JP2004163820A - 重合トナーの製造方法 - Google Patents

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Nobuyasu Ota
信保 太田
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Abstract

【課題】気流乾燥機の乾燥室内の壁面に対する着色重合体粒子の融着を防止しながら、効率的かつ高捕集率で乾燥することにより、高品質の乾燥重合トナーを製造すること。
【解決手段】水系媒体中での重合工程後、水系媒体から着色重合体粒子を分離し、そして、湿潤状態の着色重合体粒子を乾燥する工程を含む重合トナーの製造方法である。湿潤状態の着色重合体粒子を気流乾燥機の乾燥室内に供給すると共に、乾燥室の壁面を冷却しながら、乾燥室内に熱風を送り込んで、湿潤状態の着色重合体粒子を熱風の気流に随伴させる方法により乾燥を行なう。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合トナーの製造方法に関し、さらに詳しくは、重合工程後、固液分離により水系媒体から分離した湿潤状態の着色重合体粒子の乾燥工程を含む重合トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式や静電記録方式の複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置において、感光体上に形成された静電潜像を可視像化するために現像剤が用いられている。現像剤は、着色剤や帯電制御剤、離型剤などが結着樹脂中に分散した着色粒子からなるトナーを主成分としている。
【0003】
トナーは、粉砕法により得られる粉砕トナーと、重合法により得られる重合トナーとに大別される。粉砕法では、熱可塑性樹脂を着色剤、帯電制御剤、離型剤などの添加剤成分と溶融混練し、粉砕し、分級することにより、着色樹脂粉末として粉砕トナーを得ている。重合法では、重合性単量体と着色剤とその他の添加剤とを含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で重合し、必要に応じて凝集させることにより、着色重合体粒子として重合トナー(「重合トナー粒子」ともいう)を得ている。
【0004】
トナーには、精細で高濃度の優れた画質の画像を形成することができ、温度や湿度などの環境変化によっても画質が劣化せず、しかも連続印字や連続複写が可能であることが要求されている。さらに、トナーには、省エネルギー化やカラー化に対応するために、保存性を損なうことなく、定着温度の低下などの定着性を改善することが求められている。
【0005】
重合法によれば、球形で粒径分布がシャープな重合トナーを製造することができるため、前記の要求を満足させる方法としては、粉砕法よりも効果的である。しかも、重合法によれば、重合性単量体組成物の重合後、生成した着色重合体粒子の存在下にシェル用重合性単量体を重合させて、コア・シェル型の着色重合体粒子を形成することが可能であり、それによって、保存性を損なうことなく、低温定着性に優れた重合トナーを製造することができる。
【0006】
近年、高解像度、高画質に対する要求水準が高まるにつれて、トナーの粒径をより小さくする傾向が高まっている。重合法によれば、例えば、体積平均粒径が3〜8μm程度の小粒径の重合トナーを容易に製造することができる。しかし、重合トナーの粒径を小さくすると、流動性が低下すると共に、凝集性が増大する傾向を示す。そのため、重合工程後の重合トナーの乾燥が困難になっている。
【0007】
重合法では、生成した着色重合体粒子を含有する水系媒体を固液分離して、湿潤状態の着色重合体粒子を回収し、次いで、乾燥している。乾燥方法として、例えば、減圧乾燥法を採用すると、減圧乾燥中に重合トナー粒子の凝集が起こり、所望の粒径分布とすることが困難になることがある。凝集した重合トナーを解砕しても、粗大粒子の混入が避けられず、解像度や画質が低下する。
【0008】
そこで、水性媒体中での懸濁重合により、重合トナーを含有する懸濁液を調製し、該懸濁液をそのまま、あるいは懸濁液を固液分離して得られるスラリーまたはケーキを気流乾燥する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献には、直管式若しくはループタイプの乾燥管を備えた気流乾燥機に、懸濁液またはケーキを80℃の熱風と共に送り込んで、気流乾燥した実施例が示されている。この方法によれば、熱風を利用して、効率的に重合トナーの連続乾燥を行なうことができる。しかし、該文献の実施例では、平均粒径が10μmを超える大粒径の重合トナーを乾燥処理した例が示されているだけである。このような高温の熱風を利用した気流乾燥法では、乾燥管の内壁に重合トナー粒子が融着し易く、特に体積平均粒径が10μm未満の小粒径の重合トナーに適用すると、融着物が増大傾向を示す。
