本実施形態では、反射防止部材1は図1に示されるように、基材2、第一の層3(ハードコート層)、第二の層4(高屈折率層)、及び第三の層5(低屈折率層)を備える。基材2、第一の層3、第二の層4、及び第三の層5は、この順番に積層している。すなわち、基材2の第一の主面上に第一の層3が積層し、第一の層3の基材2とは反対側の主面上に第二の層4が積層し、第二の層4の第一の層3とは反対側の主面上に第三の層5が積層している。基材2、第一の層3、第二の層4、及び第三の層5のうちのいずれの要素も光透過性を有し、反射防止部材1が全体として光透過性を有する。
基材2はポリエステルから形成されることが好ましい。ポリエステルフィルムのうち、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレートの2軸延伸フィルムは、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性等を有するため、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、ラミネート用フィルム、ディスプレイ等の表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として好適である。特に、ディスプレイ用途に関しては液晶表示装置の部材であるプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや、テレビの反射防止部材1のベースフィルム、プラズマテレビの前面光学フィルターに用いられる反射防止部材1、近赤外線カットフィルム、電磁波シールドフィルムのベースフィルム等として好適である。
ポリエステルとして、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール成分とが反応することで生成する芳香族ポリエステルが好ましく、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレートなどが好ましい。またポリエステルは、前記例示した複数の成分等の共重合ポリエステルであってもよい。
基材2は有機または無機の粒子を含有してもよい。この場合、基材2の巻き取り性、搬送性等が向上する。このような粒子として、炭酸カルシウム粒子、酸化カルシウム粒子、酸化アルミニウム粒子、カオリン、酸化珪素粒子、酸化亜鉛粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が挙げられる。基材2は、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、他の樹脂等も、透明性を損なわない範囲で含有してもよい。
基材2のヘイズは3%以下であることが好ましく、この場合、反射防止部材1を通した映像等の視認性が向上し、光学的用途のフィルムとして特に適したものとなる。ヘイズが1.5%以下であれば更に好ましい。
基材2の厚みは特に制限されないが、25μm以上200μm以下の範囲であることが好ましい。特に基材2の厚みが25μm以上100μm以下であると、反射防止部材1の薄型化、軽量化が可能となり、また反射防止部材1の表裏における干渉の発生が抑制され、更に基材2が加熱される際の熱収縮が抑制されて基材2の熱収縮による加工性の悪化等の不具合が抑制される。
基材2の第一の主面上に第四の層(易接着層、図示せず)が積層していることも好ましい。すなわち、基材2と第一の層3との間に第四の層が介在していることも好ましい。第四の層は、反射防止部材1の材料である基材2の単独膜がロール状に巻き回されるなどして重ねられる場合のブロッキングの発生を抑制したり滑性を向上したりするために形成される。更に第四の層は、基材2と第一の層3との間の接着性向上のためにも利用され得る。
第四の層の材質に制限はないが、特に第四の層がポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等から形成されることが好ましい。
第四の層の表面での界面反射によって反射防止部材1の反射率が増大することを抑制するためには、第四の層の屈折率が、基材2の屈折率及び第一の層3の屈折率に近いことが望ましく、特に1.58〜1.75の範囲であることが好ましい。第四の層の光学膜厚が120〜160nmの範囲であることが好ましい。この場合、基材2と第一の層3との間の高い密着性を確保しつつ、第四の層が存在することによる反射率の増大や干渉ムラの発生が抑制される。
基材2の、第一の主面とは反対側の第二の主面上には、第五の層(アンチブロッキング層、図示せず)が積層していることが好ましい。第五の層は、反射防止部材1がロール状に巻き回されるなどして重ねられる場合のブロッキングの発生を抑制したり滑性を向上したりするために形成される。更に第五の層は、反射防止部材1が何らかの部材(例えば粘着性の層やアクリル系樹脂製の膜など)に接着されて固定される場合の接着性向上のためにも利用され得る。
第五の層の表面での界面反射によって反射防止部材1の反射率が増大することを抑制するためには、第五の層の屈折率が、基材2の屈折率と、反射防止部材1が固定される部材の屈折率との間の値であることが望ましく、更に第五の層の光学膜厚が110〜170nmであることが好ましい。このためには、第五の層の屈折率は1.45〜1.65であることが好ましい。例えば、基材2が屈折率1.69のPETフィルムであり、反射防止部材1が屈折率1.45〜1.65の粘着層や屈折率1.45〜1.65のアクリル系樹脂膜に接着される場合には、第五の層の屈折率が1.62、光学膜厚が140nmであることが好ましい。
第五の層の材質に制限はないが、アクリレートまたはウレタンアクリレートを95質量%〜80質量%の範囲で含有し、更に平均粒子径250nmのシリカ粒子を5質量%〜20質量%の範囲で含有することが好ましい。
