JP2016043410A - フィレット形成用ろう材シート - Google Patents

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伊藤 泰永
Yasunaga Ito
泰永 伊藤
正一 迫田
Shoichi Sakota
正一 迫田
知樹 山吉
Tomoki YAMAYOSHI
知樹 山吉
裕介 大橋
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裕介 大橋
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Abstract

【課題】二つのAl材料のろう付け接合に際して、それらAl材料間に、均一なフィレットを確実に且つ精密に形成しつつ、健全な接合部を有利に形成せしめ得るフィレット形成用ろう材シートを提供すること。【解決手段】アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる心材14aの両面に、9〜13質量%のSiを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるろう材14bが、それぞれクラッドせしめられ、且つそれら両面のろう材14bのクラッド率が共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートを用いて、フィレット形成用ろう材シート14を構成した。【選択図】図1

Description

本発明は、フィレット形成用ろう材シートに係り、特に、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるAl材料のろう付け接合において、かかるAl材料の二つのものの間に配置されて、それら二つのAl材料を、効果的にろう付け接合すると共に、生じるろう付け接合部の周りに、フィレットを有利に形成し得るようにしたろう材シートに関するものである。
従来から、Al(アルミニウム及びアルミニウム合金を含む。以下同じ)材質の熱交換器や機械部品等、細かな接合部を多数有する製品の接合方法として、ろう付け接合が、広く採用されてきている。そして、このろう付け接合を行うためのろう材は、熱交換器や機械部品の構成部材と共に用いられ、そのような構成部材を構成する心材の片面或いは両面に、所定のろう材をクラッドしてなるブレージングシートの形態において、ろう付け接合部位に供給され、その溶融したろう材が、継手にフィレットを形成したり、密着した面を接合したりすることで、ろう付け接合を完成するようになっている。
このように、熱交換器や機械部品(以下、製品と呼称する)の主要な接合部は、その構成部材からのろう材供給によって、ろう付け接合されることとなるのであるが、そのようなろう材の存在しない部位に対して、ろう材を有しない部品を組み付けて、上記した主要接合部と同時に、加熱炉内で接合する場合においては、その接合部位に、ろう材を設置する必要が生じる。例えば、製品外部に円筒状の取付け部品を接合する場合においては、取付け部品と製品外部の接触部の周囲(隅肉継手)に、特開平5−8086号公報、特開平8−100963号公報、特開平9−1386号公報等に明らかにされている如き、ワイヤー状乃至は線状のろう材を、リング状に湾曲させて、設置したりすることが、行われているのである。なお、以下においては、そのような設置ろう材を、置きろう材と称することとする。
このように、一方のAl材料である製品に対して、他方のAl材料である円筒状の取付け部品を接合せしめるための置きろう材は、一般的に、ワイヤー状乃至は線状のろう材をリング状に成形してなる形態において、使用されることとなるのであるが、その全面(外周面)がろう材自身の酸化皮膜で覆われているところから、かかる酸化皮膜を完全に破壊しないと、溶融ろうの偏った流動を生じ易く、それによって、健全な接合部が得られ難くなる等という問題が、内在している。このため、フラックスを使用するろう付け法においては、置きろう材或いはAl材料の接合部位にフラックスを塗布して、接合性を確保することが行われているのである。具体的には、図4の(a)に示されるように、Al製品40の平坦な接合面42に対して、円筒状の取付け部品44の一方の端部を押し当てて、それらをろう付け接合するべく、所定のフラックスが外周面に塗布されて、フラックス層45が形成されてなる線状のろう材をリング状に成形してなるリング状置きろう材46が、それらAl製品40と取付け部品44との当接部の外周に配置せしめられて、加熱ろう付けされることにより、図4(b)に示される如く、それらAl製品40と取付け部品44との間に継手(ろう付け部乃至は面接合部)48が形成されると共に、そのような継手48の外側及び内側の周りに、外面が凹陥した形状のフィレット50がそれぞれ形成されることとなるのであるが、その際、リング状置きろう材46に存在する切れ目やフラックスの塗布ムラによって、継手48にフィレット切れ52が生ずる問題を多く発生せしめて、継手強度の低下や接合欠陥部位を通じての漏れ等の問題を惹起し、これが、継手48の信頼性を低下せしめる一つの要因となっているのである。
また、真空中においてろう付け接合を行う真空ろう付け法を採用したり、或いは不活性ガス中において、フラックスを使用しないで接合するろう付け(無フラックス若しくはフラックスレスろう付け)手法を採用した場合にあっては、置きろう材表面の酸化皮膜が充分に破壊され得ないために、図5に示されるように、面接合部(48)において、溶融したろうが偏って流動して、大規模な接合欠陥が惹起されたりする問題がある。即ち、図5の(a)の如く、Al製品40の平坦な表面42に対して円筒状の取付け部品44の一方の開口端部を押し当て、その周りに、フラックスの塗布されていないリング状の置きろう材54を配置して、真空中或いは不活性ガス中で加熱ろう付けしたときに、図5(b)に示されるように、それらAl製品40と取付け部品44との接合部(48)において、溶融したろうが偏って流動して、大規模な接合欠陥56を惹起せしめたり、継手48部位にフィレット50が全く形成されないフィレット切れ52を発生せしめたりするのである。このため、フラックスレスろう付けにおいて、置きろう材が使用されることは、極めて希なこととなっているのである。
