1000G未満の遠心力で強制的沈殿を行っても、着色樹脂粒子と副生微粒子を分離する能力が保てるが、5%以上の固形分濃度の場合は、十分な分離能力を保てない恐れがある。また、固形分濃度が低ければそれに伴って単位時間あたりの生産量も低下するため好ましくない。上記の観点から生産性と分離能力の両方を維持するため1000G以上、より好ましくは1500G(外側回転筒の半径が7.50cmのデカンタ型遠心分離機を用いた場合4229rpmに相当)以上の遠心力で処理を行う事が好ましい。遠心力が大きいほど、分散液の固形分濃度が高くとも、高い分離能力を維持できる。
また、3000Gより大きい遠心力を与えると、分離能力は向上するが、得られる着色樹脂粒子に対しての機械的衝撃が強すぎるため、亀裂が入ったり、粉砕が起こったりしてしまう。上記の観点から3000G以下、より好ましくは2800G(外側回転筒の半径が7.50cmのデカンタ型遠心分離機を用いた場合5778rpmに相当)以下の遠心力で処理を行う事が好ましい。
遠心力が上記下限と上限の範囲内である場合には、分離性を維持しつつ、着色樹脂粒子へのダメージも抑制でき、非常に好ましい。
デカンタ型遠心分離機を用いる場合、外側回転筒とスクリューコンベアの回転数の差は、適宜設定すればよいが、好ましくは、1分間当たり5〜30回転とする。5回転未満では、供給される着色樹脂粒子の量に対して排出される着色樹脂粒子の量が少なくなり、固形分である着色樹脂粒子が液相へ漏洩してしまい、回収率の低下をもたらす。逆に、30回転を超える場合には回転筒内での滞留時間が不足するため、副生微粒子の分離性能が不十分となる。
また、分離液の液面を調整するダムプレートは、処理物の濾過性に応じて適宜調整可能である。
デカンタ型遠心分離機の場合の遠心力とは、該デカンタ型遠心分離機の外側回転筒の回転によって発生する、回転方向に対し垂直に働く単位質量あたりの力を示す。該デカンタ型遠心分離機の外側回転筒の回転数に応じて、所望の遠心力に調整することができる。外側回転筒の回転数と遠心力には以下の関係式(1)が成り立つ。
RCF=11.18(N/1000)R・・・(1)
(1)式においてRCFは遠心力(G)、Nは一分間あたりの回転数(rpm)、R:外側回転筒の半径(cm)を表す。
本発明においては、重合工程より得られた着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)の固形分濃度を5重量%〜30重量%の範囲、より好ましくは10重量%〜25重量%の範囲に調節して、固液分離装置に供給する。
水系媒体分散液の固形分濃度が上記範囲よりも低い場合は、固液分離に要する時間が非常に長くなり生産性の面で好ましくない。一方で、固形分濃度が上記範囲を超える場合には、分離能力が低下するおそれがある。
(4−2)分散安定化剤除去工程
本発明においては、重合工程を行うために用いた分散化安定剤が界面活性剤洗浄工程又は水洗浄工程により充分に除去できない場合に、洗浄工程の一部として、分散安定化剤除去工程を設けても良い。
分散安定化剤除去工程は、仕上げの水洗浄工程より前に行われるが、界面活性剤洗浄工程との順序は特に制限されず、界面活性剤洗浄工程の前又は後に、界面活性剤洗浄工程とは別個独立に行ってもよいし、界面活性剤洗浄工程と分散安定化剤除去工程を同時並行に行ってもよい。界面活性剤洗浄工程と分散安定化剤除去工程を同時並行に行う場合には、固液分離工程を一度で済ますことにより洗浄工程の効率が向上させることができるので好ましい。
分散安定化剤除去工程を、界面活性剤洗浄工程とは別個独立に行う場合には、界面活性剤洗浄工程前の水系分散液、又は該工程後に着色樹脂粒子を再分散した水系分散液に、分散安定化剤を溶解する酸、アルカリ成分又はその他の可溶化成分を添加した後、上記した界面活性剤洗浄工程で行うのと同様の方法で固液分離を行って、分散安定化剤を含有する液相を除去し、着色樹脂粒子を回収する。
