JP7252079B2 - アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents
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Description
このため、一般的な熱交換器にフラックスフリー技術を適用するためには開放部を有する継手で安定した接合状態が得られるフラックスフリーろう付用ブレージングシートが強く望まれている。
そこで、この耐食性についても検討を進めたところ、Al-Si-Mg-Biろう材では、ろう付中にBiが表面に濃縮し、その後の冷却過程でMg-Bi化合物として晶出し、この晶出したMg-Bi化合物は電気化学的特性がアルミニウム母相と異なるため、腐食の起点として作用する。そのため、上記のようにろう付前のMg-Bi化合物の分散状態を適正化したAl-Si-Mg-Biろう材では、ろう付中に表面に濃化するBiが均一化される。さらに均一化されたBiはろう付後の凝固時に均一なMg-Bi化合物として晶出する。したがって、そのような状態ではろう中に腐食の起点が共晶だけでなく、Mg-Bi化合物が加わるため至るところに腐食の起点があり、腐食の形態が局部的ではなく均一な腐食形態となり、クラッドフィン材の耐食性が良化することを見出した。
さらに、添加元素や添加量を制御してろう付後のろう材層のカソード電流密度を所定値以下にすることで、ろう材層の腐食促進性が減少しクラッドフィン材の耐食性がより一層良化することを見出した。
前記Al-Si-Mg-Bi系ろう材に含まれるMg-Bi系化合物が、ろう付前の表層面方向の観察において、円相当径で0.1μm以上5.0μm未満の直径を有するものが10000μm2視野あたり20個よりも多く存在し、かつ、5.0μm以上の径を有するものが10000μm2視野あたり2個未満であり、
さらに、前記心材が、質量%で、Mn:0.8~1.8%、Si:0.01~1.0%、Fe:0.1~0.5%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、酸素含有量30ppmの窒素雰囲気中のろう付炉にて、600℃まで加熱し、5分間保持するろう付相当熱処理後にpH3の5%NaCl溶液中で室温にて測定したろう材層のカソード電流密度が0.1mA/cm2以下であることを特徴とする。
以下で説明する成分は、いずれも質量%で示されている。
ろう材は、心材の両面に配置され、それぞれ以下の条件を有している。ただし、両面のろう材において異なる組成を有するものであってもよい。
Siは、ろう付時に溶融ろうを形成し、接合部のフィレットを形成するために添加される。開放部におけるフラックスフリーろう付では、酸化を抑制しつつ、短時間のうちに活性な溶融ろうを生成させ、フィレットを形成することが重要となるため、液相線温度が低く、固液共存域が短いろう材が好ましい。含有量が下限未満であると、溶融ろう生成時間が長くなるとともに溶融ろうが不足する。一方、上限超であると、やはり溶融ろう生成時間が長くなるとともに材料が硬く脆くなるため、素材製造が困難になる。このため、Siの含有量を上記範囲に定める。
なお、同様の理由でSi含有量を、下限で6.5%、上限で13%とするのが望ましい。
FeはAl-Mn-Fe、Al-Mn-Si-Feなどの金属間化合物として析出して材料強度を向上させる一方で、添加量が多い場合、化合物が多量に生成するため耐食性が劣化する。そのため、Feの含有量を上記範囲に定める。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると金属間化合物の生成量が多く耐食性が劣化する。
なお、同様の理由で、下限で0.10%、上限で0.20%とするのが望ましい。
Mgは、Al酸化皮膜(Al2O3)を還元分解するために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると、ろう付雰囲気中の酸素と反応して接合を阻害するMgOが生成することや、材料が硬く脆くなるため、素材製造が困難になる。このため、Mgの含有量を上記範囲に定める。
なお、同様の理由でMg含有量を、下限で0.03%、上限で1.2%とするのが望ましく、さらに、下限で0.1%、上限で1.0%とするのがより望ましい。
Biは、ろう付昇温過程で材料表面に濃化し、ろう付中の酸化を抑制するとともに溶融ろうの表面張力を低下させることで開放部での接合性を向上させるために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると効果が飽和するだけでなく、材料表面でBiの酸化物が生成し易くなり接合が阻害される。このため、Biの含有量を上記範囲に定める。
