JP4954551B2 - ろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金及びそれを用いたブレージングシート、熱交換器用ヘッダーパイプ並びに熱交換器 - Google Patents
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Description
このようなブレージングシートでは、代表的な芯材としてAl−Mn系アルミニウム合金が用いられ、片面にAl-Si系ろう合金をクラッドし、他面に犠牲陽極材としてAl−Zn系合金やAl−Mg−Zn系合金をクラッドした3層のものがあり、自動車用の熱交換器を構成するヘッダーパイプやチューブに用いられる。
例えば、図1に示すようなアルミニウム合金材料からなるチューブ1を、図2に示すような熱交換器10のヘッダーパイプ11、12に組み付ける際は、上述のようなブレージングシートを用いてヘッダーパイプ11、12を構成し、チューブ1をヘッダーパイプ11、12に組み付けた状態として所定の温度に加熱することにより、ブレージングシートによって供給されるろう合金が接合部に溜まってフィレットが形成され、ろう付が行われる。
特許文献1によれば、上述のブレージングシートを用いてチューブを構成することにより、チューブの耐エロージョン性が向上するため、チューブとヘッダーパイプとの接合部から多量のろう合金がチューブ側に流れ込んだ場合でも、エロージョンの発生を抑制することができるというものである。
このように、特許文献1に記載のブレージングシートでは、自動車熱交換器に用いた場合に、結果として大きなエロージョンが発生してしまう虞があった。
本発明は、以下に関する。
Si:5.0%以上13.0%以下(質量%、以下同様)、Ti:0.05%以上1.0%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、Zr:0.01%以上0.5%以下をそれぞれ含有し、残部がAlと不可避不純物とからなることを特徴とする、ろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金。
(2)請求項2に記載の発明
請求項1に記載のろう付け時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金の成分として、更に、Cr:0.05%以上1.0%以下を含有してなることを特徴とする、ろう付け時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金。
(3)請求項3に記載の発明
請求項1または2に記載のろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金からなる面材が、アルミニウム合金からなる芯材の片面あるいは両面に貼り合わせられてなることを特徴とする、ろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムブレージングシート。
(4)請求項4に記載の発明
請求項1または2に記載のろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金でろう付されたことを特徴とする熱交換器用ヘッダーパイプ。
(5)請求項5に記載の発明
請求項3に記載のろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムブレージングシートから構成されることを特徴とする熱交換器用ヘッダーパイプ。
(6)請求項6に記載の発明
周面の少なくとも一部に、長さ方向に沿って溝が形成されてなるチューブがヘッダーパイプにろう付されてなる熱交換器であって、前記ヘッダーパイプが、請求項4又は5に記載の熱交換器用ヘッダーパイプであることを特徴とする熱交換器。
また、溶融ろうのろう侵食性を低下させれば、仮に、ろうがチューブ側に多少流動した場合であっても、チューブのエロージョンを抑制することが可能となる。従って、溶融ろうの流動性が低く、且つエロージョンが発生しにくいろう材を、充分な量で接合部まで流動させることにより、ろう付不具合、ひいては熱交換器の性能低下を防止できることが明らかとなった。
上述の成分とすることにより、ろう合金の融点が低くなるとともに、流動係数が低くなる。これにより、ろう付の際、ろう合金がろう付接合部から流れ出てしまうのを抑制することができ、ろう付性が向上するとともに、ろう付接合される素材にエロージョンが生じるのを抑制することができる。
本実施形態のアルミニウムろう合金は、Si:5.0%以上13.0%以下(質量%、以下同様)、Ti:0.05%以上1.0%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、Zr:0.01%以上0.5%以下をそれぞれ含有し、更に、必要に応じてCr:0.05%以上1.0%以下を含有し、残部がAlと不可避不純物とからなる成分組成とされている。
