JP5903031B2 - 磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法 - Google Patents

磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5903031B2
JP5903031B2 JP2012261420A JP2012261420A JP5903031B2 JP 5903031 B2 JP5903031 B2 JP 5903031B2 JP 2012261420 A JP2012261420 A JP 2012261420A JP 2012261420 A JP2012261420 A JP 2012261420A JP 5903031 B2 JP5903031 B2 JP 5903031B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aluminum alloy
mass
magnetic disk
less
alloy substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2012261420A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013151737A (ja
Inventor
佳織 寺田
佳織 寺田
梅田 秀俊
秀俊 梅田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2012261420A priority Critical patent/JP5903031B2/ja
Publication of JP2013151737A publication Critical patent/JP2013151737A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5903031B2 publication Critical patent/JP5903031B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Magnetic Record Carriers (AREA)
  • Manufacturing Of Magnetic Record Carriers (AREA)

Description

本発明は、表面に磁性膜を成膜して磁気ディスクとするアルミニウム合金製の基板およびその製造方法に関する。
コンピュータ等の記録媒体として使用される磁気ディスクは、非磁性の基板に磁性膜を付着させてなる。一般的にこの基板は、軽量かつ高い剛性を有し、平滑な表面であることが要求される。そのため、非磁性で軽量、さらに鏡面加工等により平滑な表面を容易に得ることができる等の理由からアルミニウム合金が使用される。詳しくは、アルミニウム合金板を円環形状等の磁気ディスクの形状に成形し、平坦化、平滑化等の処理の後、その表面に剛性を得るためのNi−Pめっき膜等を約10μmの厚さに形成して磁気ディスク用基板としている。
従来、このようなアルミニウム合金板としては、ハードディスクドライブ用の耐衝撃性で必要となる十分な強度を有し、十分な表面平滑性が得られる等の理由からJIS H 4000に規定の5086合金(Al−Mg合金)が使用されてきた。さらに、磁気ディスク用基板により適するものとするために、表面の微小な凹凸やうねりを抑制し、平滑性を向上させたアルミニウム合金板が開発されている(例えば、特許文献1〜4)。
特許文献1には、Mg:3〜6質量%を含有し、結晶粒径が25μm以下に抑制された磁気ディスク基板用Al合金板とするために、平坦化のための積付け焼鈍(歪み矯正焼鈍)において、10℃/分以上で280〜550℃に加熱し、同温度範囲内で1〜60分間保持した後、0.5〜10℃/分で150℃まで冷却する発明が開示されている。このような構成とすることにより、微小うねりの発生が少なく、精密切削性が優れるとともに、磁気ディスクの高記録密度化にも十分対応することができるとしている。
特許文献2には、Mg:3.0〜5.0質量%、所定量のFe,Si,Cuを含有し、Zn:0.05質量%未満とし、さらにGa:50〜400ppm、Be:0.5〜100ppmを含有し、7μm以上の金属間化合物を10個/mm2以下とする磁気ディスクアルミニウム合金の発明が開示されている。Znを所定値未満に規制し、Ga,Beを特定の範囲とすることで、鏡面仕上げ性および耐食性が良好で、さらに均一微細なNi−Pめっき膜を形成することができるとしている。
特許文献3には、Mg:1〜8質量%を含有し、Si,Feを不純物元素として規制するとともに、Ga:150ppm以下に規制するという磁気ディスク基板用アルミニウム合金の発明が開示されている。Gaを所定値以下に規制することによってマトリクスからの金属間化合物の脱落を抑制し、表面欠陥を生じ難くすることができるとしている。
特許文献4には、Mg:3.0〜6.0質量%、Zn:0.25〜1.0質量%を含有し、さらに所定量のCu,Crを含有し、Fe,Siの各含有量を0.05質量%以下に規制し、結晶粒界に存在する最大幅0.02μm以上、最大長さ0.1μm以上のAl−Mg−Zn系金属間化合物の数が1mmあたり平均で1個以下とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板の発明が開示されている。さらにその積付け焼鈍条件として、300〜400℃に30分間以上保持した後、350〜200℃の温度範囲において冷却速度200℃/分以上で急速冷却するとしている。Znを特定の範囲とすることでジンケート処理後のアルミニウム合金基板表面に生じる結晶粒の分布を反映した模様(結晶粒模様)の形成を抑制し、もってNi−Pめっき膜表面の微小な凹凸の発生を抑制し、結果的に表面に微小なうねりが発生することなく、高平坦度および高平滑度な表面を得ることができるとしている。