なお、同様の理由でBi含有量を、下限で0.08%、上限で0.23%とするのが望ましい。
Srは、Si含有量が高いろう材で発生する粗大な初晶Si生成を抑制するために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると鋳造時に溶湯表面で酸化してドロスが増加したり、粗大な化合物を形成することで鋳造性が低下する。このため、Srの含有量を上記範囲に定める。
なお、同様の理由でSr含有量を、下限で0.0005%、上限で0.06%とするのが望ましい。
フラックスフリーろう付用のAl-Si-Mg-Bi系ろう材では活性なMgやBiを含有しているため、所定量以上のSrと共存すると鋳造時に溶湯中に粗大なBi-Mg-Sr化合物が生成し鋳造性が低下する。この化合物はBiとMgの総量が多いほど、また、Sr含有量が多いほど生成しやすくなる。質量%で示される、(Bi+Mg)×Srはこの粗大なBi-Mg-Sr化合物生成の臨界条件を示すものであり、(Bi+Mg)×Srを0.1以下とすることで、Al-Si-Mg-Bi系ろう材にSrを添加しても粗大なBi-Mg-Sr化合物が生成せず、かつ、Sr本来の添加目的である初晶Si生成抑制効果を得ることができる。このため、上記範囲に定める。
なお、同様の理由で(Bi+Mg)×Sr≦0.08とするのが望ましい。
MnはAl-Mn-Fe、Al-Mn-Si-Feなどの金属間化合物として析出して材料強度を向上させるので、所望により含有させる。一方で、添加量が多い場合、化合物が多量に生成するため耐食性が劣化する。そのため、Mnの含有量を上記範囲に定める。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると金属間化合物の生成量が多く耐食性が劣化する。
なお、同様の理由で、下限で0.10%、上限で0.20%とするのが望ましい。
また、Mnを積極的に添加しない場合、Mnを不可避不純物として、0.05%未満で含有するものであってもよい。
微細なMg-Bi系化合物が分散することで、ろう付昇温過程でこの化合物が溶解した際に、Biが材料表面に均一に濃縮し易くなり、材料の酸化が抑制される。さらに、材料表面に分布したBiはろう付後の冷却過程でMg-Bi化合物として晶出する。この化合物は電気化学的特性が母相と大きく異なるため、腐食の起点となる。均一に分布したBiからは均一にMg-Bi化合物が晶出するため、腐食の起点が材料表面の特定箇所ではなく、全体的に分散することになり、腐食の形態が良化する。
0.1μm未満の化合物は溶解しても、溶解量が少ないため上記効果が得られない。5.0μm以上の化合物はろう付昇温過程で溶融しにくく、化合物のまま残存してしまうため上記効果が得られない。また、上記化合物が10000μm2視野あたり20個以下であると、溶解箇所が少なく、Biが材料表面に均一に濃縮しにくい。
同様の理由で、さらに30個以上であるのが望ましく、さらに、40個以上であるのがより望ましい。
粗大なMg-Bi系化合物は、ろう付昇温過程で溶融し難く材料表面にBiが均一に濃化しにくく、
また、粗大な化合物ができることで5.0μm未満の微細なMg-Bi化合物の生成量が減ってしまうため、所定値よりも低くする必要がある。
なお、ろう材表面のMg-Bi系化合物の数は、前述したFE-EPMAによる全自動粒子解析により求められる。また、粗大なMg-Bi系化合物の生成を抑制する手段としては、前述の鋳造条件や熱延条件を適切に制御することで調整することができる。
例えば、鋳造時に、溶湯温度が高いところから早い冷却速度で鋳込むこと(Mg-Bi化合物の粗大晶出を抑制)、熱延時には、一定以上の大きな総圧下量をとること(晶出物の破砕促進による微細化)、熱延仕上り温度を低くしてその後の冷却速度を速くする(緩慢冷却による粗大析出を抑制)ことなどを適正に組み合わせることで調整することができる。
ろう材中にはSi、Fe、Mn、Mg、Biなどが含有されているため、Si粒子、Al-Fe金属間化合物、Al-Fe-Si金属間化合物、Al-Mn-Fe金属間化合物、Al-Mn-Fe-Si金属間化合物、Mg-Bi化合物、Bi化合物などが存在する。これらの存在状態(サイズや分布密度など)が複合的に作用して、クラッドフィンの腐食促進性が決まる。これらの影響は複合的に作用するため一概には決まらないが、それらの総和として材料のカソード電流密度が決まり、これが小さいほど、腐食促進性が低くなる。つまり、カソード電流密度はろう材層中の腐食促進性の総和を意味する。
