JP7238657B2 - 時計用部品、時計用ムーブメントおよび時計 - Google Patents
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Description
また、時計用部品においては、時計の外部に露出して用いられる部品だけでなく、時計の内部に内蔵される部品にも、装飾性が求められるようになっている。
例えば、特許文献1には、シリコン系基板を備えるマイクロメカニカル時計部品の装飾表面を形成する方法が開示されている。
特許文献1に記載の方法は、形成されることになる装飾表面に対応するシリコン系基板の領域全体に亘って、シリコン系基板の表面上に細孔を形成する少なくとも1つのステップを含んでいる。前記細孔は、マイクロメカニカル時計部品の外側表面において外向きに開口するように設計されている。
時計用部品とは、時計の外部に露出して用いられる時計用外装部品のほか、時計用内装部品、および時計の構成部品を固定するためのねじを含む概念である。
時計用外装部品としては、例えば、時計ケース、時計バンド、文字盤、時計用針、ベゼル、りゅうず、ボタン、カバーガラス、ガラス縁、ダイヤルリング、見切板、およびパッキン等が挙げられる。時計ケースとしては、例えば、胴、裏蓋、並びに、胴および裏蓋が一体化されたワンピースケース等が挙げられる。時計バンドには、バンド中留、バンドの着脱に用いられる部品、およびバングルの着脱に用いられる部品が含まれる。ベゼルとしては、例えば、回転ベゼル等が挙げられる。りゅうずとしては、例えば、ネジロック式りゅうず等が挙げられる。
時計用内装部品としては、例えば、香箱車、番車、がんぎ車、アンクル、てんぷ、およびぜんまい等が挙げられる。
中でも、時計用部品は、装飾性をより発現する観点から、時計用内装部品であることが好ましく、香箱車、番車、がんぎ車、アンクル、およびてんぷからなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
すなわち、時計用部品は、装飾性をより発現する観点から、時計の内部の機構を視認できるシースルー構造の時計に搭載されることが好ましい。
本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
第1実施形態では、時計用部品として、がんぎ車を構成するがんぎ歯車部を例に挙げて説明する。そして、がんぎ歯車部を搭載した時計として、機械式時計を例に挙げて説明する。
図1は、第1実施形態に係る機械式時計1を文字板側から見た平面図である。図2は、第1実施形態に係る機械式時計1を裏蓋側から見た平面図である。なお、時計の構成部品を固定するためのねじ90については、一部のみに符号を付している。
機械式時計1は、文字板側および裏蓋側から、ムーブメント40の一部を視認できるシースルー構造になっている。
機械式時計1は、円筒状の外装ケース5を備え、外装ケース5の内周側に、円盤状の文字板3が配置されている。文字板3には、窓48Aが設けられている。機械式時計1は、この窓48Aを通して、ムーブメント40の一部が視認されるように構成されている。
外装ケース5の二つの開口のうち、表面側の開口は、カバーガラスで塞がれており、裏面側の開口には裏蓋35が取り付けられている。
機械式時計1は、外装ケース5内に収容されたムーブメント40と、時刻情報を表示する時針44A、分針44B、ゼンマイによる持続時間を指示するパワーリザーブ針44C、およびスモールセコンド44Dを備えている。
時針44A、分針44B、パワーリザーブ針44C、およびスモールセコンド44Dは、ムーブメント40の指針軸に取り付けられ、ムーブメント40により駆動される。
外装ケース5の側面には、リューズ7が設けられている。リューズ7が操作されることにより、操作に応じた入力を行うことができる。
図1においては、文字板側から、当該文字板3に設けられた窓48Aを通して、ムーブメント40の一部を構成するがんぎ車101、アンクル28、てん輪27、およびヒゲゼンマイ29などを視認することができる。がんぎ車101は、第1実施形態に係る時計用部品としてのがんぎ歯車部100と、軸部材102とを備えている。
裏蓋35は、外周部分を形成するリング状の枠材46と、当該枠材46にはめ込まれた透明部材で形成された窓48Bとで構成される。
ムーブメント40は、輪列45、テンプ受け13、手動巻上機構60、および自動巻上機構50などを備える。
自動巻上機構50は、回転錘、ベアリング、偏心車、爪レバー、および伝え車52などを備える。図2では、伝え車52が示されている。
図2においては、裏蓋側から、当該裏蓋35に設けられた窓48Bを通して、ムーブメント40の一部を構成する香箱車21、がんぎ車101、アンクル28、てん輪27、丸穴車61、角穴伝え車62、角穴車63、偏心車、および伝え車52などを視認することができる。
例えば、窓48A、48Bのデザイン、大きさ、配置位置および窓の数などを適宜変更することにより、ムーブメント40の所望の構成部品を視認できるようにしてもよい。
また、文字板3の全体を透明部材で形成し、文字板側からムーブメント40の全体を視認できるようにしてもよいし、 裏蓋35の全体を透明部材で形成し、裏蓋側からムーブ
メント40の全体を視認できるようにしてもよい。
図3は、がんぎ歯車部100の平面図およびX領域の部分拡大図である。
がんぎ歯車部100は、中央部に軸部材102が挿通される挿通部110を有する。
がんぎ歯車部100は、複数の歯部112を有するリム部111と、軸部材102を保持する保持部115と、を有する。リム部111は、がんぎ歯車部100の外縁の環状部分である。歯部112は、リム部111の外周から外側に向けて突設されており、特殊な鉤型状に形成されている。