【0009】
重合トナー粒子の乾燥工程において、ガス空塔速度が2.0〜10m/secである高速流動層を形成し、かつ、重合トナー粒子を循環させながら乾燥させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。該文献の実施例には、高速流動乾燥機内に含水トナーを投入して、50℃の空気を吹き込んだところ、含水トナーは、流動層を形成しつつ装置内を循環したこと、そして、120分後に乾燥トナーを取り出したことが示されている。しかし、この方法は、大型の装置を必要とし、しかも乾燥に長時間を要する。また、この方法において、乾燥効率を高めるために熱風の温度を上げると、高速流動部などの乾燥室内の壁面に重合トナーが融着し易くなる。
【0010】
乾燥室の内壁に重合トナー粒子が融着すると、乾燥品への粗大粒子の混入、乾燥効率の低下、乾燥による捕集効率の低下、乾燥機内の清掃による負担の増大などの問題を生じる。重合トナーが小粒径化するに従って、流動性が悪化し、凝集性が増大するため、従来の乾燥法では、前記問題点を克服することは極めて困難であった。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−324517号公報 (第1−2頁、実施例1−3)
【特許文献2】
特開平7−295295号公報 (第1−2頁、実施例1−2)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、湿潤状態の着色重合体粒子を気流乾燥する工程を含む重合トナーの製造方法において、気流乾燥機の乾燥室内の壁面に対する着色重合体粒子の融着を防止しながら、効率的かつ高捕集率で乾燥することにより、高品質の乾燥重合トナーを製造する方法を提供することにある。
【0013】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、水系媒体から分離した湿潤状態の着色重合体粒子を気流乾燥機の乾燥室内に供給すると共に、乾燥室の壁面を冷却しながら、乾燥室内に熱風を送り込んで、湿潤状態の着色重合体粒子を熱風の気流に随伴させて乾燥する方法に想到した。
【0014】
従来、気流乾燥機を用いた重合トナーの乾燥法では、熱効率の観点から、乾燥室の壁面を冷却することはなかった。乾燥室壁面への重合トナーの融着物の防止には、例えば、前記特許文献2に開示されているように、比較的低温の熱風で高速流層層を形成する方法が提案されていただけである。
【0015】
ところが、驚くべきことに、乾燥室の壁面を冷却しながら気流乾燥を行なうことにより、効率良く高品質の重合トナーの得られることが見出された。本発明の方法によれば、高温の熱風を用いて連続的に気流乾燥することができるため、装置を小型化することができる。また、重合トナーのガラス転移温度以上に加熱した熱風を用いても、乾燥室の壁面を冷却することによって、重合トナー同士の凝集や壁面への融着を防ぐことができる。さらに、本発明の方法を小粒径の重合トナーに適用した場合であっても、乾燥品への粗大物の混入や乾燥・捕集効率の低下がなく、高収率で安定した運転が可能となる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、少なくとも着色剤と重合性単量体とを含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で重合して、着色重合体粒子を合成する工程1、水系媒体から着色重合体粒子を分離する工程2、及び水系媒体から分離した湿潤状態の着色重合体粒子を乾燥する工程3を含む重合トナーの製造方法において、工程3での乾燥を、水系媒体から分離した湿潤状態の着色重合体粒子を気流乾燥機の乾燥室内に供給すると共に、乾燥室の壁面を冷却しながら、乾燥室内に熱風を送り込んで、湿潤状態の着色重合体粒子を熱風の気流に随伴させる方法により行うことを特徴とする重合トナーの製造方法が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
1.気流乾燥法
本発明の製造方法の特徴は、水系媒体から分離した湿潤状態の着色重合体粒子(以下、「ウエットケーキ」と呼ぶことがある)を、新規な方法により気流乾燥することにある。気流乾燥法は、一般に、各種形状の乾燥室に湿潤粒子と熱風とを導入し、熱風を利用して湿潤粒子を分散させ、かつ、湿潤粒子を熱風の気流(以下、「熱気流」と呼ぶことがある)に随伴させる。湿潤粒子は、熱風との熱交換により乾燥される。
