JP5866195B2 - 油中水型エマルション接着剤 - Google Patents
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- C09J129/02—Homopolymers or copolymers of unsaturated alcohols
- C09J129/04—Polyvinyl alcohol; Partially hydrolysed homopolymers or copolymers of esters of unsaturated alcohols with saturated carboxylic acids
Description
任意の大きさ・形の冊子または封書を、印刷後の後処理装置(フィニッシャー)、たとえば封書作製装置、冊子作製装置などの機械を用いて、インラインで自動化して作製するには、(1)接着剤の放置乾燥性、(2)保存安定性の確保、および(3)短時間での接着性の発現が課題となる。
また、放置中に接着剤の分離や変質等が生じてしまうと、接着剤の塗布不良、接着不良等が生じる。
さらに、接着剤を用紙に塗布し貼り合わせた後に用紙を搬送する必要があるため、塗布後は乾きやすく、短時間で接着する必要がある。
接着時間を短縮するために、ホットメルト型接着剤、活性光線硬化型接着剤等を用いることも知られており、接着剤塗布後に加熱、活性光線の照射等のエネルギーを与えることで接着時間を短縮している。特許文献4は、ホットメルト型接着剤を用いて製本を行う製本装置を開示する。
また、接着時にエネルギーが必要な場合、消費電力が著しく上昇するため、環境保護の観点から好ましくないことに加え、加熱や活性光線の照射等の機構を備えるために装置が大型化しやすいという問題もある。
本発明によれば、接着剤を油中水型のエマルション形態とし、かつ、水相に接着成分を含ませるようにしたため、接着成分を取り囲む油相が蒸発しにくく、その結果、開放空間下に放置しても固化しにくいという効果が得られると考えられる。一方、紙等の被着体に付着させた後は、油相が被着体内部に浸透して、水相が被着体表面に残ることとなり、その結果、水相粒子が合一して水が蒸発し、迅速に接着剤皮膜(硬化膜)を形成することができると考えられる。
本発明では、均一な接着剤皮膜が形成できるので接着力が向上し、特に、短時間で接着力が発現されるという効果も得ることができる。したがって、でんぷん、PVA等の様々な種類の接着成分を使用することができる。
接着性を発現する水溶性高分子であれば、特に限定されず、たとえば水性接着剤の接着成分として公知の高分子を使用することができる。水溶性高分子であるため、エマルションの安定性が保たれ、かつ、被着体に付着させた後の初期接着性を得ることができる。
具体的には、でんぷん、ニカワなどの天然高分子、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、水溶性セルロース、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子が挙げられる。複数種の水溶性高分子を組み合わせて、配合してもよい。これらは市販品を使用することができ、たとえばでんぷんであれば、ヤマト株式会社製または不易糊工業株式会社製等の各種でんぷんのりを好ましく使用できる。
PVAは、重合度とけん価度により、溶液にしたときの粘度その他の性質も変わり、低けん化度、低重合度のPVAは一般に、初期接着性および硬化膜の耐水性に劣るという問題がある。しかし、本発明では、様々な重合度およびけん価度のPVAを好ましく使用することができる。これは、油相に配合した樹脂が被着体表面に残って接着剤皮膜の増強に貢献するため、重合度および/またはけん化度の低いPVAを使用した場合にも、接着剤の皮膜が十分な接着強度および耐水性を持つためである。
水相の粘度調整が不要であるという同じ理由に基づき、低けん化度、低重合度のPVAを高濃度で使用して、初期接着性および耐水性をさらに高めることもできる。
異なるけん化度および/または重合度のPVAを複数種組み合わせて使用してもよい。
油相は、30℃で固体の、酸価が10以下の樹脂(以下、固体樹脂とも記す。)を含む。酸価は、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表される(KOHmg/g)。酸価は、JIS K2501に定められる測定方法により測定できる。
