JP2010243164A - 透光性部材、時計、および透光性部材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】反射防止機能を備え、かつ硬度が十分に高く耐傷性が確保された透光性部材、これを備えた時計、および透光性部材の製造方法を提供する。
【解決手段】透光性部材10は、基材11の上に、窒化ケイ素からなる高屈折率層12A、12Cと、酸化ケイ素からなる低屈折率層12B、12Dとが交互に積層されてなる反射防止層12を備え、高屈折率層12A、12Cの屈折率が1.94〜2.02であり、低屈折率層12B、12Dの屈折率が1.465〜1.480である。
【選択図】図1

Description

本発明は、カバーガラスなどの透光性部材、時計、および透光性部材の製造方法に関する。
従来、時刻表示などの視認性を高めるため、カバーガラス(風防)と呼ばれる透光性部材に反射防止層を形成することが知られている。この反射防止層は、屈折率の異なる無機物層が数層〜数十層積層されて構成されることが一般的であり、カバーガラスのように高い硬度が求められる場合には、光透過率が高いうえ低屈折率でかつ比較的硬度が高いSiOが反射防止層の最表層に成膜されることが多い。例えば、時計用カバーガラスの表面に、SiOを最表層および最下層とし、SiO層とSi層とが交互に積層された反射防止層を形成する技術が開示されている(特許文献1参照)。また、酸化ケイ素(SiO)からなる層を最表層とし、窒化ケイ素からなる層を時計用カバーガラスの表面に形成してなる時計用風防ガラスも開示されている(特許文献2参照)。
特開2004−271480号公報 特開2006−275526号公報
しかしながら、SiO層とSi層が交互に積層された反射防止層を設けてなる従来の時計用カバーガラスでは、必ずしも反射防止効果が十分ではなかった。また、反射防止効果に影響を与える要因に関しても十分な知見がなかった。
そこで、本発明の目的は、反射防止機能に優れた透光性部材、これを備えた時計、および透光性部材の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上述した反射防止層の硬度が低く耐傷性も十分ではない理由が、反射防止層を形成する各層(高屈折率層と低屈折率層)の屈折率に起因することを見出した。本発明は、以上の知見をもとに完成されたものである。
すなわち、本発明は、透光性を有する基材を備える透光性部材であって、前記基材表面の少なくとも一部には、窒化ケイ素からなる高屈折率層と、酸化ケイ素からなる低屈折率層とを交互に積層してなる反射防止層が形成され、前記高屈折率層の屈折率が1.94〜2.02であり、前記低屈折率層の屈折率が1.465〜1.480であることを特徴とする。
ここで、透光性部材としては、例えば、時計用カバー部材や計器用カバー部材あるいは眼鏡レンズ等の硬質で透明な部材が挙げられる。透光性部材の基材としては、サファイアガラス、石英ガラス、およびソーダガラス等が挙げられる。
本発明の透光性部材によれば、その基材表面に、屈折率が1.94〜2.02である高屈折率層(窒化ケイ素層)と、屈折率が1.465〜1.480である低屈折率層(酸化ケイ素層)とを交互に積層してなる反射防止層が形成されているので、優れた反射防止効果を奏することができる。また、前記した高屈折率層の屈折率が1.98〜2.01であるとさらに優れた反射防止効果を奏することができる。
本発明では、前記透光性部材は、カバー部材とされ、前記反射防止層が、前記カバー部材の内側の部分および外側の部分のうち、少なくとも外側の部分に形成されることが好ましい。
この構成の発明によれば、カバー部材の外側から入射する光の反射を入射側で防止できるため、カバー部材の内側である射出側の部分に反射防止層が形成された場合よりも良好な反射防止効果が得られる。
本発明の時計は、前述したいずれかの透光性部材を備え、前記透光性部材が、時計体を収容するケースに設けられることを特徴とする。
本発明の時計によれば、前述の透光性部材を備えることにより、前述と同様の作用および効果を享受できる。ここで、透光性部材は、例えばカバーガラス(風防)としてケースに設けられる。