【0018】
熱気流に随伴した湿潤粒子は、バッチ式乾燥法では、所望の乾燥状態に達するまで乾燥室内を循環させられ、連続式乾燥法では、乾燥室の出口から乾燥状態で連続的に排出される。熱気流は、湿潤粒子を浮遊させて流動層を形成してもよいし、湿潤粒子を浮遊させて旋回流を形成してもよい。気流乾燥機としては、各種型式のものを使用することができる。
【0019】
図1に、本発明の方法を好適に適用することができる気流乾燥機の一例の断面略図を示す。乾燥室1内には、その下部に分散ロータ2が配置され、上部に分級ロータ3が配置されている。分散ロータ2の下方に熱風入口6があり、そこから熱風を連続的に送り込む。分散ロータ2を高速回転すると、熱風の気流が旋回流を形成する。乾燥室内に熱風を連続的に送り込みながら、原料投入口5から湿潤粒子(本発明では、湿潤状態の着色重合体粒子)を投入すると、分散ロータ2の高速回転によって生み出される強力な衝撃力と旋回流により、気流中に湿潤粒子が分散され、旋回流の中で熱風と熱交換される。湿潤粒子を分散した熱風の気流は、乾燥室内で複雑な旋回流10を形成する。熱気流に随伴した湿潤粒子は、旋回流の中で乾燥され、分級ロータ3を経て、乾燥製品出口7から乾燥粒子として連続的に排出される。乾燥粒子は、捕集装置(図示せず)で捕集される。分級ロータ3の回転数に応じて、水分や粒度を調整することができる。
【0020】
上記構造の気流乾燥機は、入口での熱風温度を600℃にまで高めることができ、さらに、湿潤粒子は、強力な機内旋回流の中で熱風と熱交換されるため、通常の湿潤粒子の場合には、熱風温度150〜400℃で運転しても、乾燥室の内壁に殆んど付着することなく、効率的に乾燥される。
【0021】
ところが、このような気流乾燥機を、重合トナーのような熱融着する傾向が強い粒子に適用すると、熱風温度をかなり低くしても、湿潤重合トナーが乾燥室の内壁や捕集装置などに付着し、融着物を形成する。このような傾向は、体積平均粒径が10μm未満の小粒径の重合トナーの場合に顕著となる。重合トナーは、小粒径化するに従って、流動性が悪化し、凝集性が増大する。また、重合トナーの低温定着性を改善すると、加熱温度が低くても融着する傾向が強くなる。
【0022】
そこで、本発明では、乾燥室1の壁面を冷却しながら気流乾燥を行なう。乾燥室壁面の冷却方法の具体例としては、図1に示すように、乾燥室1の壁面(例えば、外周面)にジャケット4を装着し、このジャケットに冷媒を通して、壁面を冷却する方法が挙げられる。
【0023】
本発明の製造方法では、工程1により、水系媒体中で重合性単量体と着色剤とを含有する重合性単量体組成物を重合して、着色重合体粒子を生成させる。工程2では、着色重合体粒子を含有する水系媒体を固液分離する。固液分離は、一般に、濾過により行うが、遠心分離機を用いて行うこともできる。また、濾過した着色重合体粒子は、水などで洗浄してもよい。
【0024】
湿潤状態の着色重合体粒子は、水分含有率が40重量%以下、多くの場合10〜35重量%程度のケーキ状であるが、処理の都合に応じて、水分含有率がそれより大きなペースト状やスラリー状であってもよい。
【0025】
熱風の温度(入口温度)は、着色重合体粒子のガラス転移温度や粒径にもよるが、通常50〜100℃、好ましくは55〜90℃、特に好ましくは60〜85℃程度である。乾燥効率を上げるには、熱風温度を着色重合体粒子のガラス転移温度以上に設定することが好ましい。重合トナーのガラス転移温度(Tg)は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるが、使用する重合性単量体から計算される計算値で代替することができる。コア・シェル型重合トナー(着色重合体粒子)のように、Tgが複数ある場合には、低い方の値を採用する。
【0026】
乾燥室の壁面の温度は、着色重合体粒子のTgより低い温度に冷却しながら、気流乾燥することが好ましい。また、乾燥室の壁面の温度を着色重合体粒子のTgより低い温度に冷却しながら、乾燥室内に着色重合体粒子のTg以上の温度に加熱した熱風を送り込むことがより好ましい。
【0027】
乾燥室に装着したジャケットに冷媒を通す方法により乾燥室の壁面を冷却する場合には、ジャケットの冷媒排出口での冷媒の温度が着色重合体粒子のTgより15℃以上低い温度となるように、冷却条件を制御することが望ましい。冷却条件は、ジャケット内に導入する冷媒の温度や流量などにより制御することができる。
【0028】
