JP2016112585A - 面接合用ろう材シート - Google Patents

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正一 迫田
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泰永 伊藤
知樹 山吉
Tomoki YAMAYOSHI
知樹 山吉
裕介 大橋
Yusuke Ohashi
裕介 大橋
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Abstract

【課題】二つのAl材料の接合面間に介装されて、それら二つのAl材料を、フラックスレスにてろう付け接合することにより、健全な面接合状態を有利に形成し得る面接合用ろう材シートを提供すること。【解決手段】2.5〜3.5質量%のSi及び0.4〜3.5質量%のMgを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなる心材18aの両面に、3.5〜6.5質量%のSiと、Li、Be及びMgのうちの何れかの所定量とを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるろう材18bが、それぞれクラッドせしめられ、且つそれら両面のろう材18bのクラッド率が、共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて、面接合用ろう材シート18を構成した。【選択図】図1

Description

本発明は、面接合用ろう材シートに係り、特に、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるAl材料のろう付け接合において、かかるAl材料の二つのものの接合面間に介装されて、それら二つのAl材料を、接合欠陥なく、面接合し得るようにしたろう材シートに関するものである。
従来から、Al(アルミニウム及びアルミニウム合金を含む。以下同じ)材質の熱交換器や機械部品等、細かな接合部を多数有する製品の接合方法として、ろう付け接合が、広く採用されてきている。そして、このろう付け接合を行うためのろう材は、熱交換器や機械部品の構成部材と共に用いられ、そのような構成部材を構成する心材の片面或いは両面に、所定のろう材をクラッドしてなるブレージングシートの形態において、ろう付け接合部位に供給され、その溶融したろう材が、継ぎ手にフィレットを形成したり、密着した面を接合したりすることで、ろう付け接合を完成するようになっている。
このように、熱交換器や機械部品(以下、製品と呼称する)の主要な接合部は、上述の如く、その構成部材からのろう材供給によって、ろう付け接合されることとなるのであるが、そのようなろう材の存在しない部位に対して、ろう材を有しない部品を組み付けて、上記した主要接合部と同時に、加熱炉内で面接合する場合においては、その接合面に、ろう材を設置する必要が生じる。例えば、製品内部に埋込み部品を面状に接合する場合においては、その面接合部位に、ろう材の薄板を挟んだりすることが行われているのである。なお、以下においては、そのような面接合部位に設置されるろう材を、置きろう材と称することとする。
ところで、二つのAl材料の間に挟まれて、それらAl材料の対応する接合面をろう付け接合する面接合用の置きろう材は、一般的に、板状の形態において使用されることとなるのであるが、その全面(板状の両側の面)がろう材自身の酸化皮膜で覆われているところから、かかる酸化皮膜を完全に破壊しないと、溶融したろう材の偏った流動が惹起され易く、それによって、健全な接合部が得られ難くなる等という問題が、内在している。このため、フラックスを使用するろう付け法においては、置きろう材或いはAl材料の接合部位に所定のフラックスを塗布して、接合性を確保することが行われているのである。具体的には、図3(a)に示されるように、ブロック状のAl部品40の両側に、所定厚さのAl板材42,42を押し当てて、それらをろう付け接合するべく、所定のフラックスが両側に塗布されて、フラックス層45,45が形成されてなる板状の置きろう材44が、それらAl部品40とAl板材42,42との間にそれぞれ介在せしめられて、加熱ろう付けされることとなるのであるが、その際、Al部品40とAl板材42,42との間に形成される面接合部(ろう付け部)46には、図3(b)に示される如く、局部的な接合欠陥である隙間48が生じたり、気化したフラックスが面接合部46においてボイド49を形成して、接合不良を惹起せしめたりする恐れがあった。
また、真空中においてフラックスを用いることなくろう付け接合を行う真空ろう付け法を採用したり、或いは不活性ガス中においてフラックスを使用しないで接合するろう付け(無フラックス若しくはフラックスレスろう付け)手法を採用した場合にあっては、置きろう材表面の酸化皮膜が充分に破壊されないために、図4に示されるように、面接合部において、溶融したろうが偏って流動して、大規模な接合欠陥が惹起されたりする問題を内在している。即ち、図4(a)の如く、ブロック状のAl部品40の両側に、フラックスの塗布されていない板状の置きろう材50を配置し、そしてその両側から所定厚さのAl板材42,42を押し当てて、真空中或いは不活性ガス中において加熱ろう付けしたときに、図4(b)に示されるように、Al部品40とAl板材42,42との面接合部52,52に、局部的な接合欠陥である隙間54や、内部接合欠陥である未接合空所56が形成されたりするのである。このため、置きろう材50を用いて、真空ろう付け手法や不活性ガス雰囲気中でのフラックスレスろう付け手法にてAl部品40とAl板材42,42との面接合を行う場合には、接合されるAl材料の加圧(挟圧)方法や温度管理等の点において充分な注意が必要とされ、これが、生産コストを押し上げる要因となっているのである。
