JP5901251B2 - 構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、構造体の製造方法に関し、詳しくは、被接合部材を積層して中空部を有する構造体を製造する方法に関する。
アルミニウム合金板材やその他金属板、非金属板を積層する構造体は熱交換器などに広く採用されている(例えば特許文献1、2参照)。例えば、SUS、アルミニウム合金板を代表とした金属素板やセラミックのような非金属素板を、その板の厚さ方向に複数枚積層し、素板の少なくとも1枚以上にはその表面に微細な溝を形成し、該溝が形成された面と隣り合う素板の平面とが接合されることによって、加熱流体または冷却流体を供給する流路が形成された構造体が製造される。従来、素材同士の接合には、ろう付け(例えば特許文献3、4参照)や固相拡散接合(例えば特許文献3〜5、非特許文献1参照)、超音波接合、接着接合などが知られている。ここで、拡散接合法や摩擦接合法等の固相接合法は、原則として被接合部材の溶融を伴わない接合方法である。拡散接合法は、母材同士を密着させ、基本的に母材の融点以下で塑性変形を生じない程度に加圧し、接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合を成すものである。また、流路などの中空部を有する構造体は、砂型鋳造法を代表とした鋳物・ダイカスト工法によって製造される場合もある。
特開平3−51696号公報 特開平4−217792号公報 特開2001−349679号公報 特開2010−164244号公報 特開2003−247796号公報 特開平5−305459号公報 特許3656092号公報
坂本光正,都築圭紀,森合秀樹,小林悌宇,日下和夫,"精密拡散接合技術による宇宙機器用推力可変噴射器の開発",三菱重工技法,vol.37,No.3、pp.134−137,2000年5月
三次元の流路を有する構造体を製造する際に、ろう付けやはんだ材を用いて複数の被接合部材を接合すると、溶融したろう材やはんだ材などによって流路の目詰まりが生じる場合がある。また、接合箇所のろう付けフィレットやはんだ材の残留により、流路内壁面に凹凸が形成されてしまい、流路内断面積が減少する場合もある。こうした場合には、所望する一体積層型熱交換器の熱交換性能が得られないという問題が生じる。
拡散接合法を用いた場合には、被接合部材の変形を伴わずに同時に多点の接合や面接合が可能である。従って、微細な形状を有する被接合部材の接合が可能である。しかし、拡散接合法では、通常、30分程度からそれ以上の時間、所定温度での保持が必要となり、溶接やろう付などによる接合と比べて接合に長時間を要する。また、拡散接合法では、積層板を得るには、流路部材を積層し、上下を加圧して真空雰囲気中で加熱するため、接合に加圧が必要であり、接合操作の煩雑化やコスト増加も避けられない。更に、アルミニウム合金材は、表面に安定で強固な酸化皮膜が存在して拡散が阻害されるために、接合面の酸化皮膜を除去する清浄化処理などが必要となって、アルゴンイオン衝撃、グロー放電、超音波付与など特殊な工程を要する場合もある。また、拡散接合法は、接合させる素材の種類によってはメッキ等の処理を施す必要もある。さらに、拡散接合法によって金属板を接合した場合には、接合面にボイドのような欠陥を生じるおそれもあり、所望とする構造体を得ることが難しい。
摩擦接合法のなかでアルミニウム材に適用される摩擦攪拌接合法は、全てのアルミニウム合金材に適用可能である。摩擦攪拌接合法は、母材の溶融を伴わないために、接合による被接合部材の変形が少ないという利点がある。しかし、一部重ね接合が可能ではあるが基本的には突合せの接合に用いられる工法であり、接合部の形状が直線や緩曲線に限定され、複雑な形状の接合が困難である。また、接合ツールを接合部に直接接触させるために、微細な形状の接合が困難であると共に、同時に多点を接合することも困難である。また、この接合方法では、接合終端部に接合ピンの痕が残ってしまう。
砂型鋳造法を代表とした鋳物では、中子の砂を抜く必要があり、例えばらせん状など複雑な形状の中空部は中子の造型も困難となる。また、切削、穴あけ等の機械加工によって構造体を製造することも考えられるが、複雑な中空部を得ることは困難である。更に、接着による積層によって構造体を製造することも考えられるが、金属結合を有していないため十分な強度を得られないおそれがある。
本発明は、中空部を有する構造体を容易に製造することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点に係る構造体の製造方法は、被接合部材を積層して中空部を有する構造体を製造する方法であって、
前記被接合部材の少なくとも一部として、マグネシウムの含有量が0.5質量%以下であり、切抜き部が形成されたアルミニウム合金板を用意する工程と、
隣り合う前記被接合部材のうちの少なくとも一方が前記アルミニウム合金板となるとともに前記切抜き部が連通して前記中空部が形成されるように複数の前記被接合部材を積層し、前記アルミニウム合金板の液相の質量の比が5%以上35%以下である温度域に30秒以上3600秒以内保持して複数の前記被接合部材を接合する工程と、
を含み、
前記被接合部材を接合する工程では、前記液相を生じるアルミニウム合金材に発生する最大応力をP(kPa)とし、当該アルミニウム合金板内に生じる液相の質量の比をV(%)としたときに、P≦460−12×Vを満たす条件で前記被接合部材を接合する、
ことを特徴とする。
