JP2011149710A - 時計用カバーガラス、及び時計 - Google Patents
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Abstract
文字板や針の視認性、及び太陽電池の発電効率に優れた時計用カバーガラスを提供すること。
【解決手段】
太陽電池18が配設された時計1に用いられ、太陽電池18を覆う時計用カバーガラス10であって、カバーガラス10の少なくとも片面には反射防止層が形成され、反射防止層に基づく反射率曲線における最小反射率を示す波長をxnmとし、太陽電池18の最大感度波長をynmとし、最大視感感度波長をznmとしたときに、下記式(1)を満たすと共に、視感反射率が0.6%以下であることを特徴とする。
f(x,y,z)≦40 ・・・(1)
(ここで、f(x,y,z)は、x,y,及びzの内、最大値と最小値との差の絶対値を示し、z=550である。)
【選択図】図2
Description
このような太陽電池付き時計においては、文字板や針の視認性だけでなく、太陽電池の発電効率を向上させることも望まれている。
視認性を向上させるために反射防止膜を備えた時計用カバーガラスは、例えば、特許文献1に記載されており、ガラス基材に最表層のSiO2膜に窒素を含有させた反射防止膜を備えている。
ここで、反射率曲線とは、可視光域の各波長での反射率を表す曲線であり、反射スペクトルともいう。また、最小反射率を示す波長(最小反射率波長)とは、反射率曲線において反射率が最小値を示すときの波長である。ただし極小値が複数ある場合は反射率2%で波長軸に平行な直線が交差してできる2点間の中心波長を、前記最小反射率を示す波長とみなす。さらに、太陽電池の最大感度波長とは、感度が最大となるときの波長である。
本発明は、以上の知見をもとに完成されたものである。
ことを特徴とする。
f(x,y,z)≦40 ・・・(1)
(ここで、f(x,y,z)は、x,y,及びzの内、最大値と最小値との差の絶対値を示し、z=550である。)
なお、視感反射率とは、可視光域の各波長での反射率を視感度により校正し、平均した反射率の値である。
基材11の材質は無機酸化物であり、例えばサファイアガラス、石英ガラス、ソーダガラス等が挙げられる。カバーガラス10の材質としては、硬度や透明性の観点より特にサファイアガラスが好ましい。
反射防止層12は、基材11の上に形成され、屈折率の異なる無機薄膜を交互に積層して得られる多層膜である。図1に示すカバーガラス10では、反射防止層12は、基材11側から12A(低屈折率層)、12B(高屈折率層)、12C(低屈折率層)、12D(高屈折率層)、12E(低屈折率層)の順に積層された5層から構成されている。ここでは、基材11の両面にそれぞれ5層ずつ形成されている。
ここで、高屈折率層12B、12Dは、窒化ケイ素(SiNx)により形成され、低屈折率層12A、12C、12Eは酸化ケイ素(SiO2)により形成されている。
反射防止層の積層構成(材料、層数、積層順序、各層の屈折率)を光学設計シミュレーション等によって適宜設定することで、所望の最小反射率波長、及び視感反射率を備えた反射防止層を得ることができる。
また、酸化ケイ素からなる最表層(低屈折率層12E)の層厚は70〜110nmであることが好ましく、さらに好ましくは75〜105nmである。また、最表層に隣接する窒化ケイ素層(高屈折率層12D)の層厚は50〜115nmであることが好ましく、より好ましくは55〜110nmである。前記した層厚の範囲をはずれると反射防止層の反射率が高くなる傾向にある。
基材11の表面に上述した反射防止層12を形成する際には、スパッタリング法が用いられる。スパッタリング法としては、無機薄膜形成の際に用いられる通常の方法が適用できるが、本実施形態では、SiをターゲットとしArガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で高周波スパッタリングを行い、窒化ケイ素からなる高屈折率層12B,12Dを形成し、酸素ガスとArガスからなる混合ガス雰囲気下で高周波スパッタリングを行い、酸化ケイ素からなる低屈折率層12A,12C,12Eを形成する。
基材11上の両面それぞれに前記した5層からなる反射防止層12が形成されることにより、カバーガラス10が製造される。
また、反射防止層12をスパッタリングにより形成する前に、基材11に対して表面の付着物を除去する逆スパッタリング工程を備えると、基材11の表面を清浄にすることができるので、基材11と反射防止層12との密着性向上の観点より好ましい。
図2に、カバーガラス10を備えた時計の断面図を示す。
図2に示すように、本実施形態の時計1において、カバーガラス10は、時計体(ムーブメント)13を収容するケース14に設けられる。ケース14には裏蓋15が設けられている。
ここで、本実施形態のカバーガラス10の体表面部は、前面部10A、後面部10B、および側面部10Cからなる。前面部10Aは、カバーガラス10の外側の部分に相当する。後面部10Bは、カバーガラス10の内側の部分に相当し、文字板16および指針17に対向する。
本実施形態においては、カバーガラス10の前面部10A、及び後面部10Bに、前述の反射防止層12が位置している。
本実施形態では、a−Si太陽電池を用い、最大感度波長は約510〜530nmの範囲内にある。
f(x,y,550)≦40 ・・・(2)
(ここで、f(x,y,550)は、x,y,及び550の内、最大値と最小値との差の絶対値を示す。)
例えば、x=530、y=520の場合、最小値はy=520であり、最大値は550なので、f(x,y,550)=30となる。
