JP5895965B2 - 表面プラズモン増強蛍光センサおよび表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体 - Google Patents

表面プラズモン増強蛍光センサおよび表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体 Download PDF

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Description

本発明は、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS;Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy)の原理に基づいた表面プラズモン増強蛍光センサおよびこの表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体に関する。
従来より、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づき、例えば生体内の極微少なアナライトの検出が行われている。
表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)は、光源より照射したレーザ光(励起光)が金属薄膜表面で全反射減衰(ATR;attenuated total reflectance)する条件において、金属薄膜表面に粗密波(表面プラズモン)を発生させることによって、光源より照射したレーザ光(励起光)が有するフォトン量を数十倍〜数百倍に増やし(表面プラズモンの電場増強効果)、これにより金属薄膜近傍の蛍光物質を効率良く励起させることによって、極微量および/または極低濃度のアナライトを検出する方法である。
近年、このような表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいた表面プラズモン増強蛍光センサの開発が進められており、例えば特許文献1や特許文献2などにその技術開示がなされている。
このような表面プラズモン増強蛍光センサ100は、図6に示したように基本的な構造において、まず金属薄膜102と、金属薄膜102の一方側面に形成された反応層104と、他方側面に形成された誘電体部材106と、を有するチップ構造体108を備えている。
そして、チップ構造体108の誘電体部材106側には、誘電体部材106内に入射され、金属薄膜102に向かってp偏光である励起光110を照射する光源112を備え、さらに光源112から照射され金属薄膜102で反射した金属薄膜反射光114を受光する受光手段116が備えられている。
一方、チップ構造体108の反応層104側には、反応層104で捕捉されたアナライトを標識した蛍光物質が発する蛍光118を受光する光検出手段120が設けられている。
なお、反応層104と光検出手段120との間には、蛍光118を効率よく集光するための集光部材122と、蛍光118以外に含まれる光を除去し、必要な蛍光のみを選択する波長選択機能部材124が設けられている。
そして、表面プラズモン増強蛍光センサ100の使用においては、金属薄膜102上に、あらかじめ蛍光物質で標識されたアナライトが捕捉された反応層104を形成しておき、この状態で光源112より誘電体部材106内に励起光110を照射し、この励起光110が特定の角度(共鳴角)θ1で金属薄膜102に入射することで、金属薄膜102上に粗密波(表面プラズモン)を生ずるようになっている。
なお、金属薄膜102上に粗密波(表面プラズモン)が生ずる際には、励起光110と金属薄膜102中の電子振動とがカップリングし、金属薄膜反射光114の光量減少という現象が生ずる。
このため、受光手段116で受光される金属薄膜反射光114のシグナルが変化(光量が減少)する地点を見つければ、粗密波(表面プラズモン)が生ずる共鳴角を得ることができる。
そして、この粗密波(表面プラズモン)を生ずる現象により、金属薄膜102上の反応層104の蛍光物質が効率良く励起され、これにより蛍光物質が発する蛍光118の光量が増大することとなる。
この増大した蛍光118を、集光部材122および波長選択機能部材124を介して光検出手段120で受光することで、極微量および/または極低濃度のアナライトを検出することができるようになっている。
