JP2013116474A - アルミニウム合金材の接合方法、アルミニウム合金接合体の製造方法、ならびに、アルミニウム合金接合体 - Google Patents

アルミニウム合金材の接合方法、アルミニウム合金接合体の製造方法、ならびに、アルミニウム合金接合体 Download PDF

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Abstract

【課題】2000系アルミニウム合金材に適用可能な新規な接合法、ならびに、高強度のアルミニウム合金接合体とその製造方法を提供する。
【解決手段】Mg:0.5mass%以下に規制されたアルミニウム合金材同士の接合方法において、一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が5〜35%となり、かつ、他方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が35%以下となる温度において、フラックスが接合部材間に塗布された状態で非酸化性雰囲気中で接合するアルミニウム合金材の接合方法、これによって接合されたアルミニウム合金材を用いたアルミニウム合金接合体の製造方法、ならびに、これにより製造されたアルミニウム合金接合体。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム合金材の接合方法、当該接合方法によって接合されるアルミニウム合金材を用いたアルミニウム合金接合体の製造方法、ならびに、当該製造方法によって製造されるアルミニウム合金接合体に関する。
高強度アルミニウム材である2000系合金は構造材として用いられているが、一部の合金(2219、溶加材は2319)を除いて、溶接性が劣り、溶接継手の強度・靭性が低く耐食性も劣る。従って、小物部品のような再熱処理が可能なもの以外は溶接構造材としてほとんど使用されず、通常、リベット構造としたり鍛造や切削加工が用いられる。
溶接が行えない理由は、添加元素の種類とその添加量にある。特に主要元素であるCuは強度に寄与する元素であるが、割れ感受性を高める元素でもある。すなわち、高温(熱間)割れに対する材料自体の感受性が高い材種ほど、割れの発生が多くなる。このような割れはアルミニウムと共晶を形成する成分量の増加とともに増大し、所定の成分量でピークを示し、更に成分量が増加すると減少する。このような成分量のピーク値は、合金系によってそれぞれ異なる。添加元素がCuの場合には、ピーク値は通常1〜3mass%である。添加元素がMgの場合には、このようなピーク値は通常1〜2mass%であり、Siでは通常0.6〜0.8mass%である。また、添加元素にMgとSiが含まれる6000系合金の場合のピーク値は通常、MgSiが1mass%以下である。図6に、添加元素がCuの場合におけるCu添加量と割れ長さの関係を例示する。
2024合金のCu添加量は3.8〜4.4mass%であり、2017合金のCu添加量は3.5〜4.5mass%である。これらの合金では、上述のピーク値(1〜3mass%)を超えてCuを含有しているが、低融点多元共晶を形成するMgやSiも含有しているため割れ感受性が高く、溶接性が劣る。
一方、近年注目されている接合方法の一つにFSW(摩擦攪拌接合法)が挙げられる。FSWは固相接合方法の一種であり、熱ひずみや変形が少ない接合方法として注目されている(例えば特許文献1)。
図7に、FSWの原理を簡単に示す。この工法はアルミニウム合金板等の被接合材1、1を鋼材等の硬質の裏当材2に載置して突合せ、その突合せ部分に沿って硬質の回転工具3を高速に回転させながら移動させて接合する方法である。接合部分が溶融しないために発生する熱も少なく、その結果、ひずみが少なく割れの発生も無い接合継手が得られる。溶接に不適な2000系合金の接合工法としても有用である。しかしながら、FSWは突合せ接合と一部の重ね接合にのみ適用が可能であり、隅肉形状の接合や曲線部を有する部材の接合には適用が困難である。
特許第2712838号
上述のような従来技術の問題点に鑑み、本発明は溶接が極めて困難な2000系アルミニウム合金材に適用でき、被接合部材の形状に制限されず、更に、接合後の金属組織が均一で接合による変形が殆どない接合方法の提供を目的とする。また、接合加熱後の冷却中又は冷却後に固溶元素であるCuの溶体化処理と析出処理を行うことにより、接合後の強度を高めたアルミニウム合金接合体の製造方法及び当該製造方法によって得られるアルミニウム合金接合体の提供を目的とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、被接合部材である2000系アルミニウム合金を固相線温度以上に加熱する際に生成する液相を利用する新規な接合法を見出し、本発明に係るアルミニウム合金材の接合方法を完成するに至った。更に、係る接合方法によって得られるアルミニウム合金材の適切な溶体化処理条件及び析出処理条件を見出し、アルミニウム合金接合体の製造方法及びそれによって製造されるアルミニウム合金接合体に係る発明も完成するに至った。
すなわち、本発明は請求項1において、Cu:0.7〜10mass%を含有し、Mg:0.5mass%以下に規制されるアルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、Mg0.5mass%以下に規制されるアルミニウム合金材を他方の被接合部材として、前記一方の被接合部材と他方の被接合部材とを接合する方法において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が5〜35%となり、かつ、前記他方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が35%以下となる温度において、フラックスが接合部材間に塗布された状態で非酸化性雰囲気中で接合することを特徴とするアルミニウム合金材の接合方法とした。
本発明は請求項2では請求項1において、前記フラックスをフッ化物系フラックスとした。