特許文献1〜4に記載されるように、熱処理による結晶粒の粗大化を抑制する等、アルミニウム合金組織を制御することにより、アルミニウム合金板の成形後の積付け焼鈍や磁性膜の成膜等の加熱工程後における、アルミニウム合金板の研削等の表面処理後の表面あるいはNi−Pめっき膜の研磨面の平滑性の低下を防止して、磁気ディスクの高記録密度化に対応している。
特開昭61−91352号公報 特開平4−99143号公報 特開平2−205651号公報 特許第3875175号公報
近年は高記録密度化の要求が極めて強く、年々記録密度の向上がなされているが、高記録密度化のためには磁性粒子の微細化を要する。しかし、一般に磁性粒子の微細化とともに保磁力が低下するので、室温程度の熱エネルギーでも減磁する「熱揺らぎ」と呼ばれる現象が生じ、記録されたデータすなわち磁化方向を保持することができなくなる。熱揺らぎのため、現行の垂直記録方式での記録密度の限界は、1Tb/inch2(テラバイト毎平方インチ)といわれている。そこで、さらなる高密度記録化を図る技術として、熱アシスト磁気記録方式が注目されている。
熱アシスト磁気記録方式では、磁気ディスク上の記録しようとする微小領域をレーザー等で瞬間的に加熱しながら、加熱された微小領域を磁気ヘッドで所望の磁化方向としてデータを記録する。磁性材料のキュリー温度近傍まで加熱することで一時的に保磁力を下げて、常温に戻ると保磁力が回復されるので、微細化された磁性粒子であっても減磁しないような高い保磁力を有し、これまでの磁気ヘッドでは記録できなかった磁性材料を適用することができる。すなわち熱アシスト磁気記録方式で記録すれば、磁性粒子の微粒子化と安定した記録を両立できることから、超高密度記録化の実現に向けて研究、開発が進められている。
ここで、熱アシスト磁気記録方式に好適な磁性材料としてFePt系合金が知られている。このFePt系合金は、成膜時に400〜500℃程度という高温で数〜10秒間程度の熱処理が必要である。
しかしながら、現行の磁気ディスクに適用されている磁性膜の成膜は300℃以下でのスパッタリングであり、従来用いられてきたJIS5086合金や特許文献1〜4に記載されている磁気ディスク用アルミニウム合金基板では、500℃もの高温に加熱されると、歪んで平坦度が悪化する。なお、熱アシスト磁気記録方式による書込自体は、磁気ディスクの磁性膜における微小領域に限定されてかつ瞬間的に極めて短時間加熱されるだけであるので、磁気ディスク用アルミニウム合金基板への影響は殆どない。また、熱アシスト磁気記録方式対応の磁気ディスクにおいては、磁性膜の下地膜として、磁性膜の成膜時の高温の加熱により、表面の平滑性が損なわれず、かつ磁性を有することのない高耐熱性の非磁性膜が適用される。
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、500℃という高温に加熱されても平坦度の悪化を抑制することのできる磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、従来よりも高強度であり、かつ500℃という高温に加熱されても平坦度の変化の小さいアルミニウム合金基板を鋭意研究した結果、以下のような手段とすることで前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、Mg:3.5質量%以上6質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、500℃で10秒間加熱された前後における平坦度の変化量が5μm以下であることを特徴とする。また、前記アルミニウム合金は、Cr:0.05質量%以上0.6質量%以下、Mn:0.05質量%以上1.5質量%以下の少なくとも1種を含有し、かつ、前記Crの含有量が0.3質量%以上および前記Mnの含有量が0.2質量%以上の少なくとも一方であることが好ましい。あるいは、前記アルミニウム合金は、Zr:0.05質量%以上0.6質量%以下を含有することが好ましい。
このように、Mgを所定量含有しているので磁気ディスク用アルミニウム合金基板として必要な強度を確保することができ、また、500℃で10秒間加熱された前後における平坦度の変化量が5μm以下に制御されているので、500℃の高温処理を要する磁気ディスクのためのアルミニウム合金基板とすることができる。さらにCr,Mn,Zrを含有することにより、強度がいっそう向上し、また加熱されても結晶粒の粗大化が抑制されて、表面の平滑性が低下し難い磁気ディスク用アルミニウム合金基板となる。
また、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法は、前記アルミニウム合金からなるアルミニウム合金板を成形する成形工程と、前記成形したアルミニウム合金板を積付け焼鈍にて平坦化する積付け焼鈍工程と、を行うものであって、前記積付け焼鈍工程が、前記成形したアルミニウム合金板を、加熱速度2℃/分以下で400℃以上に加熱して、400℃以上で2時間以上保持した後、冷却速度2℃/分以下で200℃以下に冷却することを特徴とする。
