JP5857628B2 - 電動パワーステアリング装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は電動パワーステアリング装置の製造方法に関する。
電動パワーステアリング装置は、自動車の運転者によってステアリングホイールを介してステアリング軸に操舵トルクが入力された場合に、この操舵トルクを補助する補助トルクとして電動モータの出力を、減速歯車機構を介してステアリング軸に伝達して、運転者の操舵を補助する装置である。
そして、コラム型の電動パワーステアリング装置においては、減速歯車機構を収容するギヤボックス、すなわち、減速歯車機構を収容する略筒状のハウジング部材と、該ハウジング部材にボルト等で取り付けられ該ハウジング部材の開口部を覆うカバー部材とが、アルミニウム合金等の金属材料で構成されている。
一方、近年においては、自動車の省資源化・省エネルギー化や、二酸化炭素排出量低減のための低燃費化が求められているため、自動車の軽量化が図られている。そのため、電動パワーステアリング装置についても、さらなる軽量化が求められ、金属で構成されているギヤボックスの軽量化が検討された。
金属で構成されているギヤボックスの軽量化を図るには、より比重の小さい材料、すなわち樹脂材料で構成すればよいが、単に材料を変更するだけでは、従来品と同等の品質を確保できないおそれがある。特に問題となるのは、樹脂製の構造体に金属製の部品を固定する方法である。
例えば、従来と同様に、ハウジング部材とカバー部材とをボルトで締結したり、ステアリング軸及びウォーム軸を支持する軸受をギヤボックスに直接圧入し固定したりすると、ボルトの軸力あるいは軸受の圧入力によって樹脂材料が劣化するおそれがあった。その結果、ボルトの軸力や軸受の圧入力が徐々に低下するため、最悪の場合にはボルトや軸受がギヤボックスから脱落してしまうおそれがあった。
このような信頼性の問題を改善する技術が、特許文献1に提案されている。特許文献1に開示の電動パワーステアリング装置は、操舵状態検出センサを収容するセンサハウジングと減速歯車機構を収容するギヤハウジングとから構成されるハウジングを全て樹脂材料で構成することにより、軽量化が図られている。このとき、センサハウジングとギヤハウジングは、それぞれレーザーエネルギー透過性を有する樹脂(ポリアミド系樹脂)及びレーザーエネルギー吸収性を有する樹脂(カーボン粉末が添加されたポリアミド系樹脂)で構成されており、組立て後にレーザーを照射して接合面を加熱溶着させることによって一体化されている。
特開2009−298246号公報 特開2005−231308号公報
しかしながら、レーザー溶着という接合方法は、例えば特許文献2に開示されているような手法を適用しなければ、信頼性の高い接合を実現することは難しいと考えられる。
また、特許文献1に開示の技術では、樹脂製のセンサハウジングとギヤハウジングを成形した後に、当該ハウジングに、ステアリング軸を支持する軸受を圧入し固定しているので、軸受の圧入力によって樹脂材料が劣化し、その圧入力が徐々に低下して、最悪の場合には軸受がハウジングから脱落してしまうおそれがあった。よって、信頼性において改善の余地があった。
さらに、センサハウジングとギヤハウジングを全てポリアミド系樹脂材料で構成しているため、吸水による変形が生じやすく、寸法安定性の面でも改善の余地があった。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、減速歯車機構を収容するギヤボックスが軽量で信頼性が高く且つ寸法安定性に優れる電動パワーステアリング装置の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明の態様は次のような構成からなる。すなわち、本発明の一態様に係る電動パワーステアリング装置の製造方法は、ステアリング軸に入力された操舵トルクに応じて、前記操舵トルクを補助する補助トルクを出力する電動モータと、ウォームホイール及びウォームを有し前記補助トルクを減速して前記ステアリング軸に伝達する減速歯車機構と、前記ウォームに一体的に形成されたウォーム軸を回転自在に支持する転がり軸受と、を備え、前記減速歯車機構及び前記転がり軸受を収容するハウジング部材と、該ハウジング部材の開口部を覆うカバー部材と、を有し、前記ハウジング部材及び前記カバー部材がボルトにより締結され一体化されたギヤボックスをさらに備える電動パワーステアリング装置を製造する方法であって、前記ハウジング部材を、前記ボルトが挿通されるボルト穴を有する金属製の芯金と前記転がり軸受とをインサートとした樹脂材料のインサート成形によって製造し、前記カバー部材を、前記ボルトが挿通されるボルト穴を有する金属製の芯金をインサートとした樹脂材料のインサート成形によって製造することを特徴とする。
本発明により製造された電動パワーステアリング装置は、ハウジング部材及びカバー部材が、金属製の芯金をインサートとした樹脂材料のインサート成形によって製造されており、ボルトにより締結され一体化されているので、ギヤボックスが軽量で信頼性が高く且つ寸法安定性に優れる。
本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。 歯車減速機構の構成を示す部分断面図である。 ギヤボックスの分解図である。 変形例のギヤボックスの分解図である。
