JP4323861B2 - 鉄系材料とアルミニウム系材料との接合継手 - Google Patents

鉄系材料とアルミニウム系材料との接合継手 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用構造物などの組立工程の際に必要となる鉄系材料とアルミニウム系材料との接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄系材料とアルミニウム系材料(アルミニウムおよびアルミニウム合金を総称したもの)とを接合する場合、接合部に脆い金属間化合物が生成しやすいために信頼性のある高強度を有する接合部を得ることは非常に困難であった。
【0003】
この対策として以下のような多数の従来技術が開示されている。
【0004】
例えば、真空圧延接合する方法(特許文献1参照)、予め用意した鉄系材料層およびアルミニウム合金層からなる2層のクラッド材を介在させてシーム溶接する方法(特許文献2参照)、高温加圧接合する方法(特許文献3参照)、接合面にTi合金を予め介在させHIP処理により接合する方法(特許文献4および5参照)、摩擦圧接する方法(特許文献6参照)、アルミニウムと接する鉄系材料表面にアルミニウム合金をめっきして、あるいは予め用意した鉄系材料層およびアルミニウム合金層からなる2層のクラッド材を介在させて抵抗溶接する方法(特許文献7および8参照)などである。
【0005】
しかしながら、上記従来技術には以下のような問題がある。
【0006】
鉄系材料とアルミニウム系材料とを真空圧延、高温加圧、HIP処理により接合して鉄系材料とアルミニウム系材料との接合部材を得る方法は、このような複合部材を製造することを目的とするものである。したがって、この方法は、平板など比較的単純な形状の部材同士の接合には利用可能であるが、部材の形状が複雑な場合には適用できないため、適用範囲が狭く汎用性が劣っている。
【0007】
鉄系材料とアルミニウム系材料とを摩擦圧接により接合する方法は、部材形状の制約を受けるため汎用性に劣るとともに、接合部がスポット的なものとなるため連続的な接合部を得ることができない。
【0008】
アルミニウムと接する鉄系材料表面にアルミニウム合金をめっきして抵抗溶接する方法は、めっき工程を必要とし工程が複雑となるため、品質の安定性が確保できない問題がある。
【0009】
鉄系材料層およびアルミニウム合金層からなる2層のクラッド材を予め用意してシーム溶接あるいは抵抗溶接する方法では、鉄系材料とアルミニウム系材料との間にクラッド材がインサートされるため、2枚の板の接合が3枚の板の接合となる。このため、実際の施工時にインサート材(クラッド材)の挿入工程や固定工程が必要となり、上記と同様に工程が複雑となるため品質の安定性が確保できない。
【0010】
上記いずれの方法とも、上記問題以外に、現状の溶接ラインに新たな設備を組み入れなければならないため設備コストが高くなる問題があった。さらに、クラッド材を用いる方法では、クラッド材自体も鉄系材料とアルミニウム系材料とを接合して製造する必要があることからその製造条件が厳しく制約され、安価でかつ性能の安定したクラッド材を入手することが困難であった。
【0011】
鉄系材料とアルミニウム系材料との接合に上記のような種々の方法が提案されている背景の1つとして、鉄系材料とアルミニウム系材料とを直接溶融接合すると接合部に脆弱な金属間化合物が生成し、割れを生じ易くなることが挙げられる。そのため、溶接ワイヤを用いて接合する場合を含めて鉄系材料とアルミニウム系材料とを直接接合する際には、i)鉄系材料中の鉄とアルミニウム系材料中のアルミニウムとを如何にして極力溶融混合させないで、溶融金属部の延性を確保するか、また、ii)鉄系材料とアルミニウム系材料との界面近傍に脆弱な金属間化合物層を如何にして生成させないようにするか、が極めて重要となる。
【0012】
