JP6096488B2 - 7000系アルミニウム合金の押出成形用ビレット及び押出形材の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、従来の7000系アルミニウム合金は特許文献1〜4に示すようにMg,Zn及びCu成分の添加によるものであり、Mg及びCuの添加量が多くなると押出性が著しく低下する。
また、Znは押出性を低下させることなく比較的多く添加できるが、耐応力腐食割れ性(耐SCC性)が著しく低下する。
いずれにしても7000系アルミニウム合金は、高強度が得られるものの耐SCC性が低いことが問題であり、従来はMn,Cr,Zr等の遷移元素を添加することで押出成形した際に押出形材の表面に出現する再結晶の深さを抑制し、耐SCC性を改善しようとするものであった。
ところが、遷移元素の添加が多くなると焼入れ感受性により強度が低下する恐れがあり、ダイス端水焼入れ等の対策が必要となる。
また、強度の低下をカバーするのにMg,Cuの添加量を増すと押出性が低下し、生産性が悪化する。
よって、7000系アルミニウム合金を用いた押出形材の分野では、押出性を確保しつつ、強度と耐SCC性の両立を図るのが難しいとされていた。
一般に連続鋳造法により、長尺ビレットを鋳造し、所定の長さに切断し、押出形材の成形に供される。
鋳造法にはフロート式鋳造法,ホットトップ鋳造法が用いられる。
7000系のアルミニウム合金は、一般に6000系アルミニウム合金よりも局部融解する温度が低く、560℃以下の温度で均質化処理がなされ溶質元素を充分に固溶するには520℃以上がよい。
本発明者らはビレットの均質化処理条件と金属組織の関係を詳細に研究した結果、本発明に至った。
7000系のアルミニウム合金を520〜560℃の条件にて充分に均質化処理すると金属組織中の析出物が少ないが、均質化処理後に常温まで冷やしたビレットを再加熱したところ、固溶していた溶質元素が析出物として析出する現象を見出した。
この析出物が析出したビレットを用いて押出成形により押出形材を製造すると、押出形材の表面の再結晶層が薄くなることも明らかになった。
再結晶層が薄くなると、耐SCC性も向上する。
よって、本発明の特徴は均質化処理を2回以上行う点に特徴があり、2回目の均質化処理は1回目の均質化処理よりも弱い条件で行い、1回目で固溶した溶質元素を析出物として均一に析出させるものである。
均質化処理条件が弱いとは、加熱温度が低いか、あるいは、加熱温度が同等でもその加熱時間が短く析出物が再固溶しないことをいう。
2回目の均質化処理条件が1回目と同等以上になると、析出した溶質元素が再び固溶するからである。
本明細書ではビレットを加熱処理し、溶出元素の固溶化及び析出物の均質化を含めて均質化処理と表現する。
また、本発明において2回以上均質化処理を行うのは、溶質元素を一旦充分に固溶化させた後に析出物として析出させるのが目的であり、前記2回目の均質化処理をした後のビレットの結晶粒内の析出物の面積率がミクロ組織観察で9%以上であるのが好ましい。
このようなビレットを用いて押出成形し、押出形材を得ると耐SCC性に優れる。
7000系アルミニウム合金の鋳造ビレットを用いた押出形材で、機械の強度部材,車両のメンバー等の構造部材,あるいは車両のバンパーリインホースメント,サイドドアビーム等のエネルギー吸収部材等を製造するには、耐力470MPa以上の高強度材が好ましい。
そこで以下、耐SCC性に優れた耐力470MPa以上の高強度材を得るための条件について説明する。
7000系アルミニウム合金の成分範囲を以下全て質量%で表現する。
Mg:1.6〜2.6%,Zn:6.0〜7.0%の範囲に設定すると、Cuの添加物を0.5%以下に抑えても鋳造したビレットを520〜560℃の温度条件にて1回目の均質化処理を行い、一旦常温まで冷却した後に2回目の均質化処理を480〜520℃の範囲で行うことにより、押出直後に水焼入れすることなくファン空冷した後に、常法に従って人工時効処理し、耐力470MPa以上の高強度材が得られる。
なお、ビレットの鋳造時に結晶粒の微細化を図る目的で一般的にTi:0.01〜0.05%添加する。
よって、耐力470MPa以上を得るアルミニウム合金は、Mg:1.6〜2.6%,Zn:6.0〜7.0%,Cu:0.5%以下,Ti:0.01〜0.05%及び残部がアルミニウムと不可避的不純物となる。
ここで、Mgを2.6%以下としたのは、2.6%を超えると押出性が低下し、Cuを0.5%を超えても押出性が低下するのでCuは0.5%以下とした。
また、Znは7.0%を超えると耐SCC性が低下する。
さらに押出形材の表面再結晶を抑制し、耐SCC性を向上させるには、Mn,Cr及びZrのうち1つ以上を合計で0.15〜0.6%の範囲で添加するのが好ましい。
これらの遷移元素を合計で0.6%超えると焼入れ感受性が強くなり、押出直後のファン空冷では470MPa以上の高強度を得るのが難しくなる。
この場合のアルミニウム合金組成は、Mg:1.6〜2.6%,Zn:6.0〜7.0%,Cu:0.5%以下、Mn,Cr,Zrのうち1つ以上を含み、その合計が0.15〜0.6%の範囲で残部がアルミニウム及び不可避的不純物となる。
ここで、不可避的不純物にはアルミニウムの精錬及びビレットの鋳造工程で不純物として混入されるものをいい、不純物の代表例にはFe,Siが挙げられる。
Feは0.3%以下、好ましくは0.2%以下になるように管理するのが好ましい。
Siは0.1%以下に抑えるのが好ましい。
Fe,Si以外の不純物もFe,Siを除くトータルで0.1%以下に抑えるのが好ましい。
