JP4619166B2 - 時計用風防ガラス - Google Patents

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Description

この発明は、時計ケースの前面に装着される時計用風防ガラス、およびその時計用風防ガラスを備えた腕時計、懐中時計などの時計に関する。
腕時計や懐中時計などの小型の時計は、一般に金属製の胴と裏蓋からなる時計ケースの前面にパッキンを介して風防ガラスを装着して密閉空間を形成し、アナログ式の場合はその内部にムーブメントと文字板や指針等を収納し、風防ガラスを通して文字板と指針が見えることによって時刻が表示されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
デジタル式の場合は、その時計ケースの内部に液晶表示パネルとその駆動回路や計時回路を構成する回路基板等を収納し、風防ガラスを通して液晶表示器の時刻表示部やカレンダー表示部が見えるようになっている(例えば、特許文献2参照)。
そのため、風防ガラスには透明度が高く傷がつきにくいサファイアガラスや強化ガラスなどが用いられている。
特許第2766077号公報 特許第3310678号公報
このように、時計における風防ガラスは透明度が高く、外部からの入射光の殆どが透過し、時計内部の文字板等からの反射光も殆ど透過して視認側に出射する。しかし、その風防ガラスと両側の空気との屈折率の差によって、入射光の一部は風防ガラスの視認側の面および反対側の面でそれぞれ反射し、時計内部の文字板等からの反射光も一部が同様に両面でそれぞれ反射される。そのため、時計を見る角度によってはその反射によって時刻等の表示が見え難くなるという問題があった。
この風防ガラスは、時計ケースを密閉して内部にゴミや水分などが侵入しないように保護するものであるが、時刻等の表示の見易さやデザイン的な面からは、あたかも風防ガラスがないかのように、透明で無反射であるのが望ましい。
そのため、風防ガラスの視認側の面に反射防止膜を形成して反射率を低減するようにした時計もあるが、その反射率が可視光領域全体に亘って充分低くなっていなかったり、使用しているうちに反射防止膜が傷ついたり磨耗あるいは剥離したりして、反射防止効果が低下したりムラが生じて、かえって見難くなるようなこともあり、満足できるものではなかった。
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、時計用風防ガラスの反射率を可視光領域全体に亘って充分小さくして、どのような角度からでも常に時刻等の表示が見易くなるようにし、しかも長期間使用しても反射防止効果が低下したりムラが生じたりすることがなく、時刻等の表示の見易さが変わらないようにすることを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成するため、時計ケースの前面に装着される風防ガラスであって、ガラス基材の表面となる視認側の面に形成する反射防止膜が、ガラス基材側から第1の窒化シリコン膜、第1の酸化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、および最外層の第2の酸化シリコン膜が順次形成されている4層構造であり、前記4層構造の反射防止膜は、前記第1の窒化シリコン膜が20〜50nm、前記第1の酸化シリコン膜が10〜40nm 、前記第2の窒化シリコン膜が20〜60nm 、前記第2の酸化シリコン膜が70〜120nmのそれぞれ膜厚を有し、また、視認側の反対面で、ガラス基材の裏面となる時計内部側の面に形成する反射防止膜が、ガラス基材側から窒化シリコン膜、酸化シリコン膜が順次形成されている2層構造であり、
前記窒化シリコン膜が10〜50nm 、前記酸化シリコン膜が70〜120nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする
本発明は、時計ケースの前面に装着される風防ガラスであって、ガラス基材の表面となる視認側の面に形成する反射防止膜が、ガラス基材側から第1の窒化シリコン膜、第1の酸化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、および最外層の第2の酸化シリコン膜が順次形成されている4層構造であり、前記4層構造の反射防止膜は、前記第1の窒化シリコン膜が20〜50nm、前記第1の酸化シリコン膜が10〜40nm 、前記第2の窒化シリコン膜が20〜60nm 、前記第2の酸化シリコン膜が70〜120nmのそれぞれ膜厚を有し、また、視認側の反対面で、ガラス基材の裏面となる時計内部側の面に形成する反射防止膜が、ガラス基材側から酸化アルミニウム、弗化マグネシウム、もしくは酸化アルミニウム、弗化カルシウムが順次形成されている2層構造であり、前記酸化アルミニウム膜が15〜60nm、前記弗化マグネシウムもしくは弗化カルシウム膜が75〜120nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする
本発明は、前記4層構造の反射防止膜が、前記第1の窒化シリコン膜が25〜40nm、前記第1の酸化シリコン膜が15〜30nm 、前記第2の窒化シリコン膜が35〜50nm 、前記第2の酸化シリコン膜が80〜100nmのそれぞれ膜厚を有することを特徴とする。
また、前記2層構造の反射防止膜は、前記窒化シリコン膜が15〜30nm、前記酸化シリコン膜が80〜110nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする。
また、前記2層構造の反射防止膜は、前記酸化アルミニウム膜が20〜50nm、前記弗化マグネシウムもしくは弗化カルシウム膜が85〜110nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする。
この発明による風防ガラスは、反射率が可視光領域全体に亘って1.0〜1.5%であり充分小さく、どのような角度からでも反射が殆ど生じないので、この風防ガラスを備えた時計は、あたかも風防ガラスがないかのように、常に時刻等の表示が見易くなる。また、風防ガラスに設けた反射防止膜が多層構造であり、視認側に設けた反射防止膜の最外層が酸化シリコンで最も大きな膜厚を有するので、充分な耐久性があり、長期間使用しても反射防止効果が低下したりムラが生じたりすることがなく、時刻等の表示の見易さが変わらない。
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
この発明による時計用風防ガラスの実施例を図3及び図1によって説明する。図3はその全体の厚さ方向の断面図であり、図1はその視認側の面付近の反射防止膜の層構成を示す拡大断面図である。
図3に示す風防ガラス1は、透明度の高いサファイアガラス等のガラス基材2の全面、すなわち視認側となる表(おもて)面とその反対側(時計内部側で文字板等に面する)の裏面の両面に、透明で硬質の反射防止膜3を形成している。そして、胴と裏蓋からなる時計ケースの前面に、外周部との間にパッキンを介して固着される。そのとき図3で上側の面が視認側で、下側の面が時計内部側の面で文字板等に面する。
視認側の面とその反対側の時計内部側の面の両方に反射防止膜を形成する際、両面に同じ組成で同じ層数かつ同じ膜厚の膜としても良いが、視認側の面は外部と接触するため耐傷性(硬度)を重視、時計内部側の面は時計内部に収納されるため、耐傷性ではなく反射率を重視した構成とすると、反射率が低く、かつ耐傷性の優れた、より良い時計用風防ガラスとすることができる。
視認側の面の反射防止膜3aは、図1に示すように、ガラス基材2側から第1の窒化シリコン(SiN)膜31a、第1の酸化シリコン(SiO)膜32a、第2の窒化シリコン膜33a、および最外層の第2の酸化シリコン膜34aが順次形成された4層構造になっている。
そして、各層の膜厚は、厚すぎると色付きが生じ、薄過ぎると傷つき易い(特に最外層の第2の酸化シリコン膜34a)ので、種々実験した結果、反射率が可視光領域の略全域で2%以下(略1.5%)と低く、色付きが生じず、耐傷性も充分ある反射防止膜3aは、各層の膜厚を次の範囲にするとよいことが判った。
第1の窒化シリコン膜31a:20〜50nm、より望ましくは25〜40nm、
第1の酸化シリコン膜32a:10〜40nm、より望ましくは15〜30nm、
第2の窒化シリコン膜33a:20〜60nm、より望ましくは35〜50nm、
第2の酸化シリコン膜34a:70〜120nm、より望ましくは80〜100nm、
そして、最も良好な結果を得た例は、第1の窒化シリコン膜31aが34nm、第1の酸化シリコン膜32aが21nm、第2の窒化シリコン膜33aが42nm、第2の酸化シリコン膜34aが91nmであった。