本発明の第2の観点に係る構造体の製造方法は、被接合部材を積層して中空部を有する構造体を製造する方法であって、
前記被接合部材の少なくとも一部として、マグネシウムの含有量が0.2質量%以上2.0質量%以下であり、切抜き部が形成されたアルミニウム合金板を用意する工程と、
隣り合う前記被接合部材のうちの少なくとも一方が前記アルミニウム合金板となるとともに前記切抜き部が連通して前記中空部が形成されるように複数の前記被接合部材を積層し、前記アルミニウム合金板の液相の質量の比が5%以上35%以下である温度域に30秒以上3600秒以内保持して複数の前記被接合部材を接合する工程と、
を含み、
前記被接合部材を接合する工程では、前記液相を生じるアルミニウム合金材に発生する最大応力をP(kPa)とし、当該アルミニウム合金板内に生じる液相の質量の比をV(%)としたときに、P≦460−12×Vを満たす条件で前記被接合部材を接合する、
ことを特徴とする。
また、前記被接合部材を用意する工程では、前記切抜き部を有する同一形状の円板状部材を前記被接合部材として用意し、
前記被接合部材を接合する工程では、前記切抜き部の位相をずらして複数の前記被接合部材を積層してもよい。
本発明によれば、中空部を有する構造体を容易に製造することができる。
2元系共晶合金としてAl−Si合金の状態図を模式的に示す図である。 この実施形態に係るアルミニウム合金材での液相の生成メカニズムを示す説明図である。 逆T字型接合試験片とその接合部の観察面位置を示す正面図である。 図3中の接合部を拡大して示す顕微鏡写真である。 実施例1において、複数の被接続部材を積層して構造体を製造する工程を説明するための図である。 実施例2において、複数の被接続部材を積層して構造体を製造する工程を説明するための図である。 実施例3において、複数の被接続部材を積層して構造体を製造する工程を説明するための図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
A.被接合部材の組合せ
この実施形態に係る構造体の製造方法では、アルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、アルミニウム合金材、純アルミニウム材及びアルミニウム以外の金属材のいずれかを他方の被接合部材として、一方の被接合部材と他方の被接合部材とを接合する。アルミニウム合金材同士を接合する場合は、合金組成が同一のもの同士でも、合金組成が異なるもの同士でもよい。
B.液相の生成
この実施形態に係る構造体の製造方法では、一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比(以下、「液相率」と記す)が5%以上35%以下となる温度で接合する。液相率が35%を超えると、生成する液相の量が多過ぎてアルミニウム合金材が溶融を開始してしまう。一方、液相が生成しなければ接合ができない。板材同士を接合する際の好ましい液相率は5〜30%であり、より好ましい液相率は10〜20%である。
加熱中における実際の液相率を測定することは、極めて困難である。そこで、この実施形態で規定する液相率は平衡計算によって求めるものとする。具体的には、Thermo−Calcなどの熱力学平衡計算ソフトによって合金組成と加熱時の最高到達温度から計算される。
液相の生成メカニズムについて説明する。図1は、代表的な2元系共晶合金であるAl−Si(アルミニウムシリコン)合金の状態図を模式的に示す図である。図1に示すように、Si濃度が最大固溶限濃度より大きい濃度c1であるアルミニウム合金材を加熱すると、共晶温度(固相線温度)Teを超えた付近の温度T1で液相の生成が始まる。共晶温度Te以下では、図2(a)に示すように、結晶粒界で区分されるマトリクス中に晶析出物が分布している。ここで液相の生成が始まると、図2(b)に示すように、晶析出物分布の偏析の多い結晶粒界が溶融して液相となる。次いで、図2(c)に示すように、アルミニウム合金のマトリクス中に分散する主添加元素成分であるSiの晶析出物粒子や金属間化合物の周辺が球状に溶融して液相となる。更に図2(d)に示すように、マトリクス中に生成したこの球状の液相は、界面エネルギーにより時間の経過や温度上昇と共にマトリクスに再固溶し、固相内拡散によって結晶粒界や表面に移動する。そして、温度が温度T1より高い温度T2に上昇すると、液相量が増加する。また、図1に示すように、一方のアルミニウム合金材のSi濃度が最大固溶限濃度より小さい濃度c2の場合には、固相線温度Ts2を超えた付近で液相の生成が始まる。ただし、図2(a)に示すSi濃度が濃度c1の場合と異なり、溶融直前の組織には、マトリクス中に小析出物粒子が存在しない場合がある。この場合、図2(b)に示すように粒界でまず溶融が溶融し液相となった後、図2(c)に示すようにマトリクス中の局所的に溶質元素濃度が高い場所より液相が発生する。マトリクス中に生成したこの球状の液相は、Si濃度が濃度c1の場合と同様に、界面エネルギーにより時間の経過や温度上昇と共にマトリクスに再固溶し、固相内拡散によって結晶粒界や表面に移動する。そして、温度が温度Ts2より高い温度T3に上昇すると、液相量が増加する。このように、この実施形態の構造体の製造方法は、アルミニウム合金材内部の部分的な溶融により生成される液相を利用するものであり、被接合部材の接合と形状維持の両立を実現できるものである。
C.接合における金属組織の挙動