第一の層3は、基材2よりも高い硬度を有することが好ましい。これにより反射防止部材1の機械的強度が向上する。第一の層3の鉛筆硬度はH以上であることが好ましく、2H以上であれば更に好ましい。
第一の層3の屈折率は、1.50以上1.60以下である必要がある。第一の層3の屈折率がこのような範囲であることで、第一の層3と基材2との間、或いは第一の層3と第四の層との間における干渉ムラの発生が抑制される。
第一の層3の厚みは、特に制限されないが、1〜2μmの範囲、或いはそれ以上の厚みであれば、反射防止部材1の機械的強度が充分に向上する。
第一の層3は、反応性硬化型樹脂組成物から形成されることが好ましく、例えば熱硬化型樹脂組成物と電離放射線硬化型樹脂組成物の少なくとも一方から形成されることが好ましい。
熱硬化型樹脂組成物は、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂と共に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、溶剤等が使用されてもよい。このような熱硬化型樹脂組成物が例えば基材2上或いは第五の層上に塗布され、続いてこの熱硬化型樹脂組成物が加熱されて熱硬化することで、第一の層3が形成され得る。
電離放射線硬化型樹脂組成物は、アクリレート系の官能基を有する樹脂を含むことが好ましい。アクリレート系の官能基を有する樹脂としては、例えば比較的低分子量の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマーなどが挙げられる。前記の多官能化合物としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等が挙げられる。電離放射線硬化型樹脂組成物は更に反応性希釈剤を含有することも好ましい。反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの多官能モノマーが挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂組成物が紫外線硬化型樹脂組成物などの光硬化型樹脂組成物である場合には、光硬化型樹脂組成物が光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類などが挙げられる。光硬化型樹脂組成物が光重合開始剤に加えて、或いは光重合開始剤に代えて、光増感剤を含有してもよい。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、チオキサントンなどが挙げられる。このような光硬化型樹脂組成物が例えば基材2上或いは第五の層上に塗布され、続いてこの光硬化型樹脂組成物に紫外線などの光が照射されて光硬化することで、第一の層3が形成され得る。
第一の層3の屈折率は、第一の層3を形成するための樹脂組成物の組成によって容易に調整され得る。第一の層3が屈折率調整用の粒子を含有すると共にその割合が調整されることで、第一の層3の屈折率が調整されることも好ましい。
屈折率調整用の粒子の粒径は十分に小さいこと、すなわち屈折率調整用の粒子がいわゆる超微粒子であるが好ましく、この場合、第一の層3の光透過性が十分に維持されるようになる。屈折率調整用の粒子の粒径は特に、0.5nm〜200nmの範囲であることが好ましい。この屈折率調整用の粒子の粒径とは、粒子の電子顕微鏡写真画像から算出される投影面積と同一の面積を有する円(面積相当円)の径のことである。
屈折率調整用の粒子は、比較的屈折率の高い粒子であることが好ましく、特に屈折率が1.6以上の粒子であることが好ましい。この粒子は、金属や金属酸化物の粒子であることが好ましい。
第一の層3中の屈折率調整用の粒子の含有量は、第一の層3の屈折率が適切な値となるように適宜調整されるが、特に第一の層3中の屈折率調整用の粒子の割合が5〜70体積%となるように調整されることが好ましい。
屈折率調整用の粒子の具体例としては、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる一種あるいは二種以上の酸化物を含有する粒子が挙げられる。酸化物の具体例としては、ZnO(屈折率1.90)、TiO2(屈折率2.3〜2.7)、CeO2(屈折率1.95)、Sb2O5(屈折率1.71)、SnO2、ITO(屈折率1.95)、Y2O3(屈折率1.87)、La2O3(屈折率1.95)、ZrO2(屈折率2.05)、Al2O3(屈折率1.63)等が挙げられる。
第一の層3には帯電防止性能が付与されていることも好ましい。この場合、反射防止部材1の帯電が抑制され、また反射防止部材1へ埃の付着が抑制される。そのためには、第一の層3が導電性粒子を含有することが好ましい。導電性粒子は同時に屈折率調整用の粒子としても機能してもよい。導電性粒子はナノ粒子であることが好ましく、特に粒径が0.5〜200nmの超微粒子であることが好ましい。導電性粒子の粒径も面積相当円の径である。導電性粒子の材質としては導電性を有する適宜の金属、金属酸化物等が挙げられ、具体的にはインジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる一種又は二種以上の金属の酸化物が挙げられ、更に具体的には酸化インジウム(ITO)、酸化錫(SnO2)、アンチモン/錫酸化物(ATO)、鉛/チタン酸化物(PTO)、アンチモン酸化物(Sb2O5)等が挙げられる。
第一の層3に十分な帯電防止性能が付与されるためには、導電性粒子を含有することで第一の層3のシート抵抗が1015Ω/□以下となることが好ましい。第一の層3のシート抵抗は小さいほど帯電防止性が向上するので、下限は特に設定されないが、シート抵抗を小さくするのには限界があるため、第一の層3のシート抵抗の実質的な下限は106Ω/□である。
