JP5892510B2 - 高分子分散剤の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、顔料分散剤として有用な、その構造中にカルボキシル基とアミノ基を有する新規なアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを提供する技術に関する。さらに詳しくは、上記A−Bブロックコポリマーからなる高分子分散剤を含む顔料着色剤組成物、該組成物を用いたカラーフィルターの着色剤、上記顔料着色剤組成物を構成する高分子分散剤、該高分子分散剤の製造方法に関する。
昨今の情報化機器の急速な発展に伴い、情報化機器の情報表示部材として液晶カラーディスプレーが多岐にわたって使用されている。液晶カラーディスプレーの用途としては、例えば、テレビジョン、プロジェクター、パーソナル・コンピューター、モバイル情報機器、モニター、カーナビゲーション、携帯電話、電子計算機、及び電子辞書等の表示画面;情報掲示板、案内掲示板、機能表示板、及び標識板等のディスプレー;デジタルカメラやビデオカメラ等の撮影画面等を挙げることができる。液晶カラーディスプレーには、通常、カラーフィルターが搭載されている。このカラーフィルターは、精細性、色濃度、光透過性、及びコントラスト性等の画像性能の色彩特性、並びに光学特性に優れたものであることが要求されている。
従来のカラーフィルターの三原色画素に使用されるカラーフィルター用の着色剤(以下、「カラーフィルター用カラー」とも記す)には、顔料とともに分散安定剤が使用されている。分散安定剤としては、(a)通常「シナジスト」と称される、顔料に類似した骨格を有するとともに、この骨格にスルホン酸基等の酸性基が導入された色素誘導体(以下、「色素誘導体」を単に「シナジスト」とも記す)と、(b)このシナジストの酸性基と対になるアミノ基を有する塩基性ポリマー型の顔料分散剤を組み合わせたもの、が用いられる場合が多い(例えば、特許文献1参照)。このような(a)シナジストと(b)塩基性ポリマー型の顔料分散剤とを組み合わせて使用することによって、有機溶媒中における顔料の分散安定性を向上させることができる。さらには、得られる顔料インキの粘度を下げ、インクの長期保存安定性を向上させることができる。
しかしながら、液晶カラーテレビジョン用のカラーフィルターについては、例えば、色濃度、光透過性、及びコントラスト比等のカラー表示性能(画素の性能)をより向上させることが要求されており、従来技術では十分に対応できていない。このような要求に対しては、使用する顔料の粒子径を小さくして超微粒子化することで、画素の性能を改良しようとする傾向にある。しかしながら、超微粒子化された顔料は、超微粒子化されない顔料と同じ質量であっても粒子個数が増加しているので、表面積も拡大している。このため、従来の技術では、超微粒子化した顔料の分散安定性を十分に維持することが困難である。
超微粒子化した顔料の分散安定性を向上させる方法として、酸性基を有するシナジストと顔料分散剤の使用量を増加させる方法がある(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、シナジストと顔料分散剤の使用量を増加させると、顔料濃度が相対的に低下するので、色濃度(画素の高色濃度)が低下してしまう。すなわち、画素を高色濃度化して適切な画素塗膜組成とするために必要となる顔料含有率を高めるといった要求と、顔料の分散安定性とを両立したインクを提供することは非常に困難である。
また、顔料濃度の相対的な低下を抑制する方法として、顔料分散剤の分子構造をブロック型とする方法がある(例えば、特許文献3参照)。これに使用される顔料分散剤の構造は、溶剤溶解性部と顔料吸着部に分離していて、顔料吸着部にアミノ基を有する塩基性の顔料分散剤を用いている。この顔料分散剤は、顔料吸着部が局所的に存在し、顔料に対して強固に吸着し、顔料を超微分散化させることができる。しかしながら、この顔料分散剤は、溶剤溶解性部に酸性基を有していないので、アルカリ現像液にはほとんど溶解しない。このため、塩基性の顔料分散剤は、現像時間が長い、或いは画素エッジがシャープではない等、現像性を低下させる原因となっており、実用的でないものもあった。
この問題の解決方法として、顔料分散剤中に酸性基を導入し、アルカリ現像液に溶け易くする方法が考えられる。しかしながら、塩基性基を有する分子中に酸性基を導入しようとしても、重合時に酸性基と塩基性基がイオン結合してしまい、有機溶媒中で顔料分散剤が分子内や分子間でゲル化してしまうなどの問題が発生し、直接合成することは困難であり、製造上の課題がある。
ここで、塩基性基、酸性基を有するブロックコポリマーの合成方法として、グループトランスファー重合法を使用し、テトラヒドロピラニル基で保護されたメタクリレートを用いて、ブロックコポリマーを重合後、脱保護することにより塩基性基及び、酸性基を有するブロックコポリマーの合成方法が開発されている(例えば、特許文献4)。しかしながら、この方法では特殊な重合開始化合物を用いたり、且つ重合制御が煩雑であったり、工程が多くなるなどの問題点があった。
このような状況下、近年、リビングラジカル重合によるブロックコポリマーの製造方法が開発されている。また、そのような製造方法を利用した、構造や分子量を容易に制御しうる重合方法が種々開発されている。具体的には、以下に列挙した方法等が幅広く研究開発されている。
・アミンオキシドラジカルの解離と結合を利用するニトロキサイド法(Nitroxide mediated polymerization:NMP法)(非特許文献1参照)
・銅、ルテニウム、ニッケル、鉄等の重金属と、これらの重金属と錯体を形成するリガンドとを使用し、ハロゲン化合物を開始化合物として用いて重合する原子移動ラジカル重合(Atom transfer radical polymerization:ATRP法)(特許文献5及び6、非特許文献2参照)
・ジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物等を開始化合物として使用するとともに、付加重合性モノマーとラジカル開始剤を使用して重合する可逆的付加開裂型連鎖移動重合(Reversible addition- fragmentation chain transfer:RAFT法)(特許文献7参照)、及びMacromolecular Design via Interchange of Xanthate(MADIX法)(特許文献8参照)
・有機テルル、有機ビスマス、有機アンチモン、ハロゲン化アンチモン、有機ゲルマニウム、ハロゲン化ゲルマニウム等の重金属を用いる方法(Degenerative transfer:DT法)(特許文献9、非特許文献3参照)。
特開平9−176511号公報 特開2001−240780号公報 特開2003−49110号公報 特開平6−136311号公報 特表2000−500516号公報 特表2000−514479号公報 特表2000−515181号公報 国際公開第1999−05099号 特開2007−277533号公報
Chemical Review(2001)101,p3661 Chemical Review(2001)101,p3689 Journal of American Chemical Society(2002)124,p2874、同(2002)124,p13666、同(2003)125,p8720
上記の特許文献5〜9及び非特許文献1〜3に記載の方法によれば、樹脂の構造や分子量を容易に制御することができる。しかしながら、リビングラジカル重合においては、以下に挙げる実用上の問題がある。例えば、NMP法では、テトラメチルピペリジンオキシドラジカルを使用するが、100℃以上の高温条件下で重合することが必要とされる。また、重合率を上げるには、溶剤を使用せずにモノマー単独で重合する必要がある。このため、重合条件がさらに厳しくなる。さらに、メタクリレート系モノマーを用いた場合には、重合が進行しないといった問題もある。なお、重合温度を下げたり、メタクリレート系モノマーを重合させたりすることも可能ではあるが、特殊なニトロキシド化合物を用いることが必要になる。
また、ATRP法では、重金属を使用する必要がある。このため、重合後には微量といえども重金属をポリマーから除去し、ポリマーを精製する必要がある。また、ポリマーを精製して生じた排水や廃溶剤中には、環境への負荷が高い重金属が含まれているので、重金属を除去して浄化する必要がある。なお、触媒として銅を使用するATRP法では、酸素による触媒の失活を防止すべく、不活性ガス下で重合する必要がある。第二錫化合物やアスコルビン酸等の還元剤を添加して触媒の失活を防ぐ方法もある。しかしながら、還元剤を添加するだけでは重合が途中で停止してしまう可能性があるので、重合雰囲気から酸素を十分除去することが必須となる。さらに、アミン化合物をリガンドとして錯体を形成させて重合する方法では、重合系に酸性物質が存在すると錯体の形成が阻害されてしまうので、酸基を有する付加重合性モノマーを重合させることは困難である。なお、ATRAP法によってポリマー中に酸基を導入するには、保護基で酸基を保護したモノマーを重合し、重合後に保護基を脱離させる必要がある。このため、酸基をポリマーブロックに導入することは容易なことではない。以上の通り、ATRP法においては銅等の重金属を使用するので、重合後にこれらの重金属を除去し、ポリマーを精製することが必要である。また、重金属とリガンドの錯体形成を阻害する酸が存在すると重合が進行しないので、ATRP法では、酸基を有するモノマーを直接重合することができないといった問題がある。
また、RAFT法及びMADIX法では、先ずジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物などの特殊な化合物を合成しておき、合成したこれらの化合物を使用する必要がある。また、これらの特殊な化合物は硫黄系の化合物であるので、得られるポリマーには硫黄系の不快な臭気が残りやすく、着色されている場合もある。このため、得られたポリマーから臭気や着色を除去する必要がある。
さらに、DT法では、ATRP法と同様に重金属を使用する必要がある。このため、得られたポリマーから重金属を除去する必要があるとともに、発生した重金属を含む廃水を浄化しなければならないといった問題がある。
本発明の目的は、顔料の微分散が可能で、保存安定性がよい、高分散性を与える優れたな高分子分散剤、該分散剤を使用した顔料着色剤組成物、さらには、当該高分子分散剤を製造する技術を提供することにある。本発明の目的は、特に、高分子分散剤を、カラーフィルター製造時に行われるアルカリ現像で、アルカリ溶解するアルカリ可溶性バインダーとして作用するものとし、これによって上記現像特性を達成したカラーフィルター用の顔料着色剤組成物の提供を可能にし、しかも該組成物をカラーフィルター用の着色剤として使用した場合に、液晶カラーテレビジョンなどの情報表示機器に装備されるカラーフィルターに要求される、画素の色の高濃度化、高精細性、高コントラスト性などの光学的特性に十分に対応でき、さらにカラーフィルター用の着色剤にした場合に要求される塗布特性、保存性安定性などの特性も向上させることができる優れた高分子分散剤を提供することにある。上記したように、カラーフィルター用の顔料着色剤組成物を構成する高分子分散剤を、アルカリ現像でき、アルカリ可溶性バインダーとして作用するものにできれば、カラーフィルター膜の形成に必要なアルカリ可溶性の樹脂分を減らすことができるので、この点からも、上記した特性を満足する高分子分散剤、さらにはこれを用いた顔料着色剤組成物、該組成物を用いた着色剤の提供が要望される。