以下、本実施形態のアルミニウムろう合金の、成分組成の数値限定理由について説明する。
ケイ素(Si)は、Alに含有することによってAlの融点を低くする作用を有しており、アルミニウムろう合金を用いたろう付温度(580〜610℃)で溶融して流動させ、所定のフィレットを形成するのに必要な基本元素である。
Siの含有量は、質量%で5.0%以上13.0%以下の範囲であることが好ましく、この範囲内であれば、ろう材として優れた機能が得られる。
Siの含有量が5.0%未満だと、充分な流動性が得られず、ろう付温度において溶融ろうが不足し、、ろう付不良が発生する。
Siの含有量が13.0%を超えると、初晶Siが急激に増加してろう合金の融点が上昇し、ろう付温度において殆どのろう材が液相となってしまい、エロージョン性の高い溶融ろうが流動するので好ましくない。
また、Siの含有量のより好ましい範囲は、7.0%以上11.0%以下である。
チタン(Ti)は、Al-Si系合金に添加することにより、溶融したろう合金の流動性を低くするとともに、Al-Si系合金溶融ろうの液相線温度を上昇させて過剰な溶融を抑制する効果を有している。
Tiの含有量は、質量%で0.05%以上1.0%以下の範囲であることが好ましい。
Tiの含有量が0.05%未満だと、上述の効果が充分に得られず、また、1.0%を超えると、鋳造や圧延による加工が困難になるとともに、ろう付の際に、ろうが流動するのを阻害する金属間化合物の形成及び成長が進行してしまうので好ましくない。
また、Tiの含有量のより好ましい範囲は、0.1%以上0.3%以下である。
通常、ろう付の際の熱処理は、600℃付近の温度で実施されるが、ろう付によって造管されるチューブの場合、一般にろう材中のSi量は7.0%〜10.0%程度の範囲に制御されている。
本発明では、ろう材中にTiを添加することでろう材の特性を変化させ、ろう材中のSi量を5.0〜13.0%とした場合でも、優れたろう付性が得られることを見出した。
マンガン(Mn)は、Al-Si系合金に添加することにより、溶融したろう合金の流動性を低くする効果を有している。
Mnの含有量は、質量%で0.1%以上2.0%以下の範囲であることが好ましい。
Mnの含有量が0.1%未満だと、上述の効果が充分に得られず、また、2.0%を超えると、ろうが流動するのを阻害する金属間化合物の形成及び成長が進行してしまうので好ましくない。
また、Mnの含有量のより好ましい範囲は、0.3%以上1.0%以下である。
ジルコニウム(Zr)は、Al-Si系合金に添加することにより、溶融したろう合金の流動性を低くするとともに、Al-Si系合金溶融ろうの液相線温度を上昇させて過剰な溶融を抑制する効果を有している。
Zrの含有量は、質量%で0.01%以上0.5%以下であることが好ましい。
Zrの含有量が0.01%未満だと、上述の効果が充分に得られず、また、0.5%を超えると、ろうが流動するのを阻害する金属間化合物の形成及び成長が進行してしまうので好ましくない。
また、Zrの含有量のより好ましい範囲は、0.05%以上0.2%以下である。
Crは、Al-Si系合金に添加することにより、溶融したろう合金の流動性を低くする効果を有している。
Crの含有量は、質量%で0.05%以上1.0%以下の範囲であることが好ましい。
Crの含有量が0.05%未満だと、上述の効果が充分に得られず、1.0%を超えると、ろうが流動するのを阻害する金属間化合物の形成及び成長が進行してしまうので好ましくない。
また、Crの含有量のより好ましい範囲は、0.2%以上0.5%以下である。
Tiは、Al-Si系ろう合金中において、その添加量に応じてAl−Ti系金属間化合物及び固溶体を形成し、溶融ろうの流動性を低くする。
また、ZrもTiと同様の効果を有しており、Zrの添加量を微量に制御することで、Tiとの複合作用により、溶融ろうの特性を顕著に変化させることが可能となる。
また、Mnは、Ti及びZrとは関係無く、Al-Si系溶融ろう中に固溶、または金属間化合物として存在し、溶融ろうの流動性を低くする効果がある。
これらの元素を同時に含有させ、必要に応じてCrを含有させることで、複合作用によって溶融ろうの流動性を制御することが可能となり、従来のろう合金に比べ、溶融ろうの流動による過剰なエロージョンを抑制する効果がある。
本発明のアルミニウムろう合金では、Al-Si系合金のろう材にZnが含有された成分組成であっても良い。この場合、Znの含有量は、質量%で1.0%以上5.0%の範囲であることが好ましい。
また、本発明のアルミニウムろう合金では、質量%でFeが0.5%以下、Mgが0.2%以下の範囲で含有された成分組成であっても、上述した本発明の効果が損なわれることは無い。