このように、表面プラズモン増強蛍光センサ100は、特に生体分子間などの微細な分子活動を観察可能とする高感度計測センサである。
特許第3294605号公報 特開2006−208069号公報
しかしながら、上述したような従来の表面プラズモン増強蛍光センサ100では、図7に示したように、金属薄膜102上に粗密波(表面プラズモン)を生じさせる際において、光源112より照射された励起光110が、誘電体部材106の入射面126で一部が反射光(入射面反射光128)となってしまう場合があった。
また、励起光110は共鳴角θ1で金属薄膜102に入射することで金属薄膜102上に表面プラズモンを発生させるが、共鳴に寄与しなかった励起光110は、金属薄膜反射光114として誘電体部材106の出射面130に向かい、この出射面130でも一部が反射光(出射面反射光132)として誘電体部材106内に留まってしまう。
このため、光検出手段120で金属薄膜102上の反応層104からの蛍光118を検出する際には、この入射面反射光128や出射面反射光132などがノイズ成分となってしまい、蛍光検出測定におけるグラウンドをあげ、ダイナミックレンジを狭めてしまう場合が生じていた。
表面プラズモン増強蛍光センサは、非常に高精度が求められる高感度計測センサであるため、極僅かなノイズ成分であっても、蛍光検出の正確性を損ねる要因となってしまう。
そこで、これら蛍光検出の正確性を損ねるノイズ成分を除去し、従来よりもさらに高精度の蛍光検出が可能な表面プラズモン増強蛍光センサが求められている。
本発明はこのような現状に鑑みなされたものであって、励起光を金属薄膜に照射して粗密波(表面プラズモン)を生じさせる際において、ノイズ成分となり得る迷光の発生を抑え、超高精度な蛍光検出を可能とする表面プラズモン増強蛍光センサおよび表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体を提供することを目的とする。
本発明は、前述したような従来技術における問題点を解決するために発明されたものであって、
本発明のチップ構造体は、
表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体であって、
前記チップ構造体は、
金属薄膜と、
前記金属薄膜の一方側面に形成された反応層と、
前記金属薄膜の他方側面に形成された誘電体部材と、
から少なくとも構成され、
前記誘電体部材の外側から前記金属薄膜に励起光を照射して前記金属薄膜上の電場を増強させる際において、
前記誘電体部材が、
前記金属薄膜に反射した金属薄膜反射光が出射する出射面近傍に、前記金属薄膜からの金属薄膜反射光の成分を低減させる出射面側反射光低減部を有し、
さらに前記出射面側反射光低減部が、前記誘電体部材の前記金属薄膜からの金属薄膜反射光の光路を有する部分であって、
前記金属薄膜反射光の光路を有する部分が、光吸収材料から成る光吸収部であり、
前記光吸収部が、前記誘電体部材の内部に設けられてなることを特徴とする。
このよう光吸収部であれば、金属薄膜反射光の成分を吸収し低減できるため、特に出射面反射光などが低減されることとなり、超高精度な蛍光検出が可能となり、また、部品点数を増やすことがなく、金属薄膜反射光の成分を低減できるため、製造コストを抑えつつ、超高精度な蛍光検出を行うことができる。
また、本発明のチップ構造体は、
前記出射面側反射光低減部が、
前記金属薄膜からの金属薄膜反射光の進行方向とブリュースター角の関係を持つように構成された出射面構造であることを特徴とする。
このように、出射面が金属薄膜からの金属薄膜反射光の進行方向とブリュースター角の関係を持つように、出射面の傾斜角度を設定しておけば、出射面についてそのほとんどがp偏光成分である励起光の出射面反射光を生じ難くすることができる。
また、本発明のチップ構造体は、
前記誘電体部材の前記出射面に、出射面側反射防止膜が設けられていることを特徴とする。
このように構成されていれば、出射面反射光を出射面側反射防止膜で除去することができる。
また、本発明のチップ構造体は、
前記誘電体部材が、
前記励起光が入射する入射面近傍に、入射面で反射する入射面反射光を低減させる入射面側反射光低減部を有することを特徴とする。
このように構成されていれば、そのほとんどがp偏光成分である励起光の入射面反射光を生じ難くすることができる。
また、本発明のチップ構造体は、
前記入射面側反射光低減部が、