カソード電流密度は、ろう材への添加元素種やその添加量などを制御することで所定値以下にすることができる。そのため、上記範囲に定める。
なお、同様の理由で、さらに0.08mA/cm2以下がより好ましい。
例えば、ろう材中のFe添加量を低減することでAl-Fe金属間化合物、Al-Fe-Si金属間化合物の存在量が低下するためカソード電流密度が低下する。また、MgとBiの添加量を所定範囲とすることで、ろう付後のろう材層中に存在する粗大なBi粒子を低減できるためカソード電流密度が低下する。
Mn:0.8~1.8%
Mnは、Al-Mn、Al-Mn-Si、Al-Mn-Fe、Al-Mn-Si-Feなどの金属間化合物として析出して材料強度を向上させるために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると鋳造時に巨大な金属間化合物(晶出物)が生成し、圧延性が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.9%、上限で1.75%とするのが望ましい。
Siは、固溶により材料強度を向上させる他、Mg2SiやAl-Mn-Si、Al-Mn-Si-Fe金属間化合物として析出し材料強度を向上させるために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると材料の融点が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.05%、上限で0.8%とするのが望ましい。
FeはAl-Mn-Fe、Al-Mn-Si-Feなどの金属間化合物として析出して材料強度を向上させるために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると鋳造時に巨大な金属間化合物(晶出物)が生成し、圧延性が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.12%、上限で0.4%とするのが望ましい。
Cuは、固溶して材料強度を向上させるため所望により添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると耐食性が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.01%、上限で0.2%とするのが望ましい。
また、Cuを積極的に添加しない場合、Cuを不可避不純物として、0.003%以下で含有するものであってもよい。
Mgは、Siなどとの化合物が析出することで材料強度がを向上させること、およびろう材表面に拡散し、酸化皮膜(Al2O3)を還元分解させ、接合性を向上させるので、所望により添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると材料が硬くなりすぎて、素材製造が困難になる。
なお、同様の理由で、下限で0.2%、上限で0.65%とするのが望ましい。
また、Mgを積極的に添加しない場合、Mgを不可避不純物として、0.05%以下で含有するものであってもよい。
Znは、クラッドフィン材の自然電位を卑にし、他部位を犠牲防食するために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると電位が卑となりすぎてクラッドフィン自身の耐食性が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.3%、上限で1.3%とするのが望ましい。
また、Znを積極的に添加しない場合、Znを不可避不純物として、0.1%以下で含有するものであってもよい。
フラックスフリーろう付では、Al-Si-Mgろう材を用いて、溶融して活性となったろう材中のMgが接合部表面のAl酸化皮膜(Al2O3)を還元分解することで接合を可能としている。すなわち、開放部を有する継手形状におけるフラックスフリーろう付では、Al-Si-Mgろう材を用いて、溶融して活性となったろう材中のMgが接合部表面のAl酸化皮膜(Al2O3)を還元分解することで接合を可能としているが、一方で、環境中の酸素と反応してしまうと強固はMgO皮膜が生成してろう付性が低下してしまう。
一方で、環境中の酸素と反応してしまうと強固はMgO皮膜が生成してろう付性が低下してしまう。したがって、フラックスろう付において安定した接合を達成するためには、ろう溶融温度までは材料表面(すなわちろう材表面)に必要以上のMgが存在しないことで酸化を抑制し、ろう溶融温度では材料表面(すなわちろう材表面)に所定量以上のMgが存在することでAl酸化皮膜の還元分解をすることが重要となる。
