JP6826679B2 - 磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクおよび磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート - Google Patents
磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクおよび磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート Download PDFInfo
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Description
そして、磁気ディスクの薄肉化の検討では、3.5インチHDDに搭載されている磁気ディスクの板厚を従来の約1.3mmから、0.8mmまたはそれ以下に薄くすることが提案されている。
例えば、特許文献1には、Fe:0.4〜3.0mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、金属組織において、3μm以上の最長径を有する第二相粒子の周囲長が10mm/mm2以上であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板が開示されている。
しかしながら、本発明者らは、Feの添加では減衰率を十分には向上させることができないことを確認した。また、磁気ディスクの振動を抑制する技術として、特許文献1に記載の技術とは特徴の異なる新たな技術の創出が求められている。
本実施形態に係るブランクは、Mnを所定範囲内で含有するとともに、残部がAlおよび不可避的不純物からなる。
そして、本実施形態に係るブランクは、表面における最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物(以下、適宜「所定サイズの金属間化合物」という)の個数密度が所定値以上である。
以下、各構成について詳細に説明する。
Mnは、強度や耐力の向上に寄与するだけでなく、振動を減衰させる性質の向上(減衰率の向上)にも寄与する。Mnの含有量が1.00質量%未満であると、所定サイズの金属間化合物の個数密度が小さくなってしまい、その結果、内部摩擦が十分に高くならず、減衰率の向上を十分に発揮することができない。一方、Mnの含有量が10質量%を超えると、研削性(研削し易さ)を低下させる虞があるとともに、金属間化合物が粗大化することで、所定サイズの金属間化合物の個数密度が小さくなってしまう虞もある。
よって、Mnの含有量は、1.00質量%以上10質量%以下である。
Feは、強度やヤング率の向上に寄与する。ただし、Feは、Mnと比較して減衰率の十分な向上を望めないだけでなく、Feの含有量が0.30質量%を超えると、金属間化合物が粗大化することで、所定サイズの金属間化合物の個数密度が小さくなり、減衰率が低下する虞がある。
よって、Feは必須の成分ではないものの、Feを含有させる場合、Feの含有量は、0.30質量%以下である。Feの含有量は、金属間化合物の粗大化防止の観点から、0.25質量%以下が好ましく、0.20質量%以下、0.10質量%以下、0.05質量%以下、0.04質量%以下がより好ましい。
そして、Feが不可避的不純物として含有される場合のFeの含有量は、0.05質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がより好ましい。なお、Feは地金中に不可避的不純物として混入するため、含有量を低減させるには高純度な地金を用いる必要があり、高コスト化してしまう。よって、Feが不可避的不純物として含有される場合のFeの含有量は、コストの観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。
本実施形態に係るブランクを構成する化学組成の基本的な組成は前記のとおりであり、残部はAlおよび不可避的不純物である。不可避的不純物は、原料の溶解時に不可避的に混入する不純物であり、ブランクの諸特性を害さない範囲で含有される。不可避的不純物としては、例えば、Ni、Ti、Na、Pb、Be、Ca、Zr、V、B、Sn、In、Cd、Bi、Geなどが挙げられる。
これらの不可避的不純物は、個々に0.005質量%以下、合計で0.015質量%以下であれば本発明の効果を阻害しない。したがって、本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で不可避的不純物を含有させていてもよく、また、本発明の効果を阻害しない範囲で積極的に添加された場合であっても、本発明の効果を妨げない。つまり、これらの態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明者らは、前記した化学組成のブランクについて鋭意検討した結果、表面における最大長さが0.2μm未満の微細な金属間化合物や15.0μmを超える粗大な金属間化合物はいずれも内部摩擦に大きな影響を与えない一方、「表面における最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数密度」と「内部摩擦」との間に強い正の相関関係が存在することを見出した。
