以下、図面に基づいて本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の一例に係る産業機械の旋回装置の構成例を示す縦断面図、図2は、図1の矢示II方向から見た側面図、図3は、図1の矢示III−III線に沿う断面図である。なお、便宜上、図1は、第1ストッパ部材と第2ストッパ部材の双方を記載している。また、図2、図3も、旋回装置の他の構成要素との関係を分り易くするために、主要な構成要素を適宜重ねて描写してある。
この実施形態に係る旋回装置10は、産業ロボット12(産業機械)の第1関節部分に組み込まれる。この旋回装置10は、後述する回転キャリヤ体18に固定されたモータ(図示略)と、揺動内接噛合型の遊星歯車減速機20と、を備え、産業ロボット12のベース部材等の固定第1部材14に対して旋回部材であるアーム等の旋回第2部材16を所定の範囲内でのみ旋回させる。
以下、該旋回装置10の動力伝達系の構成から説明してゆく。
前記モータは、図示せぬモータ軸の回転を、遊星歯車減速機20の入力歯車22に入力可能である。入力歯車22は、スプライン24を介して入力軸26と連結されている。入力軸26には、伝動歯車28が歯切り形成されている。伝動歯車28は、センタ歯車30と噛合している。
センタ歯車30は、遊星歯車減速機20の軸心O1(後述する内歯歯車32、あるいは回転キャリヤ体18の軸心に同じ)位置に配置された内側筒体34にニードル36を介して回転自在に支持されている。センタ歯車30は、前記伝動歯車28と噛合すると同時に3個の偏心体軸歯車38A〜38C(図1では偏心体軸歯車38Aのみ図示)と噛合している。
3個の偏心体軸歯車38A〜38Cは、3本の偏心体軸40A〜40C(図1では偏心体軸40Aのみ図示)にそれぞれ一体的に歯切り形成されている。各偏心体軸40A〜40Cは、この実施形態では、遊星歯車減速機20の軸心O1からオフセットされた位置で周方向に等間隔に設けられており、2枚の外歯歯車41、42をそれぞれ軸方向に貫通する態様で配置されている。
各偏心体軸40A〜40Cの偏心体軸歯車38A〜38Cの軸方向両側には、それぞれ偏心体43、44が一体的に形成されている。各偏心体43、44の外周には、偏心体軸受45、47を介して前記外歯歯車41、42がそれぞれ嵌合している。外歯歯車41、42の偏心位相差は180度である。
外歯歯車41、42は、それぞれ内歯歯車32に内接噛合している。この実施形態では、内歯歯車32は、円柱状の内歯ピン32Aと該内歯ピン32Aを回転自在に支持するピン溝32B1を備えた内歯歯車本体32Bとで構成されている。内歯歯車本体32Bは遊星歯車減速機20の固定ケーシング46と一体化されている。内歯歯車32の歯数(内歯ピン32Aの数)は、外歯歯車41、42の歯数よりも僅かだけ(この実施形態では1だけ)多い。
外歯歯車41、42の軸方向両側には回転キャリヤ体18、48が一対の主軸受(アンギュラローラ軸受51、53)を介して固定ケーシング46に支持されている。回転キャリヤ体18、48は、この実施形態において、固定ケーシング46に対して最も遅い速度で相対回転する「キャリヤ体」に相当する。回転キャリヤ体18、48は、それぞれ中空部18S、48Sを有し、複数(この例では6本)のキャリヤピン54およびキャリヤボルト55(共に図2にのみ図示)によって連結・一体化されている。回転キャリヤ体18、48は、それぞれの入力軸穴18L、48Lにおいて前記入力軸26を一対の玉軸受56、57を介して支持している。また、回転キャリヤ体18、48は、それぞれの偏心体軸穴18K、48Kにおいて前記偏心体軸40A〜40Cを一対のアンギュラローラ軸受58、59を介して支持している。
なお、前記センタ歯車30を支持している前記内側筒体34は、回転キャリヤ体18の中空部18Sと同径の中空部34Sを有し、回転キャリヤ体18、48の段部18A、48Aに嵌め込まれることで、該回転キャリヤ体18、48と一体回転可能に組み込まれている。また、回転キャリヤ体48の軸方向反外歯歯車側には、ボルト60を介してケーシングカバー61が取り付けられている。