そこで、上述の如き置きろう材44,50を用いたろう付け法の欠点を補うために、ろう材単体ではなく、Al心材の両面にろう材をそれぞれクラッドしてなる両面ブレージングシートを用いることが考えられているのであるが、そのようなブレージングシートにおいては、ろう材と心材の界面が予め金属的に接合されているところから、他の部材との接合性がろう材単体の場合に比べて優れているという特徴を有しているものの、置きろう材としてのブレージングシートの使用には、次のような問題が内在している。
すなわち、両面ブレージングシートの製造に際しては、鋳造スラブ或いはそれを圧延してなる厚板の形態において、ろう材及び心材を準備した後、それらを、ろう材(皮材)、心材及びろう材(皮材)の順に積層して、450〜500℃の温度で加熱圧延することによって、積層材の界面が圧接されるようにするのであるが、その時、積層する皮材厚さが厚いと、圧延時に心材と皮材の界面が充分に摺動しないために、心材と皮材を接合するのが困難となる。このため、実際の工場生産で可能とされている皮材のクラッド率[(皮材厚さ/積層材全体の厚さ)×100%]は、一般的に20%未満であり、最大でも25%未満とされているのである。換言すれば、従来のブレージングシートでは、心材厚さが全体の50%以上を占めるような構成とされているのである。一方、面接合部に設置される置きろう材の厚さは一般的に制限されており、精密な製品では50μm前後の厚さにおいて使用されることが多い。そのような状況下、上記のようなろう材のクラッド率が20%未満のブレージングシートを面接合の置きろう材として使用すると、ろう材量が不足することとなり、そのために、面接合部に欠陥が生じ易くなるのである。
なお、特開平8−309896号公報においては、面接合用の置きろう材として、ろう材の総クラッド率が40〜95%となるブレージングシートが提案され、そこでは、溶融したろうによって心材を分断化し、その分断化された心材が溶融ろうの中に点在することで、面接合性が向上するとされているのであるが、かかる心材が分断化されているか、否かに関わらず、ろう材が溶融して生じた溶融ろうは、相手材との接合の起点に向けて流動し、そして接合の起点を中心として、接合領域を拡大するようになるところから、面接合領域内において、接合の起点が偏って存在すると、溶融ろうは偏った方向に流動し、その結果として、広大な未接合領域が発生するリスクを生ずる問題を内在している。
以上のように、置きろう材によるAl材料の面接合には、様々な問題が内在しているのであり、そのため、例えば、取付け部品との間の熱伝導性を重視する精密な熱交換器の面接合部や、外部に取り付ける部品において一定の接合強度が要求される製品等の面接合部においては、上述の如き置きろう材を用いたろう付け接合手法は、採用され難いものであったのである。
特開平8−309896号公報
ここにおいて、本発明は、上述した従来の面接合における置きろう材の欠点を解消するために為されたものであって、その解決課題とするところは、二つのAl材料の接合面間に介装されて、それら二つのAl材料をろう付け接合することにより、健全な面接合状態を有利に形成し得る面接合用ろう材シートを提供することにある。
そして、本発明にあっては、かくの如き課題を解決するために、二つのAl材料の接合面間に介装されて、それら二つのAl材料を、不活性ガス雰囲気中でのフラックスレスろう付け法にてろう付け接合せしめる面接合用ろう材シートにして、2.5〜3.5質量%のSi及び0.4〜3.5質量%のMgを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなる心材の両面に、3.5〜6.5質量%のSiと共に、0.004〜0.1質量%のLi、0.002〜0.05質量%のBe、及び0.05〜0.4質量%のMgのうちの少なくとも1種を含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるろう材が、それぞれクラッドせしめられ、且つそれら両面のろう材のクラッド率が共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて構成されていることを特徴とする面接合用ろう材シートを、その要旨とするものである。
また、このような本発明に従う、不活性ガス雰囲気中でのろう付け接合に用いられる面接合用ろう材シートにあっては、好ましくは、前記ろう材は、0.004〜0.2質量%のBiを更に含有している。
さらに、本発明にあっては、上記した課題を解決するために、二つのAl材料の接合面間に介装されて、それら二つのAl材料を、真空ろう付け法にてろう付け接合せしめる面接合用ろう材シートにして、2.5〜3.5質量%のSi及び0.4〜3.5質量%のMgを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなる心材の両面に、3.5〜6.5質量%のSiと共に、0.1〜1.6質量%のMgを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるろう材が、それぞれクラッドせしめられ、且つそれら両面のろう材のクラッド率が共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて構成されていることを特徴とする面接合用ろう材シートをも、その要旨とするものである。
なお、このような本発明に従う、真空ろう付け法に適用される面接合用ろう材シートの望ましい態様の一つによれば、前記ろう材は、0.01〜0.2質量%のBiを更に含有している。
