JP5889705B2 - アルミニウム材のフラックスレスろう付方法およびろう付構造体の製造方法 - Google Patents

アルミニウム材のフラックスレスろう付方法およびろう付構造体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、非酸化性雰囲気中でフラックスを使用せずにろう付可能なアルミニウム材のフラックスレスろう付方法およびろう付構造体の製造方法に関する。
自動車用熱交換器をはじめとしたろう付分野においては、現在、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でノコロック(登録商標)フラックスなどの非腐食性のフッ化物系フラックスを用いてろう付されるか、ろう材に0.5〜1.5質量%程度のMgを添加して真空雰囲気下でろう付される工法が主流となっている。
しかしながら、上記フッ化物系フラックスを用いた工法においては、薄肉高強度化に有効なMg添加アルミニウム合金を被接合部材に使用した場合、フッ化物系フラックスと合金中のMgとの反応によりMgFが形成されてフラックスが不活性化され、この結果、ろう付性が著しく低下するという問題がある。
これに対し、量産性にも配慮した、大気圧下で行うフラックスレスろう付方法も開発が進められている。しかし、これらのフラックスレスろう付方法では、表面処理、材料仕様、ろう付の工法などに特殊なものが採用されており、コスト、品質安定性に問題があるものが多い。このため、大気圧下で行うフラックスレスろう付方法は、本格的に実用化されるには至っていない。
例えば、特許文献1には、大気中でかつ無フラックス条件下でろう付を可能にするべく、複数のアルミニウム母材の重ね合わせ界面に予めアルミニウム薄合わせ板材を挿入してろう付を行う場合において、アルミニウム薄合わせ板材として、ろう材上に皮材が形成された5層または3層構造のものを用いてろう材の酸化防止を図ることが記載されている。しかしながら、この方法では、ろう材上に酸化防止のための皮膜を別個形成したクラッド材を作製する必要があるため、材料コストが高くなるという問題がある。また、最表面から第2層に位置するろう材は、ろう付過程で最表面層を溶かして染み出すことで接合面に溶融ろうが供給されることになる。しかし、不均一な加圧などにより接合面内で最表面層の溶融状態にばらつきを生じると、接合面内に未接合部を生じる問題がある。
上記フラックスレスろう付方法の問題を解消するため、特許文献2には、ろう材に添加するMg量を適正な範囲に収めることにより、設備の導入コストや工程コストを発生させず、減圧を伴わない雰囲気下でフラックスを使用せずにろう付を可能にする方法が提案されている。
特許3701847号公報 特許4547032号公報
しかしながら、上記特許文献2に記載される従来のフラックスレスろう付方法では、安定したろう付性を得るためには相当量のMgをろう材に添加する必要がある。また、このMgを含む高強度なろう材を芯材へクラッドする材料の生産面においては、Mgを含まないノコロックろう付用のクラッド材を作製する場合に比べてやや生産性に劣る問題がある。
また、クラッド材を用いる場合には、生産品質管理上の要件からろう材のクラッド率に制約があり、例えば、母材厚みに対して非常に少ないろう材量を供給することが困難であるという問題もある。
これに対して、ろう材部分のみを取出してAl−Mg−Si合金のろう材シートを用いる方法が考えられる。しかし、この方法では、Mgを含むろう材シートの両面が接合面となり、接触密着部においても厳密には雰囲気に暴露される。このため、ろう付熱処理過程において、ろう材シートの両表面で接合阻害要因であるMgO膜が成長し、その結果、ろう付品質が低下するという問題がある。
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、材料コストの上昇を伴うことなく、信頼性に優れる安定した接合状態を得ることができるアルミニウム材のフラックスレスろう付方法およびろう付構造体の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法のうち、第1の本発明は、質量%でMgを0.15〜1.0%含有するMg含有アルミニウム合金部材と、質量%でSiを5.0〜13.0%、Mgを0.1〜3.0%含有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金ろう材シートとを用いるアルミニウム材のフラックスレスろう付方法であって、前記Mg含有アルミニウム合金部材および前記アルミニウム合金ろう材シートのろう付前表面の酸化皮膜の平均膜厚が15nm以下であり、かつ、前記酸化皮膜中の酸化マグネシウム膜の平均膜厚が2nm以下であり、減圧を伴わない酸素濃度50ppm以下の非酸化性雰囲気中または大気圧から0.1Paの圧力範囲下の酸素濃度50ppm以下の非酸化性雰囲気中で、前記Mg含有アルミニウム合金部材と前記アルミニウム合金ろう材シートとろう付対象部材とを面加圧25gf/cm以上で接触密着させ、接触密着部において前記Mg含有アルミニウム合金部材と前記ろう付対象部材とをろう付により接合することを特徴とする。
