JP6742197B2 - ヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、粉砕機で粉砕した場合には微粉が多くなる傾向があり、最終的に得られるHPMCPは、粒度が細かくなり易かった。
本発明は、このような背景を鑑みて成されたものであり、粉砕工程を経ずにHPMCPの平均粒子径を所望の範囲に縮小させることができるHPMCPの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の1つの態様によれば、触媒存在下、ヒプロメロースとエステル化剤を反応させて反応溶液を得るエステル化工程と、前記反応溶液と水を混合して粗ヒプロメロースフタル酸エステルの析出によるヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液を得る析出工程と、前記ヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液を、遠心傾瀉機を用いて脱液して脱液ヒプロメロースフタル酸エステルを得る脱液工程と、前記脱液ヒプロメロースフタル酸エステルを乾燥する乾燥工程とを少なくとも含み、前記遠心傾瀉機が、前記遠心傾瀉機に供給される前記ヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液中の懸濁粒子の平均粒子径を縮小率10〜90%で縮小するヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法が提供される。
得られたHPMCのメトキシ基の置換度は、好ましくは28.0〜30.0質量%、より好ましくは28.8〜29.2質量%である。ヒドロキシプロポキシ基の置換度は、好ましくは8.5〜10.0質量%、より好ましくは8.8〜9.2質量%である。メトキシ基及びヒドロキシプロポキシ基の置換度は、例えば、第17改正日本薬局方のヒプロメロースに関する分析方法よって測定できる。
また、20℃におけるHPMC2質量%の水溶液の粘度は、第17改正日本薬局方の毛細管粘度計法に準じて測定され、好ましくは2.2〜18.0mPa・s、より好ましくは5.0〜16.5mPa・sである。
エステル化反応に用いる溶媒は、HPMCとエステル化剤と触媒を溶解できるものが好ましく、水ではなく、氷酢酸等が挙げられる。溶媒の使用量は、反応速度の観点から、当該HPMCに対して、質量比で、好ましくは1.0〜3.0倍、より好ましくは1.2〜2.0倍、更に好ましくは1.5〜1.8倍とするとよい。
エステル化工程の触媒は、安定性及び経済性等の観点から、塩素酸ナトリウム等のアルカリ塩素酸及び酢酸ナトリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩が好ましい。塩素酸ナトリウムの仕込量は、漂白及び解重合度の観点から、原料HPMCに対して、質量比で、好ましくは0.004〜0.060倍、より好ましくは0.01〜0.03倍である。酢酸ナトリウムの仕込量は、組成及び収率の観点から、原料HPMCに対して、モル比で、好ましくは0.1〜1.6倍、より好ましくは0.6〜1.1倍である。
無水フタル酸の仕込量は、組成及び収率の観点から、原料HPMCに対して、モル比で、好ましくは0.4〜1.8倍、より好ましくは0.6〜1.2倍である。
エステル化工程の反応温度は、反応速度又は粘度の上昇の観点から、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜90℃である。また、エステル化工程の反応時間は、好ましくは2〜8時間、より好ましくは3〜6時間である。
エステル化反応後、未反応の無水フタル酸を処理する目的で、反応溶液に水を加えることができる。水の添加量は、HPMCに対して、質量比で、好ましくは1.3〜2.3倍、より好ましくは1.5〜2.0倍である。
通常、この洗浄は、回分式撹拌型濾過器、連続式回転型加圧濾過器、連続式水平型真空濾過器、水平テーブル型濾過器、又は水平ベルト型濾過器等の濾過器を用いて行うことができる。洗浄工程では、例えば水を用いて粗HPMCPを洗浄する。洗浄工程を経た場合においては、デカンターの使用は、主に脱液を目的とする。
