JP5901251B2 - 構造体の製造方法 - Google Patents
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前記被接合部材の少なくとも一部として、マグネシウムの含有量が0.5質量%以下であり、切抜き部が形成されたアルミニウム合金板を用意する工程と、
隣り合う前記被接合部材のうちの少なくとも一方が前記アルミニウム合金板となるとともに前記切抜き部が連通して前記中空部が形成されるように複数の前記被接合部材を積層し、前記アルミニウム合金板の液相の質量の比が5%以上35%以下である温度域に30秒以上3600秒以内保持して複数の前記被接合部材を接合する工程と、
を含み、
前記被接合部材を接合する工程では、前記液相を生じるアルミニウム合金材に発生する最大応力をP(kPa)とし、当該アルミニウム合金板内に生じる液相の質量の比をV(%)としたときに、P≦460−12×Vを満たす条件で前記被接合部材を接合する、
ことを特徴とする。
前記被接合部材の少なくとも一部として、マグネシウムの含有量が0.2質量%以上2.0質量%以下であり、切抜き部が形成されたアルミニウム合金板を用意する工程と、
隣り合う前記被接合部材のうちの少なくとも一方が前記アルミニウム合金板となるとともに前記切抜き部が連通して前記中空部が形成されるように複数の前記被接合部材を積層し、前記アルミニウム合金板の液相の質量の比が5%以上35%以下である温度域に30秒以上3600秒以内保持して複数の前記被接合部材を接合する工程と、
を含み、
前記被接合部材を接合する工程では、前記液相を生じるアルミニウム合金材に発生する最大応力をP(kPa)とし、当該アルミニウム合金板内に生じる液相の質量の比をV(%)としたときに、P≦460−12×Vを満たす条件で前記被接合部材を接合する、
ことを特徴とする。
前記被接合部材を接合する工程では、前記切抜き部の位相をずらして複数の前記被接合部材を積層してもよい。
この実施形態に係る構造体の製造方法では、アルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、アルミニウム合金材、純アルミニウム材及びアルミニウム以外の金属材のいずれかを他方の被接合部材として、一方の被接合部材と他方の被接合部材とを接合する。アルミニウム合金材同士を接合する場合は、合金組成が同一のもの同士でも、合金組成が異なるもの同士でもよい。
この実施形態に係る構造体の製造方法では、一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比(以下、「液相率」と記す)が5%以上35%以下となる温度で接合する。液相率が35%を超えると、生成する液相の量が多過ぎてアルミニウム合金材が溶融を開始してしまう。一方、液相が生成しなければ接合ができない。板材同士を接合する際の好ましい液相率は5〜30%であり、より好ましい液相率は10〜20%である。
液相が生じた後から接合に至るまでの金属組織の挙動を説明する。図3に示すように、液相を生成するアルミニウム合金材Aと、これと接合するアルミニウム合金材Bとを用いた逆T字型接合試験片を接合し、接合箇所を観察面として顕微鏡で観察した(図3参照)。前述のように、一方のアルミニウム合金材Aの表面に生成するごく僅かな液相は、フラックス等の作用により酸化皮膜が破壊された他方のアルミニウム合金材Bとの隙間を埋める。次に、両合金材の接合界面付近にあるアルミニウム合金材Aの液相がアルミニウム合金材B内へと移動していき、この移動に伴って接合界面に接しているアルミニウム合金材Aの固相α相の結晶粒がアルミニウム合金材B内に向かって成長する。また、アルミニウム合金材Bの結晶粒もアルミニウム合金材A側へと成長する。
アルミニウム材の表層には酸化皮膜が形成されており、これによって接合が阻害される。従って、接合においては酸化皮膜を破壊する必要がある。この実施形態の構造体の製造方法では、酸化被膜を破壊するために以下のD−1もしくはD−2に示すいずれかの方法が取られる。
この方法では、酸化皮膜を破壊する為に、少なくとも接合部にフラックスを塗布する。フラックスとしては、KAlF4やCsAlF4などのフッ化物系フラックスや、KClやNaClなどの塩化物系フラックスなどを用いることができる。これらフラックスは、アルミニウム合金積層方法で液相が溶融する前に溶融し、酸化皮膜と反応して酸化皮膜を破壊する。