第2の本発明のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法は、前記第1の本発明において、前記アルミニウム合金ろう材シートの表面において、円相当径0.25μm以上のSi粒子が1mm当たり20,000個以上存在することを特徴とする。
第3の本発明のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法は、前記第1または第2の本発明において、前記Mg含有アルミニウム合金部材が、質量%で、さらにMn:0.2〜2.5%、Cu:0.05〜1.0%、Si:0.1〜1.0%の内1種または2種以上を含有することを特徴とする。
第4の本発明のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記ろう付対象部材が、Mgを添加していないAl材であることを特徴とする。
第5の本発明のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法は、前記第4の本発明のいずれかにおいて、前記ろう付対象部材が、アルミニウム純度が99.9%以上の純アルミニウムであることを特徴とする。
第6の本発明のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法は、前記第4の本発明のいずれかにおいて、前記ろう付対象部材が、質量%で、Mn:0.2〜2.5%、Cu:0.05〜1.0%、Si:0.1〜1.0%の内1種または2種以上を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有することを特徴とする。
第7の本発明のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法は、前記第1〜第6の本発明のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法により、ろう付構造体を構成する前記Mg含有アルミニウム合金部材と前記ろう付対象部材とを接合することを特徴とする。
以下に、本発明で規定する成分などの限定理由について説明する。なお、各成分量は、いずれも質量%で示される。
1.アルミニウム合金ろう材シート
本発明では、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金ろう材シートを用いる。
Si:5.0〜13.0%
Siは、Alに含有することにより、その融点を低下させ、ろう付温度にて溶融して所定の継手を形成する基本的な元素である。また、ろう材表面に存在するSi粒子上では、アルミニウムの緻密な酸化皮膜の成長が抑制され、酸化皮膜の欠陥部が生成する。すなわち、アルミニウム材料表面の酸化皮膜がろう付熱処理中に厚膜となっても、Si粒子の周辺から溶融ろうの染み出しが発生し、この部位を起点に酸化皮膜の破壊や分断が進み、溶融ろうの濡れ性が向上する。これにより、安定した接合状態を得ることが可能となる。
これら作用を得るため、Siの含有量は、5.0%以上が必要であり、5.0%未満では生成する液相量が不足し十分な流動性が得られない。一方、13.0%を超えると初晶Siが急激に増加して加工性が悪化するとともに、ろう付時に接合部のろう侵食が著しく促進される。これらのため、Si含有量は、5.0〜13.0%とする。なお、同様の理由により、Siの含有量の下限を6.5%、上限を11.0%とするのが望ましい。
Mg:0.1〜3.0%
Mgは、材料表面に生成する緻密な酸化皮膜(A1)を還元分解し、微細な粒子状の酸化物(MgAl)に変化させることで、ろうの濡れ性や流動性を向上し、もって接合率を向上する効果を有する。また、Mgは、酸化皮膜を還元分解することにより、接合界面での金属/金属接合面積を増加して接合強度を向上する効果を有する。これら作用を十分に得るために0.1%以上の含有が必要である。0.1%未満では、酸化皮膜の還元、分解作用が不十分となるため、十分な接合状態が得られない。一方、3.0%を超えると、ろう材の強度が向上して圧延性が悪化し、また、Mgの酸化皮膜が厚く成長しやすくなってろう付性が阻害される。このため、Mgの含有量は、0.1〜3.0%とする。なお、同様の理由により、Mgの含有量は、下限を0.25%、上限を2.0%とするのが望ましい。
Al−Mg−Si系のアルミニウム合金ろう材シートは、残部をAlおよび不可避不純物とするものでもよく、また、上記作用を損なわない限りは他の成分を含有するものであってもよい。他の成分としては、Zn、Bi、Be、Sr、Caなどが挙げられる。以下、アルミニウム合金ろう材シートが含有し得るその他の成分例について説明する。
Znはろう材の電位を低下させ、犠牲陽極効果によりろう付部材の耐食性を向上させる効果を有するので、所望によりろう材に含有させる。Znの含有量は0.1〜5.0%が望ましい。0.1%未満では電位が殆ど変化しないため十分な耐性性向上効果が得られず、5.0%を超えると腐食速度が著しく増大する。なお、同様の理由でZn含有量の一層好ましい下限は0.5%、上限は3.0%である。また、Znを積極的に添加しない場合でも、該Znを不可避不純物として0.1%未満含むことは許容される。
ろう材にBiを含有させることにより、ろう材中に低融点のBi系化合物が形成され、ろう付昇温過程では化合物が先に溶融する。溶融部位では、Mgの作用が他の部位よりも活性となることで、ろう材の濡れ性が向上する。Biの含有量は0.01〜1.0%がよい。0.01%未満では効果が十分でなく、1.0%を越えると効果の飽和、材料コストの増大を招くため好ましくない。
