JP3684075B2 - 重合トナー粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電荷潜像を顕在化するためのトナー、又は、トナージェット方式記録法におけるトナー像を形成するためのトナーに用いられる重合トナー粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真法としては多数の方法が知られているが、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、ついで該潜像をトナーで現像を行って可視像として、必要に応じて紙などの転写材にトナー画像を転写した後、熱・圧力などにより転写材上にトナー画像を定着して複写物又は印刷物を得るものである。
【0003】
また、トナーを用いて現像する方法あるいは、トナー画像を定着する方法としては、従来各種の方法が提案されている。
【0004】
従来、これらの目的に使用するトナーは、一般的に熱可塑性樹脂中に染料または顔料からなる着色剤を溶融混練し、均一に分散させた後、微粉砕装置により微粉砕し、微粉砕物を分級機により分級して所望の粒径を有するトナーを製造してきた。
【0005】
この製造方法ではかなり優れたトナーを製造し得るが、ある種の制限、すなわち、トナー用材料の選択範囲に制限がある。例えば、樹脂着色剤分散体が十分にもろく、経済的に可能な製造装置で微粉砕し得るものでなけらばならない。ところが、これらの要求を満たすために樹脂着色剤分散体をもろくすると、該分散体を実際に高速で微粉砕した場合、形成された粒子の粒径範囲が広くなりやすく、特に比較的大きな割合で微粒子がこれに含まれるという問題が生じる。さらに、このように脆性の高い材料から得られるトナーは、複写機等の現像器中でさらなる粉化を受けやすい。また、この製造方法では、着色剤等の固体微粒子を樹脂中に完全に均一分散することは困難であり、その分散の度合によっては、画像形成時におけるカブリの増大、画像濃度低下、混色性あるいは透明性の不良の原因となるので、着色剤の分散には十分な注意を払わなければならない。また、粉砕粒子の破断面に着色剤が露出することにより、現像特性の変動を引き起こす場合もある。
【0006】
一方、これら粉砕法によるトナーの問題点を克服するため、特公昭36−10231号、同43−10799号および同51−14895号公報等による懸濁重合法トナーを始めとして、各種重合法トナーやその製造方法が提案されている。例えば、懸濁重合法トナーでは、重合性単量体、着色剤および重合開始剤、さらに必要に応じて架橋剤、荷電制御剤、その他添加剤を均一に溶解または分散せしめて単量体組成物とした後、該単量体組成物を分散安定剤を含有する媒体、例えば、水相中に適当な撹拌機を用いて分散し、同時に重合反応を行わせ所望の粒径を有するトナー粒子を得る。この方法では、粉砕工程が全く含まれないため、トナーに脆性が必要でなく、樹脂として軟質の材料を使用することができ、また、粒子表面への着色剤の露出が発生せず、均一な摩擦帯電性を有するトナーが得られるという利点がある。また、得られるトナーの粒度分布が比較的シャープなことから分級工程を省略または、分級したとしても、高収率でトナーが得られる。
【0007】
しかしながら、重合法トナーは媒体中で直接トナー粒子を生成させるため、トナー表面が媒体の影響を受けやすい。
【0008】
例えば、媒体が水系媒体の場合、一般に極性の高い極性樹脂や荷電制御剤は、トナー表面近傍に局在化しやすくなる。その結果として粉砕トナーと比較して、非常に少量の荷電制御剤で、均一に高い帯電性をトナーに付与できるが、荷電制御剤のような極性の高い材料は、極一部ではあるが、水系媒体中へ溶解してしまうものもある。そのため、重合反応終了後の媒体からトナー粒子を濾別する工程で、非常に注意を払う必要がある。
【0009】
すなわち、いかに効率よく各トナー粒子の表面を均一に洗浄するか、ということが重要である。各トナー粒子の表面が均一に洗浄されていないと、トナーの帯電量分布がブロードとなり、特に高湿下などの、トナーが帯電しにくい環境下では、カブリ、トナー飛散、画像濃度低下などが発生しやすくなる。
【0010】
