JP4619676B2 - 時計用風防ガラスおよび時計 - Google Patents
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デジタル式の場合は、その時計ケースの内部に液晶表示パネルとその駆動回路や計時回路を構成する回路基板等を収納し、風防ガラスを通して液晶表示器の時刻表示部やカレンダ表示部が見えるようになっている(例えば、特許文献2参照)。
そのため、風防ガラスには透明度が高く傷がつきにくいサファイアガラスや強化ガラスなどが用いられている。
この風防ガラスは、時計ケースを密閉して内部にゴミや水分などが侵入しないように保護するものであるが、時刻等の表示の見易さやデザイン的な面からは、あたかも風防ガラスがないかのように、透明で無反射であるのが望ましい。
そのため、風防ガラスの表面に反射防止膜を形成して反射率を低減するようにした時計もあるが、その反射率が可視光領域全体に亘って充分低くなっていなかったり、使用しているうちに反射防止膜が傷ついたり磨耗あるいは剥離したりして、反射防止効果が低下したりムラが生じて、かえって見難くなるようなこともあり、満足できるものではなかった。
上記ガラス基材の視認側の面とその反対側の裏面に、それぞれ上記4層構造の反射防止膜を設けた方がよい。
さらに好ましくは、第1の窒化シリコン膜が25〜40nm、第1の酸化シリコン膜が15〜30nm、第2の窒化シリコン膜が35〜50nm、最外層の第2の酸化シリコン膜が80〜100nmの各膜厚になるように形成するとよい。
そして、この4層構造の反射防止膜の各層を、第1の窒化シリコン膜が34.32nm、第1の酸化シリコン膜が20.9nm、第2の窒化シリコン膜が41.58nm、最外層の第2の酸化シリコン膜が91.3nmの各膜厚に形成するのが最適である。
この場合も、上記ガラス基材の視認側の面とその反対側の裏面に、それぞれ上記6層構造の反射防止膜を設けた方がよい。
さらに好ましくは、第1の窒化シリコン膜が15〜30nm、第1の酸化シリコン膜が10〜25nm、第2の窒化シリコン膜が30〜45nm、第2の酸化シリコン膜が15〜30nm、第3の窒化シリコン膜が25〜45nm、第3の酸化シリコン膜が90〜110nmの各膜厚になるように形成するとよい。
これらの各反射防止膜にアニール処理(例えば大気中で500〜600℃で5〜20分加熱する)を施すと、耐久性がさらに向上する。
この発明はまた、上記いずれかの時計用風防ガラスを備えた時計も提供する。
〔時計用風防ガラスの第1実施例〕
この発明による時計用風防ガラスの第1実施例を図3及び図1によって説明する。図3はその全体の厚さ方向の断面図であり、図1はその表面付近の反射防止膜の層構成を示す拡大断面図である。
図3に示す風防ガラス1は、透明度の高いサファイアガラス等のガラス基材2の全面、すなわち視認側となる表(おもて)面とその反対側(時計内部の文字盤等に面する側)の裏面の両面に、透明で硬質の反射防止膜3を形成している。そして、金属製の胴と裏蓋からなる時計ケースの前面に、外周部との間にパッキンを介して固着される。そのとき図3で上側の面が視認側で、下側の面が時計内部の文字盤等に面する側となる。
そして、各層の膜厚は、厚すぎると色付きが生じ、薄過ぎると傷つき易い(特に最外層の第2の酸化シリコン膜34)ので、種々実験した結果、反射率が可視光領域の略全域で2%以下(略1.5%)と低く、色付きが生じず、耐傷性も充分ある各層の膜厚を次の範囲にするとよいことが判った。
第1の酸化シリコン膜32:10〜40nm、より望ましくは15〜30nm、
第2の窒化シリコン膜33:20〜60nm、より望ましくは35〜50nm、
第2の酸化シリコン膜34:70〜120nm、より望ましくは80〜100nm、
そして、最も良好な結果を得た例は、第1の窒化シリコン膜31が34.32nm、
第1の酸化シリコン膜32が20.9nm、第2の窒化シリコン膜33が41.58nm、第2の酸化シリコン膜34が91.3nmであった。
ガス:窒素 9.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:2000W
膜厚:35nm
<第2層:酸化シリコン膜32>
ガス:酸素 10.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:1500W
膜厚:21.5nm
ガス:窒素 9.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:2000W
膜厚:42nm
<第4層:酸化シリコン膜34>