第一の層3中の導電性粒子の含有量は、第一の層3の帯電防止性能が適切な程度となるように適宜調整されるが、特に第一の層3中の導電性粒子の割合が5〜70質量%となるように調整されることが好ましい。
第二の層4の屈折率は1.62以上1.69以下の範囲であり、厚み(実膜厚)は65nm以上89nm以下の範囲である。
第二の層4の屈折率及び厚みが前記のような範囲であることで反射防止部材1の光反射性が抑制され、且つこの反射防止部材1からの反射光の色が適度な色目に調整される。この第二の層4の屈折率が前記範囲より大きくなると反射防止部材1の光反射性は更に低減するものの、反射光の色が強くなりすぎてしまい、好ましくない。また、第二の層4の厚みが前記範囲より大きくなると、反射防止部材1からの反射光の色が青みを帯びるようになってしまい、この厚みがさらに大きくなると反射防止部材1の反射率が著しく増大してしまうため、好ましくない。また、第二の層4の厚みが前記範囲より小さくなると反射色が強い赤色から黄色みをおびた色になってしまい、また反射防止部材1の反射率が著しく増大してしまうため、好ましくない。
第二の層4は、反応性硬化型樹脂組成物から形成されることが好ましく、例えば熱硬化型樹脂組成物と電離放射線硬化型樹脂組成物の少なくとも一方から形成されることが好ましい。
熱硬化型樹脂組成物は、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂と共に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、溶剤等が使用されてもよい。このような熱硬化型樹脂組成物が例えば基材2上或いは第五の層上に塗布され、続いてこの熱硬化型樹脂組成物が加熱されて熱硬化することで、第一の層3が形成され得る。
電離放射線硬化型樹脂組成物は、アクリレート系の官能基を有する樹脂を含むことが好ましい。アクリレート系の官能基を有する樹脂としては、例えば比較的低分子量の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマーなどが挙げられる。前記の多官能化合物としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等が挙げられる。電離放射線硬化型樹脂組成物は更に反応性希釈剤を含有することも好ましい。反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの多官能モノマーが挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂組成物が紫外線硬化型樹脂組成物などの光硬化型樹脂組成物である場合には、光硬化型樹脂組成物が光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類などが挙げられる。光硬化型樹脂組成物が光重合開始剤に加えて、或いは光重合開始剤に代えて、光増感剤を含有してもよい。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、チオキサントンなどが挙げられる。このような光硬化型樹脂組成物が例えば基材2上或いは第五の層上に塗布され、続いてこの光硬化型樹脂組成物に紫外線などの光が照射されて光硬化することで、第一の層3が形成され得る。
第二の層4の屈折率は、第一の層3を形成するための樹脂組成物の組成によって容易に調整され得る。第一の層3が屈折率調整用の粒子を含有すると共にその割合が調整されることで、第二の層4の屈折率が調整されることも好ましい。
屈折率調整用の粒子の粒径は十分に小さいこと、すなわち屈折率調整用の粒子がいわゆる超微粒子であるが好ましく、この場合、第二の層4の光透過性が十分に維持されるようになる。屈折率調整用の粒子の粒径は特に、0.5nm〜200nmの範囲であることが好ましい。この屈折率調整用の粒子の粒径とは、粒子の電子顕微鏡写真画像から算出される投影面積と同一の面積を有する円(面積相当円)の径のことである。
屈折率調整用の粒子は、比較的屈折率の高い粒子であることが好ましく、特に屈折率が1.6以上の粒子であることが好ましい。この粒子は、金属や金属酸化物の粒子であることが好ましい。
第二の層4中の屈折率調整用の粒子の含有量は、第二の層4の屈折率が適切な値となるように適宜調整されるが、特に第二の層4中の屈折率調整用の粒子の割合が5〜70体積%となるように調整されることが好ましい。
屈折率調整用の粒子の具体例としては、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる一種あるいは二種以上の酸化物を含有する粒子が挙げられる。酸化物の具体例としては、ZnO(屈折率1.90)、TiO2(屈折率2.3〜2.7)、CeO2(屈折率1.95)、Sb2O5(屈折率1.71)、SnO2、ITO(屈折率1.95)、Y2O3(屈折率1.87)、La2O3(屈折率1.95)、ZrO2(屈折率2.05)、Al2O3(屈折率1.63)等が挙げられる。
第二の層4には帯電防止性能が付与されていることも好ましい。この場合、反射防止部材1の帯電が抑制され、また反射防止部材1へ埃の付着が抑制される。そのためには、第二の層4が導電性粒子を含有することが好ましい。導電性粒子は同時に屈折率調整用の粒子としても機能してもよい。導電性粒子はナノ粒子であることが好ましく、特に粒径が0.5〜200nmの超微粒子であることが好ましい。導電性粒子の粒径も面積相当円の径である。導電性粒子の材質としては導電性を有する適宜の金属、金属酸化物等が挙げられ、具体的にはインジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる一種又は二種以上の金属の酸化物が挙げられ、更に具体的には酸化インジウム(ITO)、酸化錫(SnO2)、アンチモン/錫酸化物(ATO)、鉛/チタン酸化物(PTO)、アンチモン酸化物(Sb2O5)等が挙げられる。
