JP2006307292A - ろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材、及びそれを備えたラジエータチューブと熱交換器 - Google Patents

ろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材、及びそれを備えたラジエータチューブと熱交換器 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐食性及びろう付性の向上を同時に実現する、ろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材、及びそれを備えたラジエータチューブと熱交換器を提供する。
【解決手段】 アルミ合金基材2の一面2aに、Si粉末と、フッ化物系フラックスと、バインダとを含有したろう付用組成物が塗布されてなるろう材層3が設けられており、前記Si粉末の粒径が4μm以上10μm以下の範囲であり、前記フッ化物系フラックスを構成する全粒子の粒径が10μm以下であり、アルミ合金基材2の他面2bには、Znを含有した犠牲材が塗布されてなる犠牲材層4が設けられた構成としている。これにより、一面2a側において優れたろう付性を有するとともに、他面2b側において高い耐食性を有するラジエータチューブ用アルミニウム合金板材1が得られる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材、及びそれを備えたラジエータチューブと熱交換器に関する。
従来、ラジエータやヒータコア等の水冷式の自動車用熱交換器に用いられるチューブ材では、片面にAl-Si系ろう材、もう一方の面にJIS規定7072合金などの犠牲陽極皮材をクラッドしたブレージングシートが使用されており、ベアフィン材と組み合わされ、ろう付けされて使用されている。
また、コンデンサ等のカーエアコン用材料においては、押出多穴管と、両面にろう材をクラッドした、所謂クラッドフィン材が組み合わされ、ろう付けされて使用されている。これらの熱交換器におけるろう付け方法として従来、真空ろう付け方法と、ろう付け前にフラックスを塗布し、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中でろう付けする方法の2種類が知られている。
また、最近では、これらのようなクラッド材を使用することなくろう付けする技術が開発されてきており、例えば、アルミニウム、銅、黄銅、鋼などの表面にSi、Cu、Geとフラックスからなる組成物を塗布してろう付けする方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
この特許文献1に記載の技術は、カーエアコンのコンデンサなどに応用され、押出多穴管に塗布したろう材組成物とベアフィンと組み合わせにより接合した熱交換器が実用化されており、以下のような過程でろう付が進行する。
(1)ろう付け熱処理の昇温課程においてフラックスが加熱されて活性化する。
(2)活性化したフラックスがアルミニウム合金材料表面とSi粉末表面の酸化皮膜を破壊する。
(3)酸化皮膜が破壊された後、それぞれの金属が接触することにより固相拡散が進行し、Al-Si合金共晶組成となった部分から溶解し、ろう材層を形成する。
塗布材の金属成分についてさらに詳述すると、特許文献1の記載によれば、使用する金属の粒径は4〜80μm、好ましくは5〜50μmが良いとされている。
なお、ろう材面に使用するフラックスとしては、例えばNOCOLOK FLUX(ノコロックフラックス:NOCOLOK;ノコロックは登録商標)、或いはNOCOLOK Zn FLUX(ノコロック亜鉛フラックス)等のフッ化物系フラックス(詳細には、4フッ化カリウムアルミニウムを主成分とするフラックス)が用いられる。
特表平6−504485号公報
特許文献1に記載されたアルミニウム合金材は、ろう材としてSi粉末が含有されてなるろう付用組成物を、アルミニウム合金材の表面に塗布してろう付を行う構成となっている。
しかしながら、特許文献1に記載のアルミニウム合金材では、Si粉末の粒径を5〜50μmの範囲内としてろう付を行った場合、粒径は比較的大きなSi粉末粒子下にあるアルミニウム合金基材に対し、Siの深さ方向への拡散が進み易く、所謂エロージョンが発生する。