かかる手順によれば、500℃で10秒間加熱された前後における平坦度の変化量が5μm以下である本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板を製造することができる。
本発明に係るアルミニウム合金基板によれば、500℃の高温下で成膜される磁性材料が設けられる磁気ディスクを製造することができる。また、本発明に係るアルミニウム合金基板の製造方法によれば、前記アルミニウム合金基板を製造することができる。
以下、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法を実施するため形態を詳細に説明する。
〔磁気ディスク用アルミニウム合金基板〕
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、磁気ディスク、特に熱アシスト磁気記録方式対応の磁気ディスクの平坦度を矯正された基板(ブランク)であり、表面を研削され、その上に剛性を得るための下地膜を形成された後、FePt系合金のような高い保磁力を有する磁性膜が形成されて磁気ディスクになる。本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、形状および寸法を特に規定するものではないが、板厚0.78〜1.8mm、外径66〜96mm、内径19〜24mmの円環形状の板である、一般的な2.5〜3.5インチタイプの磁気ディスクのブランクに適用することができる。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板(以下、アルミニウム合金基板という)は、Mg:3.5質量%以上6質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。また、500℃で10秒間加熱された前後における平坦度の変化量が5μm以下である。はじめに、本発明に係るアルミニウム合金基板を形成するアルミニウム合金を構成する各要素について説明する。
(Mg:3.5質量%以上6質量%以下)
Mgは、磁気ディスク用のアルミニウム合金基板として必要な強度(耐力95MPa以上)を得るための必須元素である。強度が不十分では、磁気ディスクに製造されたとき、例えば落下時の衝撃で変形し易かったり、記録時に磁気ヘッドの接触による傷が付き易いためにハードディスクドライブの耐衝撃性のスペックを満足することができない。十分な強度とするために、Mgの含有量は3.5質量%以上とし、好ましくは3.8質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは4.5質量%以上である。一方、Mgの含有量が6質量%を超えると、熱間割れ感受性が高くなり、熱間圧延中に割れが生じる虞がある。したがって、Mgの含有量は、6質量%以下とし、好ましくは5.5質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
本発明に係るアルミニウム合金基板を形成するアルミニウム合金は、前記のMg:3.5質量%以上6質量%以下に加え、Cr:0.05質量%以上0.6質量%以下、Mn:0.05質量%以上1.5質量%以下、Zr:0.05質量%以上0.6質量%以下の少なくとも1種をさらに含有することが好ましい。
(Cr:0.05質量%以上0.6質量%以下、Mn:0.05質量%以上1.5質量%以下、Zr:0.05質量%以上0.6質量%以下の少なくとも1種)
Cr,Mn,Zrは、それぞれアルミニウム合金の強度を高める効果があり、この効果を得るために、これらの元素の少なくとも1種を0.05質量%以上含有することが好ましい。また、Cr,Mn,Zrは、それぞれ加熱による結晶粒の粗大化を抑制する効果もあり、積付け焼鈍、あるいはさらに500℃の高温下での磁性膜の成膜による表面の平滑性の低下を防止することができる。この効果を得るために、Zrは前記と同様に0.05質量%以上とし、Crは0.2質量%以上、Mnは0.3質量%以上とすることがさらに好ましい。また、Cr,Mn,Znの2種以上を組み合わせて含有することで、前記範囲未満の含有量であっても同等の効果が得られる。一方、Cr,Zrは0.6質量%、Mnは1.5質量%をそれぞれ超えると、アルミニウム合金の融点が高くなるため、溶解時に溶け残ったり、溶湯の粘度が高くなって鋳造困難となる場合がある。さらにCr系、Mn系、Zr系の粗大な初晶が晶出し、このようなアルミニウム合金基板を磁気ディスクに製造すると、磁気ディスクドライブに組み込んだときにヘッドクラッシュを生じる虞がある。したがって、Crの含有量は0.05〜0.6質量%、Mnの含有量は0.05〜1.5質量%、Zrの含有量は0.05〜0.6質量%とする。
(不可避的不純物)
不可避的不純物として、例えば、Si,Fe,Cu,Zn,Ti,B,V等が挙げられる。Si,Feは金属間化合物を形成するため、含有量は少ないほど好ましいが、Si:0.03質量%以下、Fe:0.05質量%以下であれば本発明の所望する効果に影響しない。また、Cu:0.07質量%以下、Zn:0.38質量%以下、Ti,B,V:各0.01質量%以下であれば本発明の所望する効果に影響しない。
(500℃で10秒間加熱された前後における平坦度の変化量:5μm以下)