そして、上述の如き本発明に従う面接合用ろう材シートの有利な態様の一つによれば、前記心材のクラッド率は、5〜30%とされることとなる。
このように、本発明に従う面接合用ろう材シートにあっては、ろう材中のSiの含有量が3.5〜6.5質量%であり、且つろう付け方法に応じて特定量の合金成分が含有せしめられたアルミニウム合金からなるAlろう材が、特定成分のアルミニウム合金からなるAl心材の両面にクラッドされてなると共に、それら両側のろう材のクラッド率が、共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて、構成されているところから、そのような面接合用ろう材シートを用いて、それを、接合されるべき二つのAl材料の接合面間に介装して、それら二つのAl材料を、不活性ガス雰囲気中におけるフラックスレスろう付け法乃至は真空ろう付け法にてろう付け接合せしめることによって、ろう材表面の酸化皮膜の破壊を効果的に行いつつ、埋込み部品や取付け部品等のAl部材(一方のAl材料)を、ろう材層の存在しないAl相手材(他方のAl材料)に対して、ろう材料に不足を生じることなく、精密に且つ容易に接合することが出来ることとなったのである。
また、本発明に従う面接合用ろう材シートにおいては、それを構成するろう材のみならず、所定量のSi、Mgを含有する心材も、ろう付け加熱により、溶融し、ろう材として機能するため、従来の板状のろう材単体からなる置きろう材に比べて、その面接合部においては、ろう材料に不足を生じることなく、健全な面接合状態が容易に得られるのである。
そして、かかる本発明に従う面接合用ろう材シートを、置きろう材として用いることにより、二つのAl材料の接合が精密且つ容易に実現可能となったところから、自動化された生産ラインでの適用も可能となり、またろう付け製品の設計自由度も広がるようになるために、熱交換器であれば熱交換性能の向上が効果的に図られ得、また構造用部品であれば疲労強度の向上等が有利に図られ得ることとなるのである。
本発明に従う面接合用ろう材シートを用いた、不活性ガス雰囲気中でのフラックスレスろう付け乃至真空ろう付け接合工程の一例を示す断面説明図であって、(a)は、接合されるべきAl材料の接合面間にろう材シートを介装せしめて、組み付けてなる状態の積層体の一例を示す断面説明図であり、(b)は、そのような積層体をろう付け接合して得られる接合体の断面説明図である。 図1に示される積層体をセットして、所定の加圧力を作用せしめ得る加圧治具の一例を示す正面説明図である。 置きろう材として板状のろう材単体を用いた、フラックスを用いるろう付け接合工程の一例を示す断面説明図であって、(a)は、接合されるべきAl材料の接合面間にろう材単体を介装せしめて、組み付けてなる状態の積層体の一例を示す断面説明図であり、(b)は、そのような積層体をろう付けして得られる接合体の断面説明図である。 置きろう材として板状のろう材単体を用いた、フラックスを用いないフラックスレスろう付け接合工程の一例を示す断面説明図であって、(a)は、接合されるべきAl材料の接合面間にろう材単体を介装せしめて、組み付けてなる状態の積層体の一例を示す断面説明図であり、(b)は、そのような積層体をろう付けして得られる接合体の断面説明図である。
要するに、二つのAl材料の接合面間に介装されて、それら二つのAl材料をろう付け接合せしめる面接合操作において、置きろう材として用いられる、本発明に従う面接合用ろう材シート(ブレージングシート)と、従来の板状のろう材単体との間の決定的な差異は、後者のろう材単体にあっては、その表面が全て酸化皮膜で覆われているのに対して、前者のろう材シートにおけるろう材(皮材)は、その表面の略半分(一方の面)が心材に金属接合されているところにある。
すなわち、従来の板状のろう材単体を用いたろう付けの場合においては、その表面の酸化皮膜が破れたところから、接合が始まるようになるところから、その接合の起点に向けて、溶融ろうが引っ張られて流動し、かかる起点の周囲から優先的に接合領域が拡大していくこととなる。しかも、そのような接合の起点は、置きろう材として板状のろう材単体を用いた、図3や図4に示されるろう付けにおいて、上下の相手材(42,42)に対して、上下同一な位置において生ずるとは限らないところから、拠り所のない溶融ろうは、複数の接合の起点に引っ張られて、偏って流動するようになるのであり、その結果として、局部的にろうが不足して、接合不良を発生するリスクが高められているのである。
これに対して、本発明に従うブレージングシートにて構成される面接合用ろう材シートを用いた場合にあっては、相手材に対する接合の起点の発生と、その起点を中心とした接合領域の拡大は、上記したろう材単体の場合と似たようなプロセスで進行するようになるのであるが、溶融ろうは、相手材とは反対側に位置する心材に対して、既に、金属的に接合されており、ろう材の溶融後の状態で言えば、心材に対して全面的にぬれている状態となっているのである。そのため、相手材との接合の起点に向けたろうの流動は、ろう材単体の場合に比べて緩慢となるのであるが、その際、Si含有量が共晶組成に近いろう材を使用したりすると、上述の如き起点に向けた溶融ろうの流動を抑止する効果に乏しく、その結果として、局部的に未接合領域を発生するリスクが生ずるようになる。事実、本発明者らによる様々なろう付け試験により、共晶組成のJIS呼称のA4047合金(Si含有量:11〜13質量%)は勿論、ろう材として一般的に使用されているA4045合金(Si含有量:9〜11質量%)やA4343合金(Si含有量:6.8〜8.2質量%)にあっても、偏ったろうの流動を完全にくい止めることが出来ないことが確認されたのである。逆に言えば、実用的な流動性を有する一般のろう材組成において、接合の起点に向けてろうが流動するのは、必然的な現象であると言うことが出来る。