この反射防止膜3aの各層の成膜は、真空チャンバー内にガラス基材2を入れて真空に排気し、ターゲットとしてシリコン(Si)を使用したスパッタリングによって行なう。各層毎の成膜時に真空チャンバー内に流入させるガスの種類と、スパッタリングパワーと、膜厚の例を次に示す。なお、「sccm」は、標準化された1分間当たりの流量(cc/m)である。
<第1層:窒化シリコン膜31a>
ガス:窒素 9.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:2000W
膜厚:34nm
<第2層:酸化シリコン膜32a>
ガス:酸素 10.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:1500W
膜厚:21nm
<第3層:窒化シリコン膜33a>
ガス:窒素 9.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:2000W
膜厚:42nm
<第4層:酸化シリコン膜34a>
ガス:酸素 10.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:1500W
膜厚:91nm
ここで、図5にガラス基材であるサファイア単独(反射防止膜を設けていない)の反射率と、図6には視認側の面にのみ上記成膜条件で膜を形成した場合の反射率を示す。図から明らかなように、反射防止膜を形成したことにより反射率が大幅に低下したことがわかる。
時計内部側の面の反射防止膜3bは、図2に示すように、ガラス基材2側から窒化シリコン(SiN)膜31b、酸化シリコン(SiO)膜32bが順次形成された2層構造になっている。時計内部側の面については視認側の面と異なり外部と接触することが無いため、耐傷性を重視しなくても良い。よって、耐傷性よりも反射率に重きを置けるので、2層構造としても全く問題ない。換言すると、視認側の面の方が時計内部側の面よりも耐傷性に優れている(高硬度である)。視認側の面と同様、各層の膜厚は、厚すぎると色つきが生じる(特に最外層の酸化シリコン膜32b)ので、種々実験した結果、反射率が可視光領域の略全域で2%以下(略1.5%)と低く、色付きが生じない反射防止膜は、各層の膜厚を次の範囲にするとよいことが分かった。なお、図2の上側が時計内部側に対応している。
窒化シリコン膜31b:10〜50nm、より望ましくは15〜30nm、
酸化シリコン膜32b:70〜120nm、より望ましくは80〜110nm、
そして、最も良好な結果を得た例は、窒化シリコン膜31bが20nm、酸化シリコン膜32bが105nmであった。
このとき、上述のように、時計内部側の面については視認側の面と異なり、耐傷性を重視しなくてもよい。
この反射防止膜3bの各層の成膜は、真空チャンバー内にガラス基材2を入れて真空に排気し、ターゲットとしてシリコン(Si)を使用したスパッタリングによって行なう。各層毎の成膜時に真空チャンバー内に流入させるガスの種類と、スパッタリングパワーと、膜厚の例を次に示す。
<第1層:窒化シリコン膜31b>
ガス:窒素 9.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:2000W
膜厚:20nm
<第2層:酸化シリコン膜32b>
ガス:酸素 10.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:1500W
膜厚:105nm
図7に視認側の面と、時計内部側の面の両面に反射防止膜を形成した場合の反射率を示す。構成は、視認側の面:ガラス基材側から第1の窒化シリコン膜(膜厚:34nm)/第1の酸化シリコン膜(膜厚:21nm)/第2の窒化シリコン膜(膜厚:42nm)/第2の酸化シリコン膜(膜厚:91nm)と、時計内部側の面:ガラス基材側から窒化シリ
コン膜(膜厚:20nm)/酸化シリコン膜(膜厚:105nm)である。視認側の面のみに反射防止膜を形成した場合(図6)と比較して、反射率が大幅に低下したことが分かる。
また、時計内部側の面にガラス基材2側から酸化アルミニウム31c、弗化マグネシウム32cが順次形成された2層構造の反射防止膜3cも反射率の低い構造となる。
弗化マグネシウムは、低屈折率の材料として、反射防止膜に使用されることが多々あるが、弗化マグネシウムを最外層に使用する場合、耐傷性に問題がある。しかしながら、弗化マグネシウムを時計内部側に使用すれば、最外層としても全く問題はない。
