JP5872359B2 - 自動車用アルミニウム合金鍛造部材およびその製造方法 - Google Patents

自動車用アルミニウム合金鍛造部材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車の構造部材に好適に用いられる自動車用アルミニウム合金鍛造部材およびその製造方法に関するものである。
近年、軽量化の要求に対応するため、自動車用部材においては、高強度で軽量なAl合金材料が広く使用されている。
アルミニウム合金(以下略して「Al合金」と表記することがある。)の機械的強度は、近年大きく改善されてきている一方で、厳しい実用環境下における耐食性能に対する要求は年々さらに高いものとなってきている。例えば、高強度Al合金として広く用いられている7000系Al合金であっても、近年の要求水準に照らせば、その耐食性は不十分であり、その用途範囲は限られたものとなっている。
これに対して、例えば、特許文献1には、押出性、耐応力腐食割れ性(以下、「耐SCC性」と表記する。)を高い水準で兼ね備えた高強度アルミニウム合金が開示されている。このアルミニウム合金は、Zn;8.0〜10.0wt%、Mg;0.9〜1.3wt%、Cu;0.45〜0.55wt%およびZr;0.1〜0.2wt%を含有し、残部がAlおよび不純物からなるものである。
特開平8−295976号公報
しかしながら、この特許文献1に記載されたアルミニウム合金は、優れた引張強度と耐SCC性とを満足する押出成形品を得るために、特定の組成のAl合金からなる成形品であって、460〜480℃で8〜12時間加熱して均質化処理をしたのち、460〜530℃で所要形状の形材に押出し、該形材を室温まで冷却したのちに24〜80時間室温で保持し、さらに85〜110℃で7〜9時間、続いて145〜165℃で7〜9時間の2段階に加熱処理することを必要とするものである。即ち、特許文献1のアルミニウム合金は、押出材の金属組織を繊維構造とするために、このように38時間以上の長時間にわたる加熱処理を必要としている。そのため、このアルミニウム合金は生産性に劣り、実用性に劣るものと言える。
また、前記したアルミニウム合金から得られた押出材の耐SCC性のレベルにおいても、自動車に適用するには、実用上、十分とは言えないものであった。
本発明は、上記のような状況に鑑み、自動車用途において、高いレベルの耐SCC性を有し、引張強度にも優れ、製造時においても長時間の熱処理を必要としない、生産性に優れた自動車用アルミニウム合金鍛造部材とその製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明者らは、耐SCC性と引張強度とをより高いレベルで満足させるための合金組成およびその製造方法について検討を進めた。
従来の7000系Al合金では、高強度化を図るために、Znの添加量を増やしている。しかし、Znは耐食性を大きく低下させることが知られている。そこで、従来の7000系Al合金のZn添加量を減少させることにより耐食性の向上を図るとともに、高強度を維持するために、Znに代えてMgを添加することを検討した。また、高耐SCC性と高強度とを兼ね備えた鍛造部材を比較的短時間で製造するための製造条件についても検討を加えた。
その結果、Zn、MgおよびCuを特定の組成で含有するAl合金であれば、長時間の加熱処理を要することなく、優れた耐SCC性と引張強度とを兼ね備えたAl合金鍛造部材を得ることができることに到達した。
即ち本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材は、Zn;4.5〜5.0質量%、Mg;3.0〜4.0質量%、Cu;0.1〜0.8質量%、Zr;0.05〜0.3質量%およびCr;0.05〜0.2質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなり、前記不可避的不純物は、元素毎の含有量が0.3質量%以下であり、合計の含有量が1.0質量%以下であるアルミニウム合金から構成されることを特徴としている。
前記構成によれば、本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材は、Zn、MgおよびCuを所定量、特にMgを特定の狭い範囲で従来よりも比較的多量に含有させたことにより、高いレベルで耐SCC性と引張強度とをバランスよく満足させることを可能としている。
