JP5854474B2 - 軽度に酸化された酸化低密度リポタンパク質に対するモノクローナル抗体およびこれを産生するハイブリドーマ - Google Patents

軽度に酸化された酸化低密度リポタンパク質に対するモノクローナル抗体およびこれを産生するハイブリドーマ Download PDF

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Description

本発明は、軽度に酸化された酸化低密度リポタンパク質に対するモノクローナル抗体、そのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、軽度に酸化された酸化低密度リポタンパク質検出用キットおよび被検者から採取した生体試料に含まれる軽度に酸化された酸化低密度リポタンパク質を検出する方法に関する。
低密度リポタンパク質(Low Density Lipoprotein;LDL)の酸化は、生体内における活性酸素の生成と消去とのバランスの崩壊による、活性酸素の過剰すなわち酸化ストレス状態となった場合に生じる。LDLはアポリポタンパク質Bと、コレステロール、リン脂質、中性脂肪などの脂質とが結合した巨大な分子であるが、LDLの酸化では、まず、構成脂質中の不飽和脂肪酸が活性酸素により酸化される。続いて、次々に連鎖的な酸化反応が起こり、共役ジエンを経て、過酸化脂質やアルデヒドが生成する。この連鎖的な酸化反応あるいは活性酸素による直接的な酸化反応によってアポリポタンパク質Bも酸化されて断裂する。これらの酸化反応の結果、LDLは球形の構造を失い、陰性荷電が増加し、受容体に対する親和性も変化して、正常なLDL(native−LDL)とは異なる性質を有する酸化LDLとなる。
酸化LDLは、動脈硬化病巣に存在することや、健常人と比較して、高脂血症や糖尿病、肝疾患などの患者血清中に高濃度で検出されることなどから、酸化ストレスが関与する種々の疾患に係る重要な物質であると考えられている。そこで、これらの疾患の解明、治療、診断、評価などに利用することを目的として、酸化LDLを特異的に認識する抗体が開発されている。
例えば、動脈硬化病巣から精製した酸化LDLを免疫原として得た、酸化により切断された脂肪酸を有するリン脂質を抗原として認識する抗酸化リン脂質抗体(非特許文献1)や、血清中のnative−LDLから調製したマロンジアルデヒド修飾LDL(MDA−LDL)を免疫原として得た抗MDA−LDL抗体(非特許文献2および非特許文献3)、血清中のnative−LDLからアセチル化LDL、MDA−LDLおよび金属酸化LDLを調製し、これらをそれぞれ等量含む溶液を免疫原として得た抗体(特許文献1)などを挙げることができる。
LDLは酸化され得る部位を多数有する巨大な粒子であるため、その酸化の程度はさまざまである。一般に、生体において、血液中にはビタミンCなど多くの抗酸化物質が存在していること、高度に酸化された酸化LDL(高度酸化LDL)は異物と認識されるために貪食細胞により速やかに除去されることなどから、特に血液中に存在する酸化LDLとしては軽度に酸化されたLDL(軽度酸化LDL)が多く、血管壁や動脈硬化病巣などに存在する酸化LDLとしては高度酸化LDLが多いと考えられている。非特許文献1に記載された抗体が高度酸化LDLに対する抗体であり、軽度酸化LDLに対する抗体ではないということは前述の理由によると考えられる。
一方、非特許文献2および非特許文献3に記載された抗体は、抗原として認識する部位がLDL内部に存在するため、サンプルの前処理を行って抗原部位を露出させる必要がある。
さらに、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3および特許文献1に記載された抗体は、いずれも血清中に存在する酸化LDLを免疫原として得られた抗体ではないため、血清サンプルや血漿サンプルに対して用いた場合には、擬陽性反応を生じ、感度が低く、薬剤投与や生活習慣の改善などによる効果を検出することは困難である。
特開平9−5323
Itabe H.ら、J.Biol.Chem.、第269巻、第15274〜15279頁、1994年 Kotani K.ら、Biochim.Biophys.Acta.、第1215巻、第121〜125頁、1994年 Kotani K.ら、臨床病理、第45巻、第47〜54頁、1997年
本発明は、酸化LDLに係る研究開発において、重要なツールとしての機能を果たし得る、軽度に酸化された酸化LDLに対するモノクローナル抗体を提供するとともに、そのモノクローナル抗体を用いて軽度に酸化された酸化LDLを簡便に検出するキットおよび被検者から採取した生体試料に含まれる軽度に酸化された酸化LDLを簡便に検出する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、肝疾患患者の血清中に出現する軽度酸化LDLであるトリグリセリド高含有低密度リポタンパク質(TG−rich LDL)を免疫原としてハイブリドーマを作製し、選択されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体が、軽度酸化LDLに対して反応の度合いが大きく、かつ高度酸化LDLに対して反応の度合いが小さいという性質を有することを見出し、下記の各発明を完成した。