本発明者らは、上記した従来技術を解決すべく鋭意研究を行った結果、上記した本発明が目的とする種々の特性を有する高分子分散剤の提供を可能にできる、下記の構成のアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを見出して本発明に至った。すなわち、本発明者らは、ポリマー構造を、アニオン性のAポリマーブロックと、カチオン性のBポリマーブロックからなるA−Bブロック型とした中で、溶媒可溶性鎖であるAポリマーブロックと、吸着性鎖であるBポリマーブロックとからなるA−Bブロック型とし、さらに、Aポリマーブロックにカルボキシル基を有するメタクリレート系モノマー、特にメタクリル酸に由来する構成単位を含ませ、Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位を含ませることで、当該A−Bブロックコポリマーは、Aポリマーブロックが溶媒可溶性鎖として機能するとともに、Bポリマーブロックが吸着性鎖として機能するものになり、本発明の所期の目的を達成できることを見出して本発明を完成するに至った。
より具体的に述べれば、本発明者らは、先述した従来の課題を解決すべく鋭意研究した結果、高分子分散剤として、溶媒溶解鎖であり且つアルカリ現像に作用するメタクリル酸由来のカルボキシル基を有するAポリマーブロックと、顔料吸着性を有するアミノ基を有するBポリマーブロックを有するアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを見出し、該構成のコポリマーが、顔料、好ましくは顔料表面に酸性基を有する色素誘導体で処理された顔料(以下、これらを顔料等とも呼ぶ)の優れた分散剤として機能し、顔料等が超微粒子化させたものであっても微分散させることができ、この結果、低粘度で長期安定性を保持し、顔料の高含有率を保つことができる顔料着色剤組成物の提供が可能になることを見出した。また、A−Bブロックコポリマーを上記構成としたことで、高分子分散剤自体にアルカリ現像性が発現し、現像速度の調整やシャープなエッジ画素を得ることができるという現像性を向上させた顔料着色剤組成物が得られ、さらに、この顔料着色剤組成物を使用したカラーフィルター用カラーを使用することで、画素の色濃度を向上させつつ、透過率やコントラスト比などの光学的特性、現像性が優れたカラーフィルターの画素形成が可能になることを見出した。
上記したように、先述した本発明の目的は、下記の本発明の構成によって達成される。
本発明は、顔料、液媒体及び高分子分散剤を含有してなる油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物であって、(1)当該高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーであり、(2)Aブロックは、少なくともメタクリル酸を構成成分とし、酸価が10〜150mgKOH/gであり、且つAのポリマーブロックの数平均分子量が3,000〜20,000であり、(3)Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とし、アミン価が50〜400mgKOH/gであり、且つBのポリマーブロックの平均分子量が500〜8,000であり、A−Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5〜50質量%であり、(4)A−Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分量/数平均分子量)が1.6以下であることを特徴とする顔料着色剤組成物を提供する。
上記した顔料着色剤組成物の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。
前記顔料の平均粒子径が10〜150nmであること;さらに、酸性である官能基を有する色素誘導体を含有してなること;前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が10〜100質量部で、且つ前記色素誘導体の含有量が5〜100質量部であることが挙げられる。
本発明は、別の実施形態として、上記した、顔料100質量部に対する、高分子分散剤の含有量が10〜100質量部で、且つ色素誘導体の含有量が5〜100質量部である顔料着色剤組成物を使用してなることを特徴とするカラーフィルター用着色剤を提供する。
本発明は、別の実施形態として、高分子分散剤を主成分として含有する顔料分散剤であって、(1)当該高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーであり、(2)Aブロックは、少なくともメタクリル酸を構成成分とし、酸価が10〜150mgKOH/gであり、且つAのポリマーブロックの数平均分子量が3,000〜20,000であり、(3)Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とし、アミン価が50〜400mgKOH/gであり、且つBのポリマーブロックの平均分子量が500〜8,000であり、A−Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5〜50質量%であり、(4)A−Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分量/数平均分子量)が1.6以下である、ことを特徴とする顔料分散剤を提供する。
本発明は、別の実施形態として、上記した高分子分散剤の製造方法であって、少なくともメタクリル酸を構成成分とするAのポリマーブロックを重合後、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを重合してBのポリマーブロックを生成してアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを得ることを特徴とする高分子分散剤の製造方法を提供する。
上記した高分子分散剤の製造方法の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。
前記重合方法が、有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、リン系化合物、窒素系化合物、酸素系化合物又は炭化水素系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を触媒として使用するリビングラジカル重合法の可逆連鎖移動触媒重合方法(RTCP)であること;前記リン系化合物が、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物及びフォスフィネート系化合物であり、前記窒素系化合物が、イミド系化合物及びヒダントイン系化合物であり、酸素系化合物が、フェノール系化合物であり、炭化水素系化合物が、ジフェニルメタン系化合物及びシクロアルケン系化合物であること;重合温度が20〜50℃であることである。
先にも述べた通り、本発明によれば、下記の特有の構造を有するA−Bブロックコポリマーを高分子分散剤として利用することで、種々の効果が得られる。本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーは、Aポリマーブロックが、分散媒体に対する相溶性を有するポリマーブロックであり、且つ酸性基を有し、一方のBポリマーブロックはアミノ基を有するポリマーブロックである。その構造中のBポリマーブロックのアミノ基が、顔料の構造中の強い酸性基と強固にイオン結合するので、上記構造のアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーは顔料に着実に吸着する。このため、本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを用いることで、顔料が樹脂にて処理された樹脂処理顔料を容易に得ることができる。このため、上記構造のアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを用いることで、微粒子化された顔料を高度に微分散させることができるとともに、塗布特性及び長期保存安定性に優れた顔料着色剤組成物を調製できる。本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーの用途としては、イオン交換樹脂等の様々なものが考えられるが、本発明のように顔料分散剤とすることが特に好適である。すなわち、本発明の顔料分散剤は、上記のアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを主成分として含有するので、その塗布特性及び長期保存安定性に優れ、さらに、Aポリマーブロック中に酸性基を有するので、これを用いることでアルカリ現像性に優れる顔料着色剤組成物の提供を可能とする。
本発明によれば、低い粘度が長期間安定に保持され得る、塗布特性及び長期保存安定性に優れた顔料着色剤組成物が提供される。該顔料着色剤組成物は、塗料、インク、コーティング剤、文具、トナー、プラスチック等に利用できるが、なかでも、カラーフィルター用の着色剤として特に好適である。すなわち、本発明によって提供される顔料着色剤組成物をカラーフィルター用の着色剤として用いると、画素の色濃度、精細性、コントラスト性、及び透明性等の光学的特性に優れた、液晶カラーテレビジョン等の情報表示機器に装備されるカラーフィルターの提供が可能になる。そして、本発明によって提供される顔料着色剤組成物を用いれば、アルカリ現像の際の現像性に優れたカラーフィルター用レジストの提供が可能になる。
本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーは、重金属化合物の使用を必須とせず、また、ポリマーの精製が必須でなく、特殊な化合物を合成する必要がない、簡便な製造方法によって得ることができる。より具体的には、上記アニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーは、市場にある比較的安価な材料を用いるだけで、目的物であるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを容易に製造することができる。さらに、本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーは、以下に列挙した利点がある製造方法によって提供されるので、この点からも、顔料着色剤組成物や、これを用いた着色剤の工業的な利用が図れる。重合条件が穏和であり、従来のラジカル重合方法と同様の条件で重合することができる。すなわち、まず、従来のラジカル重合設備が使用可能であるので、特殊な設備が不要であり、しかも、重合中に、酸素、水、及び光の影響をそれほど受けない。また、使用するモノマーや溶媒なども精製する必要がなく、様々な官能基を有するモノマーを使用することができる。このため、所望する様々な官能基をポリマー中に導入することができる。このことは、酸性基及び塩基性基を有するモノマーを使用できることを意味し、さらには、重合率も非常に高いので、本発明で必須とするアニオンカチオン性A−Bブロックポリマーを、大量且つ容易に製造することができることを意味しており、本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを利用した各種製品の工業化が可能になる。
