JP6419657B2 - 電子部品用パッケージの蓋用素材とその製造方法 - Google Patents
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前記筐体は、アルミナなどのセラミックスを主材として成形され、前記蓋体は、低膨張金属を基材として一方の表面に金属ろうからなるろう材層により形成されるクラッド材が通常使用される。
前記筐体は、前記蓋体との接合面にメタライズ膜を形成させた後、溶接施工する事で蓋体のろう材を溶融して筐体と溶着させる方法が一般的である。
また、コバールは鉄を40〜75質量%(以下、化学成分の表示の%は、質量%を意味するものとする)含むため、酸素や水分を含む大気環境下で前記電子部品を使用する事は、耐食性の観点から酸化還元反応(腐食)のような問題があるので、コバールの表面を耐食性の良い材料で被覆する等の対策が必要とされる。
特許文献1には、最外層(第1層)にニッケル、次層(第2層)に低熱膨張金属、第3層にニッケル、第4層に銅、第5層に銀ろうとした構成の5層クラッド材が開示されている。しかし、この5層クラッド材を圧延法により製造する具体的な開示は、特許文献1にはない。
一方、電子部品用パッケージに用いられる蓋用素材は、溶接施工時の筐体への熱応力が小さいことの他、圧延法によるクラッド材製造において必要となる熱処理(拡散焼鈍)の際、銀ろう層表面に発生する膨れが無い事が要求されている。
したがって、これら諸要求に対応できる特性を兼ね備えた蓋用素材およびその製造方法の開発が急務であった。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、電子部品用パッケージの蓋用素材とその製造方法に関し、以下の構成からなる発明を完成させた。
[適用例1] 電子部品用パッケージの蓋に用いられる5層クラッド構造を有する素材の製造方法において、前記5層クラッド構造は順に、第1層材をニッケル、第2層材を第1層材よりも熱膨張係数が低い金属、第3層材をニッケル、第4層材を銅、第5層材を銀ろう、とからなり、各層厚は、第1層材が2〜16μm、第2層材が17〜52μm、第3層材が2〜16μm、第4層材が11〜40μm及び第5層材が4〜15μm、の範囲内であり、前記製造方法は、第1の冷間圧延工程と、熱処理工程と、第2の冷間圧延工程とをこの順序で有し、前記第1の冷間圧延工程にて、圧下率が30〜90%で前記第1層材から前記第3層材を有する3層クラッド材を圧延し、前記熱処理工程にて、前記3層クラッド材を600〜1400℃の温度条件で熱処理し、前記第2の冷間圧延工程にて、累積圧下率が85%以上で前記第4層材を芯材とし前記3層クラッド材と前記第5層材を外層材として複数回の圧延をする、ことを特徴とする5層クラッド構造を有する電子部品用パッケージの蓋用素材の製造方法。
[適用例2] 前記第2層材は、コバルト含有量が10〜25質量%、ニッケル含有量が25〜35質量%、残部が鉄およびこれら以外の不純物であることを特徴とする前記[適用例1]に記載の5層クラッド構造を有する電子部品用パッケージの蓋用素材の製造方法。
[適用例3] 前記[適用例1]または[適用例2]に記載の製造方法により製造された5層クラッド構造を有する電子部品用パッケージの蓋用素材。
その結果、通常のコバールの熱膨張係数は4.5〜6.0×10−6/℃であるが、累積圧下率を85%以上の冷間圧延加工を施すことにより3.0〜4.4×10−6/℃にまで下げられることを見出した。これは、コバールが鉄を40〜75%と多く含有するため、冷間圧延加工により加工誘起マルテンサイト相が生成し熱膨張係数が低下することが理由である。
A) 前記ニッケルは、ニッケル含有量が99.5%以上であることが耐食性の観点から好ましい。ここで耐食性とは、酸素や水素を含む大気環境下で腐食しないことをいう。
B) 前記第1層材よりも熱膨張係数が低い金属は、32Ni、36Ni、42Ni、46Ni、コバールなどが存在するが、ニッケルは鉄に比べて高価であり建値変動に左右されることから、低ニッケル合金であるコバールの使用が好ましい。また本発明において、コバールは冷間圧延加工によって熱膨張係数が3.0〜4.4×10−6/℃にまで下がるのが明らかになったことにより、クラッド材全体とセラミックスとの熱膨張差を軽減させることができた。電子部材用パッケージの筐体であるセラミックスの熱膨張係数は6.0〜8.0×10−6/℃であるので、蓋用素材であるクラッド材全体の熱膨張係数は、極力これに近似することが好ましい。本発明において、前記第1層材よりも熱膨張係数が低い金属に必要な熱膨張係数としては、温度30〜400℃における熱膨張率が1.0〜6.0×10−6/℃であることを指し、この範囲である36Ni(0.5〜2.0×10−6/℃)も使用できる。好ましくは温度30〜400℃における熱膨張率が3.0〜4.4×10−6/℃である。コバールの化学組成は、コバルト10〜25%、ニッケルが25〜35%、残部が鉄およびこれら以外に不可避的に存在してしまう不純物(以下、不可避的不純物と称する)である。
C) 前記銅は、規格C1020(銅含有量99.96%、残部不可避的不純物)、C1220(銅含有量99.9%、P含有量0.028%残部不可避的不純物)およびC2680(銅含有量64%、亜鉛含有量35%残部不可避的不純物)が挙げられ、いずれの規格の銅および銅合金も本発明に用いることができる。