第二の層4に十分な帯電防止性能が付与されるためには、導電性粒子を含有することで第二の層4のシート抵抗が1015Ω/□以下となることが好ましい。第二の層4のシート抵抗は小さいほど帯電防止性が向上するので、下限は特に設定されないが、シート抵抗を小さくするのには限界があるため、第二の層4のシート抵抗の実質的な下限は106Ω/□である。
第二の層4の導電性粒子の含有量は、第二の層4の帯電防止性能が適切な程度となるように適宜調整されるが、特に第二の層4中の導電性粒子の割合が5〜70質量%となるように調整されることが好ましい。
第二の層4は、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる一種あるいは二種以上の酸化物を含有する粒子と共に、メタクリル官能性シランと、アクリル官能性シランとのうち少なくとも一方を含有することも好ましい。この場合、第二の層4と第三の層5との密着性が向上する。メタクリル官能性シランとしては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。アクリル官能性シランとしては3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
第二の層4中のメタクリル官能性シランとアクリル官能性シランの含有量は特に制限されないが、第二の層4中のメタクリル官能性シランとアクリル官能性シランの総量の割合が5〜30質量%の範囲であることが好ましい。前記割合が5質量%以上であると第二の層4と第三の層5との密着性が十分に高くなり、また前記割合が30質量%以下であると第二の層4中の架橋密度が十分に向上して第二の層4の硬度が十分に高くなる。
第二の層4の、第一の層3とは反対側の主面には、第三の層5が形成される前に表面処理が施されることが好ましい。この場合、第二の層4と第三の層5との間の濡れ性、密着性等の向上が可能となる。表面処理の方法としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、フレーム処理などの物理的表面処理、カップリング剤、酸、アルカリによる化学的表面処理などが挙げられる。
第三の層5の屈折率は、基材2、第一の層3及び第二の層4のいずれの屈折率よりも低い。第三の層5の屈折率は1.30以上1.45以下の範囲であり、その厚み(実膜厚)は50nm以上91nm以下の範囲である。
第三の層5の屈折率が前記のような範囲であることで、第一の層3と第二の層4との干渉作用により反射防止部材1の反射率が低減し、更に第三の層5の厚みが前記のような範囲にあることで、反射防止部材1からの反射光の色が適度に調整される。
第三の層5は、例えばバインダー材料及び必要に応じて使用される屈折率調整用の粒子を含有する組成物から形成される。バインダー材料と屈折率調整用の粒子とが併用される場合、両者の組み合わせ、配合比等により第三の層5の屈折率が適宜調整される。
バインダー材料としては、シリコンアルコキシド系樹脂、飽和炭化水素及びポリエーテルの少なくともいずれかを主鎖とするポリマー(例えばUV硬化型樹脂組成物、熱硬化型樹脂組成物等)、ポリマー鎖中にフッ素原子を含む単位を含む樹脂などが挙げられる。
シリコンアルコキシド系樹脂としては、RmSi(OR´)nで表されるシリコンアルコキシド(R、R´は炭素数1〜10のアルキル基、m+n=4、m及びnはそれぞれ整数。)の部分加水分解縮合物であるオリゴマー及びポリマーが、挙げられる。シリコンアルコキシドとしては、具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が例示される。
バインダー材料として、熱又は電離放射線によって反応架橋する複数の基(重合性二重結合基等)を有する反応性有機珪素化合物が用いられてもよい。この有機珪素化合物の分子量は5000以下であることが好ましい。このような反応性有機珪素化合物としては、片末端ビニル官能性ポリシラン、両末端ビニル官能性ポリシラン、片末端ビニル官能ポリシロキサン、両末端ビニル官能性ポリシロキサン、並びにこれらの化合物を反応させて得られるビニル官能性ポリシラン及びビニル官能性ポリシロキサン等が挙げられる。これら以外にも、反応性有機珪素化合物としては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン化合物が挙げられる。
屈折率調整用の粒子としては、比較的低屈折率の粒子が使用されることが好ましい。屈折率調整用の粒子の材質としては、シリカ、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等が挙げられる。屈折率調整用の粒子が中空粒子を含むことが好ましい。中空粒子とは外殻によって包囲された空洞を有する粒子である。中空粒子の屈折率は1.20〜1.45であることが好ましい。
屈折率調整用の粒子には、必要に応じて、バインダー材料との濡れ性を向上するための表面処理が施されていることが好ましい。
屈折率調整用の粒子の粒径は十分に小さいこと、すなわち屈折率調整用の粒子がいわゆる超微粒子であることが好ましく、この場合、第三の層5の光透過性が十分に維持されるようになる。屈折率調整用の粒子の粒径は特に、0.5nm〜200nmの範囲であることが好ましい。この屈折率調整用の粒子の粒径とは、粒子の電子顕微鏡写真画像から算出される投影面積と同一の面積を有する円(面積相当円)の径のことである。