がんぎ歯車部100は7つの保持部115を有している。保持部115は、環状のリム部111の周方向における7箇所に、360°/7の等ピッチで配置されている。なお、保持部115の数は、3つから7つの範囲でもよいし7つ以上でもよく、特に限定されない。
保持部115は、リム部111から延在する第1保持部113と、第1保持部113から分岐して設けられた第2保持部114と、を有する。第1保持部113、第2保持部114、およびリム部111は、同一の材料で一体に形成されている。
第1領域F1と第2領域F2とは、互いに異なる色を発色している。
がんぎ歯車部100は、シリコンを主成分とする基材8を有する。基材8は、第1面8Aと、前記第1面8Aとは反対側の第2面8Bと、第1面8Aと第2面8Bとを接続する第3面8Cおよび第4面8Dとを有する。
時計用部品を時計に搭載した際に、時計用部品が時計の裏蓋側から視認される場合、基材8の第1面8Aとは、時計の裏蓋側に位置する面を意味する。ただし、時計用部品が時計の文字板側からも裏蓋側からも視認される場合、基材8の第1面8Aとは、時計の文字板側に位置する面とする。
本実施形態の場合、時計用部品としてのがんぎ歯車部100は、機械式時計1の文字板側からも裏蓋側からも視認されるので、基材8の第1面8Aとは、前記文字板側に位置する面であり、基材8の第2面8Bとは、前記裏蓋側に位置する面である。
本明細書において、基材8とは、光反射層10,10Aが形成されていない状態の時計用部品を意味する。本実施形態の場合、基材8とは、光反射層10,10Aが形成されていない状態のがんぎ歯車部を意味する。
本明細書において、「シリコンを主成分とする」とは、基材全体に対する、シリコンの質量の含有量が80質量%以上であることを意味する。当該シリコンの含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
以下の説明では、シリコンを主成分とする基材8を、シリコン製の基材8または単に基材8と称することがある。
図4に示すように、基材8の第1面8Aには、第1酸化シリコン層2と、シリコン層4と、第2酸化シリコン層6とをこの順で有する光反射層10Aが設けられている。
基材8の第1面8Aの側から、光反射層10Aを平面視したときに、光反射層10Aは、第1領域F1と、第2領域F2とを有している。第1領域F1は、図3に示す「S」の文字が表示されている領域に該当し、第2領域F2は、図3に示す「S」の文字が表示されていない領域に該当する。
第1領域F1におけるシリコン層4の厚さD41と、第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD42とは、互いに異なっている。本実施形態では、第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD42が第1領域F1におけるシリコン層4の厚さD41よりも厚く設定されている。
第1領域F1における第2酸化シリコン層6の厚さD61と、第2領域F2における第2酸化シリコン層6の厚さD62は、同じ寸法である。
このように、基材8の第1面8Aにおける光反射層10Aは、第1領域F1におけるシリコン層4の厚さD41および第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD42のみが異なるように、第1酸化シリコン層2と、シリコン層4と、第2酸化シリコン層6とがこの順に積層されている。
基材8の第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dにおける第1酸化シリコン層2の厚さは、基材8の第1面8Aの第1領域F1および第2領域F2における第1酸化シリコン層2の厚さD21,D22と同じ寸法である。
基材8の第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dにおける第2酸化シリコン層6の厚さは、基材8の第1面8Aの第1領域F1および第2領域F2における第2酸化シリコン層6の厚さD61,D62と同じ寸法である。
基材8はシリコンを主成分とする。シリコンの種類は特に限定されず、加工性の観点から適切なものを選択することができる。シリコンとしては、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
シリコン製の基材8は、例えばフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術により製造できるので、複雑な形状を形成することができる。
光反射層10,10Aは、基材8上に、第1酸化シリコン層2と、シリコン層4と、第2酸化シリコン層6とをこの順に有する。本実施形態において、光反射層は、基材8の第1面8A、第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dに設けられ、3層構造となっている。光反射層は、例えば5層構造であってもよいが、色を調整し易くする観点から、3層構造であることが好ましい。
光反射層10,10Aは、第2酸化シリコン層6のシリコン層4とは反対側の表面、第2酸化シリコン層6とシリコン層4との界面、シリコン層4と第1酸化シリコン層2との界面、並びに基材8の表面のうち、少なくともいずれかの面により光の透過や反射を自在に調整できる機能を有する。
図4に示すように、光反射層10,10Aの最表層は第2酸化シリコン層6である。これにより、がんぎ歯車部100の保護性が高められる。
第1酸化シリコン層2は、基材8上に設けられる。本実施形態において、第1酸化シリコン層2は、基材8の第1面8A、第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dに設けられる。