一方、界面活性剤洗浄工程と分散安定化剤除去工程を同時並行に行う場合には、重合工程により得られた着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)に、分散安定化剤を溶解する酸、アルカリ成分又はその他の可溶化成分を添加した後、上記した界面活性剤洗浄工程で行うのと同様の方法で固液分離を行って、着色樹脂粒子よりも小粒径の副生微粒子と分散安定化剤を含有する液相を除去し、着色樹脂粒子を回収する。分散安定化剤を溶解する成分は、界面活性剤の添加前、又は添加後のどちらの順序で水系分散液(1)に添加しても良い。
上記した分散安定化剤のなかから、特に、難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定化剤を用いる場合には、酸洗浄を行う。酸洗浄を行う場合には、界面活性剤洗浄工程と別個独立に行うか同時並行に行うかに関係なく、水系分散液のpHを6.5以下となるように、酸を添加することが好ましい。より好適にはpH6以下となるようにする。添加する酸としては、硫酸、塩酸、及び硝酸等の無機酸、並びに蟻酸、及び酢酸等の有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
(4−3)水洗浄工程
界面活性剤洗浄工程、及び必要に応じて分散安定化剤除去工程等の特別な洗浄工程を行った後、仕上げの洗浄を行うために、水洗浄工程を行う。水洗浄工程においては、水系媒体のみ用いて洗浄を行い、分散安定化剤、副生微粒子、界面活性剤等の最終トナーにとっては不純物となるものの残留を、さらに少なくする。
本発明においては、特に、この洗浄工程においても、できるだけ多くの副生微粒子を液相と共に除去して、副生微粒子の混在量が非常に少ないトナーを製造することが好ましい。かかる観点から、水系媒体による洗浄を2回以上繰り返すことが好ましいが、あまり数多く繰り返すと洗浄効率が落ちていくので、2回〜4回の範囲内で繰り返し洗浄することが好ましい。
水洗浄工程を行うには、先ず、界面活性剤洗浄工程により回収した着色樹脂粒子を水系媒体に再分散し、水系分散液(2)を調製する。水洗浄工程の水系媒体としては、重合のために重合性単量体組成物の液滴を分散させる水系媒体と同様のものを用いることができるが、通常は単なる水を用い、好ましくはイオン交換水、より好ましくは電気伝導度が1μS/cm以下のイオン交換水を用いる。なお、界面活性剤洗浄工程後に、他の特別な洗浄を行う場合には、該特別な洗浄により回収された着色樹脂粒子を再分散し、水系分散液を調製するが、このような水系分散液も水系分散液(2)に含まれ、水洗浄工程の対象となる。
水系分散液(2)を調製した後、不純物を含む液相を分離し、不純物の残留が非常に少ない着色樹脂粒子を回収する。洗浄を繰り返す場合には、回収した着色樹脂粒子を新しい水系媒体で再分散し、再び固液分離を行う。
水洗浄工程において行われる固液分離の方法としては、着色樹脂粒子を含有する固形分と、不純物を含有する液相を分離できる方法であれば如何なる方法でも良く、界面活性剤洗浄工程で用いられる分離方式又は分離装置を、この段階でも用いることができる。
ただし、水洗浄工程で洗浄される水系分散液は、すでに副生微粒子の混在量が非常に少なくなっているので、濾過原理に基づく分離方式又は分離装置を用いるとしても、濾過材の目詰まりは生じ難い。そのため、この段階においては、洗浄作業を効率良く行う観点から濾過原理を利用することが好ましく、より具体的な分離方式又は分離装置としては、例えば、ベルトフィルター、ロータリーフィルター、又はフィルタープレスが挙げられる。これらの分離装置の中から、異なるものを2種以上組み合わせて用いても良い。
これらのうちベルトフィルターは、ドレンネジベルト上に濾過材が配置され、ドレンネジベルトの下方には、耐摩耗性に優れたスライドプレートを介してバキュームパンが設置された構造を有している。水系分散液は、濾過面の上部より濾過材上に供給され、真空作用により濾過、脱水される。濾液は、バキュームパンに集められ、濾液管より真空タンクへ送られる。濾過されたケーキと濾過材は、ドレンネジベルトと共に走行し、その間に上部より洗浄水が散布され、ケーキ中の溶解性物質が濾液と共に排出されるようになっている。脱水ケーキは、ディスチャージロールにより、濾過材より剥離される。