更に本発明は請求項3において、Cu:0.7〜10mass%、Mg:0.2〜2.0mass%以下を含有するアルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、Mg2.0mass%以下を含有するアルミニウム合金材を他方の被接合部材として、前記一方の被接合部材と他方の被接合部材とを接合する方法において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が5〜35%となり、かつ、前記他方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が35%以下となる温度において、大気中、真空中又は非酸化性雰囲気中で接合することを特徴とするアルミニウム合金材の接合方法とした。
本発明は請求項4では請求項1〜3のいずれか一項において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材において、アルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が5〜35%である時間を30〜3600秒とした。
本発明は請求項5では請求項1〜4のいずれか一項において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材が、Si:0.05〜1.0mass%、Fe:0.05〜1.0mass%、Mn:0.1〜1.8mass%、Cr:0.01〜0.2mass%、Ni:0.01〜2.3mass%、Ti:0.01〜0.3mass%、Zr:0.01〜0.5mass%、V:0.01〜0.5mass%、Sn:0.01〜1.0mass%、Pb:0.01〜3.0mass%、Bi:0.01〜1.0mass%及びBe:0.001〜0.1mass%から選択される1種又は2種以上を更に含有するものとした。
本発明は請求項6では、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金材の接合方法によって接合されたアルミニウム合金材を、冷却速度5℃/分以上で接合温度から100℃以下まで冷却する工程と;当該冷却工程後に前記アルミニウム合金材を再加熱して150〜450℃で3分〜24時間加熱保持する工程と;を含むことを特徴とするアルミニウム合金接合体の製造方法とした。
本発明は請求項7では、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金材の接合方法によって接合されたアルミニウム合金材を、冷却速度5℃/分以上で接合温度から100℃以下まで冷却する工程であって、冷却途中の480〜550℃において10分間以上加熱保持することを含む冷却工程と;当該冷却工程後に前記アルミニウム合金材を再加熱して150〜450℃で3分〜24時間加熱保持する工程と;を含むことを特徴とするアルミニウム合金接合体の製造方法とした。
本発明は請求項8では、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金材の接合方法によって接合されたアルミニウム合金材を、接合温度から100℃以下まで冷却する工程と、当該冷却工程後に前記アルミニウム合金材を再加熱して480〜550℃で10分間以上加熱保持する工程と;当該加熱保持工程後に前記アルミニウム合金材を、冷却速度5℃/分以上で加熱保持温度から100℃以下まで冷却する工程と;当該冷却工程後に前記アルミニウム合金材を再加熱して150〜450℃で3分〜24時間加熱保持する工程と;を含むことを特徴とするアルミニウム合金接合体の製造方法とした。
本発明は請求項9では、請求項6〜8のいずれか一項に記載のアルミニウム合金接合体の製造方法により製造されたアルミニウム合金接合体とした。
本発明に係るアルミニウム合金材の接合方法は、接合する2000系アルミニウム合金材の内部に生じる僅かな液相を利用して接合を行うものである。本発明の接合方法を用いることにより、溶接が極めて困難である2000系アルミニウム合金の接合が可能となる。また、FSWが隅肉形状の接合や曲線部を有する接合が困難であるのに対して、本発明の接合方法では接合部分における形状の制約がなく、被接合部材自体の形状も自由に設計できる。
また、本発明に係る接合方法では、被接合部材自体が溶融するものの大きく流動することがなく、ハンダ材やろう材、溶化材等を用いないため、接合による寸法変化が小さく、殆ど形状変化を生じない。
本発明に係る接合方法と同様に接合による変形が少なく同時多点接合が可能である拡散接合と比べて、本発明に係る接合方法では、加圧が不要であり、接合に要する時間を短縮でき、接合面の清浄化処理のための特殊な工程を必要としない。
本発明に係るアルミニウム合金接合体の製造方法では、上記アルミニウム合金材の接合後の冷却途中又は冷却後において再加熱による熱処理を行うことで、過剰に固溶したCu元素を析出させることができ、接合後のアルミニウム合金接合体の強度を確保することができる。
以上のように、本発明はCu含有アルミニウム合金材の従来にはない接合方法、ならびに、この方法によって得られるアルミニウム合金材を用いた接合体の製造方法とそれによる接合体を提供するものである。
2元系共晶合金としてAl−Cu合金の状態図を示す模式図である。 本発明に係るアルミニウム合金材の接合方法における、液相の生成メカニズムを示す説明図である。 逆T字型接合試験片とその接合部の観察面位置を示す正面図である。 図3で観察した接合部を示す顕微鏡写真である。 接合率を評価するための逆T字型接合試験片を示す斜視図である。 Cu含有アルミニウム二元合金のCu添加量と割れ長さの関係を例示するグラフである。 摩擦攪拌接合法の原理を示す斜視図である。
以下に、本発明の詳細な説明を示す。
(1)アルミニウム合金材の接合方法
A.被接合部材の組み合わせ