以下、本発明の詳細について、本発明を実施するための好ましい形態を例に挙げて説明する。本発明の顔料着色剤組成物を構成する高分子分散剤に用いられる、本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーは、メタクリレート系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上含む、Aポリマーブロック及びBポリマーブロックからなるA−Bブロック型のコポリマーである。そして、Aポリマーブロックは、少なくともカルボキシル基を有するメタクリレート系モノマーであるメタクリル酸を構成成分とし、Bポリマーブロックに、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位を含む。以下、アニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーのことを「A−Bブロックコポリマー」とも記す。
本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーは、A−Bブロック型のコポリマーである。そして、該コポリマーは、顔料着色剤組成物を構成する高分子分散剤として用いた場合、下記のように挙動すると考えられる。まず、Aポリマーブロックは、分散させる媒体に、溶解又は相溶する機能を示すブロックであると考えられる。一方、Bポリマーブロックは、その構造中にアミノ基を有するため、これらが顔料、或いは酸性基含有色素誘導体で処理された顔料に結合して吸着する機能を示すと考えられる。顔料とBポリマーブロックとの吸着は、例えば、顔料の構造中の活性水素基(水酸基、アミド基、カルボキシル基、ウレタン基等)と、アミノ基との水素結合、或いは酸性顔料又は酸性基含有色素誘導体で処理された顔料の酸性基と、アミノ基とのイオン結合によるものと推測される。上記したように、本発明を特徴づけるA−Bブロック型のコポリマーは、その特有の構造と作用によって、微粒子化された顔料の表面にBポリマーブロックがイオン結合等で吸着するとともに、Aポリマーブロックが、分散媒体に溶解又は相溶し、且つ、Aポリマーブロックの立体的反発や電気的反発で顔料の凝集を防止する。このため、上記A−Bブロックコポリマーを使用したことで、本発明によって、微粒子化された顔料を高度に微分散させることができるようになるとともに、塗布特性及び長期保存安定性に優れた顔料着色剤組成物を調製することができたものと考えられる。なお、以降、単に「顔料」というときは、(i)顔料自体、及び(ii)酸性基含有色素誘導体で表面処理された顔料のいずれをも意味する。
下記に、本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーについて詳細に説明する。本発明で使用するA−Bブロックコポリマーは、メタクリレート系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上、好ましくは95質量%以上含むものであり、さらに好ましくは、メタクリレート系モノマーに由来する構成単位100%からなるものである。後述するが、該アニオンカチオン性ブロックコポリマーの好適な製造方法(重合方法)では、モノマーとしてメタクリレート系モノマーを用いることが特に好ましい。これに対し、後述する製造方法において、スチレン等のビニル系モノマー、アクリレート系モノマー、及びビニルエーテル系モノマーなどを用いた場合は、重合末端に結合したヨウ素が安定化しすぎてしまい、解離させるのに加温する必要がある、或いは解離しないなどの不都合が生ずる可能性があるので好ましくない。このため、メタクリレート系モノマー以外のモノマーを多量に用いた場合は、本発明において目的とする特有の構造にならない、或いは分子量分布が広がってしまうなどの不具合が生ずる可能性がある。ただし、メタクリレート系モノマー以外のモノマーであっても、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で用いてもよい。
(Aポリマーブロック)
Aポリマーブロックを構成するために用いられるメタクリレート系モノマーとしては、少なくともメタクリル酸を用いればよく、それ以外は従来公知のものを用いることができ、特に限定されない。具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−メチルプロパンメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ベへニルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート、シクロデシルメチルメタクリレート、トリシクロデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどの(シクロ)アルキルメタクリレート;フェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなどのアリールメタクリレート;アリルメタクリレートなどのアルケニルメタクリレート;(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノラウリルエーテルメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメチルエーテルメタクリレートなどのグリコールモノアルキルエーテル系メタクリレート;
グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、メタクリロイロキシエチルグリシジルエーテル、メタクリロイロキシエトキシエチルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有メタクリレート;(メタ)アクリロイロキシエチルイソシアネート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルメタクリレート、及びこれらの化合物のイソシアネート基をε−カプロラクトン、MEKオキシム、及びピラゾールなどでブロックしたイソシアネート基含有メタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート、オキセタニルメチルメタクリレートなどの環状メタクリレート;オクタフルオロオクチルメタクリレート、テトラフルオロエチルメタクリレートなどのハロゲン元素含有メタクリレート;2−(4−ベンゾキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルメタクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線を吸収するメタクリレート;トリメトキシシリル基やジメチルシリコーン鎖を持ったケイ素原子含有メタクリレートなどを挙げることができる。また、これらのモノマーを重合して得られるオリゴマーの片末端に(メタ)アクリル基を導入して得られるマクロモノマーなどを用いることができる。
ただし、アミノ基を有するメタクリレートは、Bポリマーブロックにのみ導入し、Aポリマーブロックに用いてはならない。Aポリマーブロックの構成成分としてアミノ基を有するメタクリレートを用いると、顔料分散時に、Aポリマーブロック及びBポリマーブロックの両方が顔料に吸着してしまい、顔料を安定に分散させることができなくなってしまう。
先に述べたように、Aポリマーブロックは、少なくともメタクリル酸を構成成分とすることを要するが、下記に挙げるような、メタクリル酸以外のカルボキシル基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位を含むものであってもよい。これらもカルボキシル基が導入されたものであるので、Aポリマーブロックは、アルカリで中和することでイオン化して水に溶解するようになる。このため、本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーは、カラーフィルターの製造工程におけるアルカリ現像において好適に用いることができる。本発明において、上記Aポリマーブロックの形成に用いることができるメタクリル酸以外のカルボキシル基含有メタクリレート系モノマーの具体例としては、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルに無水フタル酸などの酸無水物を反応して得られるメタクリレート;グリシジルメタクリレートにフタル酸を反応させた水酸基とカルボキシル基を有するメタクリレートなどが挙げられる。本発明では、Aポリマーブロックの形成に、カルボキシル基含有メタクリレート系モノマーの中でも、分子量が小さく、重合性が高いメタクリル酸を用いることを必須としたが、その理由は、メタクリル酸を用いると、カルボキシル基含有メタクリレート系モノマーが重合せずに残存してしまうなどの不具合が生じにくくなるからである。
本発明を特徴づけるA−BブロックコポリマーのAポリマーブロックの酸価は10〜150mgKOH/gであることを要し、20〜100mgKOH/gであることがさらに好ましい。Aポリマーブロックの酸価が上記の数値範囲内であると、例えば、カラーフィルターの製造工程におけるアルカリ現像に好適な成分として用いることができる。Aポリマーブロックの酸価が10mgKOH/g未満であると、アルカリで中和した場合であっても溶解しない又は溶解速度が遅くなる。一方、Aポリマーブロックの酸価が150mgKOH/g超えると、露光硬化部分の親水性までもが向上してしまって耐水性が低下してしまい、形成される画素が乱雑になってしまう場合がある。
本発明を特徴づけるA−BブロックコポリマーのAポリマーブロックは、その数平均分子量(Mn)が3,000〜20,000であることを要するが、4,000〜15,000であることがさらに好ましい。Aポリマーブロックの数平均分子量が4,000未満であると、顔料に吸着したアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーのうち、Aポリマーブロックの立体的反発が作用せず、安定性に欠ける場合がある。一方、Aポリマーブロックの数平均分子量が20,000超えると、分散媒体に溶解又は相溶する部分が多くなるので、粘度が過度に上昇したり、現像性が低下したりする場合がある。
本発明を特徴づけるA−BブロックコポリマーのAポリマーブロックの分子量分布(PDI=重量平均分子量/数平均分子量)は、1.6以下であることが好ましいが、1.5以下であることがさらに好ましい。後述する、アニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーの製造方法を規定する本発明の高分子分散剤の製造方法によれば、このような狭い分子量分布のアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを適宜に製造することができる。また、Aポリマーブロックの分子量分布(PDI)が1.6超えると、数平均分子量が3,000未満の成分や、20,000を超える成分を多く含むことにつながるので、その安定性が低下したり、アルカリ現像に対する現像性が低下したり、粘度が過度に上昇したりする場合があるので好ましくない。本発明においては、上記数平均分子量(Mn)及び分子量分布(PDI)を、ポリスチレンを標準物質とするGPC(GelPermeationChromatography)にて測定した。
(Bポリマーブロック)
本発明を特徴づけるA−BブロックコポリマーのBポリマーブロックを構成するために用いられるアミノ基を有するメタクリレート系モノマーとしては、従来公知のものを挙げることができ、特に限定されない。また、使用されるアミノ基の形態としては、第1級、第2級、第3級、及び、第4級アンモニウム塩の形で使用される。