そこで、上述の如き置きろう材を用いたろう付け法の欠点を補うために、ろう材単体ではなく、Al心材の両面にろう材をそれぞれクラッドしてなる両面ブレージングシートを用いることが考えられているのであるが、そのようなブレージングシートにおいては、ろう材と心材の界面が予め金属的に接合されているところから、他の部材との接合性がろう材単体の場合に比べて優れているという特徴を有しているものの、置きろう材としてのブレージングシートの使用には、次のような問題が内在している。
すなわち、両面ブレージングシートの製造に際しては、鋳造スラブ或いはそれを圧延してなる厚板の形態において、ろう材及び心材を準備した後、それらを、ろう材(皮材)、心材及びろう材(皮材)の順に積層して、450〜500℃の温度で加熱圧延することによって、積層材の界面が圧接されるようにするのであるが、その時、積層する皮材厚さが厚いと、圧延時に心材と皮材の界面が充分に摺動しないために、心材と皮材を接合するのが困難となるのである。このため、実際の工場生産で可能とされているクラッド率[(皮材厚さ/積層材全体の厚さ)×100%]は、一般的に20%未満であり、最大でも25%未満とされているのである。換言すれば、従来のブレージングシートでは、心材厚さが全体の50%以上を占めるような構成とされているのである。このため、そのようなブレージングシートがろう付けのために加熱されたときに、その構成成分であるろう材が溶融してからも、心材は残存し続けることとなり、図4や図5に示されるように、Al製品40と円筒状の取付け部品44との突き合わせ面間に形成される面接合部(48)から、その周りのフィレット50形成部に溶融ろうが引っ張られて、かかる面接合部(48)に接合欠陥を生じたり、逆に、面接合部(48)に溶融ろうが引き込まれて、フィレット切れ52を生じたりする問題が惹起され、また、フィレット50形成部において、心材が残存していると、そこで形成されるフィレット50の形状が不均一になる不具合も生じるようになるのである。
以上のように、置きろう材によるAl材料の接合には、様々な問題が内在しているのであり、そのため、例えば、取付け部品との間の熱伝導性を重視する精密な熱交換器の接合部や、接合欠陥による漏れが生じてはならないAl製品等の接合部においては、置きろう材を用いたろう付け接合手法は、採用され難いものであったのである。また、上記の接合欠陥による漏れが生じてはならない部位におけるろう付けは、Al製品との同時ろう付けではなく、Al製品のろう付け後にトーチろう付けによって取付け部品を接合することも考えられているのであるが、トーチろう付け作業には熟練を要し、接合品質を一定に保つのが困難であることに加えて、ろう付けが2工程となってコスト高を招くこととなるのであり、何れにせよ、置きろう材によって確実な接合を果たすことは、極めて困難なことであったのである。
特開平5−8086号公報 特開平8−100963号公報 特開平9−1386号公報
ここにおいて、本発明は、上述した従来のろう付け接合における置きろう材の欠点を解消するために為されたものであって、その解決課題とするところは、二つのAl材料のろう付け接合に際して、それらAl材料間に、均一なフィレットを確実に且つ精密に形成しつつ、健全な接合部を有利に形成せしめ得るフィレット形成用ろう材シートを提供することにある。
そして、本発明にあっては、かかる課題を解決するために、二つのAl材料間に配置されて、それら二つのAl材料をフラックスろう付け法にてろう付け接合すると共に、生じるろう付け接合部の周りにフィレットを形成するためのろう材シートにして、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる心材の両面に、9〜13質量%のSiを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるろう材が、それぞれクラッドせしめられ、且つそれら両面のろう材のクラッド率が共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて構成されていることを特徴とするフィレット形成用ろう材シートを、その要旨とするものである。
また、本発明にあっては、上記した課題を解決するために、二つのAl材料間に配置されて、それら二つのAl材料をフラックスレスろう付け法にてろう付け接合すると共に、生じるろう付け接合部の周りにフィレットを形成するためのろう材シートにして、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる心材の両面に、9〜13質量%のSiと共に、Li:0.004〜0.1質量%、Be:0.002〜0.05質量%及びMg:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも1種を含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるろう材が、それぞれクラッドせしめられ、且つそれら両面のろう材のクラッド率が共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて構成されていることを特徴とするフィレット形成用ろう材シートをも、その要旨とするものである。
このような本発明に従う、フラックスレスろう付け法に適用されるフィレット形成用ろう材シートの好ましい態様の一つによれば、前記ろう材は、0.004〜0.2質量%のBiを更に含有しており、また前記心材は、0.2〜1.6質量%のMgを含有するアルミニウム合金からなるものである。
さらに、本発明にあっては、上記した課題を解決するために、二つのAl材料間に配置されて、それら二つのAl材料を真空ろう付け法にてろう付け接合すると共に、生じるろう付け接合部の周りにフィレットを形成するためのろう材シートにして、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる心材の両面に、9〜13質量%のSiと共に、0.6〜2.0質量%のMgを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるろう材が、それぞれクラッドせしめられ、且つそれら両面のろう材のクラッド率が共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて構成されていることを特徴とするフィレット形成用ろう材シートをも、その要旨とするものである。