Beの含有は環境面での人体への有害性を考慮すると望ましくはないが、過去の知見としてろう付性向上効果を示すことができる。すなわち、Beを含有することにより材料表面にBe酸化保護層が形成され、材料表面でのMgの酸化を抑制させることが可能であり、よって、材料表面でのMgO形成を抑制することでろう付性が向上する。効果を得るために必要な含有量は凡そ100ppm以下程度である。
Srはろう材Si粒子を微細にする効果がある。Si粒子の微細化は、材料表面の酸化膜欠陥部位の増加を意味し、ろう付性の向上を図れる。含有量は、制御される鋳造条件等によって0.005〜0.1%の範囲で選択することが望ましい。0.005%以下では効果が得られず、0.1%以上では効果が飽和、さらには、巨大金属間化合物を形成することで材料の成形性が低下する。
Caをろう材に含有させると、Caによる酸化膜の還元が得られる。ろう材中のCa含有量は0.002〜0.3%が良く、0.002%以下では効果が得られず、0.3%以上では接合面にCaの酸化物が堆積することでろう付性が低下する。同様の理由で、より好ましい範囲は0.005〜0.1%である。
2.アルミニウム合金ろう材シート表面におけるSi粒子の分布
上記アルミニウム合金ろう材シートの表層部において、円相当径0.25μm以上のSi粒子が1mm当たり20,000個以上存在することが好ましい。ろう材表面にSi粒子が存在する部位は、緻密な酸化皮膜(Al膜)の成長が抑制され、酸化皮膜の欠陥部となる。この欠陥部を起点として、酸化皮膜の破壊や分断が促進され、溶融ろうの濡れ性が向上し、より安定した接合状態を得ることが可能になる。
上記現象は、一定サイズ以上のSi粒子が表面に均一に分散しているほどその効果が大きい。すなわち、ろう材シート表面のSi粒子サイズが小さ過ぎると、酸化皮膜に欠陥部を生じさせる効果が不十分となる。このため、Si粒子の円相当径は、0.25μm以上であることが好ましい。また、Si粒子の分布密度が低い場合には、酸化皮膜の破壊や分断が起こる場所が減少し、その効果が不十分となる。このため、Si粒子の分布密度は、1mm当たり20,000個以上であることが好ましい。
3.Mg含有アルミニウム合金部材
本発明では、ろう付をする部材の一方として、Mgを含有するMg含有アルミニウム合金部材を用いる。
Mg含有アルミニウム合金部材を接合部においてアルミニウム合金ろう材シートと接触密着させることで、接合界面でのろう付過程における酸化マグネシウム膜の形成が抑制され、かつ、Mg含有アルミニウム合金部材に添加されたMgによる酸化皮膜の分解作用により良好なろう付接合継手が得られる。
Mg:0.15〜1.0%
Mgは、材料表面に生成する緻密な酸化皮膜(Al膜)を還元分解することで酸化皮膜の被壊を促す効果を有するものである。なお、最終的には、溶融ろうと接触し、ろうの流動によって酸化皮膜全体が破壊に至る。
また、Mgは、単独では固溶強化により、また、Siと同時に添加されるとろう付後に微細な金属間化合物MgSiとして析出し、時効硬化することで著しく強度を向上させる効果を有する。また、ろう付加熱中にろう材から拡散してきたSiとも反応し、同様の強度向上効果を有する。これら作用を十分に得るため、0.15%以上の含有が必要である。0.15%未満では、酸化皮膜の還元、脆化作用が不十分となり、十分な接合状態が得られない。一方、1.0%を超えると、融点が低下してろう侵食を受けやすくなり、ろう付構造体の寸法精度や構造強度、耐食性などに問題を生じ、また、酸化マグネシウム膜が厚く成長しやすくなり、ろう付性が阻害される。このためMgの含有量は、0.15〜1.0%とする。なお、同様の理由によりMgの含有量の下限は0.2%、上限は0.6%とするのが望ましい。
Mg含有アルミニウム合金部材は、上記Mgを含有し、残部がAlと不可避不純物からなるものであってもよいが、上作用を損なわない範囲で、その他の成分を含有するものであってもよい。以下、Mg含有アルミニウム合金部材が含有し得るその他の成分例について説明する。
Mn:0.2〜2.5%
Mnは、金属間化合物として晶出または析出し、ろう付後の強度を向上させる。また、Mg含有アルミニウム合金部材の電位を貴にして耐食性も向上させる。下限未満ではこれらの効果が不十分であり、上限を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が生成して圧延が困難となる。このため、Mnの含有量は、上記範囲を選定することができる。なお、同様の理由でMn含有量の下限は1.0%が一層望ましく、上限は1.7%が一層望ましい。
Cu:0.05〜1.0%
Cuは、材料中に固溶してろう付後の強度を向上させるとともに、Mg含有アルミニウム合金部材の電位を貴にして耐食性を向上させる。下限未満ではこれらの効果が不十分であり、上限を超えると、鋳造時に割れが生じたり、圧延性が低下する。このため、Cuの含有量は、上記範囲を選定することができる。なお、同様に理由でCu含有量は、下限を0.1%とするのが一層望ましく、上限を0.7%とするのが一層望ましい。
Si:0.1〜1.0%