詳細には、ブランクの表面における最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数密度が1.5×105個/mm2以上となると、内部摩擦が十分に高い数値を示す、すなわち、十分に高い減衰率を発揮することができる。
よって、最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数密度は、1.5×105個/mm2以上である。この所定サイズの金属間化合物の個数密度は、内部摩擦を向上させる観点から、2.0×105個/mm2以上が好ましく、2.5×105個/mm2以上、3.0×105個/mm2以上、3.3×105個/mm2以上、3.4×105個/mm2以上がより好ましい。
なお、所定サイズの金属間化合物の個数密度の上限は特に限定されないものの、例えば、20.0×105個/mm2以下、10.0×105個/mm2以下、8.0×105個/mm2以下、5.0×105個/mm2以下である。
そして、ブランク表面の所定サイズの金属間化合物の個数密度は、表面を鏡面とした後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することができる。
本実施形態に係るブランクの内部摩擦は、1.50×10−3以上であるのが好ましい。ブランクの内部摩擦が1.50×10−3以上であると、回転駆動中に生じる磁気ディスクの振動を材料の内部摩擦によって抑制することができるため、振動を減衰させる性質の向上(減衰率の向上)という効果をより確実なものとすることができる。
そして、内部摩擦は、減衰率の向上の観点から、1.60×10−3以上が好ましく、1.70×10−3以上、1.80×10−3以上がより好ましい。
なお、内部摩擦の上限は特に限定されないものの、例えば、5.00×10−3以下、4.00×10−3以下、3.00×10−3以下、2.50×10−3以下、2.00×10−3以下である。
そして、ブランクの内部摩擦は、半値幅法に基づき、内部摩擦測定装置を用いて測定することができる。
本実施形態に係るブランクの耐力は、特に限定されないものの、耐衝撃性を向上させる観点から、例えば、150MPa以上が好ましく、155MPa以上、160MPa以上がより好ましい。なお、耐力の上限については特に限定されないが、例えば、220MPa以下であり、200MPa以下である。
そして、ブランクの耐力は、例えば、JIS Z 2241:2011に準拠してブランクから試験片を作製し、金属材料引張試験を行うことによって求めることができる。
本実施形態に係るサブストレートは、前記した本実施形態に係るブランクの端面を切削加工(端面加工)し、表面(主面)を研削加工(鏡面加工)することにより製造されるものである。
なお、サブストレートは、グラインドサブストレートと呼称されることもある。
なお、サブストレートの化学組成、所定サイズの金属間化合物の個数密度、内部摩擦、および、耐力に関する数値範囲は、前記したブランクの場合と同様である。
次に、本実施形態に係るブランクの製造方法の一例を説明する。
本実施形態に係るブランクは、一部の条件を除き、磁気ディスク用のブランクを製造する一般的な条件の製造方法および設備によって製造することができる。例えば、原料を溶解して、所定の化学組成に調整された溶湯を鋳塊に鋳造する鋳造工程と、鋳造された鋳塊に均質加熱処理を施す均質化熱処理工程と、均質化熱処理を施された鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板を得る熱間圧延工程と、熱間圧延板を冷間圧延して冷間圧延板を得る冷間圧延工程と、冷間圧延して得られたアルミニウム合金板を円環状に打ち抜く打ち抜き工程と、打ち抜かれた基板に矯正焼鈍を施す矯正焼鈍工程とを、この順に含む製造方法によって、ブランクを製造することができる。なお、必要に応じて、冷間圧延工程の前または冷間圧延工程の途中に中間焼鈍を行ってもよい。
以下、各工程について詳細に説明する。
鋳造工程では、700〜800℃で原料を溶解し、公知の鋳造法によって鋳造する。また、鋳造された鋳塊は、面削を施すことが好ましく、その面削量は、例えば、2〜40mm/片面で行えばよい。
そして、溶湯温度(モールド内への注入時の溶湯温度)は、一般的には670℃程度であるところ、680℃以上とすることによって、粗大な結晶の析出を回避し、最終的に所定サイズの金属間化合物の個数密度を大きくすることができる。
