JP5882435B2 - 耐摩耗性ポリエステル繊維及びその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性ポリエステル繊維及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、溶融紡糸により得られる耐摩耗性の良好なポリエステル繊維に関する。
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称す)に代表されるポリエステル繊維は、力学的特性及び取扱い性に優れることから、衣料・資材を問わず幅広い用途で用いられており、故に、各種用途に応じた要求特性を満足する繊維及び製品の開発も多数為されている。
例えば、資材の1つであるシートベルト用途において、破断時や降伏点における伸度や応力等を特定の範囲に規定することにより、繊維自体に衝撃エネルギーを吸収する技術が提案されている(特許文献1)。
また、資材の一つであるタイヤコード用途においては、用いるポリエステル樹脂の極限粘度や延伸倍率、熱処理時の弛緩率等を特定の範囲に規定し、繊維のタフネスを上げる技術が提案されている(特許文献2、特許文献3)。
しかしながらこれらの先行技術は、特定の資材用途における衝撃エネルギーの吸収や繊維軸方向の強度やタフネスの向上は果たすことができるものの、本発明が解決しようとしている、衣料用布帛における耐摩耗性の向上は十分果たすことができない。さらに、これら先行技術には、布帛の耐摩耗性に関して記載も示唆も為されていない。
前述した衝撃エネルギー、強度、タフネスは、繊維軸方向に加えられる外力(引張力)に抗する力学的物性の代表値である。一方、耐摩耗性は、繊維表面における剪断力(摩擦力)に抗する性能である。繊維は一般に、外力を受ける方向により力学的物性が異なる異方性材料であるので、引張方向で測定される力学的物性だけで耐摩耗性を考察するのは限界がある。
布帛の耐摩耗性に関して、異型糸においては、断面形状を特定の範囲に規定し、フィラメントの割れを防ぐことにより耐摩耗性を向上させる技術が提案されている(特許文献4)。しかしながら、特許文献4に記載の技術は、特定の断面形状である異型糸のみに適用できる技術であり、丸断面やY型断面といった一般的な断面形状の繊維には適用することができない。
一方、近年、「布帛の軽さ」(布帛の単位面積当たりの重量が小さいこと)に由来する着心地の良さ等の観点から、織編物の薄地化ニーズが高まっている。織編物を薄地にするためには、細繊度の繊維を用いればよいが、用いる繊維の繊度を細くすればするほど、織編物の耐摩耗性は低下する傾向にある。従って、近年、細繊度の繊維における耐摩耗性向上の要求が、より一層高まっている。
特開2006−45691号公報 特許第268312号公報 特開2002−194617号公報 特開2004−270114号公報
本発明は、溶融紡糸により得られたポリエステル繊維の物性、特に、強度、伸度、応力―歪曲線における特定伸度範囲のヤング率を特定範囲に規定することにより、衣料用、特に細繊度の繊維を用いた、耐摩耗性が改善された織編物に最適な耐摩耗性ポリエステル繊維を提供することを目的とする。
本発明の耐摩耗性ポリエステル繊維は、衣料用、特に細繊度の繊維を用いた織編物に最適な繊維であり、更に詳しくは、繊度、単糸繊度、強度、伸度、応力―歪曲線における特定伸度範囲のヤング率が特定範囲に規定されたものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、溶融紡糸により得られたポリエステル繊維において、延伸処理後、特定範囲の弛緩熱処理をおこなうことで、ポリエステル繊維の物性、特に強度、伸度、応力―歪曲線における微分ヤング率を特定範囲に規定することができ、耐摩耗性が改善されたポリエステル繊維が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