ガス:酸素 10.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:1500W
膜厚:96.5nm
加熱温度を600℃にして、5分程度アニール処理をするようにしてもよいが、安定性が悪くなる。
磨耗試験機 スガ試験機 NUS−ISO−2型
ラッピングフィルム 住友3M 酸化アルミニウム 12μ(#1200)
試験荷重 500g一定
摺動回数 100回
反射率測定器 日立分光光度計 U−3300
評価方法 磨耗試験前後の平均反射率(450〜650nm)の差で評価
上記磨耗試験機に試料の風防ガラスをセットし、12μ(#1200)のラッピングフィルムで、その表面に対して、荷重500gで100回摺動して、その前後の反射率を測定した。その試験前後の反射率の差が小さいほど耐傷性が高いことになる。
そこで、磨耗試験前後の平均反射率(450〜650nm)の差で評価することができるが、各試料について、この磨耗試験前後の光の波長と反射率との関係を図5〜図9に示す。これらの図において、太線は磨耗試験前の反射率曲線、細線は磨耗試験後の反射率曲線を示す。
しかし、図5に示した最適試料の場合と比べると、反射率が1〜1.5%高く、波長による反射率のムラも若干生じている。
図9は、反射防止膜を形成していない従来のサファイアガラスのみの時計用風防ガラスの比較例であり、磨耗試験前後の反射率の差は殆どなく、可視光領域の全域に亘って反射率のムラも殆どないが、その反射率は14%前後と高い値を示しており、反射光が多く文字盤等が見難くなることが判る。
次に、この発明による時計用風防ガラスの第2実施例について図2と図3によって説明する。この第2実施例の時計用風防ガラスも、前述の第1実施例と同様に図3に示すように、透明度の高いサファイアガラス等のガラス基材2の全面に、透明で硬質の反射防止膜30を形成している。
図2は、その反射防止膜30の膜構成を示す拡大断面図であり、この第2実施例の反射防止膜は、窒化シリコン(SiN)膜と酸化シリコン(SiO2)膜とが交互に3層ずつ形成された6層構造になっている。
この反射防止膜30も、その各層の膜厚が厚すぎると色付きが生じ、薄過ぎると傷つき易い(特に最外層の第3の酸化シリコン膜36)ので、種々実験した結果、反射率が可視光領域の略全域で2%以下(略1.5%)と低く、色付きが生じず、耐傷性も充分ある各層の膜厚を次の範囲にするとよいことが判った。
第1の酸化シリコン膜32:10〜30nm、より望ましくは10〜25nm、
第2の窒化シリコン膜33:20〜60nm、より望ましくは30〜45nm、
第2の酸化シリコン膜34:10〜30nm、より望ましくは15〜30nm、
第3の窒化シリコン膜35:20〜50nm、より望ましくは25〜45nm、
第3の酸化シリコン膜36:70〜130nm、より望ましくは90〜110nm
そして、最も良好な結果を得た反射防止膜30の例は、第1の窒化シリコン膜31が19.8nm、第1の酸化シリコン膜32が17.6nm、第2の窒化シリコン膜33が39.6nm、第2の酸化シリコン膜34が20.9nm、第3の窒化シリコン膜35が35.6nm、第3の酸化シリコン膜36が101.2nmであった。
この場合も、ガラス基材2の表面に上記のようにして反射防止膜30を形成した後、前述の第1実施例の場合と同様に、大気中で、500℃、20分程度のアニール処理を行なうとよい。
なお、この実施例でも、ガラス基材の両面に反射防止膜30を形成したが、ガラス基材の視認側の面だけに前述した反射防止膜30を形成しても、反射率が若干上昇するが、その均一性と耐傷性については変わらず、充分実用になるものである。
次に、この発明による時計用風防ガラスを備えた時計の実施例を図4によって説明する。図4はその時計の断面図である。
この時計は腕時計であり、胴11の裏面側に裏蓋12をOリング14でシールして嵌合させて時計ケース10を形成し、その前面にこの発明による時計用風防ガラス1をその外周部と胴11の内周段部との間にパッキン13を介して密嵌して固着し、時計内にチリやホコリ、水分等が侵入しないように気密構造にしている。
この腕時計は、風防ガラス1の透明度が高く色付きもなく、反射率が可視光領域の略全域において2%以下と低いので、ほとんど風防ガラスがあることが判らないくらいであり、かなり傾斜した角度でも、反射光が殆どないので時計内部の文字盤6と指針8による時刻表示をはっきりと視認することができる。
しかも、長歩期間使用しても風防ガラス1の反射防止膜が傷付いたり剥離したりすることがなく、反射率が殆ど変化しないので、時刻表示等の見やすさが変わらない。
5:ムーブメント 6:文字盤 7:指針軸 8:指針
10:時計ケース 11:胴 12:裏蓋 13:パッキン
