以下、本発明の微粒子凝集体の製造方法について具体的に説明する。本発明により製造される微粒子凝集体は、金属酸化物担体を核として金属水酸化物微粒子及び/又は金属炭酸塩微粒子或いは金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体が金属酸化物担体表面を覆うように付着した構造を有するものである。この構造の判定には透過電子顕微鏡を用いて形態観察を行うのが簡便である。また、被覆の確認は走査型透過電子顕微鏡を用いて元素分析を行うことにより可能で、被覆されている場合には金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体中の成分が検出される。核となる金属酸化物担体は耐熱性を有すると共に担体表面が塩基性を有することが好ましく、例えば、ジルコニア、セリア、イットリア安定化ジルコニア、ジルコニア−セリア、アルミナが挙げられる。また、担体はこれらの酸化物の混合体であってもよい。ジルコニアにはランタン、プラセオジム、ネオジム等の元素が少量含まれていても差し支えない。金属酸化物担体は、粉体であってBET法によって得られる比表面積は好ましくは20m2/g以上、更に好ましくは50m2/g以上あれば良い。これより小さいと金属酸化物担体上での金属水酸化物微粒子及び/又は金属炭酸塩微粒子、或いは金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体の形成が不均一となる。金属酸化物担体の粒度としては好ましくは200メッシュ以上、更に好ましくは300メッシュ以上あれば良い。これより小さいと金属化合物水溶液中での懸濁が困難となる。前処理として、金属酸化物担体を水酸化ナトリウム等の強アルカリ溶液に浸漬、場合によっては加熱して金属酸化物担体表面を活性化しても良い。金属酸化物担体に含まれる金属の原子数は、金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体を構成する金属の原子数に対して好ましくは0.1〜10倍、更に好ましくは0.15〜7倍あれば良い。これより小さいと金属酸化物担体を核とする効果が得られず、これより大きいと金属水酸化物微粒子及び/又は金属炭酸塩微粒子或いは金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体の金属酸化物担体上への固定化状態の均一性が失われる。
金属酸化物担体の表面に付着する金属水酸化物微粒子及び/又は金属炭酸塩微粒子或いは金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体の組成は特に限定されないが、その組成中に金属酸化物担体表面と金属水酸化物微粒子及び/又は金属炭酸塩微粒子の混合凝集体との相互作用を強める成分があることが好ましい。そのような組成としては、ジルコニウム、セリウム、アルミニウム、イットリウムが例示できる。混合凝集体の出発物質である金属化合物水溶液にジルコニウム、セリウム、アルミニウム、イットリウムの化合物の内、1種乃至は複数種類が共存すると沈殿形成過程において沈殿の金属酸化物担体への付着性が向上し、結果的に金属酸化物担体表面に金属水酸化物微粒子及び/又は金属炭酸塩微粒子或いは金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の混合凝集体で覆うようにして固定化できる。これらの成分は金属酸化物担体に含まれる成分と共通しており、これらの成分の何れかが金属化合物水溶液側と金属酸化物担体側の双方に存在することにより付着性が高まると推察される。その量としては担体上に形成される混合凝集体を金属酸化物とした場合、その中に金属酸化物として3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であるのが更に好ましい。これより少ないと図2に例示するように担体表面に混合凝集体を効率的に固定できなくなる。触媒として利用する場合、金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の混合凝集体中にパラジウム、ロジウム、ルテニウム、金、銀、銅、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ガリウム、インジウム、スズのような触媒活性を有する元素(活性金属元素)の内、1種類乃至は複数種類の元素が含まれることが好ましい。
金属水酸化物微粒子及び/又は金属炭酸塩微粒子の混合凝集体を金属酸化物担体を覆うように付着させる方法であるが、通常の共沈法の工程を行う過程で、前記の金属水酸化物微粒子及び/又は金属炭酸塩微粒子或いは金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の混合凝集体となる成分の原料となる金属化合物水溶液に金属酸化物担体を懸濁させ、これにアルカリ沈殿剤を加えて共沈殿物の形成を行えば良い。金属化合物水溶液及びアルカリ沈殿剤は通常の共沈法に用いられるものであれば良く特に制限はない。金属化合物水溶液に用いることができる貴金属化合物としては硝酸パラジウム、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム、ジアンミンジニトロパラジウム、硝酸ロジウム、塩化ロジウム、硫酸ロジウム、酢酸ロジウム、硝酸ルテニウム、塩化ルテニウム、ヘキサアンミンルテニウム、塩化金、臭化金、塩化金酸、硝酸銀、硫酸銀、酢酸銀等が挙げられる。また、その他の金属化合物としては金属の硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、オキシ硝酸塩、オキシ塩化物等を用いれば良い。アルカリ沈殿剤としては炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア等が例示できる。これらのアルカリ沈殿剤は、そのまま添加しても良いが、通常は水溶液として添加することが好ましい。アルカリ沈殿剤の量は無機物担体以外の原料化合物に対する化学当量の1〜2倍、好ましくは1.05〜1.6倍とすれば良い。アルカリ沈殿剤水溶液に金属酸化物担体を懸濁させ、これに金属化合物水溶液を加えても差し支えない。
金属化合物水溶液或いはアルカリ沈殿剤水溶液に金属酸化物担体を懸濁させる方法としては撹拌を行うのが最も簡便である。通常、金属化合物水溶液とアルカリ沈殿剤を混合する沈殿形成過程では沈殿形成を均一化するために金属化合物水溶液を撹拌しており、この撹拌で金属酸化物担体が均一に懸濁していれば、それで十分であり、もし、不均一であれば更に撹拌を激しく行い金属酸化物担体を均一に懸濁させ、これにアルカリ沈殿剤或いは金属化合物水溶液を加えて共沈殿物形成を行えば良い。共沈法による沈殿形成過程では先ず金属化合物水溶液中で最も小さい水酸イオン濃度及び/又は炭酸イオン濃度で溶解度積が小さくなる金属水酸化物及び/又は金属炭酸塩の溶液中での析出が生じ、これを核として共沈殿物の成長が起きると考えられる。一方、金属酸化物担体上には塩基点が存在しており、金属酸化物担体表面上では通常の水溶液中での金属水酸化物及び/又は金属炭酸塩の析出よりもより小さい水酸イオン濃度及び/又は炭酸イオン濃度で金属水酸化物及び/又は金属炭酸塩の析出が生じ、これが核となって共沈殿物が成長すると考えられる。この時に上記金属化合物水溶液にジルコニウム、セリウム、アルミニウム、イットリウムの化合物の内、1種乃至は複数種類が共存していると共沈殿物の付着性が向上し、その結果、金属酸化物担体表面上で優先的に共沈殿微粒子の堆積が生じ、金属酸化物担体表面に共沈殿微粒子が覆うように付着する。