1.全繰り返し単位の内95モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエステルを溶融紡糸することにより得られるポリエステル繊維であって、下記(1)〜()の要件:
(1)繊度が8dtex以上100dtex以下、
(2)単糸繊度が1dtex以上4dtex以下、
(3)破断強度が4.5cN/dtex以上、
(4)破断伸度が25%以上45%以下、
(5)繊維の応力−歪曲線における、伸度2%以上5%以下の領域の極小微分ヤング率が10cN/dtex以下、
(6)前記ポリエステルの極限粘度が0.86以上1.10以下である、
(7)繊維の応力−歪曲線における、伸度10%以上15%以下の領域の極大微分ヤング率が23cN/dtex以上、
を全て満足することを特徴とする耐摩耗性ポリエステル繊維。
2.上記に記載の耐摩耗性ポリエステル繊維からなる、目付け40g/m 以下の衣料用織編物。
3.以下の工程:
全繰り返し単位の内95モル%以上がエチレンテレフタレートであり、かつ、極限粘度が0.86以上1.10以下であるポリエステルを溶融紡糸し、
延伸倍率として限界延伸倍率の65%以上85%以下で、延伸処理し、次いで
熱処理温度120℃以上180℃以下、リラックス率5%以上15%以下で弛緩熱処理して、ポリエステル分子の配向を緩和する、
を含む、上記1又は2に記載の耐摩耗性ポリエステル繊維の製造方法。
4.前記延伸倍率が限界延伸倍率の70%以上80%以下であるか、又は、前記熱弛緩処理における温度が150℃以上180℃以下、リラックス率が7%以上12%以下のいずれかである、上記に記載の耐摩耗性ポリエステル繊維の製造方法。
.延伸処理した後、一旦巻取り、その後弛緩熱処理する、上記3又は4に記載の耐摩耗性ポリエステル繊維の製造方法。
.延伸処理に引き続き、一旦巻取ることなく弛緩熱処理する、上記3又は4に記載の耐摩耗性ポリエステル繊維の製造方法。
本発明によれば、耐摩耗性が良好であり、特に細繊度の繊維を用いた薄地織編物に好適なポリエステル繊維を得ることができる。
本発明(実施例2)のポリエステル糸の応力−歪曲線である。 本発明(実施例2)のポリエステル糸の微分ヤング率−歪曲線である。 本発明以外(比較例8)のポリエステル糸の応力−歪曲線である。 本発明以外(比較例8)のポリエステル糸の微分ヤング率−歪曲線である。 本発明以外(比較例9)のポリエステル糸の応力−歪曲線である。 本発明以外(比較例9)のポリエステル糸の微分ヤング率−歪曲線である。 本発明の延伸糸を得るための紡糸延伸熱処理設備の一例を示す概略図である。 本発明の延伸糸を弛緩熱処理する際使用する設備の一例を示す概略図である。 本発明の直接紡糸延伸熱処理設備の一例を示す概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、耐摩耗性とは、繊維表面が、他の面で擦られた際の摩擦力(剪断力)に抗する性能を意味する。一般に、繊維は擦られることによって、単糸のフィブリル化が引き起こされる。一般的に、フィブリル化が起こると、布帛表面の、例えば意匠性、耐久性などが低下するため、フィブリル化は好ましくない現象である。よって、耐摩耗性を向上させるには、如何にしてフィブリル化を防ぐかがポイントとなる。
本発明溶融紡糸により得られたポリエステル繊維において、延伸処理後、特定範囲の弛緩熱処理をおこなうことで、ポリエステル繊維の物性、特に、強度、伸度、および、応力―歪曲線(S−Sカーブ)における微分ヤング率を特定範囲に規定することができる。
特に、延伸後、弛緩熱処理を行う事が本発明では重要である。これにより、繊維中のポリエステル分子は収縮し、配向緩和が起こる。
本発明のポリエステル繊維の代表的な応力―歪曲線(S−Sカーブ)を図1に示す。図1の如く、低伸度領域においてフラットな部分を有し、その後ヤング率が高くなるという特徴的な曲線を有する。図1を伸度について微分したグラフが図2に示す微分ヤング率―歪曲線である。図2に示すとおり、本発明のポリエステル繊維は、伸度が2〜5%の範囲で極小値を有し、伸度が10〜15%の範囲で極大値を有する。具体的には、本発明で得られる糸の伸度2%以上5%以下の微分ヤング率の極小値は、図2で示されるように20cN/dtex以下となり、伸度が10〜15%の範囲で極大値として23cN/dtex以上となる。