ケーシングカバー60と内側筒体34との間にはオイルシール65、固定ケーシング46と回転キャリヤ体18との間にはオイルシール62、回転キャリヤ体18の入力軸穴18Lと入力軸26との間にはオイルシール63が、それぞれ設けられている。また、回転キャリヤ体18と内側筒体34の間にはOリング64が介在されている。これらのオイルシール62、63および65やOリング64により、遊星歯車減速機20内の空間が密閉されている。
ここで、旋回装置10の旋回範囲を制限するための構成について詳細に説明する。
この実施形態に係る旋回装置10では、遊星歯車減速機20の回転キャリヤ体18に設けられた第1ストッパ部材66が、遊星歯車減速機20の固定ケーシング46に設けられた第2ストッパ部材68に当接することによって、結果として回転キャリヤ体18に固定された産業機械のアーム等の旋回第2部材16の固定第1部材14に対する旋回が規制・制限される。なお、固定第1部材14は、工場の土台(あるいは、基礎フレーム)19に、ボルト21により固定されている。
始めに、遊星歯車減速機20の回転キャリヤ体18、旋回第2部材16、および第1ストッパ部材66の周辺の構成から説明する。
遊星歯車減速機20の回転キャリヤ体18は、該遊星歯車減速機20の固定ケーシング46の外周の最小径部46S(外径d1)よりも径方向外側にδ1だけ延長された外径d2の延長部18Eを有している(d2−d1=δ1)。この延長部18Eに、旋回装置10の第1ストッパ部材66が設けられる。
第1ストッパ部材66は、図1において軸と平行な断面で、図2の付記描写において後述する第1ボルト穴66Fのピッチ円を含む円周方向の断面で、図3において軸と直角の断面で、図4において図3の矢示IVの半径方向から固定ケーシング46の外周を見た部分展開図で、それぞれ示されている。
この実施形態では、第1ストッパ部材66は、回転キャリヤ体18の延長部18Eと同一の外径d2の外周面66A、該外周面66Aと同軸(平行)の内周面66B、後述する第2ストッパ部材68に当接する第1、第2当接面66C、66D、および取付面66Eを有している。第1、第2当接面66C、66Dは、回転キャリヤ体18に組み付けられたときに軸と直角でかつ半径方向(放射方向)に延在している。また、第1ストッパ部材66には、軸と平行に第1ストッパボルト70がねじ込まれる2個の第1ボルト穴66Fが形成されている。
この実施形態では、第1ストッパ部材66の取り付け部として、回転キャリヤ体18の延長部18Eに、該第1ストッパ部材66の内周面66Bおよび取付面66Eを位置決めするための12個の第1〜第12凹部72A〜72Lが、円周方向において12箇所、均等の間隔で形成されている(図1、図2に第1凹部72A、図4に第1凹部72A、第12凹部72Lのみ図示)。第1〜第12凹部72A〜72Lには、それぞれ、第1ストッパ部材66の前記2個の第1ボルト穴66Fに対応する位置に2個のフランジボルト穴18Dが形成されている。なお、フランジボルト穴18Dには、ねじは切られていない。
要するならば、この実施形態に係る回転キャリヤ体18は、第1ストッパ部材66の取り付け部として、該回転キャリヤ体18の円周方向の360/12=30(度)毎に12個設けられた第1〜第12凹部72A〜72Lと、第1ストッパ部材66を回転キャリヤ体18に固定する第1ストッパボルト70を貫通させるための12対、計24個のフランジボルト穴18Dを備えている。フランジボルト穴18Dのピッチ円径はd5である。
なお、この実施形態では、第1ストッパ部材66が回転キャリヤ体18に固定されたときの中心角は、α1である(図2、図3参照)。
第1ストッパ部材66を取り付けるには、先ず、回転キャリヤ体18の延長部18Eの第1〜第12凹部72A〜72Lのいずれかの位置(この実施形態では、第1凹部72A)に位置決めする。その後、フランジボルト穴18Dを介して2個の第1ストッパボルト70を、該第1ストッパ部材66の第1ボルト穴66Fにねじ込む。これにより、第1ストッパ部材66は、回転キャリヤ体18の延長部18E(の任意の位置)に固定される。
回転キャリヤ体18には、産業ロボット12の旋回第2部材16がアームボルト76を介して固定されている。このため、回転キャリヤ体18には旋回第2部材16の心出しおよび位置決めを行うためのリング状の溝18F、およびアームボルト穴18Hが形成されており、旋回第2部材16には前記溝18Fに係合する突部16Aが形成されている。