熱風の供給風量は、気流乾燥機の型式などにもよるが、連続式乾燥法を採用する場合、通常、1,000〜50,000m/hrの範囲から選択することができる。湿潤状態の着色重合体粒子(ケーキ)は、連続的に乾燥室内に投入することができる。乾燥後の着色重合体粒子の水分含有率(水分率)は、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下であり、そのような乾燥製品が得られるように、ケーキの投入量や乾燥条件を調整することが望ましい。
【0029】
図1に示すような分散ロータを用いて乾燥室内で熱風の旋回流を形成しながら湿潤粒子を乾燥する方式の分散型気流乾燥機を使用し、その際、乾燥室の壁面を冷却しながら運転すると、連続式乾燥処理(1パス処理)が可能であり、同程度の能力を有するバッチ式乾燥機に比べて、装置を小型化することができる。
【0030】
2.重合トナー
重合トナー(着色重合体粒子)の製造方法としては、懸濁重合法、乳化重合法などがあり、これらの中でも所望の粒径の重合トナーを製造しやすい点で、懸濁重合法が好ましい。乳化重合法を採用する場合には、重合後に凝集させるなどして、粒径を調整することができる。乳化重合法と懸濁重合法とを組み合わせてもよい。重合トナーの製造は、常法に従って行うことができるが、懸濁重合法を中心にその詳細を説明すると、以下の通りである。
【0031】
重合トナーの製造方法は、少なくとも着色剤と重合性単量体とを含有する重合性単量体組成物を水系媒体(「水系分散媒体」と呼ぶこともある)中で重合する工程を含む。該重合性単量体組成物を重合して着色重合体粒子を生成させるが、所望により、該着色重合体粒子の存在下にシェル用重合性単量体を更に重合させる工程を付加して、コア・シェル型重合体粒子を生成させてもよい。
【0032】
水系媒体としては、一般に、イオン交換水などの水を用いるが、所望により、アルコールなどの親水性溶媒を加えてもよい。重合性単量体組成物には、必要に応じて、架橋性単量体、マクロモノマー、帯電制御剤、離型剤、滑剤、分散助剤、分子量調整剤などの各種添加剤を含有させることができる。重合を開始するために、重合開始剤を使用する。
【0033】
(1)重合性単量体:
重合性単量体の主成分として、一般に、モノビニル単量体を使用する。モノビニル単量体としては、例えば、スチレンなどの芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン単量体;これらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0034】
モノビニル単量体と共に、それぞれ2個以上のビニル基を有する架橋性単量体及び/または架橋性重合体を用いると、ホットオフセット特性を改善することができる。架橋性単量体及び/または架橋性重合体の使用割合は、モノビニル単量体100重量部に対して、好ましくは10重量部以下、より好ましくは0.01〜7重量部である。
【0035】
モノビニル単量体と共にマクロモノマーを用いると、高温での保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有する巨大分子であり、数平均分子量が通常1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。マクロモノマーの使用割合は、モノビニル単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部である。
【0036】
(2)着色剤:
着色剤としては、カーボンブラックやチタンホワイトなどのトナーの分野で用いられている各種顔料及び染料を使用することができる。黒色着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシンベースの染顔料類;コバルト、ニッケル、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子;等を挙げることができる。カラートナー用着色剤としては、一般に、イエロー、マゼンタ、シアンなどの各色の顔料が使用される。着色剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で用いられる。
【0037】
(3)帯電制御剤:
重合トナーの帯電性を向上させるために、各種の正帯電性または負帯電性の帯電制御剤を重合性単量体組成物中に含有させることが好ましい。帯電制御剤としては、例えば、カルボキシル基または含窒素基を有する有機化合物の金属錯体、含金属染料、ニグロシン、帯電制御樹脂などが挙げられる。帯電制御剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部の割合で用いられる。
