JP2015000879A - 油中水型エマルション接着剤 - Google Patents
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しかし、このような接着剤は、水の離脱に伴い高分子が凝集することで接着するメカニズムであるため開放環境で使用すると、徐々に水が蒸発することで接着剤が固化したり、皮膜が生じたりするため長時間の使用に適していない。
小さい子供の場合は、容器に入った接着剤を使用した後、容器のふたを閉め忘れたり、しっかりと閉められていない状態で放置してしまったりすることもある。このような状態で長時間放置すると容器内の接着剤全体が劣化してしまう。そのため、開放空間下で放置した場合でも簡単に固化したり皮膜が生じたりしないことが望まれる。
さらに、これらの接着剤は水性接着剤であり、紙に塗工すると紙の変形が生じてしまう問題もあった。
(1)油相と水相とからなり、
前記水相が少なくとも水及びデンプンを含み、
前記デンプンに含まれるアミロペクチン(X)及びアミロース(Y)の質量割合(X:Y)が65:35〜100:0であることを特徴とする油中水型エマルション接着剤。
また、油中水型エマルションとしたことで、水相は油相に覆われた形態をとるために水の蒸発乾燥を防止し、高い開放環境安定性が得られたと考えられる。
また、油中水型エマルションにすることで、紙等の被着体に接着剤を付着させた後、油相の水不溶性有機溶剤は、水相の水よりも先に紙内部に浸透する。このため、紙内部へ水分が浸透することによる用紙変形を抑制できたと考えられる。
さらに、油相が紙に浸透した後、水相の水およびデンプンは紙表面に残る。ここで、本発明の接着剤におけるデンプンを含む水相はタックが強く、水が完全に蒸発して接着成分が乾固しなくても接着性(張り付く)を発現するため接着速度が速いという特徴がある。これにより、接着成分であるデンプンを含む水相が油相に包含される油中水型エマルション形態であっても、短時間での接着が可能となったと考えられる。
以下に、本発明の接着剤について詳述する。
本発明の接着剤において、水相は少なくとも水及びデンプンを含む。そして、デンプンとして、アミロペクチン(X)及びアミロース(Y)の割合(X:Y)が65:35〜100:0であるものを含む。
アミロペクチンとアミロースの割合が上記範囲内でアミロペクチンの割合が高くなる程、糊化が容易であり、タックが強い。また、老化による離水が起きにいため、開放環境下での変質に強い。さらに離水による水相内の濃度勾配が生じないため、エマルション崩壊も抑制され、より一層開放環境下での変質に強くなる。逆に、アミロペクチンの割合が上記範囲の下限よりも少ないと、未加工デンプンの場合、糊化が困難であり接着力が低下する。また、デンプンの老化による離水が起きやすく、開放環境下でも変質しやすい。さらに離水に伴って水相内の濃度勾配が生じるため、エマルションが崩壊し本発明の効果が得られにくい。前記デンプンに含まれるアミロペクチンとアミロースとの割合は、80:20〜100:0であることが好ましく、90:10〜100:0であることがより好ましい。
前記デンプンは化学的改質をしたものであっても、化学的改質をしたものとしていないものの混合物であっても使用することができるが、油中水型エマルションとすることで曳糸性とセットタイムとを両立することができるため、化学的改質をしないものであっても使用することができる。化学的改質をしない場合は、接着剤の作製工程が多くなることがないため好ましい。
本発明の接着剤において、油相は少なくとも水不溶性有機溶剤を含む。
水不溶性有機溶剤(以下、単に「溶剤」とも呼ぶ)としては、水への溶解度が25℃において0.5質量%以下であるものが好ましく、油相と水相の合一を抑制するためには、0.1質量%以下であるものがより好ましく、0.05質量%以下であるものがさらに好ましい。
一方で、油相の水不溶性有機溶剤は、紙に塗工した場合には、紙に素早く浸透及び蒸発することで迅速に離脱するものが好ましい。紙が被着体に塗工された際の浸透が速ければ、油相の溶剤の離脱が速ければ、エマルションの崩壊を促進できるため、接着剤のセットタイムを短くする効果が得られる。沸点の上限は特にないが、有機溶剤の粘度、沸点はおおよそ関係し、沸点が高い溶剤ほど、粘度も高いことが多く、従って、浸透も遅くなることが予想されるから、沸点350℃以下であることが好ましいといえる。
安全性および衛生性の観点から、これらの溶剤の中でも植物油が好ましい。具体的には、株式会社J−オイルミルズ製の「AJINOMOTO サラダ油TUP」、「AJINOMOTO オリーブオイル」、「AJINOMOTO 香りしっかり調合ごま油」、「AJINOMOTO 発芽恵みのコーン油」、「AJINOMOTO べに花油」(いずれも商品名)等が好適に用いられる。