そこで、本発明者らはこのような観点から、上記i),ii)に示した障害を可及的に抑制し健全な接合継手を確保することのできる接合方法の確立を期して種々検討を重ねてきた。その結果、MIGロウ付法によりCu系インサート材等を用いて鉄系材料とアルミニウム系材料とを直接接合する方法を採用すれば、上記従来技術で指摘した様々の問題を生じることなく信頼性の高い接合継手が得られることを知見し、既に開示を行った (特許文献9参照)。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−94162号公報
【特許文献2】
特開平11−197846号公報
【特許文献3】
特開平10−185040号公報
【特許文献4】
特開平6−198458号公報
【特許文献5】
特開平5−8056号公報
【特許文献6】
特開平8−141755号公報
【特許文献7】
特開平6−39558号公報
【特許文献8】
特開平6−63762号公報
【特許文献9】
特開2003−33865号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らが上記特許文献9に開示したMIGロウ付法(「MIGブレージング法」ともいう。)によれば、鉄系材料とアルミニウム系材料との接合に際し、適用条件などの制約が少なく汎用性に優れるとともに、接合母材の形状による制約も少なく、接合継手部に脆弱な金属間化合物などを生成することなく、割れなどの欠陥のない健全な接合継手が得られる。しかも連続的な接合が可能であり、効率の良い接合が実施できる。
【0015】
しかしこの方法では、脆弱な金属間化合物を形成する鉄系材料とアルミニウム系材料との直接溶融を防止することはできるが、Cu系インサート材を用いた場合、アルミニウム系材料とCu系インサート材も反応性に富むことから強度低下をもたらす脆弱な金属間化合物を形成しやすく、このCu−Al系の金属間化合物が原因となり必ずしも所望する継手強度が得られない問題があった。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、接合部に生成する脆弱な金属間化合物の生成を抑制して高い接合強度が得られる鉄系材料とアルミニウム系材料との接合継手を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、Cu系インサート材を介してMIGロウ付法により接合された、鉄系材料とアルミニウム系材料との接合継手であって、前記アルミニウム系材料と前記Cu系インサート材との界面に生成した反応層の、接合方向に垂直な断面内で、ビッカース硬度が最高値を示す位置を中心にして前記界面に垂直な方向に±2mmの範囲内において、ビッカース硬度が±15の範囲内で安定する硬度安定領域の幅が0.8mm以下であり、かつ、前記硬度安定領域の平均ビッカース硬度が前記アルミニウム系材料の平均ビッカース硬度の4倍以下であることを特徴とする鉄系材料とアルミニウム系材料との接合継手である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、Cu系インサート材を用いて接合した継手の溶接割れおよび継手強度改善について種々の検討を重ねた。インサート材を用いる接合方法としては、MIGブレージング法(MIGロウ付け法)の他に、鉄系材料とアルミニウム系材料との間にCu系の薄膜からなるインサート材を挟んでおき、このインサート材をスポット溶接やシーム溶接により通電加熱で溶融させる方法などがある。
【0020】
上記のとおりCu系インサート材を利用する溶接方法には種々考えられるが、本発明ではMIGロウ付法を中心に検討した。MIGロウ付法とは、汎用の溶接装置を使用しアークによってロウ付けを行なう方法であり、通常のアーク溶接に比べると、格段に低い電流条件で接合を行なうことができる。これは第1に、細径ワイヤを使用することによってもたらされるもので、通常のアーク溶接法に比べて、MIGロウ付接合時におけるアルミニウム系材料中のAlと鉄系材料中のFeとの溶融混合とそれらの反応を可及的に抑制できる。その結果として、接合部における脆弱なFe−Al系金属間化合物の生成が抑えられ、延いては接合部の強度欠陥(特に割れの発生)を可及的に防止できる。