特開平8−160661号公報の重合トナー及びその製造方法のなかでは、連続式ベルトフィルター、サイホンピラー型セントリフュージで脱水及び洗浄を行うことで、分散安定剤の除去が効率よく行われ、上記課題を解決できることを提案している。これら提案された装置を用いて、重合トナーの製造を行えば、確かに従来と比較して帯電性の優れたトナーが得られるが、ろ過の効率、より均一なトナー表面の洗浄性の点で満足いくものではない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高温/高湿下においても著しい帯電性低下をともなわず、耐久時でもさらに安定した画像を得られるトナーに供される重合トナー粒子の製造方法を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明の目的は、生産性の優れた重合トナー粒子の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、少なくとも重合性単量体及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を、液状媒体中で重合して着色樹脂粒子を生成させ、該着色樹脂粒子を液状媒体から濾別し、乾燥して重合トナー粒子を製造する方法であり、液状媒体からの該着色樹脂粒子の濾別をフィルタープレス法によって行い、該着色樹脂粒子を濾別した後に、該着色樹脂粒子を該着色樹脂粒子100重量部あたり、水200〜1000重量部を使用して洗浄することを特徴とする重合トナー粒子の製造方法に関する。
【0014】
本発明者らは、鋭意検討の結果、重合トナー粒子の高温/高湿下での更なる帯電性の向上に、着色樹脂粒子を媒体から濾別する方法が大きく影響を与えていることを見出した。
【0015】
一般に、スラリーからの固体粒子の分離方法は、主に減圧ろ過、遠心ろ過、加圧ろ過に分類されるが、これらの中で、加圧ろ過であるフィルタープレス法が、重合トナー粒子の製造には、最も適していることを見出した。
【0016】
減圧ろ過や遠心ろ過では、ケーキの一部にひび割れが生じたり、さらに、ろ過中にフィルターの目詰まりが発生しやすいことから、洗浄水がケーキを均一に洗浄しにくい。
【0017】
一方、フィルタープレスでは、減圧によるろ過、さらに、圧搾による脱水が連続して行え、ケーキのひび割れが起きにくく、このケーキに、洗浄水を流すことで連続して、ろ過、洗浄工程が行えることから、非常に効率が良い。更に、洗浄水量、洗浄水流速、圧搾圧力など制御しやすく、トナーの帯電性を損なうことなく、ろ過が可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明では、着色樹脂粒子を濾別した後に、水で洗浄することが好ましく、さらには、着色樹脂粒子100重量部あたり、水200〜1000重量部を使用して洗浄することが好ましい。洗浄水が200重量部に満たない場合、分散剤の除去が不十分となり、得られたトナーの吸湿性が高く、帯電性が低下する。逆に1000重量部を超えるとトナー表面の極性成分の一部が溶出され、帯電性が低下する。
【0019】
また、着色樹脂粒子100重量部あたり、10〜50重量部/minの流量で水洗浄することが好ましい。流量が10重量部/minに満たない場合、ろ過、水洗浄のタクトが長くなり、トナー表面の極性成分の一部が溶出されやすくなり、帯電性が低下する。逆に50重量部/minを超えると、トナー粒子表面を均一に洗浄できず、帯電量分布がブロードとなる。
【0020】
また、フィルタープレス法に使用するフィルターの通気量が2〜40cc/cm2・minであることが好ましい。通気量が2cc/cm2・minに満たないと、フィルターの目詰まりが発生しやすく、濾別の効率が落ちるばかりでなく、均一な洗浄も困難となってしまう。逆に、通気量が40cc/cm2・minを超えてしまうと、フィルターからトナー粒子の一部が通り抜け、好ましくない。
【0021】
また、フィルタープレス法の圧搾圧力は、1〜10kg/cm2であることが好ましい。圧搾圧力は、1kg/cm2に満たない場合、濾別の効率が落ちるばかりでなく、ろ過室内のケーキに均一な圧力がかからず、均一な洗浄が困難となってしまう。逆に、10kg/cm2を超えると、トナー粒子の変形がおこり重合法トナーの球形状に起因する高転写性が損なわれ好ましくない。
【0022】
また、トナー粒子を水洗した後、通気して水分量40%以下にすることが好ましい。水分量が40%を超えた状態で、次工程の乾燥を行うと、乾燥の効率が悪く、さらには、得られるトナーも凝集した状態のものが多くなり、好ましくない。
【0023】
また、フィルタープレス法での水洗浄は、少なくともフィルター側から水を供給する方法であることが好ましい。これによって、フィルターの目詰まりが軽減できるばかりでなく、ケーキ内に均一に洗浄水が行き渡り、洗浄のムラが起きにくくなる。
【0024】
また、本発明においては、トナー粒子の形状係数SF−1が100〜160であり、トナー粒子の形状係数SF−2が100〜140であるものが好適に用いられる。さらに好ましくは、SF−1が100〜150、SF−2が100〜130である。
【0025】
本発明に用いられる形状係数を示すSF−1、SF−2とは、日立製作所製FE−SEM(S−800)を用いトナー像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報はインターフェースを介してニコレ社製画像解析装置(Luzex3)に導入し解析を行い、下式より算出し得られた値を本発明においては形状係数SF−1、SF−2と定義した。
