JP2010184283A - アルミニウム系材料の接合方法及び接合構造 - Google Patents
アルミニウム系材料の接合方法及び接合構造 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金から成る被接合材1,2の間に、酸化の標準生成自由エネルギーがAlよりも小さい元素、例えばLaを含有する金属ガラスから成る中間材3を介在させた状態で、金属ガラスの過冷却液体領域温度に加熱すると共に、加圧して、フラックスを用いることなく被接合材1,2を接合する。
【選択図】図1
Description
このようなフラックスとしては、塩化物系又はフッ化物系の一種よりなるものが使用される(例えば、特許文献1参照)。
一般に、このようなフラックスの大部分は、熱水(80〜100℃)によって除去することができるが、さらに完全に除去するためには、酸処理を行う必要がある。
いずれにしても、このような酸処理や、その後の洗浄の工程、さらにはそのための設備が必要となって、生産コストが増すばかりでなく、洗浄を完全に行うための酸洗が部品形状によって制約があったり、洗浄が十分ではないと腐食が生じたりするといったことが問題となる。
そもそも、熱応力や熱衝撃が問題となるような複雑形状の部品においては、製造工程上の制約から接合プロセス温度の上限が存在するため、高温プロセスであるロウ付による接合方法は適用できない。
そして、その目的とするところは、酸化皮膜除去用のフラックスを使用することなく、低温度で接合することができ、接合後のフラックス洗浄工程を不要にして、コスト低減が可能なアルミニウム系材料の接合方法を提供することにある。さらに、このような方法を適用したアルミニウム系材料の接合構造を提供することにある。
加えて、金属ガラスには、その融点に対して極めて低温の領域において過冷却液体状態となる特性がある。しかも、このような過冷却液体状態においては、通常の固相の状態よりも、上記元素による還元反応が起こり易くなり、アルミニウム系材料表面の酸化皮膜がより効果的に還元除去されることになる。
さらに、通常の固相状態に比べて、過冷却液体状態では、上記のように変形の自由度に富んでいるため、原子の移動が生じ易くなり、拡散も容易となる結果、良好な接合継手が得られるようになる。
したがって、被接合材に対する熱影響や、熱的改質の影響が生じず、強固な継手強度を確保でき、熱応力や熱衝撃が問題となるような複雑形状の部品など、製造工程の制約から接合プロセス温度の上限が存在するような継手構造にも、本発明方法を適用することができる。
すなわち、各金属の酸化物の標準生成自由エネルギーについては、2823Kにおいて、Al2O3が−497kJ/mol−O2であるのに対し、La2O3、CeO2、Ce2O3、Pr2O3のそれは、それぞれ−928kJ/mol−O2、−775kJ/mol−O2、−900kJ/mol−O2、−989kJ/mol−O2であることが知られている。
また、上記「酸化の標準生成自由エネルギー」とは、接合プロセス温度におけるもの、すなわち中間材としての金属ガラスが過冷却液体状態となる温度における標準生成自由エネルギーであることは言うまでもない。
図1(a)に示すように、まず、アルミニウム合金から成る被接合材1,2の間に、中間材3として、この例では、La系金属ガラスLa55Al25Ni20(ガラス転位温度Tg=480K、結晶化温度Tx=551K、過冷却液体領域温度:480〜551K)を挟持した状態に準備する。このとき、上記被接合材1,2の表面には、Al2O3から成る酸化皮膜Fが生成している。
これによって中間材3に含まれるLaの反応性が高まり、図1(b)に示すように、Laが被接合材1,2の表面の酸化皮膜Fを効率的に還元し、還元反応の進行によりAl2O3が分解され、図1(c)に示すように、被接合材1,2の新生面が露出される。
このとき、中間材3は、過冷却液体状態であることによって、通常の固相の状態よりも変形の自由度に富むことから、軽い加圧でも密着度が増し、原子間距離が小さくなる結果、原子の移動が生じやすくくなって拡散も容易に進行し、図1(e)に示すように、接合が完了する。
しかし、金属ガラスは、ガラス転位温度Tg〜結晶化温度Txの過冷却液体領域では、変形抵抗(強度)が低下することから、必要に応じて、結晶化温度Tx以上、アルミニウム系材料から成る母材の焼きなまし温度以下の温度に加熱することによって、中間材を結晶化することができる。一旦結晶化した後は、温度に拘わらず結晶状態が維持され、これによって継手強度が向上する。
図2に示すように、純アルミニウム材(A1050−H24)から成る直径15mm、厚さ2mmの円板状の被接合材1,2の間に、La系金属ガラスLa55Al25Ni20から成る厚さ30〜40μmの中間材3を挟み、台座S,Sの間で接合を行った。
なお、上記金属ガラスのガラス転位温度Tgは480K、結晶化温度Txは551K、過冷却液体領域温度は480〜551Kである。
接合条件としては、接合温度を540K、ひずみ速度を10−3/s(標点間距離:4mm)とし、真ひずみ速度一定で変位量0.7mmまで押し込んだ。
その結果、図4に示すように、接合界面に酸化物や他の成分によるコンタミは検出されなかった。また、接合界面においては、未接合領域である空隙など確認されず、良好な接合界面が得られた。
上記同様の被接合材1,2を接合するに際し、中間材3として、La系金属ガラスであるLa55Al20Cu25(ガラス転位温度Tg=423K、結晶化温度Tx=487K、過冷却液体領域温度:423〜487K)を使用し、接合温度を473Kとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の接合継手を得た。
接合界面において、未接合領域である空隙などは確認されず、良好な接合界面が得られた。
上記被接合材1,2を接合するに際し、中間材3として、Ce系金属ガラスであるCe70Al10Cu20(ガラス転位温度Tg=341K、結晶化温度Tx=408K、過冷却液体領域温度:341〜408K)を使用し、接合温度を380Kとしたことを除いて、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の接合継手を得た。
その結果、本例においても、接合界面における酸化物やコンタミの存在は検出されなかった。
同様に、上記被接合材1,2を接合するに際して、中間材3として、Pr系金属ガラスPr68Cu25Al7(ガラス転位温度Tg=382K、結晶化温度Tx=402K、過冷却液体領域温度:382〜402K)を使用し、接合温度を392Kとしたことの他は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の接合継手を得た。
その結果、本例においても、接合界面に酸化物やコンタミの存在が検出されることはなかった。
2 被接合材
3 中間材
F 酸化皮膜
Claims (6)
- アルミニウム又はアルミニウム合金から成る被接合材の間に、酸化物生成の標準自由エネルギーがAlよりも小さい元素を含有する金属ガラスから成る中間材を介在させた状態で、上記金属ガラスの過冷却液体領域温度に加熱すると共に、加圧して接合することを特徴とするアルミニウム系材料の接合方法。
- 接合した後、上記中間材を結晶化させることを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
- 上記中間材がLa、Ce及びPrから成る群より選ばれた少なくとも1種の金属を主成分として含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の接合方法。
- アルミニウム又はアルミニウム合金から成る被接合材の新生面同士が酸化の標準生成自由エネルギーがAlよりも小さい元素を含有する金属ガラスから成る中間材を介して接合されていることを特徴とするアルミニウム系材料の接合構造。
- 上記中間材が結晶化していることを特徴とする請求項4に記載の接合構造。
- 上記中間材がLa、Ce及びPrから成る群より選ばれた少なくとも1種の金属を主成分として含有していることを特徴とする請求項4又は5に記載の接合構造。
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