(1)モノクローナル抗体を固相化抗体とし、かつ抗アポリポタンパク質B抗体を検出用抗体とするELISA(Enzyme−linked immunosorbent assay)において、下記(a)で示される抗原と前記モノクローナル抗体との反応の度合いと比較して、下記(b)で示される抗原と前記モノクローナル抗体との反応の度合いが小となる、酸化低密度リポタンパク質に対し特異的に反応するモノクローナル抗体;(a)最終濃度0.493g/Lの正常な低密度リポタンパク質(native−LDL)に最終濃度3.29μmol/Lの硫酸銅を37℃で0.5時間反応させて得られる金属酸化低密度リポタンパク質、(b)最終濃度0.493g/Lの正常な低密度リポタンパク質(native−LDL)に最終濃度3.29μmol/Lの硫酸銅を37℃で24時間反応させて得られる金属酸化低密度リポタンパク質。
(2)酸化低密度リポタンパク質がトリグリセリド高含有低密度リポタンパク質(TG−rich LDL)である、(1)に記載のモノクローナル抗体。
(3)酸化低密度リポタンパク質がヒトの酸化低密度リポタンパク質である、(1)または(2)に記載のモノクローナル抗体。
(4)健常者において酸化型のsmall dense LDLと特異的に反応するモノクローナル抗体。
(5)非アルコール性脂肪性肝炎(Non−alcoholic steatohepatitis;NASH)患者においてnative−LDLと同様の粒子サイズの酸化LDLと特異的に反応するモノクローナル抗体。
(6)脂質異常症患者において酸化型のレムナントリポタンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体。
(7)配列番号10のアミノ酸配列を含む可変領域を含んでなる、(1)から(6)のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
(8)下記(a)の可変領域および/または(b)の可変領域を含んでなる、(1)から(7)のいずれかに記載のモノクローナル抗体;(a)N末端から順に、配列番号8のアミノ酸配列、配列番号9のアミノ酸配列および配列番号10のアミノ酸配列を含む可変領域、(b)N末端から順に、配列番号13のアミノ酸配列、配列番号14のアミノ酸配列および配列番号15のアミノ酸配列を含む可変領域。
(9)配列番号7のアミノ酸配列からなる可変領域を含んでなる、(1)から(8)のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
(10)配列番号12のアミノ酸配列からなる可変領域を含んでなる、(1)から(9)のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
(11)受託番号がNITE BP−916であるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体。
(12)(1)から(11)のいずれかに記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
(13)受託番号がNITE BP−916である、(12)に記載のハイブリドーマ。
(14)(1)から(11)のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含んでなる、酸化低密度リポタンパク質検出用キット。
(15)被検者から採取した生体試料に含まれる酸化低密度リポタンパク質を検出する方法であって、(1)から(11)のいずれかに記載のモノクローナル抗体を、被検者から採取した生体試料に含まれる酸化低密度リポタンパク質に特異的に反応させて複合体を形成させる工程と、前記複合体を検出する工程とを有する、前記方法。
(16)被検者から採取した生体試料に含まれる酸化低密度リポタンパク質を検出する方法であって、(1)から(11)のいずれかに記載のモノクローナル抗体を担体に固着する工程と、担体に固着した前記モノクローナル抗体を、被検者から採取した生体試料に含まれる酸化低密度リポタンパク質に特異的に反応させて複合体を形成させる工程と、前記複合体を検出する工程とを有する、前記方法。
本発明に係るモノクローナル抗体、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、軽度に酸化された酸化LDL検出用キットおよび被検者から採取した生体試料に含まれる軽度に酸化された酸化LDLを検出する方法によれば、TG−rich LDLをはじめとする酸化LDLが関与する様々な疾患の解明、治療、診断、評価などを、より効果的かつ簡便に行うことができるとともに、薬効に優れた医薬組成物の開発に寄与し、提供することができる。