液相が生じた後から接合に至るまでの金属組織の挙動を説明する。図3に示すように、液相を生成するアルミニウム合金材Aと、これと接合するアルミニウム合金材Bとを用いた逆T字型接合試験片を接合し、接合箇所を観察面として顕微鏡で観察した(図3参照)。前述のように、一方のアルミニウム合金材Aの表面に生成するごく僅かな液相は、フラックス等の作用により酸化皮膜が破壊された他方のアルミニウム合金材Bとの隙間を埋める。次に、両合金材の接合界面付近にあるアルミニウム合金材Aの液相がアルミニウム合金材B内へと移動していき、この移動に伴って接合界面に接しているアルミニウム合金材Aの固相α相の結晶粒がアルミニウム合金材B内に向かって成長する。また、アルミニウム合金材Bの結晶粒もアルミニウム合金材A側へと成長する。
アルミニウム合金材Bが液相を生成しない合金の場合には、図4(a)に示すように、接合界面付近のアルミニウム合金材B中にアルミニウム合金材Aの組織が入り込んだような組織となってアルミニウム合金材A、Bが接合される。従って、接合界面にはアルミニウム合金材Aとアルミニウム合金材B以外の金属組織が生じない。また、アルミニウム合金材Bも液相を生成する合金の場合には、図4(b)に示すように、両合金材は完全に一体化した組織となり接合界面が判別できない。
一方、アルミニウム合金材Bとしてろう材をクラッドしたブレージングシートを用いた場合には、図4(c)に示すように、接合部にフィレットが形成されると共に共晶組織が見られる。このように、アルミニウム合金材Bとしてブレージングシートを用いた場合には、図4(a)、(b)に示す接合組織とは異なる接合組織が形成される。ろう付法では接合部を液相ろうが埋めてフィレットを形成するため、接合部は周囲と異なる共晶組織が形成されるのである。また、溶接法においても接合部が局部的に溶融するため、他の部位とは異なる金属組織となる。それに対して、図4(a),(b)に示すこの実施形態に係るアルミニウム合金の接合工程では、接合部の金属組織が両被接合部材のものだけで構成され、或いは、両被接合部材が一体化したもので構成される点で、ろう付や溶接による接合組織と相違する。
このような接合挙動のため、この実施形態に係る接合工程では、接合部位近傍の形状変化がほとんど発生しない。すなわち、溶接法のビードや、ろう付法でのフィレットのような接合後の形状変化が、この実施形態に係る接合工程では殆ど発生しない。例えば、ブレージングシート(ろう材クラッド率が片面5%)を用いてドロンカップタイプの積層型熱交換器を組み立てた場合、ろう付け加熱後には溶融したろう材が接合部に集中するため、積層した熱交換器の高さが部材同士の接合によって5〜10%減少する。従って、製品設計においてはその減少分を考慮する必要がある。これに対して、この実施形態の接合工程では、接合後における寸法変化が5%以下と小さく、高精度の製品設計が可能となる。
D.酸化皮膜の破壊
アルミニウム材の表層には酸化皮膜が形成されており、これによって接合が阻害される。従って、接合においては酸化皮膜を破壊する必要がある。この実施形態の構造体の製造方法では、酸化被膜を破壊するために以下のD−1もしくはD−2に示すいずれかの方法が取られる。
D−1.フラックスによる酸化皮膜の破壊
この方法では、酸化皮膜を破壊する為に、少なくとも接合部にフラックスを塗布する。フラックスとしては、KAlFやCsAlFなどのフッ化物系フラックスや、KClやNaClなどの塩化物系フラックスなどを用いることができる。これらフラックスは、アルミニウム合金積層方法で液相が溶融する前に溶融し、酸化皮膜と反応して酸化皮膜を破壊する。
また、酸化皮膜の形成を抑制するために、窒素やアルゴンなどの非酸化性ガスの雰囲気中で接合するのが好ましい。特にフッ化物系のフラックスを用いる場合は、酸素濃度を250ppm以下に抑え、露点を−25℃以下に抑えた非酸化性ガス雰囲気中で接合するのが好ましい。
更に、フッ化物系のフラックスを用いる場合、一方及び他方の被接合部材としてアルミニウム合金中にMgが0.5質量%を超えて含有されていると、フラックスとMgが反応してフラックスの酸化皮膜破壊作用が損なわれる。従って、被接合部材は、Mgの含有量が0.5質量%以下のアルミニウム合金を用いるものとする。なお、Mg含有量が0.5質量%以下の条件を満たせば、アルミニウム合金に含有される他の元素の種類や含有量は如何なるものを用いてもよい。
D−2.Mgの作用による酸化皮膜の破壊
アルミニウム合金材にMgが添加されている場合は、接合部にフラックスを塗布しなくても、アルミニウム合金材の接合工程において酸化被膜が破壊され、接合が可能になる。この場合、真空フラックスレスろう付と同様に、アルミニウム合金が溶融して液相が表層に出てきた際に、アルミニウム合金中より蒸発するMgのゲッター作用によって表面の酸化皮膜が破壊される。
Mgの作用による酸化皮膜の破壊方法の場合、酸化皮膜の形成を抑制するために、真空あるいは非酸化性雰囲気の炉を用いるのが好ましい。ただし、面接合や閉塞空間の接合の場合は乾燥大気中で接合してもよい。ガス中での接合の場合は、露点を−25℃以下に抑えることが好ましい。
Mgの作用により酸化皮膜を破壊する為には、アルミニウム合金材に少なくとも0.2質量%以上2.0質量%以下のMgが含有される必要がある。Mgが0.2質量%未満だとゲッター作用が十分に働かず、酸化皮膜によって接合が十分になされない。また、Mgが2.0質量%を超えると、アルミニウム合金材の表面でMgが雰囲気中の酸素と反応し、酸化物MgOが多く生成されて接合が阻害される。
E.液相形成に必要な時間の下限