本発明に係る電動パワーステアリング装置の製造方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る電動パワーステアリング装置の一実施形態である、自動車のコラム式電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図であり、図2は、図1の電動パワーステアリング装置が備える歯車減速機構の構成を示す部分断面図である。また、図3は、ギヤボックスの分解図である。
図1の電動パワーステアリング装置は、自動車の運転者によってステアリングホイール10に入力された操舵トルクが伝達されるステアリング軸11を備えている。このステアリング軸11は、図示しないトーションバーで連結された上部軸11aと下部軸11bとで構成されており、ステアリング軸用ハウジング12の内部に、軸心を中心に回転自在に支持されている。ステアリング軸用ハウジング12は、下部を車両の前方に向けて傾斜させた姿勢で、車室内部の所定位置に固定されている。なお、ステアリングホイール10は、ステアリング軸用ハウジング12から突出している上部軸11aの上端に固定されている。
ステアリング軸11の回転を左右の転舵輪(図示せず)の運動に変換するラックアンドピニオン機構20は、軸方向に移動可能なラック21と、ラック21の軸心に対して斜めに支持されラック21の歯に噛み合う歯を備えたピニオン22と、ラック21及びピニオン22を支持する筒状のラック用ハウジング23と、を備えている。そして、ラックアンドピニオン機構20は、その長手方向が車両の幅方向に沿うようにして、車両の前部のエンジンルーム内にほぼ水平に配置されている。
ピニオン22の上端部とステアリング軸11の下部軸11bの下端部とは、2個の自在継手25,26を介して連結されているので、ステアリング軸11の回転がラックアンドピニオン機構20によってラック21の左右方向のスライド運動に変換され、ラック21の両端部に連結された図示しない転舵輪が転舵される。
ステアリング軸11の下部軸11bには、前記操舵トルクを補助する補助トルクを下部軸11bに供給する操舵補助機構が連結されている。この操舵補助機構は、下部軸11bに連結された例えばウォームギヤで構成される減速歯車機構30と、補助トルクを出力し減速歯車機構30に供給する電動モータ13と、を備えている。
減速歯車機構30は、ステアリング軸用ハウジング12に連続して設けられたギヤボックス33に収容されている。詳述すると、略筒状のハウジング部材33Aの内部に減速歯車機構30が収容され、ハウジング部材33Aの開口部がカバー部材33Bによって覆われている。そして、ハウジング部材33Aとカバー部材33Bとは、ボルト33Cによって締結され一体化されている。
ハウジング部材33Aとカバー部材33Bはいずれも、金属製の芯金36A,36Bをインサートとした樹脂材料のインサート成形によって製造されたものである。両芯金36A,36Bはボルト穴37を有しているので、両ボルト穴37にボルト33Cを挿通した上でナットで締め付ければ、ハウジング部材33Aとカバー部材33Bとを一体化することができる。
ここで、減速歯車機構30の構成を、図2を参照しながら説明する。減速歯車機構30は、下部軸11bの外周に嵌合されたウォームホイール31と、ウォームホイール31と噛み合うウォーム32とを備えている。ウォーム32の両端にはウォーム軸32a,32bが一体的に形成されており、これらウォーム軸32a,32bはそれぞれ、ギヤボックス33に圧入固定された転がり軸受34a,34bによって回転自在に支持されている。また、ギヤボックス33には、例えばボルト締結等の手段により電動モータ13が取り付けられており、この電動モータ13の駆動軸13aとウォーム軸32bとが、例えばスプライン結合又はセレーション結合している。
ウォームホイール31は下部軸11bと連結しているので、電動モータ13の回転(補助トルク)が、ウォーム32及びウォームホイール31を介して減速されつつ下部軸11bに伝達されることとなる。
運転者によってステアリングホイール10に操舵トルク(回転力)が入力されると、ステアリング軸11が回転するが、この操舵トルクはトーションバーにより検出される。そして、検出された操舵トルクに基づいて、電動モータ13の出力(操舵を補助する回転力)が制御される。電動モータ13の出力(補助トルク)は減速歯車機構30により減速されつつ、ステアリング軸11の下部軸11bに供給され、前記操舵トルクと合わされる。そして、このステアリング軸11の回転に伴ってピニオン22が回転し、このピニオン22の回転がラックアンドピニオン機構20によってラック21の左右方向のスライド運動に変換され、転舵輪が駆動されて自動車が操舵される。
ここで、ギヤボックス33について、図3,4を参照しながらさらに詳細に説明する。前述したように、ハウジング部材33A及びカバー部材33Bはいずれも、金属製の芯金36A,36Bをインサートとした樹脂材料のインサート成形によって製造されたものであり、芯金36A,36Bの表面の一部又は全部が樹脂材料で覆われている。