析出工程において得られたHPMCP懸濁液を、洗浄工程を経ることなく遠心傾瀉機に供給する場合は、得られたHPMCP懸濁液を、必要に応じて好ましい濃度に調節して遠心傾瀉機に供給してもよい。析出工程において得られたHPMCP懸濁液を、例えば濾過器を用いた洗浄工程を経て遠心傾瀉機に供給する場合は、洗浄工程で得られたHPMCPと水を混合し、必要に応じて好ましい濃度に調節して、得られたHPMCP懸濁液を遠心傾瀉機に供給してもよい。
縮小率(%)={1−(脱液後の平均粒子径/脱液前の平均粒子径)}×100
なお、脱液前の懸濁液中の懸濁粒子の平均粒子径及び脱液後の平均粒子径は、篩法による積算重量粒度分布における積算値50%粒子径を用いる。
遠心効果G(−)=N2・r/894
(上式中、Nは外側回転筒回転数(1/分)を表し、rは外側回転筒内半径(m)を表す。)
圧縮度は、好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下である。20%超過であると供給機ホッパー内でブリッジを形成し易くなり、安定供給ができない等の問題を生じる場合がある。下限は特に制限されないが流動性の観点から0%である。
圧縮度はかさべりの度合いを示す値で、以下の式で求められる。
圧縮度(%)={(固め嵩密度‐ゆるめ嵩密度)/固め嵩密度}×100
圧縮度は粉体の流動性を表す数値と見なせる。
「ゆるめ嵩密度」とは、疎充填の状態の嵩密度をいい、直径5.03cm、高さ5.03cm(容積100mL)の円筒容器へ試料を24メッシュの篩を通して円筒容器の23cm上方から均一に供給し、上面をすり切って秤量することによって測定される。
固め嵩密度は、設備コストや取扱い上の観点から、好ましくは0.1〜0.7g/cm3、より好ましくは0.2〜0.6g/cm3である。
「固め嵩密度」は、「ゆるめ嵩密度」の測定の際にタッピングを加えて密充填にした場合の嵩密度である。タッピングとは、試料を充填した容器を一定の高さからくり返し落下させて底部に軽い衝撃を与え、試料を密充填にする操作である。実際にはゆるみ嵩密度を測定する際上面をすり切って秤量したあと、さらにこの容器の上にキャップをはめ、この上縁まで粉体を加えてタップ高さ1.8cmのタッピングを180回行う。終了後、キャップを外して容器の上面で粉体をすり切って秤量し、この状態の嵩密度を固め嵩密度とする。「固め嵩密度」及び「ゆるめ嵩密度」は、ホソカワミクロン社製パウダーテスターを使用することにより測定できる。
安息角は、試料を平面上に落下させて堆積させた円錐の母線と水平面とのなす角度をいう。例えば、パウダーテスターPT−D型(ホソカワミクロン社製)を用いて直径80mmの金属製円盤状の台の上に75mmの高さより一定の角度になるまで試料を流出させ、堆積している粉体と台との角度を測定することにより算出できる。この角度が小さいほど流動性に優れる粉体と言える。
実施例1
双軸撹拌機を有する50Lニーダーに氷酢酸11.2kgを秤込み、グルコース単位当たりのヒドロキシプロポキシ基の置換度9.0質量%、メトキシ基の置換度28.9質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース7.0kgを加えて溶解した。次いで、無水フタル酸5.8kg及び塩素酸ナトリウム109g、酢酸ナトリウム3.0kgを加えて、85℃で4.5時間反応させた。これに水12.9kgを加えて撹拌した後、更にHPMCの21倍質量の水を反応溶液に徐々に加えて粗HPMCPを析出させ、その析出物を水平濾板型濾過器を用いて濾過し、水にて洗浄し、得られたHPMCPを水と混合して、温度7℃、HPMCP濃度6質量%の懸濁液を得た。得られた懸濁液中のHPMCP懸濁粒子の平均粒子径は、目開きの異なる9つの篩を用いて、懸濁粒子がその目開きを通過する割合によって求めた積算重量粒度分布における積算値50%粒子径として測定したところ507μmであった。
このHPMCP懸濁液を遠心傾瀉機(タナベウィルテック社製デカンタ型連続式遠心分離機Z18型)を用いて遠心効果2500Gで脱液(固液分離)したところ、脱液後のHPMCP懸濁粒子の平均粒子径は195μmとなり、縮小率62%であった。また、脱液後のHPMCPケーキの含液率は59.8質量%であった。
次に得られたHPMCPケーキを80℃で流動層乾燥機を用いて乾燥した。なお、HPMCPケーキの乾燥時間は、比較例1の濾過式遠心脱水機を用いて脱液した脱液HPMCPケーキの乾燥時間1に対して、0.70であった。結果を表1に示す。