また、前記した溶湯温度は、粗大な結晶の析出を回避する観点から、690℃以上が好ましく、700℃以上がより好ましい。
なお、Al合金を溶解する際、アルゴン(Ar)などの不活性ガスを溶湯中に吹き込んで脱水素処理を行うのが好ましい。また、鋳造速度は、30〜80mm/minであるのが好ましい。
均質化熱処理工程では、例えば、430〜620℃で2時間以上、均質化熱処理を行う。このような条件で均質化熱処理を行うと、金属間化合物を十分に固溶させることができる。均質化熱処理の温度が430℃未満、または、均質化熱処理の時間が2時間未満であると、金属間化合物が粗大化することで、所定サイズの金属間化合物が減少してしまう。一方、均質化熱処理の温度が620℃を超えると、鋳塊の表面が溶融してしまう。
そして、均質化熱処理の温度は、所定サイズの金属間化合物の個数密度を増大させる観点から、480℃以上が好ましく、510℃以上がより好ましく、一方、鋳塊表面の溶融を抑制する観点から、600℃以下が好ましく、580℃以下がより好ましい。また、均質化熱処理の時間は、製造効率の観点から、例えば、25時間以下、20時間以下とすればよい。
よって、均質化熱処理工程では、1回の均質化熱処理が好ましい。
熱間圧延工程では、例えば、熱間圧延の開始温度を490℃以上とすることができる。また、熱間圧延の終了温度を300〜350℃とすることができる。520℃から400℃までの熱間圧延は、30分以内に終えることが好ましく、15分以内に終えることがより好ましい。また、熱間圧延して得る熱間圧延板の板厚を、例えば、5mm以下、3mm以下とすることができる。
冷間圧延工程では、目標とするブランクの板厚となるように冷間圧延を行う。具体的な板厚としては、例えば、0.5〜1.3mmが挙げられる。なお、必要に応じて、冷間圧延の前か、または、冷間圧延の途中で中間焼鈍を行ってもよい。
打ち抜き工程では、冷間圧延を行った板材を必要に応じて調質した後、例えば、3.5インチHDD用の基板、2.5インチHDD用の基板に適用できるように、アルミニウム合金板を所望の形状に打ち抜く。
矯正焼鈍工程では、高い平坦度を有するスペーサで基板を挟んで積み付け、基板に荷重をかけながら焼鈍する。焼鈍温度は、250〜500℃(好ましくは300〜400℃)とし、保持時間は、例えば、4〜5時間、3時間程度とすることができる。矯正焼鈍における昇温速度は、例えば、平均80℃/時間(Max.150℃/時間)、降温は、例えば、焼鈍炉の扉を開放して降温(冷却)することができる。
本実施形態に係るサブストレートは、例えば、ブランクの端面を切削する切削加工(端面加工)と、ブランクの表面(主面)を研削する研削加工(鏡面加工)と、を施す製造方法によって、サブストレートを製造することができる。
磁気ディスクの製造方法は、まず、サブストレートの表面を酸エッチング処理し、無電解Ni−Pめっき膜を形成した後、その表面を研磨する(なお、無電解Ni−Pめっき膜を形成したサブストレートは、めっきサブストレートと呼称されることもある)。次いで、このサブストレートの表面に、磁気特性を高めるための下地膜、Co基合金からなる磁性膜、および、磁性膜を保護するためのC(カーボン)からなる保護膜などをスパッタリングなどにより形成することで、磁気ディスクを製造することができる。
前記した無電解Ni−Pめっき膜、下地膜、磁性膜、保護膜の形成は、磁気ディスクを製造するにあたって一般的に実施される条件で行うことができる。
本実施形態に係るブランク、サブストレート、および、磁気ディスクの製造方法は、以上に説明したとおりであるが、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。
ここまで、本発明を単層材に適用する実施形態について説明したが、本発明は、「心材」と、心材の少なくとも一方の面に設けられる「皮材」と、を備える積層材に適用することもできる。
別実施形態に係るブランクおよびサブストレートは、「心材」と、心材の少なくとも一方の面に設けられる「皮材」と、を備える積層材の構成である。
なお、ブランクおよびサブストレートが積層材の場合、積層材全体として前記した単層材の「耐力」の要件と「内部摩擦」の要件とを満たすのが好ましい。
別実施形態に係るブランクおよびサブストレートの心材は、前記した単層材の「各成分の組成」および「表面における最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数密度」の要件を満たすのが好ましい。
また、別実施形態に係るブランクおよびサブストレートの心材は、圧延性とリサイクル性の観点から、前記した単層材の「各成分の組成」に加えて、Mg:3.0質量%以下(好ましくは1.5質量%以下)、Cr:0.5質量%以下(好ましくは0.25質量%以下)、Zn:0.4質量%以下(好ましくは0.2質量%以下)、Cu:0.4質量%以下(好ましくは0.10質量%以下)、のうちの少なくとも一種をさらに含んでもよい。