これらの微分ヤング率挙動により、本発明のポリエステル繊維は、繊維表面に摩擦力(剪断力)が加わった際においても、摩擦力(剪断力)がポリエステル分子の配向増加に多く使われるため、フィブリル化は起こりにくくなるものと考えられる。
本発明のポリエステル繊維に用いられるポリエステルは、95モル%以上がエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、5モル%以下がその他のエステルの繰り返し単位からなることが必要である。
即ち、本発明のポリエステル繊維に用いられるポリマーは、5モル%以下がその他のエステルの繰り返し単位である共重合PETである。
共重合成分の代表例としては、以下のものが挙げられる。
酸性分としては、イソフタル酸や5−ナトリウムスルホイソフタル酸に代表される芳香族ジカルボン酸、アジピン酸やイタコン酸に代表される脂肪族ジカルボン酸などである。
グリコール成分としては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどである。
また、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸もその例である。これらの複数が共重合されていてもよい。
さらに、本発明のポリエステル繊維には、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化チタン等の艶消剤、熱安定剤、酸化防止剤、制電剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、種々の顔料などの添加剤を含有してもよく、又は共重合により含有してもよい。
本発明のポリエステル繊維の繊度は8dtex以上100dtex以下であり、好ましくは10dtex以上84dtex以下である。8dtex未満であると、繊度が細すぎるため、織編工程での繊維の取り扱いが困難になりやすい。100dtexを越えると、衣料用薄地織編物の厚みが厚くなり、風合いが良好でない。
特に、本発明の効果は、細い繊度に対しても有効であり、特に10〜30dtexの細番手においても、優れた耐摩耗性を発揮する。したがって、これらの細い繊度の糸を用いた、軽量、薄地の織編物、特に、目付け40g/m以下の織編物において、優れた耐摩耗性を発揮する。
本発明のポリエステル繊維の単糸繊度は1dtex以上4dtex以下であり、好ましくは2dtex以上3dtex以下である。単糸繊度が1dtex未満の場合は、耐摩耗性が良好でない。単糸繊度が4dtexを越えると、耐摩耗性は良好となるものの、繊維の屈曲性が低くなり、風合いが良好でない。
本発明のポリエステル繊維の破断強度は4cN/dtex以上であり、好ましくは4.5cN/dtex以上である。言うまでもなく、破断強度は大きいほど好ましい特性値であるから、他の要件を満たす限り、破断強度は高いほど好ましい。破断強度が4cN/dtex未満であると、耐摩耗性が良好でない。
破断伸度は20%以上50%以下であり、好ましくは25%以上45%以下の範囲である。破断伸度が20%未満であると、繊維中のポリエステル分子の配向度が増加するため、フィブリル化が起こり、良好な耐摩耗性は得られない。破断伸度が50%を越えると、破断強度が4cN/dtex未満となるため本発明の目的を達成できない。
本発明において、応力−歪曲線における、伸度2%以上5%以下の領域の極小微分ヤング率は、20cN/dtex以下であり、好ましくは2〜15cN/dtex、特に好ましくは4〜10cN/dtexである。20cN/dtexを越えると、弛緩熱処理による繊維中のポリエステル分子の配向緩和が十分でなく、摩擦力(剪断力)によりフィブリル化が起こるため、耐摩耗性が良好でない。