これを洗浄後、乾燥することにより金属水酸化物微粒子及び/又は金属炭酸塩微粒子の混合凝集体が覆うように付着した金属酸化物担体が得られる。そして、更に焼成し、場合によっては還元ガス中で加熱することによって金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体により被覆された金属酸化物担体が得られる。ここで、乾燥は空気中大気圧下、又は減圧下で行えば良く、温度は50〜200℃程度とすれば良い。また、焼成は空気中、場合によっては不活性ガス中で行えば良く、温度は200〜900℃程度、好ましくは300〜800℃程度とすれば良い。焼成時間は、焼成温度等に応じて適宜設定すればよく、通常1〜24時間程度であればよい。焼成後あるいは焼成と同時に還元を行っても良い。温度は100〜600℃、好ましくは150〜500℃とすれば良い。温度が100℃よりも低いと還元が生じにくくなる恐れがあり、温度が600℃よりも高いと金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体の焼結が生じてしまう恐れがある。還元ガスとしては例えば水素、一酸化炭素、メタノールガスあるいはこれらを不活性ガスで希釈したものを用いれば良い。
このようにして金属酸化物担体粒子を金属水酸化物微粒子及び/又は金属炭酸塩微粒子或いは金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体が担体表面を覆うように付着した構造を有する粒子が得られる。この粒子の外表面は、通常の共沈法で得られる微粒子凝集体の外表面と類似しており、従って、表面性質も類似したものとなる。触媒として利用する場合、通常の微粒子凝集体内部はほとんど反応に関与しないので、この部分が金属酸化物担体粒子に置き換わっても触媒活性は維持される。一般に金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子を構成している触媒成分は同重量の金属酸化物担体に比べて高価であり、そのため本発明の製造法によってより安価な触媒となる。また、触媒劣化の原因となる金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体の焼結はその凝集体の収縮によって促進されるが、焼結性の低い金属酸化物担体粒子が内部にあると凝集体の収縮が制限される結果となるので、焼結の度合いが小さくなる。よって、本発明の製造法によって、触媒粒子の微粒子状態を保つことが出来、より耐久性ある触媒を得ることができる。顔料として金属水酸化物微粒子及び/又は金属炭酸塩微粒子、或いは金属酸化物担体粒子を金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体が包接した構造を有する粒子を利用する場合、この粒子表面は通常の共沈法で得られる微粒子混合凝集体と類似しているので、安価な金属酸化物担体を使用することにより、類似した色相を有する顔料や化粧品をより安価なものとすることができる。また、金属酸化物担体の量と種類を選択することにより、新たな色相を従来の顔料や化粧品に付加することも可能である。電子材料、磁性体材料とする場合、センサーのように微粒子凝集体の表面性質を使用する場合はその安価な代替物として利用できるし、また、本製造法で得られた粒子を焼結させると金属酸化物担体と焼結した金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体の電気的/磁気的性質が異なるので従来の製品と異なる新たな性能を付与することが可能となる。
銅及び/又はパラジウムを主な活性金属元素とする水蒸気改質触媒として微粒子凝集体を製造する場合、金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の混合凝集体となる成分の原料となる金属化合物水溶液にジルコニウム、セリウム、アルミニウム、イットリウムの内、1種類乃至は複数種類の元素が含まれ、銅及び/又はパラジウムが含まれ、且つ、亜鉛及び/又はインジウムが含まれることが必須である。金属化合物水溶液に含まれる金属化合物は所定の濃度の水溶液を作製するための十分な溶解度を有するものであれば良い。例えば銅化合物としては硝酸銅、塩化銅、硫酸銅、酢酸銅等を用いることが出来る。パラジウム化合物としては硝酸パラジウム、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム、ジアンミンジニトロパラジウム等を用いることが出来る。また、その他の金属化合物としては金属の硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、オキシ硝酸塩、オキシ塩化物等を用いれば良い。
このようにして得られた金属酸化物担体粒子を金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の混合凝集体が担体表面を覆うように付着した構造を有する水蒸気改質触媒は従来の触媒に比べて高い耐久性を示すと共に銅及び/又はパラジウムの使用量を大きく削減できる。即ち、一般的な銅触媒の場合、十分な活性を発現させるには触媒中の銅の含有量は10重量%以上必要であるが、本発明の触媒では触媒中の銅の含有量は2〜10重量%で差し支えなく、逆に10重量%を超えても大きな活性の向上は見られない。また、パラジウムの含有量は好ましくは0.5〜10重量%、更に好ましくは1〜3重量%あれば良い。亜鉛及び/又はインジウムの含有量は銅の含有量に対してモル比で0.5〜2倍、パラジウムの含有量に対してモル比で2〜20倍であるのが好ましい。金属酸化物担体の含有量は65〜95重量%であるのが好ましく高い耐久性を得ることができる。
本発明に係る微粒子凝集体(触媒)の製造時に、必要に応じて、粉砕、成形などを行うことによって、任意の形態の触媒とすることができる。例えば、微粉末状及び粉末状への加工方法としては、ジェットミル、ビーズミル等を用いて粉砕した後、ふるいにかける方法が挙げられる。砕片状への加工方法としては、例えば破砕機を用いて破砕する方法が挙げられる。顆粒状への加工方法としては、例えば微粉末状又は粉末状の乾燥粉や焼成粉に対して、スプレードライ法、転動造粒法、流動床造粒法等各種の公知方法を適用する方法が挙げられる。ペレット状への加工方法としては、例えば微粉末状又は粉末状の乾燥粉や焼成粉をプレス圧縮成形する方法が挙げられる。
本発明で製造された触媒は、金属酸化物担体を被覆する金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の組成が、通常の共沈法で製造された金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子の凝集体からなる既存共沈触媒の組成と共通していれば類似の触媒活性を示すので、既存共沈触媒の代替品として既存共沈触媒が利用される反応に使用することができる。
以下、本発明により製造された微粒子凝集体(水蒸気改質触媒)を用いて、水素を製造する方法について説明する。
(1)メタノール又はジメチルエーテルの水蒸気改質反応