以上の溶剤は、単独で用いるほか、適宜、2種以上を混合して使用することができる。
非イオン系界面活性剤としては、ヘプタイソステアリン酸デカグリセリル、ポリリシノール酸ヘキサグリセリル、ソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、ポリオキシエチレン2〜30モル付加(以下POE(2〜30)と略して記載)オレインエーテル、POE(2〜35)ステアリルエーテル、POE(2〜20)ラウリルエーテル、POE(1〜20)アルキルフェニルエーテル、POE(6〜18)ベヘニルエーテル、POE(5〜25)2−デシルペンタデシルエーテル、POE(3〜30)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(8〜16)2−オクチルデシルエーテル等のエーテル型界面活性剤;POE(4〜60)硬化ヒマシ油、POE(3〜14)脂肪酸モノエステル、POE(6〜30)脂肪酸ジエステル、POE(5〜20)ソルビタン脂肪酸エステル等のエステル型界面活性剤;POE(2〜30)グリセリルモノイソステアレート、POE(10〜60)グリセリルトリイソステアレート、POE(7〜50)硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE(12〜60)硬化ヒマシ油トリイソステアレート等のエーテルエステル型界面活性剤等のエチレンオキシド付加型界面活性剤;デカグリセリルテトラオレート、ヘキサグリセリルトリイソステアレート、ジグリセリルジイソステアレート、グリセリルモノオレエートといったグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤が挙げられる。
安全性および衛生性の観点から、これらの乳化剤の中でも、植物を原料として作られた乳化剤が好ましい。具体的には、日光ケミカルズ株式会社製の「NIKKOL Tetraglyn1−OV」、「NIKKOL Decaglyn5−ISV」、「NIKKOL Hexaglyn PR−15」、「CO―3」、「HCO−10」(いずれも商品名)等が好適に用いられる。
これらの非イオン系界面活性剤は単独で用いてもよいし、または適宜混合して用いてもよい。
具体的には、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、22000、24000、28000」(いずれも商品名)、共栄社化学株式会社製「フローレンDOPA−15B」(商品名)、楠本化成株式会社製「DA−703−50、DA−7300、DA234」(いずれも商品名)、BykChemie社製「Disperbyk−101」(商品名)、川研ファインケミカル株式会社製「ヒノアクト」(商品名)、ISP社製「Antaron V−216、Ganex V−216、Antaron V−220、Ganex V−220」(いずれも商品名)、Induchem社製「Unimer U−151、Unimer U−15」(いずれも商品名)等が挙げられる。
油相の質量割合が上記範囲の下限よりも少ない場合、開放環境下での変質が起きることがある。逆に、油相の質量割合が上記範囲の上限よりも多くなると、セットタイムの観点が遅くなることがある。
冊子作製や封書作製をするために、後処理装置(フィニッシャー)に塗工機構を組み込み、インラインで必要箇所にパターニングして接着剤を塗工することもできる。
上記のように本発明に係る接着剤は、塗工後に迅速に、半乾き状態でも接着性ないし粘着性を発現するため、せん断接着力において優れている。したがって、フィニッシャーなどの装置と組み合わせて使用した場合でも、接着後の紙の搬送時に接着箇所がずれにくくなる。なお、フィニッシャーとは、パンチ加工、ホチキス留め、紙折り、製本などの印刷後の後処理をまとめて行う機械をいう。
水相及び油相のそれぞれについて表1に記載の成分及び含有率となるように各成分を混合し、水相については95℃に加熱して撹拌し、油相については50℃に加熱して撹拌し、水相成分及び油相成分を調製した。次いで、調製した水相成分及び油相成分を混合し、卓上式サンドミル(関西ペイント株式会社製)を用いて、実施例1〜15、比較例3は約1850rpmの回転速度で撹拌して、それぞれ乳化し、接着剤を得た。
各成分の詳細を以下に示す。なお、デンプン1〜3の括弧内の比は、アミロペクチン:アミロースの質量割合である。
(水相)
水:イオン交換水
デンプン1:(株)J−オイルミルズ製、ワキシーコーンスターチY(100:0)
デンプン2:(株)J−オイルミルズ製、コーンスターチY(75:25)
デンプン3:和光純薬(株)製、和光一級 でんぷん,小麦由来(70:30)