上下左側の図は、いずれも、健常者(n=1)または肝疾患患者(n=1)の血清から超遠心により分離した総リポタンパク質画分について、ゲル濾過クロマトグラフィーを行った図である。一方、上下右側の図は、いずれも、そのゲル濾過クロマトグラフィーを行って得られた各溶出液における各脂質の濃度を測定した結果を示す図である。図中、TCは総コレステロール、PLはリン脂質、FCは遊離コレステロール、TGは中性脂肪を示す。また、いずれの図も、横軸はフラクションすなわちサイズを示し、横軸のプラス方向(右方向)に位置するほどサイズが小さいことを示す。 健常者(N)および肝疾患末期患者(P)の血清について、アガロースゲル電気泳動を行った結果を示す図である。 G11−6抗体の重鎖可変領域(G11−6−VH)のDNA配列についてPCRを行い、得られたPCR産物を含む溶液にLoading bufferを添加してVH泳動用溶液とし、電気泳動を行った結果を示す図(左図)、およびG11−6抗体の軽鎖可変領域(G11−6−VL)のcDNA配列についてPCRを行い、得られたPCR産物を含む溶液にLoading bufferを添加してVL泳動用溶液とし、電気泳動を行った結果を示す図(右図)である。 G11−6−VHおよびG11−6−VLのアミノ酸配列について、既知のアミノ酸配列との相同性検索を行った結果、相同性が高かった最上位のものを示す図である。 G11−6−VHの相補性決定領域(complementarity determining region;CDR)のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列うち、CDR1およびCDR2のアミノ酸配列について、既知のアミノ酸配列との相同性検索を行った結果、相同性が高かった最上位のものを示す図である。 G11−6−VHのCDR3およびG11−6−VLのCDR1のアミノ酸配列について、既知のアミノ酸配列との相同性検索を行った結果、相同性が高かった最上位のものを示す図である。 G11−6−VLのCDR2およびCDR3のアミノ酸配列について、既知のアミノ酸配列との相同性検索を行った結果、相同性が高かった最上位のものを示す図である。 肝疾患患者(n=1)血清および健常者(n=1)血清について、G11−6抗体を固着させたELISA、抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISAおよび抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図である。 健常者、軽中度肝疾患患者および重度肝疾患患者の血清について、アガロースゲル電気泳動を行った結果を示す図である。 健常者(n=14)、軽中度群(n=6)および重度群(n=3)の血清について、G11−6抗体を固着させたELISAを行い測定した吸光度の値を、健常者群、軽中度群および重度群の群別に集計した結果を示す図である。 健常者(n=1)、脂質異常症患者(n=7)および肝疾患患者(n=12)の血清について、G11−6抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図(A)、ならびに各サンプルの吸光度の測定値を、各サンプルの血清中LDL−C濃度の値で除した結果を示す図(B)である。 肝疾患患者総リポタンパク質のゲル濾過溶出液について、TC濃度の測定、G11−6抗体を固着させたELISA、抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISAおよび抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図(A)、ならびに健常者総リポタンパク質のゲル濾過溶出液について、TC濃度の測定、G11−6抗体を固着させたELISA、抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISAおよび抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図(B)である。 肝疾患患者(n=1)血清のゲル濾過溶出液について、TC濃度の測定、TG濃度の測定、PL濃度の測定、G11−6抗体を固着させたELISAおよび抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図である。 NASH患者(n=1)血清のゲル濾過溶出液について、TC濃度の測定、TG濃度の測定、PL濃度の測定、G11−6抗体を固着させたELISAおよび抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図である。 脂質異常症患者(n=2)血清のゲル濾過溶出液について、TC濃度の測定、TG濃度の測定、PL濃度の測定、G11−6抗体を固着させたELISAおよび抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図である。 