なお、図3のギヤボックス33は、電動モータによる補助トルクが比較的小さい、軽自動車又は排気量1500cc以下の小型車に搭載する電動パワーステアリング装置に好適なものである。一方、図4のギヤボックス33は、図3の例と比べて電動モータによる補助トルクが比較的大きい、中・大型車に搭載する電動パワーステアリング装置に好適なものである。
ギヤボックス33を構成するハウジング部材33A及びカバー部材33Bは、芯金36A,36B以外の部分が樹脂材料で構成されているので、全体が金属材料で構成されている従来のギヤボックスと比べて軽量であり、全体が樹脂材料で構成されている従来のギヤボックスと比べて寸法安定性に優れている。
また、ハウジング部材33Aの芯金36Aとカバー部材33Bの芯金36Bは、ボルト33Cが挿通されるボルト穴37を有しているので、ハウジング部材33Aとカバー部材33Bをボルト33Cで固定することができる。よって、両者33A,33Bの接合強度が高い。また、ボルト33Cの軸力によって樹脂材料が劣化するおそれがない。よって、ボルト33Cの軸力が低下してボルト33Cがギヤボックス33から脱落してしまうおそれがほとんどなく、信頼性が高い。
なお、インサート成形によって芯金36A,36Bのボルト穴37の周辺部分が樹脂材料で覆われてしまう場合は、この部分の樹脂材料の劣化によってボルト33Cの軸力が低下することが懸念される。よって、ボルト穴37の周辺部分が樹脂材料で覆われないように、芯金36A,36Bの表面の出代を十分に確保することが好ましい。また、芯金36A,36Bのボルト穴37の周辺部分には、ギヤボックス33内に封入されているグリース等の潤滑剤が外部に漏出することを防ぐために、Oリング等の密封部材を装着する溝を設けてもよい。
さらに、インサート成形法によれば、転がり軸受34a,34b(あるいは、ステアリング軸11を挿通するためにインサートされる金属製スリーブ38や転がり軸受34a,34bを圧入固定するためにインサートされる金属製スリーブ39)を、樹脂材料の射出成形と同時に樹脂製の構造体と一体化させることが可能である。すなわち、インサート成形法によれば、射出成形と同時に樹脂部分と金属部品(インサート)との一体化が達成される。よって、樹脂材料の成形後に金属部品を圧入する必要がないので、製造工程を簡略化することができる。また、インサート成形法を用いれば、転がり軸受34a,34bがハウジング部材33Aに圧入されることなく固定されるので、圧入力による樹脂材料の劣化が生じるおそれがない。よって、転がり軸受34a,34bがギヤボックス33から脱落するおそれがほとんどなく、信頼性が高い。
さらに、インサート成形法によれば、全体がアルミ合金で構成されている従来のギヤボックスと比べて、ギヤボックス33を低コストで製造することができる。全体がアルミ合金で構成されている従来のギヤボックスを製造する際には、アルミ合金の二次加工工程が必要となるが、インサート成形法によれば、この工程が不要となるからである。
インサート成形法を行う際には、芯金36A,36Bの表面に、接着剤を含有する接着剤層を予め設けておくことが好ましい。すなわち、表面に接着剤層を被覆した芯金36A,36Bをインサートとして用いてインサート成形法を行うことが好ましい。そうすれば、芯金36A,36Bと樹脂材料とが接着剤により強固に接着されるため、ハウジング部材33Aとカバー部材33Bの寸法安定性が良好なものとなる。接着剤層を設ける方法は特に限定されるものではないが、接着剤を含有する溶液又は接着剤そのものの塗布や噴霧があげられる。
以下に、芯金36A,36Bを構成する金属材料、インサート成形法に用いる樹脂材料、及び接着剤について詳細に説明する。
芯金36A,36Bを構成する金属材料の種類は特に限定されるものではないが、例えば、S53C等の機械構造用炭素鋼、SUJ2等の軸受鋼、冷間圧延鋼板(SPCC)、SUS430,SUS410等のステンレス鋼を使用することができる。ただし、軽量化の観点から、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽金属が好適である。
なお、芯金36A,36Bと樹脂材料との密着性を高めるために、芯金36A,36Bの表面を粗面化することが好ましい。表面を粗面化した芯金36A,36Bを用いれば、芯金36A,36Bに接着剤層を設けた場合は接着剤による接着力を高めることができるし、接着剤層を設けない場合でも芯金36A,36Bと樹脂材料との密着性を高めることができる。芯金36A,36Bの表面を粗面化する方法は特に限定されるものではないが、ショットブラスト法や化学エッチング法が好適である。
次に、接着剤層について説明する。接着剤層は単層でも差し支えないが、複数の接着剤層を積層してなるものでもよい。複数の接着剤層を積層する場合には、芯金36A,36Bの表面上に形成する下層には、フェノール樹脂とエポキシ樹脂の少なくとも一方を含有する接着剤を用いることが好ましい。また、接着剤の代わりに、プライマーとしてカップリング剤を用いてもよい。そして、下層の上側に積層される上層には、フェノール樹脂を含有する接着剤を用いることが好ましい。
