JP5903031B2 - 磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、磁気ディスク、特に熱アシスト磁気記録方式対応の磁気ディスクの平坦度を矯正された基板(ブランク)であり、表面を研削され、その上に剛性を得るための下地膜を形成された後、FePt系合金のような高い保磁力を有する磁性膜が形成されて磁気ディスクになる。本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、形状および寸法を特に規定するものではないが、板厚0.78〜1.8mm、外径66〜96mm、内径19〜24mmの円環形状の板である、一般的な2.5〜3.5インチタイプの磁気ディスクのブランクに適用することができる。
Mgは、磁気ディスク用のアルミニウム合金基板として必要な強度(耐力95MPa以上)を得るための必須元素である。強度が不十分では、磁気ディスクに製造されたとき、例えば落下時の衝撃で変形し易かったり、記録時に磁気ヘッドの接触による傷が付き易いためにハードディスクドライブの耐衝撃性のスペックを満足することができない。十分な強度とするために、Mgの含有量は3.5質量%以上とし、好ましくは3.8質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは4.5質量%以上である。一方、Mgの含有量が6質量%を超えると、熱間割れ感受性が高くなり、熱間圧延中に割れが生じる虞がある。したがって、Mgの含有量は、6質量%以下とし、好ましくは5.5質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
Cr,Mn,Zrは、それぞれアルミニウム合金の強度を高める効果があり、この効果を得るために、これらの元素の少なくとも1種を0.05質量%以上含有することが好ましい。また、Cr,Mn,Zrは、それぞれ加熱による結晶粒の粗大化を抑制する効果もあり、積付け焼鈍、あるいはさらに500℃の高温下での磁性膜の成膜による表面の平滑性の低下を防止することができる。この効果を得るために、Zrは前記と同様に0.05質量%以上とし、Crは0.2質量%以上、Mnは0.3質量%以上とすることがさらに好ましい。また、Cr,Mn,Znの2種以上を組み合わせて含有することで、前記範囲未満の含有量であっても同等の効果が得られる。一方、Cr,Zrは0.6質量%、Mnは1.5質量%をそれぞれ超えると、アルミニウム合金の融点が高くなるため、溶解時に溶け残ったり、溶湯の粘度が高くなって鋳造困難となる場合がある。さらにCr系、Mn系、Zr系の粗大な初晶が晶出し、このようなアルミニウム合金基板を磁気ディスクに製造すると、磁気ディスクドライブに組み込んだときにヘッドクラッシュを生じる虞がある。したがって、Crの含有量は0.05〜0.6質量%、Mnの含有量は0.05〜1.5質量%、Zrの含有量は0.05〜0.6質量%とする。
不可避的不純物として、例えば、Si,Fe,Cu,Zn,Ti,B,V等が挙げられる。Si,Feは金属間化合物を形成するため、含有量は少ないほど好ましいが、Si:0.03質量%以下、Fe:0.05質量%以下であれば本発明の所望する効果に影響しない。また、Cu:0.07質量%以下、Zn:0.38質量%以下、Ti,B,V:各0.01質量%以下であれば本発明の所望する効果に影響しない。
本発明に係るアルミニウム合金基板は、熱アシスト磁気記録方式に好適なFePt系合金を磁性膜として備えた磁気ディスクのための基板とすることを可能とする。そのため、FePt系合金膜の成膜における熱処理を模擬して、500℃で10秒間の加熱をして、前後の平坦度の変化量を制御する。アルミニウム合金基板の平坦度が5μmを超えて変化すると、磁気ディスクに製造されたときに必要な平坦性が得られないため、磁気ディスク用の基板として不適である。したがって、500℃で10秒間加熱された前後における平坦度の変化量は5μm以下とし、少ないほど好ましい。このような、高温での歪みを抑制したアルミニウム合金基板は、後記の製造方法(積付け焼鈍条件)によって得ることができる。なお、アルミニウム合金基板の平坦度とは、アルミニウム合金基板の表面の最も高い点と最も低い点との差(P−V値)であり、例えば半導体レーザーによる干渉縞により測定することができる。