【0021】
この際、MIGロウ付用に使用するワイヤ素材としては、銅合金が好ましく使用される。しかし銅合金をワイヤに使用した場合に生成するCu系溶接金属も、FeまたはAl(特にAl)と反応して脆い金属間化合物を形成し易いので、接合継手に高い強度を要求するような場合には、前述のようなFe−Al系金属間化合物に加えて、Cu系溶接金属と鉄系材料またはアルミニウム系材料(特にアルミニウム系材料)との間に生成する金属間化合物の生成抑制も課題となる。
【0022】
上記Cu−Al系金属間化合物の硬度は非常に高く、Cu−Al系の組成割合によってはビッカース硬度で800近くにも達する場合がある。アルミニウム系材料とCu系溶接金属との界面に若干の金属間化合物が生成することはアルミニウム系材料とCu系溶接金属とを冶金的に結合させているため避けることはできないが、上記の金属間化合物が必要以上の厚さに成長すると、いわゆる切欠強度が極めて低いために、接合継手に引張応力がかかると金属間化合物が起点となり亀裂が発生し、継手強度が低下する。
【0023】
またMIGブレージング法(MIGロウ付法)では、溶融したCu合金が接合部で凝固収縮することに起因し、室温までの冷却過程で溶接残留応力が発生する。上記のCu−Al系金属間化合物が必要以上に生成すると、場合によっては溶接残留応力に耐えきれず、溶接割れが発生することさえある。
【0024】
本発明者らはさらに検討を行った結果、上記傾向は、必然的に生成するCu−Al系金属間化合物の成長を所定範囲内とすることにより抑制できることを見出した。
【0025】
すなわち具体的にはアルミニウム系材料とCu系溶接金属との界面に生成する反応層の、接合方向に垂直な断面内で、ビッカース硬度(以下、単に「硬度」ともいう。)が最高値を示す位置(以下、「ピーク硬度位置」という。)を中心にして前記界面に垂直な方向に±2mmの範囲内において、ビッカース硬度が±15の範囲内で安定する硬度安定領域の幅が0.8mm以下であり、かつ、この硬度安定領域の平均ビッカース硬度がアルミニウム系材料(母材)の平均ビッカース硬度の4倍以下であることを要旨とするものである。さらに溶接割れを抑制し継手強度を高めるためには、上記の硬度安定領域の平均硬度がアルミニウム系材料(母材)の平均硬度の3倍以下であることが望ましい。
【0026】
Cu系インサート材を用いたMIGブレージング法(MIGロウ付法)による接合界面には少なからずアルミニウム系材料とCu系溶接金属との間にCu−Al系の金属間化合物(反応層)が形成される。このような状況下で、金属間化合物(反応層)の厚さが薄い場合には、金属間化合物そのものの切欠強度は乏しいものの、周囲のアルミニウム系材料については硬度が低く延性に富むことから、引張荷重あるいは溶接歪みにより、接合部近傍に応力が負荷されてもアルミニウム系材料の塑性変形により応力を吸収することが可能となり、致命的な溶接割れや継手強度の低下をもたらすことはない。しかしながら金属間化合物(反応層)が厚くなると、継手部に応力が負荷された際に金属間化合物(反応層)そのものに応力が負荷される領域が多くなる結果、継手強度や割れ性が切欠感受性の乏しい金属間化合物(反応層)に支配されることとなる。そのため継手強度低下の抑制や溶接割れの抑制を達成するためには、金属間化合物(反応層)の厚さは必要以上に高めないことが重要となる。なおCu−Al系金属間化合物の切欠感受性は硬度で定性的に評価することが可能であり、硬度が高いほど切欠感受性は高まることとなる。そのため金属間化合物(反応層)の硬度はできるだけ低い方が望ましく、具体的には溶接割れを抑制するにはとアルミニウム系材料(母材)の平均硬度の4倍以下、さらに溶接割れを防止し、かつ継手強度を高めるためにはアルミニウム系材料(母材)の平均硬度の3倍以下となることが必要である。
【0027】