第1ストッパ部材66を回転キャリヤ体18に固定するための前記フランジボルト穴18Dは、旋回第2部材16を回転キャリヤ体18に固定するためのアームボルト穴18Hよりも径方向外側に設けられ、また、第1ストッパボルト70は、旋回第2部材16の外周16B(外径d3)よりも更に径方向外側に位置している。これにより、旋回第2部材16を回転キャリヤ体18から取り外すことなく、第1ストッパ部材66を取り付けたり、あるいは位置を変えたりすることができる。
次に減速機の固定ケーシング46、固定第1部材14、および第2ストッパ部材68の周辺の構成を説明する。
先ず、図1の紙面下側に着目して、減速機の固定ケーシング46は、該固定ケーシング46の径方向外側に突出するリング状の突出部46Aを備えている。突出部46Aは、軸と直角の一対の第1、第2平行面46B、46Cを有し、固定第1部材14を固定するベースボルト78を貫通させるための(ねじなしの)ボルト穴46Hを有している。ベースボルト78(ボルト穴46H)のピッチ円径は、前記フランジボルト穴18Dのピッチ円径と同一のd5である。
これに対し、産業ロボット12の固定第1部材14は、リング板状の基部14Aに中空の円筒部14Bが連続した形状とされ、この円筒部14Bの軸方向端面14B1に、ベースボルト78がねじ込まれるベースボルト穴14Dを有している。
固定第1部材14の円筒部14Bの軸方向端面14B1は、前記固定ケーシング46の(突出部46Aよりベース部材側の)外周46Mと、該突出部46Aの固定第1部材14側の第1平行面46Bとによって位置決めされている。固定第1部材14は、この位置決め状態で、ベースボルト78を介して、遊星歯車減速機20の固定ケーシング46に固定されている。
一方、図1の紙面上側を参照して、固定ケーシング46の突出部46Aの反ベース部材側の第2平行面46Cには、第1〜第12凹部82A〜82Lが、円周方向に等間隔に12個形成されている(図3参照。図1には第1凹部82Aのみ図示。図4に第1凹部82A、第2凹部82Bおよび第12凹部82Lの3個のみ図示)。本実施形態では、このうちの第1凹部82Aに第2ストッパ部材68が設けられている例が示されている。
また、該第1〜第12凹部82A〜82L内には、第2ストッパ部材68を固定ケーシング46に固定する第2ストッパボルト86をねじ込むためのケーシングボルト穴46Eが、各2個(円周全体で12対、計24個)形成されている。
ケーシングボルト穴46Eのピッチ円径d5は、前記ベースボルト78(ボルト穴46H)のピッチ円径と同一であり、さらに、前述したように、このピッチ円径は、前記フランジボルト穴18Dのピッチ円径とも同一である(全てd5)。
第2ストッパ部材68は、図1において軸と平行な断面で、図3において軸と直角の断面で、図4において図3の矢示IVの半径方向から固定ケーシング46の外周を見た部分展開図で、それぞれ示されている。
この実施形態では、第2ストッパ部材68は、固定ケーシング46の突出部46Aと同一の外径d4の外周面68A、該外周面68Aと同軸(平行)の内周面68B、前記第1ストッパ部材66の第1、第2当接面66C、66Dの当接を受ける第1、第2受け面68C、68D、および取付面68Eを有している。
第1、第2受け面68C、68Dは、固定ケーシング46に組み付けられたときに軸と直角でかつ半径方向(放射方向)に延在している。また、第2ストッパ部材68には、軸平行に2個の第2ボルト孔68Fが形成されている。なお、この第2ボルト孔68Fには、ねじは切られていない。
第2ストッパ部材68は、固定ケーシング46の突出部46Aの第1〜第12凹部82A〜82Lのいずれかの位置(この実施形態では、第1凹部82A)に位置決めした状態で、第2ボルト孔68Fを介して2個の第2ストッパボルト86を、該固定ケーシング46の突出部46Aのケーシングボルト穴46Eにねじ込むことによって、固定ケーシング46の突出部46A(の任意の位置)に固定される。なお、この実施形態では、第2ストッパ部材68が固定ケーシング46に固定されたときの中心角は、β1である。
結局、固定第1部材14および第2ストッパ部材68は、固定ケーシング46の突出部46Aを挟んで固定ケーシング46に対して固定されていることになる。これにより、遊星歯車減速機20の固定ケーシング46を固定第1部材14に据え付けたまま、第2ストッパボルト86のみを締め付けるだけで該第2ストッパ部材68を取り付けることができる。