第1酸化シリコン層2の厚さは、発色する色に応じて調整されるが、通常、100nm以上450nm以下であり、100nm以上400nm以下であることが好ましい。第1酸化シリコン層2の厚さが、100nm以上であると、厚さを制御し易くなる。第1酸化シリコン層2の厚さが、400nm以下であると、成膜時間を短縮できるので、生産性が向上する。
例えば、がんぎ歯車部100の第1領域F1を青色に発色させる場合、第1領域F1における第1酸化シリコン層2の厚さD21は、20nm以上100nm以下、もしくは、180nm以上290nm以下、もしくは、330nm以上であることが好ましく、210nm以上280nm以下であることがより好ましい。なお、上限値は、生産性の観点から、450nm以下であることが好ましい。第1酸化シリコン層2の厚さD21の好適な範囲は、例えば、公知の光学計算によって算出することができる。
がんぎ歯車部100の第2領域F2を青色に発色させる場合、第2領域F2における第1酸化シリコン層2の厚さD22は、第1領域F1における第1酸化シリコン層2の厚さD21と同様の範囲であることが好ましい。
第1酸化シリコン層2は、熱酸化法で形成された熱酸化シリコン層であることが好ましい。熱酸化法で熱酸化シリコン層を形成すると、均一性が高いシリコン層が得られ易くなる。
シリコン層4は、第1酸化シリコン層2上に設けられる。本実施形態において、シリコン層4は、第1酸化シリコン層2の全面に設けられる。
シリコン層4は、アモルファス層であっても、ポリシリコン層であってもよいが、ポリシリコン層であることが好ましい。
第1領域F1におけるシリコン層4の厚さD41と、第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD42との寸法の差が5nm以上500nm以下であると、第1領域F1および第2領域F2から発色する色を識別し易くなる。
第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD42は、80nm以上140nm以下であることが好ましい。
シリコン層4の厚さの好ましい範囲は、例えば、公知の光学計算によって算出することができる。
第2酸化シリコン層6は、シリコン層4上に設けられる。本実施形態において、第2酸化シリコン層6は、シリコン層4の全面に設けられる。
第2酸化シリコン層6の厚さは、発色する色に応じて調整されるが、通常、5nm以上500nm以下であり、10nm以上500nm以下であることが好ましい。
例えば、がんぎ歯車部100の第1領域F1を青色に発色させる場合、第1領域F1における第2酸化シリコン層6の厚さD61は、100nm以上200nm以下、もしくは、250nm以上360nm以下、もしくは、400nm以上であることが好ましい。また、観察角度による発色の差を抑制する観点から、第1領域F1における第2酸化シリコン層6の厚さD61は、130nm以上200nm以下、もしくは、310nm以上360nm以下であることがより好ましい。なお、上限値は、生産性の観点から、500nm以下であることが好ましい。第2酸化シリコン層6の厚さの好適な範囲は、例えば、光学計算によって算出することができる。
がんぎ歯車部100の第2領域F2を青色に発色させる場合、第2領域F2における第2酸化シリコン層6の厚さD62は、第1領域F1における第2酸化シリコン層6の厚さD61と同様の範囲であることが好ましい。
第2酸化シリコン層6は、熱酸化法で形成された熱酸化シリコン層であることが好ましい。熱酸化シリコン層は、通常、蒸着法で形成された酸化シリコン層に比べ、機械的特性が優れているので、第2酸化シリコン層6を熱酸化シリコン層とすることで、基材8の保護性がより高められる。特に、他の部品との接触部位を有するがんぎ歯車部100などの歯車においては、接触部位の機械的強度が高められるので望ましい。
第2酸化シリコン層6の厚さは、発色する色に応じて調整されるが、第1酸化シリコン層2の厚さよりも小さいことが好ましい。
熱酸化法では、例えば、第2酸化シリコン層6の形成に先立って形成されたシリコン層4を酸化することで第2酸化シリコン層6を形成する。この場合、シリコン層4はアモルファス層やポリシリコン層で形成されているので、第2酸化シリコン層6の厚さを制御することは難しい。通常、層厚の制御は薄いほうが容易なため、第2酸化シリコン層6の層厚は薄いことが好ましい。したがって、第2酸化シリコン層6の厚さは、第1酸化シリコン層2の厚さよりも小さいことが好ましい。
なお、後述する実施形態においても同様に、第3領域F3における第1酸化シリコン層2の厚さD23、シリコン層4の厚さD43、第2酸化シリコン層6の厚さD63、および光反射層10B,10Cの厚さとは、平均厚さを意味する。
各層の平均厚さは、以下の方法により測定することができる。
時計用部品としてのがんぎ歯車部100の一部を切り出し、試験片とする。試験片の断面を、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて観察し、測定対象層の厚さを任意の10点で測定し、その平均値を「測定対象層の厚さ」とする。
測定対象層は、第1酸化シリコン層2、シリコン層4、第2酸化シリコン層6および光反射層10,10Aのいずれかの層または後述する光反射層10B,10Cである。
<色相>
本実施形態のがんぎ歯車部100において、第1領域F1の色と第2領域F2の色とは、異なることが好ましい。