さらに、本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材は、その表面に表面処理皮膜または表面改質層が形成されていることが好ましい。このような構成にすれば本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材は、ベースとなるAl合金の優れた耐SCC性に加えて、部材表面に表面処理皮膜または表面改質層が形成されていることにより、従来のAl合金鍛造部材では困難であった高いレベルの耐SCC性を達成することに成功している。即ち、本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材は、JIS H8711に規定されている塩水交互浸漬法にて、200MPa応力を付加した状態で保持する加速試験において、20日間、さらには60日間SCCの発生がないものを得ることに成功したものである。
また、本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造部材の製造方法は、上記特定組成のAl合金の鋳塊を鋳造する鋳造工程と、前記鋳塊を400〜500℃で均質化熱処理する均質化熱処理工程と、前記均質化熱処理した鋳塊を鍛造開始温度380〜460℃、鍛造終了温度350℃以上で鍛造して所定の形状の鍛造部材を得る鍛造工程と、前記鍛造部材を460〜500℃で溶体化処理する溶体化処理工程と、前記溶体化処理した鍛造部材を60℃以下で焼入れする焼入工程と、前記焼入れした鍛造部材を150〜200℃で、ピーク時効時間以上、12時間以下の人工時効処理する人工時効処理工程、を含み、これらの工程をこの順に行うことを特徴としている。
上記の特定組成のAl合金を使用して、上記手順によって、特定の製造条件で製造することにより、鍛造部材中の結晶構造とその分布を制御することが可能となり、高いレベルで耐SCC性と引張強度とをバランスよく満足させた自動車用アルミニウム合金鍛造部材を得ることを可能としている。
本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材は、高いレベルの耐SCC性を有し、引張強度にも優れ、自動車用途において十分使用することが可能である。また、本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材の製造方法を用いることにより、長時間の熱処理を必要とせずに、上記の自動車用アルミニウム合金鍛造部材を高い生産性で製造することが可能となる。
本発明の製造方法の工程を示すフローチャートである。
以下、本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材およびその製造方法について詳細に説明する。まず、本発明に係るアルミニウム合金について説明する。
本発明に係る自動車用アルミニウム合金は、Zn;4.5〜5.0質量%、Mg;3.0〜4.0質量%、Cu;0.1〜0.8質量%、Zr;0.05〜0.3質量%およびCr;0.05〜0.2質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金からなる。
本発明のアルミニウム合金を構成する各元素の含有量について、以下に説明する。
(Zn;4.5〜5.0質量%)
(Mg;3.0〜4.0質量%)
ZnおよびMgは、合金中にMgZn2を生成させて、析出硬化させることにより、あるいは合金中に固溶させることにより、合金強度を向上させる効果がある。これらの元素の含有量は、Znの含有量が4.5質量%未満、Mgの含有量が3.0質量%未満では上記効果に乏しく十分な強度が得られない。逆に、Znは、その含有量が5.0質量%を超えると強度は向上するが、耐SCC性が著しく低下する。また、Mgは、その含有量が4.0質量%を超えると、引張伸びが著しく低下する。
従って、Zn含有量は4.5〜5.0質量%、Mgは3.0〜4.0質量%とすることが必要である。Znの含有量は、好ましくは4.7〜5.0質量%である。また、Mgの含有量は、好ましくは3.2〜3.8質量%であり、さらに好ましくは3.5〜3.8質量%である。
(Cu;0.1〜0.8質量%)
Cuは、合金中に固溶されて合金強度を向上させるとともに、耐SCC性の改善に有効な元素である。しかし、Cuは、その含有量が0.1質量%未満であれば上記効果に乏しく、0.8質量%を超えると腐食による重量減少が増加する。従って、Cuの含有量は、0.1〜0.8質量%とすることが必要である。Cuの含有量は、好ましくは0.3〜0.7質量%であり、さらに好ましくは0.3〜0.5質量%である。
(Zr;0.05〜0.3質量%)