そこで、本発明者らは、接合に必要なろう材料を確保しつつ、接合不良を発生させることなく、面接合を確実に完遂させるには、ろう材中のSi含有量を、実用的な範囲よりも低下せしめる必要があることを知見し、そして更なる検討の結果、Si含有量が3.5質量%〜6.5質量%であり、残部がアルミニウム及び不可避的不純物である基本組成を有するアルミニウム合金からなるろう材を用い、そのようなろう材が、所定のアルミニウム合金からなる心材の両面に、それぞれクラッドされてなるアルミニウムブレージングシートにて、面接合用ろう材シートを構成することが有効であることを見出したのである。なお、かかるアルミニウムブレージングシートを与えるろう材中のSi含有量が3.5質量%未満となると、ろう材の溶融量が不足するようになり、ろう材機能が著しく低下する等の問題を惹起する。また、かかるSi含有量が6.5質量%を超えるようになると、相手材との接合に向けた溶融ろうの流動を抑制する効果が乏しくなり、広大な未接合領域が発生するリスクが高まる問題がある。
また、かかる本発明に従う面接合用ろう材シートにおいては、ろう付け手法に応じて、接合の起点の増加や接合性の向上等の目的をもって、ろう材中のSi粒子径を調整したり、ろう材中にLi、Be、Ca、Mg、Bi等を微量添加したり、更に、ろう材の融点を調整するために、ろう材中にCuやZnを添加する等の工夫を施したりすることが、可能である。これらの手段は、ろう材中のSi含有量の調整や、後述するクラッド率の調整による本発明の本質的効果を揺るがすものではなく、接合の目的に応じて施される副次的な手段となるものである。
特に、不活性ガス雰囲気中でのフラックスレスろう付けに用いられる、本発明に従う面接合用ろう材シートを与えるブレージングシートにおいては、心材にクラッドせしめられるろう材は、前述の如き基本組成において必須とされた3.5〜6.5質量%のSiと共に、更に、0.004〜0.1質量%のLi、0.002〜0.05質量%のBe、及び0.05〜0.4質量%のMgのうちの少なくとも1種を含有せしめてなるアルミニウム合金にて構成され、それらの合金成分の含有によって、ろう材表面の酸化皮膜の破壊効果が効果的に高められ得て、健全なろう付け接合が有利に実現され得ることとなる。
なお、かかるろう材中の合金成分であるLi、Be及びMgの含有量が、それぞれ、それらの下限よりも少なくなると、ろう材表面の酸化皮膜の破壊効果が乏しくなって、本発明の目的を充分に果たし難くなる問題を惹起することとなる。また、それら合金成分の含有量が、それぞれ、上記した上限よりも多くなると、それらの合金成分の酸化物であるLi2 OやBeOやMgOが過剰に形成されて、接合性が悪くなる等の問題を生じるようになる。
また、かかる合金成分(Li、Be、Mg)と共に、更にBiの所定量を含有せしめてなるAl−Si合金にて、ろう材を構成するようにすれば、溶融ろうの表面張力を有利に低下せしめ得て、接合性を高めることが出来る。このBiの含有量が0.004質量%未満となると、表面張力の低下効果が乏しくなって、接合性の向上効果を期待することが出来ず、また0.2質量%を超えるようになると、ろう材の変色が著しくなり、接合性の向上効果も認められなくなることから、Biは、0.004〜0.2質量%の範囲内で添加することが望ましい。
一方、真空ろう付け法が適用される面接合用ろう材シートについては、上記したろう材を構成するアルミニウム合金の基本組成中に、更に、0.1〜1.6質量%のMgが含有せしめられるようにすることにより、真空中において、面接合部をより一層健全にろう付けすることが出来る利点を生じる。なお、Mg含有量が0.1質量%未満であると、ろう材表面の酸化皮膜破壊が不充分となり、接合性が低下するようになるのであり、一方、Mg含有量が1.6質量%を超えると、溶融ろうの表面張力の低下によって、溶融ろうが面接合部の周囲に濡れ広がり易くなり、その結果として、面接合部に接合不良が惹起され易くなる問題がある。
また、そのようなSiと共に、Mgの所定量を含有せしめてなる真空ろう付け用のろう材には、更に、Biを合金成分として含有せしめることが望ましく、これによって、接合性を高めることが出来る。なお、このBiの含有量が0.01質量%未満では、接合性の向上効果が乏しく、また0.2質量%を超えるようになると、ろう材の変色が著しくなり、接合性の向上効果も認められなくなるところから、0.01〜0.2質量%の範囲内において、Biを含有せしめることが望ましい。
ところで、かくの如きろう材組成のAl−Si系合金ろう材をクラッドせしめてなるアルミニウムブレージングシートにて構成されるろう材シートを用いて、水平方向の面接合を行うと、Si含有量が例えば5質量%程度と、低いSi含有量のAl−Si合金ろう材であっても、ろう材の溶融は、Al−Siの共晶温度(577℃)で始まることとなるが、Si含有量の低いろう材では、その溶融したろうは未溶融の固相に囲まれているところから、容易に流動することが出来なくなるのである。従って、相手材との接合の起点が発生しても、その起点に向けて、大量の溶融ろうが流動するようなことはなく、その結果として、温度の上昇に伴って、接合の起点が接合界面の随所で発生することになる。そして、接合領域の拡大は、溶融ろうの水平方向の流動よりも垂直方向への至近距離の流動、換言すれば接合の起点に向けて、ろう材の内部から、溶融ろうが垂直方向に移動する流動によって、推進されることとなる。このように、溶融ろうの垂直方向への流動によって、接合領域を拡大させることが、本発明においては、接合不良を惹起することなく面接合する上において、不可欠となるのである。