Siは、単体でマトリックスに固溶して材料強度を向上させるほか、Mg添加との相乗効果によって得られるMgSiの析出により、材料強度を向上させる。このMgSiの析出は、ろう付熱処理後の時効硬化により、飛躍的な材料強度向上に寄与する。また、Mnを含有するAl−Mn−Si化合物として分散して、材料強度を向上させる効果も有する。下限未満ではこれらの効果が不十分であり、上限を超えると、融点が低下し、ろう付時に芯材が溶融する。このため、Siの含有量は、上記範囲を選定することができる。なお、同様に理由で、Si含有量は下限を0.4%とするのが一層望ましく、上限を0.8%とするのが一層望ましい。
4.Mg含有アルミニウム合金部材とアルミニウム合金ろう材シートのろう付前表面酸化皮膜
本発明では、上記Mg含有アルミニウム合金部材とアルミニウム合金ろう材シートのろう付前表面酸化皮膜の平均膜厚が15nm以下とされる。さらに、上記ろう付前酸化皮膜中の酸化マグネシウム膜(MgO膜)の平均膜厚が2nm以下とされる。
一般に、ろう付に際しては、材料表面の初期酸化皮膜が破壊されないと良好な接合状態を得ることができないため、初期酸化皮膜は薄いほど望ましい。しかしながら、一般的なアルミニウム合金の酸化皮膜であるAl膜は、上述のように、Mgにより酸化物に還元分解される。このため、Al膜が多少厚くても、接合率の著しい低下が起こることはない。
一方、Mgが添加されたアルミニウム合金は、製造時やろう付熱処理時に酸化マグネシウム膜が形成されやすい。以下に、Mg添加アルミニウム合金材において、酸化物などが生成される反応式を示す。
4Al+3O→2Al……(1)
2Mg+O→2MgO……(2)
3Mg+4Al→3MgAl+2Al……(3)
式(1)に従って生成されるAl膜は、上述のようにMgによる還元分解が可能である。これに対し、式(2)に従って生成されるMgO膜は、非常に安定で破壊が困難であるため、膜厚が比較的薄くても接合率の著しい低下を引き起こす。なお、式(3)で表される反応は、酸素濃度が低い場合に起きる反応であり、この反応が進行することにより、Al膜が粒状の酸化物(MgAl)に変化してろう付性が向上することになる。上記各式で表される反応は、式(2)、式(1)、および式(3)の反応の順で起こりやすく、MgO膜が生成されやすくなっている。したがって、フラックスレスろう付においては、MgO膜の生成を抑制することが、安定した接合状態を得るために必要となる。
そこで、本発明では、ろう付前のMg添加アルミニウム合金部材とアルミニウム合金ろう材シートについて、表面の酸化皮膜の平均膜厚を15nm以下とする。
酸化皮膜は、薄いほどろう付熱処理時に分解されやすくなり、その結果、接合率が向上する。また、接合界面においては、粗大なボイドの形成が抑制されて接合強度や耐久性が著しく向上する。酸化皮膜の平均膜厚を15nm以下とすることにより、接合率を向上し、さらには接合強度や耐久性を向上する効果を得ることができる。この場合の酸化皮膜は、種類は限定されない。従来のフラックスレスろう付法では、ろう付時に酸化皮膜の分断が不十分な部位が生じ、その部位が接合不良部となり、気密性が損なわれたり、耐圧強度が低下する要因となっている。当然ながら接合界面においてはボイドがない状態、あるいは内圧や振動等が負荷された場合に応力集中部とならないように、なるべく微小なボイドとして分散している状態が望ましい。
なお、酸化皮膜の薄膜化はコストアップの一因にもなる。このため、酸化皮膜の平均膜厚は、その下限が特に限定されるものではないが、平均15nm以下の範囲内において、適用部位に応じて選定することが望ましい。
また、酸化皮膜の平均膜厚が15nmを超えると、ろう付時に酸化皮膜の破壊が不十分となり、その結果、接合強度および耐久性が著しく低下し、また、接合率も低下する。
さらに、本発明では、上記酸化皮膜中の酸化マグネシウム膜(MgO膜)の平均膜厚を2nm以下とする。酸化マグネシウム膜は、上述のように非常に安定でろう付熱処理時に破壊するのに困難を伴うため、平均膜厚が2nmを超えると、ろう付接合を阻害し、接合率の低下、粗大ボイドの生成による接合強度および耐久性の著しい低下を引き起こす。このため、酸化マグネシウム膜は、初期の生成をできるだけ抑制する必要があるため、ろう付前の平均膜厚を2nm以下とする。これにより、酸化マグネシウム膜によるろう付接合阻害を抑制して、信頼性に優れる安定した接合状態を得ることができる。
なお、Mgは、非常に高い活性を有する元素であるため、熱処理時にろう材表面で酸素と結合して酸化皮膜の表層近傍に酸化マグネシウム膜を形成する。上記のように平均膜厚の範囲を規定した酸化マグネシウム膜とは、このように酸化皮膜の表層近傍に形成されたものである。また、酸化マグネシウム膜も薄いほど接合状態は向上するが、同時に酸化マグネシウム膜の薄膜化はコストアップの一因にもなる。Mg添加アルミニウム合金部材のMg含有量を低減すると、酸化マグネシウム膜は生成されにくくなるが、Mgによる酸化皮膜分解効果も低下する。このため、酸化マグネシウム膜の平均膜厚は、その下限が特に限定されることはないが、適用部位に応じて、Mg含有量および製造工程を適宜選定して、平均2nm以下の範囲内において、最適なものを選定することが望ましい。
5.ろう付対象部材
上記Mg含有アルミニウム合金部材とろう付により接合されるもう一方のろう付対象部材には、好適には、Mgを添加していないAl材を用いることができる。