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、前記成分のアルミニウム合金を、従来の製造方法と同様に、溶解、鋳造、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、さらに途中に必要に応じて焼鈍(荒鈍や中間焼鈍)により圧延板(アルミニウム合金板)とし、このアルミニウム合金板を打抜き等により円環形状等の所望の形状に成形する成形工程と、成形したアルミニウム合金板を両面から加圧した状態で焼鈍する(積付け焼鈍)ことにより、成形時の歪みを矯正して平坦化する積付け焼鈍工程と、を行って製造される。本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、成形工程までは公知の製造方法と同様とすることができ、前記したように、積付け焼鈍工程の条件により高温の処理における歪みを抑制する。以下、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板の積付け焼鈍条件について、詳細に説明する。
加熱速度が2℃/分を超える場合、および冷却速度が2℃/分を超える場合のいずれにおいても、熱応力の発生により内部に歪みが残留し易くなり、磁性膜のスパッタリングでの急速加熱時に平坦度の変化量が増加してしまう。加熱速度が速い場合はさらに、積み重ねられたアルミニウム合金板の内部まで熱が伝わり難いために加熱が不十分となって、歪みが完全に除去されない場合がある。そのため、焼鈍温度(保持温度)への加熱速度を2℃/分以下とし、保持後の冷却速度を2℃/分以下とする。なお、保持後の冷却は、200℃以下になるまで前記の冷却速度で冷却する。200℃まで冷却される間に内部歪みは除去されるため、その後は急速冷却してもよい。好ましくは150℃以下になるまで、前記の冷却速度で冷却する。
積付け焼鈍の焼鈍温度が400℃未満であったり、保持時間が2時間未満であったりすると、積付け焼鈍時に磁気ディスク用アルミニウム合金基板の残留歪みを完全に除去することができないため、磁性膜のスパッタリングでの急速加熱により平坦性が悪化する。また、残留歪みにより結晶粒の安定性も低下し、加熱時に結晶粒が粗大化しやすくなる。したがって、積付け焼鈍の焼鈍温度は400℃以上とし、保持時間は2時間以上とする。焼鈍温度は、過剰に高くても効果が向上せず、さらに結晶粒が異常成長するため、450℃以下とすることが好ましい。同様に、保持時間5時間を超えて積付け焼鈍を行っても、効果が向上せず、生産性が低下する。
供試材の平坦度を測定し、次に、FePt系合金のスパッタリングを模擬した加熱処理として、連続焼鈍炉にて昇温速度600℃/分で500℃に昇温し、10秒間加熱した後、炉外にてエアー噴射による空冷で100℃以下に冷却した。加熱処理後、再度、平坦度を測定し、前後の平坦度の差を算出して、平坦度の変化量とした。なお、加熱処理は、開始温度を室温(25℃)とし、この室温から前記昇温速度で昇温した。平坦度は、NIDEK社製FT−17を用いて、P−V値を測定して得た。
供試材を切り出してJIS5号引張試験片を作製し、JISZ2241に基づいた引張試験により耐力を測定した。合格基準は、耐力が95MPaを超えることとした。
Claims (4)
- Mg:3.5質量%以上6質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる磁気ディスク用アルミニウム合金基板であって、
500℃で10秒間加熱された前後における平坦度の変化量が5μm以下であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板。 - 前記アルミニウム合金がさらに、Cr:0.05質量%以上0.6質量%以下、Mn:0.05質量%以上1.5質量%以下の少なくとも1種を含有し、かつ、前記Crの含有量が0.3質量%以上および前記Mnの含有量が0.2質量%以上の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
- 前記アルミニウム合金がさらに、Zr:0.05質量%以上0.6質量%以下を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法であって、
前記アルミニウム合金からなるアルミニウム合金板を成形する成形工程と、前記成形したアルミニウム合金板を積付け焼鈍にて平坦化する積付け焼鈍工程と、を行い、
前記積付け焼鈍工程は、前記成形したアルミニウム合金板を、加熱速度2℃/分以下で400℃以上に加熱して、400℃以上で2時間以上保持した後、冷却速度2℃/分以下で200℃以下に冷却することを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法。
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