まず、メタノール又はジメチルエーテルの水蒸気改質方法について説明する。この方法では、本発明の水蒸気改質触媒の存在下に、メタノール又はジメチルエーテルを水蒸気と反応させることによって、一酸化炭素の副生を大幅に抑制しつつ、水素及び二酸化炭素を得ることができる。この方法では、原料は、メタノール又はジメチルエーテルのいずれか一方に限られず、メタノールとジメチルエーテルが同時に含まれていても良い。
メタノール又はジメチルエーテルを水蒸気と反応させる方法については、特に限定はなく、公知の水蒸気改質方法に準じた方法を適用できる。例えばメタノール又はジメチルエーテルと水蒸気の混合ガスを本発明の触媒に連続的に接触させることにより、メタノール又はジメチルエーテルと水蒸気とを気相反応させることができる。
尚、本発明の触媒は、単独で用いることが可能であるが、反応ガス中にジメチルエーテルが含まれる場合には、ジメチルエーテルの加水分解によるメタノール生成を効率化するため、本発明の触媒に、アルミナ、ゼオライト、活性白土等の酸触媒を混合することが好ましい。酸触媒の混合量は、重量比で本発明の触媒の0.5〜10倍程度とすることが好ましい。
メタノール又はジメチルエーテルと水蒸気の混合ガスにおける各成分の割合は、特に限定的ではないが、例えば、メタノールと水蒸気を反応させる場合には、通常、メタノール:水蒸気のモル比は1:1〜3程度が好ましく、1:1.1〜2程度がより好ましい。従来のメタノール水蒸気改質触媒では、通常1.5以上のメタノールと水蒸気のモル比が採用される。これは1.5以下のモル比では触媒の著しい活性劣化や副生物の増大が生じるためである。本発明の触媒の場合、1.5以下のモル比でも何ら問題なく使用できる。
また、ジメチルエーテルと水蒸気を反応させる場合には、通常、ジメチルエーテル:水蒸気のモル比が1:3〜9程度であることが好ましく、1:3.2〜7程度であることがより好ましい。
メタノール又はジメチルエーテルと水蒸気の混合ガスには、メタノール及びジメチルエーテルの水蒸気改質を妨げない範囲であれば、他のガス成分が含まれていても良い。他のガス成分としては、例えば酸素、空気、窒素等が挙げられる。本発明の水素の製造方法では、水も反応物質の一つであるため、使用するメタノールには、予め水が含まれていてもよい。
混合ガスに酸素及び/又は空気が含まれる場合には、メタノール又はジメチルエーテルの改質と同時に酸化反応が生じやすくなり、メタノール改質に必要な反応熱を酸化反応により供給することが可能となる。メタノールに対する酸素の割合は、メタノール1molに対して、通常、0.25mol以下程度とすることが好ましく、0.05〜0.15mol程度とすることがより好ましい。また、ジメチルエーテルに対する酸素の割合は、ジメチルエーテル1molに対して、通常、0.5molモル程度以下とすることが好ましく、0.1〜0.2mol程度とすることがより好ましい。
メタノールと水蒸気との反応は、従来の触媒を用いる場合と同様に、150℃程度以上の温度において行うことが可能である。また、ジメチルエーテルと水蒸気との反応も、従来の触媒を用いる場合と同様に、300℃程度以上の温度において行うことが可能である。
特に、本発明の微粒子凝集体(触媒)は、高温における水蒸気改質反応において、高い活性を長期間維持でき、しかも一酸化炭素選択率が低いという優れた特徴を有するものである。この様な優れた特性を利用して、水素収率を損なうことなく、高速で水蒸気改質を進行させるためには、高温において水蒸気改質を行うことが好ましい。例えば、定常的に反応を行う温度は、300〜550℃程度の反応温度とすることが好ましい。反応温度がこの範囲を下回ると、高温水蒸気改質の利点である高い水素製造速度を得ることができず、反応温度が高すぎると、一酸化炭素の副生量が増加する傾向にあるので好ましくない。さらに、上記温度範囲とすることによって、ジメチルエーテルを反応ガスとする場合に、ジメチルエーテルの加水分解によるメタノール生成を促進することができる。
反応時の圧力については、高めに設定することにより、生成する水素の分圧を高めることができる。通常、0.05MPa〜3MPa程度、好ましくは0.1MPa〜1MPa程度の反応圧力とすることが好ましい。
メタノール又はジメチルエーテルと水蒸気を含む混合ガスの供給速度は、特に限定されず、反応器の大きさ、形状、触媒の形状、反応温度、反応圧力等に応じて適宜選択することができる。通常は、反応ガスがメタノールの場合には、標準状態における気相のメタノール供給速度を、触媒1gあたり0.2〜100L/h程度とすることが好ましく、0.5〜70L/h程度とすることがより好ましい。また、反応ガスがジメチルエーテルの場合には、気相のジメチルエーテル供給速度を、触媒1gあたり0.2〜20L/h程度とすることが好ましく、0.5〜10L/h程度とすることがより好ましい。
(2)一酸化炭素の水蒸気改質反応
次いで、本発明の水蒸気改質用触媒の存在下に、一酸化炭素を水蒸気と反応させることによる水素発生方法について説明する。この方法では、本発明の触媒を用いることによって、高温でもメタンの副生を大幅に抑制しつつ、水素及び二酸化炭素を得ることができる。
一酸化炭素を水蒸気と反応させる方法については特に限定はなく、公知の水蒸気改質方法に準じた方法を適用できる。例えば、石炭、石油、天然ガス由来の炭化水素等の改質によって得られる、一酸化炭素、水蒸気、水素、二酸化炭素、メタン等の炭化水素等を含む混合ガスを本発明の触媒に連続的に接触させることにより、一酸化炭素を選択的に水素と二酸化炭素に変換することが出来る。
一酸化炭素と水蒸気が含まれる混合ガスにおける各成分の割合は、特に限定的ではないが、一酸化炭素を効率的に水素に変換するには、例えば一酸化炭素:水蒸気のモル比は1:1〜50程度が好ましく、1:2〜10程度がより好ましい。
本発明の触媒に接触させる際の一酸化炭素の濃度は特に限定されないが、例えば、水素製造の目的には1〜30vol%程度、一酸化炭素除去の目的には10ppmから1vol%程度であることが好ましく、10ppm〜1000ppm程度であることがより好ましい。この反応において、一酸化炭素を含むガスの流速は一酸化炭素の濃度に応じて適宜選択することができ、触媒1gあたり2〜500L/h程度とすることが好ましく、5〜100L/h程度とすることがより好ましい。
他のガス成分として窒素等の不活性ガスが存在しても良い。また、一酸化炭素に対して10vol%以下程度の酸素や、一酸化炭素に対して50vol%以下程度の空気が存在しても良い。
一酸化炭素の水蒸気改質反応での反応圧力は特に限定されず、例えば常圧から5MPa程度の圧力範囲とすることができる。
尚、本発明の触媒を用いて水蒸気改質反応を行う場合には、反応前に予め水素等の還元性ガスで還元しても差し支えないが、反応前の還元は必須ではなく、触媒をそのまま用いることができる。この場合、反応中に触媒は還元されて、反応に好適な状態となる。このため、起動停止を頻繁に行う反応装置内に触媒を入れても触媒を常時還元状態に保つ必要はなく、これが大きな利点となる。
上記したメタノール又はジメチルエーテルの水蒸気改質反応、又は一酸化炭素の水蒸気改質反応により、一酸化炭素の含有が少ない水素含有ガスが得られる。
なお、必要に応じて、一酸化炭素除去手段を用いることにより、生成ガスから一酸化炭素をさらに除去してもよい。一酸化炭素除去手段としては、例えば水素PSA法により一酸化炭素を生成ガスから分離する方法、水素分離膜により一酸化炭素を生成ガスから分離する方法、ガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する方法、ガス中の一酸化炭素をメタンに変換する方法等が挙げられる。