本発明に係るアルミニウム合金基板は、熱アシスト磁気記録方式に好適なFePt系合金を磁性膜として備えた磁気ディスクのための基板とすることを可能とする。そのため、FePt系合金膜の成膜における熱処理を模擬して、500℃で10秒間の加熱をして、前後の平坦度の変化量を制御する。アルミニウム合金基板の平坦度が5μmを超えて変化すると、磁気ディスクに製造されたときに必要な平坦性が得られないため、磁気ディスク用の基板として不適である。したがって、500℃で10秒間加熱された前後における平坦度の変化量は5μm以下とし、少ないほど好ましい。このような、高温での歪みを抑制したアルミニウム合金基板は、後記の製造方法(積付け焼鈍条件)によって得ることができる。なお、アルミニウム合金基板の平坦度とは、アルミニウム合金基板の表面の最も高い点と最も低い点との差(P−V値)であり、例えば半導体レーザーによる干渉縞により測定することができる。
〔磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法〕
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、前記成分のアルミニウム合金を、従来の製造方法と同様に、溶解、鋳造、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、さらに途中に必要に応じて焼鈍(荒鈍や中間焼鈍)により圧延板(アルミニウム合金板)とし、このアルミニウム合金板を打抜き等により円環形状等の所望の形状に成形する成形工程と、成形したアルミニウム合金板を両面から加圧した状態で焼鈍する(積付け焼鈍)ことにより、成形時の歪みを矯正して平坦化する積付け焼鈍工程と、を行って製造される。本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、成形工程までは公知の製造方法と同様とすることができ、前記したように、積付け焼鈍工程の条件により高温の処理における歪みを抑制する。以下、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板の積付け焼鈍条件について、詳細に説明する。
特許文献1にも記載されているように、従来は、結晶粒の微細化のために積付け焼鈍温度へ10℃/分以上で加熱したり、特許文献4に記載されているように、粒界へのAl−Mg−Zn系金属間化合物の析出防止の観点から、積付け焼鈍後(温度保持後)に200℃/分以上で急速冷却していた。しかし、発明者が鋭意研究したところ、500℃という高温で処理した際の平坦度の悪化を防止するためには、積付け焼鈍における加熱中および冷却中の熱歪みを防止することが重要であることが明らかになった。500℃に加熱された場合のアルミニウム合金基板の変形は、アルミニウム合金基板の内部歪が開放されるために生じていると考えられる。そのため、積付け焼鈍時に内部歪みを完全に除去する必要がある。また、加熱(昇温)時や焼鈍後の冷却(降温)時におけるアルミニウム合金基板の表面や端面と内部との温度差による熱応力の導入を極力防止するために、急激な温度変化すなわち急速加熱や急速冷却を避ける必要がある。一方、結晶粒の粗大化等は、アルミニウム合金の成分を前記の通り制御することで抑制することができる。
そのため、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法は、前記成分のアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板を、成形して、積付け焼鈍にて平坦化する際の積付け焼鈍が、成形したアルミニウム合金板を、加熱速度2℃/分以下で400℃以上に加熱して、400℃以上で2時間以上保持した後、冷却速度2℃/分以下で200℃以下に冷却するものとする。
積付け焼鈍においてアルミニウム合金板を両面から加圧する方法は、公知の方法を適用することができる。一例として、成形したアルミニウム合金板を複数枚積み重ねて、さらに両端から厚さ20〜30mmの一対の治具(スペーサ)で挟み、スペーサ同士をスプリングで連結して互いに近付こうとする方向へ加圧し、この状態で焼鈍する。アルミニウム合金板は、加圧されることによりスペーサと同程度の平坦度まで矯正され、さらにこの状態で焼鈍されることにより形状が固定され、また残留応力が除去される。なお、スプリングでの加圧は、積付け焼鈍で行われる一般的な圧力にて行うことができる。
(加熱速度:2℃/分以下、冷却速度:2℃/分以下)
加熱速度が2℃/分を超える場合、および冷却速度が2℃/分を超える場合のいずれにおいても、熱応力の発生により内部に歪みが残留し易くなり、磁性膜のスパッタリングでの急速加熱時に平坦度の変化量が増加してしまう。加熱速度が速い場合はさらに、積み重ねられたアルミニウム合金板の内部まで熱が伝わり難いために加熱が不十分となって、歪みが完全に除去されない場合がある。そのため、焼鈍温度(保持温度)への加熱速度を2℃/分以下とし、保持後の冷却速度を2℃/分以下とする。なお、保持後の冷却は、200℃以下になるまで前記の冷却速度で冷却する。200℃まで冷却される間に内部歪みは除去されるため、その後は急速冷却してもよい。好ましくは150℃以下になるまで、前記の冷却速度で冷却する。
(焼鈍温度:400℃以上、保持時間:2時間以上)
積付け焼鈍の焼鈍温度が400℃未満であったり、保持時間が2時間未満であったりすると、積付け焼鈍時に磁気ディスク用アルミニウム合金基板の残留歪みを完全に除去することができないため、磁性膜のスパッタリングでの急速加熱により平坦性が悪化する。また、残留歪みにより結晶粒の安定性も低下し、加熱時に結晶粒が粗大化しやすくなる。したがって、積付け焼鈍の焼鈍温度は400℃以上とし、保持時間は2時間以上とする。焼鈍温度は、過剰に高くても効果が向上せず、さらに結晶粒が異常成長するため、450℃以下とすることが好ましい。同様に、保持時間5時間を超えて積付け焼鈍を行っても、効果が向上せず、生産性が低下する。