本発明に係るアルミニウム合金材の接合方法では、Cuを含有する2000系アルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、2000系アルミニウム合金材又はその他のアルミニウム合金材を他方の被接合部材として接合する。2000系アルミニウム合金材同士を接合する場合は、合金組成が同一のもの同士でも、合金組成が異なるもの同士でもよい。
接合に用いるアルミニウム合金材がCuを含有する同一合金同士であると接合体全体の強度を高めることができ、かつ、両者の間に強度差が生じない。また、強度を高めたい部分にのみCuを含有する合金を使用することもでき、目的に合わせて接合することができる。
B.液相の生成
本発明に係るアルミニウム合金材の接合方法では、一方の被接合部材である2000系アルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比(以下、「液相率」と記す)が5〜35%となる温度に加熱して接合する必要がある。液相率が5%未満であると、接合に必要な液相が足りず十分な接ができない。液相率が35%を超えると、生成する液相の量が多過ぎてアルミニウム合金材が形状を維持できなくなり大きな変形をしてしまう。好ましい液相率は5〜30%であり、より好ましい液相率は10〜20%である。また、接合の相手材は接合時に液相を生じてもよいが、接合に必要な液相はCuを含有する2000系合金から得られるため、必ずしも溶融する必要はない。
一方、他方の被接合部材については、液相率35%以下となる温度で加熱して接合する必要がある。ここで、他方の被接合部材の液相率に下限を設定しないのは、接合温度において一方の被接合部材の液相率が少なくとも5%であれば、他方の被接合部材の液相率が5%未満のように低くても接合が可能だからである。なお、液相率35%以下には0%も含まれる。
加熱中における実際の液相率を測定することは、極めて困難である。そこで、本発明で規定する液相率は平衡計算によって求めるものとする。具体的には、Thermo−Calcによって合金組成と加熱時の最高到達温度から計算される。
液相の生成メカニズムについて説明する。図1に代表的な2元系共晶合金であるAl−Cu合金の状態図を模式的に示す。Cu濃度がc1である一方のアルミニウム合金材と他方の被接合部材を組合せて加熱すると、共晶温度(固相線温度)Teを超えた付近の温度T1で液相の生成が始まる。共晶温度Te以下では、図2(a)に示すように、結晶粒界で区分されるマトリクス中に晶析出物が分布している。ここで液相の生成が始まると、図2(b)に示すように、晶析出物分布の偏析の多い結晶粒界が溶融して液相となる。次いで、図2(c)に示すように、アルミニウム合金のマトリクス中に分散する主添加元素成分であるCuを含む晶析出物粒子や金属間化合物の周辺が球状に溶融して液相となる。更に図2(d)に示すように、マトリクス中に生成したこの球状の液相は、界面エネルギーにより時間の経過や温度上昇と共にマトリクスに再固溶し、固相内拡散によって結晶粒界や表面に移動する。次いで、図1に示すように温度がT2に上昇すると、状態図より液相量は増加する。図1に示すように、一方のアルミニウム合金材のCu濃度が最大固溶限濃度より小さいc2の場合には、固相線温度Ts2を超えた付近でc1と同様に液相の生成が始まる。図2(d)に示すように、マトリクス中に生成したこの球状の液相は、c1の場合と同様に、界面エネルギーにより時間の経過や温度上昇と共にマトリクスに再固溶し、固相内拡散によって結晶粒界や表面に移動する。温度がT3に上昇すると、状態図より液相量は増加する。このように、本発明に係る接合方法は、アルミニウム合金材内部の部分的な溶融により生成される液相を利用するものであり、接合と形状維持の両立を実現できるものである。なお、図1において、θはCuAlである。
C.接合における金属組織の挙動
液相が生じた後から接合に至るまでの金属組織の挙動を説明する。図3に示すように、液相を生成するアルミニウム合金材Aと、これと接合するアルミニウム合金材Bとを用いた逆T字型接合試験片を接合し、図に示す観察面を顕微鏡で観察した。前述のように、接合においてアルミニウム合金材Aの表面に生成するごく僅かな液相は、フラックス等の作用により酸化皮膜が破壊された相手のアルミニウム合金材Bとの隙間を埋める。次に、両合金材の接合界面付近にある液相がアルミニウム合金材B内へと移動していき、それに伴い接合界面に接しているアルミニウム合金材Aの固相α相の結晶粒がアルミニウム合金材B内に向かって成長していく。一方、アルミニウム合金材Bの結晶粒もアルミニウム合金材A側へと成長していく。
アルミニウム合金材Bが液相を生成しない合金の場合には、図4(a)に示すように、接合界面付近のアルミニウム合金材B中にアルミニウム合金材Aの組織が入り込んだような組織となって接合される。従って、接合界面にはアルミニウム合金材Aとアルミニウム合金材B以外の金属組織が生じない。また、アルミニウム合金材Bも液相を生成する合金の場合には、図4(b)に示すように、両合金材は完全に一体化した組織となり接合界面が判別できない。
一方、アルミニウム合金材Aとしてろう材をクラッドしたブレージングシートを用い、アルミニウム合金材Bとして液相を生成しない合金を用いた場合には、図4(c)に示すように、接合部にフィレットが形成され共晶組織が見られる。このように、図4(c)では、図4(a)、(b)において形成される接合組織とは異なるものとなる。ろう付法では接合部を液相ろうが埋めてフィレットを形成するため、接合部は周囲と異なる共晶組織が形成されるのである。また、溶接法においても接合部が局部的に溶融するため、他の部位とは異なる金属組織となる。それに対して、本発明に係る接合方法では、接合部の金属組織が両被接合部材のものだけで構成され、或いは、両被接合部材が一体化したもので構成される点で、ろう付や溶接による接合組織と相違する。