上述の方法により製造された微粒子凝集体(水蒸気改質触媒)は、メタノール及び/又はジメチルエーテルの水蒸気改質において、高い触媒活性を発揮しつつ、一酸化炭素の副生を大幅に抑制することができる。また、300℃以上の高温で反応を行う場合にも活性の低下が少なく、高い水素生成速度を長期間維持できる。このため、本発明に係る微粒子凝集体(水蒸気改質触媒)を用い、特に、高温度で水蒸気改質を行うことによって、水素収量を損なうことなく高速で水素製造を行うことが可能となり、装置の小型化を図ることができる。
また、本発明の微粒子凝集体(水蒸気改質触媒)は、一酸化炭素の水蒸気改質においても、300℃以上の高温で反応を行う場合にも活性の低下が少なく、しかもメタンの副生を抑制できる。このため、従来に比べて水素収量が向上し、反応効率も向上させることができる。
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明は、これら実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、後述するメタノール転化率及び一酸化炭素選択率は、ガスクロマトグラフによる反応器出口ガスの組成分析により決定した値である。なお、組成分析に用いた装置は、島津製作所製ガスクロマトグラフ(型番:GC−8A)である。また、一酸化炭素選択率は、生成した一酸化炭素のモル数を生成した二酸化炭素と一酸化炭素のモル数の和で除したものである。また、下記実施例及び比較例では反応ガスにアルゴンガスが含まれているが、単に実験を容易とするためのものであり、実際の実施では必ずしも必要としない。
[比較例1]
硝酸銅、硝酸亜鉛、及び硝酸ジルコニルを、モル比で1.0:1.04:0.52となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。得られた金属化合物を含有する水溶液を80℃に加熱し、該金属化合物含有水溶液中の金属元素の合計当量数に対して、1.2倍当量となる量の80℃の1規定の炭酸ナトリウム水溶液を加えて1時間攪拌することにより沈殿を得た。得られた沈殿を蒸留水で洗浄後、130℃で15時間乾燥させ、続けて空気中500℃で12時間加熱することにより、酸化銅微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化ジルコニウム微粒子の混合凝集体からなる共沈法銅触媒を得た。得られた触媒を破砕することにより、50〜100メッシュの粉末状とした。
得られた共沈法触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、及びジルコニウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を27重量%含むものであった。この共沈法銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化銅の結晶子径は12nm、酸化亜鉛の結晶子径は10nm、酸化ジルコニウムの結晶子径は7nmであった。なお、X線回析パターンは、マックサイエンス社製のX線回折装置(型番:MP6XCE)を用いて測定した。
この触媒を固定床流通式反応装置の反応器に充填後、メタノール、水蒸気及びアルゴンからなる反応ガス(容積比 メタノール:水蒸気:アルゴン=1:1.2:0.51)をメタノール供給速度40L/g(触媒)・hの条件で、250℃で1時間反応器に供給することによって触媒を還元した。
還元後、反応器を400℃に昇温することによりメタノールの水蒸気改質反応を開始し、メタノールを主として水素及び二酸化炭素に変換した。反応開始1時間後におけるメタノール転化率は91%、一酸化炭素選択率は3.8%であった。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は69%、一酸化炭素転化率は4.3%であった。そして、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、500℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止することを2回繰り返した。400℃における最終的なメタノール転化率は49%、一酸化炭素選択率は4.3%であった。反応後における銅微粒子の結晶子径は17nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は16nm、また、酸化ジルコニウムの結晶子径は13nmであった。
[実施例1]
比較例1と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、及び硝酸ジルコニルを、モル比で1.0:1.04:0.52となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−2:比表面積、254m2/g)を溶解された金属量に対してモル比で1.57倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例1と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
比較例1と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・酸化ジルコニウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、及びジルコニウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を9重量%、ジルコニア担体を68重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化銅の結晶子径は13nm、酸化亜鉛の結晶子径は10nmであり、比較例1と比べてほぼ同じであった。このことはジルコニア担体を被覆している微粒子の凝集体は比較例1で製造された微粒子の凝集体とほぼ同じであることを示している。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は15nmであったが、これはジルコニア担体に由来するものであると考えられる。得られた銅触媒の透過電子顕微鏡写真を図1に示す。この図から上記方法によって得られた酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・酸化ジルコニウム微粒子の混合凝集体は担体粒子表面(金属酸化物担体表面)をほぼ完全に覆うように付着していることがわかる。