アルミニウム合金材を用いた熱交換器のろう付では、ろう付時に液相となったろう材がチューブ材の表面に均一に広がり、各接合部にろう材が供給されるのが好ましいが、エロージョンが進行し易い状態だと、各接合部へのろう材の均一な供給が困難になり、ろう付不良が発生してしまう。
また、Si粉末の粒径を5μm以下のみとした場合、Si粉末の表面積が増大するため、Si粉末表面の酸化膜が極大となる。フラックスは、ろう付の際にSi粉末の酸化膜を破壊する役割があるが、Si粉末の粒径を5μm以下としたろう付用組成物ではフラックス配合量が不足となり、ろう形成不良を生じやすくなる。
ろう付用組成物中のフラックス配合量を増やすことにより、ろう付性を改善することは可能だが、製造コストが上昇してしまうという問題がある。
また、フラックスはろう付加熱処理途中で溶融するため、特にチューブ外面に設けられたろう材面とフィン材との間で、両部材間の距離が収縮する現象が生じる。このため、フラックスに粒径の大きな粒子が多く含まれている場合、ラジエータ全体として多大な収縮が発生し、ろう付不良の原因となる虞がある。
アルミニウム合金材のろう付に用いるフラックスとして一般的に使用されるNOCOLOK FLUX、及びNOCOLOK Zn FLUXのフッ化物系フラックスの内、ろう付性の点ではNOCOLOK Zn FLUXが優れている。これは、NOCOLOK FLUXを用いた場合、ろう付時にKAlF等が溶融してアルミニウム合金材表面の酸化膜を破壊するのに対し、NOCOLOK Zn FLUXを用いた場合は、次式(1)式に示す反応式により、ZnとAlの置換作用が伴い、ろう形成が促進されるためと考えられている。
KZnF + AlSi(結晶) → KAl + Zn−AlSi (at560℃) ・・・(1)
従って、ろう付性の観点では、フラックスとして、Znを含有するフッ化物系フラックスを用いることが望ましい。
しかしながら、昨今の自動車の軽量化に伴い、自動車熱交換器の軽量化も大きく進んでおり、例えば、肉厚が0.2mm以下のチューブ材が用いられたラジエータ等では、チューブ外面にZn層(犠牲材層)を形成した場合、チューブ内部を流れる冷却液によって生じる腐食の進行が早くなり、実用耐用年数に満たないのにも関わらず、腐食箇所がチューブ材を貫通してしまう虞がある。従って、上述の腐食を防止する点では、チューブ外面のろう材層に、Zn層(犠牲材層)を形成しないフッ化物系フラックスを用いることが望ましいが、この場合には、ろう付性が低下するという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、耐食性及びろう付性の向上を同時に実現する、ろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材、及びそれを備えたラジエータチューブと熱交換器を提供することを目的とする。
本出願人は、ろう付性及び耐食性の何れの特性も優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材を得るべく検討を重ねた結果、以下の構成のラジエータチューブ用アルミニウム合金板材を得るに至った。
(1)請求項1に記載の発明
アルミニウム合金基材の一面に、Si粉末と、フッ化物系フラックスと、バインダとを含有したろう付用組成物が塗布されてなるろう材層が設けられており、前記Si粉末の粒径が4μm以上10μm以下の範囲であり、前記フッ化物系フラックスを構成する全粒子の粒径が10μm以下であり、前記アルミニウム合金基材の他面には、Znを含有した犠牲材を塗布してなる犠牲材層が設けられていることを特徴とするろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材。
(2)請求項2記載の発明
前記犠牲材層に含有されるZnは、Znを含有するアルミニウム合金のクラッド、若しくはZnを含有するフッ化物系フラックスによって得られることを特徴とする請求項1に記載のろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材。
(3)請求項3に記載の発明
前記アルミニウム合金基材の厚さが0.1mm以上0.2mm以下の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材。