この実施形態に係る被接合部材の接合工程では、接合部で酸化皮膜が破壊された後、両被接合部材の間に液相が充填され接合がなされる。この液相は、一方の被接合部材であるアルミニウム合金材中において生成する。液相が接合部に十分に充填される為には、液相率が5%以上である時間が30秒以上であるのが好ましい。より好ましくは、液相率5%以上の時間が60秒以上であると更に十分な充填が行われ確実な接合がなされる。なお、本接合では、液相は接合部の極近傍においてしか移動しないので、この充填に必要な時間は接合部の大きさには依存しない。なお、他方の被接合部材であるアルミニウム合金材中においても液相が生成してもよく、ここでの液相率が5%以上である時間も30秒以上であるのが好ましく、より好ましくは60秒以上である。
F.形状維持に必要な接合時間の上限
この実施形態に係る被接合部材の接合工程では、液相を生じる一方の被接合部材であるアルミニウム合金材における液相率が5%以上である時間は、3600秒以内であるのが好ましい。3600秒を超えると、液相率が35%以下であっても被接合部材が大きく変形するおそれがある。より好ましくは、液相率が5%以上である時間が1800秒以内とすると形状変化を確実に抑制できる。なお、他方の被接合部材であるアルミニウム合金材中においても液相が生成する場合も、他方の被接合部材における液相率が5%以上である時間は3600秒以内であるのが好ましく、より好ましくは1800秒以内である。
G.接合時における両被接合部材に加わる応力
この実施形態に係る被接合部材の接合工程では、接合部で両被接合部材が接していれば接合面に圧力を加える必要は必ずしもない。しかしながら、実際の製品の製造過程では、被接合部材同士を固定したりクリアランスを縮めたりする為に、冶具等で両被接合部材に応力が加わる場合が多い。また、自重によっても被接合部材内に応力が発生する。このとき、各被接合部材内の各部位に発生する応力は、形状と荷重から求められる。例えば、構造計算プログラムなどを用いて計算することができる。この実施形態では、接合時において液相を生じる被接合部材の各部位に発生する応力のうち最大のもの(最大応力)をP(kPa)とし、当該被接合部材であるアルミニウム合金での液相率をV(%)としたときに、P≦460−12×Vを満たすよう接合することが好ましい。この式の右辺で示される値は限界応力であり、これを超える応力が液相を生じる被接合部材に加わると、液相率が35%以内であっても被接合部材に大きな変形が発生するおそれがある。なお、両被接合部材から液相が発生する場合は、両被接合部材に対して、各々の応力P、液相率Vを用いてP≦460−12×Vを算出し、両被接合部材とも前記式を同時に満たすよう接合を行う。
H.この実施形態に係る構造体の製造方法に特に適した合金
上述のようにこの実施形態に係る接合工程において、酸化皮膜の破壊にフラックスを用いる場合は、被接合部材であるアルミニウム合金材として、Mg含有量が0.5質量%以下のアルミニウム合金が用いられる。また、酸化皮膜の破壊にフラックスを用いずにMgのゲッター作用を利用する場合は、一方の被接合部材であるアルミニウム合金材として、Mg含有量が0.2質量%以上2.0質量%以下のアルミニウム合金が用いられる。この場合、他方の被接合部材であるアルミニウム合金材としては、例えばMg含有量が2.0質量%以下のアルミニウム合金が用いられる。
また、一方の被接合部材であるアルミニウム合金材として、Si元素を必須成分として含有するAl−Si合金やAl−Si−Mg合金を用いてもよい。このようなアルミニウム合金では、Siの含有量(質量濃度)Xが0.6〜3.5質量%のものが好適に用いられる。Siの含有量Xが0.6質量%未満の場合、液相率が5%〜35%となる温度範囲が狭くなり、安定した接合が困難となる場合がある。一方、Siの含有量Xが3.5質量%を超えると、固相線温度(=共晶温度)で発生する液相の量が多くなり、固相線温度から液相率35%となる温度までの温度範囲が狭くなって安定した接合が困難となる場合がある。より好ましいSiの含有量Xは、1.2〜3.0質量%である。
また、上記Al−Si合金又はAl−Si−Mg合金は、Cu:0.05〜0.5質量%、Fe:0.05〜1.0質量%、Zn:0.2〜1.0質量%、Mn:0.1〜1.8質量%及びTi:0.01〜0.3質量%から選択される1種又は2種以上を更に含有してもよい。すなわち、Mg含有量が0.5質量%以下又は0.2質量%以上2.0質量%以下であって、Si:0.6〜3.5質量%を必須元素として含有し、Cu:0.05〜0.5質量%、Fe:0.05〜1.0質量%、Zn:0.2〜1.0質量%、Mn:0.1〜1.8質量%及びTi:0.01〜0.3質量%から選択される1種又は2種以上を選択的添加元素として更に含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるアルミニウム合金材が好適に用いられる。
このようなAl−Si合金又はAl−Si−Mg合金からなるアルミニウム合金材を一方の被接合部材として他方の接合部材と接合する場合、接合時における一方の被接合部材の温度Tが、Siの含有量Xに応じて、660−39.5X≦T≦660−15.7X、且つ、T≧577を満たすように制御するのが好ましい。これによって、更に良好な接合が達成される。
さらに、一方の被接合部材であるアルミニウム合金材として、Cu元素を必須成分として含有するAl−Cu合金やAl−Cu−Mg合金を用いてもよい。このようなアルミニウム合金では、Cuの含有量(質量濃度)Yが0.7〜15.0質量%のものが好適に用いられる。Cuの含有量Yが0.7質量%未満の場合、液相率が5%〜35%となる温度範囲が狭くなり、安定した接合が困難となる場合がある。一方、Cuの含有量Yが15.0質量%を超えると、固相線温度(=共晶温度)で発生する液相の量が多くなり、固相線温度から液相率35%となる温度までの温度範囲が狭くなって安定した接合が困難となる場合がある。より好ましいCu含有量Yは、1.5〜12.0質量%である。