アルミニウム合金材にMgが添加されている場合は、接合部にフラックスを塗布しなくても、アルミニウム合金材の接合工程において酸化被膜が破壊され、接合が可能になる。この場合、真空フラックスレスろう付と同様に、アルミニウム合金が溶融して液相が表層に出てきた際に、アルミニウム合金中より蒸発するMgのゲッター作用によって表面の酸化皮膜が破壊される。
この実施形態に係る被接合部材の接合工程では、接合部で酸化皮膜が破壊された後、両被接合部材の間に液相が充填され接合がなされる。この液相は、一方の被接合部材であるアルミニウム合金材中において生成する。液相が接合部に十分に充填される為には、液相率が5%以上である時間が30秒以上であるのが好ましい。より好ましくは、液相率5%以上の時間が60秒以上であると更に十分な充填が行われ確実な接合がなされる。なお、本接合では、液相は接合部の極近傍においてしか移動しないので、この充填に必要な時間は接合部の大きさには依存しない。なお、他方の被接合部材であるアルミニウム合金材中においても液相が生成してもよく、ここでの液相率が5%以上である時間も30秒以上であるのが好ましく、より好ましくは60秒以上である。
この実施形態に係る被接合部材の接合工程では、液相を生じる一方の被接合部材であるアルミニウム合金材における液相率が5%以上である時間は、3600秒以内であるのが好ましい。3600秒を超えると、液相率が35%以下であっても被接合部材が大きく変形するおそれがある。より好ましくは、液相率が5%以上である時間が1800秒以内とすると形状変化を確実に抑制できる。なお、他方の被接合部材であるアルミニウム合金材中においても液相が生成する場合も、他方の被接合部材における液相率が5%以上である時間は3600秒以内であるのが好ましく、より好ましくは1800秒以内である。
この実施形態に係る被接合部材の接合工程では、接合部で両被接合部材が接していれば接合面に圧力を加える必要は必ずしもない。しかしながら、実際の製品の製造過程では、被接合部材同士を固定したりクリアランスを縮めたりする為に、冶具等で両被接合部材に応力が加わる場合が多い。また、自重によっても被接合部材内に応力が発生する。このとき、各被接合部材内の各部位に発生する応力は、形状と荷重から求められる。例えば、構造計算プログラムなどを用いて計算することができる。この実施形態では、接合時において液相を生じる被接合部材の各部位に発生する応力のうち最大のもの(最大応力)をP(kPa)とし、当該被接合部材であるアルミニウム合金での液相率をV(%)としたときに、P≦460−12×Vを満たすよう接合することが好ましい。この式の右辺で示される値は限界応力であり、これを超える応力が液相を生じる被接合部材に加わると、液相率が35%以内であっても被接合部材に大きな変形が発生するおそれがある。なお、両被接合部材から液相が発生する場合は、両被接合部材に対して、各々の応力P、液相率Vを用いてP≦460−12×Vを算出し、両被接合部材とも前記式を同時に満たすよう接合を行う。
上述のようにこの実施形態に係る接合工程において、酸化皮膜の破壊にフラックスを用いる場合は、被接合部材であるアルミニウム合金材として、Mg含有量が0.5質量%以下のアルミニウム合金が用いられる。また、酸化皮膜の破壊にフラックスを用いずにMgのゲッター作用を利用する場合は、一方の被接合部材であるアルミニウム合金材として、Mg含有量が0.2質量%以上2.0質量%以下のアルミニウム合金が用いられる。この場合、他方の被接合部材であるアルミニウム合金材としては、例えばMg含有量が2.0質量%以下のアルミニウム合金が用いられる。
この実施形態に係る接合工程では、液相を生成するアルミニウム合金材の固相線温度と液相線温度の差を10℃以上とするのが好ましい。固相線温度を超えると液相の生成が始まるが、固相線温度と液相線温度の差が小さいと、固体と液体が共存する温度範囲が狭くなり、発生する液相の量を制御することが困難となる。従って、この差を10℃以上とするのが好ましい。例えば、この条件を満たす組成を有する2元系の合金としては、Al−Si系合金、Al−Cu系合金、Al−Mg系合金、Al−Zn系合金、Al−Ni系合金などが挙げられる。前述のような共晶型合金は、固液共存領域を大きく有するので、こうした条件を満たすのに有利である。しかしながら、他の全率固溶型、包晶型、偏晶型などの合金であっても、固相線温度と液相線温度の差が10℃以上であることによって良好な接合が可能となる。また、上記の2元系合金は主添加元素以外の添加元素を含有することができ、実質的には3元系や4元系合金、更に5元以上の多元系の合金も含まれる。例えばAl−Si−Mg系やAl−Si−Cu系、Al−Si−Zn系、Al−Si−Cu−Mg系などが挙げられる。なお、固相線温度と液相線温度の差は大きくなるほど適切な液相量に制御するのが容易になる。従って、固相線温度と液相線温度の差に上限は特に設けない。