(Cr;0.05〜0.2質量%)
ZrとCrは、鍛造に際し金属組織の再結晶を抑制して安定した繊維組織を形成するのに寄与する。ZrとCrは、安定した繊維組織を形成することにより強度および耐SCC性を向上させる効果がある。しかし、ZrあるいはCrは、その含有量が0.05質量%未満では上記効果に乏しくなる。逆に、Zrは、その含有量が0.3質量%を超えるか、あるいはCrは、その含有量が0.2質量%を超えると、粗大な晶出物が形成されやすくなり、伸びが悪くなる。
従って、Zrの含有量は0.05〜0.3質量%、Crの含有量は0.05〜0.2質量%の範囲とすることが必要である。Zrの含有量は、好ましくは0.1〜0.2質量%である。また、Crの含有量は、好ましくは0.1〜0.2質量%である。
(不可避的不純物)
不可避的不純物としては、Si、Fe、Mn、Ti、B等の元素が想定し得るが、いずれの元素であったとしても、本発明の特徴を阻害しないレベルで含有することは許容される。具体的には、これら不可避的不純物の元素は、個々の元素毎の含有量がそれぞれ0.3質量%以下であり、合計の含有量が1.0質量%以下であることが必要である。
次に、本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材の製造方法について説明する。図1は、本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材の製造方法の工程を示すフローチャートである。
図1に示すように、本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材の製造方法Sは、アルミニウム合金の鋳塊を鋳造する鋳造工程S1と、前記鋳塊を均質化熱処理する均質化熱処理工程S2と、前記均質化熱処理した鋳塊を鍛造して所定の形状の鍛造部材を得る鍛造工程S4と、前記鍛造部材を溶体化処理する溶体化処理工程S5と、前記溶体化処理した鍛造部材を焼入れする焼入工程S6と、前記焼入れした鍛造部材を人工時効処理する人工時効処理工程S7、を含み、これらの工程をこの順に行う。さらに、本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材の製造方法は、鍛造工程の前に、鋳塊を押出や圧延する工程S3を設けてもよい。
本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材を得るためには、前述のアルミニウム合金の組成だけでなく、製造方法についても各工程において所定の条件を採用することが必要である。
本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材の製造方法では、以下に特に記載した以外の工程や条件については、常法により製造することが可能である。以下に、各工程の条件について説明する。
(鋳造工程)
鋳造工程S1は、前記アルミニウム合金の化学成分組成に溶解調整された溶湯を鋳造して鋳塊とする工程である。そして、連続鋳造法(例えば、ホットトップ鋳造法)や半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。なお、鋳塊の形状は、丸棒などのインゴットやスラブ形状などがあり、特に制限されるものではない。
(均質化熱処理工程)
均質化熱処理工程S2は、溶質元素の固溶のために行う工程である。
均質化熱処理する温度は、400℃未満では、十分な固溶が得られず、十分な引張強度及び伸びが得られない。また、500℃を超えると、低融点の晶出物であるMgZn2が溶融することで、空孔が発生し、引張強度を著しく低下させる。
従って、均質化熱処理は、400〜500℃で行うことが必要である。
均質化熱処理の時間は、好ましくは、Mg、Znを十分に固溶させるために、1hr以上である。さらに好ましくは、2〜12hrである。
(鍛造工程)
鍛造工程S4は、鋳塊から目的とする所定の形状の鍛造部材を得る工程である。鍛造前に鋳塊に対して押出や圧延を実施してもよい。鍛造の開始温度を380℃未満で行うと変形抵抗が大きくなり十分な加工が行えず、また鍛造の終了温度350℃以上を得ることができない可能性がある。鍛造の終了温度を350℃未満で行うと、再結晶による結晶粒の成長により引張強度および耐SCC性が悪くなる。鍛造の開始温度が460℃を超えると、加工発熱によるMgZn2の溶融や加工割れを起こし、欠陥となり易くなる。
従って、鍛造開始温度は380〜460℃、鍛造終了温度は350℃以上で鍛造を行うことが必要である。鍛造終了温度は、再結晶抑制の点からなるべく高い温度で行うことが望ましい。