【0038】
(4)離型剤:
オフセット防止または熱ロール定着時の離型性の向上などの目的で、離型剤を重合性単量体組成物中に含有させることができる。離型剤としては、ポリオレフィンワックス、植物系天然ワックス、石油系ワックス及びその変性ワックス、合成ワックス、ジペンタエリスリトールヘキサミリステートなどの多官能エステル化合物、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。離型剤の使用割合は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
【0039】
(5)滑剤・分散助剤:
着色剤の均一分散等を目的として、脂肪酸、脂肪酸金属塩などの滑剤;シラン系またはチタン系カップリング剤等の分散助剤;などを重合性単量体に含有させることができる。このような滑剤や分散剤は、着色剤の重量を基準として、通常1/1000〜1/1程度の割合で使用される。
【0040】
(6)重合開始剤:
重合性単量体の重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、1,1′,3,3′−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類;などを挙げることができる。これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を使用することもできる。これらの開始剤の中でも、重合性単量体に可溶な油溶性の重合開始剤を選択することが好ましい。重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部の割合で用いられる。
【0041】
重合開始剤は、重合性単量体組成物中に予め添加することができるが、早期重合を抑制するために、重合性単量体組成物の液滴形成工程の終了後または重合反応の途中の懸濁液に直接添加することもできる。
【0042】
(7)分子量調整剤:
分子量調整剤としては、例えば、メルカプタン類、ハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。分子量調整剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
【0043】
(8)分散安定剤:
分散安定剤としては、難水溶性金属化合物のコロイドが好適である。難水溶性金属化合物としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、などの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;りん酸カルシウムなどのりん酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄の金属水酸化物;等を挙げることができる。これらの中でも、難水溶性金属水酸化物のコロイドは、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、画像の鮮明性が向上するので好適である。
【0044】
難水溶性金属化合物のコロイドとしては、水溶性多価金属化合物水溶液のpHを7以上に調整することによって得られる難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることが好ましい。難水溶性金属化合物のコロイドは、個数粒径分布D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.5μm以下で、D90(個数粒径分布の90%累積値)が1μm以下であることが好ましい。分散安定剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の割合で使用する。
【0045】
本発明においては、分散安定剤として、水溶性高分子などのその他の分散安定剤を用いることができる。帯電特性の環境依存性が大きくならない範囲内で、界面活性剤を使用することもできる。
【0046】
(9)重合工程:
重合トナーは、重合性単量体の重合により生成した重合体が結着樹脂となり、その中に着色剤や帯電制御剤、離型剤などの添加剤成分が分散した着色重合体粒子である。この着色重合体粒子をコアとし、その上に重合体層からなるシェルを形成して、コア・シェル型重合体粒子とすることができる。
【0047】