以上、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法によれば、Mgを所定量含有することによって磁気ディスク用アルミニウム合金基板として必要な強度を確保し、500℃で10秒間加熱された前後における平坦度の変化量を5μm以下とすることによって、500℃に加熱されるスパッタリングで急速加熱が行われても平坦度の悪化を抑制することが可能となる。
次に、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法について、本発明の要件を満たす実施例と、満たさない比較例とを例示して、具体的に説明する。
アルミニウムの高純度地金を溶解し、中間合金を添加する等して表1に示す成分のアルミニウム合金を調整して鋳造し、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延にて、板厚1.0mmのアルミニウム合金板を常法にて作製した。得られたアルミニウム合金板を、外径66mm、内径19mmの円環形状に打ち抜き、20枚ずつ積み付け、表1に示す条件(焼鈍温度までの加熱速度、焼鈍(保持)の温度および時間、焼鈍後の冷却速度)で積付け焼鈍して、2.5インチタイプのブランクを作製して、供試材とした。
作製した供試材について、以下の通り、平坦度の変化量を測定し、耐力を評価して、表1に示す。なお、表1のアルミニウム合金の検出限界以下の成分は「−」で表し、また、途中の工程にて不具合により中断したものは、以下の工程、ならびに測定および評価を行わず、表1の積付け焼鈍条件および測定値等の欄を「−」で表す。
(平坦度の変化量)
供試材の平坦度を測定し、次に、FePt系合金のスパッタリングを模擬した加熱処理として、連続焼鈍炉にて昇温速度600℃/分で500℃に昇温し、10秒間加熱した後、炉外にてエアー噴射による空冷で100℃以下に冷却した。加熱処理後、再度、平坦度を測定し、前後の平坦度の差を算出して、平坦度の変化量とした。なお、加熱処理は、開始温度を室温(25℃)とし、この室温から前記昇温速度で昇温した。平坦度は、NIDEK社製FT−17を用いて、P−V値を測定して得た。
(耐力)
供試材を切り出してJIS5号引張試験片を作製し、JISZ2241に基づいた引張試験により耐力を測定した。合格基準は、耐力が95MPaを超えることとした。
Figure 0005903031
供試材No.1〜17は、アルミニウム合金の成分および積付け焼鈍条件がいずれも本発明の範囲の実施例であり、500℃での加熱による平坦度の変化量が5μm以下となり、磁気ディスク用アルミニウム合金基板として十分な耐力を有していた。
これに対して、供試材No.18〜23は、アルミニウム合金の成分が本発明の範囲外の比較例である。供試材No.18は、Mgが不足したため、強度が不十分であった。反対に、供試材No.19は、Mgが過剰であるため、熱間圧延にて割れを生じた。供試材No.20〜23は、Cr,Mn,Zrが過剰であるため、溶解時に溶け残り、鋳造することができなかった。
供試材No.24〜33は、アルミニウム合金の成分は本発明の範囲であるが、500℃の加熱による平坦度の変化量が本発明の範囲外の比較例である。なお、供試材No.24は供試材No.11に、供試材No.26〜28は供試材No.4〜6に、供試材No.29,30は供試材No.10,12に、それぞれ近いアルミニウム合金の成分で形成されている。
供試材No.24〜26は積付け焼鈍における焼鈍温度が低いために、供試材No.27は焼鈍時間が短いために、それぞれ残留歪みを完全に除去することができなかった結果、500℃に加熱されたことで歪みが開放されて、平坦度が大きく悪化した。供試材No.28,29は、焼鈍温度への加熱速度および焼鈍後の冷却速度が急峻であるため、熱応力を生じて内部歪みが残留した。供試材No.30,31は、加熱速度および冷却速度が急峻で、さらに焼鈍時間が短いため、内部歪みが残留した。供試材No.32は加熱速度が急峻であるため、その後の焼鈍(保持)で歪みが除去されなかった。供試材No.33は焼鈍温度が低く、さらに冷却速度が急峻であるため、内部歪みが残留した。
磁気ディスクの製造における磁性膜のスパッタリングは、400〜500℃の間で様々な成膜条件となる可能性がある。そこで、実施例である供試材No.4,7、および比較例である供試材No.25,26について、加熱処理の温度および時間を表2に示すように変化させて、平坦度の変化量を比較した。なお、実施例1の500℃で10秒間の加熱についても併記する。
Figure 0005903031
表2に示すように、供試材No.4,7,25,26は、いずれも加熱温度および時間が増加するにしたがい平坦度が低下する傾向が観察された。ただし、実施例である供試材No.4,7は、実施例1にて測定した500℃で10秒間の加熱と同様に良好な平坦度を示し、特に供試材No.7は、平坦度の変化量が1μm以下と優れていた。これに対して、供試材No.26は、加熱温度400℃での平坦度の変化量は少ないが、500℃では多くなった。さらに供試材No.25は、加熱温度400℃から平坦度が大きく低下した。
以上、発明を実施するための形態および実施例を通じて本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法について詳細に説明した。しかし、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されて解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。