本発明のポリエステル繊維からなる織物の組織としては、平織組織、綾織組織、朱子織組織をはじめ、それらから誘導された各種の変化組織を適用することができる。織物には、経糸及び/又は緯糸のいずれにも本発明のポリエステル繊維を使用することができる。
本発明のポリエステル繊維を編物に用いる場合には、経編み、横編みなどに代表される編物など多くの編物に適用できる。
本発明のポリエステル繊維を織編物に用いる際は、無撚のままでもよく、または収束性を高める目的で、交絡もしくは撚りを付与しても良い。
本発明のポリエステル繊維は、単独で使用してもよく、または他の繊維と複合して使用しても本発明の効果を発揮できる。複合する他の繊維としては、例えば、他のポリエステル繊維、ナイロン、アクリル、キュプラ、レーヨン、ポリウレタン弾性繊維などが選ばれるが、これらに限られるものではない。
次に、本発明のポリエステル繊維の製造方法について述べる。
本発明に用いるポリエステルの極限粘度は0.65以上1.30以下の範囲であり、好ましくは0.70以上1.10以下の範囲である。極限粘度が0.65未満であると、耐摩耗性が良好でない。また、極限粘度が1.30を越えると、耐摩耗性は良好となるものの、風合いが硬く、衣料用織編物としては好ましくない。
本発明のポリエステル繊維の製造においては、限界延伸倍率の65%以上85%以下、好ましくは70%以上80%以下で延伸する必要があり、延伸後、弛緩熱処理することが必要である。未延伸糸の限界延伸倍率(MD)は、未延伸糸の破断伸度を(E)とした場合に、MD=(E+100)/100で示される。限界延伸倍率の65%未満で延伸した場合は、破断強度が4cN/dtex以下となり、本発明の目的が達成されない。限界延伸倍率の85%を越えて延伸した場合には、弛緩熱処理の際に糸切れが多発する。
本発明において、弛緩熱処理の際の熱処理温度は、120℃以上220℃以下の温度範囲が必要である。好ましくは150℃以上200℃以下である。温度が120℃未満であると、ポリエステル自体の配向効果が低く、そのため、弛緩熱処理を組み合わせても、繊維中のポリエステル分子の配向緩和効果が十分でなく、良好な耐摩耗性が得られない。220℃を越えると、ポリエステルの融点に近くなるため紡糸性が良好でない。
本発明における弛緩熱処理の際のリラックス率は、5%以上15%以下であり、好ましくは7%以上12%以下である。リラックス率は、延伸糸の弛緩熱処理時の、図8中の供給ロール14の速度(Vk)と延伸ロール16の速度(Vr)、もしくは、図9中の第2ロール11の速度(V)と第3ロール20の速度(V3)を用いて、リラックス率=((Vk−Vr)/Vk)×100、もしくは((V−V3)/V)×100で表される。
リラックス率が5%未満であると、繊維中のポリエステル分子の配向緩和効果が十分でなく、良好な耐摩耗性が得られない。リラックス率が15%を越えると、弛緩熱処理の際の工程張力が低下し、紡糸性が良好でない。
したがって、延伸後、繊維中のポリエステル分子の熱収縮及び配向を緩和する目的で、弛緩熱処理を行うことにより、伸度2%以上5%以下の領域における極小微分ヤング率が20cN/dtex以下となり、耐摩耗性の向上された糸を得る事ができる。弛緩熱処理は、図7及び図8に示すように、延伸して一旦巻き取った後に行ってもよく、または、図9に示すように、延伸に引き続き、一旦巻き取ることなく熱処理しても良い。弛緩熱処理時は張力が下がるが、低張力で安定した弛緩熱処理を行うという観点から、延伸して一旦巻き取った後、図8に示すように、糸が重力に従って上から下に走行するように引き取ることが好ましい。
本発明のポリエステル繊維の単糸断面形状は、丸、Y、W字状等の異型断面、あるいは中空断面などであってもよく、特に限定されない。
また、使用する仕上剤の種類は、ポリエステル繊維の用途によって適宜選択することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
なお、測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)繊度、破断強度、破断伸度