【0026】
【数1】
[AREA:トナー粒子の投影面積、MXLNG:トナー粒子の投影絶対最大長、PERI:周長]
【0027】
トナー粒子の形状係数SF−1は球形度合を示し、160より大きいと、球形から徐々に不定形となる。SF−2は凹凸度合を示し、140より大きいとトナー粒子表面の凹凸が顕著となる。
【0028】
トナー粒子形状の作用効果としては、できるだけ、トナー粒子表面上の外添剤が有効に作用されることである。すなわち、トナー粒子の表面積のなるべく小さい球形が好ましい。
【0029】
SF−1が160を超えたり、SF−2が140を超えると、転写性や耐久性が劣る場合がある。
【0030】
本発明のトナーには、定着性を改善するために、低軟化点物質が含有されていることが好ましく、ASTM D3418−8に準拠し測定された主体極大ピーク値が、40〜90℃を示す化合物が好ましい。極大ピークが40℃未満であると低軟化点物質の自己凝集力が弱くなり、結果として耐高温オフセット性が弱くなり好ましくない。一方、極大ピークが90℃を超えると定着温度が高くなり、好ましくない。更に直接重合方法によりトナーを得る場合においては、水系で造粒・重合を行うため極大ピーク値の温度が高いと主に造粒中に低軟化点物質が析出してきて懸濁系を阻害するため好ましくない。
【0031】
本発明の極大ピーク値の温度の測定には、例えばパーキンエレマー社製DSC−7を用いる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。サンプルはアルミニウム製パンを用い対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minを測定を行った。
【0032】
具体的にはパラフィンワックス,ポリオレフィンワックス,フィッシャートロプシュワックス,アミドワックス,高級脂肪酸,エステルワックス及びこれらの誘導体又はこれらのグラフト/ブロック化合物等が利用できる。
【0033】
該低軟化点物質はトナー中へ3〜30重量%添加することが好ましい。仮に3重量%未満の添加では定着性が低下し、また30重量%を超える場合は、重合法による製造においても造粒時にトナー粒子同士の合一が起きやすく、粒度分布の広いものが生成しやすく、本発明には不適当であった。低軟化点物質を内包化せしめる具体的方法としては、水系媒体中での材料の極性を主要単量体より低軟化点物質の方を小さく設定し、更に少量の極性の大きな樹脂又は単量体を添加せしめることで低軟化点物質を外添樹脂で被覆した所謂コア/シェル構造を有するトナーを得ることができる。
【0034】
トナーの粒度分布制御や粒径の制御は、難水溶性の無機塩や保護コロイド作用をする分散剤の種類や添加量を変える方法や機械的装置条件例えばローターの周速・パス回数・撹拌羽根形状等の撹拌条件や容器形状又は、水溶液中での固形分濃度等を制御することにより所定の本発明のトナーを得ることができる。
【0035】
本発明に用いられる重合性単量体としては、スチレン,o(m−、p−)−メチルスチレン,m(p−)−エチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸ステアリル,(メタ)アクリル酸ベヘニル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル,(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;ブタジエン,イソプレン,シクロヘキセン,(メタ)アクリロニトリル,アクリル酸アミド等のエン系単量体が好ましく用いられる。これらは、単独または一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−pl39〜192(John Wiley&Sons社製)に記載の理論ガラス転移温度(Tg)が、40〜75℃を示すように単量体を適宜混合し用いられる。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合には、トナーの保存安定性や現像剤の耐久安定性の面から問題が生じ、一方75℃を超える場合は定着点の上昇をもたらし、特にフルカラートナーの場合においては各色トナーの混色が不十分となり色再現性に乏しく、更にOHP画像の透明性を著しく低下させ高画質の面から好ましくない。
【0036】