Claims (4)

  1. Mg:3.5質量%以上6質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる磁気ディスク用アルミニウム合金基板であって、
    500℃で10秒間加熱された前後における平坦度の変化量が5μm以下であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
  2. 前記アルミニウム合金がさらに、Cr:0.05質量%以上0.6質量%以下、Mn:0.05質量%以上1.5質量%以下の少なくとも1種を含有し、かつ、前記Crの含有量が0.3質量%以上および前記Mnの含有量が0.2質量%以上の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
  3. 前記アルミニウム合金がさらに、Zr:0.05質量%以上0.6質量%以下を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法であって、
    前記アルミニウム合金からなるアルミニウム合金板を成形する成形工程と、前記成形したアルミニウム合金板を積付け焼鈍にて平坦化する積付け焼鈍工程と、を行い、
    前記積付け焼鈍工程は、前記成形したアルミニウム合金板を、加熱速度2℃/分以下で400℃以上に加熱して、400℃以上で2時間以上保持した後、冷却速度2℃/分以下で200℃以下に冷却することを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法。
JP2012261420A 2011-12-26 2012-11-29 磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法 Expired - Fee Related JP5903031B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012261420A JP5903031B2 (ja) 2011-12-26 2012-11-29 磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011284194 2011-12-26
JP2011284194 2011-12-26
JP2012261420A JP5903031B2 (ja) 2011-12-26 2012-11-29 磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013151737A JP2013151737A (ja) 2013-08-08
JP5903031B2 true JP5903031B2 (ja) 2016-04-13