また、ロータリーフィルターは、連続式加圧濾過装置とも言われている、横型の濾過装置である。連続式加圧濾過装置の具体的なものとして、商品名「ロータリーフィルター RF−2」(コトブキ工業株式会社製)が挙げられる。
また、フィルタープレスは、バッチ式加圧濾過装置とも言われている装置であり、具体的には、全自動圧搾式フィルタープレス(東京エンジニアリング工業製、商品名「TFAP−MKIIフィルタープレス」)が挙げられる。フィルタープレスの圧搾圧力は100〜1000kPaが好ましく、この範囲未満では製造効率が低く、この範囲超過では、着色樹脂粒子が変形するおそれがある。
(4−4)脱水工程
脱水工程は、洗浄工程の最終段階であり、その後の乾燥工程を効率良く行うために、できるだけ多くの水系媒体を除去する工程である。
該脱水工程においては、通常、水洗浄工程により回収した着色樹脂粒子を水系媒体に分散させて水系分散液(3)を調製した後、該水系分散液(3)を脱水するが、水洗浄工程により回収した着色樹脂粒子そのものを脱水してもよい。
脱水工程においては、濾過脱水が行われる。濾過脱水の方法は特に制限されず、遠心濾過法、真空濾過法、加圧濾過法などを挙げることができる。これらのうち、脱水を効率良く行う観点から、着色樹脂粒子又は水系分散液(3)に、遠心力をかけた強制的濾過を行って脱水する遠心濾過法が好適である。具体的な脱水の方式又は装置としては、ピーラー遠心分離機、サイホンピーラー型遠心分離機が挙げられ、サイホンピーラー遠心分離機が特に好適である。
遠心濾過法においては、遠心重力を、通常、400〜3,000G、好ましくは800〜2,000Gに設定する。脱水後の水系媒体含有率(含水率)は、通常、5〜30重量%、好ましくは8〜25重量%である。水系媒体含有率が高いと乾燥工程に時間を要するようになり、また水のイオン成分濃度が低くても水系媒体含有率が高いと乾燥によって不純物が濃縮され、トナーの印字性能の環境依存性が大きくなる。
サイホンピーラー型遠心分離機は、サイホン機構を有する遠心濾過機であり、遠心濾過に真空濾過を併せた構造である。また、サイホンピーラー型遠心分離機は、濾過を行なう液体の濾過速度のコントロールやホールド洗浄ができるので、不純物を除去する能力が高い。このような濾過機としては、例えば、サイホン型遠心分離機(三菱化工機製、商品名「HZ−40Si」)
従来は、洗浄工程が終了した段階でも、着色樹脂粒子を含有する水系分散液には多量の副生微粒子が含有されていたため、このような脱水装置の濾過材が脱水開始から早期のうちに目詰まりを起こし、脱水不良を発生させていた。脱水不良が起こると、脱水が充分に行えなくなって脱水作業の効率を落としたり、脱水途中のケーキ層(湿潤状態の着色樹脂粒子の塊)が脱水装置内に偏って装置の異常振動(偏心)を起こしたり、高含水率のケーキが排出されて乾燥工程での処理時間とエネルギーが増大するなどの問題がある。
脱水工程の前にも、界面活性剤洗浄工程や水洗浄工程での固液分離で濾過原理に基づく装置が用いられるが、脱水工程では水系媒体をできるだけ効率良く除去する目的に合った装置を用いるため、他の工程で用いる濾過原理の固液分離装置と比べて、特に濾過材の目詰まりを起こしやすい。
例えば、水洗浄工程でベルトフィルターを用いる場合には、該ベルトフィルターの濾布としては、通常、通気度が60cc/cm/min程度のものを装着する。また、水洗浄工程では、通常、水系媒体の含有率が25〜45重量%の湿潤状態となった着色樹脂粒子が回収される。
一方、脱水工程でサイホンピーラー型遠心分離機を用いる場合には、該遠心分離機の濾布としては、通常、通気度が250cc/cm/min程度のものを装着する。このように、通気度が非常に大きいことに加えて、遠心力をかけて強制的濾過を行うため、副生微粒子は濾布の奥深くまで入り込み、目詰まりを起こしやすい。また、脱水工程では、通常、水系媒体の含有率が8〜25重量%と非常に低い湿潤状態の着色樹脂粒子が回収される。