この触媒を比較例1と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は90%、一酸化炭素選択率は3.7%であり、比較例1の共沈法銅触媒とほぼ同等の触媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は69%、一酸化炭素転化率は3.0%であり、比較例1の共沈法銅触媒とほぼ同等の触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。その後の触媒の長期耐久性を評価するための試験では400℃における最終的なメタノール転化率は54%、一酸化炭素選択率は2.9%であり比較例1の共沈法銅触媒より高い活性を示した。反応後における銅微粒子の結晶子径は12nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は14nmであり、比較例1に比べて小さく、ジルコニア担体に覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行は、その組成・形状が類似しているにもかかわらず共沈法で製造された混合凝集体に比べて遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、酸化ジルコニウムの結晶子径は16nmであった。
[比較例2]
硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。比較例1と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体からなる共沈銅触媒を得た。
得られた共沈銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を28重量%含むものであった。この共沈銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化銅の結晶子径は13nm、酸化亜鉛の結晶子径は12nmであった。また、イットリア−ジルコニアの結晶子径は7nmであった。
この触媒を固定床流通式反応装置の反応器に充填後、メタノール、水蒸気及びアルゴンからなる反応ガス(容積比 メタノール:水蒸気:アルゴン=1:1.2:0.51)をメタノール供給速度20L/g(触媒)・hの条件で250℃で1時間反応器に供給することによって触媒を還元した。
還元後、反応器を400℃に昇温することによりメタノールの水蒸気改質反応を開始し、メタノールを主として水素及び二酸化炭素に変換した。反応開始1時間後におけるメタノール転化率は93%、一酸化炭素選択率は2.9%であった。その後、触媒の耐久性を評価するため、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は47%、一酸化炭素転化率は2.0%であった。その後、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、500℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止することを2回繰り返した。400℃における最終的なメタノール転化率は40%、一酸化炭素選択率は1.9%であった。反応後における銅微粒子の結晶子径は15nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は18nm、また、イットリア−ジルコニアの結晶子径は7nmであった。
[実施例2]
比較例2と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにセリア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−CEO−2:比表面積、123m2/g)を溶解された金属量に対してモル比で0.32倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例2と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
比較例2と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、セリア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。
得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、及びセリウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を17重量%、セリア担体を38重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化銅の結晶子径は12nm、酸化亜鉛の結晶子径は13nmであり、比較例2と比べてほぼ同じであった。このことはセリア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体は比較例2で製造された微粒子の混合凝集体とほぼ同じであることを示している。尚、セリアの結晶子径は8nmであり、イットリア−ジルコニアに由来するピークはセリアに由来するピークと重なり結晶子径を求められなかった。
この触媒を比較例2と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は89%、一酸化炭素選択率は4.1%であり、比較例2の共沈法銅触媒とほぼ同等の触媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は62%、一酸化炭素転化率は2.7%であり、比較例2の共沈法銅触媒に比べて高い触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。その後の触媒の長期耐久性を評価するための試験では400℃における最終的なメタノール転化率は49%、一酸化炭素選択率は2.6%であり比較例2の共沈法銅触媒より高い活性を示した。反応後における銅微粒子の結晶子径は13nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は17nmであり、比較例2に比べて小さく、セリア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行は、その組成・形状が類似しているにもかかわらず共沈法で製造された混合凝集体に比べて遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、セリアの結晶子径は9nmであった。
[実施例3]
比較例2と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−2:比表面積、254m2/g)を溶解された金属量に対してモル比で0.17倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例2と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
比較例2と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。
得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、及びセリウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を23重量%、ジルコニア担体を19重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化銅の結晶子径は12nm、酸化亜鉛の結晶子径は10nmであり、比較例2と比べてほぼ同じであった。このことはジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体は比較例2で製造された微粒子の混合凝集体とほぼ同じであることを示している。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は10nmであったが、これはジルコニア担体に由来するものであると考えられる。