健常者(n=2)血清のゲル濾過溶出液について、TC濃度の測定、TG濃度の測定、PL濃度の測定、G11−6抗体を固着させたELISAおよび抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図である。 健常者血清から密度勾配遠心法により得られたA画分、B画分およびC画分について、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を行った結果を示す図である。 native−LDLを酸化して得られる金属酸化LDLについて、その酸化時間を変化させて金属酸化LDLを調製し、その金属酸化LDLの溶液について、アガロースゲル電気泳動を行った結果を示す図である。 〈a−〉、〈b−〉、〈c−〉および〈d−〉の金属酸化LDLについて、G11−6抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図である。縦軸はELISAの吸光度を、横軸はELISAのサンプルとした金属酸化LDLの酸化時間をそれぞれ示す。 〈a−〉の金属酸化LDLについて、TBARS法により過酸化脂質濃度測定を行った結果およびG11−6抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図(A;縦軸はELISAの吸光度および過酸化脂質濃度を、横軸はELISAおよびTBARS法のサンプルとした金属酸化LDLの酸化時間をそれぞれ示す)、ならびに〈c−〉の金属酸化LDLについて、TBARS法により過酸化脂質濃度測定を行った結果およびG11−6抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図(B;縦軸はELISAの吸光度および過酸化脂質濃度を、横軸はELISAおよびTBARS法のサンプルとした金属酸化LDLの酸化時間をそれぞれ示す)である。 〈a−〉、〈a−1〉および〈a+1〉の金属酸化LDLについて、G11−6抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図(A;縦軸はELISAの吸光度を、横軸はELISAのサンプルとした金属酸化LDLの酸化時間をそれぞれ示す)、ならびに〈a−〉、〈a−1〉および〈a+1〉の金属酸化LDLについて、TBARS法により過酸化脂質濃度測定を行った結果を示す図(B;縦軸は過酸化脂質濃度を、横軸はTBARS法のサンプルとした金属酸化LDLの酸化時間をそれぞれ示す)である。 〈a−〉、〈a−1〉、〈a+1〉、〈a−1w〉および〈a+1w〉の金属酸化LDLについて、G11−6抗体を固着させたELISAを行った結果を示す図である。縦軸はELISAの吸光度を、横軸はELISAのサンプルとした金属酸化LDLの酸化時間をそれぞれ示す。 金属酸化LDLについて、G11−6抗体を固着させたELISA、抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISA、抗MDA−LDL抗体を固着させたELISA、抗アポリポタンパク質B抗体を固着させたELISA、TBARS法による過酸化脂質濃度測定および共役ジエンの測定を行った結果を示す図である。縦軸はELISAおよび共役ジエン測定の吸光度と過酸化脂質濃度とを、横軸はサンプルとした金属酸化LDLの酸化時間をそれぞれ示す。
以下、本発明に係る軽度に酸化された酸化LDLに対するモノクローナル抗体、そのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、軽度に酸化された酸化LDL検出用キットおよび被検者から採取した生体試料に含まれる軽度に酸化された酸化LDLを検出する方法について詳細に説明する。本発明に係る軽度に酸化された酸化LDLに対するモノクローナル抗体は、軽度に酸化された酸化LDLに対する反応の度合いが大であるとともに高度に酸化された酸化LDLに対する反応の度合いが小である性質を有するモノクローナル抗体である。
以下、本明細書において、「軽度酸化LDL」とは、酸化反応により生じた過酸化脂質やアルデヒド、断裂したアポリポタンパク質Bなどの酸化物を比較的少数有し、native−LDLと比較して陰性荷電が大きい酸化LDL、すなわち軽度に酸化された酸化LDLのことをいい、「高度酸化LDL」とは、酸化反応により生じた過酸化脂質やアルデヒド、断裂したアポリポタンパク質Bなどの酸化物を比較的多数有し、native−LDLと比較して陰性荷電が顕著に大きい酸化LDL、すなわち高度に酸化された酸化LDLのことをいう。