前記励起光の進行方向とブリュースター角の関係を持つように構成された入射面構造であることを特徴とする。
このように、入射面が励起光の進行方向とブリュースター角の関係を持つように入射面の傾斜角度を設定しておけば、そのほとんどがp偏光成分である励起光の入射面反射光を生じ難くすることができる。
また、本発明のチップ構造体は、
前記入射面側反射光低減部が、
前記入射面に設けられた入射面側反射防止膜であることを特徴とする。
このように入射面側反射防止膜が設けられていれば、誘電体部材の入射面で励起光が反射する入射面反射光を生じ難くすることができる。
また、本発明のチップ構造体は、
前記出射面側反射防止膜および入射面側反射防止膜が、
二酸化珪素,酸化アルミニウム,二酸化チタン、フッ化ナトリウム,フッ化マグネシウム,フッ化リチウムのいずれかを含有してなることを特徴とする。
このように構成されていれば、誘電体部材に入射された励起光の入射面反射光や出射面反射光などによるノイズの発生を抑え、超高精度な蛍光検出ができる
また、本発明のチップ構造体は、
前記光吸収部を構成する前記光吸収材料が、検出波長域で非蛍光性な添加剤をドープした誘電体であることを特徴とする。
このように構成されていれば、金属薄膜反射光の成分を吸収し低減できるため、特に出射面反射光などが低減されることとなり、超高精度な蛍光検出が可能となる。
また、本発明の表面プラズモン増強蛍光センサは、
上記のいずれかに記載のチップ構造体を配設してなることを特徴とする。
このように上記したチップ構造体を配設してなる表面プラズモン増強蛍光センサであれば、チップ構造体の誘電体部材の構造により、反射光が生じ難くなっているため、蛍光検出におけるグラウンドをあげ、ダイナミックレンジを狭めてしまうことがなく、超高精度な蛍光検出をすることができる。
本発明によれば、チップ構造体の誘電体部材が上記したような特徴的な構成を有することにより、励起光を金属薄膜に照射して粗密波(表面プラズモン)を生じさせる際において、ノイズ成分となり得る迷光の発生を抑え、超高精度な蛍光検出を可能とする表面プラズモン増強蛍光センサおよび表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体を提供することができる。
図1は、本発明の表面プラズモン増強蛍光センサの概略図である。 図2は、本発明の表面プラズモン増強蛍光センサに用いられる第1の実施例におけるチップ構造体の概略図である。 図3は、本発明の表面プラズモン増強蛍光センサに用いられる第2の実施例におけるチップ構造体の概略図である。 図4は、本発明の表面プラズモン増強蛍光センサに用いられる第3の実施例におけるチップ構造体の概略図である。 図5は、本発明の表面プラズモン増強蛍光センサに用いられる第3の実施例におけるチップ構造体の概略図である。 図6は、従来の表面プラズモン増強蛍光センサの概略図である。 図7は、従来の表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体の概略図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明の表面プラズモン増強蛍光センサの概略図、図2〜図5は、本発明の表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体の実施例1〜実施例3における概略図である。
本発明の表面プラズモン増強蛍光センサおよび表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体は、誘電体部材の入射面に反射した入射面反射光や金属薄膜に反射した金属薄膜反射光などの迷光の発生を抑え、従来よりもさらに超高精度な蛍光検出を可能とするものである。
なお、本明細書中で言う「ブリュースター角」とは、厳密に一点の角度を指すものではなく、ブリュースター角を中心としてプラスマイナス5°程度の角度も包含したもの、望ましくはプラスマイナス2°程度の角度も包含したものである。
<表面プラズモン増強蛍光センサ10>
本発明の表面プラズモン増強蛍光センサ10は、図1に示したように、まず金属薄膜12と、金属薄膜12の一方側面に形成された反応層14と、他方側面に形成された誘電体部材16と、を有するチップ構造体18を備えている。
