JP2011230128A - アルミニウム部材のろう付方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム合金製ブレージングシートから構成される第1の部材とアルミニウムあるいはアルミニウム合金から構成される第2の部材とをろう付けする方法であって、前記アルミニウム合金製ブレージングシートを構成する少なくとも一つの部位にMgを含有し、前記第1の部材と第2の部材との隙間に、Al−Si系アルミニウム合金の置きろうを配置し、フラックスを塗布しないで不活性ガス中において加熱して両部材をろう付けし、ろう付後において隙間に充填されるろう材のMg含有量が隙間以外のろう材のMg含有量の75%以下となることを特徴とするアルミニウム部材のろう付方法。
【選択図】図1
Description
本発明に係るアルミニウムのろう付けには、接合材であるろう材を備えるブレージングシートからなる第1の部材と、これにろう付接合される被接合部材であるアルミニウム材からなる第2の部材と、両者の隙間に配置される置きろうとから成るろう付用組付体が用いられる。そして、第1の部材と第2の部材及び置きろうの表面に存在する酸化皮膜を何らかの方法により破壊し、第1の部材のろう材と第2の部材とをろう付して金属的に接合するものである。従来の不活性ガス中でのろう付では、酸化被膜を破壊するためにフラックスが使用される。フラックスは化学反応により酸化皮膜を破壊するものである。これに対して、本発明のろう付方法は、フラックスを塗布せず、Mgを含有した第1の部材を用いて不活性ガス中で加熱してろう付を行うものである。第1の部材中に含有されるMgは、第1の部材のろう材や置きろうの表面、ならびに、第2の部材の表面に存在する酸化皮膜をろう付加熱中に還元してこれを破壊する。その結果、第1の部材と第2の部材はろう付によって金属的に接合することが可能になる。本発明において、第1の部材中に含有されるMgの含有量は0.001%以上とし、好ましくは0.1%以上である。
ろう付部位に隙間が存在する場合に、ブレージングシートの酸化被膜が十分に破壊されろう材が十分な流動性を有し、隙間から離れた部位からもろう材を供給できれば、隙間をろうで充填することができる。しかしながら、ブレージングシートに含まれるMgによる酸化皮膜破壊のみの作用では、大きな隙間を埋めるのに十分なろう材を供給することができない場合がある。その際は、隙間を埋めるためのろう材を追加して供給する必要があり、本発明では置きろうによりろう材を供給している。
本発明で用いる第1の部材であるアルミニウム合金製のブレージングシートはその第1の実施態様において、Mgを含有した心材とその片面にろう材をクラッドした2層ブレージングシート、又は両面にろう材をクラッドした3層ブレージングシートである。心材に含有されるMgが、ろう付性に重要な影響を与える。すなわち、ろう付加熱の際に心材に含有されるMgがろう材中に拡散し、ろう材溶融時にろう材表面から蒸発しながらろう材表面の酸化皮膜及び置きろうのアルミニウム酸化皮膜を還元、破壊して、第2の部材とのろう付けが達成される。更に、置きろう中にもMgが拡散することで、置きろうと第2の部材とのろう付を促進することができる。なお、ろう材のクラッド率は、片面で2.5〜30%であり、ブレージングシートの厚さは0.4〜3.5mmである。このようなブレージングシートは、例えば熱交換器のタンク壁に用いることができる。
ブレージングシートの製造は以下の方法で行う。心材およびろう材合金を通常のDC鋳造した後、ろう材を熱間圧延により所定の厚さまで圧延する。心材とろう材を重ね合わせて熱間圧延により圧着し、さらに冷間圧延により所定の厚さに圧延して製造する。
本発明の第1の実施態様において、心材は、Mg:0.2〜1.0mass%(以下、成分においては単に「%」と記す)を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl−Mn合金が用いられる。心材のMg含有量が0.2%未満ではろう材に拡散するMg含有量が不十分となる。その結果、ろう材や置きろうの酸化皮膜を十分に還元、破壊することができず、ろう付性が低下する。一方、Mg含有量が1.0%を超えると、心材からろう材や置きろうへのMg拡散量が過剰となり、ろう材や置きろうの表面に酸化マグネシウムが形成し、ろう付性が低下する。また、心材のMn含有量としては0.2〜1.6%が好ましい。含有量が0.2%未満では強度が不十分となり、1.6%を超えると成形性が低下する。