液相を生成するアルミニウム合金材の主添加元素の含有量は、例えば2元系において平衡状態図から以下のように設定することができる。接合温度をT(℃)、アルミニウムに対する主添加元素の添加量をX(質量%)、共晶温度をTe(℃)、アルミニウムに対する主添加元素の固溶限をa(質量%)、共晶点における主添加元素の含有量をb(質量%)とすると、下記式(1)を満足する範囲で接合を実施することで、より良好な液相率を得ることができる。主添加元素の添加量Xが(0.05/a+0.95/b)×(Te−660)×T+660以下であると、アルミニウム合金材で発生する液相量が不十分で接合が困難となる場合がある。一方、主添加元素の添加量Xが(0.35/a+0.65/b)×(Te−660)×T+660以上であると、発生する液相の量が多過ぎて接合による大きな形状変化が生じる場合がある。従って、添加元素の添加量Xは下記式(1)を満足することが望ましい。
通常、アルミニウム合金は、高温、低応力下では結晶粒自体の塑性変形に優先して結晶粒界でずれる粒界すべりによって変形する。特にこの実施形態の接合時のような固液共存域においては、粒界が優先して溶融しており、結晶粒径が小さいと単位体積中の粒界が多くなって粒界すべりによる変形が発生し易くなる。固液共存域での結晶粒径が小さ過ぎると、自重により粒界すべりが発生し易くなり、加熱中の形状変化が大きくなってしまうおそれがある。ここで、接合中の固液共存域にある結晶粒径を、直接測定することは困難であるため、接合中の固液共存域にある結晶粒径と接合加熱後の結晶粒径との関係を調べた。通常のろう付炉の冷却工程(加熱後30℃/分で400℃まで冷却)で冷却した際の結晶粒径を測定して、これを接合中の固液共存域にある結晶粒径とした。次いで、接合加熱温度で保持後に水冷した際の結晶粒径を測定し、接合加熱後の結晶粒径とした。両者を比較したところ、結晶粒径はほぼ同じであった。従って、接合加熱後の結晶粒径は接合中の固液共存域にある結晶粒径と同等であるといえる。そこで、この実施形態では、接合中の固液共存域にある結晶粒径を加熱後の結晶粒径によって評価する。この実施形態に係る接合工程では、加熱後の結晶粒径が50μm未満のときには、自重により粒界すべりが発生し易くなり、接合時間が長いと被接合部材の変形が促進される場合がある。したがって、加熱後の結晶粒径が50μm以上であるのが好ましいといえる。なお、結晶粒径の測定はJIS H:501に準拠した切断法により測定した。
この実施形態の接合工程では、基本として、被接合部材は炉中で加熱される。炉の形状に特に制限はなく、例えば1室構造のバッチ炉、自動車用熱交換器の製造などに用いられる連続炉などを用いることができる。なお、炉中の雰囲気に制限はないが、前述の通り非酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。
表1に示すAl−Si系合金2種(合金1、2)を用いて図5(b)に示す三次元流路(中空部)を有するアルミニウム積層構造体を作製した。アルミニウム積層構造体の作製には、この実施形態に係る製造方法と、比較例として従来工法である、ろう付け、拡散接合に加え鋳物工法および、機械加工を用いた。中空部を有する積層構造体の作製結果を表2に示す。表2及び口述する表3,4では、目的とする積層構造体が得られ、流路の確保が行えた場合を「○」として示し、成形が行えなかった、または中空部を含め形状に不具合の発生した場合を「×」として示している。ここで、この実施形態に係る製造方法、ろう付け、拡散接合では、初めに、長さLが100mm、幅Wが50mm、厚さtが3mmの板材を複数用意し、続いて、複数の板材に、プレス打ち抜きで直径φが5mmの切抜き部1を所定箇所に設けるとともに、一部の板材には、5mmの直径φに代えて80mmの直径φを有する切抜き部1を所定箇所に設け(図5(a)参照)、切抜き部を有する板材を50枚重ねて高さ150mmの積層構造体を製造している(図5(b)参照)。積層構造体には、板材の切抜き部が連通することによって中空部が形成される。具体的には、図5に示すように、直径φが80mmの切抜き部を有する板材が積層方向の略中央に配置されるとともに、この板材の上下に、直径φが5mmの切抜き部を有する板材が、切抜き部が略垂直に並ぶよう積層され、中空部として、2つの垂直な流路が中央付近の踊り場で連結される形状に積層構造体が形成されるものとした。また、中空部は、その全長が180mmの流路となるように調整されるものとした。