Mg非添加のものは、Mgを実質的に含有しないものであり、Mgを含有しないものの他、Mgを不純物として0.01%以下含有するものは許容される。
Mgを含有しないろう付対象部材を用いた場合であっても、上述のように、ろう付熱処理過程でアルミニウム合金ろう材シートに添加されたMgによる酸化皮膜の分解作用を得ることができ、信頼性に優れる安定したろう付状態を得ることができる。
Mgを含有しないろう付対象部材としては、例えばアルミニウム純度が99.9%以上の純アルミニウムや、Mn:0.2〜2.5%、Cu:0.05〜1.0%、Si:0.1〜1.0%の内1種または2種以上を含有し、残部がAlと不可避不純物からAl合金を例示することができる。なお、後者における各成分の作用および含有量は以下の通りである。
Mn:0.2〜2.5%
Mnは、金属間化合物として晶出または析出し、ろう付後の強度を向上させる。また、芯材の電位を貴にして耐食性も向上させる。これら作用を十分に得るためはMnを0.2%以上含有する。下限未満ではこれらの効果が不十分である。一方、上限を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が生成して圧延が困難となる。このため、Mnの含有量は、0.2〜2.5%が望ましい。なお、同様の理由で、Mn含有量は、下限が1.0%、上限が1.7%が一層望ましい。
Cu:0.05〜1.0%
Cuは、材料中に固溶してろう付後の強度を向上させるとともに、芯材の電位を貴にして耐食性を向上させる。これら作用を十分に得るためCuを0.05%以上含有する。下限未満ではこれらの効果が不十分である。一方、上限を超えると、鋳造時に割れが生じたり、圧延性が低下する。このため、Cuの含有量は、0.05〜1.0%が望ましい。なお、同様の理由でCu含有量は、下限が0.1%、上限が0.7%が一層望ましい。
Si:0.1〜1.0%
Siは、単体でマトリックスに固溶して材料強度を向上させるほか、本発明においては、ろう付時に他部材から液相ろうを介して拡散してきたMgとMgSi析出物を形成し、材料強度を向上させる。このMgSiの析出は、ろう付熱処理後の時効硬化により、飛躍的な材料強度向上に寄与する。また、Mnと同時に添加されるとAl−Mn−Si化合物として分散して、材料強度を向上させる効果も有する。これら作用を十分に得るためSiを0.1%以上含有する。下限未満ではこれらの効果が不十分である。一方、上限を超えると、融点が低下し、ろう付時に芯材が溶融する。このため、Siの含有量は、0.1〜1.0%が望ましい。なお、同様の理由で、Si含有量の下限は0.4%、上限は0.8%が一層望ましい。
6.ろう付対象部材のろう付前酸化膜厚
本発明の実施に当たって、ろう付対象部材は、通常、アルミニウムの量産コイル材として作製される初期酸化膜厚2〜50nm程度のアルミニウム材料を使用できる。初期酸化膜厚を2nm未満とするためには、従来技術に示したような酸洗浄等が必要となる。また、初期酸化膜厚が50nmを超えても本発明材であれば接合は可能であるが、良好な接合状態が得られにくくなるため、初期酸化皮膜はなるべく薄くしておくことが望ましい。但し、これはろう付対象部材がMg無添加合金の場合であって、Mg添加合金を用いる場合には、上述したような酸化マグネシウム膜の制御が望ましい。
7.炉内雰囲気
本発明の実施にあたっては、炉内雰囲気を不活性ガス、或いは還元性ガスまたはこれらの混合ガス等の非酸化性ガスとすることで、雰囲気中の酸素濃度や露点を低下させ、ろう材シートおよびろう付対象部材の再酸化を抑制する必要がある。使用する雰囲気ガスの種類としては、特に限定されるものではないが、不活性ガスとしては窒素、アルゴン、還元性ガスとしては水素、アンモニア、一酸化炭素を用いることが経済的に好適である。
また、上記のような非酸化性雰囲気中の酸素濃度は、体積比で50ppm以下とする。酸素濃度を50ppm以下とすることにより、ろう付時に材料表面で酸化マグネシウム膜が成長してろう付性が低下するのを抑制することができる。同様の理由により、より好ましい酸素濃度は体積比で20ppm以下である。
8.ろう付時の面加圧量
ろう付組立体には、ろう付を行う間、Mg含有アルミニウム合金部材とろう付対象部材間でアルミニウム合金ろう材シートを挟む方向に一定以上の面加圧を与える必要がある。加圧が弱い場合には、接合面に雰囲気中の酸素が流入し、接合界面の酸化皮膜が成長し易くなる。この酸化膜の成長には、上述したようにMgOが含まれ、MgOが成長することでろう付性が著しく阻害される。本発明者らは、本発明の材料構成によるろう付構造体において、均一な面加圧を25gf/cm以上与えることで、面接合率と接合強度に優れるろう付接合体が得られることを見出した。良好な接合を得るためには、均一な25gf/cm以上の面加圧が得られれば良く、面加圧が高くなることで特に制約を受けるものではないが、ろう付で製作しようとする構造物の形態によっては、面加圧が高すぎることによって構造物の変形が問題となる場合があり、この場合は25gf/cm以上の領域において、適宜加圧量を調整すればよい。量産時の治具コストや製品への治具設置の手間なども考慮すると、25〜500gf/cm程度の面加圧を好適に用いることができる。