本明細書において、「第1領域F1の色と第2領域F2の色とが異なる」とは、CIELAB色空間で定義される色相および彩度の少なくとも一方が異なることを意味する。なお、色相および彩度は、CIELAB色空間の色座標a*、b*で表される。
CIELAB色空間で定義される色相角∠h°において、第1領域F1の色相角∠h1°と第2領域F2の色相角∠h2°との差が、5°以上180°以下であることが好ましい。
第1領域F1の色相角∠h1°と第2領域F2の色相角∠h2°との差が、5°以上180°以下であると、各領域から発色する色を識別し易くなるので、がんぎ歯車部100の装飾性をより向上させることができる。
なお、第1領域F1の色相角∠h1°と、第2領域F2の色相角∠h2°との差が0°以上5°未満の場合は、各領域から発色する色を識別し易くする観点から、後述する第1領域F1の座標(a1,b1)と第2領域F2の座標(a2,b2)との距離が5以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。
式:「色相角∠h°=tan-1(b*/a*)」
CIELAB色空間のa-b平面において、第1領域F1を色座標a*、b*で表したときの座標を(a1,b1)とし、第2領域F2を色座標a*、b*で表したときの座標を(a2,b2)とすると、この第1領域F1の座標(a1,b1)と第2領域F2の座標(a2,b2)との距離は5以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。前記距離の上限値は特に限定されない。
前記座標の距離が5以上であると、各領域から発色する色を識別し易くなるので、がんぎ歯車部100の装飾性をより向上させることができる。
なお、第1領域F1の座標(a1,b1)と第2領域F2の座標(a2,b2)との距離は、((a1-a2)2+(b1-b2)2)1/2で算出される。
がんぎ歯車部100は、光反射層10,10Aの各層の厚さをそれぞれ調整することにより、所望の色を発色することができる。本実施形態においては、光反射層10Aに、シリコン層4の厚さがD41である第1領域F1と、シリコン層4の厚さがD42である第2領域F2とを設けることにより、第1領域F1および第2領域F2から異なる色を発色させることができる。
所望の色としては特に限定されないが、例えば、青色、緑色、赤色、黄色、ピンク色、青緑色、およびその他の混合色を発色することができる。
第1実施形態のがんぎ歯車部100は、第1領域F1または第2領域F2において、光反射層10Aに向かって入射角度0°で光を入射させた際の波長400nm以上780nm以下の範囲における最大反射率が、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。なお、入射角度0°とは、光反射層10Aの法線方向に対する入射光の角度である。
がんぎ歯車部100の最大反射率は、試験片を用いて、以下の条件で測定することができる。試験片は、測定装置の仕様に応じて、がんぎ歯車部100自体を用いてもよいし、がんぎ歯車部100から測定可能な大きさに切り出したものを用いてもよい。
-測定条件-
・装置:顕微分光測定機(オリンパス社製、USPM―RU―W)
・測定環境 :25℃
・入射角度0°
第1実施形態のがんぎ歯車部100は、シリコン製の基材8の第1面8A、第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dに、相対的に低屈折率層である酸化シリコン層と、相対的に高屈折率層であるシリコン層とが交互に3層積層された光反射層10,10Aを有するので発色性が良好である。
さらに、第1実施形態のがんぎ歯車部100は、光反射層10Aに第1領域F1および第2領域F2を設け、光反射層10Aを構成する層のうち、第1領域F1および第2領域F2におけるシリコン層4の厚さを変えた構成とする。
これにより、第1領域F1および第2領域F2から異なる色を発色させることができ、かつそれぞれの色を良好に発色させることができる。したがって、第1実施形態によれば、装飾性に優れたがんぎ歯車部100が実現される。
図5は、シリコン基材、第1酸化シリコン層、シリコン層、および第2酸化シリコン層からなる積層体Sにおいて、シリコン層の厚さと階調との関係を示すグラフである。観察角度は0°である。
積層体Sの構成を概略的に示すと以下の通りである。
シリコン基材/第1酸化シリコン層(220nm)/シリコン層(60nm以上94nm以下で2nmずつ変化)/第2酸化シリコン層(140nm)
このような階調の変化は、第1酸化シリコン層の厚さを変更したときの階調の変化よりも大きく、また第2酸化シリコン層の厚さを変更したときの階調の変化よりも大きい。
本発明者らは、このシリコン層の厚さに起因する階調の変化に着目し、光反射層を構成する層のうち、シリコン層の厚さを変えることで、時計用部品の装飾性を向上させることを見い出した。
第1実施形態によれば、第1領域F1および第2領域F2から、多彩なバリエーションの発色を得ることができる。
さらにがんぎ歯車部100は、最表層に、酸化シリコン層である第2酸化シリコン層6を配置しているので、基材8の保護性がより高められた構造となる。物理的にも化学的にも安定な第2酸化シリコン層6が基材8の保護材としての機能を兼ねることができると考えられる。
このように基材8および光反射層10,10Aの全てがシリコンを含み、かつ第1領域F1および第2領域F2から異なる色を発色できるがんぎ歯車部100は従来にない構成である。