図4に示されるように、第1ストッパ部材66の第1当接面66Cと第2ストッパ部材68の第1受け面68Cは、その一部が円周方向からみてδ2だけ重なっている。また、回転キャリヤ体18(および該回転キャリヤ体18と連結された産業ロボット12の旋回第2部材16)が矢印B方向に回転してほぼ一周すると、第1ストッパ部材66の第2当接面66Dと第2ストッパ部材68の第2受け面68Dが円周方向からみてやはりδ2だけ重なるようになる。
次に、この旋回装置10の作用を説明する。
モータの回転を受けて入力歯車22が回転すると、スプライン24を介して入力軸26が回転する。入力軸26の回転は、伝動歯車28を介してセンタ歯車30に伝達される。センタ歯車30が回転すると、該センタ歯車30と噛合している3個の偏心体軸歯車38A〜38Cが回転し、3本の偏心体軸40A〜40Cが同時にかつ同方向に回転する。この結果、各偏心体軸40A〜40Cに設けられた偏心体43、44がそれぞれ同期して回転し、各偏心体43、44の外周に偏心体軸受45、47を介して嵌合している外歯歯車41、42が互いに180度の偏心位相差を維持しつつ揺動しながら内歯歯車32に内接噛合する。
この実施形態では、固定ケーシング46が旋回装置10の固定第1部材14に固定されているため、各偏心体軸40A〜40Cの偏心体43、44が1回回転すると(外歯歯車41、42が1回揺動すると)、外歯歯車41、42は内歯歯車32に対して歯数差に相当する「1歯」分だけ位相がずれる(自転する)。この外歯歯車41、42の自転成分が、各偏心体軸40A〜40Cの遊星歯車減速機20の軸心O1まわりの公転として回転キャリヤ体18から取り出される。この結果、回転キャリヤ体18とアームボルト76を介して連結されている旋回装置10の旋回第2部材16が旋回する。
なお、遊星歯車減速機20の固定ケーシング46は、固定第1部材14に固定されており、キャリヤ体側が回転キャリヤ体18、48として回転する構成とされているため、モータを可動部材である回転キャリヤ体18に取り付けることで、回転キャリヤ体18とモータを一緒に旋回させることができ、したがって、旋回第2部材16とモータが干渉することはない。
ここで、今、回転キャリヤ体18が図4の矢印A方向に回転して図4の位置に到達すると、回転キャリヤ体18に固定された第1ストッパ部材66の第1当接面66Cが、固定ケーシング46に固定された第2ストッパ部材68の第1受け面68Cに(重なりδ2の部分で)当接するようになる。この結果、回転キャリヤ体18が固定ケーシング46に対してこれ以上回転することができなくなる。
遊星歯車減速機20の回転キャリヤ体18は、旋回装置10の旋回第2部材16に固定されており、遊星歯車減速機20の固定ケーシング46は、旋回装置10の固定第1部材14に固定されている。このため、結局、旋回装置10の固定第1部材14に対する旋回第2部材16の矢印A方向の旋回が規制(制限)される。
一方、回転キャリヤ体18は、この状態でも、図4の矢印B方向には回転(逆転)可能である。しかし、回転キャリヤ体18が図4の位置から矢印B方向に回転すると、やがて、該回転キャリヤ体18に固定された第1ストッパ部材66が図4の想像線の位置に到達し、第1ストッパ部材66の第2当接面66Dが第2ストッパ部材68の第2受け面68Dに(重なりδ2の部分で)当接するようになる。これにより、全く同様に、旋回装置10の固定第1部材14に対する旋回第2部材16の矢印B方向のこれ以上の旋回が規制(制限)される。
以上の作用により、この実施形態では、結局、旋回装置10の旋回第2部材16は、固定ケーシング46の第1凹部82Aを基点として、固定第1部材14に対して、360−(α1+β1)度の範囲のみ旋回が許容されることになる。
固定第1部材14に対する旋回第2部材16の旋回の範囲を変更したいときは、回転キャリヤ体18に設けられる第1ストッパ部材66の固定位置を変更すればよい。なお、第1、第2ストッパ部材の中心角α1、β1の大きさを変更しても、旋回範囲を変更することができる。