本発明の透光性部材の製造方法は、反射防止層を形成するスパッタリング工程を備え、前記スパッタリング工程が、窒化ケイ素からなる高屈折率層と、酸化ケイ素からなる低屈折率層とを交互に積層する工程であり、前記スパッタリング工程において、雰囲気ガスのガス圧力を調整することにより、前記高屈折率層の屈折率と前記低屈折率層の屈折率を制御することを特徴とする。
本発明の透光性部材の製造方法によれば、スパッタリング工程において、雰囲気ガスのガス圧力を調整することにより高屈折率層の硬度と低屈折率層の屈折率を、前述した所定の範囲とすることができるので、前述した効果を奏する透光性部材を容易に製造することができる。
また、前記した透光性部材の製造方法では、前記スパッタリング工程においてシリコンターゲットを用いることが好ましい。
この構成の発明によれば、スパッタリングターゲットとしてシリコンを用いているので、雰囲気ガスおよび電圧等を変更するだけで窒化ケイ素からなる高屈折率層と、酸化ケイ素からなる低屈折率層をともに形成できるので簡便である。また、シリコンターゲットは導電性があるため、直流スパッタが可能であることから各屈折率層を高速に形成できる点でも好ましい。
このような本発明によれば、優れた反射防止機能を有する透光性部材、これをカバー部材として備えた時計、および透光性部材の製造方法を提供できる。
本発明の一実施形態に係るカバーガラスの断面を示す模式図。 本実施形態に係るカバーガラスを備えた時計の断面図。
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明する。本実施形態の透光性部材は、時計用カバーガラス(以下、単に「カバーガラス」ともいう。)であり、図1には、透光性部材10の断面図が示されている。図1において、透光性部材10は、透明な基材11と、その上に形成された反射防止層12とを備えている。
〔基材11の材質〕
基材11の材質は無機酸化物であり、例えばサファイアガラス、石英ガラス、ソーダガラス等が挙げられる。時計用カバーガラスの材質としては、硬度や透明性の観点より特にサファイアガラスが好ましい。
〔反射防止層12の構成〕
反射防止層12は、基材11の上に形成され、屈折率の異なる無機薄膜を交互に積層して得られる多層膜である。図1に示す透光性部材10では、反射防止層12は、12A(高屈折率層)、12B(低屈折率層)、12C(高屈折率層)、12D(低屈折率層)の4層から構成されている。
ここで、高屈折率層12A、12Cは、窒化ケイ素(SiNx)により形成され、低屈折率層12B、12Dは酸化ケイ素(SiO)により形成されている。そして、高屈折率層12A、12Cの屈折率は、いずれも1.94〜2.02であり、好ましくは1.98〜2.01である。また、低屈折率層12B、12Dの屈折率は、いずれも1.465〜1.480である。これらの屈折率を制御する方法については後述する。
なお、反射防止層12は、4層である必要はなく、5層以上でもよい。反射防止効果を高める観点からは積層数が多い方が好ましい。ただし、あまり積層数が多くなると、透光性や生産性の観点より問題が生ずるおそれもあるので、好ましくは9層までの範囲である。
〔反射防止層12の形成工程〕
基材11の表面に上述した反射防止層12を形成する際には、スパッタリング法が好適に用いられる。スパッタリング法としては、無機薄膜形成の際に用いられる通常の方法が適用できる。
ただし、前もって、スパッタリングによる成膜条件と形成される薄膜の屈折率との関係を把握しておく必要がある。以下に、シリコンターゲットを用いて直流スパッタリングを行った場合の例を示す。具体的には、雰囲気のガス圧を変えてサファイア製基材上に単層膜を形成し、各々の成膜条件下における該単層膜の硬度を測定する。表1に成膜条件と単層膜の屈折率との関係をまとめて示す。
ここで、窒化ケイ素(SiNx)単層膜の厚みは877nmであり、酸化ケイ素(SiO)単層膜の厚みは1166nmである。なお、単層膜の屈折率は、エリプソメーターを用いて550nmの波長で測定した。
Figure 2010243164
表1より、ガス圧により窒化ケイ素単層膜および酸化ケイ素単層膜の屈折率を制御できることがわかる。