第1級アミノ基を有するメタクリレートの具体例としては、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチルメタクリレート、第2級アミノ基を有するメタクリレートとしては、イソプロピルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、第3級アミノ基を有するメタクリレートとしては、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−ジブチルアミノエチルメタクリレート、2−ジシクロヘキシルアミノエチルメタクリレート、第4級アンモニウム塩を有するメタクリレートとしては、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド塩などを挙げることができる。さらに、これらアミノ基を有するメタクリレート系モノマーは、前述のAポリマーブロックの形成材料として列挙したものの中から選ばれる1種以上のモノマーと併用させてもよい。
また、第4級アンモニウム塩を有するメタクリレートを重合して、Bポリマーブロックを形成するだけでなく、第3級のアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを用いて、第3級アミノ基を有するポリマーブロックを調製した後、このアミノ基に有機ハロゲン化物を反応させて第4級アンモニウム塩を生成させ、第4級アンモニウム塩を有するBポリマーブロックを製造してもよい。有機ハロゲン化物の具体例としては、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジルなどが挙げられ、特に限定はない。
本発明を特徴づけるA−BブロックコポリマーのBポリマーブロックの平均分子量は500〜8,000であることを要し、1,000〜6,000であることがさらに好ましい。なお、Bポリマーブロックの平均分子量は、A−Bブロックコポリマーの数平均分子量から、Aポリマーブロックの数平均分子量を差し引いた値で表される。Bポリマーブロックの平均分子量が500未満であると、顔料に対する吸着力が弱く、安定性に欠ける場合がある。一方、Bポリマーブロックの平均分子量が8,000を超えると、吸着力が大きすぎるために、顔料の粒子同士で吸着してしまい、同様に安定性に欠ける場合がある。
本発明を特徴づけるA−BブロックコポリマーのBポリマーブロックのアミン価は50〜400mgKOH/gであることを要し、100〜360mgKOH/gであることがさらに好ましい。Bポリマーブロックのアミン価が50mgKOH/g未満であると、顔料への吸着性が不足する場合がある。一方、Bポリマーブロックのアミン価が400mgKOH/g超えると、顔料に吸着する部分が過剰になるため、顔料がむしろ凝集してしまう場合がある。
本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマー中のBポリマーブロックの含有量は、5〜50質量%であることを要し、10〜40質量%であることがさらに好ましい。Bポリマーブロックの含有量が5質量%未満であると、顔料に吸着する部分が小さすぎるために脱離しやすく、顔料の分散性が低下する傾向にある。一方、Bポリマーブロックの含有量が50質量%超えると、分散媒に溶解又は相溶する部分であるAポリマーブロックの含有量が相対的に少なくなるので、分散安定性が低下する傾向にある。
以上より、A−Bブロックコポリマーの数平均分子量は、3,500〜28,000であることが好ましく、5,000〜21,000であることがさらに好ましい。本発明においては、A−Bブロックコポリマーの分子量分布(PDI)は1.6以下であることを要するが、1.5以下であることがさらに好ましい。本発明者らの検討によれば、PDIが1.6を超えると、得られる顔料分散剤の分散性能が不良となってしまう。
本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーは、様々な用途に適用することが期待される。具体的には、顔料分散剤、樹脂処理顔料用の樹脂成分として好適に用いることができる。本発明では、高分子分散剤として用い、特に、これと顔料及び液媒体を含有してなる油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物として用い、さらに、該組成物を使用してなるカラーフィルター用着色剤として利用する。
<アニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーの製造方法>
本発明の高分子分散剤の製造方法は、上記した特定の構成のアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを製造することを特徴とする。該方法では、少なくともメタクリル酸を構成成分とするAのポリマーブロックを重合後、アミノ基を有するメタクリレート系モノマーを重合してBのポリマーブロックを生成してアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを製造するが、好適には重合開始化合物及び触媒の存在下、メタクリレート系モノマーを含有するモノマー成分をリビングラジカル重合する工程(重合工程)を含む。そして、当該重合工程が、有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、リン系化合物、窒素系化合物、酸素系化合物又は炭化水素系化合物の少なくとも1種を触媒として使用するリビングラジカル重合法である可逆連鎖移動触媒重合方法(RTCP)であることが好ましい。
前記重合工程は、有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、メタクリレート系モノマーを含有するモノマー成分をリビングラジカル重合によって重合する工程である。その中で、重合開始化合物となる有機ヨウ化物に熱や光を与えると、ヨウ素ラジカルが解離する。そして、ヨウ素ラジカルが解離した状態でモノマーが挿入された後、直ちにヨウ素ラジカルがポリマー末端ラジカルと再度結合して安定化し、停止反応を防止しながら重合反応が進行する。
上記で用いる有機ヨウ化物の具体例としては、2−アイオド−1−フェニルエタン、1−アイオド−1−フェニルエタンなどのアルキルヨウ化物;2−シアノ−2−アイオドプロパン、2−シアノ−2−アイオドブタン、1−シアノ−1−アイオドシクロヘキサン、2−シアノ−2−アイオド−2,4−ジメチルペンタン、2−シアノ−2−アイオド−4−メトキシ−2,4−ジメチルペンタンなどのシアノ基含有ヨウ化物;などを挙げることができる。さらに、上記に限定されず、ヨウ素とアゾ化合物とを反応させて得られる有機ヨウ化物を使用することもできる。
上記で使用する有機ヨウ化物は、市販品も含め、そのまま添加してもよいが、従来公知の方法で調製したものを使用することもできる。また、重合系内へヨウ素を添加し、当該系内にて調製することも好ましい方法である。例えば、アゾ化合物であるアゾビスイソブチロニトリルとヨウ素とを重合系内へ添加し、調製することで、重合開始化合物となる有機ヨウ化物が得られ、重合反応を行うこともできる。上記で使用できるアゾ化合物の例としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルロピオネート)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)などが挙げられる。
また、上記の有機ヨウ化物中のヨウ素が臭素又は塩素などのハロゲン原子に置換した有機ハロゲン化物に、第4級アンモニウムアイオダイドやヨウ化ナトリウムなどのヨウ化物塩を反応させ、ハロゲン交換させることでも重合開始化合物となる有機ヨウ化物を得ることができる。
前記重合工程では、有機ヨウ化物である重合開始化合物とともに、当該重合開始化合物のヨウ素を引き抜くことができる触媒を使用する。触媒としては、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート系化合物などのリン系化合物;イミド系化合物、ヒダントイン系化合物などの窒素系化合物;フェノール系化合物などの酸素系化合物;ジフェニルメタン系化合物、シクロアルケン系化合物などの炭化水素系化合物を用いることが好ましく、その他、シクロペンタジエン系化合物、マロノニトリル、マロン酸ジエステル系化合物が使用できる。なお、これらの触媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
リン系化合物の具体例としては、三ヨウ化リン、ジエチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、エトキシフェニルフォスフィネート、フェニルフェノキシフォスフィネートなどを挙げることができる。窒素系化合物の具体例としては、スクシンイミド、2,2−ジメチルスクシンイミド、マレイミド、フタルイミド、N−アイオドスクシンイミド、ヒダントインなどを挙げることができる。酸素系化合物の具体例としては、フェノール、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t−ブチルフェノール、カテコール、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンなどを挙げることができる。炭化水素系化合物の具体例としては、シクロヘキサジエン、ジフェニルメタン、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどを挙げることができる。
この触媒の使用量(モル数)は、重合開始化合物の使用量(モル数)未満とすることが好ましい。触媒の使用量(モル数)が多すぎると、重合が制御されすぎてしまい、重合が進行しにくくなる場合がある。また、リビングラジカル重合の際の温度(重合温度)は20〜50℃とすることが好ましい。重合温度が高すぎると、重合末端のヨウ素がメタクリル酸によって分解してしまい、末端が安定せずにリビング重合とならない場合がある。低すぎるとラジカルが発生しにくく重合が進まない。
また、重合工程においては、通常、ラジカルを発生しうる重合開始剤を添加する。重合開始剤としては、従来公知のアゾ系開始剤や過酸化物系開始剤が使用される。なお、上記の重合温度の範囲で十分にラジカルが発生する重合開始剤を用いることが好ましい。具体的には、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤の使用量は、モノマーに対して0.001〜0.1モル倍とすることが好ましく、0.002〜0.05モル倍とすることがさらに好ましい。重合開始剤の使用量が少なすぎると重合反応が十分に進行しない場合がある。一方、重合開始剤の使用量が多すぎると、リビングラジカル重合反応ではない通常のラジカル重合反応が副反応として進行してしまう場合がある。
上記したリビングラジカル重合は、有機溶剤を使用しないバルク重合であってもよいが、有機溶剤を使用する溶液重合とすることが好ましい。有機溶剤としては、重合開始化合物、触媒、モノマー成分、及び重合開始剤などの成分を溶解しうるものであることが好ましい。有機溶剤の具体例としては、下記のものが挙げられる。ヘキサン、オクタン、デカン、イソデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジグライム、トリグライム、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルトリエチレングリコール、メチルジプロピレングリコール、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤;
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルシクロプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、カプロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、カプロラクタムなどのアミド系溶剤の他、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチルなどを挙げることができる。なお、これらの有機溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