別実施形態に係るブランクおよびサブストレートの皮材は、特に限定されないものの、例えば、JIS H 4000:2014に規定されているA5086等のAl−Mg系からなるものが挙げられる。
具体的には、皮材は、Mg:1.8質量%以上7.0質量%以下、Cr:0.01質量%以上0.35質量%以下、Si:0.1質量%以下、Fe:0.1質量%以下、であるとともに、Cu:0.1質量%以下、Zn:0.4質量%以下、のうちの少なくとも一種を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる。
別実施形態に係るブランクおよびサブストレートの皮材の残部成分はAlおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えば、Mn、Ti、V、Zr、Ni、Na、Be、Ca、Pb、B、Sn、In、Cd、Bi、Geなどが挙げられる。また、前記したSi、Fe、Cu、Znも不可避的不純物として含有されていてもよい。
これらの不可避的不純物は、個々に0.005質量%以下、合計で0.015質量%以下であれば本発明の効果を阻害しない。したがって、本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で不可避的不純物を含有させていてもよく、また、本発明の効果を阻害しない範囲で積極的に添加された場合であっても、本発明の効果を妨げない(つまり、これらの態様も本発明の技術的範囲に含まれる)。
別実施形態に係るブランクおよびサブストレートの厚さは、特に限定されないものの、単層材の場合と同様、0.5〜1.3mmであればよい。また、別実施形態に係るブランクおよびサブストレートにおける皮材のクラッド率(積層材の厚さを100%とした場合における各皮材の厚さの比率)は、3〜50%、好ましくは5〜30%であればよい。
別実施形態に係るブランクは、単層材の場合と同様、積層材の場合も一部の条件を除き、磁気ディスク用の基板を製造する一般的な条件の製造方法および設備によって製造することができる。
そして、皮材については、前記した化学成分のAl合金を溶解し、前記した化学成分に調整した鋳塊を鋳造する鋳造工程と、鋳造された鋳塊に均質化熱処理を施す均質化熱処理工程と、均質化熱処理を施された鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板を得る熱間圧延工程とを、この順に含む製造方法によって皮材を製造する。
なお、各工程における条件は、以下のとおりである。
なお、皮材の鋳造工程、均質化熱処理工程、熱間圧延工程は、前記した単層材の「鋳造工程」、「均質化熱処理工程」、「熱処理工程」で示した条件を満たすように実施すればよい。
積層材に対する均質化熱処理は、例えば、500〜550℃、1〜20時間という条件で実施すればよい。
積層材に対する熱間圧延は、例えば、開始温度510〜540℃、均質化熱処理終了時から熱間圧延終了時までの時間を30分以内という条件で実施すればよい。
積層材に対する冷間圧延は、例えば、板厚が0.5〜1.3mmとなるように実施すればよい。
なお、積層材に対する打ち抜き工程は、前記した単層材の「打ち抜き工程」で示した条件を満たすように実施すればよい。また、積層材に対する矯正焼鈍工程も、前記した単層材の「矯正焼鈍工程」で示した条件を満たすように実施してもよいが、保持時間については、7〜9時間と長めに設定してもよい。
[供試材の準備]
まず、材料を溶解し、表1に示す化学組成となるように成分を調整した溶湯を、厚さ50mm×幅145mm×長さ200mmの鋳型に注入してスラブを作製した。なお、溶湯温度(モールド内への注入時の溶湯温度)は、約720℃であった。そして、得られたスラブの両面(厚さ方向)をそれぞれ2mm面削した。その後、表に示す温度および時間で1回の均質化熱処理を施した。そして、厚さが5mmとなるまで熱間圧延(開始温度:約510℃)を施した後、厚さが0.7mmとなるまで冷間圧延(材料温度が100℃を超えない)を施した。
そして、この冷間圧延板を3.5インチサイズ(外径約95mm、内径約25mm)の円環形状に打ち抜き、積み付けて矯正焼鈍を行った。矯正焼鈍は、350℃で3時間保持することによって行った。
これらの測定は次のようにして行った。
(1)最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数密度