表1に示すAl−Zn−Mg合金(合金3)を用いて図6(c)に示す形状の三次元流路(中空部)を有するアルミニウム積層構造体を作製した。アルミニウム積層構造体の作製には、この実施形態に係る製造方法と、比較例として従来工法である、ろう付け、拡散接合に加え鋳物工法および、機械加工を用いた。中空部を有する積層構造体の作製結果を表3に示す。ここで、この実施形態に係る製造方法、ろう付け、拡散接合では、直径φが100mm、厚さtが5mmの円板にドリル穴あけ加工で直径φが3mmの切抜き部2を所定箇所に設け(図6(a)参照)、切抜き部を有する板材を50枚重ねて高さ250mmの積層構造体を製造している。積層構造体には、板材の切抜き部が連通することによって中空部が形成される。具体的には、板材の位相をずらして(板材を回転させて)積層することによって(図6(b)、(c)参照)、長さ700mmのらせん状の流路が形成されるように調整するものとした。
表1に示すAl−Cu系合金(合金4)を用いて図7(c)に示す形状の三次元流路(中空部)を有するアルミニウム積層構造体を作製した。このアルミニウム積層構造体は、冷却または加温用の流体を流しながらロール加工を行うための圧延ロール形状を模擬している。図7に示すアルミニウム積層構造体の作製には、この実施形態に係る製造方法と、比較例として従来工法である、ろう付け、拡散接合に加え鋳物工法および、機械加工を用いた。中空部を有する積層構造体の作製結果を表4に示す。ここで、この実施形態に係る製造方法、ろう付け、拡散接合では、直径φが200mm、厚さtが5mmの円板にドリル穴あけ加工で直径φ3mmの切抜き部2を所定箇所に設けるとともに、ドリル穴あけ加工で直径φ30mmの穴3を中央に設け(図7(a)参照)、切抜き部を有する板材を60枚重ねて高さ300mmの積層構造体を製造している。積層構造体には、長さを1000mmのらせん状の流路が形成されるように実施例3と同様に各板材を回転させることにより位相をつけて調整を行った(図7(b)、(c)参照)。更にこの積層構造体では、中央の穴が垂直に連通し、中心軸を相通させることができる。
T、T1〜T3・・温度
Te、Ts2 固相線温度
1、2 切抜き部
3 穴
4 軸
Claims (3)
- 被接合部材を積層して中空部を有する構造体を製造する方法であって、
前記被接合部材の少なくとも一部として、マグネシウムの含有量が0.5質量%以下であり、切抜き部が形成されたアルミニウム合金板を用意する工程と、
隣り合う前記被接合部材のうちの少なくとも一方が前記アルミニウム合金板となるとともに前記切抜き部が連通して前記中空部が形成されるように複数の前記被接合部材を積層し、前記アルミニウム合金板の液相の質量の比が5%以上35%以下である温度域に30秒以上3600秒以内保持して複数の前記被接合部材を接合する工程と、
を含み、
前記被接合部材を接合する工程では、前記液相を生じるアルミニウム合金材に発生する最大応力をP(kPa)とし、当該アルミニウム合金板内に生じる液相の質量の比をV(%)としたときに、P≦460−12×Vを満たす条件で前記被接合部材を接合する、
ことを特徴とする構造体の製造方法。 - 被接合部材を積層して中空部を有する構造体を製造する方法であって、
前記被接合部材の少なくとも一部として、マグネシウムの含有量が0.2質量%以上2.0質量%以下であり、切抜き部が形成されたアルミニウム合金板を用意する工程と、
隣り合う前記被接合部材のうちの少なくとも一方が前記アルミニウム合金板となるとともに前記切抜き部が連通して前記中空部が形成されるように複数の前記被接合部材を積層し、前記アルミニウム合金板の液相の質量の比が5%以上35%以下である温度域に30秒以上3600秒以内保持して複数の前記被接合部材を接合する工程と、
を含み、
前記被接合部材を接合する工程では、前記液相を生じるアルミニウム合金材に発生する最大応力をP(kPa)とし、当該アルミニウム合金板内に生じる液相の質量の比をV(%)としたときに、P≦460−12×Vを満たす条件で前記被接合部材を接合する、
ことを特徴とする構造体の製造方法。 - 前記被接合部材を用意する工程では、前記切抜き部を有する同一形状の円板状部材を前記被接合部材として用意し、
前記被接合部材を接合する工程では、前記切抜き部の位相をずらして複数の前記被接合部材を積層する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の構造体の製造方法。
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