溶液重合する場合において、重合液の固形分濃度(モノマー濃度)は5〜80質量%とすることが好ましく、20〜60質量%とすることがさらに好ましい。重合液の固形分濃度が5質量%未満であると、モノマー濃度が低すぎて重合が完結しない場合がある。一方、重合液の固形分濃度が80質量%超又はバルク重合であると、重合液の粘度が高すぎてしまい、撹拌が困難になって重合収率が低下する傾向にある。リビングラジカル重合は、モノマーがなくなるまで行うことが好ましい。具体的には、重合時間は0.5〜48時間とすることが好ましく、実質的には1〜24時間とすることがさらに好ましい。また、重合雰囲気は特に限定されず、通常の範囲内で酸素が存在する雰囲気であっても、窒素気流雰囲気であってもよい。また、重合に使用する材料(モノマーなど)は、蒸留、活性炭処理、又はアルミナ処理などにより不純物を除去したものを用いてもよいし、市販品をそのまま用いてもよい。さらに、遮光下で重合を行ってもよいし、ガラスなどの透明容器中で重合を行ってもよい。
本発明の製造方法においては、A−Bブロックコポリマーの重合順序は、(i)Aポリマーブロックを構成するモノマーを重合してAポリマーブロックを形成した後、(ii)Bポリマーブロックを構成するモノマーを添加してさらに重合することを要す。Bポリマーブロックを構成するモノマーを先に重合すると、重合が完結せずにアミノ基を有するモノマーが反応系内に残存する場合がある。このような場合、アミノ基を有するモノマーがAポリマーブロックに導入されてしまう場合がある。これに対して、Aポリマーブロックを構成するモノマーを先に重合すれば、重合が完結せずにモノマーが反応系内に残存した場合であっても、得られるA−Bブロックコポリマーの構成成分の90質量%以上が(メタ)アクリレート系モノマーとなるようにBポリマーブロックを導入すれば、A−Bブロックコポリマーを容易に得ることができ、且つ、Bポリマーブロックのみにアミノ基を導入することができる。なお、本発明においては、好ましくは重合率50%以上、さらに好ましくは重合率80%以上、特に好ましくは重合率100%となるまでAポリマーブロックを構成するモノマーを重合してAポリマーブロックを形成した後、Bポリマーブロックを構成するモノマーを添加してBポリマーブロックを形成すればよい。
本発明の製造方法においては、重合開始化合物の使用量を調整することによって、得られるA−Bブロックコポリマーの分子量を制御することができる。具体的には、重合開始化合物のモル数に対して、モノマーのモル数を適切に設定することで、任意の分子量のA−Bブロックコポリマーを得ることができる。例えば、重合開始化合物を1モル使用し、分子量100のモノマーを500モル使用して重合した場合、「1×100×500=50,000」の理論分子量を有するA−Bブロックコポリマーを得ることができる。すなわち、A−Bブロックコポリマーの理論分子量を、下記式で算出することができる。なお、上記の「分子量」は、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)のいずれをも含む概念である。
[A−Bブロックコポリマーの理論分子量]=
[重合開始化合物1モル]×[モノマー分子量]×[モノマーのモル数/重合開始化合物のモル数]
なお、重合工程においては、二分子停止や不均化の副反応を伴う場合があるので、上記の理論分子量を有するA−Bブロックコポリマーが得られない場合がある。A−Bブロックコポリマーは、これらの副反応が起こらずに得られたものであることが好ましい。ただし、カップリングによって得られるA−Bブロックコポリマーの分子量が多少大きくなっても、重合反応が途中で停止して得られるA−Bブロックコポリマーの分子量が多少小さくなってもよい。また、重合率は100%でなくてもよい。さらに、重合を一旦終了した後、重合開始化合物や触媒を添加して、残存するモノマーを消費させて重合を完結させてもよい。すなわち、A−Bブロックコポリマーが生成していればよい。
得られたA−Bブロックコポリマーは、重合開始化合物に由来するヨウ素原子が結合した状態のままであってもよいが、ヨウ素原子を脱離させることが好ましい。ヨウ素原子をA−Bブロックコポリマーから脱離させる方法としては、従来公知の方法であれば特に限定されない。具体的には、A−Bブロックコポリマーを加熱したり、酸やアルカリで処理したりすればよい。また、A−Bブロックコポリマーをチオ硫酸ナトリウムなどで処理してもよい。脱離したヨウ素は、活性炭やアルミナなどのヨウ素吸着剤で処理して除去するとよい。
<顔料分散剤及び顔料着色剤組成物>
本発明の顔料分散剤は、前述のアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを主成分として含有するものである。なお、顔料分散剤は、実質的にアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーからなるものであることが好ましい。また、本発明の顔料着色剤組成物は、この顔料分散剤と、顔料と液媒体とを含有してなる。この場合に使用する顔料の粒径は、その用途によっても異なり、特に限定されないが、例えば、その平均粒子径が10〜150nmである微細なものを用いた場合に、特に顕著な効果が得られる。本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーは、そのアミノ基含有ブロックコポリマーの構造中(Bポリマーブロック中)のアミノ基が、酸性顔料又は酸性基含有色素誘導体で処理された顔料の酸性基と強固に結合し、このBポリマーブロックが顔料に吸着することで、顔料の分散性を高める作用を発揮する。すなわち、本発明の顔料分散剤は、この作用によって上記したような微細な粒径の顔料を良好に分散させる成分であるので、分散させる顔料の種類については特に限定はない。
(顔料)
顔料としては、有機顔料、無機顔料、金属粉末又は微粒子などの金属系顔料、無機フィラーなどを用いることができる。有機顔料及び無機顔料の具体例としては、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニンブルー系顔料、フタロシアニングリーン系顔料、イソインドリノン系顔料、インジゴ・チオインジゴ顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、カーボンブラック顔料、複合酸化物系黒色顔料、酸化鉄ブラック顔料、酸化チタン系黒色顔料、アゾメチンアゾ系黒色顔料、及び酸化チタン系顔料からなる群より選択される、赤色、緑色、青色、黄色、橙色、紫色、黒色、及び白色顔料を挙げることができる。金属系顔料の具体例としては、銅粉末、アルミフレークなどを挙げることができる。また、無機フィラーの具体例としては、マイカ系顔料、天然鉱物、シリカなどを挙げることができる。
なお、カラーフィルター用の顔料としては、有機顔料やブラックマトリックス用無機顔料を用いることが好ましい。赤色顔料としては、カラーインデックス(以下、C.I.)ピグメントレッド(PR)56、58、122、166、168、176、177、178、224、242、254、255を挙げることができる。緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン(PG)7、36、58、ポリ(14〜16)ブロム銅フタロシアニン、ポリ(12〜15)ブロム化−ポリ(4〜1)クロル化銅フタロシアニンを挙げることができる。青色顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:1、15:3、15:6、60、80などを挙げることができる。
また、上記のカラーフィルター用の顔料に対する補色顔料又は多色型の画素用顔料として、以下のものを挙げることができる。黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー(PY)12、13、14、17、24、55、60、74、83、90、93、126、128、138、139、150、154、155、180、185、216、219、紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット(PV)19、23を挙げることができる。また、ブラックマトリックス用の黒色顔料としては、C.I.ピグメントブラック(PBK)6、7、11、26、銅・マンガン・鉄系複合酸化物を挙げることができる。
本発明で使用する顔料は、その平均粒子径が10〜150nmのものであることが好ましく、平均粒子径が20〜80nmの顔料を用いることがより好ましい。また、特に、本発明の顔料着色剤組成物をカラーフィルター用の着色剤とする場合は、その構成に、平均粒子径が20〜50nmの顔料を用いることが好ましい。このように微粒子化された顔料を分散させて得られる本発明の顔料着色剤組成物は、高透明性及び高コントラスト性を有するカラーフィルターを製造しうる着色剤として特に好適である。平均粒子径が10nm未満では、顔料が1次粒子以下となり、耐光性、耐熱性など諸物性が悪化してしまう。一方、150nmを超えると、透明性、コントラスト性が悪化してしまう。尚、顔料の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して求めることができる。また、本発明の顔料着色剤組成物には、微粒子化された顔料を安定的して高度に微分散させることが可能な顔料分散剤(アニオンカチオン性A−Bブロックコポリマー)が含有されている。このため、本発明の顔料着色剤組成物は、上記のような極めて微細な顔料が良好な状態で分散されており、しかも長期保存安定性にも優れたものである。なお、顔料着色剤組成物に含有される顔料の割合は、顔料着色剤組成物の全体を100質量%とした場合に5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。少なすぎると、顔料に対する吸着量が足らず十分に安定的に顔料分散できない。多すぎると、顔料分散に寄与しない顔料分散剤が多くあり、顔料着色剤組成物の液粘度が高くなり再凝集などを起こすことがある。
(色素誘導体)
本発明の顔料着色剤組成物には、顔料分散剤に用いる本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマー中のアミノ基とイオン結合させて吸着させるために、さらに、酸性官能基を有する酸性の色素誘導体を含有させることが好ましい。この色素誘導体は、色素骨格に酸性官能基が導入されたものである。色素骨格としては、本発明の顔料着色剤組成物を構成している顔料と同一又は類似の骨格、該顔料の原料となる化合物と同一又は類似の骨格が好ましい。色素骨格の具体例としては、アゾ系色素骨格、フタロシアニン系色素骨格、アントラキノン系色素骨格、トリアジン系色素骨格、アクリジン系色素骨格、ペリレン系色素骨格などを挙げることができる。
色素骨格に導入される酸性官能基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基が好ましい。なお、合成の都合上、及び、酸性度の強さからスルホン酸基が好ましい。また、酸性官能基は、色素骨格に直接結合していてもよいが、アルキル基やアリール基などの炭化水素基;エステル、エーテル、スルホンアミド、ウレタン結合を介して色素骨格に結合していてもよい。