油相には、エマルション安定化(保存安定性)のために樹脂を配合することが好ましいが、本発明者らの検討によると、油相に配合される樹脂が液体であると、油相の樹脂が溶剤とともに被着体内部に浸透し、その結果、被着体表面に形成される水溶性高分子の皮膜に数μm〜数十μmの大きさの不均一な隙間が生じてしまうことが判明した。また、被着体内部に浸透しないような粘性の高い液体樹脂であると、被着体表面において水溶性樹脂の接着阻害を引き起こしてしまうことも判明した。
これに対し、通常の使用環境下(30℃以下)で固体の樹脂であれば、被着体内部に浸透することはなく被着体表面に残り、あたかも水相粒子の隙間を埋めるかのように固体樹脂が存在することにより、水溶性高分子とともに隙間のない均一な接着剤皮膜を形成することができ、その結果、接着強度を向上させることができる。
さらに、上記固体樹脂を溶解可能な溶剤を用いることが好ましい。これは、固体樹脂が溶剤に溶解した状態で油相に含まれることにより、油相の粘度が高められ、その結果、エマルション内の水相粒子の合一が抑制されて、安定性の良いエマルション接着剤が作製可能となるとともに、印刷機内など開放空間で放置した際に固体樹脂からの溶剤の離脱が生じにくくなり、系として安定させることができるからである。
SP値は溶剤への固体樹脂の溶解性を評価する値であり、Fedorの推算法により計算される。すなわち、物質の各官能基の凝集エネルギー密度の合計ΣEcohとモル分子容の合計ΣVより、次式(1)のように定義することができる。
[数式1]
δ(SP値)=(ΣEcoh/ΣV)1/2 ・・・(1)
(「溶解性パラメーター適用事例集」(メカニズムと溶解性の評価・計算例等を踏まえて)、97〜100頁、(株)情報機構、2007年3月15日発行参照)
溶剤のSP値は、8〜11(cal/cm3)1/2であることがより好ましく、8〜9(cal/cm3)1/2であることが一層好ましい。
SP値が上記範囲内の極性溶剤は、固体樹脂の溶解性に優れ、さらに極性溶剤の中でも非水性のものを選択することで、乳化工程において水相を加える際に、油相内の溶剤が水に溶解することなく、安定性の良いW/O型エマルションを作製することができる。
このような非水性極性溶剤としては炭素数が5〜30の直鎖または分岐鎖のアルコール類、炭素数が6〜20程度のエステル系溶剤等が挙げられる。
エステルを構成するアルコール部分も、特に限定されず、炭素数1〜18のアルキル基であることが好ましい。このアルキル基は、分岐鎖を有していてもよいし、遊離の水酸基を有していてもよい。
カルボン酸エステル全体の炭素数は、特に限定されないが、12〜30程度であることが好ましく、15〜20程度であることが最も好ましい。
これらの非水性極性溶剤は、複数種を適宜組み合わせて使用してもよい。したがって、複数種の脂肪酸の混合物である大豆油等も好ましく用いることができる。また、樹脂と脂肪酸とを主成分とするトール油などを使用することもできる。
1−ペンタノール(SP値:10.96(cal/cm3)1/2)、2−メチル−1−ブタノール(10.77(cal/cm3)1/2)、3−メチル−1−ブタノール(10.77(cal/cm3)1/2)、3−ペンタノール(10.77(cal/cm3)1/2)、n−ヘキサノール(10.68(cal/cm3)1/2)、4−メチル−2−ペンタノール(10.34(cal/cm3)1/2)、2−エチルブタノール(10.51(cal/cm3)1/2)、2−ヘプタノール(10.31(cal/cm3)1/2)、3−ヘプタノール(10.14(cal/cm3)1/2)、n−オクタノール(10.28(cal/cm3)1/2)、2−オクタノール(10.14(cal/cm3)1/2)、2−エチルヘキサノール(10.14(cal/cm3)1/2)、3,5,5−トリメチルヘキサノール(9.74(cal/cm3)1/2)、n−ドデカノール(9.81(cal/cm3)1/2)、トリメチルノニルアルコール(10.77(cal/cm3)1/2)等のアルコール類;