D) 前記銀ろうは、銀含有量が50〜80%、銅含有量が20〜50%であることが好ましい。この範囲の組成であれば、ろう材が完全に溶融する温度(液相線)が850℃以下であることから、溶接施工時の温度を780℃〜850℃の低い温度で溶接することができる。850℃を超える温度での溶接は、蓋体への熱負荷が大きくなって熱膨張が促進されることから、筐体に対する熱応力が大きくなる。銀ろうの組成として、特に好ましくは、銀含有量が70〜75%、銅含有量が25〜30%である。
E−1) まず、本発明は5層構造のクラッド材の製造方法として圧延法を採用した。クラッド材の各層の板厚比率を制御するのに適した方法だからである。
第1の冷間圧延工程(b)で圧延されたクラッド材は、通常は巻取機(図示せず)により巻取られる。
温度が600℃未満では、クラッド材の接合界面での相互拡散が生じ難く、十分な接合強度が得られなくなることがある。また、1400℃を超えるとコバールの融点が1450℃であるため、溶融する危険性がある。
加熱時間は特に制限はないが、1分未満では原子拡散の効果がえられず、10分を超えると生産性が低下することから、1〜10分の範囲であることが好ましい。
{(“第2の冷間圧延前の各素材の合計板厚”-“圧延後の板厚”)÷“第2の冷間圧延前の各素材の合計板厚”}×100
第2の冷間圧延工程(e)後、コイル巻取機(図示せず)によりコイル状に巻取られる。その後、必要に応じてスリット工程(図示せず)し、板幅方向に分割裁断して出荷する。
第1層材及び第3層材のニッケルの層厚は2〜16μmとする。2μm未満では、ニッケル層が薄いために強度が弱く、圧延時のコバールの伸びに追従できずにニッケル層が割れることがある。また、16μmを超えると、溶接施工後の冷却において、筐体と銀ろうの溶着部に対する熱応力が大きくなり、クラッド層間にクラックが生じることがある。
5層クラッド材の各層の最終板厚および製造条件に対する耐食性や溶接施工時の特性について表1に示す。なお、各層のクラッド素材は、上述した成分範囲の材料を用いた。
No.35は熱処理工程の温度が低いため、接合強度が弱く、No.34は、第1層材であるニッケルの厚みが薄いことで表面に割れが生じ、耐食性が低下する状況となった。
また、No.25およびNo.27〜33は、クラッド材の各層の板厚が、溶接施工時の筐体に対する熱応力の緩和に必要な板厚範囲でないことから、溶接施工時に筐体が割れる結果となった。
No.26は、銀ろう層の厚みが薄いため、溶接施工時に銀ろう材の溶融量が少なく、十分な融着ができなかった。
No.3、6、9、12、15は、第2の冷間圧延工程後に355℃の熱処理を行ったため、銀ろう層表面に膨れが発生し、No.1−2、4−5は第2の冷間圧延工程の累積圧下率が85%未満であることから、クラッド材の接合強度が不十分という結果となった。
No.37は、第2の冷間圧延工程後に700℃の熱処理を行い、コバールの完全焼鈍を実施した。膨れは銀ろう層表面に面積率20.12%と非常に多く発生したが、膨れの無い箇所を選定して蓋体とした後、筐体との溶接施工を実施した。その結果、蓋体の熱膨張により筐体に大きな熱応力が加わったため筐体割れが生じた。これは、コバールが完全焼鈍により熱膨張係数4.5〜6.0×10−6/℃の範囲に回復したため、クラッド材全体の熱膨張係数が上昇したことによるものといえる。
1−2 第3層材(Ni材)
2 第2層材(KOV材)
3 ロール
4 3層クラッド材(Ni−KOV−Ni)
5 第4層材(Cu材)
6 第5層材(Agろう材)
7 5層クラッド材(Ni−KOV−Ni−Cu−Agろう)
Claims (3)
- 電子部品用パッケージの蓋に用いられる5層クラッド構造を有する素材の製造方法において、
前記5層クラッド構造は順に、第1層材をニッケル、第2層材を第1層材よりも熱膨張係数が低い金属、第3層材をニッケル、第4層材を銅、第5層材を銀ろう、とからなり、
各層厚は、第1層材が2〜16μm、第2層材が17〜52μm、第3層材が2〜16μm、第4層材が11〜40μm及び第5層材が4〜15μm、の範囲内であり、
前記製造方法は、第1の冷間圧延工程と、熱処理工程と、第2の冷間圧延工程とをこの順序で有し、
前記第1の冷間圧延工程にて、圧下率が30〜90%で前記第1層材から前記第3層材を有する3層クラッド材を圧延し、
前記熱処理工程にて、前記3層クラッド材を600〜1400℃の温度条件で熱処理し、
前記第2の冷間圧延工程にて、累積圧下率が85%以上で前記第4層材を芯材とし前記3層クラッド材と前記第5層材を外層材として複数回の圧延をする、
ことを特徴とする5層クラッド構造を有する電子部品用パッケージの蓋用素材の製造方法。 - 前記第2層材は、コバルト含有量が10〜25質量%、ニッケル含有量が25〜35質量%、の範囲内であり、かつ残部が鉄およびこれら以外の不純物であることを特徴とする請求項1に記載の5層クラッド構造を有する電子部品用パッケージの蓋用素材の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法により製造された5層クラッド構造を有する電子部品用パッケージの蓋用素材。
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