また、第1ストッパ部材66を回転キャリヤ体18に2個設けるようにした場合には、360−(α1+β1)度よりも小さな角度でのみ旋回を許容する旋回装置10とすることができる。例えば、第1ストッパ部材66を第1凹部72Aと120度離れた位置の第4凹部72D(図示はされていない)の2箇所に固定した場合には、回転キャリヤ体18(すなわち該回転キャリヤ体18に固定された旋回第2部材16)を120−(α1+β1)度の範囲、或いは240−(α1+β1)度の範囲でのみ旋回を許容する旋回装置10とすることができる。
なお、旋回範囲の変更は、固定ケーシング46に固定される第2ストッパ部材68の固定位置を、変更することによっても相対的に固定第1部材14に対する旋回第2部材16の旋回範囲を変更することができる。すなわち、今、第2ストッパ部材68が固定されている第1凹部82Aからそれ以外の第2〜第12凹部82B〜82Lのいずれかに変更することによっても旋回第2部材16の旋回範囲を変更できる。
また、360−(α1+β1)度よりも狭い範囲のみ旋回が許容される状態についても、1個の第1ストッパ部材66に対して第2ストッパ部材68を2個配置することによっても、先の第1ストッパ部材66を2個設ける場合と同様にして実現することができる。
この実施形態においては、第1ストッパ部材66が(旋回装置10の旋回第2部材16にではなく)遊星歯車減速機20の回転キャリヤ体18に固定されているため、極めて簡易な構成で自由度の高い制限機構を構築することができる。
また、本実施形態においては、回転キャリヤ体18が、遊星歯車減速機20の固定ケーシング46の最小外径部46Sよりも径方向を外側に延長された延長部18Eを有し、該延長部18Eに前記第1ストッパ部材66が設けられているため、第1ストッパ部材66を回転キャリヤ体18の周方向のいずれの位置に取り付けても、回転キャリヤ体18が旋回した際に第1ストッパ部材66が遊星歯車減速機20の固定ケーシング46と干渉することがない。
また、上記実施形態においては、第1ストッパ部材66を前記回転キャリヤ体18に固定する第1ストッパボルト70をねじ込むためのフランジボルト穴18Dを、旋回第2部材16を該回転キャリヤ体18に固定するアームボルト76をねじ込むためのアームボルト穴18Hよりも径方向外側に設けるようにしたため、旋回第2部材16を回転キャリヤ体18に取り付けた状態のまま、第1ストッパ部材66の取り付け、位置換えが可能である。
また、上記実施形態では、固定ケーシング46が径方向外側に突出した突出部46Aを有し、固定第1部材14および第2ストッパ部材68を、該突出部46Aを挟んで前記固定ケーシング46に対して固定するようにしたため、遊星歯車減速機20のケーシング、ひいては該遊星歯車減速機20の回転キャリヤ体18に固定されている旋回装置10の旋回第2部材16の全体を固定第1部材14に据え付けたまま、第2ストッパ部材68を取り付けることができる。また、第2ストッパ部材68の位置の変更も容易である。
また、回転キャリヤ体18に第1ストッパ部材66の取り付け部が複数設けられ、いずれかの取り付け部に第1ストッパ部材66が取り付けられる構成を採用したため、第1ストッパ部材66の位置の変更が、容易であり、かつ再現性が高い。第2ストッパ部材68についても同様の作用効果が得られている。
また、第1、第2ストッパ部材66、68の取り付け部が、いずれも第1〜第12凹部72A〜72L、82A〜82Lと、第1、第2ストッパボルト70、86をねじ込むためのボルト穴18D、46Eと、を備える構成とされているため、簡易な構成で第1、第2ストッパ部材66、68の位置決めと固定が実現できる。
本実施形態の場合、第1ストッパ部材66のみならず、第2ストッパ部材68も(旋回装置10の固定第1部材14にではなく)減速機の固定ケーシング46に固定されているため、旋回装置10の旋回範囲の設定・変更を、「遊星歯車減速機20のみ」で行うことができるため(旋回装置10のメインの構成要素である固定第1部材14と旋回第2部材16には一切手を加える必要がないため)、設計の自由度およびを格段に向上させることができる。
図5(A)〜(C)に上記実施形態の変形例を示す。
上記実施形態においては、第2ストッパボルト86とベースボルト78は、別々に使用されていたが、この図5の変形例では、これを共通化し(兼用し)、第2ストッパ部材168が取り付けられる部分については、第2ストッパ部材168、固定ケーシング146(の突出部146A)、および固定第1部材114を同一の共締めボルト179によって共締めするようにしている。