イソノナン酸イソノニル(SP値:8.13(cal/cm3)1/2)、ラウリン酸ヘキシル(8.62(cal/cm3)1/2)、ラウリン酸メチル(8.64(cal/cm3)1/2)、ラウリン酸イソプロピル(8.54(cal/cm3)1/2)、ミリスチン酸イソプロピル(8.54(cal/cm3)1/2)、ミリスチン酸イソオクチル(8.54(cal/cm3)1/2)、パルミチン酸イソプロピル(8.54(cal/cm3)1/2)、パルミチン酸イソステアリル(8.55(cal/cm3)1/2)、オレイン酸メチル(8.63(cal/cm3)1/2)、オレイン酸エチル(8.63(cal/cm3)1/2)、オレイン酸イソプロピル(8.56(cal/cm3)1/2)、オレイン酸ブチル(8.62(cal/cm3)1/2)、リノール酸メチル(8.64(cal/cm3)1/2)、リノール酸イソブチル(8.79(cal/cm3)1/2)、リノール酸エチル(8.63(cal/cm3)1/2)、イソステアリン酸イソプロピル(8.47(cal/cm3)1/2)、アジピン酸ジイソプロピル(9.15(cal/cm3)1/2)、セバシン酸ジイソプロピル(9.03(cal/cm3)1/2)、セバシン酸ジエチル(9.26(cal/cm3)1/2)、モノカプリン酸プロピレングリコール(10.25(cal/cm3)1/2)、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(9.06(cal/cm3)1/2)、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル(9.18(cal/cm3)1/2)等のエステル系溶剤;が好ましく挙げられる。なお、かっこ内の数値は溶剤のSP値を示している。
一方で、油相の溶剤は、紙に塗布した場合には、紙に浸透および蒸発することで素早く飛散するものが好ましい。接着剤が紙に塗布された際に、油相の溶剤の飛散が速ければ、 エマルションの崩壊を促進できるため、接着剤のセットタイムを短くする効果が得られる。油相の溶剤として、沸点が350℃以下であるものを選択することで、開放放置した場合の溶剤の蒸発を抑えつつ、紙に塗布した際には飛散しやすい、セットタイムの短い接着剤を得ることができる。
これらの溶剤は、単独で用いるほか、適宜、2種以上を混合して使用することができる。
上記の非水性極性溶剤以外の溶剤を併用する場合、油相を構成する全溶媒中に上記の非水性極性溶剤は60質量%以上含まれることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。また、上記の非水性極性溶剤は、接着剤全量中には6質量%以上含まれることが好ましく、9質量%以上であることがより好ましい。
非イオン系界面活性剤としては、ヘキサオレイン酸ヘキサグリセリル、ポリリシノール酸ヘキサグリセリル、ソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、ポリオキシエチレン2〜30モル付加(以下POE(2〜30)と略して記載)オレインエーテル、POE(2〜35)ステアリルエーテル、POE(2〜20)ラウリルエーテル、POE(1〜20)アルキルフェニルエーテル、POE(6〜18)ベヘニルエーテル、POE(5〜25)2−デシルペンタデシルエーテル、POE(3〜30)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(8〜16)2−オクチルデシルエーテル等のエーテル型界面活性剤;POE(4〜60)硬化ヒマシ油、POE(3〜14)脂肪酸モノエステル、POE(6〜30)脂肪酸ジエステル、POE(5〜20)ソルビタン脂肪酸エステル等のエステル型界面活性剤;POE(2〜30)グリセリルモノイソステアレート、POE(10〜60)グリセリルトリイソステアレート、POE(7〜50)硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE(12〜60)硬化ヒマシ油トリイソステアレート等のエーテルエステル型界面活性剤等のエチレンオキシド付加型界面活性剤;デカグリセリルテトラオレート、ヘキサグリセリルトリイソステアレート、ジグリセリルジイソステアレート、グリセリルモノオレエートといったグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されることはない。
上記の非イオン系界面活性剤は単独で用いてもよいし、または適宜混合して用いてもよい。
上記以外の任意成分を配合してもよく、任意成分は、該成分の溶解特性等に応じて、水相と油相のうちの適切な相に配合することができる。