本発明において軽度酸化LDLおよび高度酸化LDLは、いずれも定法に従い調製することができ、例えば、金属を用いて血清中のnative−LDLを酸化することにより調製することができる。この場合、native−LDLに作用させる金属の濃度または作用させる時間に比例して、得られる酸化LDLの酸化度は高くなる。例えば、最終濃度が約0.493g/Lのnative−LDLに最終濃度が約3.29μmol/Lの硫酸銅を37℃でH1時間(0<H1<24)反応させることにより、最終濃度が約0.493g/Lのnative−LDLに最終濃度が約6.579μmol/Lの硫酸銅を37℃でH2時間(0<H2<8)反応させることにより、最終濃度が約0.476g/Lのnative−LDLに最終濃度が約23.81μmol/Lの硫酸銅を37℃でH3時間(0<H3<8)反応させることにより、あるいは最終濃度が約0.476g/Lのnative−LDLに最終濃度が約47.62μmol/Lの硫酸銅を37℃でH4時間(0<H4<8)反応させることにより、軽度酸化LDLを得ることができ、最終濃度0.493g/Lのnative−LDLに最終濃度3.29μmol/Lの硫酸銅を37℃で少なくとも24時間反応させることにより、最終濃度が約0.493g/Lのnative−LDLに最終濃度が約6.579μmol/Lの硫酸銅を37℃でH5時間(H5≧8)反応させることにより、最終濃度が約0.476g/Lのnative−LDLに最終濃度が約23.81μmol/Lの硫酸銅を37℃でH6時間(H6≧8)反応させることにより、あるいは最終濃度が約0.476g/Lのnative−LDLに最終濃度が約47.62μmol/Lの硫酸銅を37℃でH7時間(H7≧8)反応させることにより、高度酸化LDLを得ることができる。
本発明において、モノクローナル抗体が、軽度酸化LDLに対する反応の度合いが大であるとともに高度酸化LDLに対する反応の度合いが小である性質を有するか否かは、例えば、モノクローナル抗体を固相化抗体とし、かつ抗アポリポタンパク質B抗体を検出用抗体とするELISAにより確認することができる。すなわち、このELISAにおいて、軽度酸化LDLをサンプルとした場合の反応の度合いと比較して、高度酸化LDLをサンプルとした場合の反応の度合いが小となれば、固相化抗体に用いたモノクローナル抗体は、軽度酸化LDLに対する反応の度合いが大であるとともに高度酸化LDLに対する反応の度合いが小である性質を有することとなる。
本発明において軽度酸化LDLは、ヒト、マウス、ラット、サル(ヒトを除く霊長目)、ヤギ、イヌ、ブタ、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ニワトリなどの哺乳類や鳥類の軽度酸化LDLを挙げることができるが、ヒトの軽度酸化LDLであることが好ましい。また、軽度酸化LDLはTG−rich LDLであることが好ましい。
TG−rich LDLは、少なくとも肝疾患患者血清中に出現するLDLである。TG−rich LDLは中性脂肪であるトリアシルグリセロール(トリグリセリド、トリ−O−アシルグリセリン;TG,TAG)の含有量が高いことを特徴とし、この点で、コレステロールの含有量が高い正常なLDL(native−LDL)とは異なるリポタンパク質である。肝疾患の進行に伴いTG−rich LDLの血清中濃度は増加し、肝疾患の末期では血清中に存在するリポタンパク質の大部分を占めるのに対し、超低密度リポタンパク質(VLDL)、native−LDLおよび高密度リポタンパク質(HDL)の血清中濃度は極端に減少する(Nagasaka H.ら、J.Pediatr、第146巻、第329〜335頁、2005年)。
また、TG−rich LDLは培養マクロファージを泡沫化する。そして、TG−rich LDLによるマクロファージ泡沫化率と酸化LDLの一種であるマロンジアルデヒド修飾LDL(MDA−LDL)の血清中濃度とが正比例すること(Nagasaka H.ら、J.Pediatr、第146巻、第329〜335頁、2005年)、健常者血漿中には過酸化TGがほとんど検出されないのに対し、肝疾患患者血漿中には、過酸化TGの著しい増加が見られること(Hui SP.ら、Lipids、第38巻、第1287〜1292頁、2003年)などから、TG−rich LDLは酸化LDLの一種であるとされている。さらに、血清中において、高度酸化LDLは多量に存在し得ないが、肝疾患患者血清中において、TG−rich LDLは多量に存在することから、TG−rich LDLは軽度酸化LDLの一種と考えられている。
TG−rich LDLは、native−LDLと比較してTGの重量割合が大きいLDLである。また、TG−rich LDLは、マクロファージを泡沫化するLDLである。このようなTG−rich LDLには、中間比重リポタンパク質{Intermediate Density Lipoprotein;IDL(ミッドバンドともいい、分画としてIDLに相当するレムナントリポタンパク質が含まれる)}の酸化型のもの(すなわち酸化型のレムナントリポタンパク質が含まれる)の他、small dense LDL(sd−LDL、変性LDL)といわれる、粒子径が25.5nm以下であり、比重で分画した場合に1.040〜1.063のLDLに相当するリポタンパク質の酸化型のものが含まれる。