このような本発明に従う、真空ろう付け法に適用されるフィレット形成用ろう材シートの望ましい態様の一つによれば、前記ろう材は、0.01〜0.2質量%のBiを更に含有している。
なお、上述の如き本発明に従うフィレット形成用ろう材シートの有利な態様の一つによれば、前記心材のクラッド率は、5〜30%とされることとなる。
また、本発明にあっては、有利には、上述の如きフィレット形成用ろう材シートを用いて、前記フィレットの形成と共に、前記二つのAl材料の面接合が行われるようになっている。
さらに、本発明に従うフィレット形成用ろう材シートにあっては、有利には、前記二つのAl材料のうちの一方が筒状部材であり、該筒状部材の開口端部が、他方のAl材料の平坦な接合面に対してろう付け接合せしめられる形態において、有利に用いられることとなる。
そして、そのような本発明において好ましく採用されるろう付け接合形態において、本発明に従うフィレット形成用ろう材シートは、有利には、前記筒状部材が円筒体であるときに、その開口端部の形状に対応した円環板形状に形成されて、該円筒体の開口端部と前記他方のAl材料の平坦な接合面との間に介装せしめられて、用いられることとなる。
このように、本発明に従うフィレット形成用ろう材シートにあっては、Siの含有量が9〜13質量%であり、且つろう付け手法に応じて特定量の合金成分が含有せしめられたアルミニウム合金からなるろう材が、Al製の心材の両面にクラッドされてなると共に、それら両側のろう材のクラッド率が、共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて、構成されているところから、そのようなフィレット形成用ろう材シートを用いて、それを、接合されるべき二つのAl材料間に配置して、それら二つのAl材料をろう付け接合せしめることによって、ろう材表面の酸化皮膜の破壊を効果的に行いつつ、埋込み部品や取付け部品等のAl部材(一方のAl材料)を、ろう材層の存在しないAl相手材(他方のAl材料)に対して、精密且つ容易に接合することが出来ると共に、そこに生じたろう付け接合部の周りに、有効なフィレットを、フィレット切れ等の問題を惹起することなく、均一に且つ連続して形成することが出来ることとなったのである。
しかも、本発明に従うフィレット形成用ろう材シートによれば、フラックスろう付け法において、従来の線状乃至はワイヤー状のろう材単体からなる置きろう材に比べて、フラックスの塗布量を有利に減らすことが出来ることとなるために、フラックス残渣による外観の悪化を改善することが出来るという利点を有している他、従来のリング状置きろう材で問題となっていた、加熱中の変形による接合不良を回避することが出来、更には、真空ろう付け法やフラックスレスろう付け手法を採用した場合においても、埋め込み部品や取付け部品を健全に接合することが出来るという特徴を発揮する。
そして、かかる本発明に従うフィレット形成用ろう材シートを、置きろう材として用いることにより、二つのAl材料の接合が、精密且つ容易に実現可能となったところから、自動化された生産ラインでの適用も可能となり、またろう付け製品の設計自由度も広がるようになるために、熱交換器であれば熱交換性能の向上が効果的に図られ得、また構造用部品であれば疲労強度の向上等が有利に図られ得ることとなるのである。
本発明に従うフィレット形成用ろう材シートを用いたフラックスろう付け接合工程の一例を示す断面説明図であって、(a)は、接合されるべきAl材料間にろう材シートを配置して、組み付けてなる状態の積層体を示す断面説明図であり、(b)は、そのような積層体をろう付け接合して得られる接合体の断面説明図である。 本発明に従うフィレット形成用ろう材シートを用いた、フラックスを用いないフラックスレスろう付け接合工程の一例を示す断面説明図であって、(a)は、接合されるべきAl材料間に、ろう材シートを配置して、組み付けてなる状態の積層体を示す断面説明図であり、(b)は、そのような積層体をろう付け接合して得られる接合体の断面説明図である。 図1や図2に示される積層体をセットして、所定の加圧力を作用せしめ得る加圧治具の一例を示す部分断面説明図である。 置きろう材としてリング状のろう材単体を用いた、フラックスろう付け接合工程の一例を示す断面説明図であって、(a)は、接合されるべき二つのAl材料の突き合わせ部の外周部に位置するようにリング状のろう材単体を配置してなる状態の積層体を示す断面説明図であり、(b)は、そのような積層体をろう付け接合して得られる接合体の断面説明図である。 置きろう材としてリング状のろう材単体を用いた、フラックスを用いないフラックスレスろう付け接合工程の一例を示す断面説明図であって、(a)は、接合されるべき二つのAl材料の突き合わせ部の外周部位にリング状ろう材単体を配置してなる状態の積層体を示す断面説明図であり、(b)は、そのような積層体をろう付け接合して得られる接合体の断面説明図である。
ところで、Al製品の外側の平坦面に対して、円筒状や角筒状等の所定の筒状形状の取付け部品を当接せしめて、かかるAl製品の内側における部品のろう付けと同時に、ろう付け接合する場合において、それら取付け部品とAl製品の界面の面接合以上に、取付け部品とAl製品の接触部(接合部)の周囲に均一なフィレットを形成させることが重要となるのである。けだし、取付け部品の接合強度の確保や漏れ不良発生の防止の観点からして、接合部に形成されるフィレットの大きさや形状の均一性が重要となるからである。
そして、従来にあっては、上記のような接合を実施するために、先の図4や図5に明らかにせる如く、フィレットを形成したい部位である取付け部品44とAl製品40の接触部の外側にリング状に成形したろう材46,54を設置して、ろう付け接合が行われているのであるが、その際、フラックスろう付け法を採用すると、リング状ろう材46を覆っている酸化皮膜を充分に破壊するために、フラックス塗布量を多くする必要があるが、そうすると、接合部にはフラックス残渣が多くなって、外観を損ねるという問題があった。また、フラックスに塗布ムラが存在すると、ろう材の溶融によって生じる溶融ろうが、フラックス塗布部(接合の起点)に向けて優先的に流動するようになるところから、フラックスの塗布されていない部分において、フィレットの形成不良が生じる問題があった。なお、この塗布ムラの問題を回避するために、フラックスを内包したろう材の線材を使用することが考えられているが、そのようなフラックス内包ろう材線材では、次のような変形による接合不良発生のリスクが高まることとなる。