W/O型エマルション接着剤は、油相成分に水相成分を徐々に添加して乳化させることにより製造することができる。
接着剤の用途についても、特に限定されない。後述するように印刷後の後処理用として使用することが好ましいが、印刷前に使用してもよいし、印刷物以外に用いてもよい。
冊子作製や封書作製をするために、後処理装置(フィニッシャー)に塗布機構を組み込み、インラインで必要箇所にパターニングして接着剤を塗布することもできる。
上記のように本発明に係る接着剤は、塗布後に迅速に、半乾き状態でも接着性ないし粘着性を発現するため、せん断接着力において優れている。したがって、フィニッシャーなどの装置と組み合わせて使用した場合でも、接着後の紙の搬送時に接着箇所がずれにくくなる。なお、フィニッシャーとは、パンチ加工、ホチキス留め、紙折り、製本などの印刷後の後処理をまとめて行う機械をいう。
<実施例1>
油相に配合する樹脂としてQuiontone DX390N(石油樹脂、酸価0.1(KOHmg/g)未満、30℃で固体、日本ゼオン株式会社製)2.5gを、溶剤としてサラコス99(イソノナン酸イソノニル、SP値8.13(cal/cm3)1/2、沸点284〜286℃、日清オイリオ株式会社製)6.5gに溶解させたものに、乳化剤としてNIKKOL Hexaglyn PR-15(ポリリシノレイン酸ポリグリセリル−6、日光ケミカルズ株式会社製)1gを添加し、5分間攪拌することで油相を得た。
水相に配合する水溶性高分子としてPVA(P-610、日本合成化学工業株式会社製、けん化度96mol%、重合度5000)を用い、6gを水34gに溶解してPVA水溶液を作製し、これを水相とした。
得られた水相を前記油相に20分かけて連続的に添加して乳化を行い、W/O型エマルション接着剤を得た。水相を添加する間、油相はバッチ式卓上サンドミル(株式会社カンペ製、高粘度攪拌翼使用、回転数2100rpm)で常に攪拌し、添加終了後さらに10分間攪拌を行った。
上記樹脂(Quiontone DX390N)の分量を4.5gに、上記溶剤(サラコス99)の分量を4.5gにした以外は、実施例1と同様の手順でW/O型エマルション接着剤を作製した。
上記樹脂(Quiontone DX390N)の分量を6gに、上記溶剤(サラコス99)の分量を3gにした以外は、実施例1と同様の手順でW/O型エマルション接着剤を作製した。
PVAとしてPVA403(株式会社クラレ製、けん化度80mol%、重合度300)を用いた以外は、実施例2と同様の手順でW/O型エマルション接着剤を作製した。
水相に添加する水溶性高分子としてでんぷん糊(ヤマト株式会社製)を、表1に記載する割合で使用した以外は、実施例2と同様の手順でW/O型エマルション接着剤を作製した。
油相に添加する樹脂としてQuiontone CX495(石油樹脂、酸価1.8(KOHmg/g)、30℃で固体、日本ゼオン株式会社製)を使用した以外は、実施例2と同様の手順でW/O型エマルション接着剤を作製した。
油相に添加する樹脂として樹脂としてネオトール 101N(ロジンエステル、酸価8.9(KOHmg/g)、30℃で固体、ハリマ化成株式会社製)を使用した以外は、実施例2と同様の手順でW / O 型エマルション接着剤を作製した。
油相に配合する溶剤として1−デカノール(SP値10.01(cal/cm3)1/2、沸点230℃、和光純薬工業株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様の手順でW / O 型エマルション接着剤を作製した。
油相に添加する樹脂としてハリフタール816(アルキド樹脂、酸価7.9(KOHmg/g)、30℃で液体、ハリマ化成株式会社製)を使用した以外は、実施例2と同様の手順でW/O型エマルション接着剤を作製した。
油相に添加する樹脂としてQuiontone D200(石油樹脂、酸価17(KOHmg/g)、30℃で固体、日本ゼオン株式会社製)を使用した以外は、実施例2と同様の手順でW/O型エマルション接着剤を作製した。
上記溶剤(サラコス99)9gに、上記乳化剤(NIKKOL Hexaglyn PR-15)1gを添加し、10分間攪拌することで油相とした以外は、実施例1と同様の手順でW/O型エマルション接着剤を作製した。
上記樹脂(Quiontone DX390N)の分量を0.5gに、上記溶剤(サラコス99)の分量を8.5gにした以外は、実施例1と同様の手順でW/O型エマルション接着剤を作製した。