そして、チップ構造体18の誘電体部材16側には、誘電体部材16内に入射され、金属薄膜12に向かって励起光20を照射する光源22を備え、さらに光源22から照射され金属薄膜12に反射した金属薄膜反射光24を受光する受光手段26を備えている。
ここで光源22から照射される励起光20としてはレーザ光が好ましく、波長200〜900nm、0.001〜1,000mWのLDレーザ、または波長230〜800nm、0.01〜100mWの半導体レーザが好適である。
一方、チップ構造体18の反応層14側には、反応層14で生じた蛍光28を受講する高検出手段30が設けられている。
光検出手段30としては、超高感度の光電子増倍管、または多点計測が可能なCCDイメージセンサを用いることが好ましい。
なお、チップ構造体18の反応層14と光検出手段30との間には、光を効率よく集光するための集光部材32と、光の内で蛍光28のみを選択するように形成された波長選択機能部材34が設けられている。
集光部材32としては、光検出手段30に蛍光シグナルを効率よく集光することを目的とするものであれば、任意の集光系で良い。簡易な集光系としては、顕微鏡などで使用されている市販の対物レンズを転用してもよい。対物レンズの倍率としては、10〜100倍が好ましい。
一方、波長選択機能部材34としては、光学フィルタ,カットフィルタなどを用いることができる。
光学フィルタとしては、減光(ND)フィルタ,ダイアフラムレンズなどが挙げられる。
さらにカットフィルタとしては、外光(装置外の照明光),励起光(励起光の透過成分),迷光(各所での励起光の散乱成分),プラズモンの散乱光(励起光を起源とし、プラズモン励起センサ表面上の構造体または付着物などの影響で発生する散乱光),酵素蛍光基質の自家蛍光などの各種ノイズ光を除去するフィルタであって、例えば干渉フィルタ,色フィルタなどが挙げられる。
そして、このような表面プラズモン増強蛍光センサ10の使用においては、金属薄膜12上に、例えばあらかじめ蛍光物質で標識されたアナライトが捕捉された反応層14を設け、この状態で、光源22より誘電体部材16内に励起光20を照射し、この励起光20が特定の角度(共鳴角(電場増強時に励起光20と金属薄膜12の垂線とから成る角度)θ1)で金属薄膜12に入射することで、金属薄膜12上に粗密波(表面プラズモン)を生ずるようになる。
なお、金属薄膜12上に粗密波(表面プラズモン)が生ずる際には、励起光20と金属薄膜12中の電子振動とがカップリングし、金属薄膜反射光24のシグナルが変化(光量が減少)することとなるため、受光手段26で受光される金属薄膜反射光24のシグナルが変化(光量が減少)する地点を見つければ良い。
そして、この粗密波(表面プラズモン)により、金属薄膜12上の反応層14で生じた蛍光物質が効率良く励起され、これにより蛍光物質が発する蛍光28の光量が増大し、この蛍光28を集光部材32および波長選択機能部材34を介して光検出手段30で受光することで、極微量および/または極低濃度のアナライトを検出することができる。
なお、チップ構造体18の金属薄膜12の材質としては、好ましくは金,銀,アルミニウム,銅,および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属からなり、より好ましくは金からなり、さらにこれら金属の合金から成ることである。
このような金属は、酸化に対して安定であり、かつ粗密波(表面プラズモン)による電場増強が大きくなることから金属薄膜12に好適である。
また、金属薄膜12の形成方法としては、例えばスパッタリング法,蒸着法(抵抗加熱蒸着法,電子線蒸着法など),電解メッキ,無電解メッキ法などが挙げられる。中でもスパッタリング法,蒸着法は、薄膜形成条件の調整が容易であるため好ましい。
さらに金属薄膜12の厚さとしては、金:5〜500nm、銀:5〜500nm、アルミニウム:5〜500nm、銅:5〜500nm、白金:5〜500nm、およびそれらの合金:5〜500nmの範囲内であることが好ましい。
電場増強効果の観点からは、金:20〜70nm、銀:20〜70nm、アルミニウム:10〜50nm、銅:20〜70nm、白金:20〜70nm、およびそれらの合金:10〜70nmの範囲内であることがより好ましい。
金属薄膜12の厚さが上記範囲内であれば、粗密波(表面プラズモン)が発生し易く好適である。また、このような厚さを有する金属薄膜12であれば、大きさ(縦×横)は特に限定されないものである。