そして、その際、ブレージングシートにおけるろう材(皮材)の厚さが薄くなり過ぎると、ろう材層内部からのろうの供給量が不足(枯渇)して、接合領域が充分に拡大しない不具合を招くようになるのであるが、従来から製造されているブレージングシートにおいては、その皮材(ろう材)のクラッド率が20%未満であることが多く、そのために、面接合の置きろう材としてよく使用される50μm厚さのシートの場合において、ろう材厚さは、最大でも10μm程度となるのである。このため、そこでは、Si粒子径にもよるが、厚さ方向において、Si粒子が数個以下しか存在しないことになる状況となるところから、厚さ方向へのろうの流動は、殆ど期待出来なくなってしまうのである。そこで、本発明では、所定のアルミニウム合金からなる心材の両面にそれぞれクラッドせしめられるろう材(皮材)のクラッド率を、共に、35%以上に増大させて、厚さ方向への溶融ろうの流動(補給)が可能となるようにしたものであって、これにより、接合領域が効果的に拡大され得て、接合不良を生ずることなく、健全な面接合部を有利に実現せしめ得たのである。
なお、ろう材量の不足を補うためには、ろう付け接合されるべき二つのAl材料を加圧(挟圧)する力を増すことが考えられるのであるが、ろう材厚さが薄いブレージングシートを用いる場合においては、加圧力増大の効果には、限界があり、また加圧力の増大は、治具費用を増大させて、コスト高を招くようになるところから、敬遠されることが多く、実用上において問題がある。しかるに、本発明に従うブレージングシートからなる面接合用ろう材シートにあっては、そのような加圧力を高めることなく、面接合性を確実に向上せしめ得るものであって、精密なろう付け製品の実現に大きく貢献するものである。
また、不活性ガス雰囲気中でのフラックスレスろう付け手法による面接合においては、フラックスろう付け法に比べて、接合性が劣るところから、相手材との接合の起点が生じ難く、しかも接合の起点が接合領域内で偏って存在する確率も高くなるために、接合の起点に向けたろうの偏った流動が、フラックスろう付け手法以上に顕著となる傾向がある。そのため、不活性ガス雰囲気中でのフラックスレスろう付け法による面接合においては、特に、置きろう材としては、ろう材単体よりもブレージングシートの方が好適であり、それ故に、本発明に従うブレージングシートからなるろう材シートの有用性が、フラックスろう付け操作の場合以上に高くなるのである。
さらに、かくの如き不活性ガス雰囲気中におけるフラックスレスろう付け乃至真空ろう付けに用いられる面接合用ろう材シートを与えるブレージングシートを構成する心材は、2.5〜3.5質量%のSi及び0.4〜3.5質量%のMgを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金から構成されるようにしたところにも、大きな特徴を有しているのであり、このように、心材に特定量のSi及びMgを含有せしめることにより、かかる心材の融点を低下させて、ろう付け加熱時に心材が順次、溶融し、心材断片が溶融ろう中に均等に分散せしめられるようにして、面接合性が有利に向上させられ得るのである。
なお、かかる心材を構成するアルミニウム合金におけるSi含有量が2.5質量%未満となると、心材の融点が高くなり、ろう付け後の面接合部に厚い心材断片が不均一に残存し、未接合部が分散して存在するようになる問題があり、またSi含有量が3.5質量%を超えるようになると、ろう付け加熱時に、ろう材と同時に心材が溶融し始めて、局部的に心材が消失する部位を生じ、未接合部が分散して発生する問題が惹起されるようになるのである。また、心材を構成するアルミニウム合金中のMg含有量が0.4質量%未満となると、心材の融点が高くなり、ろう付け後の面接合部に、厚い心材断片が不均一に残存し、未接合部が分散して発生する問題を惹起するようになる。この心材中のMgは、ろう材表面に拡散して、ろう材表面の酸化膜を破壊し、溶融ろうの流動性を向上する効果があるのであるが、かかるMg含有量が少なくなり過ぎると、その効果も充分に期待し得なくなるのである。そして、かかるMg含有量が3.5質量%を超えるようになると、ろう付け加熱時に、ろう材と同時に心材が溶融し、接合面から溶融ろうとして流出し易くなる問題が惹起されるようになる。
このように、心材にSi及びMgの所定量を含有せしめることによって、心材の融点を低下させて、面接合時に心材断片が均等に分散し、面接合性を向上させる効果が、奏され得るのである。なお、JIS規格やAA規格において、このようなSi及びMgの含有量を有するような公知の合金は、現時点では存在しない。
また、そのようなAl心材は、アルミニウムブレージングシート中において、その両面に、上記したろう材からなる皮材が一体的にクラッドせしめられて、それら両側の皮材間で連続的に広がる1枚のシート状形態において存在せしめられるものであって、そのような心材のクラッド率は、本発明にて規定される皮材(ろう材)のクラッド率を考慮して適宜に選定されることとなるが、一般に、5〜30%の範囲内とされることとなる。なお、このAl心材のクラッド率が5%よりも低くなると、ろう材とのクラッド圧延時において、Al心材が破断する恐れがあり、そしてそのために、アルミニウムブレージングシート中において1枚の連続したシート状物として存在させることが困難となる問題があり、またクラッド率が30%を超えるようになると、Al心材の両面に形成されるろう材(皮材)のクラッド率が35%未満となるため、ろう付け接合に際して、溶融ろうの流動に問題を生じるようになる。