また、上記Al−Cu合金又はAl−Cu−Mg合金は、Si:0.05〜0.8質量%、Fe:0.05〜1.0質量%、Zn:0.2〜1.0質量%、Mn:0.1〜1.8質量%及びTi:0.01〜0.3質量%から選択される1種又は2種以上を更に含有してもよい。すなわち、Mg含有量が0.5質量%以下又は0.2質量%以上2.0質量%以下であって、Cu:0.7〜15.0質量%を必須元素として含有し、Si:0.05〜0.8質量%、Fe:0.05〜1.0質量%、Zn:0.2〜1.0質量%、Mn:0.1〜1.8質量%及びTi:0.01〜0.3質量%から選択される1種又は2種以上を選択的添加元素として更に含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるアルミニウム合金材も好適に用いられる。
このようなAl−Cu合金又はAl−Cu−Mg合金からなるアルミニウム合金材を一方の被接合部材として他方の接合部材と接合する場合、接合時における一方の被接合部材の温度Tが、Cuの含有量Yに応じて、660−15.6Y≦T≦660−6.9Y、且つ、T≧548を満たすように制御するのが好ましい。これによって、更に良好な接合が達成される。
I.固相線温度と液相線温度の差
この実施形態に係る接合工程では、液相を生成するアルミニウム合金材の固相線温度と液相線温度の差を10℃以上とするのが好ましい。固相線温度を超えると液相の生成が始まるが、固相線温度と液相線温度の差が小さいと、固体と液体が共存する温度範囲が狭くなり、発生する液相の量を制御することが困難となる。従って、この差を10℃以上とするのが好ましい。例えば、この条件を満たす組成を有する2元系の合金としては、Al−Si系合金、Al−Cu系合金、Al−Mg系合金、Al−Zn系合金、Al−Ni系合金などが挙げられる。前述のような共晶型合金は、固液共存領域を大きく有するので、こうした条件を満たすのに有利である。しかしながら、他の全率固溶型、包晶型、偏晶型などの合金であっても、固相線温度と液相線温度の差が10℃以上であることによって良好な接合が可能となる。また、上記の2元系合金は主添加元素以外の添加元素を含有することができ、実質的には3元系や4元系合金、更に5元以上の多元系の合金も含まれる。例えばAl−Si−Mg系やAl−Si−Cu系、Al−Si−Zn系、Al−Si−Cu−Mg系などが挙げられる。なお、固相線温度と液相線温度の差は大きくなるほど適切な液相量に制御するのが容易になる。従って、固相線温度と液相線温度の差に上限は特に設けない。
J.アルミニウム合金材における添加元素の含有量
液相を生成するアルミニウム合金材の主添加元素の含有量は、例えば2元系において平衡状態図から以下のように設定することができる。接合温度をT(℃)、アルミニウムに対する主添加元素の添加量をX(質量%)、共晶温度をTe(℃)、アルミニウムに対する主添加元素の固溶限をa(質量%)、共晶点における主添加元素の含有量をb(質量%)とすると、下記式(1)を満足する範囲で接合を実施することで、より良好な液相率を得ることができる。主添加元素の添加量Xが(0.05/a+0.95/b)×(Te−660)×T+660以下であると、アルミニウム合金材で発生する液相量が不十分で接合が困難となる場合がある。一方、主添加元素の添加量Xが(0.35/a+0.65/b)×(Te−660)×T+660以上であると、発生する液相の量が多過ぎて接合による大きな形状変化が生じる場合がある。従って、添加元素の添加量Xは下記式(1)を満足することが望ましい。
(0.05/a+0.95/b)×(Te−660)×T+660<X<(0.35/a+0.65/b)×(Te−660)×T+660 ・・・(1)
K.接合後における結晶粒径
通常、アルミニウム合金は、高温、低応力下では結晶粒自体の塑性変形に優先して結晶粒界でずれる粒界すべりによって変形する。特にこの実施形態の接合時のような固液共存域においては、粒界が優先して溶融しており、結晶粒径が小さいと単位体積中の粒界が多くなって粒界すべりによる変形が発生し易くなる。固液共存域での結晶粒径が小さ過ぎると、自重により粒界すべりが発生し易くなり、加熱中の形状変化が大きくなってしまうおそれがある。ここで、接合中の固液共存域にある結晶粒径を、直接測定することは困難であるため、接合中の固液共存域にある結晶粒径と接合加熱後の結晶粒径との関係を調べた。通常のろう付炉の冷却工程(加熱後30℃/分で400℃まで冷却)で冷却した際の結晶粒径を測定して、これを接合中の固液共存域にある結晶粒径とした。次いで、接合加熱温度で保持後に水冷した際の結晶粒径を測定し、接合加熱後の結晶粒径とした。両者を比較したところ、結晶粒径はほぼ同じであった。従って、接合加熱後の結晶粒径は接合中の固液共存域にある結晶粒径と同等であるといえる。そこで、この実施形態では、接合中の固液共存域にある結晶粒径を加熱後の結晶粒径によって評価する。この実施形態に係る接合工程では、加熱後の結晶粒径が50μm未満のときには、自重により粒界すべりが発生し易くなり、接合時間が長いと被接合部材の変形が促進される場合がある。したがって、加熱後の結晶粒径が50μm以上であるのが好ましいといえる。なお、結晶粒径の測定はJIS H:501に準拠した切断法により測定した。