このような接合挙動のため、接合工程後において接合部位近傍の形状変化がほとんど発生しない。すなわち、溶接法のビードや、ろう付法でのフィレットのような接合後の形状変化が、本発明に係る接合方法では殆ど発生しない。それにも拘わらず、溶接法やろう付法と同じく金属結合による接合を可能とする。例えば、ブレージングシート(ろう材クラッド率が片面5%)を用いてドロンカップタイプの積層型熱交換器を組み立てた場合、ろう付け加熱後には溶融したろう材が接合部に集中するため、積層した熱交換器の高さが5〜10%減少する。従って、製品設計においてはその減少分を考慮する必要がある。本発明の接合においては接合後における寸法変化が5%以下であるため、高精度の製品設計が可能となる。
D.酸化皮膜の破壊
アルミニウム合金材の表層には酸化皮膜が形成されており、これによって接合が阻害される。従って、接合においては酸化皮膜を破壊する必要がある。本発明に係る接合では、酸化被膜を破壊するために以下のD−1又はD−2に示すいずれかの方法が採用される。
D−1.フラックスによる酸化皮膜の破壊
この方法では、酸化皮膜を破壊する為に少なくとも接合部にフラックスを塗布する。フラックスはアルミニウム合金のろう付で用いるKAlFやCsAlFなどのフッ化物系フラックス又はKClやNaClなどの塩化物系フラックスが用いられ、フッ化物系フラックスが好ましい。これらフラックスは、本発明の接合において液相が溶融する前に又は接合温度に至る前に溶融し、酸化皮膜と反応して酸化皮膜を破壊する。
更にこの方法では、酸化皮膜の形成を抑制するために、窒素ガスやアルゴンガスなどの非酸化性雰囲気中で接合する。特にフッ化物系のフラックスを用いる場合は、酸素濃度を250ppm以下に抑え、露点を−25℃以下に抑えた非酸化性ガス雰囲気中で接合するのが好ましい。また、窒素と酸素の混合雰囲気とする場合は、酸素濃度を250ppm以下とし、露点を−25℃以下とするのが好ましい。
また、フッ化物系のフラックスを用いる場合、一方及び他方の被接合部材のアルミニウム合金材においてアルミニウム合金中にMgが0.5mass%(以下、単に「%」と記す)を超えて含有されると、フラックスとMgが反応してフラックスの酸化皮膜破壊作用が損なわれる。従って、請求項1に規定するように、両被接合部材のいずれもがMg含有量が0.5%以下に規制されるアルミニウム合金からなるものとする。なお、Mg含有量が0.5%以下に規制される条件を満たせば、一方の被接合部材のアルミニウム合金についてはCu含有量以外の他の元素種類や含有量には制限はなく、他方の被接合部材のアルミニウム合金については他の元素種類や含有量には制限はない。また、両被接合部材のMg含有量が0%であってもよい。
D−2.Mgのゲッター作用による酸化皮膜の破壊
アルミニウム合金材にMgが所定量添加されている場合は、接合部にフラックスを塗布しなくても、酸化被膜が破壊されて接合が可能になる。この場合、真空フラックスレスろう付と同様に、アルミニウム合金が溶融し液相が表層に出てくるときに、アルミニウム合金中より蒸発するMgのゲッター作用によって酸化皮膜が破壊される。
Mgのゲッター作用により酸化皮膜を破壊する場合、酸化皮膜の形成を抑制するために、真空中、窒素ガスやアルゴンガスなどの非酸化性雰囲気中、或いは、大気中で接合する。非酸化性雰囲気中や大気中での接合の場合は、露点を−0℃以下に抑えることが好ましく、さらに好ましくは露点を−25℃以下に抑えることが好ましい。なお、非酸化性雰囲気中での接合においても、酸素濃度を250ppm以下に抑えるのが好ましい。
Mgのゲッター作用により酸化皮膜を破壊する為には、請求項2に規定するように、一方の被接合部材であるアルミニウム合金材が、0.2〜2.0%のMgを含有するアルミニウム合金からなるものとする。0.2%未満では、十分なゲッター作用が得られず良好な接合が達成されない。一方、2.0%を超えると、表面でMgが雰囲気中の酸素と反応して酸化物MgOが多く生成され接合が阻害される。他方の被接合部材であるアルミニウム合金材においては、アルミニウム合金中のMg含有量が0.2%以上に限定されないが、MgOが多く生成されると接合が阻害されるので、Mg含有量は2.0%以下とした。また、一方の被接合部材において、Mg含有量が0.2〜2.0%の条件が満たされれば、Cu含有量以外の他の元素種類や含有量には制限はない。他方の被接合部材のアルミニウム合金については、Mg含有量は2.0%以下が満たされれば他の元素種類や含有量には制限はない。また、他方の被接合部材のMg含有量が0%であってもよい。
E.液相形成に必要な時間の下限
本発明の接合において、接合部で酸化皮膜が破壊された後、両被接合部材の間に液相が充填され接合がなされる。この液相は、一方の被接合部材であるアルミニウム合金材中において生成する。液相が接合部に十分に充填される為には、液相率が5〜35%である時間が30秒以上であるのが好ましい。より好ましくは、液相率5〜35%の時間が60秒以上であると更に十分な充填が行われ確実な接合がなされる。なお、本接合では、液相は接合部の極近傍においてしか移動しないので、この充填に必要な時間は接合部の大きさには依存しない。なお、他方の被接合部材であるアルミニウム合金材中においても液相が生成してもよく、ここでの液相率が5〜35%である時間も30秒以上であるのが好ましく、より好ましくは60秒以上である。
F.形状維持に必要な接合時間の上限
本発明において、液相を生じる一方の被接合部材であるアルミニウム合金材における液相率が5〜35%である時間は、3600秒以内であるのが好ましい。3600秒を超えると、液相率が35%以下であっても被接合部材が大きく変形するおそれがある。より好ましくは、液相率が5〜35%である時間が1800秒以内とすると形状変化を確実に抑制できる。なお、他方の被接合部材であるアルミニウム合金材中においても液相が生成する場合も、ここでの固相線温度以上である時間は3600秒以内であるのが好ましく、より好ましくは1800秒以内である。
G.アルミニウム合金材における添加元素の含有量
一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の主添加元素はCuであり、Al−Cu合金が用いられる。
Cu:0.7〜10%