押出時のビレットの予熱温度は400〜500℃の範囲、押出直後の形材温度は500〜585℃の範囲が好ましい。
また、押出直後の冷却速度は形材温度が200℃以下になるまで50〜500℃/minの速度を維持するのが好ましい。
この範囲の冷却速度はファン空冷で制御できる。
本発明においてファン空冷が好ましいのは、押出直後に水冷するダイス端水焼入れでは、押出形材に水素が取り込まれ脆化し、耐SCC性が低下する恐れがあるからである。
また、押出形材は7000系アルミニウム合金に常法として適用される人工時効処理をする。
通常は80〜160℃の範囲で一段時効又は二段時効が行われる。
このように均質化処理したビレットを用いて押出加工し、図4に示すような断面形状の押出形材を得た。
押出後の冷却はファン冷却である。
ビレットの均質処理後のミクロ組織における析出物の面積率は次のように測定した。
ビレットの径方向中心部より試料を切り出し及び表面研磨し、ケラー氏液によるエッチングの後に、光学顕微鏡により金属組織を観察する。
その後に、得られた金属組織について、測定面積17956μm2×3箇所を画像処理し、析出物の面積率を測定した。
2回の均質化処理の方が1回だけの均質化処理よりもミクロ組成における析出物が多く、均一になっているが、析出物の面積率9%以上を目標にした。
得られた押出形材から試験片を切り出して評価した結果を図2の表に示す。
機械的性質は、JIS Z2241に基づく5号試験片を切り出し、オートグラフにて測定した。
表中σBは引張強度、σ0.2は0.2%耐力値、δは伸びを表す。
表中SCCは耐応力腐食割れ性の試験結果を示す。
耐応力腐食割れ性は耐力の80%の応力を試験材料に負荷した状態で次の条件を1サイクルとし、720サイクルにて割れが発生しなかったものを目標達成とし、それまでに割れが発生したものはそのサイクル数(cyc)を示す。
<1サイクル>
3.5%NaCl水溶液中に25℃,10min浸漬し、その後に25℃,湿度40%中に50min放置し、その後に自然乾燥する。
再結晶深さは押出形材の押出方向と直交する方向に断面を顕微鏡観察し、再結晶組織の深さを測定した。
押出性は形材の表面にムシレやピックアップが生じなかったものを正常と判定した。
(1)実施例1の560℃,6hrの1回目の均質化処理した後に一担常温まで冷却し、次に500℃,12hrの2回目の均質化処理したビレットのミクロ組織写真と、このビレットを用いて押出成形した押出形材のミクロ組織写真を図3(a)に示す。
また、比較例1(560℃,6hrの1回のみ均質化処理)のビレット及び押出形材のミクロ組織写真を図3(b)に示す。
2回目の均質化処理した図3(a)の写真を見ると明らかなようにビレットに析出物が均一に出現し、このビレットを用いた押出形材の表面の再結晶層の深さ(厚み)が浅い。
(2)実施例1〜4はいずれも耐SCC性が目標の720サイクルをクリヤーし、再結晶深さも目標の50mm以下をクリアーしている。
このことからもビレットのミクロ組織における析出物の面積率は9%以上がよく、実施例の2〜4を比較すると、いずれもMn+Cr+Zrの合計が0.45%と同じの場合、ビレット中の析出物の面積率9〜19%の範囲で再結晶深さが18〜20mmの範囲にあり、いずれも耐SCC性に優れる。
なお、実施例1はMn+Cr+Zrの合計が0.29%と実施例2〜4より低く、再結晶深さが深いことから、Mn,Cr,Zrの影響が認められる。
(3)耐力を比較すると、実施例1〜4は全て目標の470MPa(N/mm2)をクリヤーしているが、比較例7はMg:0.95%と1.6%以下であり、Zn:5.81%と6.0%以下なので、耐力が341MPaと低い値であった。
比較例8,11,12は、Mgが1.6%以下なので比較例7よりも耐力値が高いものの、470MPa以下であった。
図中に示したa,b,t1〜t3は押出可能な寸法関係を示し、t31,t32はt3に含まれる。
なお、図4,5は略目字断面形状であり、日字断面形状よりも押出加工が難しい。
図6はソリッド断面形状の例であり、比較的肉厚が薄い大型断面形状のものが押出可能である。
Claims (4)
- 7000系アルミニウム合金の押出成形用鋳造ビレットの製造方法であって、
前記7000系アルミニウム合金は質量%で、Mg:1.6〜2.6%,Zn:6.0〜7.0%,Cu:0.5%以下,Ti:0.01〜0.05%,さらにZrとMn又は/及びCrとを含有し、Zr+Mn+Crの合計で0.15〜0.6%含有し、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなり、
鋳造後に520〜560℃の温度にて1回目の均質化処理を行い常温まで冷却した後に、当該1回目よりも低い温度であって480〜520℃の温度で2回目の均質化処理を行うことを特徴とする押出成形用鋳造ビレットの製造方法。 - 前記2回目の均質化処理をした後のビレットの結晶粒内の析出物の面積率がミクロ組織観察で9%以上であることを特徴とする請求項1記載の押出成形用鋳造ビレットの製造方法。
- 請求項1又は2記載の製造方法により製造された押出成形用鋳造ビレットを用いて押出成形されたことを特徴とする7000系アルミニウム合金押出形材の製造方法。
- 前記押出成形において、押出直後に50〜500℃/minの速度で冷却し、その後に人工時効処理をすることを特徴とする請求項3記載の7000系アルミニウム合金押出形材の製造方法。
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