すなわち、ろう材の線材をリング状に成形すると、その突き合わせ部において不連続となるのであり、そのために、ろう付け加熱中において、リング状のろう材が、その不連続部を起点として接合部から離れるように変形して、フィレットの形成不良を招く恐れがある。この加熱中のリング状ろう材の変形には、線材の線径、設置状況、ろう付け条件等も影響するが、ろう材単体の線材よりもフラックス内包の線材の方が変形のリスクが高くなるために、フラックス内包の線材を置きろう材として使用する場合には、特に慎重な作業が要求されるのである。
また、真空ろう付け手法やフラックスレスろう付け手法に従って、リング状置きろう材を用いてAl製品の外側に円筒状の取付け部品を接合する場合には、前述のように、置きろう材表面の酸化皮膜が充分に破壊され得ないところから、接合部で溶融したろう材が偏って流動して、大規模な接合欠陥を生じたり、継手にフィレットを全く形成しない場合もあり、そのため、真空ろう付け手法やフラックスレスろう付け手法を採用する場合にあっては、置きろう材の使用は避けられてきているのである。
このように、リング状のろう材を配置して、炉内で製品本体と同時に接合することは難度が高く、そのため、前述せるように、ろう付け後の製品本体にトーチろう付け手法にて部品を取り付けるようにした方法が、一般的に採用されているのであるが、その場合において、ろう付け工程が2工程となって、コスト高を招くことに加えて、トーチろう付け時の局部加熱によって、製品本体に歪みを生じる危険性もあるところから、その適用範囲も極めて限定されたものとなっているのである。
これに対して、本発明にあっては、上述の如き円筒状の取付け部品のAl製品外側への接合の場合にあっては、リング状ろう材ではなく、そのような取付け部品の端部の形状に対応したドーナツ板形状(円環板形状)に成形されたブレージングシートにて構成されるフィレット形成用ろう材シートが用いられて、それが、円筒状の取付け部品とAl製品外側の接合面との間に介在せしめられることとなるのであるが、そのようなブレージングシートは、その両面に高Si含有量のアルミニウム合金からなるろう材(皮材)が35%以上という高クラッド率にてクラッドされてなるものであり、しかも、それら両側のろう材の片面が、心材に接合されているところから、フラックスろう付け法に用いられたとき、リング状ろう材に比べて、少量のフラックスでの接合が可能となって、偏ったろう材の流動が抑制されることとなるのであり、以て、フラックスの塗布ムラによるフィレットの形成不良も発生し難くなるのである。そして、重要なことは、フィレットを形成させるための充分なろう材が存在すると共に、フィレット中に溶け残った心材(より正確には、溶融ろう中に溶解しきれなかった心材)が残存しないことである。かかる溶け残った心材は、前述せるように、接合部間での溶融ろうの引き合いを誘発して、接合不良を発生させ、フィレットの形状を乱す原因にもなるのである。このため、本発明にあっては、必要とされるろう材量の確保と、心材の溶け残り防止の両方を満足させるべく、ろう材中のSi含有量を9〜13質量%に規定すると共に、心材両側のろう材のクラッド率を、それぞれ35%以上としたのである。
また、フラックスレスろう付け手法や真空ろう付け手法を適用する場合において、従来の如きリング状のろう材では、接合性が劣るために、均一なフィレットの形成は困難であり、従って、取付け部品の接合部にフィレットを形成させる目的で、置きろう材が使用されることはないが、本発明に従うブレージングシートからなるろう材シートを所定の形状に形成して、取付け部品とAl製品との間に配置するようにすれば、フラックスレスろう付けや真空ろう付けにおいても、健全なフィレットを有利に形成することが出来るのである。けだし、本発明に従うろう材シートにおいては、ろう材の片面が心材に接合されており、更には、不連続部が生じない形態とすることが出来るところから、偏ったろう材の流動や、加熱中の変形による不具合が生じ難くなっているからである。
ここで、フラックスろう付けに用いられる本発明に従うフィレット形成用ろう材シートを与えるブレージングシートにおいて、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるAl心材の両面にクラッドせしめられるろう材は、9〜13質量%のSiを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるものであって、そのSi含有量が9質量%未満となると、溶融ろう中へのAl心材の溶解量が少なくなるために、残存したAl心材によって、フィレット形状が不均一になったり、接合欠陥を生じ易くなる問題がある。そして、そのようなSi含有量が13質量%を超えるようになると、ブレージングシートの製造に際しての圧延時に割れが惹起され易く、ブレージングシート自体の製造が困難となる問題を惹起する。
なお、上述の如きフィレット形成用ろう材シートにおいて、接合の起点の増加や接合性の向上等の目的をもって、ろう材中のSi粒子径を調整したり、ろう材中にLi、Be、Ca、Mg、Bi等を微量添加したり、更に、ろう材の融点を調整するために、ろう材中にCuやZnを添加する等の工夫を施すことも可能である。これらの手段は、ろう材中のSi含有量の調整や、後述するクラッド率の調整による本発明の効果を揺るがすものではなく、接合の目的に応じて施される副次的な手段となるものである。
特に、フラックスレスろう付けに用いられる本発明に従うフィレット形成用ろう材シートを与えるブレージングシートにおいて、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるAl心材の両面にクラッドせしめられるろう材は、前述の如く、9〜13質量%のSiを含有すると共に、Li:0.004〜0.1質量%、Be:0.002〜0.05質量%及びMg:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも1種を含有するアルミニウム合金であって、それらの合金成分の含有によって、ろう材表面の酸化皮膜の破壊効果が、効果的に高められ得て、健全なろう付け接合が、有利に実現され得ることとなる。