一方の被接合部材であるアルミニウム合金材のCu含有量が0.7%未満の場合は、充分な液相の染み出しが無く、接合が不完全となる場合がある。後に詳細に説明するが、接合後の熱処理により、析出物を生成させて接合体の高強度化を図ることができる。Cuの含有量が0.7%未満では析出熱処理による硬化が得られない。一方、Cuの含有量が10%を超えると、アルミニウム合金中のAl−Cu系化合物の量が多くなって液相の生成量が多くなるため、加熱中の材料強度が極端に低下し、構造体の形状維持が困難となる。したがって、本発明におけるアルミニウム合金中のCuの含有量は0.7〜10%とする。なお、染み出す液相の量は板厚が厚く、加熱温度が高いほど多くなるが、加熱時に必要とする液相の量は構造体の形状に依存するので、必要に応じてCuの含有量や接合条件(温度、時間等)を調整することが望ましい。
また、一方の被接合部材であるアルミニウム合金材は、Si:0.05〜1.0%、Fe:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜1.8%、Cr0.01〜0.2%、Ni0.01〜2.3%、Ti0.01〜0.3%、Zr0.01〜0.5%から選択される1種又は2種以上を選択的添加元素として更に含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるものが好適に用いられる。
(2)アルミニウム合金接合体の製造方法
上述のような接合方法によって接合したアルミニウム合金材を用いて、アルミニウム合金接合体を製造する。
H.第1の実施態様
接合したアルミニウム合金材を、まず冷却する。接合温度から100℃以下まで冷却するが、その際の冷却速度は5℃/分以上とする。このような冷却工程後のアルミニウム合金材を、再加熱により150〜450℃で3分〜24時間加熱保持される工程にかける。
接合温度からの冷却速度を5℃/分以上としたのは、接合時の熱処理によってアルミニウムマトリックス中に固溶したCuやMgの再析出を防止するためである。冷却速度が5℃/分未満では冷却過程で析出が起こってしまう。冷却速度は速ければ速いほど望ましいため上限は特に限定されるものではないが、冷却装置や生産性の観点から300℃/分以下とするのが好ましい。
冷却後に再加熱して150〜450℃で3分〜24時間保持するのは、アルミニウムマトリックス中に固溶したCuを金属間化合物として析出させるためである。この析出処理により、接合体の強度を大幅に上昇させることができる。加熱保持温度が150℃未満では金属間化合物の析出・成長速度が遅く、強度上昇に寄与するほど析出が十分に進行しない。一方、450℃を超えると過飽和固溶度が低いために十分な析出が起こらない。加熱保持温度は、180〜400℃とするのが好ましい。加熱保持時間については、3分未満では、金属間化合物が十分に析出・成長しない。24時間を超えると過時効状態となり、強度上昇が見込めないばかりか生産性も劣る。
I.第2の実施態様
接合したアルミニウム合金材の強度を更に増加させる方法として、第2の実施態様を採用してもよい。この実施態様では、接合温度からの冷却速度を5℃/分以上として接合アルミニウム合金材を冷却工程にかけ、冷却途中の480〜550℃において10分以上加熱保持し、再び冷却速度を5℃/分として100℃以下までの冷却工程にかける。その後、再加熱により150〜450℃で3分〜24時間加熱保持する工程にかける。
冷却途中の480〜550℃で10分以上保持するのは、接合時に溶融が起こることで粒界や化合物周辺で発生している元素濃縮を解消するためである。Cuを含有するアルミニウム合金において、接合時に液相が生じる際に液相が生じている部分は粒界や化合物周辺であり、その部位にはCuなどの添加元素が濃縮する。冷却途中の480〜550℃で10分以上保持することで粒界や化合物周辺の元素濃縮が低減され、マトリックス中の固溶元素が増加する。その結果、後の析出熱処理で強度に寄与する析出物の発生を増大させることができる。このように、冷却途中の加熱保持が加わることで、析出量がより増加し強度が上昇する。
ここで、途中冷却における加熱保持温度が480℃未満では溶体化効果が十分に得られず、550℃を超えると元素の濃縮した部分が再溶融する可能性がある。また、途中冷却における加熱保持時間が10分未満では、溶体化効果が十分に得られない。なお、途中冷却における加熱保持時間が長い程、元素濃縮の解消効果が発揮されるが、結晶粒が粗大化による強度の低下や、生産性の観点から150分以下とするのが好ましい。
なお、接合温度から途中冷却までの冷却速度、途中冷却後から100℃以下までの冷却速度を5℃/分以上としたのは、第1の実施態様と同じ理由である。更に、100℃以下までの冷却後において、再加熱により150〜450℃で3分〜24時間加熱保持する理由もまた、第1の実施態様と同じ理由である。
J.第3の実施態様
接合したアルミニウム合金材の強度を更に増加させる他の方法として、第3の実施態様を採用してもよい。この実施態様では、まず、接合したアルミニウム合金材を、接合温度から100℃以下までの冷却工程にかける。次に、再加熱して480〜550℃で10分以上の加熱保持工程にかける。その後、この加熱保持温度から100℃以下まで5℃/分以上の冷却速度で冷却工程にかける。更に、再加熱して150〜450℃で3分〜24時間加熱保持する工程にかけるものである。
設備上、連続での熱処理が難しい場合はそれぞれの熱処理を不連続で行ってもよい。この方法の場合、再加熱により溶体化熱処理を行うため、接合加熱温度からの冷却速度は遅くて構わない。
なお、過熱保持温度から100℃以下までの冷却速度を5℃/分以上としたのは、第1の実施態様と同じ理由である。更に、100℃以下までの冷却後において、再加熱により150〜450℃で3分〜24時間加熱保持する理由もまた、第1の実施態様と同じ理由である。
I.接合方法
本発明の接合方法においては、通常、被接合部材は炉中で加熱される。炉の形状に特に制限はなく、例えば1室構造のバッチ炉、自動車用熱交換器の製造などに用いられる連続炉などを用いることができる。