従って、上述した成膜条件と膜の屈折率との関係を把握しておくことで、屈折率が1.94〜2.02ある高屈折率層(窒化ケイ素層)12A、12Cと、屈折率が1.465〜1.480である低屈折率層(酸化ケイ素層)12B、12Dとを基材11の上に交互に積層することができる。
基材11の上に前記した4層からなる反射防止層12が形成されることにより、透光性部材10が製造される。
ここで、前記したスパッタリングを行う際には、基材11を100℃以上に加熱する加熱工程を備えることが、反射防止層の硬度や密着性の向上の観点より好ましい。
また、反射防止層12をスパッタリングにより形成する前に、基材11に対して表面の付着物を除去する逆スパッタリング工程を備えると、基材11の表面を清浄にすることができるので、基材11と反射防止層12との密着性向上の観点より好ましい。
〔時計の構成〕
図2に、透光性部材10を備えた時計の断面図を示す。
図2に示すように、本実施形態の時計100において、透光性部材10は、時計体(ムーブメント)103を収容するケース104に、カバーガラス102として設けられる。ケース104には裏蓋105が設けられている。
ここで、本実施形態のカバーガラス102の体表面部は、前面部102A、後面部102B、および側面部102Cからなる。前面部102Aは、カバーガラス102の外側の部分に相当する。後面部102Bは、カバーガラス102の内側の部分に相当し、文字板106および指針107に対向する。
本実施形態においては、カバーガラス102の前面部102Aに、前述の反射防止層12が位置している。
上述の実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1)透光性部材10は、透光性を有する基材11と、反射防止層12とを含んで構成され、反射防止層12は、1.94〜2.02の屈折率を有する高屈折率層(窒化ケイ素層)12A、12Cと、1.465〜1.480の屈折率を有する低屈折率層(酸化ケイ素層)12B、12Dとが交互に積層された構成を有する。それ故、反射防止層12は、優れた反射防止機能を備えている。また、前記した高屈折率層12A、12Cの屈折率が1.98〜2.01であるとさらに優れた反射防止効果を奏することができる。
(2)時計100において、透光性部材10が、カバーガラス102としてケース104に設けられているので、透光性部材10の反射防止機能によって情報の視認性が向上する。なお、カバーガラス102が耐傷性にも優れているので、長期間にわたってカバーガラス102自体の透明性および反射防止性を維持できる。
本発明は、以上述べた実施形態には限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で種々の改良および変形を行うことが可能である。
前記実施形態では、透光性部材10が時計の風防としてのカバーガラス102に適用された例を示した。しかし、本発明が適用される透光性部材は、風防としてのカバーガラスに限定されない。機械式時計などでは、裏蓋が設けられる位置にカバー部材としての透光性部材が設けられ、この透光性部材を介して時計体の内部の機構を視認可能なシースルーバック仕様とされていることがある。このような場合、この透光性部材の製造方法として本発明を適用できる。
なお、透光性部材の基材としては、高硬度のサファイアガラスが好適であるが、このほか、石英ガラス、ソーダガラス等の使用も検討してよい。
本発明の透光性部材は、時計に使用されるカバー部材に限らず、携帯電話、携帯情報機器、計測機器、デジタルカメラ、プリンター、ダイビングコンピューター、脈拍計等の各種機器における情報表示部のカバー部材として好適に使用できる。
なお、本発明の透光性部材は、カバー部材には限定されない。本発明に係る反射防止層は、透光性部材の基材において反射防止機能が要求される任意の箇所に形成される。
以下に、実施例および比較例により、本発明をより詳細に説明する。具体的には、時計用カバーガラスの基材として一般的なサファイアガラスを用い、その表面に所定の反射防止層を形成した後、各種の評価を行った。
〔実施例1〜6、比較例1〜6〕
(基材の前処理)