JIS−L−1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)に基づいて測定した。単糸繊度は、糸の繊度をフィラメント数で除して算出した。
(2)極小微分ヤング率、極大微分ヤング率
JIS−L−1013に基づいて測定を行った。得られた応力−歪曲線の各点での応力を伸度で微分して求め、得られた微分ヤング率曲線より、伸度2%以上5%以下の領域の微分ヤング率の極小値を極小微分ヤング率とした。
極大微分ヤング率についても同様に、伸度10%以上15%以下の領域の微分ヤング率の極大値として求めた。
(3)極限粘度
オルソクロロフェノール(以下、OCPと略記する)に試料ポリマーを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて複数点の相対粘度ηrを求め、それを無限希釈度に外挿して求めた。
(4)限界延伸倍率
図7もしくは図9中の第1ロール(10)直前において未延伸糸を採取し、JIS−L−1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)に基づいて限界延伸倍率を算出した。未延伸糸の限界延伸倍率(MD)は、未延伸糸の破断伸度を(E)とした場合に、MD=(E+100)/100で表される。
(5)紡糸性
紡糸性の評価は、3日間紡糸を行った際、糸切れ率が5%以下を「○」、5%以上、もしくは紡糸不能の場合を「×」と判定した。
(6)耐摩耗性
マーチンデール摩耗試験機を用いて、JIS−L−1096に基づいて耐摩耗性を評価した。摩擦回数を20000回として、摩擦後の重量減少率を基準に5等級に区分して判定した。重量減少率(%)={(原布重量−摩擦後重量)/(原布重量)}×100で表し、重量減少率が4%以上ならば3等級以下、2%以上4%未満ならば4等級、2%未満ならば5等級として評価した。
なお、本発明の繊維を経糸及び緯糸に用い、経糸密度97本/2.54cm、緯糸密度98本/2.54cmの平織物を製織し、耐摩耗性、ならびに風合い評価に用いた。
(7)風合い
風合いにおいては、熟練した検査人10人のうち、9人以上が良好と判断した場合を「○」、それ以外を「×」として評価した。10人全員が、特に柔らかく優れた風合いであると判断したものに関しては「◎」で評価した。
(8)総合評価
紡糸性、耐摩耗性、風合いの3つの観点において、全て○の場合を「○」、一つでも×がある場合は「×」と判定した。特に優れたものに関しては「◎」で評価した。
〔実施例1〜3、参考例4、比較例1及び2〕
本例では、単糸繊度が紡糸性、耐摩耗性、風合い性能に及ぼす効果について説明する。
以下、実施例2の製造条件を示す。
図7のような紡糸機を用いて、第1ロールと第2ロール間で延伸、一旦巻き取った後に、図8に示す装置を用いて、供給ロールと延伸ロール間で弛緩熱処理することで、本発明の56dtex/24フィラメントの繊維を製造した。条件は下記に示すとおりである。
(紡糸条件)
ペレット乾燥温度及び到達水分率:155℃、10ppm
押出機温度:295℃
スピンヘッド温度:300℃
紡糸口金:孔径0.25mmΦの孔が口金当たり24個を有する口金
ホットディスタンス:135mm
冷却風条件:温度;22℃、相対湿度;90%、速度;0.4m/sec
仕上げ剤:ポリエーテルエステルを主成分とする水系エマルジョン(濃度15wt%)
仕上げ剤付与率:0.75%
紡糸口金から仕上げ剤付与ノズルまでの距離:100cm
(巻取条件)
第1ロール:速度;1500m/分、温度;90℃
第2ロール:速度;3975m/分、温度;130℃
巻取機:SA−608機(旭エンジニアリング(株)社製)
綾角:5.8度
(弛緩熱処理)
供給ロール:速度;555m/分、温度;85℃
ホットプレート温度:180℃
延伸ロール:速度;500m/分、温度;非加熱(室温)
延伸張力:0.25cN/dtex
リラックス率:2.5%
巻量:1kg/1パーン
得られた繊維の物性、及び評価結果を表1〜3に示す。また、実施例1、3、参考例4、比較例1〜2は、紡孔数と吐出量を除いては実施例2と同様の条件で製造した。