Cu−Al系の金属間化合物は比較的高硬度となるが、仮にこの金属間化合物が生成しても硬度が連続的に変化する場合には、負荷された応力も連続的に変化することが可能となる。そのため仮に硬度の高い部分が生成しても、切欠感受性の低い金属間化合物の部分が応力を請け負うことが可能となるため、溶接割れ感受性の改善および継手強度の向上を図ることができる。具体的には、ピーク硬度位置を中心に±2mmの測定範囲内でビッカース硬度が±15の範囲内で安定する硬度安定領域の幅が0.8mm以下となることが必要である。
【0028】
アルミニウム系材料とCu系溶接金属との界面における金属間化合物の生成を抑制する手段としては、MIGロウ付用溶接トーチのトーチ角度の適正化、あるいは鉄系材料とアルミニウム系材料との板配置の適正化などがある。例えば鉄系材料とアルミニウム系材料とを重ねすみ肉溶接にて直接接合する場合には、溶接トーチを上板から遠い側に傾けると溶融したCu系インサート材とアルミニウム系材料との反応量が増大することから、金属間化合物の生成と成長を促進する方向にある。したがって、溶接トーチは上板から遠い側に傾けない方が望ましい。またアルミニウム系材料が下板で鉄系材料が上板である板配置の場合には、板配置の関係が逆の場合と比較して、溶融したCu系溶接金属がアルミニウム系材料を溶かしても、アーク力による溶融金属を対流させる効果によってCuおよびAlの両元素の混合が促進され、比較的金属間化合物が生成しなくなる方向にある。
【0029】
上記のとおり溶接トーチは上板から遠い側に傾けないこと、および重ねすみ肉溶接の場合には鉄系材料とアルミニウム系材料の板配置においてアルミニウム系材料を下板側にすることが推奨されるが、こうした条件は溶接入熱やシールドガス流量といった他の溶接条件,あるいは接合母材の板厚等に呼応して適宜変化させればよく、特に上記の推奨条件に限定されるものではない。
【0030】
上記の通りアルミニウム系材料とCu系溶接金属との界面に生成する金属間化合物の生成を抑制するためには、母材であるアルミニウム系材料を過剰に溶融させることなく必要最小限の母材溶融(希釈)量で健全な接合状態が得られるよう、MIGロウ付時の溶接電流が過大とならない範囲で制御することが望ましい。そのため本発明を実施する際の好ましいMIGロウ付条件としては、溶接電流が60A以上、より好ましくは80A以上で、250A以下、より好ましくは200A以下、溶接電圧が12V以上、より好ましくは14V以上で、20V以下、より好ましくは18V以下が非限定的に推奨される。溶接速度は、上記溶接電流および溶接電圧に応じて母材中のFeおよびAlを過剰溶融させない範囲で適当に決めればよいが、溶接能率なども考慮して好ましいのは40cm/min以上、より好ましくは50cm/min以上で、200cm/min以下、より好ましくは160cm/min以下である。
【0031】
何れにしても本発明では、MIGロウ付によって鉄系材料とアルミニウム系材料とを直接接合できるので、適正な溶接電流・電圧条件・接合形状等を採用する限り特に制約を受けることがなく、適用可能範囲が拡大され汎用性が高められるとともに、また連続接合も可能となる。そして前述の如く、アルミニウム系材料とインサート材であるCu系溶接金属とを健全な状態で接合できる結果、鉄系材料とアルミニウム系材料との直接溶融を回避できることから脆弱なFe−Al系金属間化合物の生成抑制にも寄与し、高い接合強度を有する機械的特性に優れた接合継手が得られる。
【0032】
以上説明した各実施形態に関して、Cu系溶接金属を形成するMIGロウ付けワイヤ(Cu系インサート材)としては適当なものを選定することができるが、例えばJIS Z 3341におけるYCuSi B、YCuAl、YCuAlNi A、YCuAlNi B、YCuSn A等が非限定的に例示される。中でも好ましいのはYCuSi B、YCuAlである。
【0033】
なおMIGロウ付けに当たり、母材に対するCu系溶融金属の濡れ性を高めるには、濡れ性を阻害する鉄系材料およびアルミニウム系材料各表面の酸化膜を除去する必要がある。そのためMIGロウ付け時には、Arを代表とする不活性ガスでシールドし、直流のアークを採用し電極(MIGロウ付け用ワイヤ)側を正極にして施工することが望ましい。このような条件を採用すれば、アーク発生時に母材側でクリーニング作用が起こり、鉄系材料側およびアルミニウム系材料側ともに接合部の清浄度が向上し、より健全な接合継手を得ることができる。