本発明の顔料着色剤組成物中の本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーの含有量は、顔料100質量部に対して10〜100質量部であることが好ましく、10〜50質量部であることがさらに好ましい。アニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーの含有量が10質量部未満であると、顔料の分散性が不十分になる場合があるので好ましくない。一方、アニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーの含有量が100質量部超えると、分散に寄与しない樹脂が生成する場合があるので好ましくない。また、必要に応じて顔料着色剤組成物中に含有させる色素誘導体の含有量は、顔料100質量部に対して5〜100質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがさらに好ましい。色素誘導体の含有量が5質量部未満であると、顔料の表面を覆う酸性基が少なくなるので、顔料分散剤の吸着が不十分になる場合がある。一方、色素誘導体の含有量が100質量部超であると、色素誘導体の色が出やすくなってしまい、目的とする色相にならない場合がある。特に、本発明の顔料着色剤組成物をカラーフィルター用の着色剤として用いる場合は、さらに顔料着色剤組成物中に上記した範囲内で、色素誘導体が含有されたものであることが好ましい。
(アルカリ現像性ポリマー)
本発明の顔料着色剤組成物は、前述のアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを顔料分散剤として使用し、顔料、及び必要に応じて用いられる色素誘導体を液媒体に分散して得られるものである。なお、顔料着色剤組成物をカラーフィルター用の着色剤として用いる場合には、上記したように色素誘導体を含み、さらにアルカリ現像性ポリマーを添加したものを用いることができる。しかし、本発明で顔料分散剤として用いるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーは、その構造中に、少なくともメタクリル酸に由来するカルボキシル基を有するので、この場合は中和してイオン化して水に可溶性となる。すなわち、本発明の顔料着色剤組成物は、アルカリ現像性ポリマーを添加しなくてもアルカリ現像可能であり、本発明は、このことを特徴の一つとしている。
本発明において、さらに添加してもよいアルカリ現像性ポリマーは、その構造中にカルボキシル基などの酸基を有し、アルカリ水溶液で酸基が中和されて水に可溶性となって現像できるものである。
アルカリ現像性ポリマーとしては、不飽和結合基などの感光性基を有する感光性樹脂や、非感光性樹脂を用いることができる。感光性樹脂の具体例としては、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂、及び不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂などを挙げることができる。非感光性樹脂の具体例としては、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体などを挙げることができる。これらのアルカリ現像性ポリマーは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、顔料着色剤組成物中のアルカリ現像性バインダーの含有量は、顔料100質量部に対して5〜300質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがさらに好ましい。
また、本発明の顔料着色剤組成物に、さらに、グリシジル基又はイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを反応して得られる不飽和結合基含有ブロックコポリマーを含有させることも好ましい態様である。この不飽和結合基含有ブロックコポリマーは、光硬化して膜を形成しうる成分である。このため、カラーフィルターの画素の強度(耐性)を向上させることができる。また、画素のエッジをシャープに形成できるとともに、形成される画素の溶剤耐性を向上させることができる。なお、不飽和結合基含有ブロックコポリマー中の不飽和結合基は、アクリル基又はメタクリル基が好適である。これらの不飽和結合基は、従来公知の方法で不飽和結合基含有ブロックコポリマー中に導入される。
油性の顔料分散液である本発明の顔料着色剤組成物を構成する液媒体には、下記に例示するような有機溶剤が使用できる。すなわち、例えば、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶剤;ブタノールなどのアルコール系溶剤;酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジブチルエーテルなどのグリコール系エステル又はエーテル溶剤;N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;エチレンカーボネート、プロピオンカーボネートなどのカーボネート系溶剤などの有機溶剤を挙げることができる。これらの有機溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の顔料着色剤組成物には、さらに、従来公知の添加剤を添加してもよい。添加剤の具体例としては、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、光重合開始剤などを挙げることができる。また、反応性希釈剤として、メタクリレートやアクリレートなどの不飽和結合を有するモノマーを添加してもよい。
(顔料着色剤組成物の製造方法)
本発明の顔料着色剤組成物を製造するに際しては、各成分を一度に配合してもよく、また、個別に配合してもよい。なお、顔料の原料化合物を顔料化して顔料とする際、或いは顔料を微細化する際に色素誘導体を添加することが好ましい。これにより、色素誘導体の作用でその表面が塩基性となった顔料(表面処理顔料)を得ることができる。さらに、後述する樹脂処理顔料を用いる場合には、樹脂処理顔料に液媒体やアルカリ現像性ポリマーなどの成分を添加して分散させる。なお、必要に応じて他の顔料分散剤を添加してもよい。
顔料を分散させる方法は従来公知の方法であればよく、特に限定されない。顔料を分散させるために用いる装置の具体例としては、縦型・横型メディアミル、サンドミル、アトライター、マイクロフルイダイザー、超音波分散機、三本ロールなどを挙げることができる。これらの装置を使用して、顔料が所定の平均粒子径となるまで分散させることが好ましい。
顔料を微細化させる段階で、本発明を特徴づける顔料分散剤(アニオンカチオン性A−Bブロックコポリマー)を使用することもできる。この場合における具体的な方法は、顔料の混練中にアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを添加し、混練によって、アニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーの塩基性基を顔料にイオン結合させ、顔料分散剤を顔料に吸着させるようにする。顔料の混練方法としては、特に限定されない。具体的には、ニーダー、押出機、ボールミル、二本ロール、三本ロール、フラッシャーなどの従来公知の混練機を使用し、常温又は加熱条件下、通常0.5〜60時間、好ましくは1〜12時間混練する。また、必要に応じて、顔料を微細化するためのメディアとして炭酸塩や塩化物塩などの塩を併用することが好ましい。用いる塩の量は、顔料に対して好ましくは1〜30質量倍、さらに好ましくは2〜20質量倍である。少なすぎると十分に顔料を微細化することができない。一方、多すぎると不経済であり実用的ではない。
また、本発明の顔料着色剤組成物を製造する場合、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの粘性を有する有機溶剤を併用し、潤滑性を付与することが好ましい。アニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーは、これらの粘性を有する有機溶剤に溶解するので、アニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーが析出することなく、顔料を微細化することができる。粘性を有する有機溶剤の使用量は、混練物の粘度に応じて調整すればよい。このようにして得られた樹脂処理顔料は、脱塩後、水ペーストとしてもよいし、粉砕して粉末としてもよい。また、得られた樹脂処理顔料は、液媒体に分散させて顔料分散体とすることができる。
本発明の顔料着色剤組成物は、様々な物品の着色剤として使用することができる。例えば、グラビアインキ、オフセットインキ、UVインクジェットインクなどとして用いることができる。本発明の顔料着色剤組成物は、特に低粘度化と顔料の高微細化が可能であるとともに、長期保存安定性が良好であることから、カラーフィルター用の着色剤(カラーフィルター用顔料着色剤組成物)として好適である。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下、文中の「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
(合成例1:AC−1)
還流管、ガス導入装置、温度計、及び撹拌装置を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGM」と記す)230部、ヨウ素4.1部、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、「V−70」と記す)19.7部、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と記す)57.6部、ブチルメタクリレート(以下、「BMA」と記す)57.6部、2−エチルヘキシルメタクリレート(以下、「EHMA」と記す)28.8部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=3〜5)(以下、「PME200」と記す)28.8部、ベンジルメタクリレート(以下、「BzMA」と記す)14.4部、メタクリル酸(以下、「MAA」と記す)20部、及び3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(以下、「BHT」と記す)0.9部を仕込んだ。窒素を流しながら40℃で7時間重合し、Aポリマーブロックの溶液を得た。固形分から算出したAポリマーブロックの重合率は94.3%であった。また、GPCにて測定したMnは4,900、PDIは1.24、ピークトップの分子量は6,000であった。さらに、酸価は62.4mgKOH/gであった。上記におけるMn及びPDIは、先に説明した条件のGPCにて測定した値である。他の例においても同様である。
次いで、上記で得たAポリマーブロックの溶液を40℃に保ったまま、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート(以下、「DMAEMA」と記す)126部、V−70を2.5部、及び、PGM126部の混合液を添加した。そして、同温度で4時間重合して、Bポリマーブロックを形成した。次に、窒素の流通を停止した後、80℃に加温して、ポリマー鎖の末端に結合したヨウ素を遊離させることにより、A−Bブロックコポリマーを含有するポリマー溶液を得た。なお、ヨウ素の遊離については、ポリマー溶液が褐色透明の液体となったことにより判断した。