これに対し、第1実施形態のがんぎ歯車部100は、3層構造の光反射層10,10Aが第1面8A、第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dに設けられているので、光反射層10,10Aの層応力による基材8の歪みが抑制される。さらに、最表層に設けられた第2酸化シリコン層6によって、基材8の第1面8A、第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dの保護性が高められる。その結果、耐久性に優れたがんぎ歯車部100が実現される。
さらに、がんぎ歯車部100を図1および図2のようなシースルー構造の機械式時計1に搭載した場合には、がんぎ歯車部100が、文字板側からも裏蓋側からも視認されるので、機械式時計1の装飾性をより向上させることができる。
また、第1実施形態のがんぎ歯車部100は、基材8に凹凸を付けずに装飾性を向上させることができるので、特許文献1に記載の技術に対し、部品全体の強度を保持することができる。
図6A~図6C、図7A~図7Cおよび図8A~図8Cは、第1実施形態に係るがんぎ歯車部100の製造方法を説明する断面図である。
図6Aに示すように、基材8の第1面8A、第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dに第1酸化シリコン層2を形成する。
第1酸化シリコン層2の形成方法としては、例えば、熱酸化法、物理気相成長法(PVD法)、化学気相成長法(CVD法)、およびこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。熱酸化法としては、例えば、水を使用したウェット酸化法、および酸素を使用したドライ酸化法が挙げられる。PVD法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、および真空蒸着法などが挙げられる。CVD法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法などが挙げられる。
第1酸化シリコン層2の形成方法としては、水を使用した熱酸化法または酸素を使用したドライ酸化法が好ましい。第1酸化シリコン層2を熱酸化法で形成する場合、生産性の観点から、縦型炉もしくは横型炉の熱酸化炉を用いることが好ましい。
第1酸化シリコン層2の形成条件は、基材8の形状、および目的とする厚さ等に応じて適宜調整することが好ましい。
図6Bに示すように、第1酸化シリコン層2の全面にシリコン層4を形成する。
シリコン層4の形成方法としては、例えば、PVD法、CVD法、およびこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。PVD法およびCVD法としては、第1酸化シリコン層2を形成する工程で例示した方法と同様の方法が挙げられる。シリコン層4は、低圧CVD法によって形成されることが好ましい。例えば、低圧CVD法では、成膜温度を500℃以上700℃以下に制御し、低圧下でモノシランガスを流すことにより、シリコン層4を形成することができる。低圧CVD法によりシリコン層4を形成すると、成膜温度に応じて、シリコン層4の層質をアモルファスシリコンからポリシリコンまで制御することができる。シリコン層4を低圧CVD法で形成する場合、生産性の観点から、縦型炉もしくは横型炉の低圧CVD炉を用いることが好ましい。
シリコン層4の形成条件は、基材8の形状、および目的とする厚さ等に応じて適宜調整することが好ましい。
図6Cに示すように、シリコン層4の全面に、例えば、公知のレジストを塗布してレジスト層R1を形成する。なお、レジスト層R1は、基材8の第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dの側がエッチングされないように保護される場合、シリコン層4の全面に形成しなくてもよい。レジスト層R1は、少なくとも、第1領域F1および第2領域F2が設けられる領域に形成すればよい。また、図6Cに示すレジスト層R1は、ポジ型のレジスト層であるが、加工方法に応じて、ネガ型のレジスト層を用いてもよい。
・露光工程
図7Aに示すように、レジスト層R1に対し、マスク103を介して光を照射し、マスク103のパターンを転写し露光する。
・現像工程
図7Bおよび図7Cに示すように、露光されたレジスト層R2を現像して除去し、レジスト層R1に開口部R4を作製する。
図8Aに示すように、レジスト層R1をマスクとし、目的とするシリコン層4の厚さになるまで、開口部R4に露出されたシリコン層4をエッチングする。エッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよいが、加工性の観点から、ドライエッチングが好ましい。
これにより、図8Bに示すように、第1領域F1におけるシリコン層の厚さと、第2領域F2におけるシリコン層の厚さとが異なるシリコン層4が形成される。
図8Cに示すように、シリコン層4の全面に、第2酸化シリコン層6を形成する。
第2酸化シリコン層6は、第1酸化シリコン層2の形成方法と同様の方法で形成することができる。第2酸化シリコン層6は、シリコン層4の一部を熱酸化することによって形成されることが好ましい。これにより、第2酸化シリコン層6の保護材として機能がより発現される。
第2酸化シリコン層6を、シリコン層4の一部を熱酸化することによって形成する場合、シリコン層4の一部が消費されて第2酸化シリコン層6となる。
第2酸化シリコン層6の形成条件は、基材8の形状、目的とする厚さ等に応じて適宜調整することが好ましい。
以上の工程により、基材8の第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dに光反射層10を備え、かつ基材8の第1面8Aに、第1領域F1におけるシリコン層4の厚さがD41であり、第2領域F2におけるシリコン層4の厚さがD42である光反射層10Aを備えるがんぎ歯車部100が製造される。