この膜も上記と同様、各層の膜厚が厚すぎると色付きが生じてしまう。種々実験した結果、反射率が可視光領域の略全域で2%以下(略1.5%)と低く、色付きが生じず、耐傷性も充分ある反射防止膜は、各層の膜厚を次の範囲にするとよいことが分かった。
酸化アルミニウム膜31c:15〜60nm、より望ましくは20〜50nm、
弗化マグネシウム膜32c:75〜120nm、より望ましくは85〜110nm、
そして、最も良好な結果を得た例は、酸化アルミニウム膜31cが30nm、弗化マグネシウム膜32cが90nmであった。なお、上記弗化マグネシウムを弗化カルシウムとしてもほぼ同様な結果が得られた。
この反射防止膜3cの各層の成膜は、真空チャンバー内にガラス基材2を入れて真空に排気し、ターゲットとして酸化アルミニウム(Al)と弗化マグネシウム(MgF)を使用したスパッタリングによって行う。例えば、膜厚は酸化アルミニウムを30nm、弗化マグネシウムを90nmとする。
図8に視認側の面と、時計内部側の面の両面に反射防止膜を形成した場合の反射率を示す。構成は、視認側の面:ガラス側から第1の窒化シリコン膜(膜厚:34nm)/第1の酸化シリコン膜(膜厚:21nm)/第2の窒化シリコン膜(膜厚:42nm)/第2の酸化シリコン膜(膜厚:91nm)と、時計内部側の面:ガラス基材側から酸化アルミニウム膜(膜厚:30nm)/弗化マグネシウム膜(膜厚:90nm)である。視認側の面のみに反射防止膜を形成した場合(図6)と比較して、反射率が低下したことが分かる。さらに、図7と比較して、時計内部側の面を反射率を重視した膜構成とすることによって、さらに反射率が低下したことが分かる。
このようにして、反射防止膜3の各層を成膜した風防ガラス1を、加熱炉に入れて、大気中で500℃に加熱して20分程度のアニール処理を行なうと、色付きが消えて透明になる。それは、反応が不充分であった窒化シリコンや酸化シリコン、酸化アルミニウム、弗化マグネシウムの粒子が反応して結晶化が進むためと思われる。それによって、傷付きにくさである耐傷性も向上する。加熱温度を600℃にして、5分程度アニール処理をするようにしてもよいが、安定性が悪くなる。
次に、この実施例の時計用風防ガラスの反射防止膜とその比較例(従来例)に対する耐傷性を比較評価するために、各種の試料に対して次の内容で耐傷試験を実施した。
磨耗試験機 スガ試験機 NUS−ISO−2型
ラッピングフィルム 住友3M 酸化アルミニウム 12μ(#1200)
試験荷重 500g一定
摺動回数 100回
反射率測定器 日立分光光度計 U−3300
評価方法 磨耗試験前後の平均反射率(450〜650nm)の差で評価
<試験方法>
上記磨耗試験機に試料の風防ガラスをセットし、12μ(#1200)のラッピングフィルムで、その視認側の面に対して、荷重500gで100回摺動して、その前後の反射率を測定した。その試験前後の反射率の差が小さいほど耐傷性が高いことになる。
そこで、磨耗試験前後の平均反射率(450〜650nm)の差で評価することができるが、耐傷性を必要とするのは外部と接触する視認側の面のみであるため、視認側の面のみに耐傷試験を行った。なお、実際の製品と同様にするため、視認側の面と、時計内部側の面の両面に成膜は行っている。
この発明の実施例の最適試料の場合で、各層の膜厚が最も好ましい値に近い反射防止膜3をガラス基材2の両面に形成した時計用風防ガラスに磨耗試験を行い、反射率特性を測定した。使用した時計用風防ガラスは、視認側の面がガラス基材側から第1層:窒化シリコン(膜厚34nm)/第2層:酸化シリコン(膜厚21nm)/第3層:窒化シリコン(膜厚42nm)/第4層:酸化シリコン(膜厚91nm)、時計内部側の面が第1層:窒化シリコン(膜厚20nm)、第2層:酸化シリコン(膜厚105nm)である。この場合は磨耗試験前後の反射率がいずれも可視光領域の両端部付近を除く広い範囲でほぼ均一に2%前後の低い値を示し、且つ磨耗試験前後の反射率の差が全波長域に亘って1%未満であった。したがって、可視光領域の略全域でムラなく反射率が低く、耐傷性が高い優れた特性を示した。なお、時計内部側の面を第1層:酸化アルミニウム(膜厚30nm)/第2層:弗化マグネシウムや弗化カルシウム(いずれも膜厚90nm)とした場合も上記と遜色ない結果を得た。
