JP4619166B2 - 時計用風防ガラス - Google Patents
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デジタル式の場合は、その時計ケースの内部に液晶表示パネルとその駆動回路や計時回路を構成する回路基板等を収納し、風防ガラスを通して液晶表示器の時刻表示部やカレンダー表示部が見えるようになっている(例えば、特許文献2参照)。
そのため、風防ガラスには透明度が高く傷がつきにくいサファイアガラスや強化ガラスなどが用いられている。
そのため、風防ガラスの視認側の面に反射防止膜を形成して反射率を低減するようにした時計もあるが、その反射率が可視光領域全体に亘って充分低くなっていなかったり、使用しているうちに反射防止膜が傷ついたり磨耗あるいは剥離したりして、反射防止効果が低下したりムラが生じて、かえって見難くなるようなこともあり、満足できるものではなかった。
前記窒化シリコン膜が10〜50nm 、前記酸化シリコン膜が70〜120nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする。
また、前記2層構造の反射防止膜は、前記窒化シリコン膜が15〜30nm、前記酸化シリコン膜が80〜110nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする。
また、前記2層構造の反射防止膜は、前記酸化アルミニウム膜が20〜50nm、前記弗化マグネシウムもしくは弗化カルシウム膜が85〜110nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする。
図3に示す風防ガラス1は、透明度の高いサファイアガラス等のガラス基材2の全面、すなわち視認側となる表(おもて)面とその反対側(時計内部側で文字板等に面する)の裏面の両面に、透明で硬質の反射防止膜3を形成している。そして、胴と裏蓋からなる時計ケースの前面に、外周部との間にパッキンを介して固着される。そのとき図3で上側の面が視認側で、下側の面が時計内部側の面で文字板等に面する。
そして、各層の膜厚は、厚すぎると色付きが生じ、薄過ぎると傷つき易い(特に最外層の第2の酸化シリコン膜34a)ので、種々実験した結果、反射率が可視光領域の略全域で2%以下(略1.5%)と低く、色付きが生じず、耐傷性も充分ある反射防止膜3aは、各層の膜厚を次の範囲にするとよいことが判った。
第1の酸化シリコン膜32a:10〜40nm、より望ましくは15〜30nm、
第2の窒化シリコン膜33a:20〜60nm、より望ましくは35〜50nm、
第2の酸化シリコン膜34a:70〜120nm、より望ましくは80〜100nm、
そして、最も良好な結果を得た例は、第1の窒化シリコン膜31aが34nm、第1の酸化シリコン膜32aが21nm、第2の窒化シリコン膜33aが42nm、第2の酸化シリコン膜34aが91nmであった。
ガス:窒素 9.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:2000W
膜厚:34nm
<第2層:酸化シリコン膜32a>
ガス:酸素 10.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:1500W
膜厚:21nm
ガス:窒素 9.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:2000W
膜厚:42nm
<第4層:酸化シリコン膜34a>
ガス:酸素 10.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:1500W
膜厚:91nm
酸化シリコン膜32b:70〜120nm、より望ましくは80〜110nm、
そして、最も良好な結果を得た例は、窒化シリコン膜31bが20nm、酸化シリコン膜32bが105nmであった。
このとき、上述のように、時計内部側の面については視認側の面と異なり、耐傷性を重視しなくてもよい。
ガス:窒素 9.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:2000W
膜厚:20nm
<第2層:酸化シリコン膜32b>
ガス:酸素 10.5sccm アルゴン 9.0sccm
スパッタリングパワー:1500W
膜厚:105nm
コン膜(膜厚:20nm)/酸化シリコン膜(膜厚:105nm)である。視認側の面のみに反射防止膜を形成した場合(図6)と比較して、反射率が大幅に低下したことが分かる。
弗化マグネシウムは、低屈折率の材料として、反射防止膜に使用されることが多々あるが、弗化マグネシウムを最外層に使用する場合、耐傷性に問題がある。しかしながら、弗化マグネシウムを時計内部側に使用すれば、最外層としても全く問題はない。
この膜も上記と同様、各層の膜厚が厚すぎると色付きが生じてしまう。種々実験した結果、反射率が可視光領域の略全域で2%以下(略1.5%)と低く、色付きが生じず、耐傷性も充分ある反射防止膜は、各層の膜厚を次の範囲にするとよいことが分かった。
弗化マグネシウム膜32c:75〜120nm、より望ましくは85〜110nm、
そして、最も良好な結果を得た例は、酸化アルミニウム膜31cが30nm、弗化マグネシウム膜32cが90nmであった。なお、上記弗化マグネシウムを弗化カルシウムとしてもほぼ同様な結果が得られた。
磨耗試験機 スガ試験機 NUS−ISO−2型
ラッピングフィルム 住友3M 酸化アルミニウム 12μ(#1200)
試験荷重 500g一定
摺動回数 100回
反射率測定器 日立分光光度計 U−3300
評価方法 磨耗試験前後の平均反射率(450〜650nm)の差で評価
