JP4857869B2 - 重ね隅肉継手のレーザろう付け方法 - Google Patents
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Description
ろう付を行なう際にろう材を溶融させる方法は、ガス炎やアークを用いて加熱する方法が従来から採用されている。しかしこれらの熱源を使用すると、ろう材が溶融するまで長時間を要し、その間に薄鋼板の熱変形が生じるばかりでなく、ろう付けの施工効率が低下する。そこで、ろう付の高速化を図るために種々の技術が検討されている。
(a)接合部を局所的に加熱できる、
(b)ろう付の速度を増加できる、
(c)継手の熱歪を低減できる
等の利点がある。しかも薄鋼板は、表層数μmが溶融してろう材と密着するので、接合部の強度を確保できる。したがって、レーザろう付けは自動車車体や鉄道車両等の構造部材を接合するための重ね隅肉継手の形成に採用されている。
ところが既に説明した通り、レーザろう付けでは、一般のろう付と同様に、高強度薄鋼板より融点の低いろう材(たとえば銅合金,銀合金等)を使用する。このようなろう材がレーザビームによって加熱されて溶融した後、放冷され凝固することによって得られる溶着金属は、高強度薄鋼板に比べて強度が低い。しかも高強度薄鋼板と溶着金属の強度差に加えて、重ね隅肉継手では溶着金属に応力が集中するので、荷重が作用したときに、高強度薄鋼板が変形しなくても、溶着金属が破断する惧れがある。とりわけ溶着金属に割れや孔あき等の欠陥が存在する場合は、溶着金属の破断が発生しやすくなる。
(1)上板1の上面と端面および下板2の上面にレーザビーム6を照射して、接合部の高強度薄鋼板を加熱する、
(2)レーザビーム6の照射位置にワイヤ状のろう材5を供給し、レーザビーム6でろう材5を溶融させる、
(3)溶融したろう材が溶滴となって上板1の端面および下板2の上面に接触しつつ拡がっていく、
(4)レーザビーム6が通過した後、溶融したろう材5が放冷されて凝固する
という手順で重ね隅肉継手が形成される。なお、上板1は重ね隅肉継手の上側に位置する高強度薄鋼板を指し、下板2は重ね隅肉継手の下側に位置する高強度薄鋼板を指す。
ろう材5の溶滴の濡れ性を改善する技術は、従来から種々検討されている。たとえば上板1および下板2を加熱して昇温することによって、ろう材の溶滴の濡れ性を改善することができる。しかしレーザろう付けは、エネルギー密度の高いレーザビームを照射して局所的に加熱するものであるから、重ね合わせ部の上板1および下板2を昇温するために照射量を増加すれば、上板1や下板2が溶解してレーザろう付けに支障(たとえば溶断等)を来たす。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、レーザビームを用いてワイヤ状のろう材を供給しながら2枚の薄鋼板の重ね隅肉継手を形成するレーザろう付け方法において、上板の融点および下板の融点のいずれか低い方より低温の融点を有しかつ厚さ0.01〜0.7mmの金属板を上板と下板との間に挿入し、上板の端面から金属板の端部を突出させ、さらに下板の上面に照射されるレーザビームの中心位置と上板の端面との距離をa(mm)とし、下板の上面に照射されるレーザビームの直径をb(mm)として、距離a,直径bが
1.1≧a−(b/2)
を満足するように金属板の挿入位置とレーザビームの照射位置とを設定して、照射位置に金属板よりも高い融点を有するろう材を供給しながらレーザろう付けを行なう重ね隅肉継手のレーザろう付け方法である。
図1に示すように、本発明では高強度薄鋼板の上板1と下板2との間に金属板7を挿入する。金属板7の厚さが0.01mm未満では、孔あき欠陥防止の効果が得られない。一方、0.7mmを超えると、金属板7全体を溶融させることが困難になる。したがって、金属板7の厚さは0.01〜0.7mmの範囲内とする。
金属板7の端部は、上板1の端面から突出する。金属板7の先端と上板1の端面との距離をc(mm)とする。また、下板2の上面に照射されるレーザビーム6の直径をb(mm)とし、その中心位置CLと端面との距離をa(mm)とする。
ろう材5は、高強度薄鋼板の融点よりも低温の融点を有する材料を使用し、レーザビーム6が照射される領域に供給する。したがって、ろう材5はレーザビーム6の照射によって昇温され、金属板7とともに溶解する。このとき、上板1と下板2は溶解により変形しないようにレーザビーム6の照射量を調整する。ろう材5としては、純Cuろう,Cu−Zn合金ろう,Cu−P合金ろう,Cu−Si合金ろう,Cu−Sn合金ろうCu−Ni合金ろう等の銅合金ろう、あるいはAg−Cu合金ろう等の銀合金ろうが好ましい。
このようにして重ね合わせ部を構成し、上板1の上方からレーザビーム6を照射する。レーザビーム6は、ろう材5とともに上板1の端面に沿って移動しながら、上板1と下板2を加熱し、ろう材5と金属板7を溶融する。溶融した金属板7は、溶融状態のろう材5と融合し、上板1と下板2を接合し、レーザビーム6とろう材5が通過した後で放冷され、凝固して溶着金属3となる。この溶着金属3は上板1と下板2との会合部にも充満するので、孔あき欠陥は発生しない。
以上に説明した通り、本発明を適用してレーザろう付けを行なうと、重ね隅肉継手における溶着金属の孔あき欠陥を防止できる。したがって高強度薄鋼板の重ね隅肉継手を形成する際に本発明を適用すれば、重ね隅肉継手の破断を防止し、高強度薄鋼板の機械的特性を十分に活かすことができる。
上板1と下板2の重ね合わせ部にレーザビーム6を照射して、重ね隅肉継手を形成した。レーザはNd:YAGレーザを使用し、レーザ出力4kWとした。レーザビーム6は、ろう材5とともに上板1の端面に沿って3m/min の速度で移動させた。ろう材5はレーザビーム6の照射によって溶融していくので、常に3m/min の速度で供給した。
表3から明らかなように、重ね隅肉継手の引張剪断強度は、発明例が全て440MPa以上であったのに対して、比較例は440MPa未満であった。つまり、発明例の重ね隅肉継手の溶着金属には孔あき欠陥が存在しないので、引張剪断強度の向上を達成できた。
2 下板
3 溶着金属
4 孔あき欠陥
5 ろう材
6 レーザビーム
7 金属板
Claims (2)
- レーザビームを用いてワイヤ状のろう材を供給しながら2枚の薄鋼板の重ね隅肉継手を形成するレーザろう付け方法において、上板の融点および下板の融点のいずれか低い方より低温の融点を有しかつ厚さ0.01〜0.7mmの金属板を前記上板と前記下板との間に挿入し、前記上板の端面から前記金属板の端部を突出させ、さらに前記下板の上面に照射される前記レーザビームの中心位置と前記上板の端面との距離をa(mm)とし、前記下板の上面に照射される前記レーザビームの直径をb(mm)として、前記距離a、前記直径bが
1.1≧a−(b/2)
を満足するように前記金属板の挿入位置と前記レーザビームの照射位置とを設定して、該照射位置に前記金属板よりも高い融点を有する前記ろう材を供給しながらレーザろう付けを行なうことを特徴とする重ね隅肉継手のレーザろう付け方法。 - 前記金属板が、金属箔を重ね合わせて板状に成形した金属板であることを特徴とする請求項1に記載の重ね隅肉継手のレーザろう付け方法。
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