L.接合方法
この実施形態の接合工程では、基本として、被接合部材は炉中で加熱される。炉の形状に特に制限はなく、例えば1室構造のバッチ炉、自動車用熱交換器の製造などに用いられる連続炉などを用いることができる。なお、炉中の雰囲気に制限はないが、前述の通り非酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。
(実施例1)
表1に示すAl−Si系合金2種(合金1、2)を用いて図5(b)に示す三次元流路(中空部)を有するアルミニウム積層構造体を作製した。アルミニウム積層構造体の作製には、この実施形態に係る製造方法と、比較例として従来工法である、ろう付け、拡散接合に加え鋳物工法および、機械加工を用いた。中空部を有する積層構造体の作製結果を表2に示す。表2及び口述する表3,4では、目的とする積層構造体が得られ、流路の確保が行えた場合を「○」として示し、成形が行えなかった、または中空部を含め形状に不具合の発生した場合を「×」として示している。ここで、この実施形態に係る製造方法、ろう付け、拡散接合では、初めに、長さLが100mm、幅Wが50mm、厚さtが3mmの板材を複数用意し、続いて、複数の板材に、プレス打ち抜きで直径φが5mmの切抜き部1を所定箇所に設けるとともに、一部の板材には、5mmの直径φに代えて80mmの直径φを有する切抜き部1を所定箇所に設け(図5(a)参照)、切抜き部を有する板材を50枚重ねて高さ150mmの積層構造体を製造している(図5(b)参照)。積層構造体には、板材の切抜き部が連通することによって中空部が形成される。具体的には、図5に示すように、直径φが80mmの切抜き部を有する板材が積層方向の略中央に配置されるとともに、この板材の上下に、直径φが5mmの切抜き部を有する板材が、切抜き部が略垂直に並ぶよう積層され、中空部として、2つの垂直な流路が中央付近の踊り場で連結される形状に積層構造体が形成されるものとした。また、中空部は、その全長が180mmの流路となるように調整されるものとした。
Figure 0005901251
Figure 0005901251
表2に示す製造例1,2はそれぞれ、表1に示す合金1、2に対するこの実施形態による製造例であり、上記の板材を窒素雰囲気中で600℃まで昇温し、その温度に2分間保持した後に、室温で自然冷却した。製造条件として、窒素雰囲気は、酸素濃度100ppm以下で露点−45℃以下に管理した。昇温速度は、520℃以上において、10℃/分とした。なお、製造例1ではKAlFからなるフラックスを用い、製造例2ではフラックスを用いていない。また、製造例1、2では、加熱中に特別な加圧は行っていないが、冶具の押さえの荷重や自重により、被接合部材に最大で0.01MPa程度の応力が掛かっていた。製造例1,2では、接合時に、接合面に液相がしみ出すことにより、被接合部材が良好に接合され、目的とする中空部を有する積層構造体を得ることができた。
表2に示す比較例1,2はそれぞれ、表1に示す合金1、2に対して非腐食性フラックスを塗布したろう付工法を用いたものである。長さLが90mm、幅Wが40mm、厚さtが0.3mmの箔状のJIS 4043ろう材を、切抜き部を避けるように被接合部材同士の間に配置した。ろう付けは炉内に不活性ガスとして窒素ガスを流し炉内の酸素濃度を20ppm以下に調整した雰囲気中で実施した。積層体の温度を測定し、温度が600℃となるまでの到達時間が10分程度となるような昇温条件で加熱した後に600℃で3分間保持し、その後冷却して炉外に取り出した。しかし、ろう材が変形するためにろう付け後に積層体の形状が崩れてしまって、積層構造体の形状を維持することができなかった。また、中空部にもろう材が流れ出してφ5mmの穴を埋めてしまう部分も存在し、目的の積層構造体は得られなかった。
表2に示す比較例3,4はそれぞれ、表1に示す合金1、2に対して拡散接合を用いたものである。板材を有機溶媒で洗浄した後に積層し、真空炉に入れて加熱した。加熱条件は、固相線温度よりも30℃低い545℃とした。所定の温度まで加熱した後、10分程度放置し、加圧を開始した。加圧力は、3MPaとした。60分加圧した後、加圧を解除し、炉冷によって室温付近に温度を下げた後で積層体を炉内から取り出した。しかし、加圧のために接合後に積層体の形状が崩れてしまったり、被接合部材同士の接合が不十分だったりして、積層構造体の形状を維持することができず、目的の積層構造体は得られなかった。
表2に示す比較例5,6はそれぞれ、表1に示す合金1、2に対して砂型による鋳物工法を用いたものである。しかし、鋳物工法を用いた場合には、中空部を形成できず、いずれの合金を用いた場合にも目的の積層構造体が得られなかった。また、表2に示す比較例7,8はそれぞれ、表1に示す合金1、2に対して機械加工を用いたものである。機械加工による構造体の製造として、最終形状である長さLが100mm、幅Wが50mm、高さHが100mmのアルミニウム合金ブロックを用意し、精密MC加工機で切削加工を行った。しかし、機械加工を用いた場合には、上面および下面の穴は得られたが、中間部に設けた踊り場状の中空部には切削工具が入らず、加工が行えなかった。このため、目的の構造体は得られなかった。
(実施例2)