本発明のろう付は、大気圧の非酸化性雰囲気下で実施することができ、さらに低真空下で行うことができる。簡易な真空設備で得られる低真空の非酸化性雰囲気下で実施すれば、雰囲気中の酸素濃度が低下するため、酸化皮膜および酸化皮膜中のMgO膜による接合阻害をより確実に抑制してより安定した接合状態を得ることができる。すなわち、本発明のろう付は、大気圧から0.1Paの圧力範囲下で実施することができる。0.1Pa未満の圧力となるような高真空下では、Mgの蒸発が生じ、閉塞的な接合面には、蒸発したMgの堆積が生じやすいため、接合界面に粗大ボイドが形成されやすくなる。このため、高真空下では、接合率が低下する。また、高真空を得るためには、設備の導入維持コストが高くなる。
以上のように、本発明のフラックスレスろう付方法によれば、質量%でMgを0.15〜1.0%含有するMg含有アルミニウム合金部材と、質量%でSiを5.0〜13.0%、Mgを0.1〜3.0%含有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金ろう材シートとを用いるアルミニウム材のフラックスレスろう付方法であって、前記Mg含有アルミニウム合金部材および前記アルミニウム合金ろう材シートのろう付前表面の酸化皮膜の平均膜厚が15nm以下であり、かつ、前記酸化皮膜中の酸化マグネシウム膜の平均膜厚が2nm以下であり、減圧を伴わない酸素濃度50ppm以下の非酸化性雰囲気中または大気圧から0.1Paの圧力範囲下の酸素濃度50ppm以下の非酸化性雰囲気中で、前記Mg含有アルミニウム合金部材と前記アルミニウム合金ろう材シートとろう付対象部材とを面加圧25gf/cm以上で接触密着させ、接触密着部において前記Mg含有アルミニウム合金部材と前記ろう付対象部材とをろう付により接合するので、材料コストの上昇を伴うことなく、信頼性に優れる安定した接合状態を得ることができる。
本発明の一実施形態におけるろう付前の状態を示す概略図である。
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
質量%でMgを0.15〜1.0%含有するMg含有アルミニウム合金部材がろう付の対象となる。Mg含有アルミニウム合金部材には、好適には、残部がAlと不可避不純物となるものや、さらに所望により、質量%で、さらにMn:0.2〜2.5%、Cu:0.05〜1.0%、Si:0.1〜1.0%の内1種または2種以上を含有するものを用いることができる。相手材となるろう付対象部材は、組成が特定のものに限定されるものではないが、Mg非添加のものが好適であり、例えば、アルミニウム純度が99.9%以上の純アルミニウムや、質量%で、Mn:0.2〜2.5%、Cu:0.05〜1.0%、Si:0.1〜1.0%の内1種または2種以上を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有するものを用いることができる。
なお、本発明で用いるアルミニウム合金部材とろう材シートの製造方法については、特定の方法に限定されるものではない。しかし、Mg含有アルミニウム合金材は、酸素濃度の高い雰囲気において500℃を超える温度で保持すると、酸化皮膜が成長し、特に酸化マグネシウム膜が著しく成長する。このため、製造工程中の熱負荷工程を最適化して、ろう付前の酸化皮膜の平均膜厚および酸化皮膜中の酸化マグネシウム膜の平均膜厚を上述のように制御することが望ましい。
以下、製造工程中の熱負荷工程である均質化処理、均熱処理、および中間焼鈍または最終焼鈍の各工程について望ましい条件を説明する。
均質化処理
Mg添加アルミニウム合金の鋳塊に対する均質化処理は、高温で長時間実施すると、ろう材表面に酸化膜、特に酸化マグネシウム膜が成長してろう付性が低下する。このため、均質化処理は、実施しないか、または500℃以下の温度で実施することが望ましい。
均熱処理
Mg添加アルミニウム合金を熱間圧延前に加熱する均熱処理も、高温で長時間実施すると、ろう材表面に酸化膜、特に酸化マグネシウム膜が成長してろう付性が低下する。
したがって、酸化皮膜の成長速度が増大する500℃以上の温度で均熱処理を実施する場合には、できるだけ保持時間を短くすることが好ましく、具体的には保持時間を1時間以内とすることが望ましい。
中間焼鈍、最終焼鈍
熱間圧延後の冷間圧延に際して実施する中間焼鈍または冷間圧延後の最終焼鈍は、大気中の酸素濃度より酸素濃度が低い雰囲気中にて、250〜500℃の温度で実施することが望ましい。大気中より酸素濃度が低い雰囲気中にて比較的低い温度で中間焼鈍または最終焼鈍を実施することにより、最終製品の酸化皮膜の膜厚を低減するとともに、MgO膜の生成を抑制することができる。なお、中間焼鈍または最終焼鈍を実施する雰囲気中の酸素濃度は、体積比で1%以下であることが望ましい。
また、焼鈍温度が250℃未満であると、材料が十分に軟化せずに所定の機械的性質を得ることが困難である。また、焼鈍温度が500℃を超えると、MgO膜が成長するため、ろう付性が低下する。このため、焼鈍温度は、250〜500℃とすることが望ましい。また、上記焼鈍では、上記焼鈍を実施した大気中の酸素濃度より酸素濃度が低い雰囲気中で、材料の実体温度を200℃以下まで冷却することが望ましい。焼鈍後の冷却雰囲気も、大気中よりも酸素濃度が低い雰囲気とすることにより、最終製品の酸化皮膜の膜厚を低減するとともに、MgO膜の生成を抑制することができる。