結着樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定される。具体的なGPCの測定方法としては、予めトナーをソックスレー抽出器を用いトルエン溶剤で20時間抽出を行った後、ロータリーエバポレーターでトルエンを留去せしめ、更に低軟化点物質は溶解するが結着樹脂は溶解し得ない有機溶剤、例えばクロロホルム等を加え十分洗浄を行った後、THF(テトラヒドロフラン)に可溶した溶液をポア径が0.3μmの耐溶剤性メンブランフィルターでろ過したサンプルをウォーターズ社製150Cを用い、カラム構成は昭和電工製A−801、802、803、804、805、806、807を連結し、標準ポリスチレン樹脂の検量線を用い分子量分布を測定し得る。得られた樹脂成分の数平均分子量(Mn)は5000〜100000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は2〜100を示す結着樹脂が本発明には好ましい。
【0037】
また、本発明においては、コア/シェル構造を有するトナーを製造する場合、極性樹脂を添加せしめることが特に好ましい。本発明に用いられる極性樹脂としては、スチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体,マレイン酸共重合体,ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂が好ましく用いられる。該極性樹脂は、単量体と反応しうる不飽和基を分子中に含まないものが特に好ましい。仮に多くの不飽和基を有する極性樹脂を含む場合においては、外殻樹脂層を形成する単量体と架橋反応が起き、特に、フルカラー用トナーとしては、極めて高分子量になり四色トナーの混色には不利となり好ましくない。
【0038】
また、本発明においては、トナーの表面にさらに最外殻樹脂層を設けても良い。該最外殻樹脂層のガラス転移温度は、耐ブロッキング性のさらなる向上のため外殻樹脂層のガラス転移温度以上に設計されること、さらに定着性を損なわない程度に架橋されていることが好ましい。また、該最外殻樹脂層には帯電性向上のため極性樹脂や荷電制御剤が含有されていることが好ましい。
【0039】
該最外殻層を設ける方法としては、特に限定されるものではないが例えば以下のような方法が挙げられる。
【0040】
1.重合反応後半または終了後、反応系中に必要に応じて、極性樹脂、荷電制御剤、架橋剤等を溶解、分散したモノマーを添加し重合粒子に吸着させ、重合開始剤を添加し重合を行う方法。
【0041】
2.必要に応じて、極性樹脂、荷電制御剤、架橋剤等を含有したモノマーからなる乳化重合粒子またはソープフリー重合粒子を反応系中に添加し、重合粒子表面に凝集、必要に応じて熱等により固着させる方法。
【0042】
3.必要に応じて、極性樹脂、荷電制御剤、架橋剤等を含有したモノマーからなる乳化重合粒子またはソープフリー重合粒子を乾式で機械的にトナー粒子表面に固着させる方法。
【0043】
本発明に用いられる着色剤は、黒色着色剤としてカーボンブラック,磁性体,以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
【0044】
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180等が好適に用いられる。
【0045】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アンスラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0046】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アンスラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0047】
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明の着色剤は、カラートナーの場合、色相角,彩度,明度,耐候性,OHP透明性,トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は、樹脂100重量部に対し1〜20重量部添加して用いられる。
【0048】
黒色着色剤として磁性体を用いた場合には、他の着色剤と異なり樹脂100重量部に対し40〜150重量部添加して用いられる。
【0049】
本発明に用いられる荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、カラートナーの場合は、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
【0050】
具体的化合物としては、ネガ系としてサリチル酸,ナフトエ酸,ダイカルボン酸,それらの誘導体の金属化合物、スルホン酸,カルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリークスアレーン等が利用でき、ポジ系として四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が好ましく用いられる。
【0051】