ここで、TG−rich LDLにおけるTGの重量割合について測定した結果の典型例を図1および表1に示す。図1の上下左側の図は、それぞれ、健常者(上図)および肝疾患患者(下図)の血清から超遠心法により分離した総リポタンパク質画分について、280nmの吸光度を測定しながらゲル濾過クロマトグラフィーを行った結果を示す図であり、図1の上下右側の図は、それぞれ、健常者(上図)および肝疾患患者(下図)の血清から超遠心法により分離した総リポタンパク質画分についてゲル濾過クロマトグラフィーを行い、得られた各溶出液について各脂質の濃度を測定した結果を示す図である。一方、表1は、肝疾患患者4名および健常者7名について上記の方法により各脂質の濃度を測定し、平均値と標準偏差を算出した結果を示している。
Figure 0005854474
図1の上下左側の図に示すように、肝疾患患者においてはVLDLおよびHDLが消失し、native−LDLと同様の粒子サイズを有するTG−rich LDLが高濃度に存在する。その高濃度に存在するTG−rich LDLにおけるTGの重量割合は、図1右側および表1に示すように、native−LDLにおけるTGの重量割合と比較して明らかに大きい。しかしながら、表1に示すように、TG−rich LDLにおける各脂質重量割合の標準偏差の値が大きいことから、TG−rich LDLにおけるTGの重量割合には、ある程度のばらつきがあることがわかる。
また、TG−rich LDLの粒子サイズは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法などにより測定することにより、native−LDLに近似した結果が得られるが、被検者の個体差や疾患の重症度などにより、ある程度異なる場合がある。
TG−rich LDLの電荷については、アガロースゲル電気泳動法などにより測定することにより、native−LDLに近似した結果またはnative−LDLと比較してやや負電荷であることを示す結果が得られるが、被検者の個体差や疾患の重症度などにより、ある程度異なる場合がある。
TG−rich LDLは、肝疾患患者の血清から採取されるが、肝疾患のみならず、種々の疾患、特に、酸化ストレスの関与する疾患の患者やその罹患が疑われる者の血清に存在すると考えられている。そのような疾患としては、例えば、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝線維症、良性反復性肝内胆汁うっ滞症、胆道閉鎖症、脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎(Non−alcoholic steatohepatitis;NASH)などの肝疾患の他、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症などの脂質異常症、脳梗塞、虚血性心疾患、大動脈瘤、腎硬化症、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患、糖尿病、高血圧症などを挙げることができる。
抗体は、一般に、軽鎖(L鎖;分子量約25,000)および重鎖(H鎖;分子量約50,000〜77,000)の各2本ずつのポリペプチドが互いにジスルフィド結合で結合したY字型のヘテロテトラマーを基本構造としている。Y字型の先端部分を可変領域といい、それ以外の部分を定常領域という。また、軽鎖の可変領域をVL領域、重鎖の可変領域をVH領域という。可変領域は抗原認識部位であり、そのアミノ酸配列は抗体の種類ごとに変化に富む。一方、定常領域のアミノ酸配列は抗体間で比較的変化が少ない。可変領域のうち、直接抗原と接触して抗原に対する結合の中心的役割を担う領域は抗体間におけるアミノ酸配列の変化が特に大きく、この領域を相補性決定領域(complementarity determining region:CDR)または超可変領域という。また、可変領域のうちのCDR以外の領域をフレームワーク領域(framework region:FR)という。一般に、可変領域には、3つのCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)と、3つのCDRを取り囲む4つのFR(FR1、FR2、FR3およびFR4が存在することが知られている。
本発明における可変領域(VH領域およびVL領域)は、本発明に係るモノクローナル抗体が軽度酸化LDLに対する反応の度合いが大であるとともに高度酸化LDLに対する反応の度合いが小である性質を有する限り、健常者において酸化型のsmall dense LDLと特異的に反応する性質を有する限り、NASH患者においてnative−LDLと同様の粒子サイズの酸化LDLと特異的に反応する性質を有する限り、または脂質異常症患者において酸化型のレムナントリポタンパク質と特異的に反応する性質を有する限り、いかなるアミノ酸配列からなるものでもよい。なお、本発明における可変領域(VH領域およびVL領域)のアミノ酸配列の態様としては、例えば、下記(i)〜(v)を挙げることができる。