アルミニウム材の表層には酸化皮膜が形成されており、これによって接合が阻害される。従って、接合においては酸化皮膜を破壊する必要がある。本発明に係る接合方法では、酸化被膜を破壊するために接合部にフラックスを塗布する場合には、窒素などの非酸化性ガスの雰囲気中で接合する。なお、アルミニウム合金材にMgが添加されている場合は、接合部にフラックスを塗布せず、真空あるいは非酸化性雰囲気の炉を用いることにより表面の酸化被膜をMgのゲッター作用により除去する。
以下にこの発明の実施例を比較例とともに記す。なお以下の実施例は、この発明の効果を説明するためのものであり、実施例記載のプロセス及び条件がこの発明の技術的範囲を制限するものではない。
(実施例1〜2及び比較例1〜5)
まず、本発明の接合方法と従来の接合方法である溶接およびFSWを用い、Cuを含有する2000系合金の接合を行った。接合に用いたアルミニウム合金材の成分(合金1、2)を表1に示す。接合は図5に示すような下板に上板を立てた形状の試験片を用いた。形状1は下板に上板を1枚立てた形状とし、形状2は下板に上板を3枚立てた形状とした。上板の厚みは形状1、2とも2mmであり、下板の厚みは形状1では5mm、形状2では2mmのものを用いた。なお、各実施例及び各比較例において、上板と下板は表1に示す同じ合金同士を組み合わせた。上板の接合端面はフライス加工により平滑にしたものを用いた。
Figure 2013116474
本発明の接合は、上記の試験片を窒素雰囲気中で610℃まで昇温し、その温度に2分間保持した後に、室温で自然冷却した。窒素雰囲気は、酸素濃度100ppm以下で露点−45℃以下に管理した。昇温速度は、520℃以上において10℃/分とした。実施例1では、接合面にフッ化カリウム系(KAlF)のフラックスを塗布した。実施例2では、フラックスを用いなかった。また、平衡液相率(計算値)、ならびに、液相率が5〜35%の時間(接合の加熱保持時間であり、後述の表4〜8において同じ)も表1に示した。
溶接による接合は、比較例1、2では、溶加材を用いない共付けの交流ティグ溶接(ダイヘン社製ティグ溶接機、インバータエレコン500P)により、片側1ランT字すみ肉溶接を行った。溶接時の前処理として一般的な酸化皮膜の除去と脱脂を行った。溶接条件は電極棒にトリア入りタングステンφ2.4mm、シールドガスにアルゴン100%、流量8L/分、溶接電流80A、アーク電圧17v、溶接速度300mm/分であった。
溶接による接合の比較例3、4では、溶加材としてA2319BY(φ2.4mm)を用いた交流ティグ溶接(ダイヘン社製ティグ溶接機 インバータエレコン500P)により、片側1ランのT字すみ肉溶接を行った。溶接時の前処理として一般的な酸化皮膜の除去と脱脂を行った。溶接条件は電極棒にトリアタングステンφ3.2mm、シールドガスにアルゴン100%、流量9L/分、溶接電流95A、アーク電圧17v、溶接速度250mm/分であった。比較例5では、FSW(MTS社製のI−STIR PDS)を用いて接合を行った。
接合の結果を表2に示す。結果は、接合により接合部に割れが発生しなかった場合を○(合格)、発生した場合を×(不合格)とした。
Figure 2013116474
実施例1及び2では、接合加熱時に接合材から液相がしみ出すことにより、割れが発生しない良好な接合がなされた。
比較例1及び2ではいずれも、溶接時にビード部に割れが発生した。
比較例3、4ではいずれも、溶接後にビード部近傍の母材で割れが発生した。
比較例5では、被接合部材の形状によりFSWを適用することができなかった。
(実施例3〜47及び比較例6〜12)
次に、本発明の接合方法を各種アルミニウム合金に適用した例を示す。
表3に接合に用いたアルミニウム合金の組成を示す。接合は図5の形状2に示す下板に上板を3枚立てた形状の試験片を用いた。上板、下板には表3に示す接合材をそれぞれ組み合わせた。上板及び下板の厚みは、いずれも2mmのものを用いた。なお、実施例3〜32、42〜44、47及び比較例11、12においては、上板と下板は表3に示す同じ合金同士を組み合わせた。他の実施例及び比較例においては、上板と下板は表3に示す異なる合金同士を組み合わせた。上板の接合端面はフライス加工により平滑にしたものを組み合わせた。
Figure 2013116474
接合は上記の試料を、窒素雰囲気中で表4、5に示す温度まで昇温し、液相率が5〜35%となる時間を表4、5に示す時間保持し、室温で自然冷却した。窒素雰囲気は、酸素濃度100ppm以下で露点−45℃以下に管理した。窒素と酸素の混合雰囲気では酸素濃度を10%とし、露点を−10℃とした。昇温速度は、520℃以上において、10℃/分とした。フラックスを用いた例では、接合面にフッ化カリウム系のフラックス(KAlF:表では「K」)又はフッ化セシウム系のフラックス(CsAlF:表では「Cs」)を塗布した。また、平衡液相率(計算値)、ならびに、液相率が5〜35%の時間も表4、5に示した。
Figure 2013116474
Figure 2013116474
接合状態については、断面組織を観察して、接合されていた面積率を測定した。接合長さが80%以上を○(合格)、40以上80%未満を△(合格)、40%未満を×(不合格)とした。
形状変化は上板が全て倒れなかったものを○(合格)、一つも倒れはしないものの形状の変化が認められるものを△(合格)、一つでも倒れて隣の板に接合してしまったものを×(不合格)とした。
接合状態及び形状変化の評価結果を、表4、5に示す。
実施例3〜47は、2000系合金の接合材自身から液相がしみ出すことにより、接合状態及び形状変化が合格となり良好な接合がなされた。
比較例6では、被接合部材1のCu添加量が少な過ぎたため、接合時の液相の生成量が少なく接合状態が不合格であった。
比較例7では、被接合部材1のCu添加量が多過ぎたため、接合時の液相の生成量が多過ぎて形状変化が不合格であった。
比較例8では、被接合部材1のMg添加量が多過ぎたため、接合時に被接合部材1の表面に厚い酸化膜が形成された。その結果、液相生成量は十分であったが接合状態が不合格であった。