このように脱水工程に特有の事情があるため、脱水工程での濾過材の目詰まり、及びそれによる脱水不良が大きな問題になっている。
これに対して、本発明では、着色樹脂粒子中に混在する副生微粒子の量を非常に少なくしてから脱水工程を行うので、脱水不良が極めて起こり難い。
以上の脱水工程により、湿潤状態の非常に低い着色樹脂粒子が回収され、その後、さらに乾燥工程が行われて洗浄工程が終了する。
乾燥の方法は、特に限定されず種々の公知の方法を用いることができ、例えば、真空乾燥、気流乾燥、スプレードライヤーなど種々の方法が使用できる。
(5)着色樹脂粒子
以上の各工程を経て得られた着色樹脂粒子(以下の着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む)は、副生微粒子の混在量が非常に少ない。
本発明によれば、洗浄工程を経た着色樹脂粒子1個あたりの表面に存在する、粒子径50nm〜300nmの副生微粒子の個数(副生微粒子数)を40個以下とすることができる。
本発明おいて、副生微粒子が混在する程度を示す副生微粒子数とは、電子顕微鏡による画像から、着色樹脂粒子1個あたりの副生微粒子の個数を算出した数のことを言う。具体的には、着色樹脂粒子の各サンプルについて5視野の電子顕微鏡画像撮影を行ない、各画像において無作為に10個の着色樹脂粒子を選ぶ。これらの合計50個の着色樹脂粒子表面に観察される、副生微粒子の個数を数え、着色樹脂粒子1個あたりの副生微粒子の個数を、算術平均により算出した。
また、本発明においては、着色樹脂粒子は重合法により得られるため、粒径分布がシャープで、且つ、球形度の高い着色樹脂粒子が得られる。
本発明において得られる着色樹脂粒子の体積平均粒径Dvは、好ましくは5〜10μmであり、更に好ましくは6〜8μmである。Dvがこれらの範囲未満であると重合トナーの流動性が低下し、転写性が悪化したり、カスレが発生したり、印字濃度が低下する場合があり、これらの範囲を超えると画像の解像度が低下する場合がある。
また、体積平均粒径Dvと個数平均粒径Dpとの比Dv/Dpが、好ましくは1.00〜1.30であり、更に好ましくは1.00〜1.20である。比Dv/Dpが上記範囲から外れると、得られる重合トナーを用いて印字する際にカスレが発生したり、転写性、印字濃度及び解像度の低下が起こったりする場合がある。着色樹脂粒子の体積平均粒径、及び個数平均粒径は、例えば、マルチサイザー(ベックマン・コールター社製)等を用いて測定することができる。
(6)重合トナー
上記各工程を経て得られた着色樹脂粒子は、そのままで重合トナーとして電子写真の現像に用いることもできるが、重合トナーの帯電性、流動性、保存性等を調整するために、ヘンシェルミキサー等の高速撹拌機を用いて着色樹脂粒子、外添剤、及び必要に応じてその他の粒子を混合し一成分重合トナーとすることができる。また、着色樹脂粒子、外添剤及び必要に応じてその他の粒子に加えて、さらに、公知となっている種々の方法により、フェライトや鉄粉等のキャリア粒子を混合し、二成分重合トナーとすることもできる。
外添剤としては、通常、流動性や帯電性を向上させる目的で使用されている無機粒子や有機樹脂粒子が挙げられる。例えば、無機粒子としては、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、及び酸化セリウム等が挙げられ、有機樹脂粒子としては、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、メラミン樹脂、及びコアがスチレン重合体でシェルがメタクリル酸エステル重合体で形成されたコアシェル型粒子等が挙げられる。これらのうち、シリカや酸化チタンが好適であり、この表面を疎水化処理した粒子が好ましく、疎水化処理されたシリカがより好ましい。2種類以上の疎水化処理されたシリカを併用することがさらに好ましい。
外添剤の添加量は、特に限定されないが、着色樹脂粒子100重量部に対して、通常、0.1〜6重量部である。