該荷電制御剤の添加量は、樹脂100重量部に対し0.5〜10重量部が好ましい。
【0052】
本発明で使用される重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の過酸化物系重合開始剤が用いられる。
【0053】
該重合開始剤の添加量は、本発明の目的とする成分比により変化するが一般的には単量体に対し0.5〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%添加され用いられる。開始剤の種類は、重合方法により若干異なるが、十時間半減期温度を参考に、単独又は混合し利用される。
【0054】
本発明のトナー用結着樹脂の分子量分布を制御するため公知の架橋剤・連鎖移動剤・重合禁止剤等を更に添加し用いることも好ましい。
【0055】
本発明のトナー製造方法として懸濁重合を利用する場合には、用いる分散剤として例えば無機系酸化物として、リン酸三カルシウム,リン酸マグネシウム,リン酸アルミニウム,リン酸亜鉛,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,水酸化カルシウム,水酸化マグネシウム,水酸化アルミニウム,メタケイ酸カルシウム,硫酸カルシウム,硫酸バリウム,ベントナイト,シリカ,アルミナ,磁性体,フェライト等が挙げられる。有機系化合物としては、例えばポリビニルアルコール,ゼラチン,メチルセルロース,メチルヒドロキシプロピルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩,デンプン等が水相に分散させて使用される。
【0056】
これら分散剤は、重合性単量体組成物100重量部に対して0.2〜10.0重量部を使用する事が好ましい。
【0057】
これら分散剤は、市販のものをそのまま用いても良いが、細かい均一な粒度を有す分散粒子を得るために、分散媒中にて高速撹拌下にて該無機化合物を生成させて得ることもできる。
【0058】
例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合することで懸濁重合方法に好ましい分散剤を得ることができる。
【0059】
また、これら分散剤に、0.001〜0.1重量部の界面活性剤を併用しても良い。具体的には市販のノニオン,アニオン,カチオン型の界面活性剤が利用でき、例えばドデシル硫酸ナトリウム,テトラデシル硫酸ナトリウム,ペンタデシル硫酸ナトリウム,オクチル硫酸ナトリウム,オレイン酸ナトリウム,ラウリル酸ナトリウム,ステアリン酸カリウム,オレイン酸カルシウム等が好ましく用いられる。
【0060】
本発明のトナー製造方法は、具体的には以下のように行われる。
【0061】
単量体中に低軟化点物質からなる離型剤,着色剤,荷電制御剤,重合開始剤その他の添加剤を加え、ホモジナイザー・超音波分散機等によって均一に溶解または分散せしめた単量体組成物を、分散安定剤を含有する水相中に通常の撹拌機またはホモミキサー,ホモジナイザー等により分散せしめる。懸濁重合法においては、通常単量体系100重量部に対して水300〜3000重量部を分散媒として使用するのが好ましい。
【0062】
好ましくは単量体組成物からなる液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度・時間を調整し、造粒する。その後は分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。重合温度は40℃以上、一般的には50〜90℃の温度に設定して重合を行う。また、重合反応後半に昇温しても良く、更に、未反応の重合性単量体、副生成物等を除去するために反応後半、又は、反応終了後に一部水系媒体を留去しても良い。
【0063】
反応終了後、pH調整をし、分散安定剤を溶解せしめ、生成したトナー粒子を洗浄、ろ過により回収し、乾燥する。
【0064】
本発明の特徴であるトナー粒子のろ過、洗浄について、フィルタープレス装置の概略を示す図1を用いて説明する。
【0065】
分散安定剤を溶解せしめたスラリーは、送液口3よりろ過室内に供給される。ろ布2を通過したろ液は、ろ液口/洗浄水口4より排出される。圧搾後、洗浄水をろ液口/洗浄水口4より、ろ布2を介して供給し、ケーキの洗浄を行い、洗浄水口5をより排出する。洗浄終了後、4また5を使用して通気を行いケーキの水分量を40%以下とする。その後、各ろ板1同士を分離し、ケーキを排出する。
【0066】
排出されたケーキは、流動層乾燥機、気流乾燥機、真空乾燥機などの乾燥機で乾燥される。本発明のトナーには、各種トナー性能付与のために、外添剤を添加しても良い。使用される外添剤としては、例えば、以下のようなものが用いられる