なお、かかるろう材中の合金成分であるLi、Be及びMgの含有量が、それらの下限よりも少なくなると、ろう材表面の酸化皮膜の破壊効果が乏しくなって、本発明の目的を充分に果たし難くなる問題を惹起し、またそれらの合金成分の含有量が、上記した上限よりも多くなると、それら合金成分の酸化物たるLi2O やBeOやMgOが過剰に形成されて、接合性が悪くなる等の問題を生じるようになる。
また、かかる合金成分(Li、Be、Mg)と共に、更にBiを含有せしめてなるAl−Si合金にてろう材を構成するようにすれば、溶融ろうの表面張力を有利に低下せしめ得て、フィレット形成能を向上させることが出来る。その際、Biの含有量が0.004質量%未満では、表面張力の低下効果が乏しくなって、フィレット形成能の向上効果を期待することが出来ず、また0.2質量%を超えるようになると、ろう材の変色が著しくなり、フィレット形成能の向上効果も、認められなくなるところから、Biは、0.004〜0.2質量%の範囲内において含有せしめることが望ましい。
さらに、かくの如きフラックスレスろう付けに用いられるフィレット形成用ろう材シートを与えるブレージングシートを構成する心材は、Mgを合金成分として含有するアルミニウム合金からなるものであることが望ましく、これによって、ろう材表面の酸化皮膜の脆弱化を促進して、その破壊を容易にすることが出来る。なお、このアルミニウム合金中のMg含有量が0.2質量%未満では、ろう材表面の酸化皮膜の脆弱化の促進効果が乏しくなり、また1.6質量%を超えるようになると、ろう材表面に酸化物であるMgOが過剰に形成されて、接合性が悪くなるところから、0.2〜1.6質量%の範囲内のMg含有量が好適に採用されることとなる。
加えて、本発明に係る、真空ろう付け法が適用されるフィレット形成用ろう材シートを与えるブレージングシートにおいて、Al心材の両面にクラッドせしめられるろう材は、9〜13質量%のSiと共に、0.6〜2.0質量%のMgが、合金成分として含有せしめられてなるアルミニウム合金にて構成されており、これによって、ろう材表面の酸化皮膜の破壊効果を効果的に高めて、健全なろう付け接合性やフィレットの形成が有利に達成され得ることとなる。なお、かかるMgの含有量が0.6質量%未満となると、ろう材表面の酸化皮膜の破壊効果が乏しく、また2.0質量%を超えるようになると、溶融ろうの表面張力が過度に低下して、接合の相手材上を濡れ広がるようになり、フィレット形成に支障をきたすようになる。
なお、このようなSiと共にMgの所定量を含有せしめてなるろう材には、更に、Biを合金成分として含有せしめることが望ましく、これによって、フィレット形成能を有利に向上させることが出来る。なお、このBiの含有量が0.01質量%未満では、フィレット形成能の向上効果が乏しく、また0.2質量%を超えるようになると、ろう材の変色が著しくなり、フィレット形成能の向上効果も認められなくなるところから、0.01〜0.2質量%の範囲内においてBiを含有せしめることが望ましい。
しかも、本発明にあっては、上記したブレージングシートを構成するAl心材の両面にそれぞれ設けられるろう材(皮材)は、何れも、35%以上のクラッド率において、Al心材に対して一体的に設けられている必要があり、これに反して、そのようなろう材のクラッド率が35%よりも低くなると、フィレット中に溶け残った心材が残存して、接合不良を発生させたり、フィレットの形状を乱す原因となる等という問題が惹起されるようになるのである。
ところで、本発明に従うフィレット形成用ろう材シートを構成するアルミニウムブレージングシートにおいて、上述したろう材が両面にクラッドせしめられるAl心材は、従来からブレージングシートにおける心材として用いられている、公知のアルミニウム又はアルミニウム合金からなる材質にて形成され得るものであって、例えば、JIS呼称の1000系アルミニウムや2000系〜8000系の各種のアルミニウム合金が、その材質として用いられることとなる。また、そのようなAl心材は、アルミニウムブレージングシート中において、その両面に、上記したろう材からなる皮材が一体的にクラッドせしめられて、それら両側の皮材間で連続的に広がる1枚のシート状形態において存在せしめられるものであって、そのような心材のクラッド率は、本発明にて規定される皮材(ろう材)のクラッド率を考慮して適宜に選定されることとなるが、一般に、5〜30%の範囲内とされることとなる。なお、このAl心材のクラッド率が5%よりも低くなると、ろう材とのクラッド圧延時において、Al心材が破断する恐れがあり、そしてそのために、アルミニウムブレージングシート中において1枚の連続したシート状物として存在させることが困難となる問題があり、また30%を超えるようになると、心材の両面に形成されるろう材(皮材)のクラッド率が35%未満となるため、ろう付け接合に際して、溶融ろうの流動に問題を生じるようになる。
なお、上述の如き本発明に従うフィレット形成用ろう材シートを構成するアルミニウムブレージングシートは、心材の両面にそれぞれ形成されるろう材からなる皮材層のクラッド率が、35%以上となるところから、従来のクラッド手法では、その製造が困難となるものである。このため、本発明にあっては、本発明者らの提案になる、以下の如きクラッド材の製造方法を用いて、目的とするアルミニウムブレージングシートが製造されることとなるのである。例えば、特開2013−220435号公報に明らかにせるように、心材とろう材との間に低融点の金属粉末又は板材を介在せしめて、加熱接合した後、熱間クラッド圧延することにより、アルミニウムクラッド材を得る方法が採用され得る他、特願2014−71289号にて提案せるように、心材とろう材との接合界面に、平織金網や綾織金網等の、縦線と横線の交差部にて構成される点状厚肉部を有するAl接合補助部材を介在せしめて、熱間クラッド圧延することにより、クラッド材を得る手法が採用され、更に、特願2014−101132号に明らかにしたように、心材とろう材との間に、前述の如きAl接合補助部材と共に、軟質のAl薄板を介在せしめて、それらの積層形態において、熱間クラッド圧延を行う手法も、有利に採用され得るのである。そして、これらのクラッド手法を採用することによって、目的とするアルミニウムブレージングシートを工業的に安定して製造することが出来ることとなる。勿論、本発明に従うアルミニウムブレージングシートは、上述の如きクラッド方法に何等限定されるものではなく、ろう材のクラッド率を35%以上となし得る如何なるクラッド手法も、採用可能である。