上記各工程を経て得られる重合トナーは、副生微粒子の混在量がすくないため、耐久印字を行なっても、解像度が高く、フィルミングやかぶりが起こらず、印字耐久性に優れている。従って、本発明の製造方法によれば、このような優れた印字性能を有する重合トナーを安定的かつ効率良く製造することができる。
本発明の製造方法を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例において行った試験方法は以下のとおりである。
(試験方法)
(1)副生微粒子の個数
電界放射型走査型電子顕微鏡(日立製作所、商品名「S−4700」)を用い、着色樹脂粒子の表面を5,000倍に拡大して観察した。
各サンプルについて5視野の画像撮影を行ない、各画像において無作為に10個の着色樹脂粒子を選び、これらの50個の着色樹脂粒子表面に観察される、副生微粒子の個数を数えた。これより、着色樹脂粒子1個あたりの副生微粒子の個数を算出した。
(2)印字試験(フィルミングによる白筋発生枚数)
印字試験には、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(18枚機)を用いた。このプリンターの現像装置に、試験に供する重合トナーを入れ、温度23℃及び湿度50%の環境下で24時間放置後、1%印字濃度で連続印字を5,000枚行なった。500枚ごとにベタ画像(印字濃度100%)を印字し、印字面の縦筋発生の有無を確認した。ベタ画像に縦筋が初めて確認された枚数を、フィルミングによる白筋発生枚数とした。
(3)濾液の電気伝導度
水洗浄終了後の着色樹脂粒子の水分散液をサンプリングして、得られた濾液を25℃±0.5℃の条件で電気伝導度計(堀場製作所社製、商品名「ES−12」)を用いて測定した。
〔実施例1〕
モノビニル単量体としてスチレン82部及びn−ブチルアクリレート18部、着色剤としてC.I.PigmentYellow180(クラリアント社製、商品名「TonerYellowHG」)5部、をメディア式分散機(ターボ工業製、商品名「OBビーズミル」)にて分散処理を行ない、重合性単量体分散液を得た。得られた重合性単量体分散液に、正帯電制御樹脂として4級アンモニウム塩基を持つモノマーのモノマー組成が2重量%を有する4級アンモニウム塩基含有スチレン/アクリル樹脂(藤倉化成製、商品名「FCA−207P」)1.5部、離型剤としてペンタエリスリトールテトラステアレート(DSC最大吸熱ピーク:66.2℃、分子量:1514)8部、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」、Tg=94℃)0.25部、を混合して、重合性単量体組成物を得た。
他方、イオン交換水250部に塩化マグネシウム16.4部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム9.2部を溶解した水溶液を、攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド分散液を調製した。
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、上記重合性単量体組成物を投入し、液滴が安定するまで攪拌した後、架橋性単量体としてジビニルベンゼン0.5部、分子量調整剤としてtert−ドデカンチオール1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2エチルヘキサノエート(日本油脂製、商品名「パーブチルO」)5部を添加した。これを、インライン型乳化分散機(荏原製作所製、商品名「エバラマイルダー」)を用いて高剪断攪拌して、重合性単量体組成物の液滴形成を行なった。
この液滴形成により得た分散液を、攪拌翼を装着した反応器に入れ、90℃まで昇温を行ない、重合反応を行なった。重合転化率がほぼ100%に達した後、反応器に、シェル用重合性単量体としてメチルメタクリレート1部を添加した。さらにその10分後、イオン交換水20部に水溶性重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)(和光純薬製、商品名「VA−086」)0.1部を溶解させた水溶液を反応器に添加した。3時間重合を継続した後、冷却して反応を停止し、着色樹脂粒子の水分散液(反応生成液)を得た。