具体的には、この変形例においては、第2ストッパ部材168を位置決めする第1〜第12凹部182A〜182Lの周方向の範囲を、先の実施形態の第1〜第12凹部82A〜82Lの周方向の範囲より若干狭めている。また、第2ストッパ部材168の周方向長さを先の実施形態の第2ストッパ部材68の周方向長さよりも大きくするとともに(中心角β2を大きくするとともに)、周方向中央に第1〜第12凹部182A〜182Lに係合する突部168Tを有する形状としている。
その上で、1個の第2ストッパ部材168を、先の実施形態の2つのベースボルト78相当部に跨がって2本の共締めボルト179によって取り付けている。結局、この共締めボルト179は、先の実施形態における第2ストッパ部材68を取り付ける第2ストッパボルト86と、固定第1部材14と固定ケーシング46とを連結するベースボルト78の機能を兼用したものとなっている。また、第2ストッパ部材168の中心角β2が、先の実施形態の第2ストッパ部材68の中心角β1より大とされ、旋回第2部材116(図5では図示略)の旋回範囲を若干狭めている。この変形例によれば、共締めボルト179を使用した分、部品点数の削減ができ、また、先の実施形態では必要とされた第2ストッパ部材68を取り付けるためだけに用いるケーシングボルト穴(46E)の穴開けが不要となるため、製造の簡素化も図れる。
その他の構成は、先の実施形態と同様であるため、図5中で先の実施形態と同一または機能的に類似する部位に、下2桁が先の実施形態と同一の符号を付し、重複説明を省略する。
なお、上記実施形態においては、遊星歯車減速機20の固定ケーシング46が固定された部材である固定第1部材14に固定されるとともに、回転キャリヤ体18が旋回部材である旋回第2部材16に固定され、遊星歯車減速機のケーシングに対してキャリヤ体側が旋回する構成が採用されていた。しかし、本発明は、このような適用例に限定されるものではなく、例えば、キャリヤ体側が固定され、ケーシングが回転する、いわゆる枠回転タイプの減速機を備えた旋回装置にも適用可能である。この例を図6〜図8に示す。
この実施形態では、入力駆動系の構造が先の実施形態と異なっている。それは、先の実施形態では、モータの動力が外歯歯車41、42の中心からオフセットされた位置で、外歯歯車41、42を貫通する入力軸26を介して遊星歯車減速機20の3本の偏心体軸40A〜40Cに入力される構成とされていたため、この構成のまま、単に回転キャリヤ体18、48側を固定し、固定ケーシング46側を回転させる構造に転換しようとすると、入力軸26が外歯歯車41、42の自転を阻害してしまうからである。
そこで、図6〜図8に示す実施形態においては、下記のような構成を採用して、この不具合が発生するのを回避している。なお、本発明では、ケーシングと連結される部材を第1部材、キャリヤ体と連結される部材を第2部材と定義しているため、この実施形態では、先の実施形態とは逆に、第1部材が旋回し、第2部材が固定されることになる。
入力駆動系から説明してゆくと、この実施形態に係る遊星歯車減速機208では、先の実施形態と異なり、モータ210は、回転ケーシング214と一体化されている旋回第1部材216にボルト218を介して取り付けられている。なお、この実施形態では、回転ケーシング214に対して最も遅い速度で相対回転する部材(キャリヤ体)は、固定キャリヤ体212である。モータ軸210Aの回転は、該モータ軸210Aの先端に形成されたピニオン220および第1センタギヤ222を介して回転ケーシング214の回転軸心O2と同軸に配置された内側筒体224に伝達される。
内側筒体224には、第2センタギヤ226が固定されており、この第2センタギヤ226が3本の偏心体軸228A〜228C(図8参照)にそれぞれ組み込まれた3個の偏心体歯車230A〜230C(230Aのみ図示)と同時噛合している。この構成により、(中空部H1をフルに活用できるように)モータ210自体を中空部H1の軸心(回転ケーシング214の回転軸心O2と同じ)からオフセットさせつつ、該モータ210を回転ケーシング214と一体化された旋回第1部材216に取り付け、且つ回転ケーシング214が回転しても位置関係の変わらない(回転ケーシング214と同軸の)内側筒体224を介して動力を3本の偏心体軸228A〜228Cに振り分けることができる。