【0034】
なお本発明に係る接合方法で使用されるMIGロウ付け用ワイヤの直径(以下、「ワイヤ径」という。)は、前述のように、基本的には低電流の条件で安定したアークを発生させる必要があるため、0.8〜1.2mmとすることが望ましい。ワイヤ径が1.2mmを超えると、安定したアークを得るための電流が過大となり、アルミニウム系材料を過剰に溶融させ脆弱な反応層の生成につながる。一方ワイヤ径が0.8mm未満になると、ワイヤそのものの製造コストが極めて高くなるとともに、ワイヤの送給性が劣るという不利がある。このため、ワイヤ径は0.8〜1.2mmとすることが望ましい。
【0035】
またMIGロウ付法によれば、通常のアーク溶接と同様に連続的な溶接が可能であり、密閉性を必要とする部材に対しても支障なく適用できる。また接合部の耐食性についても、前述した銅合金系ワイヤはそれ自身優れた耐食性を有しているので、鉄系材料とアルミニウム系材料との接合継手が用いられる多くのケースにおいて、優れた耐食性を得ることができる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0037】
〔実施例〕
図1に示すように、鉄系材料としての板厚2mm(長さ300mm×幅75mm)のSPCE軟鋼材Aと、アルミニウム系材料としての板厚2mm(長さ300mm×幅90mm)のA5182−Oアルミニウム合金材Bとを重ね合わせ、Cu系インサート材としてのφ0.8mmのCu系溶接ワイヤ(Cu−2.5質量%Si−1質量%Mn)により重ねすみ肉溶接(MIGブレージング)した。
【0038】
今回検討した溶接条件を表1に示す。スパッタリングによるアルミウム合金酸化膜の除去を狙い、シールドガスに純Arを用いた直流逆極性(溶接ワイヤ:正極、接合材料:負極)にてMIG溶接した。試験パラメータは、(a)板配置[アルミニウム系材料と鉄系材料との上下関係],(b)溶接速度,(c)トーチ角度 の3種類とし、下記の条件は固定してMIGブレージング(MIGロウ付け)した。図2に、トーチ角度θおよび前進角度αの定義を、図3に重ね継手による溶接の状況を模式的に示す。
【0039】
溶接電流:100A、溶接電圧:16V
狙い位置15:コーナ部11bから1mm
ワイヤ突出長さ:12mm、前進角α:0゜
シールドガス流量:20Ll/min
【0040】
MIGブレージング(MIGロウ付け)後、(1)目視による外観観察および(2)X線欠陥調査 による非破壊検査を実施した。引き続き、(3)接合継手の引張強度試験、(4)接合部の硬度分布測定、および(5)EPMA観察による界面反応状況調査を実施した。なお継手強度は、接合継手から板幅30mmの継手強度評価用試験片を採取し、10mm/minの速度で引張試験を行い最大荷重から以下の式に従い算出した。
【0041】
(継手強度)=(最大荷重点荷重)/(継手断面積)
ここに、継手断面積は、アルミニウム合金材Bの板厚方向断面積とした。
【0042】
また接合部の硬度分布については、Cu系溶接金属Cとアルミニウム合金板Bとの界面B/C近傍を、Cu系溶接金属Cからアルミニウム合金板Bにかけて0.2mmピッチごとに、荷重100gにてビッカース硬度を測定することにより求めた(後記図4参照)。
【0043】
表1に試験結果を併記した。表1から明らかなように、上板11としてアルミニウム合金材B、下板12として軟鋼材Aを配置した場合(図1(b)参照)には、X線観察により溶接部に欠陥(クラック)の発生が認められる場合があり(試験No.1)、あるいは溶接部に欠陥が認められない場合でも継手強度は50MPa程度と低い値を示した(試験No.2)。一方、板配置を逆にした場合(図1(a)参照)には、検討した2条件とも溶接部に欠陥が認められないだけでなく継手強度も100MPa程度と高い値を示し、板配置を逆にすることで継手強度は約2倍となった(試験No.3,4)。