14:Oリング 15:中枠 16:押えリング 17:見切枠
31:第1の窒化シリコン膜 32:第1の酸化シリコン膜
33:第2の窒化シリコン膜 34:第2の酸化シリコン膜
35:第3の窒化シリコン膜 36:第3の酸化シリコン膜
Claims (10)
- 時計ケースの前面に装着される風防ガラスであって、ガラス基材の少なくとも視認側の面に、ガラス基材側から第1の窒化シリコン膜、第1の酸化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、および最外層の第2の酸化シリコン膜が順次形成された4層構造の反射防止膜を設け、前記4層構造の反射防止膜は、
前記第1の窒化シリコン膜が20〜50nm、
前記第1の酸化シリコン膜が10〜40nm、
前記第2の窒化シリコン膜が20〜60nm、
前記第2の酸化シリコン膜が70〜120nm
のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする時計用風防ガラス。 - 請求項1記載の時計の風防ガラスにおいて、前記ガラス基材の視認側の面とその反対側の裏面に、それぞれ前記4層構造の反射防止膜を設けたことを特徴とする時計用風防ガラス。
- 請求項1又は2記載の時計の風防ガラスにおいて、前記4層構造の反射防止膜は、
前記第1の窒化シリコン膜が25〜40nm、
前記第1の酸化シリコン膜が15〜30nm、
前記第2の窒化シリコン膜が35〜50nm、
前記第2の酸化シリコン膜が80〜100nm
のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする時計用風防ガラス。 - 請求項3記載の時計の風防ガラスにおいて、前記4層構造の反射防止膜は、
前記第1の窒化シリコン膜が34.32nm、
前記第1の酸化シリコン膜が20.9nm、
前記第2の窒化シリコン膜が41.58nm、
前記第2の酸化シリコン膜が91.3nm
のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする時計用風防ガラス。 - 時計ケースの前面に装着される風防ガラスであって、ガラス基材の少なくとも視認側の面に、ガラス基材側から第1の窒化シリコン膜、第1の酸化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、第2の酸化シリコン膜、第3の窒化シリコン膜、および最外層の第3の酸化シリコン膜が順次形成された6層構造の反射防止膜を設け、前記6層構造の反射防止膜は、
前記第1の窒化シリコン膜が10〜30nm、
前記第1の酸化シリコン膜が10〜30nm、
前記第2の窒化シリコン膜が20〜50nm、
前記第2の酸化シリコン膜が10〜30nm、
前記第3の窒化シリコン膜が20〜50nm、
前記第3の酸化シリコン膜が70〜130nm
のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする時計用風防ガラス。 - 請求項5記載の時計の風防ガラスにおいて、前記ガラス基材の視認側の面とその反対側の裏面に、それぞれ前記6層構造の反射防止膜を設けたことを特徴とする時計用風防ガラス。
- 請求項5又は6記載の時計の風防ガラスにおいて、前記6層構造の反射防止膜は、
前記第1の窒化シリコン膜が15〜30nm、
前記第1の酸化シリコン膜が10〜25nm、
前記第2の窒化シリコン膜が30〜45nm、
前記第2の酸化シリコン膜が15〜30nm、
前記第3の窒化シリコン膜が25〜45nm、
前記第3の酸化シリコン膜が90〜110nm
のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする時計用風防ガラス。 - 請求項7記載の時計の風防ガラスにおいて、前記6層構造の反射防止膜は、
前記第1の窒化シリコン膜が19.8nm、
前記第1の酸化シリコン膜が17.6nm、
前記第2の窒化シリコン膜が39.6nm、
前記第2の酸化シリコン膜が20.9nm、
前記第3の窒化シリコン膜が35.6nm、
前記第3の酸化シリコン膜が101.2nm
のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする時計用風防ガラス。 - 前記反射防止膜がアニール処理を施されていることを特徴とする請求項1乃至810のいずれかー項に記載の時計用風防ガラス。
- 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の時計用風防ガラスを備えた時計。
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