金属酸化物(酸化アルミニウム,酸化チタン,チタン酸ストロンチウム,酸化セリウム,酸化マグネシウム,酸化クロム,酸化錫,酸化亜鉛など)・窒化物(窒化ケイ素など)・炭化物(炭化ケイ素など)・金属塩(硫酸カルシウム,硫酸バリウム,炭酸カルシウムなど)・脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウムなど)・カーボンブラック・シリカなど。
【0067】
これら外添剤は、トナー粒子100重量部に対し、0.01〜10重量部が用いられ、好ましくは0.05〜5重量部が用いられる。これら外添剤は、単独で用いても、また、複数併用しても良い。それぞれ、疎水化処理を行ったものが、より好ましい。
【0068】
トナーの平均粒径及び粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIあるいはコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いる。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製する。測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから、本発明に係わる体積分布から求めた体積基準の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの代表値をチャンネル毎の代表値とする)を求めた。
【0069】
後述の実施例におけるトナー評価項目の詳細は次の通りである。
【0070】
凝集度は、パウダーテスターPT−N型(ホソカワミクロン社製)にて#100,#200,#400メッシュ、トナー5gを用い、振幅1.5mm/15秒の条件で、以下の一般式により算出した。
【0071】
【数2】
【0072】
画出し評価は、キヤノン社製LBP−2030改造機を用いて、温度30℃,湿度80%の高温/高湿環境下で連続3000枚の耐久テストを行った。
【0073】
画像濃度は(5mm角,5mm丸,ベタ)をマクベス濃度計(マクベス社製)にて測定した数値である。
【0074】
カブリ濃度は、反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.LTD社製REFLECTOMETER MODEL TC−6DS)を用いて測定(プリント後の白地部反射濃度最悪値をDs、プリント前の用紙の反射濃度平均値をDrとしたときのDs−Drをカブリ濃度とした。)した。カブリ濃度が2%を超えるとカブリの目立つ画像をなる。
【0075】
【実施例】
以下、トナーの具体的な製造方法、実施例及び比較例をもって本発明を具体的に説明する。
【0076】
<実施例1>
イオン交換水700重量部に、0.1M−Na3PO4水溶液450重量部を投入し、60℃に加温した後、クレアミックス CLS−30S(エム・テクニック社製)を用いて、4500rpmにて撹拌した。これに1.0M−CaCl2水溶液68重量部を徐々に添加し、リン酸カルシウム塩を含む水系媒体を得た。
【0077】
一方、
上記処方を60℃に加温し、均一に溶解、分散した。これに、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8重量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
【0078】
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃,N2雰囲気下において、クレアミックスにて4500rpmで15分間撹拌し、重合性単量体組成物を造粒した。
【0079】
その後、パドル攪拌翼で攪拌しつつ、70℃に昇温し、10時間反応させた。重合反応終了後、80℃/減圧下で残存モノマーを留去し、冷却後、塩酸を加えリン酸カルシウム塩を溶解させた後、フィルタープレス(NR−PF−BL型:則武鉄工所製、フィルター通気量20cc/cm2・min、圧搾圧力5kg/cm2)を用い、表1に示した条件で、ろ過、水洗を行った。その後、乾燥して着色樹脂粒子(トナー粒子)を得た。
【0080】
得られたトナー粒子100重量部に対して、BET法による比表面積が200m2/gである疎水性シリカを1.0重量部外添し、トナーを得た。得られたトナーの重量平均粒径6.8μmでシャープな粒度分布であった。トナーの樹脂成分の分子量分布は、Mw:20万、Mn:2.5万、Mw/Mn:8であり、トナー粒子の形状係数は、SF−1:108、SF−2:110であった。その他物性及び評価結果を表1に示した。
【0081】
<実施例2>
実施例1の着色剤を、C.I.ピグメントイエロー17に、及び、通気時間を60分に変更した以外は実施例1と同様の操作を行いトナーを得た。得られたトナーの重量平均粒径は6.2μmでシャープな粒度分布であった。その他物性及び評価結果を表1に示した。トナーの樹脂成分の分子量分布は、Mw:22万、Mn:2.8万、Mw/Mn:7.86であり、トナー粒子の形状係数は、SF−1:110、SF−2:112であった。