重合トナーは、例えば、以下の工程により得ることができる。重合性単量体、着色剤、及びその他の添加剤などを混合機を用いて混合し、必要に応じて、メディヤ型湿式粉砕機などを用いて湿式粉砕し、重合性単量体組成物を調製する。次に、重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系分散媒体中に分散し、撹拌して、重合性単量体組成物の均一な液滴(体積平均粒径が50〜1000μm程度の一次液滴)を形成する。重合開始剤は、水系分散媒体中で液滴の大きさが均一になってから水系分散媒体に添加することが好ましい。
【0048】
水系分散媒体中に重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液に重合開始剤を添加混合し、さらに、高速回転剪断型撹拌機を用いて、液滴の粒径が目的とする重合トナー粒子に近い小粒径になるまで撹拌する。このようにして形成された微小粒径の液滴(体積平均粒径が1〜12μm程度の二次液滴)を含有する懸濁液を重合反応器に仕込み、通常5〜120℃、好ましくは35〜95℃の温度で懸濁重合を行う。
【0049】
懸濁重合により、重合性単量体の重合体中に着色剤などの添加剤成分が分散した着色重合体粒子が生成する。この着色重合体粒子を重合トナーとして使用することができるが、重合トナーの保存性(耐ブロッキング性)、低温定着性、定着時の溶融性などを改善する目的で、懸濁重合によって得られた着色重合体粒子の上に、さらに重合体層を形成して、コア・シェル型構造を有するカプセルトナーとすることができる。
【0050】
コア・シェル型構造の形成方法としては、前記の着色重合体粒子をコア粒子とし、該コア粒子の存在下にシェル用重合性単量体を更に重合して、コア粒子の表面に重合体層(シェル)を形成する方法が好ましい。シェル用重合性単量体として、コア粒子を構成する重合体成分のガラス転移温度(Tg)よりも高いTgを有する重合体を形成するものを使用すると、重合トナーの保存性を改善することができる。コア用重合性単量体とシェル用重合性単量体との重量比は、通常40/60〜99.9/0.1、好ましくは60/40〜99.7/0.3である。
【0051】
シェル用重合性単量体は、コア粒子の平均粒径よりも小さな液滴として重合反応系に添加することが好ましい。シェル用重合性単量体の液滴の粒径を小さくすることにより、コア粒子の周囲に均一な重合体層を形成しやすくなる。シェル用重合性単量体を小さな液滴とするには、シェル用重合性単量体と水系分散媒体との混合物を、例えば、超音波乳化機などを用いて、微分散処理を行い、得られた分散液を重合反応系に添加すればよい。シェル用重合性単量体には、必要に応じて、帯電制御剤を加えることができる。
【0052】
コア・シェル型構造の重合トナーを製造するには、コア粒子を含有する懸濁液中に、シェル用重合性単量体またはその水系分散液を一括して、あるいは連続的若しくは断続的に添加する。シェル用重合性単量体を添加する際に、水溶性のラジカル開始剤を添加することがシェルを効率良く形成する上で好ましい。水溶性重合開始剤としては、過硫酸塩、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕などのアゾ系開始剤等を挙げることができる。水溶性重合開始剤の使用量は、シェル用重合性単量体100重量部当り、通常0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%である。シェルの平均厚みは、通常0.001〜1.0μm、好ましくは0.003〜0.5μmである。
【0053】
(10)重合トナー:
本発明の製造方法により得られる重合トナー(コア・シェル型構造のカプセルトナーを含む)の体積平均粒径(dv)は、通常2〜12μm、好ましくは3〜8μm、より好ましくは3〜7μmである。重合トナーの体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)で表される粒径分布は、通常1.7以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下である。重合トナーの体積平均粒径が大きすぎると、解像度が低下しやすくなる。重合トナーの粒径分布が大きいと、大粒径のトナーの割合が多くなり、解像度が低下しやすくなる。
【0054】
重合トナーは、長径(dl)と短径(ds)との比(dl/ds)で表される球形度が、好ましくは1〜1.3、より好ましくは1〜1.2の実質的に球形であることが好ましい。実質的に球形の重合トナーを用いると、感光体上のトナー像の転写材への転写効率が向上する。
【0055】