比較例9では、被接合部材1のMg添加量が少な過ぎたため、Mgによる酸化膜の破壊が十分ではなく接合状態が不合格であった。
比較例10では、被接合部材1のMg添加量が多過ぎたため、接合時に被接合部材1の表面に厚い酸化膜が形成された。その結果、液相生成量は十分であったが接合状態が不合格であった。
比較例11では、接合温度が低かったため接合時の液相の生成量が少な過ぎ、接合状態が不合格であった。
比較例12では、接合温度が高かったため接合時の液相の生成量が多過ぎ、形状変化が不合格であった。
(実施例48〜62及び比較例13〜19)
次に、本発明の接合方法により接合したアルミニウム材を用いた第1の実施態様に係るアルミニウム合金接合体に適用した例を示す。
接合は図5の形状2に示す下板に上板を3枚立てた形状の試験片を用いた。上板及び下板には表1に示す合金1又は合金2を用い、上板と下板は同じ合金同士を組み合わせた。上板及び下板の厚みは、いずれも2mmのものを用いた。上板の接合端面はフライス加工により平滑にしたものを組み合わせた。合金1では接合面にフッ化カリウム系のフラックスを塗布し、合金2はフラックスを塗布しなかった。
接合は上記の試料を、窒素雰囲気中で表6に示す温度まで昇温し、液相率が5〜35%となる時間を表6に示す時間保持して接合した。昇温速度は、520℃以上において、10℃/分とした。窒素雰囲気は、酸素濃度100ppm以下で露点−45℃以下に管理した。接合後に、表6に示す条件で100℃まで冷却した。次いで、冷却したアルミニウム合金材を、再加熱して表6に示す条件で熱処理した。
Figure 2013116474
実施例3〜47と同様に接合状態及び形状変化を評価した。更に、接合後の上板の強度を、試験片とは別に測定した。この上板は、試験片に用いたものと同じ形状を有し、試験片と同じ条件で加熱したものである。強度の測定方法は、長手方向の端部を固定し、引張試験機により破断強度を測定した。それぞれの合金において、同一液相率での再加熱しなかった水準(比較例13、14、並びに、比較例15、16)と比較して強度が上昇した場合を○(合格)、強度が上昇しなかった場合を×(不合格)とした。
実施例48〜62では、実施例3〜47と同様に接合状態及び形状変化が合格で良好な接合がなされ(表6には示していない)、上板の接合後の強度が大きく合格であった。
これに対して、比較例13、14、15、16では、接合加熱後に100℃に冷却後に再加熱を施さなかったため上板の接合後の強度が小さく不合格であった。また、比較例18は接合加熱後から100℃までの冷却速度が小さかったため、上板の接合後の強度が小さく不合格であった。比較例17では、再加熱時間が短過ぎたため上板の接合後の強度が小さく不合格であった。比較例19では再加熱温度が低過ぎたため上板の接合後の強度が小さく不合格であった。
(実施例63〜79及び比較例20〜24)
次に、本発明の接合方法により接合したアルミニウム材を用いた第2の実施態様に係るアルミニウム合金接合体に適用した例を示す。
この実施態様では、冷却速度5℃/分以上での接合温度から100℃までの冷却工程の途中において加熱保持段階を設けた以外は、第1実施態様と同様にしてアルミニウム合金材を接合し、これを用いた接合体を製造した。更に、第1実施態様と同様にして、接合状態及び形状変化を評価し、ならびに、接合後の上板の強度を評価した。それぞれの合金において、再加熱しなかった水準(表6の比較例13、14、並びに、比較例15、16)の強度から5%以上強度が上昇した場合を○(合格)、5%以上強度が上昇しなかった場合を×(不合格)とした。結果を表7に示す。
Figure 2013116474
実施例63〜79では、実施例3〜47と同様に接合状態及び形状変化が合格で良好な接合がなされ(表7には示していない)、上板の接合後の強度が大きく合格であった。
これに対して、比較例13、14では、接合加熱後に100℃に冷却後に再加熱を施さなかったため上板の接合後の強度が小さく不合格であった。また、比較例21は冷却途中での加熱保持温度が低過ぎたため、上板の接合後の強度が小さく不合格であった。比較例22は接合加熱後から100℃までの冷却速度が小さかったため、上板の接合後の強度が小さく不合格であった。比較例23は冷却途中での加熱保持からの100℃までの冷却速度が小さかったため、上板の接合後の強度が小さく不合格であった。比較例20では、再加熱時間が短過ぎたため上板の接合後の強度が小さく不合格であった。比較例24では再加熱温度が低過ぎたため上板の接合後の強度が小さく不合格であった。
(実施例80〜94及び比較例25〜29)
次に、本発明の接合方法により接合したアルミニウム材を用いた第3の実施態様に係るアルミニウム合金接合体に適用した例を示す。
この実施態様では、冷却速度5℃/分以上での接合温度から100℃までの冷却工程に代えて、接合温度から100℃まで冷却する工程と、この冷却工程後にアルミニウム合金材を再加熱して480〜550℃で10分間以上加熱保持する工程と、冷却速度5℃/分以上で加熱保持温度から100℃まで冷却する工程とを設けた以外は、第1実施態様と同様にしてアルミニウム合金材を接合し、これを用いた接合体を製造した。更に、第1実施態様と同様にして、接合状態及び形状変化を評価し、ならびに、接合後の上板の強度を評価した。それぞれの合金において強度が再加熱しなかった水準(表6の比較例13、14、並びに、比較例15、16)の強度から5%以上強度が上昇した場合を○(合格)、5%以上強度が上昇しなかった場合を×(不合格)とした。結果を表8に示す。
Figure 2013116474
実施例80〜94では、実施例3〜47と同様に接合状態及び形状変化が合格で良好な接合がなされ(表8には示していない)、上板の接合後の強度が大きく合格であった。