(溶体化処理工程)
溶体化処理工程S5は、加工による歪の低減と溶質元素の固溶を目的とする工程である。溶体化処理を460℃未満で行うと、上記効果が乏しくなる。一方、500℃を超えると、再結晶による結晶粒の成長やMgZn2の溶融により引張強度及び耐SCC性が悪くなる。
従って、460〜500℃で溶体化処理することが必要である。溶体化処理の保持時間は、好ましくは、歪の十分な除去と、長時間の熱処理による再結晶の発生を抑制するため、1〜12hrである。さらに好ましくは、1〜6hrである。
(焼入工程)
焼入工程S6は、溶体化処理で固溶させた元素を高温で析出させず、後の人工時効処理工程S7で析出させるために行う工程である。60℃を超える温度で焼入れを行うと、冷却速度が析出速度より遅くなるため粗大な析出物となり、後の人工時効処理工程S7で十分な強度を得ることができない。従って、焼入れは、60℃以下で行うことが必要である。
(人工時効処理工程)
人工時効処理工程S7は、過飽和固溶体から析出を起こさせることで引張強度を上げる工程である。200℃を超える温度で時効処理を行うと粗大な析出物となるため十分な引張強度が得られなくなる。一方、150℃未満で時効処理を行うと微細な析出物となり、強度が得られるものの粒界析出間距離が短くなるため耐SCC性が低下する上、熱処理時間も12時間を超えることとなり、生産性が大幅に低下する。従って、人工時効処理は150〜200℃で行うことが必要である。
また、人工時効処理する時間は、ピーク時効時間以上で、12時間以下の時間行うことが必要である。その理由は、ピーク時効時間未満であったり、ピーク時効時間が12時間以上となる低温で時効処理すると、粒界に析出するMgZn2が微細となりすぎるため隣り合う析出物との間隔が狭くなることから、粒界腐食しやすくなり、耐SCC性が悪くなるからである。
ここで、ピーク時効時間とは、ある温度で時効処理を行った時に最も高い引張強度を得る事ができる時間のことを言う。ピーク時効時間は、以下の方法によって測定することができる。
焼入工程S6まで終了した試験品に対し、特定の時効温度にて、時間を変えて人工時効処理を行う。具体例としては160℃で1時間、2時間、4時間、8時間、12時間である。人工時効処理後に引張試験を行い、引張強度と人工時効処理時間のグラフを作成し、滑らかな曲線で繋いだ時、最も高い引張強度となる時間をピーク時効時間とする。
本発明においては、上記工程で製造された鍛造部材表面に、表面処理皮膜または表面改質層を形成させることができる。表面処理皮膜あるいは表面改質層を形成させることにより、鍛造部材の表面が空気中の水分または酸素と直接接触することが遮断されることとなり、耐食性のさらなる向上を図ることが可能となる。図1には、鍛造部材表面に、表面処理皮膜または表面改質層を形成させる工程として、表面処理工程S8で示している。
鍛造部材表面に形成する表面処理皮膜としては、金属皮膜、非金属皮膜および化成処理皮膜よりなる群から選択された1種または2種以上の皮膜であることが好ましい。2種以上の皮膜とは、金属皮膜、非金属皮膜および化成処理皮膜よりなる群から選択されたいずれか2種以上の皮膜を積層して形成することを意味している。
表面処理皮膜の形成方法としては、電気めっき、無電解めっき、溶射、塗装等の方法を使うことができる。これらの方法の条件は特に限定されるわけではない。対象とする鍛造部材の種類、用途、使用環境に応じて表面処理皮膜の種類、皮膜の厚み等の処理条件を適宜選択することができる。
金属皮膜の具体例としては、クロムや亜鉛等のめっきであり、硬質クロムめっきとすることもできる。非金属皮膜の具体例としては、プラスチックライニンング等の樹脂によるコーティング膜や塗装膜等がある。化成処理皮膜の具体例としては、アルマイト皮膜、クロメート皮膜、リン酸亜鉛皮膜等が挙げられる。
また、鍛造部材表面に形成する表面改質層としては、表面硬化処理、ショットピーニングあるいはイオン注入の処理方法で形成された表面改質層である。
表面改質層の形成の条件は特に限定されるわけではない。対象とする鍛造部材の種類、用途、使用環境に応じて表面改質層の種類、厚み等の処理条件を適宜選択することができる。表面硬化処理の具体例としては、Znショットブラスト等を挙げることができる。
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。尚、本発明は、以下に示した実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜5、比較例1〜29]