各実施例及び比較例により得られた繊維の物性、及び評価結果を表1〜3に示す。
表1〜3から明らかなように、本発明の実施例で得られた繊維は、紡糸性、耐摩耗性、風合いにおいて良好な結果を示した。
比較例1は、本発明で規定している範囲に対して単糸繊度が小さいので、風合いは良いものの、耐摩耗性において、本発明が期待した効果が得られなかった。
比較例2は、本発明が規定している範囲に対して単糸繊度が大きいので、耐摩耗性は良いものの、風合いが硬く、本発明が期待した効果が得られなかった。
参考例5及び6、比較例3及び4〕
本例では、極限粘度の効果について説明する。
実施例2と同様の紡糸・延伸・弛緩熱処理を行うにあたり、使用するポリマーの極限粘度を変更して紡糸及び巻取を行い、参考例5及び6、比較例3及び4の繊維を得た。
各実施例及び比較例により得られた繊維の物性、及び評価結果を表1〜3に示す。
表1〜3から明らかなように、本発明の実施例で得られた繊維は、紡糸性、耐摩耗性、風合いにおいて良好な結果を示した。
比較例3は、本発明が規定している範囲に対して極限粘度が低いため、耐摩耗性において、本発明が期待した効果が得られなかった。
比較例4は、本発明が規定している範囲に対して極限粘度が高いため、風合いが悪化し、本発明が期待した効果が得られなかった。
参考例7及び実施例8、比較例5〕
本例では、延伸倍率の効果について説明する。
実施例2と同様の紡糸・延伸・弛緩熱処理を行うにあたり、延伸倍率の限界延伸倍率に対する割合及びリラックス率を異ならせることにより、参考例7及び実施例8、比較例5の繊維を得た。
各実施例及び比較例により得られた繊維の物性、及び評価結果を表1〜3に示す。
表1〜3から明らかなように、本発明の実施例で得られた繊維は、紡糸性、耐摩耗性、風合いにおいて良好な結果を示した。
比較例5は、本発明が規定している範囲に対して限界延伸倍率が高いので、紡糸性が悪化し、繊維を得ることができなかった。
〔実施例9及び10、比較例6及び7〕
本例では、熱処理温度の効果について説明する。
実施例2と同様の紡糸・延伸・弛緩熱処理を行うにあたり、熱処理温度を異ならせることにより、実施例9及び10、比較例6及び7の繊維を得た。
各実施例及び比較例により得られた繊維の物性、及び評価結果を表1〜3に示す。
表1〜3から明らかなように、本発明の実施例で得られた繊維は、紡糸性、耐摩耗性、風合いにおいて良好な結果を示した。
比較例6は、本発明が規定している範囲に対して熱処理温度が低いので、2%以上5%以下の領域における極小微分ヤング率の値が、20cN/dtex以上となり、耐摩耗性において本発明が期待した効果が得られなかった。
比較例7は、本発明が規定している範囲に対して熱処理温度が高いので、工程張力が下がり、紡糸性が悪化したため、本発明の繊維を得ることができなかった。
〔実施例11、参考例12、実施例13、比較例8〜10〕
本例では、弛緩熱処理の際の、リラックス率の影響について説明する。
実施例2と同様の紡糸・延伸・弛緩熱処理を行うにあたり、弛緩熱処理に関与するロールの速度を変更することにより、実施例11、参考例12、実施例13、比較例8〜10に示すリラックス率違いの繊維を得た。また、比較例9は、実施例2と同様の紡糸・延伸条件で巻取りを行った後、弛緩熱処理を行わなかった繊維である。
各実施例及び比較例により得られた繊維の物性、及び評価結果を表1〜3に示す。
表1〜3から明らかなように、本発明の実施例で得られた繊維は、紡糸性、耐摩耗性、風合いにおいて良好な結果を示した。
比較例8〜10は、本発明が規定している範囲に対してリラックス率が小さく、比較例8では−5%、つまり延伸熱処理をしたもの、比較例9は弛緩熱処理をしないものである。これらの場合においては、弛緩熱処理によって起こる繊維中のポリエステル分子の配向緩和効果が小さいか、もしくはないため、極小微分ヤング率が20cN/dtex以上となり、耐摩耗性は大幅には向上しなかった。
比較例10は、本発明が規定している範囲に対してリラックス率が大きく、弛緩熱処理の際の工程張力が低くなるため、紡糸性が悪化し、本発明の繊維を得ることができなかった。