この触媒を比較例2と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は93%、一酸化炭素選択率は3.0%であり、比較例2の共沈法銅触媒とほぼ同等の触媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は59%、一酸化炭素転化率は1.4%であり、比較例2の共沈法銅触媒に比べて高い触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。その後の触媒の長期耐久性を評価するための試験では400℃における最終的なメタノール転化率は51%、一酸化炭素選択率は1.5%であり比較例2の共沈法銅触媒より高い活性を示した。反応後における銅微粒子の結晶子径は13nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は17nmであり、比較例2に比べて小さく、ジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行は、その組成・形状が類似しているにもかかわらず共沈法で製造された凝集体に比べて遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、酸化ジルコニウムの結晶子径は12nmであった。
[実施例4]
比較例2と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−3:比表面積、94m2/g)を溶解された金属量に対してモル比で0.67倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例2と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
比較例2と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。
得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、及びセリウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を14重量%、ジルコニア担体を48重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化銅の結晶子径は12nm、酸化亜鉛の結晶子径は10nmであり、比較例2と比べてほぼ同じであった。このことはジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体は比較例2で製造された微粒子の混合凝集体とほぼ同じであることを示している。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は10nmであったが、これはジルコニア担体に由来するものであると考えられる。
この触媒を比較例2と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は96%、一酸化炭素選択率は2.9%であり、比較例2の共沈法銅触媒とほぼ同等の触媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は63%、一酸化炭素転化率は1.9%であり、比較例2の共沈法銅触媒に比べて高い触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。その後の触媒の長期耐久性を評価するための試験では、400℃における最終的なメタノール転化率は57%、一酸化炭素選択率は2.0%であり比較例2の共沈法銅触媒より高い活性を示した。反応後における銅微粒子の結晶子径は14nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は10nmであり、比較例2に比べて小さく、ジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行は、その組成・形状が類似しているにもかかわらず共沈法で製造された凝集体に比べて遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、酸化ジルコニウムの結晶子径は12nmであった。
[実施例5]
比較例2と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−2:比表面積、254m2/g)を溶解された金属量に対してモル比で1.57倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例2と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
比較例2と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。
得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、及びセリウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を9重量%、ジルコニア担体を68重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンからは酸化銅及び酸化亜鉛の明瞭なピークは観測されなかった。このことはジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体中の粒子サイズが比較例2で製造された微粒子の凝集体と比べて小さいことを示しており、条件を選ぶことにより単なる共沈法による微粒子混合凝集体より更に微粒子化が可能であることを示唆している。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は16nmであったが、これはジルコニア担体に由来するものであると考えられる。
この触媒を比較例2と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は93%、一酸化炭素選択率は3.3%であり、比較例2の共沈法銅触媒とほぼ同等の触媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は70%、一酸化炭素転化率は1.9%であり、比較例2の共沈法銅触媒に比べて高い触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、500℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止することを2回繰り返した。その結果、400℃におけるメタノール転化率は59%、一酸化炭素選択率は1.7%であり比較例2の共沈法銅触媒より高い活性を示した。更に同様の反応試験を3回繰り返した。400℃における最終的なメタノール転化率は54%、一酸化炭素選択率は1.5%であった。反応後における銅微粒子の結晶子径は9nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は22nmであり、比較例2に比べて銅微粒子の結晶子径は明らかに小さく長期にわたる試験においてもジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行が遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、酸化ジルコニウムの結晶子径は16nmであった。