ブランクの表面をダイヤモンドバイトで切削して鏡面とし、この面をFE−SEM(日本電子株式会社製JSM−7001F、内蔵している粒子解析ソフトEX−35110、粒子解析ソフトウェア Ver.3.84:リリースノートに記載のVer.情報、加速電圧15kV)を用いて2000倍の倍率で10視野(1視野:60μm×45μm)撮影し、COMPO像(組成像)を得た。そして、Image−Pro PLUS J Version 6.1.0.372でCOMPO像を解析し、閾値を灰色のマトリックス部に設定して、マトリックス部(母相)よりも白く写っている部分を金属間化合物とみなして、それぞれの絶対最大長(粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離の最大値)を測定した。そして、最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数をカウントし、単位面積当たりの個数密度を算出した。
表では、最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物が、1.5×105個/mm2以上のものを「〇」と示し、1.5×105個/mm2未満のものを「×」と示した。
ブランクから試験片(幅10mm×長さ60mm×厚さ0.7mm、長手方向が圧延方向と略並行)を切り出し、内部摩擦測定装置(日本テクノプラス株式会社製 JE2−RT、測定ソフト:JE−RTコントロールソフトウェア Version 2.6.1)を用いて内部摩擦を測定した。そして、各試験片について、3回の測定で得られた内部摩擦の値の平均値を算出し、各ブランクの内部摩擦の値として表に示した。
内部摩擦の測定方法は半値幅法を採用した。そして、内部摩擦測定装置に関する詳細な条件は、測定方式:自由共振式、測定温度:室温(約24±2℃)、測定雰囲気:空気中、加振方式:非接触静電加振方式、試験法:二点吊り法(試験片の長手方向両端から13.44mmの二点において吊り線で試験片を保持)、検出方式:音波検出方式、試験時のスキャンステップ:0.02Hz、スキャン範囲:任意設定(950〜1100Hzの間で半値幅法に基づき安定した値が得られる範囲を任意に設定、スキャン範囲の幅は30〜100Hz)であった。
そして、内部摩擦が1.5×10−3以上のものを減衰率が「〇」(合格)、内部摩擦が1.5×10−3未満のものを減衰率が「×」(不合格)と評価した。
ブランクから引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS13B号の試験片を切り出した。この試験片を用いて、JIS Z 2241:2011(オフセット法)に準拠して引張試験を行うことにより、耐力(0.2%耐力)を求めた。なお、引張速度は、3mm/min(ひずみ量0.5%まで)、20mm/min(ひずみ量0.5%以降)とした。
なお、耐力は参考として示す。
(表に基づく検討)
表1に示すように、No.1〜3、6は、本発明の規定を満たすため、内部摩擦が高く、減衰率が合格(高減衰率である)という結果となった。また、No.1〜3、6は、高い耐力値を示した。
一方、No.4は、Mnの含有量が少なく、表面における所定の金属間化合物の個数密度が小さかったことから、内部摩擦が低く、減衰率が不合格という結果となった。
また、No.5は、均質化熱処理の温度が低く、表面における所定の金属間化合物の個数密度が小さかったことから、内部摩擦が低く、減衰率が不合格という結果となった。
図1に示すグラフは、内部摩擦η(×10−3)を縦軸、最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数密度(×105個/mm2)を横軸とし、No.1〜6の結果をプロットしたグラフである。
この図1の結果から、「表面における最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数密度」と「内部摩擦」との間に非常に強い正の相関関係が存在することが確認できた。
また、図1の結果から、表面における最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数密度が、1.5×105個/mm2以上になると、内部摩擦ηが1.5×10−3以上になると確認できた。
所定サイズの金属間化合物の個数密度を測定する際に取得したSEM画像は、目視で確認したところ、以下に示すような画像であった。
No.1〜3、6のSEM画像は、多数の所定サイズの金属間化合物が一様に分散して存在している状態を示していた。この中でもNo.1のSEM画像では、粗大な金属間化合物が一切確認できなかった。なお、No.3のSEM画像では、Mnの含有量が若干多かったため、粗大な金属間化合物が僅かに生じていたものの、所定サイズの金属間化合物は一定数以上存在していることが確認できた。
No.4のSEM画像では、Mnの含有量が少なかったため、所定サイズの金属間化合物の個数密度が小さくなっていたことが確認できた。当然、No.4のSEM画像では、粗大な金属間化合物は確認できなかった。