これに対して、表6の比較例13、14では、接合加熱後に100℃に冷却後に再加熱を施さなかったため上板の接合後の強度が小さく不合格であった。また、比較例27では最初の再加熱における加熱保持温度が低過ぎ、かつ、保持時間が短過ぎたため、上板の接合後の強度が小さく不合格であった。比較例28では最初の再加熱から100℃までの冷却速度が小さかったため、上板の接合後の強度が小さく不合格であった。比較例29では二度目の再加熱温度が低過ぎたため、上板の接合後の強度が小さく不合格であった。比較例25では二度目の再加熱時間が短過ぎたため、比較例26では接合加熱後から100℃までの冷却速度が小さ過ぎたため上板の接合後の強度が小さく不合格であった。
本発明に係る接合方法により、2000系アルミニウム合金部材を被接合部材として、その形状に制限されず、接合後の金属組織が均一で接合による変形が殆どないアルミニウム合金材を接合できる。更に、この接合方法によって製造されるアルミニウム合金材を用いて、接合加熱後の冷却中又は冷却後にCuの溶体化処理と析出処理を行うことにより、接合後の強度を高めたアルミニウム合金接合体が得られる。
1、1・・被接合材
2・・裏当材
3・・回転工具
c・・Cu濃度
c1・・Cu濃度
c2・・Cu濃度
T・・温度
T1・・Teを超えた温度
T2・・T1より更に高い温度
T3・・Ts2を超えた温度
Te・・固相線温度
Ts2・・固相線温度
θ・・CuAl

Claims (9)

  1. Cu:0.7〜10mass%を含有し、Mg:0.5mass%以下に規制されるアルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、Mg0.5mass%以下に規制されるアルミニウム合金材を他方の被接合部材として、前記一方の被接合部材と他方の被接合部材とを接合する方法において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が5〜35%となり、かつ、前記他方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が35%以下となる温度において、フラックスが接合部材間に塗布された状態で非酸化性雰囲気中で接合することを特徴とするアルミニウム合金材の接合方法。
  2. 前記フラックスがフッ化物系フラックスである、請求項1に記載のアルミニウム合金材の接合方法。
  3. Cu:0.7〜10mass%、Mg:0.2〜2.0mass%以下を含有するアルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、Mg2.0mass%以下を含有するアルミニウム合金材を他方の被接合部材として、前記一方の被接合部材と他方の被接合部材とを接合する方法において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が5〜35%となり、かつ、前記他方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が35%以下となる温度において、大気中、真空中又は非酸化性雰囲気中で接合することを特徴とするアルミニウム合金材の接合方法。
  4. 前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材において、アルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が5〜35%である時間が30〜3600秒である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金材の接合方法。
  5. 前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材が、Si:0.05〜1.0mass%、Fe:0.05〜1.0mass%、Mn:0.1〜1.8mass%、Cr:0.01〜0.2mass%、Ni:0.01〜2.3mass%、Ti:0.01〜0.3mass%、Zr:0.01〜0.5mass%、V:0.01〜0.5mass%、Sn:0.01〜1.0mass%、Pb:0.01〜3.0mass%、Bi:0.01〜1.0mass%及びBe:0.001〜0.1mass%から選択される1種又は2種以上を更に含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルミニウム合金材の接合方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金材の接合方法によって接合されたアルミニウム合金材を、冷却速度5℃/分以上で接合温度から100℃以下まで冷却する工程と;当該冷却工程後に前記アルミニウム合金材を再加熱して150〜450℃で3分〜24時間加熱保持する工程と;を含むことを特徴とするアルミニウム合金接合体の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金材の接合方法によって接合されたアルミニウム合金材を、冷却速度5℃/分以上で接合温度から100℃以下まで冷却する工程であって、冷却途中の480〜550℃において10分間以上加熱保持することを含む冷却工程と;当該冷却工程後に前記アルミニウム合金材を再加熱して150〜450℃で3分〜24時間加熱保持する工程と;を含むことを特徴とするアルミニウム合金接合体の製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金材の接合方法によって接合されたアルミニウム合金材を、接合温度から100℃以下まで冷却する工程と、当該冷却工程後に前記アルミニウム合金材を再加熱して480〜550℃で10分間以上加熱保持する工程と;当該加熱保持工程後に前記アルミニウム合金材を、冷却速度5℃/分以上で加熱保持温度から100℃以下まで冷却する工程と;当該冷却工程後に前記アルミニウム合金材を再加熱して150〜450℃で3分〜24時間加熱保持する工程と;を含むことを特徴とするアルミニウム合金接合体の製造方法。
  9. 請求項6〜8のいずれか一項に記載のアルミニウム合金接合体の製造方法により製造されたアルミニウム合金接合体。
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