第三の層5中の屈折率調整用の粒子の含有量は、第三の層5の屈折率の値が適切な値となるように適宜調整されるが、特に第三の層5中の屈折率調整用の粒子の割合が20〜99体積%となるように調整されることが好ましい。
組成物は、更に撥水、撥油性材料を含有してもよい。この場合、第三の層5に防汚性が付与され得る。撥水、撥油性材料としては、一般的なワックス系の材料等が使用され得る。特に含フッ素化合物が使用されると、第三の層5の汚れ、指紋等の除去性が特に向上すると共に、第三の層5の表面の摩擦抵抗が低減して第三の層5の耐摩耗性が向上する。
第三の層5は、特にバインダー材料として下記[化2]に示されるテトラメトキシシラン部分加水分解縮合物を含有すると共に、屈折率調整用粒子として中空シリカ粒子を含有する組成物から形成されることが好ましい。この場合、第三の層5の低屈折率化が特に容易になると共に、第三の層5とアクリル系粘着剤との密着性が向上する。
(nは10〜150の範囲の整数)
第三の層5は、上記のような組成物が第二の層4の上に塗布され、更にこの組成物がバインダー材料の性状に応じて加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等の処理が施されることで硬化することにより、形成され得る。
本実施形態による反射防止部材1では、第一の層3、第二の層4、及び第三の層5でそれぞれ反射した光が互いに干渉して打ち消しあうことで、反射防止部材1での全体的な反射光の強度が著しく低減する。
また、物質の光反射率は波長依存性をもっており、一般的には反射防止部材の場合には人間の目の感度が最も高い550nm付近の光の反射率が低いことが好ましいとされる。しかし、本実施形態では反射防止部材1では、第一の層3、第二の層4、及び第三の層5の屈折率が調整されることで、400〜500nmの波長域の反射光が干渉により打ち消され、このためこの波長域の反射率が低くなる。このため反射防止部材1からの反射光は黄色みを帯び、この反射光が、別の光の色を補正する作用を発揮する。前記のように本実施形態では波長依存性の適当な範囲に調整されることで適度な色調整機能が発現する。
従って、本実施形態では、反射防止部材1は非常に高い光透過性を発揮すると共に、この反射防止部材1の反射光が黄色みを帯びていることを利用して画像表示機器内の光学的部材の色を補正し、これによりタッチパネル、液晶ディスプレイなどの画像表示機器による映像や画像の視認性を向上することができる。
例えば画像表示機器にはITO電極等の透明電極がしばしば使用されており、このような透明電極で白色光が反射されると、反射光の色は僅かに青みを帯びることがある。しかし、透明電極と本実施形態に係る反射防止部材1とが併用されると、反射防止部材1での反射光が黄色みを帯びるため、この反射防止部材1での反射光によって、透明電極での反射光の色を補正し得る。
また、反射防止部材1を構成し得る光学的要素や、反射防止部材1と共に用いられる光学的要素には、透過色が黄色を有しているものが多い。例えばPET、PEN、ポリカーボネート、TAC等のプラスチックはそれ自体が僅かに黄色みを帯びており、またハードコート層の形成などに用いられる紫外線硬化型のアクリル樹脂、ウレタン樹脂等には黄色みを帯びた紫外線吸収開始剤がしばしば配合される。しかし、本実施形態に係る反射防止部材1は上記のような構成を有する第一の層3、第二の層4、及び第三の層5を備えるため、反射防止部材1の青色光の透過率が上がり、このため前記のような光学的要素の黄色の透過色が打ち消される。従って反射防止部材1の透過色は黄色みが抑えられ無色に近い色目になる。
本実施形態による反射防止部材1に、CIEが規定するC光源からの光が入射する場合には、反射防止部材1を透過する透過光の色(透過色)の、CIE 1976L*a*b*色空間によるa*が−0.50以上0.00以下の範囲、b*が−0.50以上0.50以下の範囲となることが好ましい。この場合、反射防止部材1を透過する透過光の色が無色に近い色となる。
更に、本実施形態による反射防止部材1に、CIEが規定する標準C光源からの光が、第三の層5側から入射する場合には、反射防止部材1からの反射光の色(反射色)の、CIE 1976L*a*b*色空間による0.00以上10.0以下の範囲、b*が3.00以上13.00以下の範囲となることが好ましい。この場合、反射防止部材1からの反射色が、ITO電極による青みを帯びた反射色が目立たなくなるための最適な色となる。
上記のような透過色及び反射色を実現するためには、反射防止部材1の波長380nm〜500nmの波長域の反射域が、波長500nm〜800nmの波長域の反射率に対して相対的に低下するように、反射防止部材1を構成することが好ましい。
本実施形態による反射防止部材1の、JIS K7361−1による全光線透過率が94.5%以上であること、JIS K7136によるヘイズが0.9%以下であること、及び最小反射率が0.5%以下であることも、好ましい。この場合、反射防止部材1は優れた光透過性、透明性、低反射性を発揮し、反射防止のための優れた性能を発揮する。最小反射率とは、反射防止部材1の380〜800nmの波長域での単色光の反射率のうち、反射率が最小になる光の波長(最小反射率波長)での反射率のことをいう。本実施形態によるではこのような高性能の反射防止部材1を得ることが可能である。第一の層3、第二の層4、及び第三の層5の各々の屈折率及び厚みが、上記の好ましい範囲に設計されることで、前記のような高い全光線透過率が実現され得る。また、ヘイズが0.9%以下であることを実現するためには、第二の層4が無機粒子を含む場合のこの無機粒子の粒子径、及び第三の層5が無機粒子を含む場合のこの無機粒子の粒子径が、0.5μm以下であることが好ましく、並びに基材1のヘイズが1.0%以下であることが好ましい。尚、基材1のヘイズは、この基材1が反射防止部材1を構成している状態で1.0%以下であればよい。例えば基材1の表面上にオリゴマー粒子が付着しているなどの理由で基材1単独ではそのヘイズが1.0%程度或いはそれよりも高くなっても、この基材1の表面上に第一の層3が形成されることで基材1のヘイズが1.0%以下、例えば0.6%程度まで低くなるのであれば、好ましい。また第一の層3、第二の層4、及び第三の層5の各々の屈折率及び厚みが、上記の好ましい範囲に設計されることで、前記のような低い最小反射率が実現され得る。