なお、上記中間焼鈍と最終焼鈍とは所望により行うものとして、いずれか一方または両方を行うことができる。
上記Mg含有アルミニウム合金部材やろう付対象部材は、製造方法が特に限定されるものではなく、いずれも常法により製造することができる。なお、Mg含有アルミニウム合金部材の製造に際しては、上述のように、均質化処理、均熱処理、焼鈍などの熱処理の諸条件を適宜設定する。これにより、Mg含有アルミニウム合金部材のろう付前表面の酸化皮膜の平均膜厚を15nm以下に制御するとともに、前記酸化皮膜中の酸化マグネシウム膜の平均膜厚を2nm以下に制御する。なお、ろう付対象部材についても、同様に酸化皮膜の平均膜厚を制御してもよい。
具体的には、製造過程における熱履歴において、酸化皮膜の成長を抑制する条件とするため、均質化処理を実施しないか、または500℃以下の温度で均質化処理を実施する。また、熱間圧延前に均熱化処理をする場合は、500℃以上での保持時間を1時間以内とする。また、冷間圧延に際しての中間焼鈍や最終焼鈍を大気中の酸素濃度より酸素濃度が低い雰囲気において250〜500℃の温度で実施し、同雰囲気中で200℃以下まで冷却することができる。
また、アルミニウム合金ろう材シートとしては、質量%でSiを5.0〜13.0%、Mgを0.1〜3.0%含有し、残部がAlと不可避不純物からなるものが用いられる。
上記アルミニウム合金ろう材シートも、常法により製造することができるが、その製造に際しては、上述のように、均質化処理、均熱処理、焼鈍などの熱処理の諸条件を適宜設定することにより、アルミニウム合金ろう材シートのろう付前表面の酸化皮膜の平均膜厚を15nm以下に制御するとともに、前記酸化皮膜中の酸化マグネシウム膜の平均膜厚を2nm以下に制御する。
具体的には、製造過程における熱履歴において、酸化皮膜の成長を抑制する条件とするため、均質化処理を実施しないか、または500℃以下の温度で均質化処理を実施する。また、熱間圧延前に均熱化処理をする場合は、500℃以上での保持時間を1時間以内とする。また、冷間圧延に際しての中間焼鈍や最終焼鈍を大気中の酸素濃度より酸素濃度が低い雰囲気において250〜500℃の温度で実施し、同雰囲気中で200℃以下まで冷却することができる。
また、アルミニウム合金ろう材シートでは、鋳造時の凝固速度や均質化処理の温度と時間、熱間圧延時の最大圧延率等によってSi粒子の分布を制御することができる。
これらの条件を複合的に制御することでアルミニウム合金ろう材シートの表層におけるSi粒子の分布(大きさ、粗大な粒子の個数比)を調整し、円相当径0.25μm以上のSi粒子が1mm当たり20,000個以上存在するものとすることができる。
上記各部材は、図1に示すように、アルミニウム合金ろう材シート3がMg含有アルミニウム合金部材1とろう付対象部材2との間に挟まれて互いに接触密着するように組み付けられてろう付構造体を構成する。
上記組立体は、非酸化性雰囲気とされた加熱炉内に配置される。該非酸化性雰囲気は、窒素、アルゴンなどの不活性ガスまたは水素、アンモニア、一酸化炭素などの還元性ガス、あるいはこれらの混合ガスを用いて構成することができる。非酸化性雰囲気は、ろう付加熱時には減圧を伴わず大気圧としてもよいし、0.1Paまで減圧してもよい。なお、非酸化性雰囲気を得る前に、置換などの目的で減圧工程を含むものであってもよい。加熱炉は密閉した空間を有することを必要とせず、ろう付材の搬入口、搬出口を有するものであってもよい。このような加熱炉でも、不活性ガスを炉内に吹き出すことで非酸化性雰囲気が維持される。該非酸化性雰囲気としては、酸素濃度が体積比で50ppm以下であるものを用いる。上記雰囲気下で590℃以上で加熱をしてろう付を行う。なお、組立体には、ろう付を行う間、Mg含有アルミニウム合金部材1とろう付対象部材2間でアルミニウム合金ろう材シート3を挟む方向に25gf/cm以上の均一面加圧を与えることが必要である。
ろう付においては、Mg含有アルミニウム合金部材1とろう付対象部材2とが接触密着部4を介してフラックスレスで良好に接合される。こうして、Mg含有アルミニウム合金部材1とろう付対象部材2とが接合されたろう付構造体が得られる。
本実施形態では、必要に応じて接合部およびその近傍のみに適切なろう材量が供給可能なアルミニウム合金ろう材シートを利用し、かつ、ろう付過程での接合阻害要因である酸化マグネシウム膜の生成を最小限に抑えることができる。
表2および表3に示すアルミニウム合金ろう材シート、ならびにMg含有アルミニウム合金部材を準備した。
ろう材合金は半連続鋳造法にて作製したが、鋳造時の凝固速度を0.1〜500℃/secの範囲で変量し、Si粒子サイズを変化させた。なお、同じ成分でも凝固速度が速いほどSi粒子サイズは小さくなり、単位面積当たりの個数は増加する。ろう付部材であるMg含有アルミニウム合金部材は、H14相当調質の2mm厚に仕上げた。表1に、各材料を作製する際に用いた熱処理条件を示す。
なお、ろう付対象部材としては、純度99.99%のアルミニウム材を調質H14、2mmtで準備した。
(ろう付試験)
Mg含有アルミニウム合金部材を50mm角に、アルミニウム合金ろう材シートとろう付対象部材を30mm角に切断し、Mg含有アルミニウム合金部材とろう付対象部材とでアルミニウム合金ろう材シートを挟み込んでろう付構造体とした。ろう付時には、ろう付構造体に25gf/cm以上の均一面加圧を与え、窒素ガス雰囲気(圧力:大気圧〜0.1Pa)中にて、600℃まで加熱するろう付熱処理を行った。