表1に示す各種合金組成を有したAl合金を用いて、ホットトップ鋳造法により、加熱温度720℃で、直径65mmの円柱の形状に鋳造した。その後この鋳塊を、450℃で5hr保持して均質化熱処理を行った。
その後、均質化熱処理を行った鋳塊を鍛造開始温度420℃、鍛造終了温度380℃で、上下金型を用いたメカニカル鍛造により熱間鍛造を行い、35×35mm角の棒に型鍛造し、Al合金鍛造品を製造した。
さらに、Al合金鍛造部材を空気炉を用いて、480℃で4hr保持して溶体化処理した後、30℃の水で焼入れを行った。引き続いて、焼入を行ったAl合金鍛造部材を、空気炉で170℃で9hrの条件で人工時効処理を行った。
こうして得られたアルミニウム合金鍛造部材から引張試験用試験片および耐応力腐食割れ性(耐SCC性)評価用試験片(Cリング)を採取した。これらの試験片を用いて、引張強度、0.2%耐力、伸び、SCC生存率(%)についての評価を行った。評価結果を表1に示した。表1中、本発明の規定を満足しない組成は、数値に下線を引いて示した。
実施例および比較例において評価した特性は以下のとおりである。
[合金組成]
合金組成は、島津製作所製発光分析装置OES−1014を用いて測定した。製品の測定部位は、測定が可能であれば特に限定されない。操作は取扱説明書に従って行った。
[引張試験]
引張試験は、JIS Z2201にある4号試験片を用いて、JISZ2241の規定に準じて、引張強度、0.2%耐力、伸びの測定を行った。それぞれの測定値は、30個の試験片の測定値の平均値として求めた。
引張強度は430MPa以上のとき、0.2%耐力は390MPa以上のとき、伸びは10%以上のときに合格と判定した。
[耐応力腐食割れ性(耐SCC性)]
耐応力腐食割れ性試験は、JIS H8711にある塩水交互浸漬法にて行った。評価条件としては、試験片に200MPaの応力を付加して、20日間あるいは60日間保持して、その後耐応力腐食割れを起こしている試験片の比率を求めた。試験片12個について試験を行い、耐応力腐食割れを起こしていない試験片の数を試験片の総数で割った比率(%)をSCC生存率(%)として求めた。耐応力腐食割れを起こしているか、いないかの判定は、Cリングの幅で1/2以上に渡る長さの亀裂の有無によって行った。
Figure 0005872359
表1に示すように、本発明の規定を満足するAl合金からなる鍛造部材(実施例1〜5)は、引張強度、0.2%耐力、伸びおよびSCC生存率(20日間)が優れていた。一方、本発明の規定を満足しないAl合金からなる鍛造部材(比較例1〜29)は、引張強度、0.2%耐力、伸びおよびSCC生存率(20日間)のうちのいずれか1つ以上が劣っていた。
[実施例6〜11、比較例30〜38]
実施例2に記載の組成、即ち、Zn:4.8質量%、Mg:3.2質量%、Cu:0.5質量%、Zr:0.13質量%、Cr:0.18質量%、Si:0.07質量%、Fe:0.12質量%、Mn:0.03質量%未満で、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を用いて、表2に記載した製造条件を用いて、アルミニウム合金鍛造部材を製造した。
こうして得られたアルミニウム合金鍛造部材から実施例1〜5と同様に、引張試験用試験片および耐応力腐食割れ性(耐SCC性)評価用試験片(Cリング)を採取した。これらの試験片を用いて、実施例1〜5と同様に、引張強度、0.2%耐力、伸び、SCC生存率(%)についての評価を行った。評価結果を表2に示した。表2中、本発明の規定を満足しない製造条件は、数値に下線を引いて示した。
Figure 0005872359
表2に示すように、本発明の規定を満足するAl合金からなる鍛造部材(実施例6〜11)は、引張強度、0.2%耐力、伸びおよびSCC生存率(20日間)が優れていた。一方、本発明の規定を満足しないAl合金からなる鍛造部材(比較例30〜38)は、引張強度、0.2%耐力、伸びおよびSCC生存率(20日間)のうちのいずれか1つ以上が劣っていた。
[実施例12〜20]
実施例2に記載の組成、即ち、Zn:4.8質量%、Mg:3.2質量%、Cu:0.5質量%、Zr:0.13質量%、Cr:0.18質量%、Si:0.07質量%、Fe:0.12質量%、Mn:0.03質量%未満で、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を用いて、表3に記載した製造条件、すなわち表2の実施例6と同等の製造条件を用いて、アルミニウム合金鍛造部材を製造した。得られたアルミニウム合金鍛造部材から実施例1〜5と同様に、引張試験用試験片および耐応力腐食割れ性(耐SCC性)評価用試験片(Cリング)を採取した。