クラッド材においては各層へのMgの拡散が生じる。具体的にはろう材のみにMgが添加されていても心材方向へMgが拡散して、ろう溶融時にろう材表面に残存するMg量が所定値以下になった場合にはフラックス接合性が低下してしまう。つまり、クラッド材では初期Mg添加量に加えて、ろう溶融温度におけるろう材表面でのMg量が重要となり、所定範囲にすることで酸化を抑制しつつ、Al酸化皮膜の還元分解を達成することができる。Mg濃度が0.15%未満の場合、分解還元に必要なMg量が不足することでろう付性が低下する。一方、Mg濃度が1.0%超の場合には酸化によって強固なMgO皮膜が生成することでやはりろう付性が低下する。
同様の理由で、下限0.17%、上限で0.85%とするのが望ましい。
なお、ろう溶融温度は材料成分によって変化する。そのため、固相線温度-10℃の温度をろう溶融温度として扱う。
本発明組成に調整してアルミニウム合金を溶製する。該溶製は半連続鋳造法によって行うことができる。
本実施形態では、ろう付前時点で微細なMg-Bi化合物を分散させるため、ろう材の鋳造時に溶湯温度が高いところから速い冷却速度で鋳造することでMg-Bi化合物の粗大晶出を抑制しつつ、MgとBiを鋳塊内に固溶させる。
具体的には、溶湯温度を700℃以上とすることでMgとBiの固溶度を高めることができる。
ε=(2/√3)ln(t0/t) ・・・式(1)
t0:熱延開始厚み(スラブ厚み)
t :熱延仕上げ厚み
その後、冷間圧延などを経て、本発明のブレージングシートが得られる。
ろう付条件において、昇温速度が速くなるほどろう付時間が短くなるため、材料表面の酸化皮膜成長が抑制されてろう付性が向上する。到達温度は少なくともろう材の固相線温度以上とすればろう付可能であるが、液相線温度に近づけることで流動ろう材が増加し、開放部を有する継手で良好な接合状態が得られ易くなる。ただし、あまり高温にするとろう浸食が進み易く、ろう付後の組付け体の構造寸法精度が低下するため好ましくない。
その後、中間焼鈍を含む冷間圧延によって、H14相当調質の0.06mm厚の冷間圧延板を作製した。なお、ろう材のクラッド率は両面とも8%とした。
また、ろう付対象部材としてA3003合金、H14のアルミニウムベア材(0.3mm厚)を用意した。
ろう付後のカソード電流密度は、ろう付後の元素拡散状態に影響を受ける。元素拡散状態は材料仕様(ろう付前の添加成分や量)が決まっていれば入熱量によって決まるので、入熱量を規定することにより、ろう付前のクラッド材のカソード電流密度を評価することができる。入熱量は元素の拡散のしやすさを示すパラメータで、ここではZnの拡散係数と時間の積の積算値で示している。なお、拡散係数は下記式で求める。
拡散係数=振動数因子×EXP(-活性化エネルギー/(気体定数×絶対温度で示した温度))
振動数因子:1.77×10-5(m2/s)
活性化エネルギー:118(kJ/mol)
なお、ろう付完了は、加熱処理後、室温に至る時点をろう付完了とする。
また、入熱量を含むろう付条件は、上記に限定されるものではなく、上記条件は、ろう付前のクラッド材に対する測定条件として用いることができる。
○接合率
以下式にて接合率を求め、各試料間の優劣を評価した。
フィン接合率=(フィンとチューブの総ろう付長さ/フィンとチューブの総接触長さ)×100
接合率では、90%以上を○、90%未満を×と評価した。
前記コアから切り出したサンプルを樹脂包埋、鏡面研磨し、光学顕微鏡を用いて、図3に示すようにフィン11とチューブ12との間の接合部13接合部におけるフィレット長さを測定した。測定する接合部は20箇所とし、その平均をフィレット長さとして、優劣を評価した。
フィレット長さでは、600μm以上を◎、500μm以上600μm未満を○○○、400μm以上500μm未満を○○、300μm以上400μm未満を○、300μm未満を×と評価した。
作製したブレージングシートを樹脂埋めし、圧延方向平行断面を鏡面研磨し、バーカー氏液で組織を現出後、光学顕微鏡で観察してろう材層中の粗大な初晶Siの形成状態を評価した。観察は300μmの視野を10箇所とした。
円相当直径で30μm以上の粗大Si粒が2個未満の場合を○○、2~9個の範囲を○、10個以上見られた場合を×とした。
ブレージングシートをドロップ形式で炉に設置し、前記ろう付条件にてろう付相当熱処理を行った。その後、サンプルを切り出し、JISに準拠した通常の方法にて室温にて引張試験を実施して引張強さを評価した。
ろう付後の強度では、160MPa以上を◎、150MPa以上160MPa未満を○○、140MPa以上150MPa未満を○、140MPa未満を×と評価した。