No.5のSEM画像では、均質化熱処理の温度が低かったため、粗大な金属間化合物が複数生じてしまい、その結果、所定サイズの金属間化合物の個数密度が小さくなってしまっていることが確認できた。
[供試材の準備]
まず、心材用の材料を溶解し、表2のNo.11に示す化学成分となるように成分を調整し、鋳塊を金型鋳造(ブックモールド)した。なお、金型のサイズは、高さ50mm×幅145mm×長さ200mm、鋳込み温度は720℃であった。
次に得られた鋳塊の両面をそれぞれ13mm面削し、表2に示す条件で均質化熱処理を行った。
次に得られた鋳塊の両面をそれぞれ2mm面削し、540℃で4時間という条件で均質化熱処理を行った。
その後、均質化熱処理後の材料を、均質化熱処理終了時(均熱炉から取り出した時)から熱間圧延終了時までの時間を3分として熱間圧延(開始温度540℃、仕上げ厚さ3mm)を行った。
そして、このクラッド材を540℃の炉に投入し、540℃に昇温させてから1時間30分保持する均質化熱処理を施した後、この均質化熱処理終了時から熱間圧延終了時までの時間を3分として熱間圧延(仕上げ厚さ3mm)を行った。次に、得られた熱間圧延板に冷間圧延を行った。冷間圧延は、材料温度が100℃を超えないように複数回パスさせ、最終的に0.5mmの板厚とした。
なお、皮材、心材、皮材の厚さの比率は、おおむね10%:80%:10%となっていた。
そして、製造したNo.11に係るブランクを用いて、実施例1と同じ方法で耐力と内部摩擦を評価した。
また、心材の表面における金属間化合物の個数密度については、回転研磨機(Struers社製TegraPol−35)を用い、機械研磨(研磨紙を用いた研磨)により皮材が除去できるまで研磨(板厚が0.437mmとなるまで研磨)し、さらに、回転研磨機(Struers社製Labopol−30)を用い、バフ研磨、仕上げ研磨を行った後、実施例1と同じ方法で測定した。
表2に示すように、No.11の心材は、本発明の規定を満たすため、積層材としての内部摩擦が高く、減衰率が合格(高減衰率である)という結果となった。
Claims (4)
- Mn:1.00質量%以上10質量%以下であり、
Fe:0.30質量%以下であり、
残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
表面において最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数密度が1.5×105個/mm2以上であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク。 - 心材と、前記心材の少なくとも一方の面に設けられる皮材と、を備え、
前記心材は、
Mn:1.00質量%以上10質量%以下であるとともに、Mg:3.0質量%以下、Cr:0.5質量%以下、Zn:0.4質量%以下、Cu:0.4質量%以下のうちの少なくとも一種を含有し、
Fe:0.30質量%以下であり、
残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記心材の表面において最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数密度が1.5×105個/mm2以上であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク。 - Mn:1.00質量%以上10質量%以下であり、
Fe:0.30質量%以下であり、
残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
表面において最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数密度が1.5×105個/mm2以上であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート。 - 心材と、前記心材の少なくとも一方の面に設けられる皮材と、を備え、
前記心材は、
Mn:1.00質量%以上10質量%以下であるとともに、Mg:3.0質量%以下、Cr:0.5質量%以下、Zn:0.4質量%以下、Cu:0.4質量%以下のうちの少なくとも一種を含有し、
Fe:0.30質量%以下であり、
残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記心材の表面において最大長さが0.2〜15.0μmの金属間化合物の個数密度が1.5×105個/mm2以上であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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