一方、反応層14は、アナライトに蛍光物質を結合させたものを検体中に含有したものであり、このような検体としては、血液,血清,血漿,尿,鼻孔液,唾液,便,体腔液(髄液,腹水,胸水等)などが挙げられる。
また、検体中に含有されるアナライトは、例えば、核酸(一本鎖であっても二本鎖であってもよいDNA,RNA,ポリヌクレオチド,オリゴヌクレオチド,PNA(ペプチド核酸)等、またはヌクレオシド,ヌクレオチドおよびそれらの修飾分子),タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等),アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。),糖質(オリゴ糖,多糖類,糖鎖等),脂質,またはこれらの修飾分子,複合体などが挙げられ、具体的には、AFP(αフェトプロテイン)等のがん胎児性抗原や腫瘍マーカー,シグナル伝達物質,ホルモンなどであってもよく、特に限定されない。
さらに蛍光物質としては、所定の励起光20を照射するか、または電界効果を利用することで励起し、蛍光28を発する物質であれば特に限定されないものである。なお本明細書でいう蛍光28とは、燐光など各種の発光も含まれるものである。
また、誘電体部材16としては、光学的に透明な各種の無機物,天然ポリマー,合成ポリマーを用いることができ、化学的安定性,製造安定性および光学的透明性の観点から、二酸化ケイ素(SiO2)または二酸化チタン(TiO2)を含むことが好ましい。
さらに、このような表面プラズモン増強蛍光センサ10は、光源22から金属薄膜12に照射される励起光20による表面プラズモン共鳴の最適角(共鳴角θ1)を調整するため、角度可変部(図示せず)や、光検出手段30に入力された情報を処理するためのコンピュータ(図示せず)などを有しても良いものである。
ここで、角度可変部(図示せず)は、サーボモータで全反射減衰(ATR)条件を求めるために受光手段26と光源22とを同期し、45〜85°の角度変更を可能とし、分解能が0.01°以上であることが好ましい。
上記した構成を有する本発明の表面プラズモン増強蛍光センサ10は、特にチップ構造体18の誘電体部材16において特徴的な構造を有している。
このような誘電体部材16には、励起光20が入射する入射面36近傍に、入射面36からの入射面反射光を低減させる入射面側反射光低減部および/または金属薄膜12からの金属薄膜反射光が誘電体部材16から出射する出射面40近傍に、金属薄膜12からの金属薄膜反射光の成分を低減させる出射面側反射光低減部が設けられている。
以下、このような構造の誘電体部材16を有するチップ構造体18の実施例について説明する。
<チップ構造体18>
図2に示した第1の実施例であるチップ構造体18は、励起光20が入射する誘電体部材16aの入射面36が、入射面36に反射する入射面反射光を低減させる入射面側反射光低減部として、励起光20の進行方向とブリュースター角(偏位角)θ2の関係を持つ入射面36構造となっている。
なお、誘電体部材16aの入射面36の傾斜角度θ3については、反応層14の検体の屈折率,金属薄膜12の材質・膜厚・屈折率,誘電体部材16aの材質・屈折率,光源22から照射される励起光20の波長などにより決定されるものであり、これらの条件に合わせて設定することができる。
ここで誘電体部材16aの入射面36の傾斜角度θ3は、
入射面36の傾斜角度θ3=共鳴角θ1+空気から誘電体部材16a内へ励起光20が入射するときのブリュースター角θ2−90°・・・数式(1)、
または、
入射面36の傾斜角度θ3=共鳴角θ1−空気から誘電体部材16a内へ励起光20が入射するときのブリュースター角θ2+90°・・・数式(2)、
のいずれかの数式より求めることができる。
このように、入射面36が励起光20の進行方向とブリュースター角(偏位角)θ2の関係を持つように入射面36の傾斜角度θ3を設定しておけば、そのほとんどがp偏光成分である励起光20の入射面反射光を生じ難くすることができる。
一方、金属薄膜12に反射する金属薄膜反射光24が誘電体部材16aから出射する出射面40が、金属薄膜12からの金属薄膜反射光24の成分を低減する出射面側反射光低減部として、金属薄膜12からの金属薄膜反射光24の進行方向とブリュースター角(偏位角)θ5の関係を持つ出射面40構造となっている。