本発明の第1の実施態様において、ろう材は、Mg:0.05%以下、Si:5〜13を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl−Si合金が用いられる。Mgを0.05%以下とすることにより、ろう付の昇温中においては、ろう材表面にMgは少量しか存在しないため酸化マグネシウムの生成はほとんど無く、ろう材表面はほとんどアルミニウムの酸化皮膜で占められる。そこで、ろう材の溶融時に心材から拡散してきたMgによりアルミニウム酸化皮膜が還元、破壊され、ろう付が可能となる。一方、Mg含有量が0.05%を超えると、ろう付加熱時の昇温中にろう材表面に酸化マグネシウムが生成する。この酸化マグネシウムは、ろう材が溶融する温度に達した時点では厚い酸化皮膜となり、ろう付することができなくなる。また、Si含有量が5%未満では十分な量の溶融ろう材が生成せず、13%を超えると心材の浸食が顕著になりろう付性は低下する。
本発明で用いる第1の部材であるアルミニウム合金製のブレージングシートはその第2の実施態様において、心材とその片面又は両面にMgを含有するろう材をクラッドし、該ろう材表面に皮材をクラッドした3層又は5層ブレージングシートである。すなわち、皮材/ろう材/心材の3層、或いは、皮材/ろう材/心材/ろう材/皮材の5層のブレージングシートである。この態様では、ろう付性に寄与するMg源は、ブレージングシートの心材ではなくろう材である。したがって、第1の実施態様に比べて、心材におけるMg含有量は少量であって、ろう材におけるMg含有量が増大する。なお、ろう材のクラッド率は片面で2.5〜30%であり、皮材のクラッド率は片面で0.1〜10%である。ブレージングシートの厚さは0.4 〜3.5mmである。ブレージングシートの製造は以下の方法で行う。心材、ろう材および皮材合金を通常のDC鋳造した後、ろう材と皮材を熱間圧延により所定の厚さまで圧延する。心材とろう材と皮材を重ね合わせて熱間圧延により圧着し、さらに冷間圧延により所定の厚さに圧延して製造する
本発明の第2の実施態様において、心材は、Al−Mn合金が用いられる。心材のMn含有量は0.2〜1.6%が好ましい。Mn含有量が0.2%未満では強度が不十分となり、1.6%を超えると成形性が低下する。
本発明の第2の実施態様において、ろう材は、Mg:0.2〜1.5%、Si:5〜13を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl−Si合金が用いられる。Mg含有量が0.2%未満では、ろう材および置きろう表面の酸化皮膜を十分に還元、破壊することができず、ろう付性が低下する。一方、Mg含有量が1.5%を超えると、ブレージングシートをろう付加熱した際に、昇温中にろう材表面に酸化マグネシウムが生成する。この酸化マグネシウムは、ろう材が溶融する温度に達した時点では厚い酸化皮膜となり、ろう付することができなくなる。更に、ろう材から置きろうへのMg拡散量が過剰となり、置きろうの表面に酸化マグネシウムが形成し、ろう付性が低下する。また、Si含有量が5%未満では十分な量の溶融ろう材が生成せず、13%を超えると心材の浸食が顕著になりろう付け性は低下する。
本発明の第2の実施態様において、皮材は、ろう材が溶融するまでの昇温中にろう材表面の酸化防止層として機能する。つまり、ろう付加熱によりろう材が溶融すると、皮材を破ってろう材が露出することにより、フラックスを使用しないでろう付することができる。ろう材中に含有されるMgは、第2の部材の酸化皮膜を還元、破壊するとともに、置きろうの酸化皮膜を破壊し金属的に接合するろう付けを可能とする。更に、置きろう中にMgが拡散し、置きろうと第2の部材のろう付を促進することができる。皮材は、0.05%以下のMgを含有するアルミニウム合金からなる。0.05%を超えると皮材表面に酸化マグネシウムが形成するため、ろう付性が低下する。