ポリアミド樹脂とフェノール樹脂は相溶性が良好であるため、樹脂材料の樹脂成分としてポリアミド樹脂を用いた場合には、接着剤層の上層にフェノール樹脂系接着剤を用いると、芯金36A,36Bと樹脂材料とがフェノール樹脂系接着剤によって非常に強固に接着される。よって、芯金36A,36Bの表面を粗面化しなくても、十分に強固な接着力が得られる。ただし、芯金36A,36Bの表面を粗面化した方が、接着力がより高くなることは勿論である。
下層に使用する接着剤に含有されるフェノール樹脂は、具体的にはレゾール型フェノール樹脂が好ましく、フェノール類とホルムアルデヒドとを塩基性触媒の存在下で反応させることによって得られる。
また、下層に使用する接着剤に含有されるエポキシ樹脂は、具体的にはグリシジル型のものが好ましく、エピクロロヒドリンと活性水素化合物とから得られる。この活性水素化合物としては、フェノール誘導体類,グリコール類,有機酸類,アミン類等があげられるが、接着剤としての保存安定性やコスト面を考慮するとフェノール誘導体が好適である。なお、下層に使用する接着剤の具体例としては、ロードファーイースト社製のXPJ−60があげられる。
さらに、接着剤の代わりにプライマーとして使用するカップリング剤の種類は、特に限定されるものではないが、シラン系,クロム系,チタネート系,アルミネート系のカップリング剤が好ましい。ただし、現在はシラン系カップリング剤が主流である。シラン系カップリング剤は、金属製の芯金36A,36Bと結合するシラノール基を分子の一端に有し、樹脂材料(又は上層)と結合可能な有機官能基を分子の他端に有している。
本発明においては、各種樹脂材料に対する反応性の高さから、シラン系カップリング剤の中でもアミノシラン系カップリング剤が特に好適である。アミノシラン系力ップリング剤としては、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランが好適である。なお、アミノシラン系力ップリング剤の具体例としては、信越シリコーン株式会社製のKBP−40やKBP−43があげられる。
下層を形成する際には、イソプロピルアルコール,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン等の有機溶剤、又はこれらの混合溶剤に、前記接着剤を0.5〜20質量%の濃度になるように溶解させた有機溶剤溶液を用いることができる。また、接着剤の代わりにカップリング剤を用いる場合には、0.1〜2.0質量%の濃度になるように、前記カップリング剤を水,アルコール,又は水とアルコールの混合溶剤で希釈して用いることができる。
そして、接着剤の有機溶剤溶液又はカップリング剤の希釈液を、浸漬、噴霧、塗付(刷毛塗り)等の方法により芯金の表面に配して、厚さ0.5〜5μmの膜状とし、室温下で乾燥した後に、例えば150〜250℃で5〜30分間乾燥・硬化させると、下層が芯金に焼き付けられる。
一方、上層に使用する接着剤としては、レゾール型フェノール樹脂を主成分とする接着剤組成物を、5〜40質量%の固形分濃度で有機溶剤に溶解させた有機溶剤溶液を用いることが好ましい。レゾール型フェノール樹脂を主成分とする接着剤組成物としては、例えば、ロードファーイースト社製のTS1677−13や、東洋化学研究所製のメタロックN−15、メタロックN−23(若干量のエポキシ樹脂を含有する)があげられる。
そして、この有機溶剤溶液を、浸漬、噴霧、塗付(刷毛塗り)等の方法により芯金の表面に配して、厚さ0.5〜5μmの膜状とし、室温下で乾燥した後に、例えば100〜150℃で数分〜30分間乾燥・硬化させると、インサート成形時の高温高圧の溶融樹脂によって流失されない程度の半硬化状態で、上層が芯金に焼き付けられる。そして、インサート成形時の溶融樹脂からの熱、さらには、それに引き続く二次加熱(例えば、150℃で2時間の熱処理)によって、上層が完全に硬化する。
次に、樹脂材料について説明する。樹脂材料としては、熱可塑性樹脂と繊維強化材とを含有する樹脂組成物が好ましい。そして、成形品の耐久信頼性、耐衝撃性を考慮すると、熱可塑性樹脂の数平均分子量は、15000以上30000以下が好ましく、20000以上28000以下がより好ましい。
また、繊維強化材の種類は特に限定されるものではないが、アラミド繊維,芳香族ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維等の有機繊維や、ガラス繊維,炭素繊維,炭化ケイ素繊維,アルミナ繊維,ボロン繊維,金属繊維(金属の種類はステンレス,鉄,アルミニウム等があげられる)等の無機繊維が好適である。これらの繊維強化材の中では、良好な補強性からガラス繊維と炭素繊維が好ましい。また、これらの繊維強化材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物における繊維強化材の含有量は、10質量%以上50質量%以下が好ましい。10質量%未満であると、樹脂材料の機械的強度及び寸法安定性が不十分となるおそれがあり、50質量%超過であると、樹脂材料の靭性や耐冷熱衝撃性が不十分となるおそれがある。このような不都合がより生じにくくするためには、樹脂組成物における繊維強化材の含有量は、20質量%以上50質量%以下とすることがより好ましく、25質量%以上45質量%以下とすることがさらに好ましい。