(面接合率)
作製したサンプルの接合面を超音波映像装置にて走査し、接合率を求めた。超音波測定ではボイド部の検出が可能であり、接合対象全面積に対するボイド面積率を求めて、面接合率を算出し、下記判定基準とともに表2および表3に示した。
◎:面接合率95%以上
○:面接合率85%以上95%未満
△:面接合率75%以上85%未満
×:面接合率75%未満
(ろう材シート表面のSi粒子サイズ)
Si粒子サイズはろう材シート最表面を0.1μmの砥粒で研磨し、0.5%フッ酸水溶液で60秒エッチングした後、表面方向からEPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いた全自動粒子解析により粒子サイズと個数を測定した。測定は各サンプルについて50μm角相当の観察視野で任意部5ヶ所について測定し、円相当径で0.25μm以上のSi粒子の分布を求め、表2および表3に示した。
(初期酸化皮膜および酸化マグネシウム膜の平均膜厚)
Mg含有アルミニウム合金部材およびアルミニウム合金ろう材シートのろう付前表面の酸化皮膜の平均膜厚は、XPS(X線光分子分光法)にて、任意部5ヶ所の測定を行い、平均値を採用し、表2および表3に示した。前記酸化皮膜中の酸化マグネシウム膜の平均膜厚は、TEM(透過型電子顕微鏡)で材料表面の酸化皮膜の膜厚を任意部5ヶ所ずつ観察し、酸化皮膜全体の平均膜厚を求め、さらに、表面の任意部3ヶ所について、XPS(X線光分子分光法)で深さ方向の元素分布を測定した。原子比(at%)でMgと酸素の合計が70%を超える部位をMgOとし、MgO膜の平均膜厚を算出した。各平均膜厚の測定結果を表2及び表3に示した。
(接合強度)
作製した各サンプルをφ10mm×厚さ4mmの円柱状に加工し、治具に接着剤で固定し、引張試験を実施し、積層接合界面の破壊強度を測定し、接合強度を判定した。
ろう付性の判定は、得られた接合強度によって下記判定基準で評価し、その結果を表2および表3に記載した。
○:接合強度80MPa以上
×:接合強度80MPa未満
Figure 0005889705
Figure 0005889705
Figure 0005889705
1 ろう付対象部材
2 ろう付対象部材
3 アルミニウム合金ろう材シート
4 接触密着部

Claims (7)

  1. 質量%でMgを0.15〜1.0%含有するMg含有アルミニウム合金部材と、質量%でSiを5.0〜13.0%、Mgを0.1〜3.0%含有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金ろう材シートとを用いるアルミニウム材のフラックスレスろう付方法であって、
    前記Mg含有アルミニウム合金部材および前記アルミニウム合金ろう材シートのろう付前表面の酸化皮膜の平均膜厚が15nm以下であり、かつ、前記酸化皮膜中の酸化マグネシウム膜の平均膜厚が2nm以下であり、
    減圧を伴わない酸素濃度50ppm以下の非酸化性雰囲気中または大気圧から0.1Paの圧力範囲下の酸素濃度50ppm以下の非酸化性雰囲気中で、前記Mg含有アルミニウム合金部材と前記アルミニウム合金ろう材シートとろう付対象部材とを面加圧25gf/cm以上で接触密着させ、接触密着部において前記Mg含有アルミニウム合金部材と前記ろう付対象部材とをろう付により接合することを特徴とするアルミニウム材のフラックスレスろう付方法。
  2. 前記アルミニウム合金ろう材シートの表面において、円相当径0.25μm以上のSi粒子が1mm当たり20,000個以上存在することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法。
  3. 前記Mg含有アルミニウム合金部材が、質量%で、さらにMn:0.2〜2.5%、Cu:0.05〜1.0%、Si:0.1〜1.0%の内1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法。
  4. 前記ろう付対象部材が、Mgを添加していないAl材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法。
  5. 前記ろう付対象部材が、アルミニウム純度が99.9%以上の純アルミニウムであることを特徴とする請求項4記載のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法。
  6. 前記ろう付対象部材が、質量%で、Mn:0.2〜2.5%、Cu:0.05〜1.0%、Si:0.1〜1.0%の内1種または2種以上を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項4記載のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスレスろう付方法により、ろう付構造体を構成する前記Mg含有アルミニウム合金部材と前記ろう付対象部材とを接合することを特徴とするろう付構造体の製造方法。
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