その後、得られた乾燥HPMCPを10メッシュ(目開き:1700μm)の篩にて篩過し、乾式レーザー回折法による平均粒子径を測定したところ、目標としていた平均粒子径100〜200μmを満たす179μmであった。
また、篩過後のHPMCPについて、各種粉体物性を調べた結果を表2に示す。
遠心傾瀉機を使用することにより、HPMCPの平均粒子径が縮小化するだけでなく、乾燥時間も短縮した。また、得られたHPMCPは、圧縮度が20%以下であり、流動性の高いものであった。
実施例1にて得られたHPMCP懸濁液について、遠心傾瀉機の代わりに濾過式遠心脱水機(コクサン社製上部排出型遠心分離機H−130A型)を用いて、遠心効果1200Gで脱液(固液分離)したところ、脱液後のHPMCP粒子の平均粒子径は497μmとなり、縮小率は2%であった。また、脱液後のHPMCPケーキの含液率は61.9質量%であった。結果を表1に示す。
HPMCPケーキを80℃で実施例1と同様に乾燥後、10メッシュ(目開き:1700μm)の篩にて篩過し、乾式レーザー回折法による平均粒子径を測定したところ、408μmとなり、目標としていた平均粒子径100〜200μmに対して過大であった。また、篩過後のHPMCPについて、各種粉体物性を調べた。結果を表2に示す。
実施例1と同様にして得られた温度7℃、濃度6質量%、懸濁粒子の平均粒子径が507μmであるHPMCP懸濁液を遠心傾瀉機(タナベウィルテック社製デカンタ型連続式遠心分離機Z18型)を用いて遠心効果900Gで脱液(固液分離)したところ、脱液後のHPMCP粒子の平均粒子径は330μmとなり、縮小率35%であった。また、脱液後のHPMCPケーキの含液率は62.8質量%であった。
HPMCPケーキを80℃で実施例1と同様に乾燥した。HPMCPケーキの乾燥時間は、比較例1の濾過式遠心脱水機を用いて脱液した脱液HPMCPケーキの乾燥時間を1に対して0.91であった。結果を表1に示す。
その後、得られた乾燥HPMCPを10メッシュ(目開き:1700μm)の篩にて篩過し、乾式レーザー回折法による平均粒子径を測定したところ、目標としていた平均粒子径200〜300μmを満たす290μmであった。結果を表2に示す。
また、篩過後のHPMCPについて、各種粉体物性を調べた結果を表2に示す。
粗HPMCPを洗浄する洗浄工程を省いた以外は、実施例1と同様にして得られた温度7℃、濃度6質量%、懸濁粒子の平均粒子径が971μmであるHPMCP懸濁液を遠心傾瀉機(タナベウィルテック社製デカンタ型連続式遠心分離機Z18型)を用いて、遠心効果2500Gで脱液(固液分離)したところ、脱液後のHPMCP粒子の平均粒子径は241μmとなり、縮小率75%であった。また、脱液後のHPMCPケーキの含液率は60.1質量%であった。
HPMCPケーキを80℃で実施例1と同様に乾燥した。HPMCPケーキの乾燥時間は、比較例1の濾過式遠心脱水機を用いて脱液した脱液HPMCPケーキの乾燥時間を1に対して0.77であった。結果を表1に示す。
その後、得られた乾燥HPMCPを10メッシュ(目開き:1700μm)の篩にて篩過し、乾式レーザー回折法による平均粒子径を測定したところ、目標としていた平均粒子径200〜300μmを満たす217μmであった。結果を表2に示す。
また、篩過後のHPMCPについて、各種粉体物性を調べた結果を表2に示す。
実施例1と同様にして得られた温度7℃、濃度6質量%、懸濁粒子の平均粒子径が213μmであるHPMCP懸濁液を遠心傾瀉機(タナベウィルテック社製デカンタ型連続式遠心分離機Z18型)を用いて遠心効果2500Gで脱液(固液分離)したところ、脱液後のHPMCP粒子の平均粒子径は178μmとなり、縮小率16%であった。また、脱液後のHPMCPケーキの含液率は59.4質量%であった。
HPMCPケーキを80℃で実施例1と同様に乾燥した。HPMCPケーキの乾燥時間は、比較例1の濾過式遠心脱水機を用いて脱液した脱液HPMCPケーキの乾燥時間を1に対して0.66であった。結果を表1に示す。
その後、得られた乾燥HPMCPを10メッシュ(目開き:1700μm)の篩にて篩過し、乾式レーザー回折法による平均粒子径を測定したところ、目標としていた平均粒子径100〜200μmを満たす167μmであった。結果を表2に示す。
また、篩過後のHPMCPについて、各種粉体物性を調べた結果を表2に示す。