また、樹脂組成物中の繊維強化材の直径(平均繊維径)は、1μm以上30μm以下であることが好ましい。平均繊維径が1μm未満であると、熱可塑性樹脂と混合した際に繊維間の凝集が起こり、繊維強化材の分散が不均一となるおそれがある。一方、平均繊維径が30μm超過であると、射出成形の工程において繊維の配向や分散に問題が生じるおそれがある。また、平均繊維径が太すぎるため樹脂組成物中に含まれる繊維強化材の数が少なくなり、熱可塑性樹脂のみで構成される部分が多くなって、樹脂組成物の強度が不安定になるおそれがある。このような不都合がより生じにくくするためには、繊維強化材の平均繊維径を、5μm以上25μm以下とすることがより好ましい。
さらに、樹脂組成物中の繊維強化材の長さ(重量平均繊維長)は、0.7mm以上5mm以下であることが好ましい。樹脂材料は金属材料に比べて耐衝撃性、クリープ特性、剛性(特に高温剛性)が低く、長期間にわたって使用することが難しい面があるが、上記のように樹脂組成物中の繊維強化材が長繊維であれば、短繊維の繊維補強材を使用した場合と比較して、耐衝撃性、クリープ特性、剛性(特に高温剛性)が優れており耐久信頼性に優れる。また、寸法安定性も優れている。よって、これらの性能を、全体がアルミ合金で構成されている従来のギヤボックスと同等とすることも可能である。
繊維補強材の重量平均繊維長が0.7mm未満であると、耐衝撃性や寸法安定性が不十分となるおそれがある。一方、重量平均繊維長が5mm超過であると、通常の成形方法では成形過程において繊維強化材が折損してしまうおそれがあり、折損を防ぐためには特殊な成形機を用いる必要性が生じる。その結果、ギヤボックス33の製造が高コストとなるおそれがある。
なお、ハウジング部材33Aとカバー部材33Bをインサート成形する前の材料(例えばペレット)の段階では、樹脂組成物中の繊維補強材の重量平均繊維長は2mm以上20mm以下であることが好ましい。2mm未満であると、成形過程における折損により、ハウジング部材33Aやカバー部材33B中の繊維強化材の重量平均繊維長が0.7mm未満となり、前記各性能が不十分となるおそれがある。
一方、20mm超過であると、必然的にペレット等の材料の長さも20mm超過となるため、成形機へのペレット等の導入が困難となるおそれがある。このような不都合がより生じにくくするためには、ペレット等の材料中の繊維強化材の重量平均繊維長を、3mm以上15mm以下とすることがより好ましい。
さらに、熱可塑性樹脂の種類は特に限定されるものではないが、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が好適である。ポリアミド系樹脂の具体例としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46や、これら脂肪族ポリアミドと比較して吸水性、吸湿性の低い半芳香族ナイロンがあげられる。半芳香族ナイロンの種類は特に限定されるものではないが、具体例としては、アジピン酸ユニットにテレフタル酸を一部共重合させた半芳香族ナイロンであるナイロン6T/6I(三井化学株式会社製のArlen)、ナイロン6T/6I/66(ソルベイアドバンストポリマーズ社製のAmodel)、ナイロン6T(Du Pont社製のZytel HTN)、ナイロン9T(クラレ株式会社製のGenestar)があげられる。また、ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートがあげられる。
このような樹脂組成物には、その物性を向上させるために、目的に応じて種々の添加剤を添加してもよい。例えば、電動パワーステアリング装置のギヤボックスは、例えば−40℃〜100℃程度の冷熱衝撃が繰返し印加されるような状況下で使用される場合があるため、そのような状況下での信頼性をより高めるために、熱可塑性樹脂に衝撃強さ改良剤として軟質成分を配合してポリマーアロイとしてもよい。
熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である場合には、ポリアミド11,ポリアミド612,ポリアミド610,変性ポリアミド6T,ポリアミド9T,ポリアミドMXD6から選ばれるいずれかをハードセグメントとし、ポリエステル成分及びポリエーテル成分の少なくとも一方をソフトセグメントとするブロック共重合体を、軟質成分とすることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂である場合には、ブタジエン系ゴム,アクリル系ゴムから選ばれるゴムの粒子を、軟質成分とすることが好ましい。
さらに、熱可塑性樹脂がポリフェニレンサルファイド樹脂である場合には、アクリル系ゴム,カルボキシル変性アクリロニトリルブタジエンゴム,カルボキシル変性水素添加ニトリルゴムから選ばれるゴムの粒子を、軟質成分とすることが好ましい。
軟質成分の配合量は、樹脂組成物全体の5質量%以上50質量%以下が好ましい。5質量%未満であると、耐冷熱衝撃性が不十分となるおそれがあり、50質量%超過であると、強度,剛性,及び耐熱性等の諸物性に悪影響が生じるおそれがある。このような不都合がより生じにくくするためには、樹脂組成物全体における軟質成分の配合量は、10質量%以上35質量%以下とすることがより好ましい。