上記磨耗試験機に試料の風防ガラスをセットし、12μ(#1200)のラッピングフィルムで、その視認側の面に対して、荷重500gで100回摺動して、その前後の反射率を測定した。その試験前後の反射率の差が小さいほど耐傷性が高いことになる。
そこで、磨耗試験前後の平均反射率(450〜650nm)の差で評価することができるが、耐傷性を必要とするのは外部と接触する視認側の面のみであるため、視認側の面のみに耐傷試験を行った。なお、実際の製品と同様にするため、視認側の面と、時計内部側の面の両面に成膜は行っている。
しかし、最適試料の場合と比べると、反射率が1〜1.5%高く、波長による反射率のムラも若干生じた。
なお、時計内部側の面を第1層:酸化アルミニウム/第2層:弗化マグネシウムもしくは弗化カルシウムとした場合も上記とほぼ同様の結果を得た。
なお、時計内部側の面を第1層:酸化アルミニウム/第2層:弗化マグネシウムもしくは弗化カルシウムとした場合も上記とほぼ同様の結果を得た。
その他の比較例として、反射防止膜を形成していないサファイアガラスのみの時計用風防ガラスの場合、磨耗試験前後の反射率の差は殆どなく、可視光領域の全域に亘って反射率のムラも殆どないが、その反射率は14%前後と高い値を示しており、反射光が多く文字板等が見難くなることが判った。
この時計は腕時計であり、胴11の時計内部側の面側に裏蓋12をOリング14でシールして嵌合させて時計ケース10を形成し、その前面にこの発明による時計用風防ガラス1をその外周部と胴11の内周段部との間にパッキン13を介して密嵌して固着し、時計内にチリやホコリ、水分等が侵入しないように気密構造にしている。
この腕時計は、風防ガラス1の透明度が高く色付きもなく、反射率が可視光領域の略全域において2%以下と低いので、ほとんど風防ガラスがあることが判らないくらいであり、かなり傾斜した角度でも、反射光が殆どないので時計内部の文字板6と指針8による時刻表示をはっきりと視認することができる。
しかも、長歩期間使用しても風防ガラス1の反射防止膜が傷付いたり剥離したりすることがなく、反射率が殆ど変化しないので、時刻表示等の見やすさが変わらない。
2:ガラス基材
3a、3b、3c:反射防止膜
5:ムーブメント
6:文字板
7:指針軸
8:指針
10:時計ケース
11:胴
12:裏蓋
13:パッキン
14:Oリング
15:中枠
16:押えリング
17:見切枠
31a:第1の窒化シリコン膜
32a:第1の酸化シリコン膜
33a:第2の窒化シリコン膜
34a:第2の酸化シリコン膜
31b:窒化シリコン膜
32b:酸化シリコン膜
31c:酸化アルミニウム膜
32c:弗化マグネシウム膜
Claims (5)
- 時計ケースの前面に装着される風防ガラスであって、ガラス基材の表面となる視認側の面に形成する反射防止膜が、ガラス基材側から第1の窒化シリコン膜、第1の酸化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、および最外層の第2の酸化シリコン膜が順次形成されている4層構造であり、前記4層構造の反射防止膜は、前記第1の窒化シリコン膜が20〜50nm、前記第1の酸化シリコン膜が10〜40nm 、前記第2の窒化シリコン膜が20〜60nm 、前記第2の酸化シリコン膜が70〜120nmのそれぞれ膜厚を有し、また、視認側の反対面で、ガラス基材の裏面となる時計内部側の面に形成する反射防止膜が、ガラス基材側から窒化シリコン膜、酸化シリコン膜が順次形成されている2層構造であり、
前記窒化シリコン膜が10〜50nm 、前記酸化シリコン膜が70〜120nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする時計用風防ガラス。 - 時計ケースの前面に装着される風防ガラスであって、ガラス基材の表面となる視認側の面に形成する反射防止膜が、ガラス基材側から第1の窒化シリコン膜、第1の酸化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、および最外層の第2の酸化シリコン膜が順次形成されている4層構造であり、前記4層構造の反射防止膜は、前記第1の窒化シリコン膜が20〜50nm、前記第1の酸化シリコン膜が10〜40nm 、前記第2の窒化シリコン膜が20〜60nm 、前記第2の酸化シリコン膜が70〜120nmのそれぞれ膜厚を有し、また、視認側の反対面で、ガラス基材の裏面となる時計内部側の面に形成する反射防止膜が、ガラス基材側から酸化アルミニウム、弗化マグネシウム、もしくは酸化アルミニウム、弗化カルシウムが順次形成されている2層構造であり、前記酸化アルミニウム膜が15〜60nm、前記弗化マグネシウムもしくは弗化カルシウム膜が75〜120nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする時計用風防ガラス。
- 前記4層構造の反射防止膜は、前記第1の窒化シリコン膜が25〜40nm 、前記第1の酸化シリコン膜が15〜30nm 、前記第2の窒化シリコン膜が35〜50nm、前記第2の酸化シリコン膜が80〜100nmのそれぞれ膜厚を有することを特徴とする請求項1または2に記載の時計用風防ガラス。
- 前記2層構造の反射防止膜は、前記窒化シリコン膜が15〜30nm 、前記酸化シリ
コン膜が80〜110nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする請求項1に記載の時計用風防ガラス。 - 前記2層構造の反射防止膜は、前記酸化アルミニウム膜が20〜50nm 、前記弗化マグネシウムもしくは弗化カルシウム膜が85〜110nm 、のそれぞれ膜厚を有することを特徴とする請求項2に記載の時計用風防ガラス。
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