そして、上述の如くして得られる本発明に従うフィレット形成用ろう材シートは、接合されるべき二つのAl材料の形状や寸法等に応じて、適宜の厚さにおいて製造されることとなるが、一般に、0.05〜3mmの範囲内の厚さにおいて、製造されるものである。中でも、自動車の熱交換器用として、熱交換器部材のろう付けには、0.05〜1.6mmの厚さのろう材シートが、有利に用いられることとなる。
また、本発明に従う所定のフィレット形成用ろう材シートを用いて、二つのAl材料をろう付け接合するに際しては、公知のフラックスろう付け法、フラックスレスろう付け法又は真空ろう付け法からなるろう付け手法が、かかるろう材シートに応じて選択されるところであって、その所定のろう材シートを二つのAl材料間に介装してなる積層形態において、例えば、ろう付け炉中において、フッ化物系等のフラックスを用いた通常のフラックスろう付け、フラックスを用いることなく、ろう付けを行う不活性ガス雰囲気中のろう付け、或いは真空ろう付けが、実施されるのである。また、そのようなろう付け操作においては、本発明に従うフィレット形成用ろう材シートの両側に、ろう付けされるべき二つのAl材料を重ね合わせてなる積層体を、適当な治具にて挟圧することにより、所定の加圧力を作用せしめた状態下において、加熱が施され、以てそれら二つのAl材料のろう付け接合が、実現されるのである。
例えば、図1の(a)に示される如く、一方のAl材料である円筒状の取付け部品10を、他方のAl材料であるAl製品12の平坦な外表面に対して、本発明に従うフィレット形成用ろう材シート14用いて、フラックスろう付け手法により、ろう付け接合する場合において、ろう材シート14は、中心部が貫通孔15とされた、所定幅の円環板形状を呈するドーナツ板形態において成形されており、取付け部品10の端部とAl製品12との間に配置されて、それらにより挟持されてなる形態において、ろう付け用積層体16とされている。ここで、ろう材シート14は、本発明に従って、心材14aの両側にろう材14bが所定厚さでそれぞれ一体的にクラッドされてなる両面ブレージングシートにて構成されており、その全表面に、少量のフラックスが塗布されて、フラックス層18が形成されている。そして、そのようなろう付け用積層体16が、従来と同様な加熱ろう付け操作によって、ろう材シート14における酸化皮膜の効果的な破壊や、そこで生じる溶融ろうの流動、更には心材の有効な溶融に基づいて、図1の(b)に示される如く、取付け部品10と製品12との接合面間に健全な接合部20を形成しつつ、そのような接合部20の外側の周囲と共に、内側の周囲にも、均一で、有効なフィレット部22が、連続して形成されることとなるのである。
同様に、フラックスレスろう付け手法や真空ろう付け手法を採用する場合にあっても、図2の(a)に示される如く、ろう付け用積層体16を構成する、置きろう材としてのろう材シート14の表面には、フラックスが塗布されていない状態下において、そのようなろう付け用積層体16が、不活性ガス中において或いは真空中において、加熱ろう付け処理されることとなるのであり、これによって、図2の(b)に示される如く、均一なフィレット部が、外周部及び内周部にそれぞれ連続的に形成されてなる接合部20が、形成されるようになるのである。
なお、それら図1や図2に示されるろう付け用積層体16には、ろう付け処理時において、適当な加圧力が作用せしめられることとなるが、そのような加圧力は、例えば、図3に示される如き、加圧治具30を用いて、加えられることとなる。即ち、加圧治具30の上下の挟圧プレート32,34間に、ろう付け用積層体16を挟み込んで、ボルト36とナット38とを用いて挟圧することにより、所定の押圧力の下でのろう付け処理が容易に実施し得るようになっている。なお、上側の挟圧プレート32には、貫通孔32aが設けられており、この貫通孔32aを通じて、円筒状の取付け部品10の内部空間が外部に連通せしめられるようになっている。
このように、本発明に従うブレージングシートからなるろう材シート14を用いることによって、円筒状の取付け部品10と接合相手材となるAl製品12との接合部20の周囲に、フィレット22が効果的に形成せしめられ得ると同時に、それら取付け部品10とAl製品12との接合面(面接合部)を接合することも可能となるのであり、その際、図示のように、取付け部品10の円筒状の内面側にも、フィレット22が有利に形成されることとなるのである。
なお、かくの如き本発明に従うフィレット形成用ろう材シートを用いることによる面接合や、内外周部におけるフィレット22の形成が健全に進行する理由は、現在までのところ、以下のように考えられている。即ち、加熱中の被加熱体の温度は、外面側の方が高くなるところから、上述の如き取付け部品10と製品12との接合は、外面側のフィレット22の形成→面接合部20の接合(形成)→内面側のフィレット22の形成の順に進展することとなり、そのため、先ず、取付け部品10の外面側でのフィレット形成が、取付け部品10を囲うように進行し、続いて、面接合部20で溶融したろうの流動は、ろう材シート14における心材14aのみならず、外面側のフィレット22によっても偏った流動が抑制されることになり、以て面接合部20で溶融したろうは、そのまま接合領域の拡大に有効に消費されるようになる。そして、面接合部20での接合が健全に進行することで、取付け部品10の内面側のフィレット22の形成も、健全に且つ有利に進行するようになるものと推測されている。
以上、本発明に従うフィレット形成用ろう材シートについて具体的に説明してきたが、本発明が、例示の具体的な態様に係る詳細な記述によって、何等限定的に解釈されるものでは決してなく、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることが、理解されるべきである。
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことも、また、理解されるべきである。
図3に示される如き加圧状態下において、ろう付け接合を行うべく、先ず、ろう付け接合されるべき一方のAl材料である円筒状の取付け部品(10)として、JIS A1100材質のAl押出管を、外形:80mm、肉厚:3mm、長さ:40mmの寸法において準備すると共に、ろう付け接合されるべき他方のAl材料である相手材(Al製品12)として、厚さ:2mmのJIS A1050材質のAl冷延板を、160mm×160mmの大きさに切断したものを準備した。なお、Al押出管の調質はH112であり、Al冷延板の調質はO材とされた。