ところで、上述の如き本発明に従う面接合用ろう材シートを構成するアルミニウムブレージングシートは、心材の両面にそれぞれ形成されるろう材からなる皮材層のクラッド率が、35%以上となるところから、従来のクラッド手法では、その製造が困難となるものである。このため、本発明にあっては、本発明者らの提案になる、以下の如きクラッド材の製造方法を用いて、目的とするアルミニウムブレージングシートが製造されることとなるのである。例えば、特開2013−220435号公報に明らかにせるように、心材とろう材との間に低融点の金属粉末又は板材を介在せしめて、加熱接合した後、熱間クラッド圧延することにより、アルミニウムクラッド材を得る方法が採用され得る他、特願2014−71289号において提案されている如く、心材とろう材との接合界面に、Al製の平織金網や綾織金網等の、点状厚肉部を有するAl接合補助部材を介在せしめて、熱間クラッド圧延することにより、クラッド材を得る手法が採用され、更に、特願2014−101132号に示されるように、心材とろう材との間に、前述の如きAl接合補助部材と共に、軟質の純Al系薄板を介在せしめて、それらの積層形態において、熱間クラッド圧延を行う手法も、有利に採用され得るのである。そして、これらのクラッド手法を採用することによって、目的とするアルミニウムブレージングシートを工業的に安定して製造することが出来ることとなる。勿論、本発明に従うアルミニウムブレージングシートは、上述の如きクラッド方法に何等限定されるものではなく、ろう材のクラッド率を35%以上となし得る如何なるクラッド手法も、採用可能である。
そして、上述の如くして得られる本発明に従う面接合用ろう材シートは、接合されるべき二つのAl材料の形状や寸法等に応じて、適宜の厚さにおいて製造されることとなるのであるが、一般に、0.05〜3mmの範囲内の厚さにおいて、製造されるものである。中でも、自動車の熱交換器用として、熱交換器部材のろう付けには、0.05〜1.6mmの厚さのろう材シートが、有利に用いられることとなる。
また、本発明に従う面接合用ろう材シートを用いて、二つのAl材料をろう付け接合するに際しては、公知の各種のろう付け手法が採用されるところであって、そのようなろう材シートを二つのAl材料の接合面間に介装してなる積層形態において、例えば、ろう付け炉中において、フラックスを用いることなく、不活性ガス雰囲気中でのろう付け、或いは真空中でのろう付けが、実施されるのである。特に、かかる本発明に従う面接合用ろう材シートを用いたろう付け接合においては、心材に、或いは心材及びろう材にMgを含んでいるため、ろう付け接合に際してのろう材溶融時に表面にMgが拡散するようになるところから、フラックスの使用を避ける必要がある。つまり、材料中のMgがフラックスと反応して、フラックスの機能が失われるようになるからである。更に、そのようなろう付け操作においては、本発明に従う面接合用ろう材シートの両側にろう付けされるべき二つのAl材料を重ね合わせてなる積層体を適当な治具にて挟圧することにより、所定の加圧力を作用せしめた状態下において、加熱が施され、以てそれら二つのAl材料のろう付け接合が、実現されることとなる。
例えば、図1の(a)に示される如く、ブロック状のAl材料12の両側に板状のAl材料14,16を、不活性ガス雰囲気中又は真空中において、フラックスを何等用いることなく、それぞれ、ろう付け接合する場合において、本発明に従うろう材シート18が、それらAl材料12と14の間及び12と16の間に、それぞれ介在せしめられてなる形態のろう付け用積層体10が、先ず形成される。なお、ろう材シート18は、本発明に従って、心材18aの両側にろう材18bが所定厚さでそれぞれ一体的にクラッドされてなる両面ブレージングシートにて構成されており、その全表面には、従来の如きフラックスろう付け法にて用いられるようなフラックスは、何等塗布されてはいない。そして、そのようなろう付け用積層体10が、従来と同様な加熱ろう付け操作を施されることにより、ろう材シート18における酸化皮膜の効果的な破壊や、そこで生じる溶融ろうの流動の効果的な制御によって、図1の(b)に示される如く、二つのAl材料12,14間や12,16間に、接合欠陥のない、健全な面接合部20,20が、それぞれ有利に形成されることとなるのである。
なお、かかる図1に示されるろう付け用積層体10には、ろう付け処理時において、適当な加圧力が作用せしめられることとなるが、そのような加圧力は、例えば、図2に示される如き、加圧治具30を用いて、加えられることとなる。即ち、加圧治具30の上下の挟圧プレート32,34間に、ろう付け用積層体10を挟み込んで、ボルト36とナット38とを用いて挟圧することにより、所定の押圧力の下でのろう付け処理が容易に実施することが出来るようになっている。
このように、本発明に従うろう材シートを用いて、二つのAl材料を面接合せしめることにより、得られるろう付け製品22の接合精度が効果的に高められ得、また生産性も有利に向上させられ得ることとなったのであり、これによって、ろう付け製品の設計の自由度も増すこととなり、従来は実現困難であった精密な面接合部や高強度の面接合部を有するろう付け製品の実現に大きく寄与し得たのである。
以上、本発明に従う面接合用ろう材シートについて、具体的に説明してきたが、本発明が、例示の具体的な態様に係る詳細な記述によって、何等限定的に解釈されるものでは決してなく、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることが理解されるべきである。
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことも、また、理解されるべきである。