第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については、その説明を省略する。
第2実施形態に係るがんぎ歯車部200は、第1実施形態に係るがんぎ歯車部100に対し、図3に示すX領域の第1領域F1と第2領域F2とを入れ替えた点以外は、第1実施形態に係るがんぎ歯車部100と同様である。
始めに、基材8の第1面8Aの側の構成について説明する。
図9に示すように、基材8の第1面8Aには、第1酸化シリコン層2と、シリコン層4と、第2酸化シリコン層6とがこの順で積層された光反射層10Bが設けられている。
基材8の第1面8Aの側から、光反射層10Bを平面視したときに、光反射層10Bは、第1領域F1と、第2領域F2とを有している。第1領域F1は、図3に示す「S」の文字が表示されていない領域に該当し、第2領域F2は、図3に示す「S」の文字が表示されている領域に該当する。
第1領域F1と第2領域F2とは、互いに異なる色を発色している。
第1領域F1におけるシリコン層4の厚さD41と、第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD42とは、互いに異なっている。本実施形態では、第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD42が第1領域F1におけるシリコン層4の厚さD41よりも厚く設定されている。
第1領域F1における第2酸化シリコン層6の厚さD61と、第2領域F2における第2酸化シリコン層6の厚さD62は、同じ寸法である。
このように、基材8の第1面8Aにおける光反射層10Bは、第1領域F1におけるシリコン層4の厚さD41および第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD42のみが異なるように、第1酸化シリコン層2と、シリコン層4と、第2酸化シリコン層6とがこの順に積層されている。
基材8の第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dにおける第1酸化シリコン層2の厚さは、基材8の第1面8Aの第1領域F1および第2領域F2における第1酸化シリコン層2の厚さD21,D22と同じ寸法である。
基材8の第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dにおける第2酸化シリコン層6の厚さは、基材8の第1面8Aの第1領域F1および第2領域F2における第2酸化シリコン層6の厚さD61,D62と同じ寸法である。
第1領域F1および第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD41,D42が上記範囲であると、各領域から発色する色をより識別し易くなる。その結果、がんぎ歯車部200の装飾性をより向上させることができる。
この態様の場合、識別性および装飾性をより向上させる観点から、第2領域F2が文字、マーク、模様またはこれらの組み合わせを表示する領域であり、第1領域F1が第2領域F2以外の全体の領域であることが好ましい。
第1領域F1および第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD41,D42が上記範囲であると、各領域から発色する色をより識別し易くなる。その結果、がんぎ歯車部200の装飾性をより向上させることができる。
この態様の場合、識別性および装飾性をより向上させる観点から、第2領域F2が文字、マーク、模様またはこれらの組み合わせを表示する領域であり、第1領域F1が第2領域F2以外の全体の領域であることが好ましい。
第1領域F1および第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD41,D42が上記範囲であると、各領域から発色する色をより識別し易くなる。その結果、がんぎ歯車部200の装飾性をより向上させることができる。
この態様の場合、識別性および装飾性をより向上させる観点から、第2領域F2が文字、マーク、模様またはこれらの組み合わせを表示する領域であり、第1領域F1が第2領域F2以外の全体の領域であることが好ましい。
第2実施形態のがんぎ歯車部200は、第1実施形態と同様の効果が奏される。
第2実施形態によれば、装飾性により優れたがんぎ歯車部200が実現される。
第2実施形態のがんぎ歯車部200は、第1実施形態の製造方法に対し、例えば、マスクとしてのレジスト層R1の配置箇所およびシリコン層のエッチング箇所を変更することにより製造される。
第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については、その説明を省略する。
第3実施形態に係るがんぎ歯車部300は、第2実施形態に係るがんぎ歯車部200において、図3に示すX領域を、図10に示す領域に変更した点以外は、第2実施形態に係るがんぎ歯車部200と同様である。
図10に示すように、第3実施形態のがんぎ歯車部300のリム部111Cには、「S」の文字および丸のマークが識別可能に表示されている。がんぎ歯車部300のリム部111Cは、第1領域F1と、第2領域F2と、さらに第3領域F3とを有している。
本実施形態において、第1領域F1は、「S」の文字および丸のマークが表示されていない領域であり、第2領域F2は、「S」の文字が表示されている領域であり、第3領域F3は、丸のマークが表示されている領域である。
第1領域F1と第2領域F2と第3領域F3とは、互いに異なる色を発色している。