この発明の実施例の許容試料の場合で、各層の膜厚が上記許容範囲内ではあるが最適値ではない値の反射防止膜3をガラス基材2の両面に形成した時計用風防ガラスの場合の磨耗試験前後の反射率特性は磨耗試験前後の反射率がいずれも可視光領域の両端部付近を除く広い範囲で2〜4%の範囲にあり、且つ磨耗試験前後の反射率の差が全波長域に亘って1%未満であった。したがって、可視光領域の略全域で反射率が低く、耐傷性が高く、かなり優れた特性を示した。
しかし、最適試料の場合と比べると、反射率が1〜1.5%高く、波長による反射率のムラも若干生じた。
なお、時計内部側の面を第1層:酸化アルミニウム/第2層:弗化マグネシウムもしくは弗化カルシウムとした場合も上記とほぼ同様の結果を得た。
この発明の実施例に近い許容外試料による比較例の場合で、上記と同様な構造の反射防止膜を形成した時計用風防ガラスであるが、視認側の第2の窒化シリコン膜33aの厚さが60nmより厚い場合である。この場合は、光の波長が580nm前後の領域では極めて低い反射率を示し、また全波長域に亘って磨耗試験前後の反射率の差は極めて小さく、耐傷性は高いが、反射率の均一性に欠け、短波長領域および長波長領域で反射率が上昇するので好ましくない。
なお、時計内部側の面を第1層:酸化アルミニウム/第2層:弗化マグネシウムもしくは弗化カルシウムとした場合も上記とほぼ同様の結果を得た。
他の比較例である従来品、すなわち酸化ジルコニウム(ZrO)膜と弗化マグネシウム(MgF)膜の積層膜による反射防止膜が視認側に形成された時計用風防ガラスの場合、磨耗試験前は極めて低い反射率を示すが波長によりムラがあり、磨耗試験後には反射率がかなり上昇し、よって磨耗試験前後の反射率の差が大きく、耐傷性がよくないことが判った。
その他の比較例として、反射防止膜を形成していないサファイアガラスのみの時計用風防ガラスの場合、磨耗試験前後の反射率の差は殆どなく、可視光領域の全域に亘って反射率のムラも殆どないが、その反射率は14%前後と高い値を示しており、反射光が多く文字板等が見難くなることが判った。
なお、この実施例では、ガラス基材の両面に反射防止膜を形成したが、ガラス基材の視認側の面だけに前述した反射防止膜3aを形成しても、反射率が若干上昇するが、その均一性と耐傷性については変わらず、充分実用になるものである。また、この実施例では、視認側の面に4層の反射防止膜を形成した場合を記載したが、4層以上、例えば、6層や8層であればさらに良い反射率が得られている。但し、層数が増加すれば、成膜時間もそれに伴い増加することが多々あるので、反射防止膜を形成する時計用風防ガラスの用途に合わせ、層数は適宜決定すればよい。
次に、この発明による時計用風防ガラスを備えた時計の実施例を図4によって説明する。図4はその時計の断面図である。
この時計は腕時計であり、胴11の時計内部側の面側に裏蓋12をOリング14でシールして嵌合させて時計ケース10を形成し、その前面にこの発明による時計用風防ガラス1をその外周部と胴11の内周段部との間にパッキン13を介して密嵌して固着し、時計内にチリやホコリ、水分等が侵入しないように気密構造にしている。
この時計ケース10内にはムーブメント5と文字板6とが一体に、中枠15と押えリング16に挟持されて収納され、そのムーブメント5の中心部から文字板6を貫通して突出する指針軸7に、時針、分針、および秒針からなる指針8が取り付けられている。胴11の内周と文字板の外周付近との間に見切枠17が装着されている。
この腕時計は、風防ガラス1の透明度が高く色付きもなく、反射率が可視光領域の略全域において2%以下と低いので、ほとんど風防ガラスがあることが判らないくらいであり、かなり傾斜した角度でも、反射光が殆どないので時計内部の文字板6と指針8による時刻表示をはっきりと視認することができる。
時刻やカレンダーが液晶表示器によってデジタル表示されるデジタル式腕時計などに適用した場合でも、風防ガラス1による入射光の反射が極めて少ないので、その液晶表示器による時刻やカレンダーの表示を鮮明に見ることができる。
しかも、長歩期間使用しても風防ガラス1の反射防止膜が傷付いたり剥離したりすることがなく、反射率が殆ど変化しないので、時刻表示等の見やすさが変わらない。
この発明による時計用風防ガラスおよびそれを備えた時計は、腕時計や懐中時計、小型の置時計などに適用でき、その時刻表示を見易くし、商品価値を高めることができる。
この発明による時計用風防ガラスの視認側の面付近の拡大断面図である。 この発明による時計用風防ガラスの時計内部側の面付近の拡大断面図である。 この発明による時計用風防ガラスの全体の断面図である。 この発明による時計用風防ガラスを備えた時計の一実施例を示す断面図である。