Family

ID=48633849

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012261420A Expired - Fee Related JP5903031B2 (ja) 2011-12-26 2012-11-29 磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP5903031B2 (ja)
CN (1) CN103173666B (ja)
MY (1) MY161084A (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20160186301A1 (en) * 2013-08-21 2016-06-30 Drexel University Annealing Process
WO2016190277A1 (ja) * 2015-05-28 2016-12-01 株式会社Uacj 磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法、ならびに、当該磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスク
JP5815153B1 (ja) * 2015-07-02 2015-11-17 株式会社神戸製鋼所 磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク及び磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート
US11149332B2 (en) 2017-04-15 2021-10-19 The Boeing Company Aluminum alloy with additions of magnesium and at least one of chromium, manganese and zirconium, and method of manufacturing the same
JP6640958B1 (ja) * 2018-11-15 2020-02-05 株式会社神戸製鋼所 磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクおよび磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート
JP6990290B1 (ja) 2020-12-24 2022-02-03 株式会社Uacj 磁気ディスク用アルミニウム合金ディスクブランク及び磁気ディスク
CN115233050B (zh) * 2022-08-15 2024-06-04 重庆大学 一种Al-Mg-Mn-Zr-Cr合金及其制备方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS59180832A (ja) * 1983-03-31 1984-10-15 Nippon Light Metal Co Ltd 磁気記録材用アルマイト基板
JPS6191352A (ja) * 1984-10-11 1986-05-09 Kobe Steel Ltd 微小うねりの発生が少ない磁気ディスク基板用Al合金板の軟質化焼鈍方法
JPS637355A (ja) * 1986-06-25 1988-01-13 Kobe Steel Ltd Al−Mg合金の焼鈍方法
JPH01215960A (ja) * 1988-02-24 1989-08-29 Kobe Steel Ltd アルミニウム合金基板の製造方法
JPH0499143A (ja) * 1990-08-06 1992-03-31 Sumitomo Light Metal Ind Ltd NiPめっき性の良い磁気ディスク基板用アルミニウム合金
JP5325472B2 (ja) * 2007-09-05 2013-10-23 株式会社神戸製鋼所 磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法
JP5199714B2 (ja) * 2008-03-31 2013-05-15 株式会社神戸製鋼所 磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
CN103173666B (zh) 2015-02-25
JP2013151737A (ja) 2013-08-08
CN103173666A (zh) 2013-06-26
MY161084A (en) 2017-04-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5903031B2 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法
JP5325869B2 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法
JP5815153B1 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク及び磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート
JP5325472B2 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法
JP5199714B2 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法
JP6998305B2 (ja) 磁気ディスク基板用アルミニウム合金板及びその製造方法、並びに磁気ディスク
JP6169950B2 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金基板
JP6640958B1 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクおよび磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート
JP5901168B2 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法、ならびに、下地処理磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法
JP6131083B2 (ja) 磁気ディスク基板用アルミニウム合金板及びその製造方法
CN111448611B (zh) 磁盘用铝合金基板及其制造方法、以及使用了它的磁盘
JP6908741B2 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクおよび磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート
JP6339719B1 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクおよび磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート
JP6339726B1 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクおよび磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート
JP4477999B2 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法、磁気ディスク用アルミニウム合金板、および磁気ディスク用アルミニウム合金基板
JP6826679B2 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクおよび磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート
JP4477998B2 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法、磁気ディスク用アルミニウム合金板、および磁気ディスク用アルミニウム合金基板
WO2020184038A1 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクおよび磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート
JP6339710B1 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクおよび磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート
JP7132415B1 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクおよび磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート
JP7190475B2 (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金基板及び磁気ディスク
JP2005133134A (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金板およびその製造方法
JPH01312054A (ja) 磁気ディスク用アルミニウム合金及びその製造方法
JP6963442B2 (ja) 磁気記録媒体用アルミニウム合金基板、磁気記録媒体用基板、磁気記録媒体、ハードディスクドライブ
JP6963443B2 (ja) 磁気記録媒体用アルミニウム合金基板、磁気記録媒体用基板、磁気記録媒体、ハードディスクドライブ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140901

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150625

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150804

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151002

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160308

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160311

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5903031

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees