JP2002220731A - 経糸用ポリエステルマルチフィラメント - Google Patents

経糸用ポリエステルマルチフィラメント

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JP2002220731A
JP2002220731A JP2001015199A JP2001015199A JP2002220731A JP 2002220731 A JP2002220731 A JP 2002220731A JP 2001015199 A JP2001015199 A JP 2001015199A JP 2001015199 A JP2001015199 A JP 2001015199A JP 2002220731 A JP2002220731 A JP 2002220731A
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yarn
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multifilament
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JP2001015199A
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Tatsuya Ogawa
達也 小川
Tadashi Koyanagi
小柳  正
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Asahi Kasei Corp
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 軽量で、保温性及び柔軟性を兼ね備え、か
つ、糸質が均一な経糸用ポリエステルマルチフィラメン
トを用いた編織物を提供する。 【解決手段】 ポリエチレンテレフタレートを主成分と
するフィラメントであり、フィラメントの横断面が独立
した二つの中空部を有するメガネ型であって、以下の要
件(1)〜(4)を満足することを特徴とする経糸用ポ
リエステルマルチフィラメント、及びそれを用いた編織
物。 (1)フィラメント横断面の扁平度:1.3〜3.0 (2)フィラメント横断面平均中空率:20〜40% (3)中空率の最大と最小の差:R≦25% (4)熱収縮応力:0.05〜0.2cN/dtex

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、経糸用ポリエステ
ルマルチフィラメント及びそれを用いた編織物に関す
る。更に詳しくは、編織物にした際に軽量で、優れた保
温性と柔軟な風合いを兼ね備えたポリエステルマルチフ
ィラメント及びその製造方法、並びに該ポリエステルマ
ルチフィラメントを織物の経糸の一部または全部に用い
た編織物に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンテレフタレート繊維は、ウ
オッシュアンドウエアー(W&W)性や取扱の容易性か
ら衣料用合成繊維として世界中で大量に生産されてい
る。このW&W性に加えて、光沢や吸水速乾性などの機
能を付与する目的で、フィラメント横断面を異型断面と
することが盛んに行われている。近年、軽量性や保温性
を改良する目的で、フィラメント横断面に中空部を設け
た中空断面糸が開発され、商業生産されている。
【0003】例えば、特開平11−241216号公報
にはフィラメント横断面に1個の中空部を有する軽量で
保温性に優れたポリエステルマルチフィラメントが開示
されている。特公平2−52004号公報(イ)及び特
開昭56−49070号公報(ロ)には、フィラメント
横断面に2個ないしそれ以上の中空部を有する中空断面
繊維を用いた立毛布帛が、特開平11−200188号
公報(ハ)には、8字状フィラメント横断面に2個の中
空部を有する中空断面繊維を用いたパイル布帛が開示さ
れている。(イ)〜(ハ)には、フィラメント横断面を
8字状とすることにより、柔軟性及び毛倒れを改良した
立毛布帛を提供できることが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、(イ)〜
(ハ)は、いずれもステープル繊維からなる糸及び布帛
の開示であり、それらを使用して得られるパイル布帛、
すなわち起毛や立毛布帛の風合い改良に関するものであ
る。これらの先行技術には、メガネ型横断面のマルチフ
ィラメントに関しては何ら開示がない。(イ)は、複数
の中空部を有しかつ断面異方性を有する捲縮中空繊維で
あるが、マルチフィラメントにおいてはこのような捲縮
があると、編織工程で糸切れなどのトラブルが生じた
り、得られる編織物の表面に凹凸が生じ、そのため風合
いがざらつくなどの障害が起こる。更に、(ロ)及び
(ハ)は共に、ステープル繊維の横断面に中空を有する
8字型の繊維が開示されているものの、その中空率は約
10%以下と極めて低く、これ以上に中空率を大きくし
た場合については何ら言及されていない。
【0005】本発明者らの研究によれば、マルチフィラ
メントの軽量性、及び保温性を向上させるには、フィラ
メントの中空率を大きくすることが有効であるが、反
面、フィラメントの曲げの応力が高くなり、風合いの柔
軟性が損なわれることが明らかになった。即ち、軽量
性、保温性と柔軟な風合いとは相反する関係にあること
がわかった。軽量で、保温性を発揮するには、フィラメ
ントの平均中空率を大きくすることが必要である。しか
し、単に平均中空率を大きくすると、風合いが硬くな
り、柔軟な風合いの編織物が得られないという問題があ
る。更に製造方法に関しても、(イ)及び(ロ)は、ス
テープル繊維である故に、繊維を混合して紡績に供され
るために、繊維の長さ方向の均一な染色性が要求されな
い。従って、糸質の均一性に優れたマルチフィラメント
を、糸切れなく安定に製造する方法について、記載も示
唆もされていない。
【0006】糸長方向での糸質の均一性は、編織物にし
た際に染めスジや染め斑などの欠点となるので、工業的
には極めて重要な課題である。平均中空率が大きなフィ
ラメントを得るには、使用するポリマーの重合度を高め
たり、大きな断面積を有する紡糸孔を使用したり、また
は紡口直下を急冷する方法が採用される。しかし、かか
る紡糸方法はいずれもマルチフィラメントの糸質斑を生
じ易いことや、紡糸時に糸切れなどが生じ易く、糸長方
向に均質で、かつ、工業的に安定した紡糸を実現するこ
とが困難であるという問題があった。従って、軽量で保
温性を発揮しうるに十分な平均中空率を有し、かつ、柔
軟な風合いを兼ね備えたマルチフィラメント及び、編織
物の経糸の一部に用いた場合にも染めスジや染め斑など
の問題がない中空マルチフィラメントを工業的に安定し
て製造する方法が強く求められている。
【0007】また、異型で中空という極めて特異な特殊
糸を、編織物の経糸に用いると、経て筋、「地割れ」、
チラツキ等の欠点が発生しやすいだけでなく、サイジン
グの際にサイジング毛羽、フィラメント割れ、切断等の
後加工工程でのトラブルが発生しやすいという問題が生
じる。更に、異型で中空という極めて特異な特殊糸を、
編織物の経糸に用いた場合、経糸の収縮応力が小さいた
めにフィラメント糸条間に隙間ができ易く、この隙間の
大小が不揃いな場合に、スジ状に見えるいわゆる地割れ
欠点の問題が生じる。従って、編織物の経糸に用いた場
合に、染めスジがなく、しかも経糸に用いたとしても地
割れ欠点が発生しない改良された中空マルチフィラメン
トが強く求められている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、メガネ型
横断面形状であり、フィラメント横断面に2つの中空部
を有するポリエステルマルチフィラメントの特性を生か
しつつ、軽量性と保温性、及び柔軟性が両立し、且つ、
編織物の経糸に使用した時に、染めスジや地割れ等の経
糸欠点がなく、経糸用に充分適したなポリエステルマル
チフィラメントを提供するために鋭意検討を行った。そ
の結果、フィラメントの横断面形状の中空率の分布を限
定するこに加えて、交絡や撚りを加えることにより、上
記の問題が解決可能であることを見出し、本発明を完成
するに至った。
【0009】即ち本発明の第1の発明は、90モル%以
上がエチレンテレフタレートの繰り返し単位からなるポ
リエチレンテレフタレートのフィラメントであり、フィ
ラメントの横断面がフィラメントの長手方向に延びる独
立した二つの中空部を有するメガネ型であって、以下の
要件(1)〜(4)を満足することを特徴とするポリエ
ステルマルチフィラメントである。 (1)フィラメント横断面の扁平度:1.3〜3.0 (2)フィラメント横断面の平均中空率:20〜40% (3中空率の最大と最小の差:R≦25% (4)マルチフィラメントの熱収縮応力:0.05〜
0.2cN/dtex (但し、扁平度はフィラメント横断面の外接長方形の長
辺と短辺の比である。)
【0010】本発明の第2の発明は、以下の要件(a)
〜(e)を満足することを特徴とする第一の発明のポリ
エステルマルチフィラメントの製造方法である。 (a)紡糸孔がメガネフレーム状のスリットを有し、か
つ、扁平度が2〜4の孔を複数個穿孔した紡口を使用
し、(b)紡糸孔から重合体を吐出線速度2〜10m/
分で吐出し、(c)紡口直下3cmにおけるフィラメン
ト近傍1cmの温度を200℃以下とし、(d)冷却風
を糸条に対して横方向から7゜〜13゜角度で当て、冷
却、固化し仕上げ剤を付与し、(e)未延伸糸を一旦巻
き取ることなく、連続して延伸するに際し、紡糸速度
(m/分)と延伸倍率の積が3000〜4500(m/
分)で延伸して巻取る。本発明の第3の発明は、該ポリ
エステルマルチフィラメントを織物の経糸の一部または
全部に用いたことを特徴とする編織物である。
【0011】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
用いるポリエステルは、90モル%以上がエチレンテレ
フタレートの繰り返し単位からなるポリエチレンテレフ
タレートである。本発明のポリエステルには、10モル
%未満の他のポリエステル成分が含まれていてもよい。
他のポリエステル成分としては、イソフタル酸、アジピ
ン酸、ドデカン二酸、スルホイソフタル酸、シクロヘキ
サンジメタノールなどの酸成分や、ジエチレングリコー
ル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールな
どのグリコール成分などがあげられる。必要によって、
艶消し剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、顔料など
を含有してもよい。
【0012】本発明に用いるポリエチレンテレフタレー
トの固有粘度[η]は、0.60〜0.80であること
が好ましい。固有粘度[η]が0.60未満又は0.8
0を越えると、以下に述べる紡口孔形状や紡口直下の冷
却条件の選定が難しく、製造を安定して行うことが難し
くなる。 (イ)本発明の中空糸の横断面形状 本発明におけるフィラメントの横断面形状は、フィラメ
ントの長手方向に延びる独立した二つの中空部を有する
メガネ型である。本発明のメガネ型とは、単糸断面に独
立した二つの中空部が存在する形状をいう。単糸断面の
外形は、8字型のように二つの中空部の間にくびれを有
するものや、小判型のようにくびれを有しないものであ
っても良い。
【0013】本発明のマルチフィラメントを構成するフ
ィラメント横断面の代表的な8字型のメガネ型断面の模
式図を図1に示す。本発明のメガネ型断面では、そのフ
ィラメント横断面において、フィラメントの長手方向に
延びる中空部を有することが必要である。図2(a)や
図2(b)に模式的に例示するように、そのフィラメン
ト横断面に中空部を有しないか、1つの中空部しか有し
ない場合は、軽量性及び保温性が劣り、本発明の目的が
達成されない。二つの独立した中空部の大きさは、必ず
しも同一である必要はないが、紡糸の安定性からほぼ同
一であることが好ましい。また、外形も二つの独立した
中空部を挟んで対象であることが好ましい。
【0014】本発明におけるフィラメント横断面の扁平
度は1.3〜3.0でなければならない。扁平度が1.
3未満では、風合いが硬くなり本発明の目的が達成され
ない。扁平度が3.0を越えると、風合いは柔らかくな
るが、中空率を大きくすることが困難になることや、フ
ィラメント製造時に紡口直下で糸曲がりなどが生じて安
定した製造ができなくなる。扁平度は、後述する方法に
より求める。本発明のマルチフィラメントは、編織物に
した場合に、編織物中で扁平形状の長辺が編織物の面方
向となり(いわゆるレンガ積み構造)、曲げやすくな
り、柔らかさを発現するものと思われる。扁平度は、好
ましくは、1.5〜2.5、より好ましくは1.8〜
2.5である。
【0015】本発明におけるフィラメントの平均中空率
は20〜40%であることが必要である。平均中空率が
20%未満では、軽量性や保温性が劣り、本発明の目的
が達成されない。平均中空率が40%を越えると、軽量
性が増し、保温性が向上するが、曲げ応力が過度に高く
なり、布帛にした際の風合いが硬いものになる。また、
製造時に紡口直下での糸切れが増加し、安定した製造が
困難となるばかりか、糸長方向の繊度変動値U%の均一
性が不良となる。布帛にした際の軽量性、保温性及び柔
軟な風合いを兼備えるためには、平均中空率は25〜3
5%であることが更に好ましい。
【0016】また、本発明のマルチフィラメントは、中
空率の最大と最小の差Rが25%以下であることが好ま
しい。中空率の最大と最小の差Rが25%を越えると編
織物の経糸に用いたとき、経スジの欠点が発生しやすく
なるばかりでなくサイジング工程において、毛羽や断糸
などの工程トラブルが発生しやすくなる。この理由は明
確でないが、フィラメント横断面の大きさや形状が不均
一になると、フィラメント間の構造差が大きくなり光の
反射特性や染色性の差が拡大し、マルチフィラメント中
の各フィラメントの位置によって染めスジとして見られ
るためだと考えられる。また、サイジングでの工程トラ
ブルの原因は、明確ではないが、フィラメント横断面の
大きさや形状が不均一になるとフィラメント間の構造差
が大きくなり、サイジングの際にフィラメントの弛みが
発生し、そのため毛羽や断糸等のトラブルが発生しやす
くなるものと考えられる。
【0017】中空率の最大と最小の差Rは、より好まし
くは15%以下、更に好ましくは10%以下である。ま
た、中空率の分布は、極端な片寄りが無く比較的ランダ
ムに分布していることが必要である。極端に偏った場
合、やはり編織物の経糸に用いたとき、フィラメント間
の光学的反射や構造差が極端に不連続になるため、染め
スジや染め斑などの欠点が生じ易くなる。ポリエチレン
テレフタレートの比重は約1.35〜1.38であるこ
とから、中空率が25〜27%の場合に見掛け比重がお
よそ1.0になる。中空率は、後述する方法により求め
ることができる。
【0018】(ロ)本発明のマルチフィラメントの特性 本発明のマルチフィラメントは、前記の横断面形状特性
に加えて、熱収縮応力及び、好ましくは更に、フィラメ
ントの曲げ特性を特定することにより、軽量性、保温
性、及び柔軟な風合いを兼ね備えた中空糸を実現するこ
とができる。本発明のマルチフィラメントは、熱収縮応
力が0.05〜0.2cN/dtexであることが必要
である。前述の先行技術に示された及び公知のポリエチ
レンテレフタレートマルチフィラメントの熱収縮応力
は、通常0.2〜0.5cN/dtexであることか
ら、本発明のマルチフィラメントの熱収縮応力は特異的
に低い値を示すことが大きな特徴である。本発明の熱収
縮応力は、後述の方法により測定されるが、マルチフィ
ラメントを加熱した際の収縮応力であり、繊維軸方向の
配向度が測定できない特殊な異型断面フィラメントに於
いては、配向度の指標とみなせる。
【0019】本発明のマルチフィラメントの熱収縮応力
が低いということは、微細構造的には繊維軸方向の分子
配向が、公知のポリエステル繊維に比較して、極めて低
いことを意味する。本発明におけるフィラメントでは、
フィラメント軸方向の分子配向度が低いために、高い中
空率にも係わらず曲げ応力を小さくすることができ、そ
の結果、従来のマルチフィラメントでは達成できなかっ
た軽量性、保温性及び柔軟な風合いを兼ね備えることが
できる。マルチフィラメントの熱収縮応力が0.05c
N/dtex未満の場合、より柔軟な風合いとなるが、
製編織に使用する際に、生機の収縮力がきわめて小さ
く、ペーパーライクな風合いになる。熱収縮応力が0.
2cN/dtexを越えると、曲げ応力が大きくなり本
発明の目的が達成されない。好ましい熱収縮応力は0.
05〜0.15cN/dtex、より好ましくは0.0
5〜0.10cN/dtexである。
【0020】本発明のマルチフィラメントの曲げ応力
は、10×10-3cN/dtex以下であることが好ま
しい。曲げ応力は、後述の「連続ベンディング測定機」
によって測定されるマルチフィラメントの曲げ硬さの指
標である。曲げ応力が10×10-3cN/dtexを越
えると、柔軟な風合いの発現が困難になる傾向がある。
曲げ応力は、フィラメントデシテックスが一定であれば
中空率が高くなるにしたがって大きくなる。曲げ応力が
小さいほど、編織物に柔軟な風合いをもたらすことがで
きる。フィラメント曲げ応力は、より好ましくは6×1
-3cN/dtex以下、更に好ましくは5×10-3
N/dtex以下である。
【0021】本発明のマルチフィラメントは、糸長方向
の均質性の指標である繊度変動値U%が1.4%以下で
あることが好ましい。繊度変動値U%が1.4%を越え
ると、編織物に加工したとき、染めスジや染め斑などの
欠点が生じ易くなる。繊度変動値U%は、より好ましく
は1.2%以下、更に好ましくは1.0%以下である。
本発明におけるフィラメントのデシテックスは、0.5
〜5dtexであることが好ましく、より好ましくは1
〜3dtexである。フィラメントデシテックスが5d
texを越えると、風合いが硬くなる傾向がある。
【0022】次に、本発明のマルチフィラメントの製造
方法の一例について説明する。本発明のマルチフィラメ
ントの製造においては、紡糸孔がメガネフレーム状のス
リットを有し、かつ扁平度が2〜4の孔を複数個穿孔し
た紡口を使用する。図3に、本発明に使用する紡糸孔の
例を示す。フィラメント横断面において、繊維の長手方
向に延びる中空部を形成するために、紡糸孔はメガネフ
レーム状のスリットであり、フィラメントの長手方向に
延びる円形を有する紡口が使用される。この2つの円形
部は、中空糸製造時の紡糸安定性や糸質の均一性を確保
する目的からほぼ対称であることが好ましい。
【0023】紡糸孔の扁平度が2未満では、紡糸して得
られるマルチフィラメントの扁平度が2未満となる。紡
糸孔の扁平度が4を越えると、中空糸の製造時に糸曲が
りなどの障害が生じ安定した製造が困難となる。図3に
例示する紡糸孔において、スリットからなる独立した二
つの円形S1とS2の面積の合計が0.5〜5.0mm
2 であることが好ましく、より好ましくは、1.0〜
3.5mm2 である。スリットの幅は0.04〜0.1
mmが好ましい。スリットの開口部の幅は0.1〜0.
3mmが好ましい。
【0024】紡糸孔から重合体を吐出線速度2〜10m
/分で吐出することが必要であり、好ましくは3〜8m
/分である。吐出線速度が2m/分未満では紡糸孔の円
形部をいかに大きくしても平均中空率を20%以上に形
成することが困難となる。一方、吐出線速度が10m/
分を越えると平均中空率を高く形成することが可能とな
るが、吐出孔周辺の汚染が早くなり紡口直下での糸曲り
による紡糸糸切れが多発し、安定した製造が困難となる
ばかりか、糸質斑が大きくなり本発明の目的が達成され
ない。吐出線速度は、紡糸孔の穿孔面積と孔当たりのポ
リマーの吐出量によって設定する。
【0025】紡糸孔より吐出されたマルチフィラメント
を、紡口直下3cmにおけるフィラメント近傍1cmの
温度を200℃以下として冷却、固化し、仕上げ剤を付
与する。紡口直下3cmにおけるフィラメント近傍1c
mの温度が200℃を越えると、紡口形状や孔の扁平度
をいかに大きくしても、本発明の中空糸を得ることが困
難となるばかりか、繊度変動値U%が1.4%を越え均
質なマルチフィラメントとすることが困難となる。紡口
直下3cmにおけるフィラメント近傍1cmの温度は1
80℃以下が好ましく、更に好ましくは170℃以下で
ある。
【0026】また、紡糸孔より吐出されたマルチフィラ
メントは、21℃にコントロールされた冷風により冷却
されるが、紡口を基点とし10〜30mmの位置から冷
却を開始し、糸条に対し横方向から7゜〜13゜の角度
で冷風を糸条に当てる必要がある。13゜を越えると、
フィラメント間の中空率の最大と最小の差が大きくなる
だけでなく、紡孔を直接冷却するため紡口表面温度が低
下し安定なポリマー吐出ができなくなるため糸切れ等が
発生し紡糸性が悪化する。一方、7゜未満では、冷却域
が下方にずれるため、紡口直下3cmにおけるフィラメ
ント近傍1cmの温度が200℃を越えしまい、中空率
が低下するだけでなく、ポリマーの細化工程で紡糸孔か
らの吐出ポリマーの自重と細化のバランスが崩れ、ポリ
マーの最大細化位置が上下変動し、その結果、太さ斑が
発生してしまう。
【0027】好ましい冷風の吹出し角度は7゜〜13゜
であるが、更に好ましくは9゜〜11゜である。本発明
者は、紡口直下において、吐出された中空のポリマー流
に伴う高温の随伴流と、冷却風との、相互の流れ状態を
詳細に調査したところ、冷風の吹き出し角度が、均一な
冷却を行う上で重要な因子であることを見出した。つま
り、冷風の吹出し角度を最適化することにより、ポリマ
ー随伴流と冷却風との温度差によって生じる冷却風の垂
下がり現象を抑制することができ、均一な冷却が可能と
なった。
【0028】従来の、一つの中空部を有する中空糸や、
二つの中空部を有しても中空率が10%未満の糸条と比
べると、本発明の異型でメガネ型の特殊中空糸では、二
つの中空部を有し、かつ、高い中空率を形成するが故
に、20%以上の中空率の有し、かつ、その中空率バラ
ツキの減少は、非常に難しく、極めて特殊な紡糸冷却条
件の基に完成されたものである。吐出されたマルチフィ
ラメントを冷却固化し、仕上げ剤を付与した後、一旦巻
き取ることなく、連続して延伸するに際し、紡糸速度
(m/分)と延伸倍率の積が3000〜4500(m/
分)で延伸する。
【0029】この紡糸速度と延伸倍率の積は、本発明の
マルチフィラメントの熱収縮応力と曲げ応力という繊維
特性を特異的な範囲に特定する重要な要件である。この
積が3000(m/分)未満では、熱収縮応力が0.0
5cN/dtex未満となり、本発明の目的が達成され
ない。また、この積が4500(m/分)を越えると、
熱収縮応力が0.2cN/dtexを越え、本発明の目
的が達成されない。紡糸速度と延伸倍率の積は、好まし
くは3500〜4200(m/分)、より好ましくは3
700〜4100(m/分)である。
【0030】ここでいう紡糸速度とは、紡糸―延伸を連
続して行う連続延伸方式において、引取ロールの周速度
によって決まる速度である。通常、ポリエステルマルチ
フィラメントを連続延伸する場合、紡糸速度として約1
000〜3000m/分が採用される。紡糸速度100
0m/分の場合の延伸倍率が約4.5〜5倍であること
から、この積は約4500〜5000(m/分)とな
る。また紡糸速度が3000m/分の場合には、延伸倍
率が約1.5〜2倍であり、この積は約4500〜60
00(m/分)となる。繊度変動値U%を小さくするた
めには、、全ての紡糸孔Nの扁平の長軸(L2)が、図
4で示したように、冷風の吹き出し方向に対して直角に
配置することが好ましい。
【0031】本発明のマルチフィラメントは、原糸のま
ま単独で編織物の経糸の一部または全部に用いたときに
スジ状に見える「地割れ」欠点の発生を解消するため、
交絡や撚りを付与することが必要である。交絡は、紡糸
工程や後加工工程において、インターレースによりエア
ーをエネルギー源として付与し、その範囲は5〜30ケ
/mである。また撚りは、撚糸機等で付与し、平均中空
率を本発明の範囲内に維持するためには、撚り数の範囲
が100〜3000回/mである。撚り数が3000回
/mを越えると中空部が閉塞され、軽量性・保温性能が
低下し、本発明の効果が発現できなくなる。本発明のマ
ルチフィラメントを織物の経糸の一部または全部に用い
た編織物に加工するには、更に仮撚加工およびタスラン
加工などを施してもよい。
【0032】本発明の編織物には、本発明のマルチフィ
ラメントを100%使用したもの、編織物の一部に使用
したものが挙げられる。一部に使用した編織物には、他
の繊維と混繊することなく編織物に加工したもの、他の
繊維と混繊複合し布帛に特殊断面ポリエステルを使用し
たもの、混繊複合ありなしの糸を併用して特殊断面ポリ
エステルを使用したものが挙げられる。ここで、編織物
における本発明のマルチフィラメントの含有率は、30
%以上が好ましい。本発明のマルチフィラメントの含有
率が多いほど、本発明の特徴である軽量性・保温性及び
風合いの柔軟性が増大する。編織物に用いる本発明のマ
ルチフィラメントは、混繊複合の場合、風合の調整をす
るために、無撚のままか、100〜2500回/mの撚
りを入れることが好ましい。必要に応じて、撚り数を更
に増す場合には、フィラメントの中空率を本発明の範囲
内に維持するためには、3000回/m以下にすること
が好ましい。撚数が増加すると中空部が閉塞され、軽量
性・保温性能が低下する。
【0033】本発明のマルチフィラメントを100%使
用した編織物は、従来のポリエステル繊維を用いて得ら
れる布帛とは異なる、優れた軽量性・保温性及び柔軟な
風合いを兼ね備えている。本発明のマルチフィラメント
と混繊複合したり、編織物加工時に併用する他の繊維と
しては、ポリエステル、セルロース、ナイロン6、ナイ
ロン66、アセテート、アクリル、ポリウレタン弾性繊
維、ウール、絹等の長繊維及び短繊維などが挙げられ
る。
【0034】次に、本発明のマルチフィラメントと他の
繊維とを混繊複合した編織物の製造方法について説明す
る。本発明に用いる混繊複合糸は、本発明のマルチフィ
ラメントと他の繊維とのインターレース混繊、インター
レース混繊後延伸仮撚、どちらか一方のみ仮撚した後イ
ンターレース混繊、両方を別々に仮撚した後インターレ
ース混繊、どちらか一方をタスラン加工した後インター
レース混繊、インターレース混繊した後タスラン加工、
タスラン混繊、等の方法によって製造することができ
る。かかる方法によって得た混繊複合糸は、交絡が10
個/m以上あることが好ましい。交絡が10個/m未満
では、後工程での工程安定性が悪くなる傾向がある。
【0035】本発明の編織物は、本来、疎水性のポリエ
ステルに吸水性能を発現させるため親水加工を施すこと
も可能である。親水加工には、一般に市販されている親
水処理剤を用いることができる。例えば、ポリエチレン
グリコール系の親水加工剤(高松油脂社製のSR100
0など)を用い、5%owf水溶液にて布帛又は原糸を
30分間沸水中で処理することにより親水加工を行うこ
とができる。加工された編織物に、吸水速乾性編織物の
製造に用いることができる。本発明の編織物は、雨等の
外側からの水を吸水し難くするために、表面に撥水加工
を施こしてもよい。撥水加工は、一般に市販されている
撥水処理剤を用いることができる。具体的には、フッ素
樹脂系、メラミン樹脂系、その他の撥水処理剤などを利
用できる。以下、実施例などにより本発明を更に具体的
に説明する。
【0036】
【実施例】測定法、評価方法は、以下の通りである。 (1)紡口直下雰囲気温度の測定 フィラメント近傍温度は、安立計器社製のHFTー50
型温度測定器を用いて、紡糸中の紡口直下3cmにおけ
るフィラメントに近傍1cmの位置の雰囲気温度を測定
した。 (2)平均中空率、最大中空率、最小中空率 フィラメントの横断面写真をn=5撮影し、その横断面
写真を図積分して、式1により全フィラメントの中空率
を求め平均中空率、最大中空率、最小中空率を求めた。
【式1】
【0037】(3)中空率の最大と最小の差 上記(2)で求めた最大中空率、最小中空率の差を下記
式2より求めた。
【式2】 中空率の最大と最小の差 = 最大中空率 − 最小中空率 (2) (4)扁平度 フィラメントの横断面写真上に、図1に示すように断面
に外接する長方形を描き、この長方形の短軸(L1)と
長軸(L2)の比を式3により算出した。
【式3】
【0038】(5)熱収縮応力極値温度 熱応力測定装置(例えば、カネボウエンジニアリング社
製、商品名KEー2)を用いて測定する。糸(マルチフ
ィラメント)を20cmの長さに切り取り、これの両端
を結んで輪を作り、測定器に装填する。初荷重0.04
4cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で測定
し、熱応力の温度変化を示すチャートから熱応力曲線の
ピーク値を読みとる。その値が熱収縮応力の極値温度で
ある。 (6)曲げ応力 マイクロニクス社製の連続ベンディング測定機CV−1
01型を用いて、マルチフィラメントの曲げ応力を測定
する。測定は、糸長方向に50cmごとに計25回測定
し、この平均値をマルチフィラメントのデシテックスで
除して、曲げ応力とする。
【0039】(7)繊度変動値U% USTER TESTER 3(zellweger社
製)により、以下の条件により測定する。 ・測定条件: ハイパスフィルター 有り 測定速度 100m/分 測定スロット 3 テスト時間 5分 圧力 250kPa 撚り 1500t/mS (8)破断強度、破断伸度 JIS−L1015に準じて測定する。
【0040】(9)軽量性 下記式4により見掛け比重を算出し、見掛け比重が1.
1〜1.0のものを○、1.0以下のものを◎とし、見
掛け比重が1.1を越えるものは×とする。但し、ポリ
エステル延伸糸の密度=1.37として算出する。
【式4】
【0041】(10)交絡数(水浸法) 長手方向の両端より10cmの位置に仕切板を設置した
三つの水槽からなる長さ1.2m、巾15cm、深さ5
cmの水浴バスを用いる。水は、常に新しい水を500
cc/分の流量で中央の測定水槽に供給され、測定水槽
から両端の排水水槽にオーバーフローし排水する。これ
は、ポリエステルマルチフィラメント糸条を水に浸漬す
ると、糸条に付着している仕上剤が水面に広がり、次に
新しい糸条を浸漬したときにその糸条が開繊しにくくな
ることを防止するためである。糸条の交絡部、開繊部が
はっきり目視出来、交絡部が読み取り易いように、バス
の底面を黒色にするほうが好ましい。測定方法は、パッ
ケージから糸条を解除し、200mgの荷重をかけ1.
2mを測長する。この糸条の両端を持って弛緩状態で中
央部を浸漬し交絡部が2mm以上の長さ部分の数を読み
取り、糸条1m(仕切板から仕切板までの距離)当りの
個数を求める。前記測定を10回繰返し、その平均値を
交絡数として求める。
【0042】(11)撚り数 撚糸した糸を巻取ったパッケージから解撚しないように
検撚機に25cm糸条をセットし、初荷重(dT/2
0)の荷重をかけて完全に解撚し、1m間の撚り数に換
算し撚り数を求める。 (12)風合い 以下の基準で熟練者が判定する。 ◎ :非常に柔軟 ○ :柔軟 × :劣る(硬い)
【0043】(13)染めスジ ◎ :染めスジが全くない ○ :染めスジが殆どない × :染めスジが目立つ (14)経糸の地割れ欠点 ◎ :欠点全くなし ○ :欠点が目立たない × :欠点が非常に目立つ
【0044】(15)総合評価 軽量性、柔軟性、染めスジ、経糸の地割れ欠点のバラン
スを評価して、以下の基準で判定する。 ◎ :軽量性、柔軟性、染めスジが全くない、地割れ欠
点なしの全てを兼ね備えていて非常に優れている ○ :軽量性、柔軟性、染めスジが殆どない、地割れ欠
点なしを兼ね備えている × :軽量性、柔軟性、染めスジが目立つ、地割れ欠点
なしの一つ以上を欠いている(16)紡糸安定性 メガネ型断面の孔を24ホール穿孔した紡口を16個装
着した紡糸設備により紡糸する。この紡糸において、連
続的に紡糸−延伸を行った際の糸切れ回数により1日当
たりの糸切れ回数を測定する。 1回以内:良好 1〜3回:ほぼ良好 3回以上:不良
【0045】
【実施例1〜3、比較例1〜3】本実施例、比較例で
は、マルチフィラメントの紡糸にあたり、冷風の吹出し
角度の影響と、得られた中空糸の中空率の最大と最小の
差が織物の経糸に用いた場合の品位に及ぼす影響につい
て説明する。酸化チタンを0.5重量%を含む、固有粘
度[η]0.65のポリエチレンテレフタレートを公知
の紡糸機−連続延伸機を用いて下記に示す条件で紡糸
し、巻き取ることなく連続して延伸を行った。紡糸にあ
たっては、図3に示す形状に穿孔された孔を、図4に示
す様な畝状に24個配列した紡糸口金を使用した。この
時、孔の扁平度は2.2、孔の中空部の面積が1.57
mm2 であった。冷風の吹出し角度を表1の様に変化さ
せて、中空率の最大と最小の差を異ならせた場合の結果
を表1に示す。
【0046】 (紡糸条件) 紡糸温度 295 ℃ 紡糸孔配列 図4の配列紡口を使用 吐出量 巻取デシテックスを一定になるよう変化 孔からの吐出線速度 3.1〜5.0 m/分 冷風速度 第1表の平均中空率となるように調整 仕上げ剤付着率 0.7重量% (延伸条件) 第1ゴデットロール速度 2400 m/分 (紡糸速度に同じ) 第1ゴデットロール温度 85 ℃ 第2ゴデットロール速度 延伸糸の破断伸度が30%となるように設定 第2ゴデットロール温度 130 ℃ 巻取速度/第2ゴデットロール速度比 0.983 インターレース圧力 交絡数が10個/mになるように設定 (延伸糸デシテックス) 72dtex/24f 得られたマルチフィラメントの平均中空率、中空率の最
大と最小の差、扁平度等の物性、及びこれらを経糸とし
て平組織のタフタ織物にした場合の品位を評価したもの
の特性を表1に示す。
【0047】製織方法は、経糸に太さが72dtex、
24フィラメントの本発明のポリエステルマルチフィラ
メント糸条を配し、緯糸に太さが84dtex、24フ
ィラメントの丸断面糸を配し、生態の経糸密度100本
/インチ×緯糸密度85本/インチ、織物生機巾130
cmの72/84タフタ(平組織)をAJLで製織する
に当り、該経糸糸条を河本製機社製KFWサイザーで、
糊レサイプとして互応化学社製糊剤プラスサイズT−1
05(成分濃度15%)と松本油脂製薬社製エフコール
214(濃度0.2%)を併用し、アフターワックスと
して互応化学社製プラスサイズPH−400を用い、ア
フターワックスを含めた糊付着率が5%になる条件にて
サイジング速度40m/分でサイジングし、津田駒工業
社製エアジェットルームZA205にて製織した。かか
るタフタを、連続精練→液流染色→仕上げを行い、製品
の経糸密度105本/インチ、緯糸密度87本/インチ
とし、タフタの経てスジ評価を検反機上で静止状態にて
視覚判定(官能評価)し品位を評価した。
【0048】この表から明らかなように、本発明の実施
例1〜3のマルチフィラメントは、平均中空率20%以
上で、中空率の最大最小の差が25%以下で、軽量で柔
軟な風合いと経糸に用いた場合も充分な品位を兼ね備え
ている。また、表2に、実施例2の中空率の分布を示し
たが、中空率の最大と最小の差Rが25%未満であり、
中空率が極端な片寄りが無く比較的ランダムに分布して
いることにより、サイジングの工程性も良く布帛にした
場合にも良好な品位を有するマルチフィラメントが得ら
れた。これに対し、比較例1〜3のマルチフィラメント
は、中空率の最大と最小の差が大きいために、柔軟で軽
量であるが、染めスジや地割れ欠点が発生し、サイジン
グの際に切糸が発生し、工程性能が悪く、また、サイジ
ング時に毛羽の発生が多く見られた。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【実施例4〜6、比較例4〜5】本実施例、比較例で
は、交絡数の編織物品位への影響について説明する。実
施例2の紡糸条件で、巻取機前に設置したインターレー
スへの供給エアー量にて、交絡数を変化させた糸条を経
糸として、タフタ織物にした場合の品位を評価した。製
織方法は、実施例1〜3と同様とし、タフタ織物の経て
スジ評価を検反機上で静止状態にて視覚判定し品位を評
価した。評価結果を表3に示した。表3から明らかなよ
うに、交絡数が本発明の範囲のとき、紡糸工程での良好
な選別収率と、軽量で柔軟な風合、さらに、良好な経品
位を有するマルチフィラメントが得られた。
【0052】
【表3】
【0053】
【実施例7〜9、比較例6〜7】本実施例、比較例で
は、撚り数の編織物品位への影響について説明する。実
施例2の紡糸条件で巻取った糸条を、撚糸機にて撚り数
を変化させ巻取り、経糸として織物にした場合の品位を
評価した。製織方法は、実施例1〜3と同様の条件とし
た。評価結果を表4に示した。表4から明らかなよう
に、撚り数が本発明の範囲のとき、軽量で柔軟な風合で
良好な経品位を有するマルチフィラメントが得られた。
【0054】
【表4】
【0055】
【実施例10〜12、比較例8〜9】本実施例、比較例
では、マルチフィラメントの紡糸にあたり、紡口直下の
雰囲気温度の影響と、得られた中空糸の中空率が風合い
に及ぼす影響について説明する。図3の形状の紡糸孔を
準備し、紡糸−延伸を行った。紡糸条件は、延伸糸の破
断伸度が30%となる条件にてマルチフィラメントを製
造した。得られたマルチフィラメントの平均中空率、中
空率の最大と最小の差、扁平度等の物性、及びこれらを
経糸として平組織のタフタ織物にした場合の品位を評価
したものの特性を表5に示す。織物の条件は、実施例1
と同様の条件で実施した。
【0056】紡口直下3cmにおけるフィラメント近傍
温度を表5のように変化させて、中空率及び[紡糸速度
×延伸倍率]を異ならせた場合の結果を表5に示す。 (紡糸条件) 紡糸温度 295 ℃ 紡糸孔配列 図4の配列紡口を使用 吐出量 巻取デシテックスを一定になるよう変化 孔からの吐出線速度 3.1〜5.0 m/分 冷風速度 第1表の中空率となるように調整 仕上げ剤付着率 0.7重量% (延伸条件) 第1ゴデットロール速度 2400 m/分 (紡糸速度に同じ) 第1ゴデットロール温度 85 ℃ 第2ゴデットロール速度 延伸糸の破断伸度が30%となるように設定 第2ゴデットロール温度 130 ℃ インターレース圧力 交絡数が10個/mになるように設定 巻取速度/第2ゴデットロール速度比 0.983 (延伸糸デシテックス) 72dtex/24f
【0057】紡口直下3cmにおけるフィラメント近傍
温度を変化させて、中空率及び[紡糸速度×延伸倍率]
を異ならせた場合の結果を表5に示す。この表から明ら
かなように、本発明の実施例10〜12のマルチフィラ
メントは、中空率20%以上であるにもかかわらず、軽
量で柔軟な風合いを兼ね備えている。これに対し、比較
例8のマルチフィラメントは、中空率が小さいために、
柔軟な風合いは有するが、軽量性に欠けている。また、
比較例9は中空率が40%を越えており、軽量である
が、曲げ応力が大きく柔軟な風合いに欠けている。
【0058】
【表5】
【0059】
【実施例13、比較例10】本実施例、比較例では、紡
糸孔の形状及び扁平度の影響について説明する。扁平度
の異なる、図3の形状の紡糸孔を準備し、紡糸ー延伸を
行った。紡糸条件及び[紡糸速度×延伸倍率]は、実施
例2に準じ、破断伸度が30%となる条件にてマルチフ
ィラメントを製造した。得られたマルチフィラメントの
平均中空率、中空率の最大と最小の差、扁平度等の物
性、及びこれらを経糸としてタフタ織物にした場合の品
位を評価したものの特性を表6に示す。織物の条件は、
実施例1と同様の条件で実施した。表6から明らかなよ
うに、紡口の扁平度が2以上の紡糸孔を用いて、中空率