本発明で用いる置きろうとしては、Mg含有量を0.2mass%以下に制限し、Si含有量が5〜13mass%で残部がAlと不可避的不純物からなるAl−Si系アルミニウム合金が適用できる。さらに、Mg含有量は0.05mass%以下であることが、より好ましい。溶融した置きろう材が隙間を充填していくためには、Mgにより第2の部材の酸化皮膜を破壊する必要がある。本発明では、Mgはろう付加熱中にブレージングシート中から供給されるため、置きろう中のMg含有量は0.2%以下とする。0.2%を超えると置きろう表面における酸化マグネシウムの形成が顕著になり、ろう付性が低下する。置きろう中のSi含有量は5〜13%とする。Si含有量が5%未満では十分な量の溶融ろう材が生成せず、13mass%を超えると置きろうから部材へのSi浸食が顕著になり良好なろう付性が得られず、製造性も低下する。
本発明に用いるアルミニウム材から構成される第2の部材は、上述の第1の部材であるアルミニウム合金製のブレージングシートと、その隙間をろう材で充填するようにろう付接合される。第2部材の材質は、純アルミニウム材、あるいはAl−Mn合金、Al−Zn合金などのアルミニウム合金が用いられる。このような第2の部材は、例えば熱交換器のチューブ材として用いられる。なお、本発明では、第1の部材と第2の部材のろう付と同時に、第1の部材及び第2の部材の少なくともいずれかに第3の部材もろう付されるようにしてもよい。例えば、第1の部材を熱交換器のタンク材とし、第2の部材を熱交換器のチューブ材とし、第3の部材をコルゲートフィン材とし、第1と第2の部材をろう付すると共に、コルゲートフィン材をチューブ間に挟みこんでこれとチューブとをろう付するようにしたろう付用組付体を作製し、次いで、この組付体をろう付することによって熱交換器を作製するものである。
ろう付けは、ろう材の溶融温度以上の温度に加熱すればよく、本発明においては590〜610℃に加熱することによりろう付けが可能となる。保持時間は3〜10分が適当である。ろう付加熱する雰囲気には、不活性ガスが用いられる。不活性ガスとしては、工業的に使用される窒素ガスやアルゴンガスが挙げられる。ろう付を可能にするためには雰囲気中の酸素濃度を250ppm以下とするのが適当であり、酸素濃度がより低い方が安定したろう付が可能となる。本発明でも、雰囲気中の酸素濃度は極力低くし、Mgの酸化をできるだけ抑制してろう付性を向上させることが必要である。
(1)フィレット形成状態
図2に示すように、フィレット形成状態を外観より観察した。全周に渡って安定したサイズのフィレット6が形成されたものを(○)とし、全周にわたってフィレットが形成されたがフィレットの大きさが小さいものを(△)とし、ろう切れ箇所が発生したものを(×)とした。○と△を合格とし、×を不合格とした。
図2に示すように、フィレット形成状態が合格の試料についてろう付部の断面を観察した。フィレット6におけるフィレット長さ7は、ろう付後のブレージングシート表面を基準としてチューブ4にろうが濡れ拡がった距離とした。
図2に示すように、ブレージングシート平坦部におけるろう材内部8のMg含有量(隙間以外のろう材のMg含有量)と、フィレット6のろう材内部9のMg含有量(隙間に充填されるろう材のMg含有量)とをEPMAによって測定した。
これらの比較例では置きろうがMgを含まず、ブレージングシートの心材のMg量あるいはろう材のSi量、Mg量の影響を示す。
比較例34では、2層ブレージングシートの心材及びろう材中のMg含有量が少な過ぎたので、置きろうを設置してもフィレットは形成されず、ろう付できなかった。
ットは形成されず、ろう付けできなかった。
比較例35では、2層ブレージングシートのろう材のSi含有量が多過ぎたのでフィレットは形成されず、ろう付けできなかった。
比較例36では、3層ブレージングシートのろう材のSi含有量が多過ぎたのでフィレットは形成されず、ろう付けできなかった。
比較例37では、3層ブレージングシートのろう材のMg含有量が低過ぎたのでフィレットは形成されず、ろう付けできなかった。
これらの比較例では2層ブレージングシートにおいて、置きろうのMg量、Si量の影響を示す。
比較例38では、置きろうのSi含有量が低過ぎたのでフィレットは形成されず、B/Aが75を超えてろう付性に劣った。