なお、誘電体部材16aの出射面40の傾斜角度θ6については、上記したのと同様、反応層14の検体の屈折率,金属薄膜12の材質・膜厚・屈折率,誘電体部材16aの材質・屈折率,光源22から照射される励起光20の波長などにより決定されるものであり、これらの条件に合わせて設定することができる。
ここで誘電体部材16aの出射面40の傾斜角度θ6は、
出射面40の傾斜角度θ6=電場増強時に金属薄膜反射光24の角度と金属薄膜12からの垂線とから成る角度θ4+誘電体部材16aから空気へ金属薄膜反射光24が出射するときのブリュースター角θ5・・・数式(3)、
または、
出射面40の傾斜角度θ6=電場増強時に金属薄膜反射光24の角度と金属薄膜12からの垂線とから成る角度θ4−誘電体部材16aから空気へ金属薄膜反射光24が出射するときのブリュースター角θ5・・・数式(4)、
のいずれかの数式より求めることができる。
このように、出射面40が金属薄膜12からの金属薄膜反射光24の進行方向とブリュースター角(偏位角)θ5の関係を持つように出射面40の傾斜角度θ6を設定しておけば、出射面40についてもそのほとんどがp偏光成分である励起光20の出射面反射光を生じ難くすることができる。
このため、入射面36の傾斜角度θ3および出射面40の傾斜角度θ6を規定した第1の実施例におけるチップ構造体18を表面プラズモン増強蛍光センサ10に配設すれば、誘電体部材16aに入射された励起光20の反射光など蛍光検出時にノイズと成りうる光の発生を抑え、超高精度な蛍光検出を行うことができる。
次に、図3に示したチップ構造体18は、第2の実施例における概略図である。
図3に示したチップ構造体18は、図2に示した第1の実施例のチップ構造体18と基本的には同じ構成であるので、同じ構成部材には同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
図3に示したチップ構造体18は、誘電体部材16bの励起光20が入射する入射面36に、入射面36からの入射面反射光を低減させる入射面側反射光低減部としての入射面側反射防止膜42aが配設されている。
また、金属薄膜12からの金属薄膜反射光24が誘電体部材16bから出射する出射面40には、金属薄膜反射光24の成分を低減する出射面側反射光低減部としての出射面側反射防止膜42bが配設されている。
このような誘電体部材16bであれば、入射面反射光や出射面反射光を、入射面側反射防止膜42aや出射面側反射防止膜42bで除去することができる。
なお、入射面側反射防止膜42aと出射面側反射防止膜42bの材質については、例えば酸化物やフッ化物などを用いることができ、酸化物としては例えば二酸化珪素(SiO2),酸化アルミニウム(Al23),二酸化チタン(TiO2)などを用いることができ、フッ化物としては例えばフッ化ナトリウム(NaF),フッ化マグネシウム(MgF2),フッ化リチウム(LiF)などを用いることができ、特に限定されるものではない。
このため、第2の実施例における誘電体部材16bのように、入射面側反射防止膜42aおよび出射面側反射防止膜42bが設けられた誘電体部材16bを有するチップ構造体18を、表面プラズモン増強蛍光センサ10に配設すれば、誘電体部材16bに入射された励起光20の入射面反射光や出射面反射光などによるノイズの発生を抑え、超高精度な蛍光検出ができる。
次に、図4および図5に示したチップ構造体18は、第3の実施例における概略図である。
図4および図5に示したチップ構造体18は、図2に示した第1の実施例のチップ構造体18と基本的には同じ構成であるので、同じ構成部材には同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
まず図4に示したチップ構造体18は、誘電体部材16cにおいて、金属薄膜12からの金属薄膜反射光24の成分を低減する出射面側反射光低減部として、金属薄膜12からの金属薄膜反射光24の光路を有する部分が、光吸収材料からなる光吸収部46で構成されている。
このように光吸収部46であれば、金属薄膜反射光24の成分を吸収し低減できるため、特に出射面反射光などが低減されることとなり、超高精度な蛍光検出が可能となる。
なお、光吸収部46の位置は、図5に示したように、金属薄膜12と対向するような位置に設けても良く、金属薄膜反射光24の反射の向きや誘電体部材16dの形状などによって適宜位置を決定すれば良いものである。
このような、光吸収部46を構成する光吸収材料としては、例えば検出波長域で非蛍光性な添加剤をドープした誘電体を用いることができ、例えば酸化コバルトや酸化クロムをドープした誘電体材料を用いることができる。