また、ろう付時の表面酸化被膜の成長を抑制して接合性を向上させるため、Sr、Bi、Be、Caの各元素を、それぞれ質量%で0.1%以下の範囲で添加した成分組成とすることもできる。
本発明の、ろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金からなる面材を、アルミニウム合金からなる芯材の片面あるいは両面に貼り合わせることにより、アルミニウムブレージングシートが得られる。
本発明の、ろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムブレージングシートは、該ブレージングシートからなる部材のろう付を行う際、上述した本発明のアルミニウムろう合金と同様の効果が得られる。
図2に、本発明の、ろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金を用いて組み立てられる熱交換器10を示す。
この熱交換器10は、チューブ1を差し込むための図示略のスロットが側面に設けられたヘッダーパイプ11、12が、熱交換器10の両側の各々に設けられており、各チューブ1間にフィン14が接合され、概略構成されている。
そして、フィレットを形成したアルミニウムろう合金が冷却されて固化することにより、ヘッダーパイプ11、12とチューブ1とのろう付接合が完了する。
なお、本発明のアルミニウムブレージングシートを用いてヘッダーパイプ11、12を構成することにより、同様の効果が得られる。
例えば、断面略B字状のチューブとしては、特開2000−213883号公報、特開2000−213882号公報、特開2001−50676号公報、特開2001−91178号公報、特開2002−303496号公報、特開2001−263974号公報、特開2003−202196号公報に記載のもの等が挙げられる他、断面略θ字状のチューブ(例えば、特開2002−71286号公報、特開2002−228369号公報、特開2002−130972号公報等に記載)のろう付接合に用いることもできる。また、本発明のアルミニウム合金ろう及びアルミニウムブレージングシートは、断面略O字状のチューブ(例えば、特開2004−025297号公報、特開平11−257886号公報、特開平10−274489号公報等に記載)や、内部に3以上の複数流路を有した断面形状のチューブ(例えば、特開2002−130970号公報、特開平10−111091号公報、特開2001−137989号公報、特開平11−248383号公報、特開平11−30493号公報等に記載)のろう付接合に用いることができ、各種形状のチューブの接合に用いることができる。
また、ヘッダーパイプは1つの部材(1ピース)からなる構成である必要はなく、例えば、縦割り半パイプ状のヘッダーパイプ半体同士や、ヘッダープレートとタンクを組み合わせることによってパイプ状とした構造の、2ピース型のヘッダーパイプ等であっても良い。
なお、上述のようなヘッダープレートとタンクを組み合わせた2ピース型のヘッダーパイプにおいて、本発明のブレージングシートを、ヘッダープレートのみならず、タンクに用いた場合でも良好な効果が得られる。
これにより、ろう付の際、ろう合金がろう付接合部から流れ出てしまうのを抑制することができ、ろう付性が向上するとともに、ろう付接合される素材にエロージョンが生じるのを抑制することができる。
従って、本発明のアルミニウムろう合金あるいはアルミニウムブレージングシートを用いることにより、ろう付時にエロージョンが生じるのが抑制されるとともに、高いろう付強度でチューブが接合されたヘッダーパイプ並びに熱交換器が得られる。
本実施例では、下記表1に示す成分組成で、本発明のろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウム(実施例)及び比較例のアルミニウムろう合金を作製し、後述の各項目について評価を行った。
以下に、アルミニウムろう合金の作製工程、及び各評価試験項目について説明する。
表1に示す成分組成を有したアルミニウムろう合金を作製し、犠牲陽極材として7072合金、芯材として3003合金を用いたアルミニウムブレージングシートを、成分組成毎に作製した。
各実施例及び比較例のブレージングシートは、犠牲陽極材/芯材/ろう合金のクラッド率をそれぞれ10%/80%/10%となるように各材料を組み合わせ、熱間圧延処理を行うことによってクラッド材とし、厚さが約1.0mmになるまで冷間圧延処理を施した後、360℃、3Hrのバッヂ焼鈍処理を行い、質別をO材とした。
そして、各実施例及び比較例のブレージングシートを、窒素ガス雰囲気中において、600℃のろう付温度で3分間保持した後、室温まで冷却し、以下に示す「流動係数」及び「最大ろう侵食(エロージョン)」の測定を行った。