(4)請求項4に記載の発明
請求項1〜3の何れかに記載のろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材を備えてなるラジエータチューブ。
(5)請求項5に記載の発明
請求項4に記載のろう付性に優れたラジエータチューブを備えてなる熱交換器。
本発明のろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材によれば、アルミニウム合金基材の一面に、Si粉末と、フッ化物系フラックスと、バインダとを含有したろう付用組成物を塗布してなるろう材層が設けられ、前記Si粉末の粒径が4μm以上10μm以下の範囲であり、前記フッ化物系フラックスを構成する全粒子の粒径が10μm以下であり、前記アルミニウム合金基材の他面には、Znを含有した犠牲材を塗布してなる犠牲材層が設けられた構成としている。
これにより、一面側において優れたろう付性を有するとともに、他面側において高い耐食性を有するラジエータチューブ用アルミニウム合金板材が得られる。
従って、このアルミニウム合金板材を備えたラジエータチューブ材の軽量化を図ることができるとともに、ろう付性や寿命の向上が実現できる。
以下、本発明に係るラジエータチューブ用アルミニウム合金板材(以下、アルミ合金板材と略称することがある)の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態のアルミ合金板材1は、アルミ合金基材2の一面2aに、Si粉末と、フッ化物系フラックスと、バインダとを含有するろう付用組成物が塗布されてなるろう材層3と、アルミ合金基材2の他面2bに、Znを含有する犠牲材が塗布されてなる犠牲材層4が設けられて概略構成されている。
また、ろう材層3を形成するろう付用組成物は、前記Si粉末の粒径を4μm以上10μm以下の範囲とし、前記フッ化物系フラックスを構成する全粒子の粒径が10μm以下となるように構成されている。
また、本実施形態のアルミ合金板材1では、犠牲材層4に含有されるZnが、Znを含有するアルミニウム合金のクラッド、若しくはZnを含有するフッ化物系フラックスによって得られるように構成されている。
また、本実施形態のアルミ合金板材1では、アルミ合金基材2の厚さを0.1mm以上0.2mm以下の範囲として構成している。
本実施形態のアルミ合金板材1は、図2に示すようなラジエータチューブ(以下、チューブと略称することがある)10をなす合金板材として用いることができ、チューブ10は、図3に示すようなラジエータ(熱交換器)20に組み込まれて用いられる。
チューブ10は、アルミ合金板材1を、犠牲材層4が内側となるように折り曲げ、両端部(図示略)を接合して加工することにより、内部に流通孔10aを有する中空扁平状のチューブ材として得られる。
図3に示すラジエータ20は、例えば自動車のラジエータ等に用いられ、チューブ10と、ヘッダー21と、フィン22と、サイドサポート23とから概略構成されている。ラジエータ20は、ろう付接合によってチューブ10、ヘッダー21及びフィン22が各々一体化され、更に樹脂タンクが機械的接合(かしめ加工)により取り付けられて製造される。
そして、ラジエータ20において、ヘッダー21とチューブ10とは、ヘッダー21の下面に複数整列形成されたスロット(差込孔)21aに各チューブ10の端部を差し込み、差込部分の周りに配置したろう材を用いて両者を相互にろう付するとともに、チューブ10とフィン22は、チューブ10の表面に塗布したろう付け用組成物、つまり、アルミ合金板材1の一面1a側(アルミ合金基材2の一面2a側)に設けられたろう材層3を用いて、両者を相互にろう付けすることで組み立てられている。
以下に、本実施形態のアルミ合金板材1の各構成、及び成分組成についての詳細を説明する。
[アルミ合金基材]
アルミ合金基材2は、本実施形態のアルミ合金板材1の基材であり、例えば、Siと、Mnと、残部Al及び不可避不純物を含有した成分組成とされ、必要に応じて強度特性や耐エロージョン性等を向上させるための、他の元素が添加されてなる。
アルミ合金基材2は、後述するろう付用組成物が塗布される一面2aと、犠牲材が塗布される他面2bを有している。