比較例39では、置きろうのSi含有量が多過ぎたのでフィレットは形成されず、B/Aが75を超えてろう付性に劣った。
比較例40では、置きろうのMg含有量が多過ぎたのでフィレットは形成されず、B/Aが75を超えてろう付性に劣った。
比較例41では、置きろうのMg含有量が多過ぎたのでフィレットは形成されず、B/Aが75を超えてろう付性に劣った。
比較例42では、置きろうを設置しなかったためフィレットは形成されず、B/Aが75を超えてろう付性に劣った。
これらの比較例では、3層ブレージングシートにおいて、置きろうのMg量の影響を示す。
比較例43では、置きろうのMg含有量が多過ぎたのでフィレットは形成されず、B/Aが75を超えてろう付性に劣った。
比較例44では、置きろうのMg含有量が多過ぎたのでフィレットは形成されず、B/Aが75を超えてろう付性に劣った。
比較例45では、置きろうを設置しなかったためフィレットは形成されず、B/Aが75を超えてろう付性に劣った。
2 ブレージングシートのろう材
3 ブレージングシートの心材
4 チューブ材
5 置きろう
6 フィレット
7 フィレット長さ
8 ブレージングシート平坦部のろう材内部のMg含有量分析位置
9 フィレットのろう材内部のMg含有量分析位置
10 ブレージングシートの穴
Claims (3)
- アルミニウム合金製ブレージングシートから構成される第1の部材とアルミニウムあるいはアルミニウム合金から構成される第2の部材とをろう付けする方法であって、前記アルミニウム合金製ブレージングシートを構成する少なくとも一つの部位にMgを含有し、前記第1の部材と第2の部材との隙間に、Al−Si系アルミニウム合金の置きろうを配置し、フラックスを塗布しないで不活性ガス中において加熱して両部材をろう付けし、ろう付後において隙間に充填されるろう材のMg含有量が隙間以外のろう材のMg含有量の75%以下となることを特徴とするアルミニウム部材のろう付方法。
- アルミニウム合金製ブレージングシートから構成される第1の部材とアルミニウムあるいはアルミニウム合金から構成される第2の部材とをろう付けする方法であって、前記アルミニウム合金製ブレージングシートが、Mg:0.2〜1.0mass%を含有し残部Al及び不可避的不純物からなるAl−Mn系アルミニウム合金を心材とし、当該心材の片面又は両面にSi:5〜13mass%、Mg:0.05mass%以下を含有し残部Al及び不可避的不純物からなるAl−Si系アルミニウム合金のろう材がクラッドされた構成を成し、前記第1の部材と第2の部材との隙間に、Si:5〜13mass%、Mg:0.2mass%以下を含有し残部Al及び不可避的不純物からなるAl−Si系アルミニウム合金の置きろうを配置し、フラックスを塗布しないで不活性ガス中において加熱して両部材をろう付し、ろう付後において隙間に充填されるろう材のMg含有量が隙間以外のろう材のMg含有量の75%以下となることを特徴とするアルミニウム部材のろう付方法。
- アルミニウム合金製ブレージングシートから構成される第1の部材とアルミニウムあるいはアルミニウム合金から構成される第2の部材とをろう付けする方法であって、前記アルミニウム合金製ブレージングシートがAl−Mn系アルミニウム合金を心材とし、当該心材の片面又は両面にSi:5〜13mass%、Mg:0.2〜1.5mass%を含有し残部Al及び不可避的不純物からなるAl−Si系アルミニウム合金のろう材がクラッドされ、前記ろう材の表面にMg:0.05mass%以下を含有し残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金の皮材が更にクラッドされた構成を成し、前記第1の部材と第2の部材との隙間に、Si:5〜13mass%、Mg:0.2mass%以下を含有し残部Al及び不可避的不純物からなるAl−Si系アルミニウム合金の置きろうを配置し、フラックスを塗布しないで不活性ガス中において加熱して両部材をろう付し、ろう付後において隙間に充填されるろう材のMg含有量が隙間以外のろう材のMg含有量の75%以下となることを特徴とするアルミニウム部材のろう付方法。
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