粗HPMCPを洗浄する洗浄工程を省いた以外は、実施例1と同様にして得られた温度7℃、濃度6質量%、懸濁粒子の平均粒子径が277μmであるHPMCP懸濁液を遠心傾瀉機(タナベウィルテック社製デカンタ型連続式遠心分離機Z18型)を用いて遠心効果2500Gで脱液(固液分離)したところ、脱液後のHPMCP粒子の平均粒子径は219μmとなり、縮小率21%であった。また、脱液後のHPMCPケーキの含液率は60.3質量%であった。
HPMCPケーキを80℃で実施例1と同様に乾燥した。HPMCPケーキの乾燥時間は、比較例1の濾過式遠心脱水機を用いて脱液した脱液HPMCPケーキの乾燥時間を1に対して0.74であった。結果を表1に示す。
その後、得られた乾燥HPMCPを10メッシュ(目開き:1700μm)の篩にて篩過し、乾式レーザー回折法による平均粒子径を測定したところ、目標としていた平均粒子径100〜200μmを満たす199μmであった。結果を表2に示す。
また、篩過後のHPMCPについて、各種粉体物性を調べた結果を表2に示す。
比較例1のHPMCPを衝撃型粉砕機(ホソカワミクロン社製ビクトリミルVP−1型)で粉砕し、平均粒子径が268μmのHPMCPを製造した。これらの篩過後のHPMCPについて、各種粉体物性を調べた結果を表2に示す。
比較例1のHPMCPを衝撃型粉砕機(ホソカワミクロン社製ACM−10型)で粉砕し、平均粒子径が169μmのHPMCPを製造した。これらの篩過後のHPMCPについて、各種粉体物性を調べた結果を表2に示す。
2 外側回転筒
3 懸濁液供給管
4 スクリュー胴
5 懸濁液供給管吐出口
6 スクリューコンベア
7 排出口
8 排液口
S HPMCP懸濁液
A 固形物
B 分離液
Claims (5)
- 触媒存在下、ヒプロメロースとエステル化剤を反応させて反応溶液を得るエステル化工程と、
前記反応溶液と水を混合して粗ヒプロメロースフタル酸エステルの析出によるヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液を得る析出工程と、
前記ヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液を、遠心傾瀉機を用いて脱液して脱液ヒプロメロースフタル酸エステルを得る脱液工程と、
前記脱液ヒプロメロースフタル酸エステルを乾燥する乾燥工程と
を少なくとも含み、
前記遠心傾瀉機が、前記遠心傾瀉機に供給される前記ヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液中の懸濁粒子の平均粒子径を縮小率10〜90%で縮小するヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法。 - 前記析出工程と前記脱液工程の間に、前記析出工程で得られたヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液中の粗ヒプロメロースフタル酸エステルを洗浄して、前記脱液工程に使用するヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液を得る洗浄工程を更に含む請求項1に記載のヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法。
- 前記脱液ヒプロメロースフタル酸エステルの平均粒子径が、70〜400μmである請求項1又は請求項2に記載のヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法 。
- 前記遠心傾瀉機に供給される前記ヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液中の懸濁粒子の平均粒子径が、150μm以上である請求項1〜3のいずれかに1項に記載のヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法 。
- 前記遠心傾瀉機の運転時の遠心効果が、500G以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法 。
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