重合トナーは、各種現像剤のトナー成分として使用することができるが、非磁性一成分現像剤として使用することが好ましい。重合トナーを非磁性一成分現像剤とする場合には、各種外添剤を混合することができる。外添剤としては、流動化剤や研磨剤などとして作用するシリカなどの無機粒子や有機樹脂粒子が挙げられる。外添剤の使用量は、重合トナー100重量部に対して、通常0.1〜6重量部である。外添剤を重合トナーに付着させるには、通常、重合トナーと外添剤とをヘンシェルミキサーなどの混合機に入れて攪拌する。
【0056】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、重量(質量)基準である。測定法は、以下の通りである。
【0057】
(1)平均粒径の測定:
重合トナーの体積平均粒径(dv)及び個数平均粒径(dp)は、マルチサイザー(ベックマン・コールター社製)により測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径=100μm、媒体=イソトンII、濃度=10%、測定粒子個数=100,000個の条件で行った。
【0058】
(2)水分率の測定
重合トナーの水分率の測定は、含水重合トナーをアルミニウム皿に採取して精秤(A[g])し、105℃に設定した乾燥機に2時間放置した後、冷却して精秤(B[g])し、以下の式より計算して求めた。
含水率(%)=((A−B)/A)×100
【0059】
(3)発生した融着物の割合:
気流乾燥機を用いて重合トナーを乾燥した後、乾燥機の内部に付着した重合トナーを掻きとって、その量を測り、重合トナー全量に対する割合(%)を算出した。
【0060】
[実施例1]
1.重合トナーの合成工程
スチレン80.5部とn−ブチルアクリレート19.5部からなるコア用重合性単量体(これらの単量体を共重合して得られた共重合体のTg=55℃)、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」、Tg=94℃)0.3部、ジビニルベンゼン0.5部、t−ドデシルメルカプタン1.2部、カーボンブラック(三菱化学社製、商品名「#25B」)7部、及び帯電制御樹脂(藤倉化成社製、商品名「FCA−626M」7部をメディア型湿式粉砕機を用いて湿式粉砕を行い、コア用重合性単量体組成物を調製した。
【0061】
イオン交換水250部に塩化マグネシウム10.2部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム6.2部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイドの分散液を調製した。生成した上記コロイドの粒径分布をSALD粒径分布測定器(島津製作所社製)で測定したところ、粒径は、D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.35μmで、D90(個数粒径分布の90%累積値)が0.62μmであった。
【0062】
メチルメタクリレート(Tg=105℃)2部と水65部を超音波乳化機にて微分散化処埋して、シェル用重合性単量体の水分散液を得た。シェル用重合性単量体の液滴の粒径は、D90が1.6μmであった。
【0063】
上記で得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液(コロイド量9.0部)にコア用重合性単量体組成物を投入し、液滴が安定するまで撹拌し、そこにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名「パーブチルO」)6部を添加した後、高剪断力撹拌装置(荏原製作所社製「エバラマイルダー」)を用いて高剪断撹拌して、コア用単量体組成物の液滴を造粒した。
【0064】
造粒されたコア用単量体組成物が分散された水酸化マグネシウムコロイド分散液に、四ホウ酸ナトリウム十水和物を1部添加し、攪拌翼を装着した反応器に入れ、85℃で重合反応を開始させた。重合転化率がほぼ100%に達した後、前記シェル用重合性単量体の水分散液に水溶性開始剤[和光純薬社製、商品名「VA−086」=2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド〕]0.3部を溶解したものを反応器に添加した。引き続き、4時間重合を継続した後、反応を停止し、コア・シェル型の着色重合体粒子の水分散液を得た。
【0065】
.固液分離工程
上記により得た重合体粒子の水分散液を攪拌しながら、硫酸を添加しpHを4以下にして酸洗浄を行い、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えて再スラリー化し水洗浄を行った。その後、再度、脱水と水洗浄を数回繰り返し行い、濾過分離によって着色重合体粒子のウエットケーキを得た。得られた着色重合体粒子の粒径を測定したところ、体積平均粒径は5.64μm、個数平均粒径は4.32μmであった。ウエットケーキの水分率は、30%であった。