図2に示される如き加圧状態下において、ろう付け面接合を行うべく、先ず、ろう付け接合されるべき一方のAl材料であるブロック状の埋込材(12)として、JIS A1100材質のAl押出材(角材)を20mm×80mm×80mmの大きさに機械加工したものを準備すると共に、ろう付け接合されるべき他方のAl材料である相手材(14,16)として、厚さ:2mmのJIS A1050材質のAl冷延板を160mm×160mmの大きさに切断したものを準備した。なお、それら2種類のAl材料は、調質により、何れも、O材とされている。
また、それぞれのろう付け試験において用いられる各種のブレージングシートからなるろう材シート(18)を、下記表1乃至表3に示される合金成分を含有する各種のアルミニウム合金を用いて、板厚:0.05mm、長さ:80mm、幅:80mmの寸法において、それぞれ準備した。具体的には、それぞれのアルミニウム合金からなる鋳塊から削り出された厚さ:5mm〜25mmのAl心材と、それぞれのアルミニウム合金からなる鋳塊を面削した後に熱間圧延して得られた、厚さが12.5mm〜22.5mmのろう材とを、下記表1乃至表3に示されるクラッド率を与えるように組み合わせて用い、それらAl心材とろう材との界面に、Al−6%Si−15%Zn合金の粉末(粒径:70〜150μm)を均一に分散、介在せしめてなる形態において、ろう材/Al心材/ろう材の構成からなる積層物を治具にて拘束した状態で、加熱炉において565℃×1時間の加熱を実施して、それらAl心材とろう材との界面を溶融拡散接合した後、480℃で熱間圧延し、更に冷間で0.05mmの厚さまで圧延した。そして、かかる冷間圧延の後に、360℃×2時間の加熱を実施して、調質を行い、O材とした後、80mm×80mmの寸法に切断することにより、目的とするろう材シート(ブレージングシート)を得た。
さらに、比較のための置きろう材として用いられるろう材単板にあっても、下記表2に示される合金組成のアルミニウム合金からなる鋳塊から、通常の熱間圧延及び冷間圧延を行い、厚さが0.05mmの板材とすると共に、調質を施して、O材とした後、80mm×80mmの寸法に切断することによって、準備した。
Figure 2016112585
Figure 2016112585
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次いで、上記のようにして準備された、Al材料としての埋込材(12)と相手材(14,16)及び置きろう材としてのろう材シート(18)は、全て、アセトンで脱脂処理して、次のろう付け試験に供されるようにした。なお、ろう付け試験において、真空ろう付けではフラックスを塗布することなく、そのまま組み付けて、積層体(10)を形成した。
すなわち、先ず、窒素ガス中のフラックスレスろう付けにおいては、埋込材(12)や相手材(14,16)及びろう材シート(18)に対して、それぞれ、2%フッ酸溶液に60秒間浸漬することからなるエッチング処理を施し、そしてエアーブローによる乾燥の後に、フラックスを塗布することなく組み付けて、目的とするろう付け用積層体(10)を形成した。その後、かかる積層体(10)を、図2に示される如く、加圧治具(30)にセットして、所定の加圧力を作用せしめてなる状態下において、窒素ガス炉中で600℃まで加熱することにより、ろう付け処理を実施した。なお、室温から600℃までの昇温時間は約20分とし、ろう付け時の炉内雰囲気中の酸素濃度は、15〜20ppmであった。
また、真空ろう付けにおいては、上述と同様に、フラックスの塗布を行うことなく、埋込材(12)と相手材(14,16)とをろう材シート(18)を介して組み付け、ろう付け用積層体(10)とした。その後、図3に示される如く、積層体(10)を加圧治具(30)にセットして、所定の加圧力が積層体(10)に作用せしめられてなる状態下において、真空炉内に収容し、そしてかかる真空炉中において600℃まで加熱することにより、ろう付け処理を実施した。なお、室温から600℃までの昇温時間は約45分とし、ろう付け時の炉内圧力は5〜8×10-3Paとした。
そして、かくして得られた各種のろう付け製品(22)について、その接合面の超音波検査(非破壊検査)と断面観察(破壊検査)を行って、それぞれのろう付け製品(22)の接合部の状態を観察、評価し、その結果を、下記表4及び表5に示した。なお、それら表中における面接合性評価結果において、「◎」は、接合部欠陥が全く認められず、接合性において優れていることを示し、また「○」は、未接合部が僅かに認められるものの、実用上において接合部は何等問題がないことを示している。これに対して、「×」は、未接合部が比較的多く存在し、実用的に不適な接合部であることを示し、更に「××」は、未接合部がかなり多く存在して、接合できていないため、実用上において全く用いることの出来ないものであることを示している。
Figure 2016112585
Figure 2016112585
かかる表4の結果から明らかな如く、本発明に従うろう材シートを用いた、真空ろう付け手法や窒素ガス中フラックスレスろう付け手法を採用するろう付け試験1〜15においては、得られたろう付け製品(22)の何れもが、良好な面接合状態となっていることが確認された。
これに対して、表5に示される結果から明らかな如く、置きろう材として、アルミニウム合金ろう材のみからなるろう材単板を用いた真空ろう付けや窒素ガス中フラックスレスろう付けに係るろう付け試験16及び17においては、得られたろう付け製品(22)には、何れも、超音波検査において多くの接合欠陥が観察された。また、ろう付け試験18においては、ろう材シートを構成する心材中のSi含有量及びMg含有量やクラッド率は本発明の範囲内であるが、ろう材中のMg含有量が少ないために、溶融ろうが少なく、ろう付け製品(22)には、接合欠陥が少し発生していることが認められた。更に、ろう付け試験19においては、ろう材シートを構成する心材中のSi含有量及びMg含有量やクラッド率は本発明の範囲内であるが、ろう材のMg含有量が多すぎるため、表面酸化が進行し、溶融ろうが流動しないため、ろう付け製品(22)には、多くの接合欠陥が発生していることを認めた。