【0044】
【表1】
Figure 0004323861
【0045】
図4に、上記各接合継手の接合部近傍の硬度分布の測定結果を示す。なお、同図左欄の各図は接合部の溶接方向(接合方向)に垂直な断面の様子を示す断面図であり、各断面図中の縦・横方向の点列はビッカース硬度測定を行った後の圧痕である。同図右欄の各グラフ図中、点PのX座標が、反応層Dの、接合方向に垂直な断面内においてビッカース硬度が最高値を示す位置を示し、領域Eが、点Pを中心にして±2mmの測定範囲内において、ビッカース硬度Hvが±15(すなわち、最大・最小の幅が30)の範囲内で安定する硬度安定領域を示す。
【0046】
アルミニウム合金材BとCu系溶接金属Cとの間に硬度安定領域Eが成長しても、その幅が0.8mm以下の条件を満足する場合には、溶接欠陥も発生せず継手強度も100MPa程度の値を示した(試験No.3,4)。一方、硬度安定領域Eが0.8mmを超えて成長した場合には継手性能の劣化がみられ、硬度安定領域Eの平均硬度(約180)がアルミニウム合金材Bの素材硬度(約80)の3倍以下であり溶接欠陥の発生はなかったものの、継手強度は50MPa程度にまで低下した(試験No.2)。さらに硬度安定領域Eの平均硬度が高まり(約310)、アルミニウム合金材Bの素材硬度(約70)の4倍を超えると溶接欠陥が発生し、継手強度(引張強度)は35MPa程度にまで低下した(試験No.1)。
【0047】
図5に、溶接後にクラックが発生した試験片につき(試験No.1)、クラック近傍の反応状態をEPMAにより観察した結果を示す(同図上段)。また、試験No.4の試験片で、同じくアルミニウム合金材BとCu系溶接金属Cの間ながらクラックが発生していない部分のEPMA観察結果を併記した(同図下段)。同図下段に見られるように、クラックが伝播していない(発生していない)部分はAlとCuが互いに相分離した共晶組織が観察されるのに対し、同図上段に見られるように、クラック伝播部分では両元素の分離がほとんど認められず金属間化合物が生成していることが示された。
【0048】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、接合部に生成する脆弱な金属間化合物の生成を抑制して高い接合強度が得られる鉄系材料とアルミニウム系材料との接合継手を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】MIGロウ付法による接合時における、鉄系材料とアルミニウム系材料との重ね合わせ状況を模式的に示す断面図である。
【図2】溶接条件パラメータの定義を模式的に説明する斜視図である。
【図3】重ね継手溶接方法を模式的に示す断面図である。
【図4】接合継手の接合部近傍の断面図(左欄)および硬度分布を示すグラフ図(右欄)である。
【図5】接合継手の接合部近傍のEPMA観察結果を示す断面図である。
【符号の説明】
11…上板
11b…コーナ部
12…下板
13…MIGロウ付用ワイヤ(溶接ワイヤ)
14…溶接トーチ
15…狙い位置
A…鉄系材料(軟鋼板)
B…アルミニウム系材料(アルミニウム合金板)
C…Cu系溶接金属(Cu系インサート材)
B/C…界面
D…反応層
E…硬度安定領域
α…前進角度
θ…トーチ角度

Claims (1)

  1. Cu系インサート材を介してMIGロウ付法により接合された、鉄系材料とアルミニウム系材料との接合継手であって、
    前記アルミニウム系材料と前記Cu系インサート材との界面に生成した反応層の、接合方向に垂直な断面内で、ビッカース硬度が最高値を示す位置を中心にして前記界面に垂直な方向に±2mmの範囲内において、ビッカース硬度が±15の範囲内で安定する硬度安定領域の幅が0.8mm以下であり、
    かつ、前記硬度安定領域の平均ビッカース硬度が前記アルミニウム系材料の平均ビッカース硬度の4倍以下であることを特徴とする鉄系材料とアルミニウム系材料との接合継手
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