アルミ合金基材2の厚さは、0.1mm以上0.2mm以下の範囲内であることが好ましい。
アルミ合金基材2の厚さが0.2mmを超える場合には、肉厚であるために、ラジエータの重量が増加して軽量化できなくなる。
また、アルミ合金基材2を0.1mm以下とするのは、アルミニウム合金の加工上、困難である。
[ろう材層]
ろう材層3は、上述したように、アルミ合金基材2の一面2aにろう付用組成物が塗布されることによって形成され、Si粉末と、フッ化物系フラックスと、バインダとを含有してなる。
以下に、ろう材層3の成分組成について詳述する。
「Si粉末」
Si粉末は、後述するフッ化物系フラックス及びバインダとともにろう材層3(ろう付用組成物)をなし、Si及び不可避的不純物からなる粉末ろうであり、ろう付時にアルミ合金基材2内部に拡散することによってろうを形成する。
Si粉末の粒径は、4μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。
Si粉末の粒径が4μm未満だと、Si粉末粒子の表面積が増大するために酸化膜が極大となり、ろう付性改善のために後述するフッ化物系フラックス配合量を増量する必要があり、製造コストが上昇してしまう。
Si粉末の粒径が10μmを超えると、アルミ合金板材のエロージョンが大きくなり、ろう付の際に溶融ろうが均一に行き渡らず、ろう付不良が生じる虞がある。
「フッ化物系フラックス」
フッ化物系フラックスは、Si粉末及び後述するバインダとともに配合されてろう材層3をなし、K1−3AlF4−6等からなる。
フッ化物系フラックスとしては、KAlF(4フッ化カリウムアルミニウム)等を主成分とし、また、KAlF・HO、KAlF等が含有されるノコロックフラックスを用いることが好ましいが、フッ化物系フラックスは適宜選択して採用することができる。
フッ化物系フラックスは、アルミ合金板材1のろう付を行う際に、フッ化物系フラックスに含有されるKAlF等が溶融してアルミ合金板材1及びSi粉末の酸化膜を破壊し、ろう付性を高める。
フッ化物系フラックスは、その成分組成の全粒子の粒径が10μm以下であることが好ましい。フッ化物系フラックスの全粒子の粒径を10μm以下とすることにより、ろう付性を向上することができる。
フッ化物系フラックスの粒径が10μmを超えると、図3に示すような、複数のチューブを整列してなるラジエータ20を組み付けた際、チューブ10とフィン22の接合部に、粒径の大きなフッ化物系フラックスが介在して組み付けられた状態となる。この状態で加熱ろう付処理を行った場合、粒径の大きなフッ化物系フラックスが溶解することにより、チューブ10とフィン22の間が縮寸してろう付される。チューブ10及びフィン22を、例えば数10段重ねて組み付けた場合には、各接合部における縮寸が積算され、ラジエータコア内の寸法が数mm単位で大きくずれてしまい、ろう付不良を起こす虞がある。
なお、通常使用するフッ化物系フラックスの粒径の下限は0.1μmである。
ろう材層3(ろう付用組成物)中におけるフッ化物系フラックスの添加量は、重量比で、Si粉末:フッ化物系フラックス=1:10乃至5:10の範囲であることが好ましい。
フッ化物系フラックスを、上述した範囲の上限を超えて添加しても、ろう付性向上効果は飽和してしまう。また、上述した範囲の下限を下回る添加量だと、Si粉末の酸化膜を破壊する効果が不十分となる。
「バインダ」
ろう材層3を形成するろう付用組成物に配合されるバインダとしては、アクリル系樹脂等からなるバインダを用いることができる。
[犠牲材]
犠牲材層4は、アルミ合金基材2の他面2bに、Znを含有するアルミニウム合金のクラッド、若しくはZnを含有するフッ化物系フラックス(例えばZnF、KZnF)、からなる犠牲材が塗布されて形成される。
犠牲材層4に、Znを含む層を配することにより、アルミ合金板材1の他面1b(アルミ合金基材2の他面2b)側の耐食性が向上する。
図2に示すように、アルミ合金板材1からなるチューブ10を形成する際には、犠牲材層4が内側となるようにチューブ形成することにより、チューブ10の内側に形成された流通孔10a内面の耐食性が向上し、該流通孔10a内を流れる冷却液による腐食進行を防止することができる。
また、アルミ合金基材2の他面2bに、Znを有するフッ化物系フラックスを塗布することにより、Zn層が配された犠牲材層4を得る場合には、例えば、KZnF、ZnF等がある。なお、これらのZnを有するフッ化物系フラックスにKAlF等を混合して用いても良い。