また、それぞれのろう付け試験において用いられる各種のろう材シート(14)を、下記表1に示される合金成分を含有するアルミニウム合金からなるろう材及び心材を用いて、板厚:0.2mmのブレージングシートとして、それぞれ準備した。具体的には、それぞれのアルミニウム合金からなる鋳塊から削り出された、厚さ:5mm〜25mmのAl心材と、それぞれのアルミニウム合金からなる鋳塊を面削した後に熱間圧延して得られた、厚さが12.5mm〜22.5mmのろう材とを、下記表1に示されるクラッド率を与えるように組み合わせ、それらAl心材とろう材の界面に、Al−6%Si−15%Zn合金の粉末(粒径:70〜150μm)を均一に分散、介在せしめてなる形態において、ろう材/Al心材/ろう材の構成からなる積層物を治具にて拘束した状態で、加熱炉において565℃×1時間の加熱を実施して、それらAl心材とろう材との界面を溶融拡散接合した後、480℃で熱間圧延し、更に冷間で0.2mmの厚さまで圧延した。そして、かかる冷間圧延の後に、360℃×2時間の加熱を実施して、調質を行い、O材とした後、外径:82mm、内径:72mmの円環板形状に加工して、目的とするドーナツ板状のろう材シート(14:ブレージングシート)を得た。
さらに、比較のための置きろう材として用いられるリング状ろう材(46,54)にあっても、下記表2に示されるアルミニウム合金から得られた線径が1mmのAl線材(H調質)を、内径:約80mmとなるようにリング状に加工したもの(端部は突き合わせ)を準備すると共に、下記表2に示されるアルミニウム合金をろう材及び心材として用いて、上記と同様なクラッド圧延を実施して、得られたブレージングシートから、外径:82mm、内径:72mmの円環板形状のろう材シート(14)を準備した。その際、ろう付け試験12及び16において用いられるブレージングシートのクラッド圧延に際して、割れが発生し、目的とするブレージングシートを得ることが出来なかったために、その後のろう付け試験に進むことが出来なかった。
Figure 2016043410
Figure 2016043410
そして、上記のようにして準備された、Al押出管(10)とAl冷延板(12)、及び置きろう材としてのろう材シート(14)又はリング状のろう線材(46,54)は、全て、アセトンで脱脂処理して、次のろう付け試験に供するようにした。なお、ろう付け試験は、フッ化物系フラックスろう付け、真空ろう付け、又は窒素ガス中でのフラックスレスろう付けを採用し、以下の如くして行った。
先ず、フッ化物系フラックスろう付けにおいては、置きろう材として用いられるろう材シート(14)の表面に、下記表3に示される塗布量となるように、フッ化物(KF−AlF3 )系フラックスの水分散液を塗布して、乾燥せしめた後、そのフラックス塗布ろう材シートを、図1の如く、Al押出管(10)とAl冷延板(12)との間に配置して、積層体(16)と為して、図3に示される如く、加圧治具(30)に組み付けた。また、リング状ろう材(46)におけるフラックスの塗布も、上記と同様にして行い、図4に示される積層構造において、上記と同様に加圧治具(30)に組み付けた。なお、それら置きろう材におけるフラックスの塗布量は、前記乾燥後のフラックス塗布ろう材シート又はリング状置きろう材を電子天秤を用いて計量し、その塗布量の誤差が±10%以内となるように、調整した。そして、ろう付け処理は、加圧治具(30)にセットされて、所定の加圧力が作用せしめられている積層体(16)を、窒素ガス中において600℃まで加熱することにより、実施した。なお、室温から600℃までの昇温時間は約20分とし、ろう付け時の炉内雰囲気中の酸素濃度は16〜20ppmとした。
また、真空ろう付けにおいては、上述の如きフラックスの塗布を行うことなく、Al押出管(10)とAl冷延板(12)とをろう材シート(14)を介して組み付け、ろう付け用積層体(16)とした後、図3に示される如く、加圧治具(30)にセットして、所定の加圧力が積層体(16)に作用せしめられてなる状態下において、真空炉内に収容せしめ、そしてかかる真空炉中において600℃まで加熱することにより、ろう付け処理を実施した。なお、室温から600℃までの昇温時間は約40分とし、ろう付け時の炉内圧力は6〜9×10-3Paとした。
さらに、窒素ガス中のフラックスレスろう付けにおいては、Al押出管(10)やAl冷延板(12)及びろう材シート(14)に対して、それぞれ、2%フッ酸溶液に60秒間浸漬することからなるエッチング処理を施し、そしてエアーブローによる乾燥の後に、フラックスを塗布することなく組み付けて、ろう付け用積層体(16)を形成した後、図3に示される如く、加圧治具(30)にセットして、所定の加圧力を作用せしめてなる状態下において、上記したフッ化物系フラックスろう付け処理の場合と同様な条件下で、窒素ガス炉中で加熱することにより、ろう付け処理を実施した。
そして、かくして得られた各種のろう付け製品について、その接合状態を、フィレット形成形態についての外観判定及び接合部の超音波検査(非破壊検査)によって評価し、その結果を、下記表3に示した。
Figure 2016043410
かかる表3の結果から明らかな如く、本発明に従う各種ろう材シート(14)を用いて実施されたろう付け試験1〜8にあっては、フッ化物系フラックスろう付け法、真空ろう付け法、及び窒素ガス中のフラックスレスろう付け法の何れのろう付け手法においても、Al押出管(10)の接合部(20)の外周及び内周において、それぞれ連続的に延びる均一なフィレット(22)が、健全に形成されており、また接合部(20)においても、欠陥は何等認められなかった。その結果は、表3において、○印にて示されている。
これに対して、置きろう材として、アルミニウム合金ろうの線材をリング状に加工したものにフラックスを3g/m2 塗布してなるリング状ろう材(46)を用いたろう付け試験9においては、フィレット切れ(52)が多く発生し、またフラックスの塗布量を7g/m2 に増加したろう付け試験10においても、フィレット切れ(52)が生じた。このように、Alろうの線材は、全表面が酸化皮膜で覆われているために、フラックス塗布量が少ないと、フィレット切れ(52)が生じ易く、またフラックス塗布量を多くしても、溶融ろうが偏って流動し、フィレット切れ(52)を発生したり、フィレット(50)形状が不均一と成り易い。この問題は、フラックスレスろう付けにおいては、更に顕著となるものであり、真空ろう付け手法を採用するろう付け試験14では、フィレット切れ(52)が多く発生し、更に窒素ガス中でのフラックスレスろう付け手法を採用するろう付け試験17においては、フィレット(50)が全く形成されなかった。