【0066】
3.乾燥工程
上の方法で調製したケーキを、乾燥室の壁面に冷却装置を装着した分散型気流乾燥機(ホソカワミクロン社製、「ドライマイスタDMR−1型」)を用いて、熱風入口温度80℃、出口温度50℃、ケーキ供給量90kg/hr、供給風量1500m/hr、ジャケットの冷媒排出口での冷却水温度27℃の条件で、壁面を冷却しながら、1時間にわたって気流乾燥を行った(処理ケーキ量90kg)。得られた乾燥トナーの水分率は0.18%、体積平均粒径は5.66μmであり、トナー凝集や機内への融着は生じていなかった。結果を表1に示す。
【0067】
[比較例1]
実施例1と同様にして調製したケーキを、実施例1の装置と乾燥原理は同様であるが冷却装置を設けていない気流乾燥機(APV社製、「スピンフラッシュドライヤ53型」)を用いて、熱風入口温度80℃、出口温度50℃、ケーキ供給量90kg/hr、供給風量1500m/hrの条件で、1時間にわたって気流乾燥を行った(処理ケーキ量90kg)。その結果、水分率が0.19%の乾燥トナーが得られたが、その体積平均粒径は、6.02μmに増大していた。また、乾燥機・捕集装置内への重合トナーの融着が著しく、乾燥トナー回収率は、実施例1に比べて非常に低かった。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
Figure 2004163820
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、湿潤状態の着色重合体粒子を気流乾燥する工程を含む重合トナーの製造方法において、気流乾燥機の乾燥室内の壁面に対する着色重合体粒子の融着を防止しながら、効率的かつ高捕集率で乾燥することにより、高品質の乾燥重合トナーを製造することができる。
【0070】
本発明の方法によれば、高温の熱風を用いて連続的に気流乾燥することができるため、装置を小型化することができる。重合トナーのガラス転移温度以上に加熱した熱風を用いても、乾燥室の壁面を冷却することによって、重合トナー同士の凝集や壁面への融着を防ぐことができる。小粒径の重合トナーに適用した場合であっても、乾燥品への粗大物の混入や乾燥・捕集効率の低下がなく、高収率で安定した運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する気流乾燥機の一例の説明図である。
【符号の説明】
1:乾燥室、
2:分散ロータ、
3:分級ロータ、
4:ジャケット、
5:原料投入口、
6:熱風入口、
7:乾燥製品出口、
8:冷媒導入口、
9:冷媒排出口、
10:熱風と重合トナー粒子の旋回流の状態。

Claims (4)

  1. 少なくとも着色剤と重合性単量体とを含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で重合して、着色重合体粒子を合成する工程1、水系媒体から着色重合体粒子を分離する工程2、及び水系媒体から分離した湿潤状態の着色重合体粒子を乾燥する工程3を含む重合トナーの製造方法において、工程3での乾燥を、水系媒体から分離した湿潤状態の着色重合体粒子を気流乾燥機の乾燥室内に供給すると共に、乾燥室の壁面を冷却しながら、乾燥室内に熱風を送り込んで、湿潤状態の着色重合体粒子を熱風の気流に随伴させる方法により行うことを特徴とする重合トナーの製造方法。
  2. 乾燥室の壁面を着色重合体粒子のガラス転移温度より低い温度に冷却しながら、乾燥室内に着色重合体粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱した熱風を送り込む請求項1記載の製造方法。
  3. 乾燥室に装着したジャケットに冷媒を通す方法により乾燥室の壁面を冷却し、その際、ジャケットの冷媒排出口での冷媒の温度が着色重合体粒子のガラス転移温度より15℃以上低い温度となるように、冷却条件を制御する請求項1または2記載の製造方法。
  4. 工程1において、少なくとも着色剤と重合性単量体とを含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で重合した後、該着色重合体粒子の存在下にシェル用重合性単量体を重合する工程を付加して、コア・シェル型の着色重合体粒子を合成する請求項1記載の製造方法。
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