ブレージングシートをドロップ形式で炉に設置し、前記ろう付条件にてろう付相当熱処理を行った。その後、サンプルを30mm×80mmのサイズに切り出し、SWAAT液に2日間浸漬した。腐食試験後のサンプルはリン酸クロム酸混合溶液によって腐食生成物を除去し、腐食試験前後の重量から腐食減量を算出した。
腐食減量では、5mg/cm2未満を○○○、5~8mg/cm2以下を○○、8~10mg/cm2以下を○、10mg/cm2超を×と評価した。
犠牲陽極効果では、犠牲材面以外をマスキングしたのち、SWAATに40日間供した。腐食試験後のサンプルはリン酸クロム酸混合溶液によって腐食生成物を除去し、最大腐食部の断面観察を行って腐食深さを測定した。
腐食深さでは、板厚の半分以内を○○、板厚の半分を超えたが貫通なしを○、貫通を×と評価した。
カソード電流密度は上記ろう付条件にてろう付相当熱処理を行った材料から分極測定用のサンプルを切り出した。測定面以外をマスキングした後、室温の30%HNO3溶液中に5秒浸漬、さらに水道水、イオン交換水で洗浄した後、乾燥させずにそのままpH3に調整した室温の5%NaCl水溶液中、大気解放の条件でカソード分極測定した。電位掃引速度は0.5mV/sとし、-1200mVまで掃引し、-1000mVの際の電流密度をカソード電流密度をして定義した。
上記ろう付条件にてろう付相当熱処理を行い、ろう溶融温度(成分から状態図計算ソフトJMatProを用いて固相線温度を算出し、その-10℃の温度)になった瞬間に炉からサンプルを取り出し、サンプルを樹脂包埋、鏡面研磨し、断面方向のEPMA分析によってろう材表面のMg濃度を測定した。測定されたEPMAデータのうち、ろう材表面から5μmの範囲の平均Mg濃度をろう材表面のMg濃度とした。
ろう溶融温度は材料成分によって変化するため、状態図計算ソフト(JMatPro;商標)を用いて固相線温度を求め、固相線温度-10℃の温度をろう溶融温度として扱った。
2 アルミニウム合金心材
3A アルミニウム合金ろう材
3B アルミニウム合金ろう材
5 アルミニウム製熱交換器
6 フィン
7 チューブ
10 他の構成部材
11 フィン
12 チューブ
13 接合部
Claims (6)
- 心材の両面に、質量%で、Si:6.0~14.0%、Fe:0.05~0.25%、Mg:0.02~1.2%、Bi:0.05~0.25%、Sr:0.0001~0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、かつ、成分含有量の質量%において、(Bi+Mg)×Sr≦0.1の関係を満たすAl-Si-Mg-Bi系ろう材が配置され、
前記Al-Si-Mg-Bi系ろう材に含まれるMg-Bi系化合物が、ろう付前の表層面方向の観察において、円相当径で0.1μm以上5.0μm未満の直径を有するものが10000μm2視野あたり20個よりも多く存在し、かつ、5.0μm以上の径を有するものが10000μm2視野あたり2個未満であり、
さらに、前記心材が、質量%で、Mn:0.8~1.8%、Si:0.01~1.0%、Fe:0.1~0.5%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、酸素含有量30ppmの窒素雰囲気中のろう付炉にて、600℃まで加熱し、5分間保持するろう付相当熱処理後にpH3の5%NaCl溶液中で室温にて測定したろう材層のカソード電流密度が0.1mA/cm2以下であることを特徴とするアルミニウム合金クラッド材。 - 前記心材がさらに、質量%で、Cu:0.005~0.3%を含有することを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金クラッド材。
- 前記心材がさらに、質量%で、Mg:0.1~0.7%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム合金クラッド材。
- 前記心材がさらに、質量%で、Zn:0.2~1.6%を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金クラッド材。
- 前記ろう材がさらに、質量%で、Mn:0.05~0.3%を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金クラッド材。
- さらに、ろう溶融温度におけるろう材表面のMg濃度が0.15~1.0%の範囲にあることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金クラッド材。
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