本実施形態による反射防止部材1の最外面(最外層が第三の層5であれば第三の層5の外面)の、アクリル粘着剤に対するピール強度が3.0N/20mm以上であることも好ましい。この場合、光学要素の接着用途に広く利用されているアクリル粘着剤を備える粘着テープなどを使用して、反射防止部材1を液晶表示装置などの適宜の光学的部材に対して強固に固定することが可能となる。このように反射防止部材1の最外面の、アクリル粘着剤に対するピール強度を向上するためには、特に第三の層5がポリシロキサン構造を有し、この第三の層5の表面にフッ素樹脂、フッ素含有官能基、シリコーンオイル等が存在しないことが好ましい。
本実施形態による反射防止部材1は、上述のとおり、画像表示機器における反射防止用途に好ましく適用され得る。本実施形態による反射防止部材1を備える画像表示機器6の例の概略構成を、図2に示す。
この画像表示機器6は、液晶表示装置などの画像表示装置7とタッチパネル8とを備えるタッチパネル付き画像表示装置である。図2において、タッチパネル8はITO透明電極9と透明粘着シート層10(OCA層)とが積層した構成を有しているが、これはタッチパネル8の構造を概略的に示したものである。タッチパネル8の最外層にはガラス板や硬質樹脂フィルムなどからなる保護層11が形成されている。
この画像表示機器6におけるタッチパネル8の画像表示装置7と対向する面上に本実施形態による反射防止部材1が固定され、この反射防止部材1の外面と画像表示装置7とが粘着テープ12により固定されている。反射防止部材1は、基材2の第一の層3とは反対側の主面がタッチパネル8に対向し、第三の層5の第二の層4とは反対側の主面が画像表示装置7と対向するように、配置される。
このように構成される画像表示機器6では、画像表示装置7からタッチパネル8へ向けて照射される光は、反射防止部材1の作用によってタッチパネル8内へ効率良く入射し、タッチパネル8で反射する光が少なくなる。このため、画像表示装置7で表示される画像や映像が、タッチパネル8を通して外部から明瞭に視認されるようになる。
更に、画像表示装置7からタッチパネル8へ向けて照射される光の一部が、タッチパネル8内のITO透明電極9で反射され、その反射光は青みを帯びた色となる。しかし、画像表示装置7からタッチパネル8へ向けて照射される光のうちの別の一部は反射防止部材1で反射され、その反射光は黄色みを帯びた色となり、このため画像表示装置7から外部へ出射する光の色が補正される。このため、画像表示機器6で表示される画像等の視認性が高くなる。
また、反射防止部材1による反射光は、反射防止部材1やこれと同時に用いられる光学的要素の黄色みがかった色も補正することができ、これによっても、画像表示機器6で表示される画像等の視認性が高くなる。
また、外部から画像表示機器6へ向けて白色光などの光が照射され、この光が画像表示機器6内で反射される場合にも、画像表示機器6で表示される画像等の視認性が高くなる。この場合、画像表示機器6で表示される画像等の視認性は、反射防止部材1における画像表示装置7と対向する面での光の反射によって大きく影響を受けるため、上記の場合と同様の機序によって画像表示装置7から外部へ出射する光の色が補正され、これにより画像表示機器6で表示される画像等の視認性が高くなる。
[実施例1]
基材としてポリエステルフィルム(厚み50μmのPETフィルム、東レ株式会社製、品番U48)を準備した。
このポリエステルフィルムの易接着層が形成されている面上に、第一の層としてハードコート層を形成した。ハードコート層の形成にあたっては、まずウレタンアクリレート(中国塗料株式会社製、品番LK105)90質量部とメタクリロキシシラン(信越化学工業株式会社製、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、品番KBM−503)10質量部とを含む組成物を調製した。この組成物をポリエステルフィルム上にワイヤーバーコーターで塗布した。続いて、この組成物を80℃、3分間乾燥機で乾燥させた後、高圧水銀灯によって照度500mJ/cm2の光を照射することで硬化させ、これによりハードコート層を形成した。このハードコート層の厚みは2000nm、屈折率は1.58であった。
続いて、ハードコート層の上に第二の層として高屈折率層を形成した。高屈折率層の形成にあたっては、ZrO2粒子(粒径20nm、第一稀元素化学工業株式会社製)30質量部、5官能アクリレート(新中村化学製、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、品番A−9550)55質量部、メタクリロキシシラン(信越化学工業株式会社製、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、品番KBM−503)9質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ製、イルガキュア184)5重量部、シリコーン樹脂(三菱化学株式会社製、品番MS56S)1質量部を含む組成物を調製した。この組成物をハードコート層上にワイヤーバーコーターで塗布した。続いて、この組成物を80℃、3分間乾燥機で乾燥させた後、高圧水銀灯によって照度500mJ/cm2の光を照射することで硬化させ、これにより高屈折率層を形成した。この高屈折率層の厚みは73nm、屈折率は1.64であった。