また、このような光吸収部46が設けられた誘電体部材16c,16dを製造する方法としては、2色成形法などの樹脂成形方法を用いることが好ましい。
このように、光吸収部46が設けられた誘電体部材16c,16dであれば、部品点数を増やすことがなく、金属薄膜反射光24の成分を低減できるため、製造コストを抑えつつ、超高精度な蛍光検出を行うことができる。
以上、本発明における表面プラズモン増強蛍光センサ10およびこれに用いられるチップ構造体18の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではないものである。
例えば実施例1〜実施例3を適宜組み合わせるなど、如何なる組み合わせであっても良く、特に限定されないものである。
また、実施例1〜実施例3における誘電体部材16を有するチップ構造体18は、励起光20の入射面36側と出射面40側の両側において反射光低減部が設けられているが、いずれか一方のみにのみ設けられていても良いものであり、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なものである。
[実施例1]
誘電体部材16の条件
<入射面36側>
・励起光の波長 633nm
・検体の屈折率 n=1.335
・金属薄膜12の材質 金(Au)
・金属薄膜12の屈折率 n=0.1726+3.4218i
・金属薄膜12の膜厚 50nm
・誘電体部材16の材質 BK7(SCHOTT社)
・誘電体部材16の屈折率 n=1.515
<出射面40側>
・励起光20の波長 633nm
・検体の屈折率 n=1.335
・金属薄膜12の材質 金(Au)
・金属薄膜12の屈折率 n=0.1726+3.4218i
・金属薄膜12の膜厚 50nm
・誘電体部材16の材質 BK7(SCHOTT社)
・誘電体部材16の屈折率 n=1.515
表面プラズモン増強蛍光センサ10に用いられるチップ構造体18の誘電体部材16において、あらかじめ上記の条件から粗密波(表面プラズモン)が生ずる共鳴角θ1およびθ4、さらにブリュースター角(偏光角)θ2およびθ5を導き出し、これらの値を、上記した数式(1)〜数式(4)に代入して、入射面36の傾斜角度θ3および出射面40の傾斜角度θ6を求めた。
結果、入射面36の傾斜角度θ3は38.80度または105.65度であった。
また、同様に誘電体部材16の出射面40と出射される金属薄膜12からの金属薄膜反射光24とが、ブリュースター角(偏光角)θ5となるような出射面40の傾斜角度θ6を得た。出射面40の傾斜角度θ6は38.80度または105.65度であった。
入射面36の傾斜角度θ3が38.80度,出射面40の傾斜角度θ6が38.80度である誘電体部材16、および入射面36の傾斜角度θ3が105.65度,出射面40の傾斜角度θ6が105.65度である誘電体部材16をそれぞれ作成し、これを表面プラズモン増強蛍光センサ10にセットして、アナライトの蛍光検出を行ったところ、光検出手段30では、いずれも超高精度な蛍光検出をすることができた。
[比較例1]
実施例1における誘電体部材16の替わりに、従来より用いられている入射面126および出射面130の傾斜角度が予め決められた60度分散プリズム(誘電体部材106)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアナライトの蛍光検出を行った。
なお、60度分散プリズム(誘電体部材106)の入射面126に励起光110が入射した際には、入射面反射光128が生じ、さらに金属薄膜102に反射した励起光110の金属薄膜反射光114は、出射面130にて60度分散プリズム(誘電体部材106)内に反射する出射面反射光132となり、これらの光が迷光として生じた。
この状態で光検出手段120にて、蛍光検出を行ったところ、迷光によるノイズが生じ、S/Nの値が小さくなる現象が生じ、超高精度な蛍光検出ができなかった。
10・・・表面プラズモン増強蛍光センサ
12・・・金属薄膜
14・・・反応層
16・・・誘電体部材
16a・・誘電体部材
16b・・誘電体部材
16c・・誘電体部材
16d・・誘電体部材
18・・・チップ構造体
20・・・励起光
22・・・光源
24・・・金属薄膜反射光
26・・・受光手段
28・・・蛍光
30・・・光検出手段
32・・・集光部材