上記により得られた着色樹脂粒子の水分散液(反応生成液)のpHは、9.5であった。この水分散液は、副生微粒子を含有しており、この副生微粒子を効率良く除去するために以下の手順で、界面活性剤洗浄工程と酸洗浄工程を同時並行に行なった。
先ず、この着色樹脂粒子の水分散液600kg(うち固形分重量:160.2kg)に、ノニオン系界面活性剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン123P」)を0.33kg(固形分重量100gに対して0.21gに相当)添加し、pH6.0になるまで硫酸を加えた。
上記により得られた着色樹脂粒子の水分散液を、デカンタ型遠心分離機(巴工業社製、商品名「TOMO−E DECANTER」PTM006型)を用いて、下記の条件で固液分離処理を行なった。
<分離条件>
遠心力:2,100 G(4,950 rpm)
外側回転筒とスクリューコンベアとの回転数の差:20 rpm
水分散液供給量:100 l/hr
上記の固液分離処理により、液相を分離し、着色樹脂粒子を回収した。回収された着色樹脂粒子の含水率は41%であった。この固液分離処理後の着色樹脂粒子の表面に付着した副生微粒子の個数は3個であった。
上記界面活性剤洗浄工程及び酸洗浄工程により回収された着色樹脂粒子をイオン交換水に固形分濃度が20重量%となるように再分散させ、水分散液を調製した。この水分散液の重量は865kgであった。この調製した水分散液を、連続式ベルトフィルター(住友重機工業社製、商品名「イーグルフィルター」)を用いて、下記の条件で水洗浄工程を行なった。
<分離条件>
濾過面積:1m
着色樹脂粒子の水分散液の供給量:200 kg/hr
ベルトスピード:0.6 m/min
洗浄水の供給量:600 kg/hr
真空度:35.7〜42.4 kPa
濾布の通気度:60 cc/cm・min
このベルトフィルターによる水洗浄終了後の着色樹脂粒子の表面に付着した副生微粒子の個数は、0個であった。
この水洗浄で得られた着色樹脂粒子を、固形分濃度20wt%となるようにイオン交換水で再分散し、水分散液を得た。この水分散液の重量は865kgであった。なお、得られた水分散液の一部をサンプリングして濾過したところ、濾液の電気伝導度は、32μS/cmであった。
その後、サイホンピーラー型遠心分離機(三菱化工機社製、商品名「HZ40−Si型」)を用いて以下の条件で脱水工程を行なった。なお、865kgの水分散液全ての脱水を行なうのに100バッチを要した。
<脱水条件>
濾過面積:0.25 m
1バッチ当たりの水分散液供給量:8.65 kg/バッチ
遠心力:1900 G(2930rpm)
濾布の通気度:250 cc/cm・min
この脱水工程後の着色樹脂粒子の含水率は12重量%であり、粒径は、Dv50(体積粒径分布の50%累積値)が6.7μmで、Dp50(個数粒径分布の50%累積値)が5.5μmであった。
該脱水工程で得られた着色樹脂粒子を乾燥し、乾燥した着色樹脂粒子を得た。この着色樹脂粒子の副生微粒子の個数は0個であった。乾燥した着色樹脂粒子100重量部に対し、疎水化処理されたシリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名「REA−200」)0.5部、および疎水化されたシリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名「NA−50Y」)1.0部を添加し、攪拌機(三井鉱山製、商品名「ヘンシェルミキサー」)を用いて混合し、重合トナーを調製した。得られた重合トナーについて印字試験を行った。試験結果を表1に示す。
〔実施例2〕
実施例1において、界面活性剤をノニオン系界面活性剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン109P」)に変更し、添加量0.41kg(固形分重量100gに対して0.26gに相当)としたこと以外は実施例1と同様に処理を行い、実施例2の重合トナーを得た。