(1)時計1では、カバーガラス10の前面部10A、及び後面部10Bに位置する反射防止層12の反射率中心波長と、文字板16上に装着された太陽電池18の最大感度波長と、視感最大感度波長との各波長差の関係が、上記式(2)を満たすと共に、視感反射率が0.6%以下なので、文字板や針の視認性、及び太陽電池の発電効率を向上させることができる。
例えば、上記実施形態では、カバーガラス10の前面部10A、及び後面部10Bに位置させた反射防止層12の構成が、基材11に対して対称に形成されているが、これに限られず、基材11の表面、及び裏面の膜数、材質が異なってもよい。ただし、基材11の表面側の構成は、基材側から12A(低屈折率層)、12B(高屈折率層)、12C(低屈折率層)、12D(高屈折率層)、12E(低屈折率層)の順に積層するのがよい。
本発明のカバーガラスは、時計に使用されるカバー部材に限らず、太陽電池を備えた携帯電話、携帯情報機器、計測機器、デジタルカメラ等の各種機器における情報表示部のカバー部材としても好適に使用できる。
(基材の前処理)
サファイアガラスを120℃の熱濃硫酸に10分間浸漬した後、純水でよく洗浄し、120℃に設定されたオーブンで、大気中30分間乾燥した。次に、このサファイアガラスをスパッタ装置内部に載置した後、120℃に加熱しながら装置内部を10−6Torrの圧力とした。続いて、装置内にArガスを導入し、0.8mTorrで逆スパッタしてサファイアガラス表面をクリーニングした。
シリコンをターゲットとし、以下の条件でリアクティブスパッタリングを行い、高屈折率層、及び低屈折率層からなる反射防止層(4層〜9層、片面又は両面)を、サファイアガラス製基材の表面に形成した。ここで、実施例として、サファイアガラス製基材の両面に反射防止層を形成し、比較例として、当該基材に反射防止層を形成しない、もしくは片面だけに反射防止層を形成した。
高屈折率層、及び低屈折率層の製膜条件は以下の通りである。
・高屈折率層:窒化ケイ素(SiNx)
窒素ガス :10.0sccm
アルゴンガス :10.0sccm
スパッタリングパワー:2.0kW
・低屈折率層:酸化ケイ素(SiO2)
酸素ガス :10.0sccm
アルゴンガス :10.0sccm
スパッタリングパワー:1.5kW
表1に示した視感反射率は、基材表面に対して90°の入射角で入射する標準光の反射率を求め、この反射率と、入射角90°の場合の視感感度とを可視光領域の各波長において掛け合わせた値の積算値に基づいて算出した。反射率の測定には、オリンパス製「レンズ反射率測定器機USPM-RU」を用いた。
表1に示す反射防止層を有するサファイアガラス製基材の裏面側に対向させて太陽電池を配設し、当該サファイアガラス製基材の表面側から光を照射して発電効率を測定した。発電効率は、JIS C 8907に準拠して測定した。
太陽電池は、3種類のアモルファスシリコン型(三洋電機製 AT−2600B)のものを用いた。それぞれの太陽電池の最大感度波長は、510nm,520nm,及び530nmであった。
また、実施例1〜11、及び比較例1〜2の当該サファイアガラス製基材について、最大感度波長が520nmの太陽電池を用いて発電効率を測定した結果、及びf(x,y,z)を、それぞれ実施例12〜22、及び比較例3〜4として、表2に示し、同じく最大感度波長が530nmの太陽電池を用いて発電効率を測定した結果、及びf(x,y,z)を、それぞれ実施例23〜33、及び比較例5〜6として、表3に示す。
表1〜3に示す実施例1〜33の結果から、上記数式(1)を満たすように太陽電池を選択するとともに、反射防止層を形成し、さらに視感反射率が0.6%以下となるようにすることで、優れた視認性、及び太陽電池発電効率を得られることがわかる。
比較例1,3,5のようにサファイアガラス製基材に反射防止層を形成しない場合、視感反射率が大きく、太陽電池発電効率が低いことがわかる。
また、比較例2,4,6のようにサファイアガラス製基材の片面だけに反射防止層を形成した場合は、比較例1,3,5よりも太陽電池発電効率が大きくなるが、実施例1〜33よりも視感反射率が大きく、視認性と太陽電池発電効率を兼ね備えることができないことがわかる。
Claims (5)
- 太陽電池が配設された時計に用いられ、前記太陽電池を覆う時計用カバーガラスであって、
前記時計用カバーガラスの少なくとも両面に反射防止層が形成され、
前記反射防止層に基づく反射率曲線における最小反射率を示す波長をxnmとし、太陽電池の最大感度波長をynmとし、最大視感感度波長をznmとしたときに、下記式(1)を満たすと共に、視感反射率が0.6%以下である
ことを特徴とする時計用カバーガラス。
f(x,y,z)≦40 ・・・(1)
(ここで、f(x,y,z)は、x,y,及びzの内、最大値と最小値との差の絶対値を示し、z=550である。) - 請求項1に記載の時計用カバーガラスにおいて、
前記反射率曲線に対し、反射率2%で波長軸に平行な直線が交差してできる2点間の中心波長を、前記最小反射率を示す波長とみなす
ことを特徴とする時計用カバーガラス。 - 請求項1または請求項2に記載の時計用カバーガラスにおいて、
前記反射防止層は、高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層されてなる無機多層膜である
ことを特徴とする時計用カバーガラス。 - 請求項3に記載の時計用カバーガラスにおいて、
前記高屈折率層は窒化ケイ素からなり、前記低屈折率層は酸化ケイ素からなる
ことを特徴とする時計用カバーガラス。 - 請求項1から請求項4までのいずれかに記載の時計用カバーガラスを備える
ことを特徴とする時計。
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