図11に示すように、基材8の第1面8Aには、第1酸化シリコン層2と、シリコン層4と、第2酸化シリコン層6とがこの順で積層された光反射層10Cが設けられている。
基材8の第1面8Aの側から、光反射層10Cを平面視したときに、光反射層10Cは、第1領域F1と、第2領域F2と、第3領域F3とを有している。
第1領域F1におけるシリコン層4の厚さD41と、第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD42と、第3領域F3におけるシリコン層4の厚さD43とは、互いに異なっている。
本実施形態では、各領域におけるシリコン層4の厚さD41,D42,D43の関係は、下記式(2)を満たす。
厚さD43>厚さD42>厚さD41…(2)
第1領域F1における第2酸化シリコン層6の厚さD61と、第2領域F2における第2酸化シリコン層6の厚さD62とは、第3領域F3における第2酸化シリコン層6の厚さD63とは、同じ寸法である。
このように、基材8の第1面8Aの側における光反射層10Cは、第1領域F1におけるシリコン層4の厚さD41、第2領域F2におけるシリコン層4の厚さD42、および第3領域F3におけるシリコン層4の厚さD43のみが異なるように、第1酸化シリコン層2と、シリコン層4と、第2酸化シリコン層6とがこの順に積層されている。
基材8の第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dにおける第1酸化シリコン層の厚さは、基材8の第1面8Aの第1領域F1、第2領域F2および第3領域F3における第1酸化シリコン層2の厚さD21,D22,D23と同じ寸法である。
基材8の第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dにおける第2酸化シリコン層の厚さは、基材8の第1面8Aの第1領域F1、第2領域F2および第3領域F3における第2酸化シリコン層6の厚さD61,D62,D63と同じ寸法である。
第3実施形態のがんぎ歯車部300は、第2実施形態と同様の効果が奏される。
第3実施形態のがんぎ歯車部300は、第2実施形態のがんぎ歯車部200に対し、第1領域F1および第2領域F2に加え、さらに第3領域F3からも異なる色を発色させることができる。したがって、第3実施形態によれば、装飾性により優れたがんぎ歯車部300が実現される。
第3実施形態のがんぎ歯車部300は、第2実施形態の製造方法に対し、シリコン層4の厚さがD43である第3領域F3をさらに形成することで製造される。
第3領域F3を形成する方法としては特に限定されず、公知のエッチング方法を利用することができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等が可能である。
第1実施形態および第2実施形態では、基材8の第1面8Aに、第1領域F1および第2領域F2を設けた例を説明したが、これに限定されない。例えば、基材8の第1面8A、第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dの少なくともいずれかの面に第1領域および第2領域を設けていればよい。また、基材8の第1面8A、第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dのいずれかの面に、さらに第3領域など、他の領域を設けてもよい。
第3実施形態では、基材8の第1面8Aに、第1領域、第2領域および第3領域を設けた例を説明したが、これに限定されない。例えば、基材8の第1面8A、第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dの少なくともいずれかの面に第1領域、第2領域および第3領域を設けていればよい。また、基材8の第1面8A、第2面8B、第3面8Cおよび第4面8Dのいずれかの面に、さらに第4領域など、他の領域を設けてもよい。
前記実施形態において、第1領域から発色する色と、第2領域から発色する色とを識別し易くする観点から、第1領域におけるシリコン層の厚さと、第2領域におけるシリコン層の厚さとの寸法の差は、5nm以上1000nm以下であってもよい。この態様の場合、当該寸法の差に応じて、第1酸化シリコン層の厚さおよび第2酸化シリコン層の厚さをそれぞれ調整することが好ましい。
前記実施形態では、時計用部品としてがんぎ歯車部、および当該がんぎ歯車部を搭載した機械式時計について説明したがこれに限定されない。
例えば、前記実施形態に係る機械式時計は、例えば、時計用部品として列挙した前記時計用外装部品および前記時計用内装部品のいずれか1つ以上を備えていればよい。
前記実施形態に係るがんぎ歯車部は、装飾性を損なわない範囲において、最表層に、透明性を有する防汚層または帯電防止層を有していてもよい。これにより、がんぎ歯車部に防汚機能または帯電防止機能が付与される。
また、前記実施形態に係るがんぎ歯車部の製造方法では、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。例えば、各工程の間に、洗浄等の中間処理を施してもよい。また、第2酸化シリコン層を形成する工程の後に、防汚層を形成する工程または帯電防止層を形成する工程を有してもよい。基材に対しては、切削、研削、研磨、およびホーニング等の前処理を施してもよい。
本実施形態に係る時計用ムーブメントは、前述の実施形態に係るいずれかの時計用部品を少なくとも1つ備える。本実施形態によれば、装飾性に優れ、デザイン性の高い時計用ムーブメントが実現される。
本実施形態に係る時計は、前述の実施形態に係るいずれかの時計用部品を少なくとも1つ備える。
本実施形態に係る時計によれば、装飾性に優れ、デザイン性の高い時計が実現される。