また、実施例13では、図9のような紡糸機及び巻取機を用いて、第1ロールと第2ロール間で延伸した後、一旦巻き取ることなしに第2ロールと第3ロール間で弛緩熱処理することで、本発明の56dtex/24フィラメントの繊維を製造した。条件は、ペレットの乾燥から第2ロールまでは実施例2と同様に設定し、第3ロール以降の条件を新たに設定した。新たに設定した条件は、下記に示すとおりである。
(紡糸条件)
ペレット乾燥温度及び到達水分率:155℃、10ppm
押出機温度:295℃
スピンヘッド温度:300℃
紡糸口金:孔径0.25mmΦの孔が口金当たり24個を有する口金
ホットディスタンス:135mm
冷却風条件:温度;22℃、相対湿度;90%、速度;0.4m/秒
仕上げ剤:ポリエーテルエステルを主成分とする水系エマルジョン(濃度15wt%)
仕上げ剤付与率:0.75%
紡糸口金から仕上げ剤付与ノズルまでの距離:100cm
(巻取条件)
第1ロール:速度;1500m/分、温度;90℃
第2ロール:速度;3975m/分、温度;130℃
第3ロール:速度;3617m/分、温度;180℃
巻取機:SA−608機(旭エンジニアリング(株)社製)
綾角:5.8度
Figure 0005882435
Figure 0005882435
Figure 0005882435
1 ポリマー乾燥機
2 押出機
3 ベンド
4 スピンヘッド
5 スピンパック
6 紡糸口金
7 非送風領域
8 冷却風
9 仕上げ剤付与ノズル
10 第1ロール
11 第2ロール
12 繊維チーズ
13 繊維チーズ
14 供給ロール
15 ホットプレート
16 延伸ロール
17 ガイド
18 トラベラーガイド
19 繊維パーン
20 第3ロール

Claims (6)

  1. 全繰り返し単位の内95モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエステルを溶融紡糸することにより得られるポリエステル繊維であって、下記(1)〜(7)の要件:
    (1)繊度が8dtex以上100dtex以下、
    (2)単糸繊度が1dtex以上4dtex以下、
    (3)破断強度が4.5cN/dtex以上、
    (4)破断伸度が25%以上45%以下、
    (5)繊維の応力−歪曲線における、伸度2%以上5%以下の領域の極小微分ヤング率が10cN/dtex以下、
    (6)前記ポリエステルの極限粘度が0.86以上1.10以下である、
    (7)繊維の応力−歪曲線における、伸度10%以上15%以下の領域の極大微分ヤング率が23cN/dtex以上、
    を全て満足することを特徴とする耐摩耗性ポリエステル繊維。
  2. 請求項1に記載の耐摩耗性ポリエステル繊維からなる、目付け40g/m以下の衣料用織編物。
  3. 以下の工程:
    全繰り返し単位の内95モル%以上がエチレンテレフタレートであり、かつ、極限粘度が0.86以上1.10以下であるポリエステルを溶融紡糸し、
    延伸倍率として限界延伸倍率の65%以上85%以下で、延伸処理し、次いで
    熱処理温度120℃以上180℃以下、リラックス率5%以上15%以下で弛緩熱処理して、ポリエステル分子の配向を緩和する、
    を含む、請求項1又は2に記載の耐摩耗性ポリエステル繊維の製造方法。
  4. 前記延伸倍率が限界延伸倍率の70%以上80%以下であるか、又は、前記熱弛緩処理における温度が150℃以上180℃以下、リラックス率が7%以上12%以下のいずれかである、請求項3に記載の耐摩耗性ポリエステル繊維の製造方法。
  5. 延伸処理した後、一旦巻取り、その後弛緩熱処理する、請求項3又は4に記載の耐摩耗性ポリエステル繊維の製造方法。
  6. 延伸処理に引き続き、一旦巻取ることなく弛緩熱処理する、請求項3又は4に記載の耐摩耗性ポリエステル繊維の製造方法。
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