そのため、外歯歯車234、235は、3本の偏心体軸228A〜228Cを回転させるための入力駆動系と干渉することなく軸心O2の周りで揺動回転することができ、且つ、モータ210は、回転ケーシング214とともに旋回する旋回第1部材216と一体的に旋回するため、モータ210と旋回第1部材216との干渉が生じることもない。
なお、同時駆動された3本の偏心体軸228A〜228Cによって外歯歯車234、235が揺動回転し、内歯歯車240の噛合位置が変化する構成は、先の実施形態と同様であり、該外歯歯車234、235と内歯歯車240の相対回転によって固定キャリヤ体212に固定された固定第2部材242と、回転ケーシング214に固定された旋回第1部材216が相対回転する。なお、捉え方によっては、旋回第1部材216は、(第1部材ではなく)回転ケーシング214の一部を構成している部材と捉えることもできる。この場合には、タップ穴236を介して該旋回第1部材216に取り付けられる部材が、本来の第1部材ということになる。
遊星歯車減速機208の径方向中央には、固定第2部材242側で拡開しているセンタパイプ250が配置され、ボルト252によって固定第2部材242に固定されている。なお、ピニオン220および第1センタギヤ222を含む遊星歯車減速機208内の空間は、旋回第1部材216とセンタパイプ250の間および回転ケーシング214と固定キャリヤ体212の間に配置されたオイルシール254、255、固定キャリヤ体212と内側筒体224との間に配置されたOリング256によって封止されている。
この実施形態においても、遊星歯車減速機208の固定キャリヤ体212に、第1ストッパ部材258が設けられている。また、ケーシング214に第2ストッパ部材260が設けられている。第2ストッパ部材260は、第1ストッパ部材258が当接することにより、産業ロボットの旋回第1部材216の固定第2部材242に対する旋回を制限可能である。
具体的には、この実施形態においても、遊星歯車減速機208の固定キャリヤ体212は、該遊星歯車減速機208の回転ケーシング214の最小外径部d10よりも径方向外側に延長された延長部212Aを有し、該延長部212Aに第1ストッパ部材258が設けられる。また、回転ケーシング214は、径方向外側に突出した突出部214Aを有しており、旋回第1部材216および前記第2ストッパ部材260が、該突出部214Aを挟んで回転ケーシング214に対して固定されている。
第1、第2ストッパ部材258、260の具体的な形状は、先の実施形態と同様のブロック形状とされている。第1ストッパ部材258を取り付けるための第1取り付け部264が、固定キャリヤ体212の延長部212Aに形成されている。また、第2ストッパ部材260を取り付けるための第2取り付け部266が、回転ケーシング214の突出部214Aに形成されている。第1、第2取り付け部264、266は、それぞれ第1、第2ストッパ部材258、260を位置決めする凹部212B、214Bと、第1、第2ストッパ部材258、260を固定キャリヤ体212あるいは回転ケーシング214に固定するボルト270、272のボルト孔212C、214Cと、を備えている。この点も先の実施形態と同様である。
また、この実施形態においては、第1ストッパ部材258を固定キャリヤ体212に固定するボルト270のボルト孔212Cを、固定第2部材242を固定キャリヤ体212に固定するボルト280のボルト孔212Dよりも径方向外側に設けている。そして、この実施形態では、さらに、第2ストッパ部材260を回転ケーシング214に固定するボルト272のボルト孔214Cも、旋回第1部材216を回転ケーシング214に固定するボルト282のボルト孔214Dよりも径方向外側に設けている。
これにより、遊星歯車減速機208と産業ロボットの旋回第1部材216および固定第2部材242を全く分解することなく第1、第2ストッパ部材258、260の双方を任意の位置に取り付け、または取り外しすることができる。
なお、本発明は、旋回装置の旋回範囲を規制することができる発明であるが、本発明の構成を利用することによって、例えば点検時において、一時的にベース部材に対して旋回部材が意図せぬ旋回をしないように、固定するための手段としても活用することができる。