上記作製工程で得られたブレージングシートの各サンプルを、縦60mm×横25mmの試験片に加工し、この初期状態における試験片全体の質量W0を測定した(図3(a)参照)。次いで、高純度窒素ガス雰囲気中において、温度600℃で3分間保持してろう合金を溶融させた。
そして、図3(b)に示すような、試験片の一端側から縦方向で1/4までの部分(つまり、60mm/4=15mm)の部位の質量WBを測定し、次式(1)にて流動係数を求めた。
流動係数={(流動移動後のフィレットろう量)/(ろう付前の対象ろう量)}={(WB−W0/4)/(3W0/4×クラッド率)}={(4WB−W0)/(3W0×クラッド率)}・・・(1)
上記流動係数により、以下の基準でろう付性を評価した(◎○×で表記)。
(1)◎:流動係数が0.35以上だった。
(2)○:流動係数が0.20超0.35未満の範囲だった。
(3)×:流動係数が0.20以下だった。
上記作製工程で得られたブレージングシートの各サンプルを用いて、図2に示す、熱交換器10に用いられるようなヘッダーパイプ11、12(及びチューブ1)を作製し、フラックスを塗布した後、高純度窒素ガス雰囲気中においてろう付を行った。ろう付処理は、温度600℃で3分間保持して行った。
上記ろう付処理後、光学顕微鏡を用いてエロージョンが最も激しい部位のチューブ断面を観察し、チューブ材へのエロージョン(ろう侵食)深さを測定した。
上記エロージョン深さにより、以下の基準でエロージョンの抑制特性を評価した(◎○×で表記)。
(1)◎:エロージョン深さが0.02mm以下だった。
(2)○:エロージョン深さが0.02mm超0.05mm未満の範囲だった。
(3)×:エロージョン深さが0.05mm以上だった。
表1に示すように、本発明で規定する成分組成を有してなるアルミニウムブレージングシート(発明例1〜19)は、全てのサンプルにおいて流動係数が0.30から0.80の範囲であり、ろう付性の評価が何れも◎又は○であった。また、発明例1〜19のブレージングシートは、全てのサンプルにおいてエロージョン深さが0.04mm以下であり、エロージョン抑制特性の評価が何れも◎又は○であった。
また、エロージョン深さが0.05mm以上となった場合には、チューブに生じた大きなエロージョンにより、チューブの耐圧強度や耐食性が低下する等の問題がある。特に、エロージョン深さが0.07mm以上となった場合には、局部的に貫通孔が発生し、流動体の漏れが発生してしまう虞がある。
上記結果により、本発明で規定する成分組成を有してなるアルミニウムろう合金及びそれを用いたブレージングシートが、優れたろう付性、及びろう付時のエロージョン抑制効果を有していることが明らかである。
Claims (6)
- Si:5.0%以上13.0%以下(質量%、以下同様)、Ti:0.05%以上1.0%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、Zr:0.01%以上0.5%以下をそれぞれ含有し、残部がAlと不可避不純物とからなることを特徴とする、ろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金。
- 請求項1に記載のろう付け時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金の成分として、更に、Cr:0.05%以上1.0%以下を含有してなることを特徴とする、ろう付け時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金。
- 請求項1または2に記載のろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金からなる面材が、アルミニウム合金からなる芯材の片面あるいは両面に貼り合わせられてなることを特徴とする、ろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムブレージングシート。
- 請求項1または2に記載のろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムろう合金でろう付されたことを特徴とする熱交換器用ヘッダーパイプ。
- 請求項3に記載のろう付時のエロージョンが抑制されたアルミニウムブレージングシートから構成されることを特徴とする熱交換器用ヘッダーパイプ。
- 周面の少なくとも一部に、長さ方向に沿って溝が形成されてなるチューブがヘッダーパイプにろう付されてなる熱交換器であって、前記ヘッダーパイプが、請求項4又は5に記載の熱交換器用ヘッダーパイプであることを特徴とする熱交換器。
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