34・・・波長選択機能部材
36・・・入射面
40・・・出射面
42a・・入射面側反射防止膜
42b・・出射面側反射防止膜
46・・・光吸収部
θ1・・共鳴角(電場増強時に励起光と金属薄膜の垂線とから成る角度)
θ2・・ブリュースター角(偏位角)
θ3・・誘電体部材の入射面の傾斜角度
θ4・・金属薄膜反射光の角度と金属薄膜からの垂線とから成る角度
θ5・・ブリュースター角(偏位角)
θ6・・誘電体部材の出射面の傾斜角度
100・・・表面プラズモン増強蛍光センサ
102・・・金属薄膜
104・・・反応層
106・・・誘電体部材
108・・・チップ構造体
110・・・励起光
112・・・光源
114・・・金属薄膜反射光
116・・・受光手段
118・・・蛍光
120・・・光検出手段
122・・・集光部材
124・・・波長選択機能部材
126・・・入射面
128・・・入射面反射光
130・・・出射面
132・・・出射面反射光

Claims (9)

  1. 表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体であって、
    前記チップ構造体は、
    金属薄膜と、
    前記金属薄膜の一方側面に形成された反応層と、
    前記金属薄膜の他方側面に形成された誘電体部材と、
    から少なくとも構成され、
    前記誘電体部材の外側から前記金属薄膜に励起光を照射して前記金属薄膜上の電場を増強させる際において、
    前記誘電体部材が、
    前記金属薄膜に反射した金属薄膜反射光が出射する出射面近傍に、前記金属薄膜からの金属薄膜反射光の成分を低減させる出射面側反射光低減部を有し、
    さらに前記出射面側反射光低減部が、前記誘電体部材の前記金属薄膜からの金属薄膜反射光の光路を有する部分であって、
    前記金属薄膜反射光の光路を有する部分が、光吸収材料から成る光吸収部であり、
    前記光吸収部が、前記誘電体部材の内部に設けられてなることを特徴とする表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体。
  2. 前記出射面側反射光低減部が、
    前記金属薄膜からの金属薄膜反射光の進行方向とブリュースター角の関係を持つように構成された出射面構造であることを特徴とする請求項1に記載の表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体。
  3. 前記誘電体部材の前記出射面に、出射面側反射防止膜が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体。
  4. 前記誘電体部材が、
    前記励起光が入射する入射面近傍に、入射面で反射する入射面反射光を低減させる入射面側反射光低減部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体。
  5. 前記入射面側反射光低減部が、
    前記励起光の進行方向とブリュースター角の関係を持つように構成された入射面構造であることを特徴とする請求項4に記載の表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体。
  6. 前記入射面側反射光低減部が、
    前記入射面に設けられた入射面側反射防止膜であることを特徴とする請求項4または5に記載の表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体。
  7. 前記出射面側反射防止膜および入射面側反射防止膜が、
    二酸化珪素,酸化アルミニウム,二酸化チタン、フッ化ナトリウム,フッ化マグネシウム,フッ化リチウムのいずれかを含有してなることを特徴とする請求項3または6に記載のチップ構造体。
  8. 前記光吸収材料が、検出波長域で非蛍光性な添加剤をドープした誘電体であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の表面プラズモン増強蛍光センサに用いられるチップ構造体。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載のチップ構造体を配設してなることを特徴とする表面プラズモン増強蛍光センサ。
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