[実施例6]
比較例2と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−2:比表面積、254m2/g)を溶解された金属量に対してモル比で2.69倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例2と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
比較例2と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。
得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、及びセリウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を6重量%、ジルコニア担体を79重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンからは酸化銅及び酸化亜鉛の明瞭なピークは観測されなかった。このことはジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体中の粒子サイズが比較例2で製造された微粒子の凝集体と比べて小さいことを示しており、条件を選ぶことにより単なる共沈法による微粒子混合凝集体より更に微粒子化が可能であることを示唆している。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は14nmであったが、これはジルコニア担体に由来するものであると考えられる。
この触媒を比較例2と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は100%、一酸化炭素選択率は3.7%であり、比較例2の共沈法銅触媒より高い触媒媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は74%、一酸化炭素転化率は2.3%であり、比較例2の共沈法銅触媒に比べて高い触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、500℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止することを2回繰り返した。その結果、400℃におけるメタノール転化率は59%、一酸化炭素選択率は1.9%であり比較例2の共沈法銅触媒より高い活性を示した。更に同様の反応試験を3回繰り返した。400℃における最終的なメタノール転化率は54%、一酸化炭素選択率は1.5%であった。反応後における銅微粒子の結晶子径は9nm、酸化亜鉛に由来するXRDピークは検出されず、比較例2に比べて銅微粒子の結晶子径は明らかに小さく長期にわたる試験においてもジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行が遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、酸化ジルコニウムの結晶子径は16nmであった。
[実施例7]
比較例2と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−2:比表面積、254m2/g)を溶解された金属量に対してモル比で6.05倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例2と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
比較例2と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。
得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、及びセリウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を3重量%、ジルコニア担体を89重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンからは酸化銅及び酸化亜鉛の明瞭なピークは観測されなかった。このことはジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体中の粒子サイズが比較例2で製造された微粒子の凝集体と比べて小さいことを示しており、条件を選ぶことにより単なる共沈法による微粒子混合凝集体より更に微粒子化が可能であることを示唆している。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は15nmであったが、これはジルコニア担体に由来するものであると考えられる。
この触媒を比較例2と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は100%、一酸化炭素選択率は3.1%であり、比較例2の共沈法銅触媒より高い触媒媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は66%、一酸化炭素転化率は1.4%であり、比較例2の共沈法銅触媒に比べて高い触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、500℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止することを2回繰り返した。その結果、400℃におけるメタノール転化率は47%、一酸化炭素選択率は1.3%であり比較例2の共沈法銅触媒より高い活性を示した。更に同様の反応試験を3回繰り返した。400℃における最終的なメタノール転化率は49%、一酸化炭素選択率は1.1%であった。反応後における銅微粒子の結晶子径は9nm、酸化亜鉛に由来するXRDピークは検出されず、比較例2に比べて銅微粒子の結晶子径は明らかに小さく長期にわたる試験においてもジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行が遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、酸化ジルコニウムの結晶子径は16nmであった。
[比較例3]
硝酸パラジウム、硝酸亜鉛を、モル比で1.0:11.8となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.2mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−2:比表面積、254m2/g)を溶解された金属量に対してモル比で1.58倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例1と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