また、窒素ガス中でのフラックスレスろう付けを採用するろう付け試験20においては、ろう材のクラッド率は充分であるが、ろう材のLi含有量が多いために、かえって酸化物を生じ易くなって、ろう材が流動し難くなり、接合部に未接合部が多くなった。同様に、ろう付け試験21では、ろう材のクラッド率は充分であるが、ろう材のBe含有量が多いために、かえって酸化物を生じ易くなって、ろう材が流動し難くなり、接合部に未接合部が多く発生することを認めた。更に、ろう付け試験22においては、心材のSi及びMg含有量やろう材のSi及びMg含有量は本発明にて規定する範囲内であるが、ろう材のクラッド率が低いために、充分な溶融ろうを生じ難く、接合面への溶融ろうの補給が少ないところから、面接合部に多くの未接合部(接合欠陥)が生じていることを認めた。そして、ろう付け試験23においては、ろう材シートを構成する心材のSi及びMg含有量が共に少ないために、溶融ろう中に心材の破片が残留して、溶融ろうの流動を妨げるようになるところから、ろう付け製品(22)の面接合部には、接合欠陥が多く生じていることを認めた。
さらに、ろう付け試験24においては、ろう材のクラッド率が40%であるものの、心材中のSi及びMg含有量が多いために、心材とろう材が同時に溶融し、過剰な溶融ろうを生じたため、接合面から流出して、接合欠陥が多く発生していることを認めた。また、ろう付け試験25においては、心材のSi及びMg含有量及びろう材のSi及びMg含有量は、本発明に規定する範囲内となっているが、ろう材のBi含有量が多過ぎるために、ろう付け中にろう材の変色が著しくなり、接合性の向上効果も認められず、多くの未接合部が発生していることを認めた。
そして、真空ろう付け法を採用したろう付け試験26では、ろう材のクラッド率は充分であり、心材中のSi及びMg含有量も本発明の範囲内であるが、ろう材のSi及びMg含有量が少ないために、溶融ろうの生成が少なく、そのために、接合部に未接合部が多く存在することを認めた。同様に、ろう付け試験27では、心材中のSi及びMg含有量は本発明の範囲内であるが、ろう材のSi及びMg含有量が多くなっているため、真空ろう付け中に過剰な溶融ろうが生じて、接合部にろうが残留せず、接合部に未接合部が多く生じていることを認めた。また、ろう付け試験28においては、ろう材のクラッド率は充分であり、心材中のSi及びMg含有量やろう材中のSi及びMg含有量も本発明の範囲内であるが、ろう材中のBi濃度が多いために、かえってろう材の変色が著しくなり、接合性の向上効果も認められず、接合部に未接合部が多く発生していることを認めた。
10 ろう付け用積層体 12 ブロック状Al材料
14,16 板状Al材料 18 ろう材シート
18a 心材 18b ろう材
20 面接合部 22 ろう付け製品
30 加圧治具 32,34 挟圧プレート
36 ボルト 38 ナット

Claims (5)

  1. 二つのAl材料の接合面間に介装されて、それら二つのAl材料を、フラックスを用いることなく、不活性ガス雰囲気中においてろう付け接合せしめる面接合用ろう材シートにして、
    2.5〜3.5質量%のSi及び0.4〜3.5質量%のMgを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなる心材の両面に、3.5〜6.5質量%のSiと共に、0.004〜0.1質量%のLi、0.002〜0.05質量%のBe、及び0.05〜0.4質量%のMgのうちの少なくとも1種を含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるろう材が、それぞれクラッドせしめられ、且つそれら両面のろう材のクラッド率が共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて構成されていることを特徴とする面接合用ろう材シート。
  2. 前記ろう材が、0.004〜0.2質量%のBiを更に含有している請求項1に記載の面接合用ろう材シート。
  3. 二つのAl材料の接合面間に介装されて、それら二つのAl材料を、真空ろう付け法にてろう付け接合せしめる面接合用ろう材シートにして、
    2.5〜3.5質量%のSi及び0.4〜3.5質量%のMgを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなる心材の両面に、3.5〜6.5質量%のSiと共に、0.1〜1.6質量%のMgを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるろう材が、それぞれクラッドせしめられ、且つそれら両面のろう材のクラッド率が共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて構成されていることを特徴とする面接合用ろう材シート。
  4. 前記ろう材が、0.01〜0.2質量%のBiを更に含有している請求項3に記載の面接合用ろう材シート。
  5. 前記心材のクラッド率が、5〜30%である請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の面接合用ろう材シート。
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