この活用例を図10に示す。
すなわち、この実施形態では、基本構造自体は先の図1〜図4の構成と同様の構成を有している。すなわち、第1ストッパ部材66を位置決めするための第1〜第12凹部72A〜72Lが、回転キャリヤ体18に形成されている。また、第2ストッパ部材68を位置決めするための第1〜第12凹部82A〜82Lが、固定ケーシング46に形成されている。そして、第3ストッパ部材95が、第1ストッパ部材66用の第1〜第12凹部72A〜72Lと第2ストッパ部材68用の第1〜第12凹部82A〜82Lの双方に係合した上で、第1ストッパボルト70(図10では図示略)によって回転キャリヤ体18に固定されている。なお、第3ストッパ部材95の固定は、固定ケーシング46側で行ってもよく、一時的ならば、ボルト止めはしなくてもよい。各部の具体的な構成は、既に説明した第1、第2ストッパ部材66、68およびその周辺の構成と同様である。
点検時の旋回部材の物理的な固定は、安全上、必要であるが、従来は、必ずしも簡単には実現できず、準備等に多大な時間とコストを要することがあった。上記構成を採用することにより、旋回第2部材16(旋回部材)を固定第1部材14に対して完全に止めることが容易にできる。別の見方をするならば、簡単に旋回可能範囲を「零」とすることができる。
なお、本発明は、第1部材に対する第2部材の旋回範囲を、物理的に制限するものであるが、実際の旋回制御においては、必ずしもメインの制御ルーチンで本発明の旋回規制を直接利用する必要はない。例えば、(メインの制御ルーチンでは、例えばモータのエンコーダの検出値等を利用して旋回範囲を規制するが)メインの制御ルーチンに何らかの不具合が生じたときの旋回の暴走を防止するフェイルセーフ用として本発明を適用してもよい。また、第1、第2ストッパ部材の実際の当接あるいは当接の直前を検知するタッチセンサや磁気センサ等を本発明の第1、第2ストッパ部材の当接面と受け面の間に組み込み、これらのセンサの信号にて、第1、第2ストッパ部材の当接あるいは当接の直前を検知して旋回範囲を規制するものであってもよい。この場合であっても、(センサに不具合があったとしても)本発明の旋回制限がフェイルセーフ用として有効に機能する。
なお、上記実施形態においては、減速機として、いずれも偏心揺動型の減速機構を有する遊星歯車減速機が採用されていたが、本発明に係る旋回装置に適用される減速機は、このような減速機に限定されるものではなく、例えば、単純遊星歯車機構を備えた減速機や、平行軸減速機構や直交減速機構を備えた減速機、あるいはこれらを組み合わせた減速機構を備えた減速機であってもよい。この場合、本発明の「キャリヤ体」は、ケーシングに対して最も遅い速度で相対回転する部材を意味するものであるのは、既に定義した通りである。
また、上記実施形態においては、前記キャリヤ体が、減速機のケーシングの最小外径部よりも径方向外側に延長された延長部を有し、該延長部に前記第1ストッパ部材が設けられていたが、例えば旋回範囲が比較的限定されていてケーシングとの干渉が問題とならないような場合には、必ずしもこのような構成とされている必要はない。
また、上記第1の実施形態においては、ケーシングが径方向外側に突出した突出部を有し、第1部材および第2ストッパ部材が、該突出部を挟んで前記ケーシングに対して固定されている構成を採用していた。しかし、本発明においては、第2ストッパ部材とケーシングの取り付けと、ベース部材とケーシングの取り付けは、特に関連させる必要はない。
また、上記実施形態においては、第1、第2ストッパ部材の取り付け部が複数設けられ、いずれかの取り付け部に第1、第2ストッパ部材が取り付けられる構成を採用していたが、取り付け部の個数も特に限定されず、例えば1個のみでもよい。
また、第1ストッパ部材(あるいは第2ストッパ部材)の取り付け部の構成も、要は、第1ストッパ部材(あるいは第2ストッパ部材)の適切な位置決めと固定がなされる構成であれば良く、上記構成例に限定されるものではない。
また、第1、第2ストッパ部材の取り付け位置等も、必ずしも上記位置に限定されない。
更に、上記実施形態においては、点検時等において旋回部材を完全固定するための第3ストッパの装着を可能とする構成が開示されていたが、本発明においては、当該第3ストッパについては、必ずしも装着可能な構成となっている必要はない。