また、熱可塑性樹脂の酸化劣化を抑制する目的で、樹脂組成物に酸化防止剤を配合してもよい。酸化防止剤の種類は特に限定されるものではないが、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ハイドロキノン系酸化防止剤があげられる。
アミン系酸化防止剤としては、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンポリマーに代表されるアミン・ケトン系酸化防止剤や、p,p’−ジクミルジフェニルアミンに代表されるジアリルアミン系酸化防止剤や、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンに代表されるp−フェニレンジアミン系酸化防止剤があげられる。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに代表されるモノフェノール系酸化防止剤や、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)に代表されるポリフェノール系酸化防止剤があげられる。
ハイドロキノン系酸化防止剤としては、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンがあげられる。
さらに、樹脂組成物には、上記のアミン系,フェノール系,及びハイドロキノン系の酸化防止剤と共に、過酸化物分解型酸化防止剤(二次酸化防止剤)を併用してもよい。二次酸化防止剤としては、2−メルカプトベンズイミダゾールのような硫黄系二次酸化防止剤やトリス(ノニル化フェニル)フォスファイトのようなリン系二次酸化防止剤があげられる。
なお、上記のような酸化防止剤の配合量は、樹脂に対して0.1〜3.0質量%程度が好ましいが、酸化防止剤の種類によっては、ブルームしない範囲あるいは樹脂の物性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、それ以上の量を配合してもよい。
さらに、樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲の量であれば、下記のような添加剤を配合してもよい。例えば、固体潤滑剤(黒鉛、六方晶窒化ホウ素、フッ素雲母、四フッ化エチレン樹脂粉末、二硫化タングステン、二硫化モリブデン等)、無機粉末、有機粉末、潤滑油、可塑剤、ゴム、熱安定剤、紫外線吸収剤、光保護剤、無機又は有機難燃剤、帯電防止剤、離型剤、流動性改良剤、熱伝導性改良剤、非粘着性付与剤、結晶化促進剤、増核剤、顔料、染料剤、光安定剤、その他補強材等を適宜添加してもよい。
熱可塑性樹脂と繊維強化材と添加剤とを混合して樹脂組成物とする方法は特に限定されるものではないが、繊維強化材の連続繊維束に、繊維強化材以外の添加剤が添加された溶融樹脂を含浸させた後に、冷却しペレット化する方法があげられる。溶融含浸する際の熱可塑性樹脂の温度は特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂が十分に溶融し且つ熱劣化しない範囲内の温度に適宜設定すればよい。このような長繊維で強化された熱可塑性樹脂からなる樹脂材料としては、ダイセル化学工業株式会社製のプラストロン(登録商標)や、SABICイノベーティブプラスチックス株式会社製のバートン(登録商標)があげられる。
〔実施例〕
以下に実施例をあげて、本発明をさらに具体的に説明する。電動パワーステアリング装置のギヤボックスの製造方法について、以下に説明する。
まず、ハウジング部材及びカバー部材のアルミニウム合金製芯金(図3又は図4に示す形状の芯金)にエアーブラスト等の処理を施して、芯金の表面を粗面化した。次に、粗面化した芯金の表面にフェノール樹脂系接着剤(プライマーでもよい)を塗布した後に、室温下で風乾させ、さらに続けて150〜250℃の高温で処理して焼付けし完全に硬化させることにより、接着剤層の下層を形成した。
さらに、下層の上に上層用のフェノール樹脂系接着剤を塗布した後に、室温下で風乾させ、さらに続けて熱処理して上層用の接着剤を半硬化状態で焼き付けることにより、接着剤層の上層を形成した。
このようにして得られた芯金と、ステアリング軸を挿通するための金属製スリーブ及びウォーム軸を支持する転がり軸受を圧入固定するための金属製スリーブとを、インサートとして金型内にセットし、樹脂材料のインサート成形を行った。樹脂材料としては、30質量%のガラス繊維と70質量%のナイロン66とからなる樹脂組成物(宇部興産株式会社製のUBE NYLON 2020GU6)、又は、43質量%のガラス繊維と57質量%のナイロン66とからなる樹脂組成物(東洋紡株式会社製のグラマイドTY−181GC)を使用した。
インサート成形により得られたハウジング部材及びカバー部材を、ボルト及びナットにより締結し一体化して、ギヤボックスを完成させた。
Figure 0005857628
表1に示すように、芯金の形状と樹脂材料の種類とがそれぞれ異なる4種のギヤボックス(実施例1〜4)を製造した。また、芯金の表面に接着剤層が設けられていない点を除いては、実施例3と同様のギヤボックス(実施例5)と、芯金を備えていない樹脂材料製のギヤボックス(比較例1)とを、併せて製造した。そして、これらのギヤボックスについて、繰り返し冷熱衝撃試験、耐熱性試験、及び吸湿試験を行った。なお、表1においては、前述した30質量%のガラス繊維と70質量%のナイロン66とからなる樹脂組成物を樹脂材料A、前述した43質量%のガラス繊維と57質量%のナイロン66とからなる樹脂組成物を樹脂材料Bと記してある。