図3に示すような、本実施形態のアルミ合金板材1からなるチューブ10を備えたラジエータ20の組立、ろう付を行う際は、ヘッダー21に、ろう付用組成物が塗布されてなるろう材層3が表面に設けられたチューブ10及びフィン22を組み付けた後、窒素雰囲気中等の適当な雰囲気で適温に加熱してろう材を溶解させる。
ろう付熱処理は、580℃乃至610℃程度で行うことが好ましく、保持時間は1分乃至10分程度が好ましい。
ろう付時の温度が580℃未満だと、ろう材及びアルミ合金基材の一部溶解が進まず、良好なろう付を行うことが困難になる。
ろう付時の温度が610℃を超えると、著しい侵食が生じる虞がある。
上述のラジエータ20の構造によれば、チューブ10を差し込むためのスロット21aが下面に設けられたヘッダー21にチューブ10が接合されているので、組立品全体のろう付け後の強度を高くすることができる。
以上、説明したように、本実施形態のろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材によれば、アルミニウム合金基材2の一面2aに、Si粉末と、フッ化物系フラックスと、バインダとが含有されるろう付用組成物が塗布されてなるろう材層3が設けられており、前記Si粉末の粒径が4μm以上10μm以下の範囲であり、前記フッ化物系フラックスを構成する全粒子の粒径が10μm以下であり、アルミニウム合金基材2の他面2bには、Znを含有する犠牲材が塗布されてなる犠牲材層4が設けられた構成としている。
これにより、一面側において優れたろう付性を有するとともに、他面側において高い耐食性を有するラジエータチューブ用アルミニウム合金板材が得られる。
従って、このアルミニウム合金板材を備えたラジエータチューブ材の軽量化を図ることができるとともに、ろう付性や寿命の向上が実現できる。
以下に、本発明にかかるろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材の実施例について説明する。
下記表1に示す各実施例及び比較例の作製条件(Si粉末粒径、及びフッ化物系フラックス粒径)で、本発明に係るアルミ合金板材(実施例)、及び従来のアルミ合金板材(比較例)を作製し、ろう付性について評価した。
[作製工程]
アルミニウム合金材として、3003−H14を用い、板厚が0.15mmのアルミ合金基材を作製した。
ろう付用組成物として、各実施例及び比較例に示す各成分組成のSi粉末を用い、このSi粉末に、フッ化物系フラックスとしてKAlFを配合した。バインダとして、アクリル樹脂系バインダを用いて配合した。
また、犠牲材として、クラッドのサンプルについては、7072、クラッド率10%、フラックスのサンプルについては、KZnFを用いた。
図1に示すように、アルミ合金基材の一面に、各成分組成のろう付用組成物を、塗膜量を15g/mとして、バーコーターを用いて塗布するとともに、アルミ合金基材の他面に上記成分組成の犠牲材を塗布した後、150℃の温度で5分間乾燥させてろう材層及び犠牲材層を形成し、本発明に係るアルミ合金板材及び従来のアルミ合金板材を、表1に示す作製条件毎に得た。
図2に示すように、これらのアルミ合金板材を、犠牲材層が内側となるように折り曲げ、両端部を接合して加工し、中空扁平状のチューブを、表1に示すアルミ合金板材の作製条件毎に得た。
ろう付性の評価については、以下の2項目の評価試験を行って評価、判定した。
[フィン接合率]
上述の、アルミ合金板材の成分組成毎に得られた各チューブを、図3に示すようなラジエータ(熱交換器)に取り付けてろう付処理を行い、チューブへのフィン接合率を調べた。フィン接合率(%)は、次式(1)によって求めた。
(ろう形成面積/チューブとフィンとの設置面積)×100 ・・・(1)
上記(1)式によって求めたフィン接合率から、以下の評価基準で判定した(○△×で表記)。
(1)○:フィン接合率が90%以上だった。
(2)△:フィン接合率が80%以上90%未満だった。
(3)×:フィン接合率が80%未満だった。
[コア収縮度]
上述の、アルミ合金板材の成分組成毎に得られた各チューブを、図3に示すようなラジエータに取り付けてろう付処理を行った。ラジエータコアには、長さが350mmのチューブを33本取付けた。