デンプン4:(株)J−オイルミルズ製、ハイアミロースコーンスターチ(60:40)
金属塩1:和光純薬(株)製、無水塩化カルシウム
金属塩2:関東化学(株)製、塩化マグネシウム六水和物
金属塩3:関東化学(株)製、硝酸カルシウム四水和物
(油相)
水溶性有機溶剤1:コグニスジャパン(株)製、ラウリル酸ヘキシル(沸点:210℃)
水溶性有機溶剤2:(株)J−オイルミルズ製、AJINOMOTOサラダ油TUP
水溶性有機溶剤3:(株)J−オイルミルズ製、AJINOMOTOオリーブ油
固体樹脂:日本ゼオン(株)製、Quitone CX495(脂肪族系炭化水素樹脂)
乳化剤1:日光ケミカルズ(株)製、Decaglyn 5−ISV
乳化剤2:日光ケミカルズ(株)製、Hexaglyn PR−15
(1)セットタイム
紙基材(日本製紙(株)製、NPiフォームNEXT−IJ<90>、フォーム紙)を幅2cm、長さ10cmに切り出し、紙の一端から5cmの長さまで、幅2cm、膜厚10μmで接着剤を塗工した。同じ形状の紙基材を上からもう1枚、互いに全面が重なるように紙基材同士を重ね合わせ、試験片を作製した。試験片の紙基材同士を剥離し、剥離した際に紙基材が破れる被着材破壊が生じるまでの時間を測定し、接着の程度を評価した。
S:塗工後5秒以内に、紙基材同士が接着した。
A:塗工後10秒以内に、紙基材同士が接着した。
B:塗工後15秒以内に、紙基材同士が接着した。
D:塗工後15秒以内では、紙基材同士が接着しなかった。
非吸収性基材である金属板上に、接着剤を厚さ1mm、直径3mmの円形に塗工し、常温(20℃)で放置した。放置後、接着剤が変質するまでの時間を測定した。薬さじをサンプルに入れたとき、皮膜形成または固化により、さじがサンプル内に入らない場合を「変質」と判断した。
S:4時間以上、変質しなかった。
A:3時間以上、変質しなかった。
B:2時間以上、変質しなかった。
C:1時間以上、変質しなかった。
D:1時間以内に、変質した。
紙基材(日本製紙(株)製、NPiフォームNEXT−IJ<90>、フォーム紙)の上に、直径62mmの金属ローラーを設置した。ローラー上端部に接着剤を載せ、2m/minの速度でローラーを転がし、机上の紙基材に接着剤を塗工した。そして、紙基材に塗工した際の用紙浮き(机上から用紙までの距離)を測定し、用紙浮きが5mm以下を塗工容易、5mm以上を塗工困難と判断した。
S:塗工容易
D:塗工困難
紙基材(理想科学工業(株)製、理想用紙薄口、普通紙)を幅5cm、長さ10cmに切り出し、紙の一端から5cmの長さまで、幅5cm、膜厚10μmで接着剤を塗工した。そして、カールの有無を目視観察して以下の基準に従い用紙変形を評価した。
S:全くカールしていなかった。
A:僅かしかカールしていなかった。
D:大きくカールしていた。
これに対し、比較例1、2は、主に、開放環境下での安定性及び用紙変形の評価において劣っていた。これは、両比較例の接着剤が油中水型エマルションの形態をとらない水性接着剤であるために開放環境下での安定性が低く、油相をもたないため紙内部へ水が浸透しやすいため用紙変形が生じ、本発明の効果を得ることはできなかったと推察される。また、比較例1については油中水型エマルションの形態をとらない上にタックが強いため、塗工が困難であったと推測される。
また、比較例3では、セットタイム及び開放環境下での安定性の評価において劣っていた。これは、アミロペクチン及びアミロースの質量割合(=60:40)が本発明の範囲外(アミロペクチンの割合が低い)のデンプンを用いたため、デンプンの老化が起きてしまい、接着力が低く、短時間で乾燥してしまい開放環境下での安定性に劣り、本発明の効果を得ることはできなかったと推察される。
Claims (4)
- 油相と水相とからなり、
前記水相が少なくとも水及びデンプンを含み、
前記デンプンに含まれるアミロペクチン(X)及びアミロース(Y)の質量割合(X:Y)が65:35〜100:0であることを特徴とする油中水型エマルション接着剤。 - 前記水相に含まれるデンプンの割合が、15〜40質量%であることを特徴とする請求項1に記載の油中水型エマルション接着剤。
- 前記水相がさらに金属塩を含み、前記金属塩のカチオンが第2族の金属イオンであり、アニオンがハロゲン化物イオンまたは硝酸イオンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の油中水型エマルション接着剤。
- 前記デンプンの原材料が、ワキシーコーンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の油中水型エマルション接着剤。
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