反射防止膜を設けていない時計用風防ガラスであるサファイア単独の反射率を示す線図である。 本発明の反射防止膜を、視認側の面のみに設けたときの反射率を示す線図である。 本発明の反射防止膜を、視認側の面と、時計内部側の面の両面に設けたときの反射率を示す線図である。 本発明の他の反射防止膜を、視認側の面と、時計内部側の面の両面に設けたときの反射率を示す線図である。
符号の説明
1:風防ガラス
2:ガラス基材
3a、3b、3c:反射防止膜
5:ムーブメント
6:文字板
7:指針軸
8:指針
10:時計ケース
11:胴
12:裏蓋
13:パッキン
14:Oリング
15:中枠
16:押えリング
17:見切枠
31a:第1の窒化シリコン膜
32a:第1の酸化シリコン膜
33a:第2の窒化シリコン膜
34a:第2の酸化シリコン膜
31b:窒化シリコン膜
32b:酸化シリコン膜
31c:酸化アルミニウム膜
32c:弗化マグネシウム膜

Claims (5)

  1. 時計ケースの前面に装着される風防ガラスであって、ガラス基材の表面となる視認側の面に形成する反射防止膜が、ガラス基材側から第1の窒化シリコン膜、第1の酸化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、および最外層の第2の酸化シリコン膜が順次形成されている4層構造であり、前記4層構造の反射防止膜は、前記第1の窒化シリコン膜が20〜50nm、前記第1の酸化シリコン膜が10〜40nm 、前記第2の窒化シリコン膜が20〜60nm 、前記第2の酸化シリコン膜が70〜120nmのそれぞれ膜厚を有し、また、視認側の反対面で、ガラス基材の裏面となる時計内部側の面に形成する反射防止膜が、ガラス基材側から窒化シリコン膜、酸化シリコン膜が順次形成されている2層構造であり、
    前記窒化シリコン膜が10〜50nm 、前記酸化シリコン膜が70〜120nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする時計用風防ガラス。
  2. 時計ケースの前面に装着される風防ガラスであって、ガラス基材の表面となる視認側の面に形成する反射防止膜が、ガラス基材側から第1の窒化シリコン膜、第1の酸化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、および最外層の第2の酸化シリコン膜が順次形成されている4層構造であり、前記4層構造の反射防止膜は、前記第1の窒化シリコン膜が20〜50nm、前記第1の酸化シリコン膜が10〜40nm 、前記第2の窒化シリコン膜が20〜60nm 、前記第2の酸化シリコン膜が70〜120nmのそれぞれ膜厚を有し、また、視認側の反対面で、ガラス基材の裏面となる時計内部側の面に形成する反射防止膜が、ガラス基材側から酸化アルミニウム、弗化マグネシウム、もしくは酸化アルミニウム、弗化カルシウムが順次形成されている2層構造であり、前記酸化アルミニウム膜が15〜60nm、前記弗化マグネシウムもしくは弗化カルシウム膜が75〜120nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする時計用風防ガラス。
  3. 前記4層構造の反射防止膜は、前記第1の窒化シリコン膜が25〜40nm 、前記第1の酸化シリコン膜が15〜30nm 、前記第2の窒化シリコン膜が35〜50nm、前記第2の酸化シリコン膜が80〜100nmのそれぞれ膜厚を有することを特徴とする請求項1または2に記載の時計用風防ガラス。
  4. 前記2層構造の反射防止膜は、前記窒化シリコン膜が15〜30nm 、前記酸化シリ
    コン膜が80〜110nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする請求項1に記載の時計用風防ガラス。
  5. 前記2層構造の反射防止膜は、前記酸化アルミニウム膜が20〜50nm 、前記弗化マグネシウムもしくは弗化カルシウム膜が85〜110nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする請求項2に記載の時計用風防ガラス。
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