続いて、高屈折率層の上に第三の層として低屈折率層を形成した。低屈折率層の形成にあたっては、中空シリカ粒子(日揮触媒化成工業社製、粒径40nm、IPA分散ゾル)60質量部、シリコーン樹脂(式(1)に示す構造を有し式中のnの値が20〜100の樹脂、三菱化学株式会社製、品番MS51)40質量部を含む組成物を調製した。この組成物を高屈折率層上にワイヤーバーコーターで塗布した。続いて、この組成物を120℃、2分間乾燥機で乾燥することで、低屈折率層を形成した。この低屈折率層の厚みは83nm、屈折率は1.39であった。
以上により、基材、ハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層が、この順番に積層している構造を有する反射防止部材を得た。
[実施例2]
実施例1において、低屈折率層の厚みを72nmに変更した。それ以外は実施例1と同じ方法及び同じ条件により、基材、ハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層が、この順番に積層している構造を有する反射防止部材を得た。
[実施例3]
実施例1において、低屈折率層を次のように形成した。
中空シリカ粒子(粒径40nm、日揮触媒化成工業社製、IPA分散ゾル)60質量部、フッ素樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名フルオロシランTSL8233)30質量部、三菱化学製、MS51)10質量部を含む組成物を調製した。この組成物をハードコート層上にワイヤーバーコーターで塗布した。続いて、この組成物を120℃、2分間乾燥機で乾燥することで、低屈折率層を形成した。この低屈折率層の厚みは83nm、屈折率は1.39であった。
それ以外は実施例1と同じ方法及び同じ条件により、基材、ハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層が、この順番に積層している構造を有する反射防止部材を得た。
[実施例4]
実施例1において、ハードコート層を次のようにして形成した。
まずウレタンアクリレート(中国塗料株式会社製、品番LK105)80質量部とメタクリロキシシラン(信越化学工業株式会社製、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、品番KBM−503)16質量部、ポリメトキシシラン(三菱化学株式会社製、品番MS56)4重量部を含む組成物を調製した。この組成物をポリエステルフィルム上にワイヤーバーコーターで塗布した。続いて、この組成物を80℃、3分間乾燥機で乾燥させた後、高圧水銀灯によって照度500mJ/cm2の光を照射することで硬化させ、これによりハードコート層を形成した。このハードコート層の厚みは2000nm、屈折率は1.54であった。
[実施例5]
実施例1において、高屈折率層を次のように形成した。
ZrO2粒子(粒径20nm、第一稀元素化学工業株式会社製)50重量部、5官能アクリレート(新中村化学製、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、品番A−9550)35質量部、メタクリロキシシラン(信越化学工業株式会社製、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、品番KBM−503)9質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ製、イルガキュア184)5重量部、シリコーン樹脂(三菱化学株式会社製、品番MS56S)1質量部を含む組成物を調製した。この組成物をハードコート層上にワイヤーバーコーターで塗布した。続いて、この組成物を80℃、3分間乾燥機で乾燥させた後、高圧水銀灯によって照度500mJ/cm2の光を照射することで硬化させ、これにより高屈折率層を形成した。この高屈折率層の厚みは71nm、屈折率は1.68であった。
更に、実施例1において、低屈折率層を次のように形成した。
中空シリカ粒子(粒径40nm、日揮触媒化成工業社製、IPA分散ゾル)20質量部、ポリメトキシシラン(三菱化学製、MS51)80質量部を含む組成物を調製した。この組成物をハードコート層上にワイヤーバーコーターで塗布した。続いて、この組成物を120℃、2分間乾燥機で乾燥することで、低屈折率層を形成した。この低屈折率層の厚みは83nm、屈折率は1.45であった。
それ以外は実施例1と同じ方法及び同じ条件により、基材、ハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層が、この順番に積層している構造を有する反射防止部材を得た。
[比較例1]
実施例1において、低屈折率層の厚みを92nmに変更した。それ以外は実施例1と同じ方法及び同じ条件により、基材、ハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層が、この順番に積層している構造を有する反射防止部材を得た。
[比較例2]
実施例1において、高屈折率層の厚みを64nmに変更した。それ以外は実施例1と同じ方法及び同じ条件により、基材、ハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層が、この順番に積層している構造を有する反射防止部材を得た。
[比較例3]