が20%以上、かつ、扁平度が本発明の範囲としたマル
チフィラメントは、軽量で柔軟な風合いを兼ね備えた編
織物が得られた。
【0060】
【表6】
【0061】
【発明の効果】本発明のマルチフィラメントは、高い中
空率であるにもかかわらず、特定の断面形状と特定の繊
維特性を有することから、編織物に使用した場合、軽量
で保温性と柔軟な風合いを兼ね備えた特性を発揮するこ
とができる。また、高い中空率であるにもかかわらず、
マルチフィラメント方向の糸質の均一性に優れているこ
とから、実用上も良好な品位の編織物を提供できる。本
発明の製造方法は、かかるマルチフィラメントを工業的
水準で安定、かつ、均一に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマルチフィラメントの横断面形状を示
す模式図。
【図2】本発明によらないマルチフィラメントの横断面
形状を示す模式図。
【図3】本発明のマルチフィラメントを紡糸するのに使
用する紡糸口金の孔形状を示す模式図。
【図4】本発明のマルチフィラメントを紡糸する紡糸口
金の孔配列を示す模式図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L002 AA07 AB00 AB02 AC00 EA00 EA01 4L035 AA09 BB36 BB40 BB56 BB61 BB77 BB84 BB89 DD05 EE01 EE20 4L045 AA05 BA03 BA10 BA26 CB08 DA15 DA23 DC02 4L048 AA21 AA37 AA39 AA46 AA50 AB08 AB12 BA01 BA02 CA00 CA10

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 90モル%以上がエチレンテレフタレー
    トの繰り返し単位からなるポリエチレンテレフタレート
    のフィラメントであり、フィラメントの横断面がフィラ
    メントの長手方向に延びる独立した二つの中空部を有す
    るメガネ型であって、以下の要件(1)〜(4)を満足
    することを特徴とするポリエステルマルチフィラメン
    ト。 (1)フィラメント横断面の扁平度:1.3〜3.0 (2)フィラメント横断面の平均中空率:20〜40% (3)中空率の最大と最小の差:R≦25% (4)マルチフィラメントの熱収縮応力:0.05〜
    0.2cN/dtex (但し、扁平度はフィラメント横断面の外接長方形の長
    辺と短辺の比である。)
  2. 【請求項2】 糸長方向の交絡数が5〜30ケ/mであ
    ることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルマル
    チフィラメント。
  3. 【請求項3】 糸長方向に100〜3000回/mの撚
    りを有することを特徴とする請求項1に記載のポリエス
    テルマルチフィラメント。
  4. 【請求項4】 以下の要件(a)〜(e)を満足するこ
    とを特徴とする請求項1に記載のポリエステルマルチフ
    ィラメントの製造方法。 (a)紡糸孔がメガネフレーム状のスリットを有し、か
    つ、扁平度が2〜4の孔を複数個穿孔した紡口を使用
    し、(b)紡糸孔から重合体を吐出線速度2〜10m/
    分で吐出し、(c)紡口直下3cmにおけるフィラメン
    ト近傍1cmの温度を200℃以下とし、(d)冷却風
    を糸条に対して横方向から7゜〜13゜角度で当て、冷
    却、固化し、仕上げ剤を付与し、(e)未延伸糸を一旦
    巻き取ることなく、連続して延伸するに際し、紡糸速度
    (m/分)と延伸倍率の積が3000〜4500(m/
    分)で延伸して巻取る。
  5. 【請求項5】 紡糸孔の中空部の面積が0.5〜5.0
    mm2 であることを特徴とする請求項4に記載のポリエ
    ステルマルチフィラメントの製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜3のいづれかのポリエステル
    マルチフィラメントを経糸の一部または全部に用いたこ
    とを特徴とする編織物。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101942298B1 (ko) 2017-04-27 2019-01-28 주식회사 휴비스 울-라이크 이형단면사

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KR101881828B1 (ko) 2017-04-27 2018-08-24 주식회사 휴비스 울-라이크 이형단면사 제조방법
KR101942298B1 (ko) 2017-04-27 2019-01-28 주식회사 휴비스 울-라이크 이형단면사

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