この際、界面活性剤及び酸による洗浄工程後の着色樹脂粒子の副生微粒子の個数は5個であった。水洗浄工程後の着色樹脂粒子の副生微粒子数の個は、2個であった。脱水工程においては濾布の目詰りは生じなかった。脱水工程後の着色樹脂粒子の含水率は12重量%であった。
〔実施例3〕
実施例1において、界面活性剤をノニオン系界面活性剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン106」)に変更し、添加量0.25kg(固形分重量100gに対して0.16gに相当)とした以外は実施例1と同様に処理を行い、実施例3の重合トナーを得た。
この際、界面活性剤及び酸による洗浄工程後の着色樹脂粒子の副生微粒子の個数は30個であった。水洗浄工程後の着色樹脂粒子の副生微粒子の個数は、5個であった。脱水工程においては濾布の目詰りは生じなかった。脱水工程後の着色樹脂粒子の含水率は15重量%であった。
〔実施例4〕
実施例1において、界面活性剤をアニオン系界面活性剤(花王株式会社製、商品名「エマール2F」)に変更し、添加量0.35kg(固形分重量100gに対して0.22gに相当)とした以外は実施例1と同様に処理を行い、実施例4の重合トナーを得た。
この際、界面活性剤及び酸による洗浄工程後の着色樹脂粒子の副生微粒子の個数は10個であった。水洗浄工程後の着色樹脂粒子の副生微粒子の個数は、4個であった。脱水工程においては濾布の目詰りは生じなかった。脱水工程後の着色樹脂粒子の含水率は14重量%であった。
〔比較例1〕
実施例1において、界面活性剤を添加しない以外は実施例1と同様に処理を行い、比較例1の重合トナーを得た。
この際、界面活性剤及び酸による洗浄工程後の着色樹脂粒子の副生微粒子の個数は80個であった。水洗浄工程後の着色樹脂粒子の副生微粒子の個数は、62個であった。脱水工程においては連続処理14バッチ目に濾布の目詰りを生じ、脱水不良が起こった。濾布を張り替え再度、脱水処理を行ったが、再び同様の脱水不良が起こった。このような脱水不良が、865kgの水分散液全ての脱水を終えるまでの全100バッチ処理の間に、計7回起こった。脱水工程後の着色樹脂粒子の含水率は28重量%であり、乾燥工程で多大な乾燥時間を要した。
〔結果〕
実施例及び比較例で得られた重合トナーを市販の非磁性一成分方式のプリンターにて印字試験を実施した。試験結果を表1に示す。
Figure 0004692330
実施例1〜4においては、酸洗浄工程を兼ねる界面活性剤洗浄工程の終了時点で、着色樹脂粒子に付着している副生微粒子の個数がすでに極めて少なくなっており、水洗浄工程の終了時点では、さらに少なくなり、10個にも達していなかった。そして、脱水工程では、濾布の目詰まりを起こさずに、100バッチの処理を完了させることができた。得られた重合トナーによるフィルミング発生も観察されなかった。
これに対して、比較例1では、重合工程の反応生成液に界面活性剤を添加せずに酸成分のみ添加し、初回の洗浄を行ったが、酸洗浄工程の終了時点で、着色樹脂粒子に付着している副生微粒子の個数は、実施例と比べて極めて多かった。その後の洗浄工程により着色樹脂粒子に付着している副生微粒子の個数は減少したが、実施例の同じ時点での副生微粒子の個数と比べると、極めて多かった。そのため、脱水工程では濾布の目詰まりによる脱水不良が頻発し(7回/100バッチ)、脱水後の着色樹脂粒子の含水率は、実施例と比べて極めて多く、脱水能力が劣っていた。また、得られた重合トナーによるフィルミング発生が観察された。
本発明に用いる、外側回転筒及び該外側回転筒内に相対回転自在に設けられたスクリューコンベアを有するデカンタ型遠心分離機の構造を示した図である。
符号の説明
1 フィードチューブ
2 外側回転筒
3 スクリューコンベア
4 固形物排出口
5 ダムプレート
6 駆動モーター
7 ギアボックス
8 供給口
9 スクリュー羽根

Claims (9)