また、ろう付け試験11においては、ブレージングシートを加工して得られた円環板形状のろう材シート(14)が用いられているものの、ブレージングシートを構成するろう材(14b)中のSi含有量が7.5質量%と少ないために、ろう材(14b)中への心材(14a)の溶解不足によって、心材(14a)が接合部(20)に残存し、フィレット(50)形状が不均一となるものであった。しかし、面接合部(48)においては、ほぼ良好な接合状態であることを認めたが、これは、前述せるように、Al押出管(10)の周囲でのフィレット形成が優先的に進行するために、面接合部(48)においては、溶融ろうの偏った流動が生じないためであると考えられる。また、ろう付け試験13においては、ろう材量の不足によって心材が溶け残り、フィレット(50)の形状が不均一となったことに加えて、面接合部(48)の一部にも欠陥が認められた。更に、真空ろう付け法を採用したろう付け試験15では、ろう材中のMg含有量の不足によって、ろう材表面の酸化皮膜破壊が不充分となって、フィレット切れ(52)が多く発生したが、面接合部(48)については、ろう付け試験11と同様な理由により、ほぼ良好な接合状態を得ることが出来た。なお、Si含有量が15質量%と多いろう材を用いてブレージングシートの製造を試みたろう付け試験12や、Mg含有量の多いろう材を用いてブレージングシートの製造を試みたろう付け試験16の場合にあっては、何れも、クラッド圧延時に割れが発生して、目的とするブレージングシートを得ることが出来なくなったために、その後のろう付け試験を実施することが出来なかった。
10 取付け部品 12 Al製品
14 ろう材シート 14a 心材
14b ろう材 16 積層体
20 接合部 22 フィレット部
30 加圧治具 32,34 挟圧プレート
32a 貫通孔 36 ボルト
38 ナット

Claims (10)

  1. 二つのAl材料間に配置されて、それら二つのAl材料をフラックスろう付け法にてろう付け接合すると共に、生じるろう付け接合部の周りにフィレットを形成するためのろう材シートにして、
    アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる心材の両面に、9〜13質量%のSiを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるろう材が、それぞれクラッドせしめられ、且つそれら両面のろう材のクラッド率が共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて構成されていることを特徴とするフィレット形成用ろう材シート。
  2. 二つのAl材料間に配置されて、それら二つのAl材料をフラックスレスろう付け法にてろう付け接合すると共に、生じるろう付け接合部の周りにフィレットを形成するためのろう材シートにして、
    アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる心材の両面に、9〜13質量%のSiと共に、Li:0.004〜0.1質量%、Be:0.002〜0.05質量%及びMg:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも1種を含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるろう材が、それぞれクラッドせしめられ、且つそれら両面のろう材のクラッド率が共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて構成されていることを特徴とするフィレット形成用ろう材シート。
  3. 前記ろう材が、0.004〜0.2質量%のBiを更に含有している請求項2に記載のフィレット形成用ろう材シート。
  4. 前記心材が、0.2〜1.6質量%のMgを含有するアルミニウム合金からなるものである請求項2又は請求項3に記載のフィレット形成用ろう材シート。
  5. 二つのAl材料間に配置されて、それら二つのAl材料を真空ろう付け法にてろう付け接合すると共に、生じるろう付け接合部の周りにフィレットを形成するためのろう材シートにして、
    アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる心材の両面に、9〜13質量%のSiと共に、0.6〜2.0質量%のMgを含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなるろう材が、それぞれクラッドせしめられ、且つそれら両面のろう材のクラッド率が共に35%以上とされてなるアルミニウムブレージングシートにて構成されていることを特徴とするフィレット形成用ろう材シート。
  6. 前記ろう材が、0.01〜0.2質量%のBiを更に含有している請求項5に記載のフィレット形成用ろう材シート。
  7. 前記心材のクラッド率が、5〜30%である請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のフィレット形成用ろう材シート。
  8. 前記フィレットの形成と共に、前記二つのAl材料の面接合を行うために用いられる請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のフィレット形成用ろう材シート。
  9. 前記二つのAl材料のうちの一方が筒状部材であり、該筒状部材の開口端部が、他方のAl材料の平坦な接合面に対してろう付け接合せしめられる請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のフィレット形成用ろう材シート。
  10. 前記筒状部材が円筒体であると共に、かかる円筒体の開口端部の形状に対応した円環板形状に形成されて、該円筒体の開口端部と前記他方のAl材料の平坦な接合面との間に介装せしめられて、用いられる請求項9に記載のフィレット形成用ろう材シート。
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