サファイアガラスを120℃の熱濃硫酸に10分間浸漬した後、純水でよく洗浄し、120℃に設定されたオーブンで、大気中30分間乾燥した。次に、このサファイアガラスをスパッタ装置内部に載置した後、120℃に加熱しながら装置内部を10−6Torrの圧力とした。続いて、装置内にArガスを導入し、0.8mTorrで逆スパッタしてサファイアガラス表面をクリーニングした。
(反射防止層形成工程)
シリコンをターゲットとし、以下の条件でリアクティブスパッタリングを行い、高屈折率層と低屈折率層からなる反射防止層(4層)を、サファイアガラス製基材の表面に形成した。反射防止層の具体的構成は、実施例1〜6および比較例1〜6についていずれも以下の通りである。
SiO(88nm)/SiNx(91nm)/SiO(12nm)/SiNx(27nm)//基材
成膜条件としては、前述の実施形態における表1より以下の表2および表3に示す条件を採用した。
Figure 2010243164
Figure 2010243164
〔評価項目および評価方法〕
前記で得られた各基材に対し、表面の反射率を以下のようにして測定した。結果を表2および表3に示す。
<反射率(%)の測定法>
基材表面に対して90°の入射角で入射する標準光の反射率を求め、この反射率と、入射角90°の場合の視感感度とを可視光領域の各波長において掛け合わせた値の積算値に基づいて算出した。時計用のガバーガラスとして適用する場合、実用上0.4%以下であることが望まれる。
〔評価結果〕
表2に示す実施例1〜6の結果から、高屈折率層と低屈折率層の各屈折率を規定した本発明のカバーガラスは、反射率がいずれも0.4%以下である。それ故、文字板や指針などの視認性に優れた時計用として好適であることが理解できる。一方、表3に示す比較例1〜6の結果より、高屈折率層と低屈折率層の各屈折率のうちいずれかが本発明で規定する範囲をはずれると反射率が0.4%を超えてしまい、実用上好ましくないことがわかる。
10…透光性部材、11…基材、12…反射防止層、12A,12C…高屈折率層、12B,12D…低屈折率層、100…時計、102…カバーガラス、102A…前面部、102B…後面部、102C…側面部、104…ケース、105…裏蓋、106…文字板、107…指針

Claims (6)

  1. 透光性を有する基材を備える透光性部材であって、
    前記基材表面の少なくとも一部には、
    窒化ケイ素からなる高屈折率層と、酸化ケイ素からなる低屈折率層とを交互に積層してなる反射防止層が形成され、
    前記高屈折率層の屈折率が1.94〜2.02であり、
    前記低屈折率層の屈折率が1.465〜1.480である
    ことを特徴とする透光性部材。
  2. 請求項1に記載の透光性部材において、
    前記高屈折率層の屈折率が1.98〜2.01である
    ことを特徴とする透光性部材。
  3. 請求項1または請求項2に記載の透光性部材において、
    前記透光性部材は、カバー部材とされ、
    前記反射防止層が、前記カバー部材の内側の部分および外側の部分のうち、少なくとも外側の部分に形成された
    ことを特徴とする透光性部材。
  4. 請求項3に記載の透光性部材を備え、
    前記透光性部材が、時計体を収容するケースに設けられた
    ことを特徴とする時計。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれかに記載の透光性部材の製造方法であって、
    反射防止層を形成するスパッタリング工程を備え、
    前記スパッタリング工程が、窒化ケイ素からなる高屈折率層と、酸化ケイ素からなる低屈折率層とを交互に積層する工程であり、
    前記スパッタリング工程において、雰囲気ガスのガス圧力を調整することにより、前記高屈折率層の屈折率と前記低屈折率層の屈折率を制御する
    ことを特徴とする透光性部材の製造方法。
  6. 請求項5に記載の透光性部材の製造方法であって、
    前記スパッタリング工程では、シリコンターゲットを用いる
    ことを特徴とする透光性部材の製造方法。

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