実施例および比較例で得られた接着剤について、放置乾燥性、静置保存安定性および接着性(剥離接着強度、せん断接着強度)の試験を以下のように行った。結果を表1に示す。
非吸収性基材である金属板上に、接着剤を厚さ3mm、直径3mmの円形に塗布し、常温(30℃)で放置した。放置12時間後および20時間後に、接着剤表面に皮膜が形成されているか否かを目視にて確認した。
◎:放置20時間後も接着剤表面に皮膜が形成されなかった。
○:放置12時間以上20時間未満で接着剤表面に皮膜が形成されたか、または接着剤全体が完全に硬化した。
×:放置12時間後に接着剤表面に皮膜が形成されたか、または接着剤全体が完全に硬化した。
接着剤を密閉容器内に50g量り取り、乳化工程から10日(240時間)および15日(360時間)後に、遊離水の有無を目視で確認した。
◎:乳化工程から360時間経過後も遊離水の発生なし。
〇:乳化工程から240時間以上360時間未満で遊離水が発生。
×:乳化工程から240時間未満で遊離水が発生。
紙基材(理想用紙薄口、62g/m2)を幅50mm、長さ100mmに切り出し、紙の一端から80mmの長さまで、幅50mm、膜厚100μmで接着剤を塗布した。同じ形状の紙基材を上からもう1枚、互いに全面が重なるように重ねて基材同士を接着し、これを試験片とした。試験片を常温で10分および30分放置後、接着剤が塗布されていない試験片の端部を、テンシロン万能試験機RTC-1210Aを使用し、引張速度300mm/分で180度反対方向に引っ張って剥離し、接着性を評価した。剥離した際に紙基材が破れる被着材破壊が生じた場合を「接着した」と判断した。一方、紙基材は破れずに接着剤の硬化膜が破れる凝集破壊、または接着剤と基材間において剥がれが生じる界面破壊が発生した場合には「接着しなかった」とした。
◎:10分放置後、紙基材同士が接着した。
〇:30分放置後、紙基材同士が接着した。
×:30分放置後も、紙基材同士が接着しなかった。
紙基材(理想用紙薄口、62g/m2)を幅25mm、長さ100mmに切り出し、紙の片端において端から10mmの長さまで、幅25mm、膜厚50μmで接着剤を塗布した。上からもう1枚、接着剤塗布部分が覆われるように同じ形状の紙基材を重ねて基材同士を接着し、これを試験片とした。この際、接着剤を塗布した紙の端部(接着剤塗布部分)と接着剤を塗布していない紙の端部とを、平行に継手状に重ねて、重ね継手で紙を接着するようにした。試験片を常温(30℃)で1分および5分放置後、その両端を、テンシロン万能試験機RTC-1210Aを使用し、引張速度50mm/分で引張り、紙のずれが生じるかどうかを観察した。
◎:1分放置後、接着剤の接着強度が強く、紙のずれが発生しなかった。
○:5分放置後、接着剤の接着強度が強く、紙のずれが発生しなかった。
×:5分放置後も接着剤の接着強度が弱く、紙のずれが発生した。
これに対し、油相成分として液体樹脂を用いた比較例1、酸価の高い樹脂を用いた比較例2、および樹脂を用いなかった比較例3では、本発明の所期の効果が奏されないことが確認された。また、固体樹脂の配合量が不十分である比較例4では、油相の粘度が低く、油相と水相の分離が生じやすいことが分かった。
この固体樹脂の配合量についてQuiontone DX390Nを用いて検討を重ねた結果、4質量%では比較例4と同様の傾向が見られたが、5質量%以上であるとこうした問題が生じないことが確認された。
Claims (3)
- 油相と水相とからなり、
前記水相は、接着成分である水溶性高分子を含み、
前記油相は、SP値が8〜12(cal/cm3)1/2である非水性極性溶剤を含み、かつ、
前記油相は、30℃で固体であり且つ酸価が10以下の樹脂を、接着剤全量に対し5〜15質量%含む、油中水型エマルション接着剤。 - 前記非水性極性溶剤は、SP値が8〜9(cal/cm3)1/2である、請求項1記載の油中水型エマルション接着剤。
- 前記非水性極性溶剤は、炭素数12〜30の脂肪族カルボン酸エステルおよび炭素数5〜30のアルコールのなかから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1または2記載の油中水型エマルション接着剤。
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