時計としては、特に限定されず、例えば、クオーツ時計、機械式時計、および電子制御式機械式時計などが挙げられる。中でも、時計用部品の装飾性をより発現する観点から、時計としては、シースルー構造の機械式時計が好ましい。
シリコン基材(直径150mm、厚さ0.1mm)を準備した。
既述の方法で、シリコン基材の第1面に、第1酸化シリコン層、シリコン層、および第2酸化シリコン層をこの順に積層した光反射層を作製した。これを評価用のサンプル1~7とした。サンプル1~7の層構成を表1に示す。
<色の識別性>
サンプル1~7を用いて、以下の方法で色の識別性を評価した。結果を表1に示す。
各サンプルを光反射層の側から平面視し、目視により色を確認した。
次に、サンプル1の色を基準とし、このサンプル1の色と、サンプル2~7の色とを見比べ、以下の基準により、色の識別性を判定した。
なお、サンプル1~7の発色性はいずれも良好であった。
-基準-
A:各サンプルの色を十分識別できる
B:各サンプルの色を識別できる
C:識別できない。
サンプル1~7について、分光光度計(コニカミノルタ社製、品番:CM-700d)を用い、測定環境25℃で、CIELLab色空間で定義されるL*、a*およびb*を測定した。
得られたa*およびb*を用いて、下記式(1)にて、a-b平面におけるサンプル1の座標と、a-b平面におけるサンプル2~7の座標との距離をそれぞれ算出した。結果を表1に示す。
サンプル1の座標とサンプル2~7の座標との距離=((a1-aX)2+(b1-bX)2)1/2…(1)
・a1:サンプル1のa*
・aX:サンプル2~7のa*
・b1:サンプル1のb*
・bX:サンプル2~7のb*
したがって、シリコン基材上に、第1酸化シリコン層、シリコン層、および第2酸化シリコン層をこの順で積層した光反射層を設け、かつシリコン層の厚さが異なる領域を設けることにより、装飾性に優れた時計用部品が得られることがわかった。
Claims (13)
- シリコンを主成分とする基材と、
前記基材上に、第1酸化シリコン層と、シリコン層と、第2酸化シリコン層とがこの順で積層された光反射層と、を有し、
前記光反射層を平面視したときに、前記光反射層は、第1領域と、第2領域とを有し、
前記第1領域における前記シリコン層の厚さと、前記第2領域における前記シリコン層の厚さとが異なることを特徴とする時計用部品。 - 請求項1に記載の時計用部品において、
前記第1領域における前記シリコン層の厚さと、前記第2領域における前記シリコン層の厚さとの寸法の差が、5nm以上1000nm以下であることを特徴とする時計用部品。 - 請求項2に記載の時計用部品において、
前記寸法の差が、10nm以上500nm以下であることを特徴とする時計用部品。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の時計用部品において、
前記第1領域における前記シリコン層の厚さが、50nm以上80nm以下であり、
前記第2領域における前記シリコン層の厚さが、110nm以上140nm以下であることを特徴とする時計用部品。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の時計用部品において、
前記第1領域における前記シリコン層の厚さが、50nm以上80nm以下であり、
前記第2領域における前記シリコン層の厚さが、80nm以上110nm以下であることを特徴とする時計用部品。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の時計用部品において、
前記第1領域における前記シリコン層の厚さが、80nm以上110nm以下であり、
前記第2領域における前記シリコン層の厚さが、110nm以上140nm以下であることを特徴とする時計用部品。 - 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の時計用部品において、
前記第1領域の色と前記第2領域の色とは異なることを特徴とする時計用部品。 - 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の時計用部品において、
香箱車、番車、がんぎ車、アンクル、およびてんぷからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする時計用部品。 - 請求項8に記載の時計用部品において、
前記時計用部品は、前記がんぎ車であり、
前記がんぎ車のリム部は、前記第1領域および前記第2領域を有し、
前記第1領域および前記第2領域の一方により、少なくとも、文字またはマークが表示されていることを特徴とする時計用部品。 - 請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の時計用部品において、
前記光反射層は、さらに第3領域を有し、
前記第1領域における前記シリコン層の厚さと、前記第2領域における前記シリコン層の厚さと、前記第3領域における前記シリコン層の厚さとが互いに異なることを特徴とする時計用部品。 - 請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の時計用部品を備えることを特徴とする時計用ムーブメント。
- 請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の時計用部品を備えることを特徴とする時計。
- 請求項12に記載の時計において、
シースルー構造の機械式時計であることを特徴とする時計。
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