そして、図3に示すラジエータの両辺に取付けられているサイドサポート23(図示例では片側を省略)間の、初期寸法に対する収縮量(mm)を測定し、以下の評価基準で判定した(○△×で表記)。
(1)○:収縮度小(3mm未満)
(2)△:収縮度中(3mm以上6mm未満)
(3)×:収縮度大(6mm以上)
各実施例及び比較例の各作製条件、及び評価試験結果の一覧を表1に示す。
Figure 2006307292
表1に示すように、実施例1〜3に記載した例においては、ろう材層に含有されるSi粉末の粒径が4μm以上10μm以下の範囲内であり、フッ化物系フラックスの粒径が10μm以下となっており、この際のフィン接合率及びコア収縮度の評価は、何れも○であった。これにより、本発明に係るアルミ合金板材が、優れたろう付性を有していることが明らかである。
これに対し、比較例1では、Si粉末の粒径が2μm以下であり、ろうが形成できず、フィン接合率の評価が×となった。なお、
比較例2では、フッ化物系フラックスの粒径が11〜50μmであり、コア収縮度の評価が△となった。
比較例3では、Si粉末の粒径が11〜30μmであり、フィン接合率及びコア収縮度の評価が、ともに△となった。
比較例4では、Si粉末の粒径が11〜50μmであり、また、フッ化物系フラックスの粒径が11〜50μmであり、フィン接合率及びコア収縮度の評価が共に△となった。
比較例5では、Si粉末の粒径が5〜50μmであり、また、フッ化物系フラックスの粒径が100μm以下であり、フィン接合率及びコア収縮度の評価が共に×となった。
比較例6では、犠牲材層が設けられていないため、チューブ内部の耐食性が低下した。
上記結果により、アルミニウム合金基材の一面に、Si粉末と、フッ化物系フラックスと、バインダとが含有されるろう付用組成物を塗布してなるろう材層を設け、Si粉末の粒径を4μm以上10μm以下の範囲とし、フッ化物系フラックスを構成する全粒子の粒径を10μm以下とした、本発明に係るラジエータ用アルミニウム合金板材のろう付性が非常に優れていることが明らかとなった。
本発明のラジエータチューブ用アルミニウム合金板材の一例を示す断面図である。 本発明のラジエータチューブ用アルミニウム合金板材からなるチューブの一例を示す斜視図である。 本発明のラジエータチューブ用アルミニウム合金板材からなるチューブを用いたラジエータ(熱交換器)の一例を示す斜視図である。
符号の説明
1…ラジエータチューブ用アルミニウム合金板材(アルミ合金板材)、1a…一面、1b…他面、2…アルミ合金基材、2a…一面、2b…他面、3…ろう材層、4…犠牲材層、10…ラジエータチューブ(チューブ)、10a…流通孔、20…ラジエータ(熱交換器)、21…ヘッダー、22…フィン

Claims (5)

  1. アルミニウム合金基材の一面に、Si粉末と、フッ化物系フラックスと、バインダとを含有したろう付用組成物が塗布されてなるろう材層が設けられており、
    前記Si粉末の粒径が4μm以上10μm以下の範囲であり、
    前記フッ化物系フラックスを構成する全粒子の粒径が10μm以下であり、
    前記アルミニウム合金基材の他面には、Znを含有した犠牲材が塗布されてなる犠牲材層が設けられていることを特徴とするろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材。
  2. 前記犠牲材層に含有されるZnは、Znを含有するアルミニウム合金のクラッド、若しくはZnを含有するフッ化物系フラックスによって得られたことを特徴とする請求項1に記載のろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材。
  3. 前記アルミニウム合金基材の厚さを0.1mm以上0.2mm以下の範囲としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載のろう付性に優れたラジエータチューブ用アルミニウム合金板材を備えてなるろう付性に優れたラジエータチューブ。
  5. 請求項4に記載のろう付性に優れたラジエータチューブを備えてなる熱交換器。

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