上記で得たA−Bブロックコポリマーの溶液の固形分は、49.4%であった。また、固形分から算出したBポリマーブロックの重合率は、ほぼ100%であった。また、A−BブロックコポリマーのMnは8,900、PDIは1.41、ピークトップ分子量は12,600であり、酸価は38.8mgKOH/gで、アミン価は134.1mgKOH/gあった。上記におけるMn及びPDIは、先に説明した条件のGPCにて測定した値である。他の例においても同様である。また、BポリマーブロックのMnは4,000であった。得られたA−Bブロックコポリマーを「AC−1」と称する。上記したBポリマーブロックのMnは、「A−BブロックコポリマーのMn」−「AポリマーブロックのMn」より算出した値である。他の例においても同様である。
(合成例2:AC−2)
合成例1で使用したと同様の反応容器を用いて、PGM280部、ヨウ素3.6部、V−70を17.7部、MMA77.7部、BMA77.7部、EHMA38.8部、PME200を38.8部、BzMA19.4部、MAA27.0部、及びBHT0.9部を用いたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にして、Aポリマーブロックの溶液を得た。固形分から算出したAポリマーブロックの重合率は、90.1%であった。また、AポリマーブロックのMnは7,000、PDIは1.36、ピークトップ分子量は9,500、酸価は62.2mgKOH/gであった。
次いで、上記で得たAブロックポリマー溶液を用い、DMAEMA126部、V−70を2.5部、及びPGM126部の混合液を用いたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にして、Bポリマーブロックを形成し、A−Bブロックコポリマーを含有するポリマー溶液を得た。得られたA−Bブロックコポリマーの溶液の固形分は、48.5%であり、固形分から算出したBポリマーブロックの重合率はほぼ100%であった。また、A−BブロックコポリマーのMnは10,900、PDIは1.43、ピークトップ分子量は15,500であり、酸価は42.9mgKOH/gで、アミン価は110.2mgKOH/gであった。また、BポリマーブロックのMnは3,900であった。得られたA−Bブロックコポリマーを「AC−2」と称する。
(合成例3:AC−3)
合成例1で使用したと同様の反応容器を用いて、PGM303部、ヨウ素3.6部、V−70を17.7部、MMA77.7部、BMA77.7部、EHMA38.8部、PME200を38.8部、BzMA19.4部、MAA50.0部、及びBHT1.0部を用いたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にして、Aポリマーブロックの溶液を得た。固形分から算出したAポリマーブロックの重合率は90.4%であった。また、AポリマーブロックのMnは7,400、PDIは1.35、ピークトップ分子量は10,200、酸価は107.5mgKOH/gであった。
次いで、上記で得たAブロックポリマー溶液を用い、DMAEMA62.8部、V−70を1.3部、及びPGM62.8部の混合液を用いたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にしてBポリマーブロックを形成し、A−Bブロックコポリマーを含有するポリマー溶液を得た。得られたA−Bブロックコポリマーの溶液の固形分は、48.9%であり、固形分から算出したBポリマーブロックの重合率はほぼ100%であった。また、A−BブロックコポリマーのMnは9,500、PDIは1.40、ピークトップ分子量は13,500であり、酸価は88.8mgKOH/gで、アミン価は61.2mgKOH/gであった。また、BポリマーブロックのMnは2,100であった。得られたA−Bブロックコポリマーを「AC−3」と称する。
(合成例4:AC−4)
還流管、温度計、及び撹拌装置を取り付けた500mLセパラブルフラスコに合成例2で得たAC−2を300g仕込み、70℃に加温した。そして、予め別容器に調製しておいた、ベンジルクロリド(以下、「BzCl」と記す)67.6g、及びPGM67.6gを含有する溶液を、上記の500mLセパラブルフラスコ中に1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で3時間反応させ、第4級アンモニウム塩を含有するA−Bブロックコポリマーの溶液を得た。得られたA−Bブロックコポリマーの溶液の固形分は50.2%であった。また、A−BブロックコポリマーのMnは12,500、PDIは1.44であり、酸価は34.7mgKOH/gで、アミン価は、8.5mgKOH/gであった。また、BポリマーブロックのMnは、5,500であった。得られたポリマーを「AC−4」と称する。
(合成例5:AC−5)
合成例4で使用したと同様の反応容器に、BzCl50.8g、及びPGM50.8gを用いたこと以外は、前述の合成例4の場合と同様にして、A−Bブロックコポリマーの溶液を得た。得られたA−Bブロックコポリマーの溶液の固形分は50.0%であった。また、A−BブロックコポリマーのMnは11,700、PDIは1.43であり、酸価は37.3mgKOH/gで、アミン価は、47.5mgKOH/gであった。また、BポリマーブロックのMnは、4,700であった。得られたポリマーを「AC−5」と称する。
(比較合成例1:HA−1)
まず、MMA77.7部、BMA77.7部、EHMA38.8部、PME200を38.8部、BzMA19.4部、MAA27部、DMAEMA126部とともに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル7.5部、及び連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン6部を溶解し、モノマー配合溶液を調製した。次いで、還流管、温度計、及び撹拌装置を取り付けた1LセパラブルフラスコにPGM300部を投入し、80℃に加温した。そして、先に調製したモノマー配合溶液を、上記の1Lセパラブルフラスコ中に1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で5時間重合させて、ランダム構造を有するポリマーを含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は49.7%であった。また、得られたポリマーのMnは6,100、PDIは1.96であり、酸価は43.3mgKOH/gで、アミン価は109.4mgKOH/gであった。得られたポリマーを「HA−1」と称する。
(比較合成例2:HA−2)
合成例1で使用したと同様の反応容器に、PGM154部、ヨウ素3.6部、V−70を17.7部、MMA46.8部、BMA46.8部、EHMA23.6部、PME200を23.6部、BzMA13.3部、及びBHT0.9部を用いたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にして、酸価を有さないAポリマーブロックの溶液を得た。固形分から算出したAポリマーブロックの重合率は95.6%であった。また、AポリマーブロックのMnは4,700、PDIは1.23、ピークトップ分子量は5,800であった。
次いで、上記で得たAポリマーブロックの溶液を40℃に保ったまま、DMAEMA95部、V−70を1.9部、及びPGM95部の混合液を添加した。そして、同温度で4時間重合して、Bポリマーブロックを形成し、A−Bブロックコポリマーを含有するポリマー溶液を得た。得られたA−Bブロックコポリマー溶液の固形分は、48.3%であった。また、A−BブロックコポリマーのMnは8,500、PDIは1.41、ピークトップ分子量は12,100であり、アミン価は134.5mgKOH/gであった。また、BポリマーブロックのMnは3,800であった。得られたA−Bブロックコポリマーを「HA−2」と称する。
上記の各合成例で得られたポリマーの組成及び物性を表1〜3に示した。なお、表1中の「DMAEMA・BzCl」は、DMAEMAとBzClの第4級アンモニウム塩を略記したものである。
Figure 0005892510
Figure 0005892510
Figure 0005892510
(実施例1〜6、比較例1及び2:顔料着色剤組成物)
(a)顔料の微細化処理
カラーフィルター用の顔料として、PR254、PG58、PY138、PY150、PB15:6、及びPV23を準備し、以下に示す方法で微細化処理を行なった。それぞれの顔料を100部、塩化ナトリウム400部、及びジエチレングリコール130部を、加圧蓋を装着したニーダーに仕込んだ。ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合した。そして、加圧蓋を閉じて、圧力6kg/cm2で内容物を押さえ込みながら、7時間混練及び摩砕処理を行って摩砕物を得た。得られた摩砕物を、2%硫酸3,000部に投入し、1時間撹拌処理した。撹拌終了後、ろ過して、塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去した後、十分水洗し、次いで、乾燥及び粉砕して顔料粉末を得た。得られた顔料粉末の平均粒子径は、いずれも約30nmであった。
(b)顔料着色剤組成物の調製
表4に示した各成分を表4に示した量(部)で配合し、ディゾルバーで2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理して顔料着色剤組成物(顔料分散液)を調製した。なお、表4中、「シナジスト1」は下記構造式(1)、「シナジスト2」は下記構造式(2)でそれぞれ表される、いずれもスルホン酸基を有する色素誘導体である。また、表4中の「アクリル樹脂」は、モノマー組成がBzMA/MAA=80/20(質量比)であり、GPC測定によるMnが5,500、PDIが2.02であるもの(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMAc」と記す)溶液(固形分濃度:30%))を使用した。
Figure 0005892510
Figure 0005892510
Figure 0005892510
<顔料着色剤組成物の評価(1)>
実施例及び比較例で得られた顔料着色剤組成物(顔料分散液)に含まれる顔料の平均粒子径の測定結果、顔料分散液の初期の粘度、及び45℃で3日間放置した後の粘度(保存後の粘度)の測定結果を表5に示した。
Figure 0005892510
表5に示すように、実施例1〜6の顔料着色剤組成物(顔料分散液)に含まれる顔料の平均粒子径は、いずれも50nm以下であり、微細化された顔料が十分に微分散されていることが確認された。また、実施例1〜6の顔料分散液のいずれも、初期の粘度は9mPa・s以下であった。さらに、初期の粘度と保存後の粘度を比較すると、粘度変化が極めて小さいことが分かる。以上より、実施例1〜6の顔料分散液は十分な分散安定性を有することが明らかとなった。
これに対して、比較例1の顔料分散液は、実施例1の顔料分散液と比較した場合、顔料の平均粒子径が大きく、十分に微分散されていないことが分かる。さらに、保存後の粘度が大きく増加していることから、分散安定性も不十分であることが分かる。これは、比較例1で分散剤として使用したポリマーの構造がランダム構造であることによると考えられる。すなわち、分散剤のポリマー構造がブロックではなくランダム構造であると、ポリマーの顔料吸着部が非局在化してしまうため、十分に分散剤が顔料に吸着できず分散性に劣るものとなり、また、ポリマーの溶剤溶解部の立体効果もほとんどないため、顔料同士の反発力が得られず再凝集し易く、保存安定性も極めて悪いものになったと考えられる。
一方、比較例2の顔料分散液は、実施例1とほぼ同等の分散性能を有していた。比較例2で顔料分散剤として使用したポリマーは、Aブロックに酸価がないものであるものの、その構造はブロックであることから、ブロック構造を有するポリマーであれば、酸価がないものであっても十分な顔料分散性能を示すことが確認された。