【0082】
<参考例1>
実施例1のろ過条件を表1に示したとおり変更(洗浄水量、洗浄流量、通気時間)した以外は実施例1と同様の操作を行いトナーを得た。得られたトナーの重量平均粒径は6.8μmでシャープな粒度分布であった。その他物性及び評価結果を表1に示した。
【0083】
<参考例2>
実施例1のろ過条件を表1に示したとおり変更(洗浄水量、洗浄流量)した以外は実施例1と同様の操作を行いトナーを得た。得られたトナーの重量平均粒径は6.2μmでシャープな粒度分布であった。その他物性及び評価結果を表1に示した。
【0084】
<実施例3>
実施例1のろ過条件を表1に示したとおり変更(洗浄方法、通気時間)した以外は実施例1と同様の操作を行いトナーを得た。得られたトナーの重量平均粒径は6.8μmでシャープな粒度分布であった。その他物性及び評価結果を表1に示した。
【0085】
<実施例4>
実施例1のろ過条件を表1に示したとおり変更(洗浄流量、通気時間)した以外は実施例1と同様の操作を行いトナーを得た。得られたトナーの重量平均粒径は7.2μmで若干粗粒を含む粒度分布であった。その他物性及び評価結果を表1に示した。
【0086】
<比較例1>
実施例1のろ過装置を、連続式ベルトフィルターであるイーグルフィルター(住友重機械工業社製)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行いトナーを得た。得られたトナーの重量平均粒径は8.0μmで若干粗粒を含む粒度分布であった。その他物性及び評価結果を表1に示した。
【0087】
<比較例2>
実施例1のろ過装置を、バスケット型遠心分離機に変更した以外は実施例1と同様の操作を行いトナーを得た。得られたトナーの重量平均粒径は6.8μmでシャープな粒度分布であった。その他物性及び評価結果を表1に示した。
【0088】
【表1】
【0089】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によって、粒度分布がシャープで、流動性の優れたトナーが得られる。
【0090】
さらには、高温/高湿下においても著しい帯電低下をともなわず、耐久時でも安定した画像を得られる重合法トナーが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィルタープレス装置の概略を示す。
【符号の説明】
1 ろ板
2 ろ布
3 送液口
4 ろ液口/洗浄水口
5 洗浄水口
Claims (10)
- 少なくとも重合性単量体及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を、液状媒体中で重合して着色樹脂粒子を生成させ、該着色樹脂粒子を液状媒体から濾別し、乾燥して重合トナー粒子を製造する方法であり、液状媒体からの該着色樹脂粒子の濾別をフィルタープレス法によって行い、該着色樹脂粒子を濾別した後に、該着色樹脂粒子を該着色樹脂粒子100重量部あたり、水200〜1000重量部を使用して洗浄することを特徴とする重合トナー粒子の製造方法。
- 着色樹脂粒子100重量部あたり、10〜50重量部/minの流量で水洗浄する請求項1に記載の重合トナー粒子の製造方法。
- 着色樹脂粒子を水洗した後、通気して水分量40%以下にする請求項1又は2に記載の重合トナー粒子の製造方法。
- フィルタープレス法に使用するフィルターの通気量が2〜40cc/cm2・minである請求項1乃至3のいずれかに記載の重合トナー粒子の製造方法。
- フィルタープレス法の圧搾圧力が、1〜10kg/cm2である請求項1乃至4のいずれかに記載の重合トナー粒子の製造方法。
- フィルタープレス法での水洗浄が、少なくともフィルター側から水を供給する方法である請求項1乃至3のいずれかに記載の重合トナー粒子の製造方法。
- 該重合性単量体は、荷電制御剤をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の重合トナー粒子の製造方法。
- 該重合性単量体は、極性樹脂をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の重合トナー粒子の製造方法。
- 該重合性単量体は、荷電制御剤、極性樹脂及び低軟化点物質をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の重合トナー粒子の製造方法。
- 製造されたトナー粒子は、SF−1が100〜160及びSF−2が100〜140の形状係数を有していることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の重合トナー粒子の製造方法。
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