まず、繰り返し冷熱衝撃試験について説明する。ギヤボックスを100℃の高温環境下に30分間保持した後、−40℃の低温環境下に30分間保持した。そして、この温度変化を1サイクルとして2000サイクル繰り返し、1000サイクル、1500サイクル、2000サイクル終了後に、それぞれクラックの発生状況と、ボルト及びナットの締結状況を確認した。
そして、1000サイクル終了後に、ギヤボックスの樹脂部分にクラックが発生しておらず、且つ、ボルト及びナットに緩みが発生していない場合は、実使用上必要十分な耐久信頼性を有していると判断し、合格と評価して、表1においては○印で示した。また、2000サイクル終了後においても、ギヤボックスの樹脂部分にクラックが発生しておらず、且つ、ボルト及びナットに緩みが発生していない場合は、極めて十分な耐久信頼性を有していると評価して、表1においては◎印で示した。さらに、1000サイクル終了後に、ギヤボックスの樹脂部分にクラックが発生しているか、又は、ボルト及びナットに緩みが発生していた場合は、不合格と評価して、表1においては×印で示した。
表1から分かるように、実施例1〜4は、2000サイクル終了後においても、クラックやナットの緩みは全く発生しなかった。これに対して、実施例5は、1000サイクル終了後にはクラックやナットの緩みの発生は全く認められなかったものの、接着剤層を備えていないため、繰返し熱応力の局部的集中が実施例1〜4と比較すると大きく、1500サイクル終了後にギヤボックスの樹脂部分にクラックの発生が確認された。一方、比較例1は、繰返し熱応力によって1000サイクル終了後にナットの緩みが確認された。
次に、耐熱性試験について説明する。ギヤボックスを120℃の高温環境下に1000時間放置した後に、ボルト及びナットの締結状況を確認した。結果を表1に示す。
表1から分かるように、実施例1〜5は、ボルト及びナットの締結状態に、ナットの緩み等の不具合は一切認められなかった。これに対して、比較例1は、樹脂材料に劣化が生じた結果、ナットの緩みが生じていることが確認された。
次に、吸湿試験について説明する。ギヤボックスを温度80℃,湿度90%RHの環境下に300時間保持して、吸湿させた後に、ギヤボックスの外径寸法を測定した。そして、吸湿前後での外径寸法の変化量が40μm未満のものは、寸法安定性が極めて良好と判断し、表1においては◎印で示し、40μm以上80μm未満のものは、寸法安定性が良好と判断し、表1においては○印で示し、80μm以上のものは不合格として、表1においては×印で示した。
表1から分かるように、実施例5は芯金を有するため、寸法安定性は良好であり合格レベルであった。また、実施例1〜4は、芯金と樹脂材料が接着剤により強固に接着されているため、寸法安定性が極めて良好であった。これに対して、比較例1は不合格であった。
次に、繊維強化材の重量平均繊維長と樹脂組成物の物性との関係について検討した結果を説明する。まず、物性評価に用いる試験片の製造方法について説明する。下記の7種の市販材料(1)〜(7)の中から2種を適宜選択して混合し、表2に示す実施例11〜15及び比較例11〜14の樹脂組成物を製造した。
(1)ダイセル化学工業株式会社製のプラストロン(登録商標)PA6−GF50−1:ナイロン6をガラス長繊維で強化した樹脂組成物であり、繊維強化材の含有率は50質量%である。
(2)ダイセル化学工業株式会社製のプラストロン(登録商標)PA66−GF50−2:ナイロン66をガラス長繊維で強化した樹脂組成物であり、繊維強化材の含有率は50質量%である。
(3)ダイセル化学工業株式会社製のプラストロン(登録商標)PA66−CF30−1:ナイロン66を炭素長繊維で強化した樹脂組成物であり、繊維強化材の含有率は30質量%である。
(4)東レ株式会社製のアミラン(登録商標)CM1016G45N:ナイロン6をガラス短繊維で強化した樹脂組成物であり、繊維強化材の含有率は45質量%である。
(5)東レ株式会社製のアミラン(登録商標)CM1026:繊維強化材が添加されていないナイロン6である。
(6)旭化成株式会社製のレオナ(登録商標)14G50:ナイロン66をガラス短繊維で強化した樹脂組成物であり、繊維強化材の含有率は50質量%である。
(7)旭化成株式会社製のレオナ(登録商標)1402:繊維強化材が添加されていないナイロン66である。
Figure 0005857628
例えば、実施例11の樹脂組成物は、ナイロン6をガラス長繊維で強化したものであり、繊維強化材の含有率は30質量%であるが、繊維強化された樹脂組成物である材料(1)とそれに対応するベース樹脂(繊維強化材が添加されていない樹脂)である材料(5)とを、繊維強化材の含有率が30質量%となるような比率で混合して製造した。具体的には、繊維強化された樹脂組成物と繊維強化材が添加されていないベース樹脂とを、Vブレンダーを用いて所定の比率で乾式混合した。