(実施例7〜9:カラーフィルター用顔料着色剤組成物)
表6に示す各成分を表6に示す量(部)で配合し、混合機で十分混合して、カラーレジストである各色のカラーフィルター用顔料着色剤組成物(顔料インク)を得た。なお、表6中の「感光性アクリル樹脂ワニス」は、BzMA/MAA共重合物にメタクリル酸グリシジルを反応させて得られたアクリル樹脂を含むワニスである。このアクリル樹脂は、Mnが6,000、PDIが2.38であり、酸価が110mgKOH/gであった。また、「TMPTA」はトリメチロールプロパントリアクリレートを示し、「HEMPA」は2−ヒドロキシエチル−2−メチルプロピオン酸を示し、「DEAP」は2,2−ジエトキシアセトフェノンを示す。
Figure 0005892510
次いで、上記で得たインクを用いて、以下の方法でガラス基板を作製した。まず、シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットし、実施例7の「赤色顔料インク−1」を300rpmで5秒間の条件で、上記ガラス基板上にスピンコートした。そして、80℃で10分間プリベークした後、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2の光量で露光し、赤色ガラス基板を製造した。同様にして、実施例8の「緑色顔料インク−1」、及び実施例9の「青色顔料インク−1」をそれぞれ用い、緑色ガラス基板及び青色ガラス基板を製造した。
上記で得た各色のガラス基板(カラーガラス基板)は、いずれも優れた分光カーブ特性を有するとともに、耐光性や耐熱性等の堅牢性に優れていた。また、いずれのカラーガラス基板も、光透過性やコントラスト比等の光学特性に優れていた。
(比較例3:カラーフィルター用顔料着色剤組成物)
「AC−3」に代えて、「HA−2」を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、比較用黄色顔料分散液を調製した。これを「黄色顔料分散液−3」と称す。
そして、比較例2の「赤色顔料分散液−3」及び上記で得た「黄色顔料分散液−3」を用いたこと以外は、前述の実施例7の場合と同様にして、比較例3の赤色顔料インクを調製した。そして、調製した赤色顔料インクを用い、先の実施例の場合と同様にして比較用の赤色ガラス基板を製造した。
<カラーフィルター用顔料着色剤組成物としての評価(1)>
(アルカリ現像性試験)
実施例7〜9及び比較例3、4の顔料インクを用いて製造したカラーガラス基板のそれぞれに、0.1Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を5秒ごとにスポットした。そして、「何秒後に塗膜の露光部が溶解するか」について、目視することにより、アルカリ現像特性を確認した。その結果を表7に示した。
Figure 0005892510
表7に示したように、実施例7の赤色顔料インク−1、実施例8の緑色顔料インク−1、及び実施例9の青色顔料インク−1を用いて製造したガラス基板では、いずれも短時間で露光部の塗膜が溶解するとともに、溶解残渣(膜状のカス)が生ずることなく、良好な現像性を示した。なお、溶解せずに残存した塗膜の端部(エッジ)を顕微鏡で観察したところ、いずれもシャープであることが確認できた。すなわち、実施例7〜9の顔料着色剤組成物(顔料インク)をカラーフィルターの製造に用いれば、現像時間を短縮することができることが確認され、その生産性の向上が期待される。
これに対して、表7に示したように、比較例3の赤色顔料インクを用いて製造したガラス基板では、溶解時間が非常に長くなった。現像時間が長くなった原因としては、顔料分散剤が、アルカリ現像に不適であったためと考えられる。すなわち、顔料分散剤として使用した「HA−2」はA−Bブロック構造であるものの、その構造中に酸性基がないので、アルカリ溶解し難かったためと考えられる。以上より、実施例7〜9の顔料インクを使用して形成した塗膜は、アルカリ現像性に優れることが判明した。
(参考例1〜3:樹脂処理した顔料粉末の調製)
顔料としてPR254を100部、塩化ナトリウム400部、及びジエチレングリコール130部を、加圧蓋を装着したニーダーに仕込んだ。そして、ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合した。次いで、「AC−1」を81.0部添加し、加圧蓋を閉じて、圧力6kg/cm2で内容物を押さえ込みながら、7時間混練及び摩砕処理を行って摩砕物を得た。得られた摩砕物を、2%硫酸3,000部に投入し、1時間撹拌処理した。撹拌終了後、ろ過して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去した後、十分水洗し、次いで、乾燥及び粉砕して、参考例1の赤色の顔料粉末を得た。得られた顔料粉末の平均粒子径は30nmであった。
参考例1で使用したPR254を、PG58に代えたこと以外は、上記の参考例1と同様にして、参考例2の緑色の顔料粉末を得た。得られた顔料粉末の平均粒子径は35nmであった。また、参考例1で使用したPR254を、PB15:6に代えたこと、及び「AC−1」を「AC−4」に代えたこと以外は、上記の参考例1と同様にして、参考例3の青色の顔料粉末を得た。得られた顔料粉末の平均粒子径は30nmであった。
(実施例10〜12:顔料着色剤組成物)
参考例で作製したそれぞれの樹脂処理した顔料粉末を用い、表8に示す各成分を表8に示す量(部)で配合し、ディゾルバーで2時間撹拌した。そして、顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理して、それぞれの顔料着色剤組成物(顔料分散液)を調製した。
Figure 0005892510
<顔料着色剤組成物の評価(2)>
上記で得たそれぞれの顔料着色剤組成物(顔料分散液)に含まれる顔料の平均粒子径の測定結果、顔料分散液の初期の粘度、及び45℃で3日間放置した後の粘度(保存後の粘度)の測定結果を、表9にまとめて示した。
Figure 0005892510
表9に示したように、実施例10〜12の顔料着色剤組成物(顔料分散液)は、初期及び保存後の粘度が良好であった。以上より、本発明の顔料分散剤は、顔料を微細化する際に添加して用いた場合であっても、十分な顔料分散性を発揮可能であることが確認された。
(実施例13〜15:カラーフィルター用顔料着色剤組成物)
実施例10〜12で得たそれぞれの顔料分散液を用い、表10に示す各成分を表10に示す量(部)で配合し、混合機で十分混合して、カラーレジストである各色のカラーフィルター用顔料着色剤組成物(顔料インク)を得た。
Figure 0005892510
実施例13〜15で得たそれぞれのカラーフィルター用顔料着色剤組成物を用い、以下のようにしてガラス基板を作製した。まず、シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットした。実施例13の「赤色顔料インク−2」を300rpmで5秒間の条件でガラス基板上にスピンコートした。そして、80℃で10分間プリベークした後、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2の光量で露光し、赤色ガラス基板を製造した。また、上記と同様に、実施例14の「緑色顔料インク−2」、及び実施例15の「青色顔料インク−2」をそれぞれ用いたこと以外は、上記の赤色ガラス基板を製造した場合と同様にして、緑色ガラス基板及び青色ガラス基板を製造した。
<カラーフィルター用顔料着色剤組成物としての評価(2)>
得られた各色のガラス基板(カラーガラス基板)は、いずれも色相調整を行っていないので、確実なフィルター色相とはいえない。しかしながら、いずれのカラーガラス基板も優れた分光カーブ特性を有するとともに、耐光性や耐熱性等の堅牢性に優れていた。また、いずれのカラーガラス基板も、光透過性やコントラスト比等の光学特性に優れていた。
本発明の活用例としては、特にカラーフィルター用の着色剤として有用な顔料着色剤組成物が挙げられ、これによって多様な用途に用いられている液晶カラーディスプレーの画像性能の向上や経済性の向上に寄与できるので、その利用が期待される。より具体的には、本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーは、顔料分散剤として優れた特性を有し、特に超微粒子化した顔料の微分散と分散安定性を可能にする。すなわち、経済的に簡便な方法で製造が可能な本発明で規定する新規なアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを用いれば、低粘度で長期保存安定性に優れた顔料着色剤組成物を調製することができる。そして、この顔料着色剤組成物(顔料インク)は、塗布特性や現像性に優れているので、精細性、色濃度、光透過性、及びコントラスト性等の光学的特性に優れたカラーフィルターを製造するための材料として有用である。このようにして製造されたカラーフィルターを備えた画素表示装置は、精細性、色濃度、光透過性、及びコントラスト性等の画像性能に優れているため、工業上の利用が期待される。

Claims (4)

  1. 顔料、液媒体及び高分子分散剤を含有してなる油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物に用いる高分子分散剤の製造方法であって、
    前記高分子分散剤が、メタクリレート系モノマーを主モノマーとして構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーであり、
    該アニオンカチオン性A−Bブロックコポリマーを、
    有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、リン系化合物、窒素系化合物、酸素系化合物又は炭化水素系化合物の少なくとも1種を触媒として使用するリビングラジカル重合法の可逆連鎖移動触媒重合方法(RTCP)を用いて、少なくともメタクリル酸とメタクリレート系モノマーを構成成分に含むモノマーを、重合温度20〜50℃でリビングラジカル重合して酸価が10〜150mgKOH/gであるアニオン性のAのポリマーブロックを得た後、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分に含むモノマーを、重合温度20〜50℃でリビングラジカル重合してアミン価が50〜400mgKOH/gであるカチオン性のBのポリマーブロックを生成して得ることを特徴とする高分子分散剤の製造方法。
  2. 前記Aのポリマーブロックの構成成分として、さらに、グリコールモノアルキルエーテル系メタクリレートを用いる請求項1に記載の高分子分散剤の製造方法。
  3. 前記リン系化合物が、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物及びフォスフィネート系化合物であり、前記窒素系化合物が、イミド系化合物及びヒダントイン系化合物であり、酸素系化合物が、フェノール系化合物であり、炭化水素系化合物が、ジフェニルメタン系化合物及びシクロアルケン系化合物である請求項1又は2に記載の高分子分散剤の製造方法。
  4. 前記アニオン性のAブロックの数平均分子量が3,000〜20,000であり、前記Bのポリマーブロックの数平均分子量が500〜8,000であり、前記A−Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分量/数平均分子量)が1.6以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子分散剤の製造方法。
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