実施例1において、高屈折率層の厚みを90nmに変更した。それ以外は実施例1と同じ方法及び同じ条件により、基材、ハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層が、この順番に積層している構造を有する反射防止部材を得た。
[比較例4]
実施例1において、高屈折率層を次のように形成した。
ZrO2粒子(粒径20nm、第一稀元素化学工業株式会社製)60質量部、5官能アクリレート(新中村化学製、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、A−9550)25質量部、メタクリロキシシラン(信越化学工業株式会社製、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、KBM−503)9質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ製、イルガキュア184)5重量部、シリコーン樹脂(三菱化学製、MS56S)1質量部を含む組成物を調製した。この組成物をハードコート層上にワイヤーバーコーターで塗布した。続いて、この組成物を80℃、3分間乾燥機で乾燥させた後、高圧水銀灯によって照度500mJ/cm2の光を照射することで、高屈折率層を形成した。この高屈折率層の厚みは73nm、屈折率は1.70であった。
それ以外は実施例1と同じ方法及び同じ条件により、基材、ハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層が、この順番に積層している構造を有する反射防止部材を得た。
[比較例5]
実施例1において、高屈折率層を次のように形成した。
ZrO2粒子(粒径20nm、第一稀元素化学工業株式会社製)20質量部、5官能アクリレート(新中村化学製、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、品番A−9550)65質量部、メタクリロキシシラン(信越化学工業株式会社製、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、品番KBM−503)9質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名イルガキュア184)5重量部、シリコーン樹脂(三菱化学製、品番MS56S)1質量部を含む組成物を調製した。この組成物をハードコート層上にワイヤーバーコーターで塗布した。続いて、この組成物を80℃、3分間乾燥機で乾燥させた後、高圧水銀灯によって照度500mJ/cm2の光を照射することで、高屈折率層を形成した。この高屈折率層の厚みは73nm、屈折率は1.61であった。
それ以外は実施例1と同じ方法及び同じ条件により、基材、ハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層が、この順番に積層している構造を有する反射防止部材を得た。
[比較例6]
実施例1において、ハードコート層の厚みを1900nmとした。更に、高屈折率層を形成せず、ハードコート層の上には低屈折率層を形成した。それ以外は実施例1と同じ方法及び同じ条件により、基材、ハードコート層、及び低屈折率層が、この順番に積層している構造を有する反射防止部材を得た。
[ヘイズ測定]
各反射防止部材のヘイズを、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、型番NDH2000)を使用して測定した。
[最小反射率測定]
分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番U−4100)を使用して、各反射防止部材の380〜800nmの波長域での光の反射率を測定した。これに基づいて反射率が最小になる光の波長(最小反射率波長)、及び最小反射率波長での光の反射率を導出した。
[反射色評価]
各反射防止部材に、CIEが規定する標準C光源からの光を低屈折率層側から入射した。この場合の反射防止部材からの10°視野、C光源での反射光の色のCIE 1976L*a*b*色空間によるL*、a*、及びb*を、コニカミノルタ株式会社製分光測色計、型番CM3600Dで測定した。
続いて、各反射防止部材の基材上にITOフィルム(ITO厚み20nm、基材PET厚み188μm)をアクリル系粘着剤により貼り合わせた。続いて、前記と同じ方法により、反射光の色のCIE 1976L*a*b*色空間によるb*を測定した。
[透過色評価]
各反射防止部材に、CIEが規定する標準C光源からの光を低屈折率層側から入射し、反射防止部材を透過した透過光の色のCIE 1976L*a*b*色空間によるL*、a*、及びb*をコニカミノルタ株式会社製分光測色計、型番CM3600Dで測定した。
[平均視感反射率]
各反射防止部材の裏面を黒塗りした上で、測定装置として分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番U−4100)を用い、光源としてC光源を用い、JIS R3106に基づいて5°の正反射での分光反射率を測定した。これにより得られた結果から、平均視感反射率を導出した。
[塗膜密着性]
基材2、第一の層3、第二の層4、及び第三の層5の界面の密着性を測定した。測定にあたっては、JIS D0202:1988に準拠した碁盤目テープ剥離試験を行った。粘着テープとしてニチバン株式会社製のセロハンテープCT24を用いた。この試験の結果、100マスの内、剥離しないマス目の数で密着性を評価した。
[テープピール強度]
各反射防止部材の低屈折率層にアクリル粘着剤を備える両面粘着テープ(住友スリーエム株式会社製TU−10)を貼着し、これを引き剥がす際の90°ピール強度(剥離速度50mm/min)を測定した。
以上の結果を表1に示す。