その後、個々の試験片に対して表3に記載した種々の表面処理を行った。
個々の表面処理の条件は、以下のとおりである。
(1)硬質クロムめっき(金属皮膜)
試験片を硬質クロム処理液に浸漬させて、逆電解処理を行った。
(2)亜鉛メッキ(金属皮膜)
試験片を亜鉛めっき液に浸漬させて、電気分解めっきを行った。
(3)塗装(非金属皮膜)
試験片に対して、アクリル系樹脂をスプレーガンにて塗布し自然乾燥させた。
(4)プラスチックライニング(非金属皮膜)
試験片に、エポキシ樹脂を内部に含んだビニルエステルを素材として、膜厚1mmで塗布した。
(5)リン酸亜鉛膜(化成処理皮膜)
試験片を60℃にしたリン酸亜鉛水溶液中に3分間浸漬させた。
(6)クロメート皮膜(化成処理皮膜)
試験片を水煮沸したクロム酸塩に60秒間浸漬させた。
(7)アルマイト皮膜(化成処理皮膜)
試験片に対して、シュウ酸を処理浴に用いて、アルミニウムを陽極として電気分解した。
(8)Znショットブラスト(表面硬化処理)
試験片に対して、粒子径0.6mmの亜鉛ショット粒を使用して、ショットブラスト処理した。
これらの試験片を用いて、実施例1〜5と同様に、引張強度、0.2%耐力、伸び、SCC生存率(%)についての評価を行った。耐SCC性については、応力を付加して60日間の長期間保持後に評価を行った。評価結果を表3に示した。
Figure 0005872359
表3に示すように、本発明の規定を満足するAl合金からなる鍛造部材(実施例12〜20)は、引張強度、0.2%耐力、伸びおよびSCC生存率が優れていた。実施例17は表面処理皮膜または表面改質層が形成されていないものであるが、この実施例17に対して、表面処理皮膜または表面改質層が形成されている他の実施例はいずれも、非常に厳しい60日間の耐応力腐食割れ性試験において、SCC生存率が100%というさらに良好な結果を示した。
S;本発明の自動車用アルミニウム合金鍛造部材の製造方法
S1;鋳造工程
S2;均質化熱処理工程
S3;押出工程or/and圧延工程
S4;鍛造工程
S5;溶体化処理工程
S6;焼入工程
S7;人工時効処理工程
S8;表面処理工程

Claims (5)

  1. Zn;4.5〜5.0質量%、Mg;3.0〜4.0質量%、Cu;0.1〜0.8質量%、Zr;0.05〜0.3質量%およびCr;0.05〜0.2質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなり、前記不可避的不純物は、元素毎の含有量が0.3質量%以下であり、合計の含有量が1.0質量%以下であるアルミニウム合金から構成される自動車用アルミニウム合金鍛造部材。
  2. 前記鍛造部材表面に表面処理皮膜または表面改質層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用アルミニウム合金鍛造部材。
  3. 前記表面処理皮膜が、金属皮膜、非金属皮膜および化成処理皮膜よりなる群から選択された1種または2種以上の皮膜であることを特徴とする請求項2に記載の自動車用アルミニウム合金鍛造部材。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の自動車用アルミニウム合金鍛造部材の製造方法であって、
    前記アルミニウム合金の鋳塊を鋳造する鋳造工程と、
    前記鋳塊を400〜500℃で均質化熱処理する均質化熱処理工程と、
    前記均質化熱処理した鋳塊を鍛造開始温度380〜460℃、鍛造終了温度350℃以上で鍛造して所定の形状の鍛造部材を得る鍛造工程と、
    前記鍛造部材を460〜500℃で溶体化処理する溶体化処理工程と、
    前記溶体化処理した鍛造部材を60℃以下で焼入れする焼入工程と、
    前記焼入れした鍛造部材を150〜200℃で、ピーク時効時間以上、12時間以下の人工時効処理する人工時効処理工程、を含み、
    これらの工程をこの順に行うことを特徴とする自動車用アルミニウム合金鍛造部材の製造方法。
  5. 前記人工時効処理した鍛造部材の表面に、表面硬化処理、ショットピーニングあるいはイオン注入の処理方法で表面改質層を形成することを特徴とする請求項4に記載の自動車用アルミニウム合金鍛造部材の製造方法。
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