  1. 重合性単量体及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含有する水系媒体中に分散させた状態で重合することにより着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)を得る重合工程、及び該重合工程で得られた着色樹脂粒子を洗浄する洗浄工程を含む重合トナーの製造方法において、
    該洗浄工程が、界面活性剤洗浄工程、該界面活性剤洗浄工程後の水洗浄工程、及び該水洗浄工程後の脱水工程を有し、
    該界面活性剤洗浄工程において、該重合工程により得られた着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)に界面活性剤を添加した後、該水系分散液(1)から、液体サイクロン、及び/又はデカンタ型遠心分離機を用いて液相を分離して界面活性剤洗浄した着色樹脂粒子を得て、
    該水洗浄工程において、該界面活性剤洗浄した着色樹脂粒子を水系媒体に分散させて水系分散液(2)を調製した後、該水系分散液(2)を、ベルトフィルター、ロータリーフィルター、及びフィルタープレスからなる群より選ばれる少なくとも1つを用いて濾過して液相を分離して水洗浄した着色樹脂粒子を得て、
    該脱水工程において、該水洗浄した着色樹脂粒子そのものを脱水するか、又は該着色樹脂粒子を水系媒体に分散させて水系分散液(3)を調製した後、該水系分散液(3)を脱水することにより、脱水した着色樹脂粒子を得ることを特徴とする重合トナーの製造方法。
  2. 該重合工程後、且つ、該水洗浄工程前に、前記分散安定化剤を除去する分散安定化剤除去工程をさらに含み、該分散安定化剤除去工程は、該界面活性剤洗浄工程とは別個独立して、又は該界面活性剤洗浄工程と同時並行に行われること特徴とする請求項1に記載の重合トナーの製造方法。
  3. 該界面活性剤洗浄工程において、重合工程により得られた着色樹脂粒子を含有する水系分散液(1)にさらに分散安定化剤を溶解させる成分を添加した後、該水系分散液(1)から液相を分離することにより、該界面活性剤洗浄工程と同時並行に、分散安定化剤除去工程を行うことを特徴とする請求項2に記載の重合トナーの製造方法。
  4. 該界面活性剤洗浄工程において用いる界面活性剤の添加量が、水系分散液(1)に含まれる固形分重量100重量部に対して、0.01〜0.4重量部の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の重合トナーの製造方法。
  5. 該脱水工程において、該着色樹脂粒子又は該水系分散液(3)に、遠心力をかけた強制的濾過を行って脱水することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の重合トナーの製造方法。
  6. 該脱水工程において、該着色樹脂粒子又は該水系分散液(3)を、サイホンピーラー型遠心分離機を用いて脱水することを特徴とする請求項5に記載の重合トナーの製造方法。
  7. 該洗浄工程により得られた着色樹脂粒子1個あたりの表面に存在する、粒子径50nm〜300nmの副生微粒子の個数が40個以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の重合トナーの製造方法。
  8. 該重合工程における重合が、懸濁重合であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の重合トナーの製造方法。
  9. 該界面活性剤洗浄工程において、該デカンタ型遠心分離機を用い、遠心力1000〜3000Gの範囲内、且つ、外側回転筒とスクリューコンベアの回転数の差が1分間当たり5〜30回転の範囲内の条件下で該水系分散液(1)から該液相を分離することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の重合トナーの製造方法。
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