比較例1と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、酸化パラジウム微粒子・酸化亜鉛微粒子の凝集体とジルコニア担体が混在した酸化物を得た。
得られた酸化物は、該触媒中に含まれるパラジウム、亜鉛、ジルコニウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、パラジウムを3重量%、ジルコニア担体を70重量%含むものであった。この共沈銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化亜鉛の結晶子径は17nm、酸化パラジウムに由来するXRDピークは検出されなかった。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は14nmであった。得られた酸化物の透過電子顕微鏡写真を図2に示す。図2下端部にジルコニア担体が偏在しており、この図から金属化合物水溶液中にジルコニウム、セリウム、アルミニウム、イットリウムの化合物の何れかが存在しないと金属酸化物担体表面に酸化物微粒子の混合凝集体が覆うように付着しないことがわかる。
[実施例8]
硝酸パラジウム、硝酸亜鉛、硝酸セリウムを、モル比で1.0:9.15:1.24となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−6:比表面積、279m2/g)を溶解された金属量に対してモル比で1.77倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例3と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
比較例3と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化パラジウム微粒子・酸化亜鉛微粒子・酸化セリウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着したパラジウム触媒を得た。得られたパラジウム触媒(微粒子凝集体)の透過電子顕微鏡写真を図3に示す。
得られたパラジウム触媒は、該触媒中に含まれるパラジウム、亜鉛、セリウム、ジルコニウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、パラジウムを3重量%、ジルコニア担体を70重量%含むものであった。この共沈銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化亜鉛の結晶子径は14nm、パラジウムに由来するXRDピークは検出されなかった。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は13nmであった。
この触媒を固定床流通式反応装置の反応器に充填後、水素及びアルゴンからなる還元ガス(容積比、水素:アルゴン=1:9)を水素供給速度3L/g(触媒)・hの条件で500℃で2時間反応器に供給することによって触媒を還元した。
還元後、反応器を400℃に降温し、メタノール、水蒸気及びアルゴンからなる反応ガス(容積比 メタノール:水蒸気:アルゴン=1:1.2:0.51)をメタノール供給速度100L/g(触媒)・hの条件で反応器に供給することによりメタノールの水蒸気改質反応を開始し、メタノールを主として水素及び二酸化炭素に変換した。反応開始1時間後におけるメタノール転化率は84%、一酸化炭素選択率は12%であった。その後、触媒の耐久性を評価するため、反応ガス流通下で550℃に昇温して5時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は82%、一酸化炭素転化率は6.5%であった。その後、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、550℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止した。その結果、400℃におけるメタノール転化率は79%、一酸化炭素選択率は5.7%であり活性の大きな劣化は認められなかった。反応後における酸化亜鉛微粒子の結晶子径は17nmであった。他に、パラジウム−亜鉛合金に由来するXRDピークが検出され、その結晶子径は21nmであった。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は15nmであった。
[実施例9]
硝酸パラジウム、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウムを、モル比で1.0:10.5:2.09となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.2mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−6:比表面積、279m2/g)を溶解された金属量に対してモル比で1.49倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例3と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
比較例3と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化パラジウム微粒子・酸化亜鉛微粒子・酸化アルミニウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着したパラジウム触媒を得た。得られたパラジウム触媒(微粒子凝集体)の透過電子顕微鏡写真を図4に示す。
得られたパラジウム触媒は、該触媒中に含まれるパラジウム、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、パラジウムを3重量%、ジルコニア担体を70重量%含むものであった。この共沈銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化ジルコニウムの結晶子径は14nmであった。酸化亜鉛及びパラジウムに由来するXRDピークは検出されなかった。
この触媒を実施例8と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は80%、一酸化炭素選択率は18%であった。その後、触媒の耐久性を評価するため、反応ガス流通下で550℃に昇温して5時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は82%、一酸化炭素転化率は6.4%であった。その後、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、550℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止した。その結果、400℃におけるメタノール転化率は76%、一酸化炭素選択率は4.8%であり活性の大きな劣化は認められなかった。反応後における酸化亜鉛微粒子の結晶子径は12nmであった。パラジウムに由来するXRDピークは検出されなかった。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は14nmであった。