そして、得られたペレットをインラインスクリュー式射出成形機で成形して、ISO178に基づく曲げ試験用試験片、ASTM D671に基づく平面曲げ疲れ試験用試験片、ISO179−1に基づくノッチ付きシャルピー衝撃強さ用試験片、及び平板(縦100mm、横100mm、厚さ2mm)を作製した。
このようにして得られた実施例11〜15及び比較例11〜14の樹脂組成物からなる試験片を、下記のような各種試験に供した。
(A)曲げ試験
ギヤボックスのハウジング部材及びカバー部材の製造に用いる樹脂材料の強度と剛性を確認するため、ISO178に基づく曲げ試験用試験片を用いて、ISO178に基づく曲げ強度と曲げ弾性率を測定した。結果を表2に示す。
(B)曲げ疲労試験
ギヤボックスのハウジング部材及びカバー部材の製造に用いる樹脂材料の疲労強度を確認するため、ASTM D671に基づく平面曲げ疲れ試験用試験片を用いて、ASTM D671に基づく平面曲げ疲れ試験を行った。そして、120℃の雰囲気温度で繰り返し応力負荷回数107 回まで破損しない応力を測定した。結果を表2に示す。
(C)シャルピー衝撃強さ試験
ギヤボックスのハウジング部材及びカバー部材の製造に用いる樹脂材料の耐衝撃性を確認するため、ISO179−1に基づくノッチ付きシャルピー衝撃強さ用試験片を用いて、ISO179−1に基づくノッチ付きシャルピー衝撃強さを測定した。結果を表2に示す。
(D)そり変形量の測定
ギヤボックスのハウジング部材及びカバー部材の製造に用いる樹脂材料のそり変形量を確認するため、平板(縦100mm、横100mm、厚さ2mm)を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中に40時間放置した後のそり変形量を測定した。前記雰囲気中に放置後の平板を定磐の上に置き、四隅のうち1つの隅部を定磐に押圧すると、その押圧した隅部と対角をなす隅部が、平板のそりに起因して定磐から浮き上がるので、浮き上がった隅部の定磐からの高さを測定した。結果を表2に示す。
(E)重量平均繊維長の測定
各試験片中の繊維強化材の重量平均繊維長を、以下のようにして測定した。試験片を磁製坩堝に入れ600℃に設定した電気炉で60分間灰化し、樹脂分を完全に揮発させた。そして、残渣のプレパラートを形成し、米国メディア・サイバネティクス社製の画像解析ソフトウエア イメージ・プロプラスを用いて繊維強化材の重量平均繊維長を測定した。結果を表2に示す。
表2から分かるように、重量平均繊維長が0.7mm以上5mm以下の範囲内である長繊維のガラス繊維を繊維強化材として含有する実施例11〜14の樹脂組成物は、従来の短繊維のガラス繊維を繊維強化材として含有する比較例12〜14の樹脂組成物と比べて、曲げ弾性率はほぼ同等であったが、疲労強度、シャルピー衝撃強さ、そり変形量は、長繊維の添加により亀裂の伝播が抑制されるため、特性が優れていた。
さらに、重量平均繊維長が0.7mm以上5mm以下の範囲内である長繊維の炭素繊維を繊維強化材として含有する実施例15の樹脂組成物は、従来の短繊維の炭素繊維を繊維強化材として含有する比較例11の樹脂組成物と比べて、繊維強化材の添加量が少ないにもかかわらず、優れた曲げ強度、曲げ弾性率、疲労強度を示した。
11 ステアリング軸
13 電動モータ
30 減速歯車機構
33 ギヤボックス
33A ハウジング部材
33B カバー部材
33C ボルト
36A,36B 芯金
37 ボルト穴

Claims (2)

  1. ステアリング軸に入力された操舵トルクに応じて、前記操舵トルクを補助する補助トルクを出力する電動モータと、ウォームホイール及びウォームを有し前記補助トルクを減速して前記ステアリング軸に伝達する減速歯車機構と、前記ウォームに一体的に形成されたウォーム軸を回転自在に支持する転がり軸受と、を備え、
    前記減速歯車機構及び前記転がり軸受を収容するハウジング部材と、該ハウジング部材の開口部を覆うカバー部材と、を有し、前記ハウジング部材及び前記カバー部材がボルトにより締結され一体化されたギヤボックスをさらに備える電動パワーステアリング装置を製造する方法であって、
    前記ハウジング部材を、前記ボルトが挿通されるボルト穴を有する金属製の芯金と前記転がり軸受とをインサートとした樹脂材料のインサート成形によって製造し、前記カバー部材を、前記ボルトが挿通されるボルト穴を有する金属製の芯金をインサートとした樹脂材料のインサート成形によって製造することを特徴とする電動パワーステアリング装置の製造方法
  2. 前記金属製の芯金はアルミニウム合金製であり、前記芯金の表面を粗面化し、次に、粗面化した前記芯金の表面にフェノール樹脂系接着剤を塗布した後に、室温下で風乾させ、さらに続けて150〜250℃の高温で処理して焼付けし完全に硬化させることにより、接着剤層の下層を形成し、さらに、前記下層の上に上層用のフェノール樹脂系接着剤を塗布した後に、室温下で風乾させ、さらに続けて熱処理して前記上層用の接着剤を半硬化状態で焼き付けることにより、前記接着剤層の上層を形成し、このようにして得られた芯金と前記転がり軸受とを、インサートとして金型内にセットし、樹脂材料のインサート成形を行うことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置の製造方法。
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