表1に示すAl−Zn−Mg合金(合金3)を用いて図6(c)に示す形状の三次元流路(中空部)を有するアルミニウム積層構造体を作製した。アルミニウム積層構造体の作製には、この実施形態に係る製造方法と、比較例として従来工法である、ろう付け、拡散接合に加え鋳物工法および、機械加工を用いた。中空部を有する積層構造体の作製結果を表3に示す。ここで、この実施形態に係る製造方法、ろう付け、拡散接合では、直径φが100mm、厚さtが5mmの円板にドリル穴あけ加工で直径φが3mmの切抜き部2を所定箇所に設け(図6(a)参照)、切抜き部を有する板材を50枚重ねて高さ250mmの積層構造体を製造している。積層構造体には、板材の切抜き部が連通することによって中空部が形成される。具体的には、板材の位相をずらして(板材を回転させて)積層することによって(図6(b)、(c)参照)、長さ700mmのらせん状の流路が形成されるように調整するものとした。
Figure 0005901251
表3に示す製造例3は、この実施形態による製造例であり、上記の試験片を真空雰囲気中で630℃まで昇温し、その温度に3分間保持した後に、炉中で自然冷却した。製造条件として、真空雰囲気は、10−5torr以下に管理した。昇温速度は、520℃以上において、10℃/分とした。なお、製造例3では、接合部にフラックスを使用していない。製造例3では、接合時に、接合面に液相がしみ出すことにより、被接合部材が良好に接合され、目的とする中空部を有する積層構造体を得ることができた。
表3に示す比較例9は、非腐食性フラックスを塗布したろう付工法を用いたものである。直径φが90mm、厚さtが0.3mmの箔状のJIS 4043ろう材を、切抜き部を避けるように被接合部材同士の間に配置した。ろう付けは炉内に不活性ガスとして窒素ガスを流し炉内の酸素濃度を20ppm以下に調整した雰囲気中で実施した。積層体の温度を測定し、温度が630℃となるまでの到達時間が10分程度となるような昇温条件で加熱した後に630℃で3分間保持し、その後冷却して炉外に取り出した。しかし、合金3であるAl−Zn−Mg合金は、ろう付け工法に不向きであり、全くろう付けできず、目的の積層体は得られなかった。
表3に示す比較例10は、拡散接合を用いたものである。板材を有機溶媒で洗浄した後に積層し、真空炉に入れて加熱した。加熱条件は、固相線温度よりも30℃低い600℃とした。所定の温度まで加熱した後、10分程度放置し、加圧を開始した。加圧力は、3MPaとした。60分加圧した後、加圧を解除し、炉冷によって室温付近になった後で積層体を炉内から取り出した。しかし、加圧のために接合後に積層体の形状が崩れてしまったり、被接合部材同士の接合が不十分だったりして、積層構造体の形状を維持することができず、目的の積層体は得られなかった。
表3に示す比較例11は、砂型による鋳物工法を用いたものである。しかし、鋳物工法を用いた場合には、らせん中空部を形成できず、目的の積層構造体が得られなかった。また、表3に示す比較例12は、機械加工を用いたものである。機械加工による構造体の製造として、最終形状である直径φが100mm、高さHが250mmの円柱状のアルミニウム合金ブロックを用意し、精密MC加工機で切削加工を行った。しかし、機械加工を用いた場合には、らせん状の中空部に切削工具が入らず、加工が行えなかった。このため、目的の構造体は得られなかった。
(実施例3)
表1に示すAl−Cu系合金(合金4)を用いて図7(c)に示す形状の三次元流路(中空部)を有するアルミニウム積層構造体を作製した。このアルミニウム積層構造体は、冷却または加温用の流体を流しながらロール加工を行うための圧延ロール形状を模擬している。図7に示すアルミニウム積層構造体の作製には、この実施形態に係る製造方法と、比較例として従来工法である、ろう付け、拡散接合に加え鋳物工法および、機械加工を用いた。中空部を有する積層構造体の作製結果を表4に示す。ここで、この実施形態に係る製造方法、ろう付け、拡散接合では、直径φが200mm、厚さtが5mmの円板にドリル穴あけ加工で直径φ3mmの切抜き部2を所定箇所に設けるとともに、ドリル穴あけ加工で直径φ30mmの穴3を中央に設け(図7(a)参照)、切抜き部を有する板材を60枚重ねて高さ300mmの積層構造体を製造している。積層構造体には、長さを1000mmのらせん状の流路が形成されるように実施例3と同様に各板材を回転させることにより位相をつけて調整を行った(図7(b)、(c)参照)。更にこの積層構造体では、中央の穴が垂直に連通し、中心軸を相通させることができる。
Figure 0005901251
表4に示す製造例4は、この実施形態による製造例であり、上記の試験片を窒素雰囲気中で605℃まで昇温し、その温度に5分間保持した後に、4℃/minで冷却を行い、300℃×5minで再加熱を行った。窒素雰囲気は、酸素濃度100ppm以下で露点−45℃以下に管理した。製造条件として、昇温速度は、520℃以上において、10℃/分とした。なお、製造例4では、接合部にフラックスを使用していない。製造例4では、接合時に、接合面に液相がしみ出すことにより、被接合部材が良好に接合され、目的とする中空部を有する積層構造体を得ることができた。また、接合後の熱処理により高強度な積層体となり、軸部材を挿入し固定することにより冷却または加温用の流体を流しながらロール加工を行うための圧延ロール形状を得ることが出来た。
表4に示す比較例13は、非腐食性フラックスを塗布したろう付工法を用いたものである。直径φが90mm、厚さtが0.3mmの箔状のJIS 4043ろう材を、切抜き部を避けるように被接合部材同士の間に配置した。ろう付けは炉内に不活性ガスとして窒素ガスを流し炉内の酸素濃度を20ppm以下に調整した雰囲気中で実施した。積層体の温度を測定し、温度が600℃となるまでの到達時間が10分程度となるような昇温条件で加熱した後に600℃で3分間保持し、その後冷却して炉外に取り出した。しかし合金4であるAl−Cu合金は、ろう付け工法に不向きであり、全くろう付けできず、目的の積層体は得られなかった。
表4に示す比較例14は、拡散接合を用いたものである。板材を有機溶媒で洗浄した後に積層し、真空炉に入れて加熱した。加熱条件は、固相線温度よりも30℃低い600℃とした。所定の温度まで加熱した後、10分程度放置し、加圧を開始した。加圧力は、3MPaとした。60分加圧した後、加圧を解除し、炉冷によって室温付近になった後で積層体を炉内から取り出した。しかし、加圧のために接合後に積層体の形状が崩れてしまったり、被接合部材同士の接合が不十分だったりして、積層構造体の形状を維持することができず、目的の積層体は得られなかった。
表4に示す比較例15は、砂型による鋳物工法を用いたものである。しかし、鋳物工法を用いた場合には、らせん中空部を形成できず、目的の積層構造体が得られなかった。また、表4に示す比較例16は、機械加工を用いたものである。機械加工による構造体の製造として、最終形状である直径φが200mm、高さHが300mmの円柱状のアルミニウム合金ブロックを用意し、精密MC加工機で切削加工を行った。しかし、機械加工を用いた場合には、らせん状の中空部に切削工具が入らず、加工が行えなかった。このため、目的の構造体は得られなかった。
以上説明した実施形態の構造体の製造方法では、Mgを0.5質量%以内または0.2質量%以上2.0質量%以下含むアルミニウム合金板を被接合部材とし、このアルミニウム合金板の液相の質量の比が5%以上35%以下である温度域に30秒以上3600秒以内保持して複数の被接合部材を接合するので、はんだ材やろう材、溶化材などを用いることなく単層材で接合を行うことができ、接合による寸法や形状変化を小さくすることができる。また、拡散接合を用いる場合と比べて、加圧が不要であり、接合に要する時間を短縮でき、接合面の清浄化処理のための特殊な工程を必要としない。つまり、この実施形態の構造体の製造方法によって、中空部を有する構造体を容易に製造することができる。また、被接合部材として、熱処理型合金を用いることによって、接合の冷却途中もしくは冷却後の再加熱により熱処理を行うことで、固溶硬化や析出硬化によって接合後の強度を確保することもできる。
上述した実施例1〜3では、直方体状や円盤状のアルミニウム合金板を被接合部材としたが、被接合部材は、積層する際に隙間を生じない程度の平滑を有しておればよく、厚みなどの形状は如何なるものでもよい。
また、切抜き部は、プレス打ち抜き、はさみ等各種工法による切断、エッチング、レーザ加工、ドリル等の穴あけ加工などにて得られればよく、形状などは如何なるものでもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更(構成要素の削除等を含む)をなし得ることはいうまでもない。
c1、c2 Si濃度
T、T1〜T3・・温度
Te、Ts2 固相線温度
1、2 切抜き部
3 穴
4 軸

Claims (3)

  1. 被接合部材を積層して中空部を有する構造体を製造する方法であって、
    前記被接合部材の少なくとも一部として、マグネシウムの含有量が0.5質量%以下であり、切抜き部が形成されたアルミニウム合金板を用意する工程と、
    隣り合う前記被接合部材のうちの少なくとも一方が前記アルミニウム合金板となるとともに前記切抜き部が連通して前記中空部が形成されるように複数の前記被接合部材を積層し、前記アルミニウム合金板の液相の質量の比が5%以上35%以下である温度域に30秒以上3600秒以内保持して複数の前記被接合部材を接合する工程と、
    を含み、
    前記被接合部材を接合する工程では、前記液相を生じるアルミニウム合金材に発生する最大応力をP(kPa)とし、当該アルミニウム合金板内に生じる液相の質量の比をV(%)としたときに、P≦460−12×Vを満たす条件で前記被接合部材を接合する、
    ことを特徴とする構造体の製造方法。
  2. 被接合部材を積層して中空部を有する構造体を製造する方法であって、
    前記被接合部材の少なくとも一部として、マグネシウムの含有量が0.2質量%以上2.0質量%以下であり、切抜き部が形成されたアルミニウム合金板を用意する工程と、
    隣り合う前記被接合部材のうちの少なくとも一方が前記アルミニウム合金板となるとともに前記切抜き部が連通して前記中空部が形成されるように複数の前記被接合部材を積層し、前記アルミニウム合金板の液相の質量の比が5%以上35%以下である温度域に30秒以上3600秒以内保持して複数の前記被接合部材を接合する工程と、
    を含み、
    前記被接合部材を接合する工程では、前記液相を生じるアルミニウム合金材に発生する最大応力をP(kPa)とし、当該アルミニウム合金板内に生じる液相の質量の比をV(%)としたときに、P≦460−12×Vを満たす条件で前記被接合部材を接合する、
    ことを特徴とする構造体の製造方法。
  3. 前記被接合部材を用意する工程では、前記切抜き部を有する同一形状の円板状部材を前記被接合部材として用意し、
    前記被接合部材を接合する工程では、前記切抜き部の位相をずらして複数の前記被接合部材を積層する、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の構造体の製造方法。
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