(i)配列番号10のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列、
(ii)N末端から順に、配列番号8のアミノ酸配列、配列番号9のアミノ酸配列および配列番号10のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列、
(iii)N末端から順に、配列番号13のアミノ酸配列、配列番号14のアミノ酸配列および配列番号15のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列、
(iv)配列番号7のアミノ酸配列、
(v)配列番号12のアミノ酸配列。
なお、本発明において、可変領域のアミノ酸配列は、常法に従い確認することができる。そのような方法としては、例えば、まず、後述する本発明に係るモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからRNAを抽出して、逆転写反応を行ってcDNAを得る。次にこのcDNAを鋳型として、可変領域の増幅に適した既知の配列のプライマーを用いて可変領域のcDNA配列をPCRにより増幅し、必要に応じてクローニングを行った後、シークエンサーを用いてシークエンスを行うことによりDNA配列を決定する。最後に、決定した可変領域のDNA配列をトリプレットコドンに従いアミノ酸配列に変換することにより確認することができる。
なお、本発明において、「反応する」は、「相互作用する」、「結合する」、「認識する」と交換可能に用いられる。また、本発明において、抗体が、ある特定の抗原(免疫原)に対し「特異的に反応する」とは、前記特定抗原に対して反応性があることが明らかであればよい。前記特定抗原に対し「特異的に反応する」とは、他の抗原に全く反応しない場合も含むが、他の抗原に対し反応するとともに前記特定抗原に対し顕著に反応する場合も含む。
次に、本発明に係るハイブリドーマは、本発明に係るモノクローナル抗体を産生する。本発明に係るハイブリドーマの作製は、当業者により適宜選択可能な任意の方法を用いて行うことができる。そのような方法としては、例えば、ハイブリドーマ法(Nature、第256巻、第495−497頁、1975年)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Immunology Today、第4巻、第72頁、1983年)およびEBV−ハイブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY、第77−96頁、Alan R.Liss,Inc.、1985年)などの方法の他、下記(i)〜(iv)のステップを有する方法を挙げることができる。
(i)まず、免疫原を調製する。免疫原は、どのような方法により調製してもよいが、本発明においては、血清からTG−rich LDL画分を分離した後、限外濾過により濃縮し、続いて透析することにより調製することができる。ここで、血清にTG−rich LDLが含まれることを確認する方法としては、当業者により適宜選択可能な方法を挙げることができるが、そのような方法として、アガロースゲル電気泳動法を挙げることができる。本発明においては、被検者血清および健常者血清をアガロースゲル電気泳動に供することにより、被検者血清においてα位のバンドが検出されず、かつ健常者血清と比較して陽極側に移動した位置でβ位のバンドが検出された場合に、その被検者血清にはTG−rich LDLが含まれると判定することができる。
また、血清からTG−rich LDL画分を分離する方法としては、当業者により適宜選択可能な方法を挙げることができるが、そのような方法としては、例えば、既報(Chiba H.ら、J.Lipid Res.、第38巻、第1204−1216頁、1997年/Hirano T.ら、J.Atherosclerosis and Thrombosis、第12巻、第67〜72頁、2005年)に従い、密度勾配遠心法を用いて血清から分離した総リポタンパク質画分をゲル濾過クロマトグラフィーに供することにより、TG−rich LDL画分を分離する方法を挙げることができる。
(ii)次に、分離したTG−rich LDL画分を免疫原として動物を免疫する。免疫は、適宜常法を用いて行うことができる。また、免疫の対象となる動物は特に限定されないが、例えば、マウス、ラット、サル(ヒトを除く霊長目)、ヤギ、イヌ、ブタ、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ニワトリなどを挙げることができる。
(iii)続いて、免疫した動物から抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞としては、例えば、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞などを挙げることができる。さらに、ハイブリドーマを得るため、採取した抗体産生細胞を他の細胞と融合させる。抗体産生細胞を採取する方法および細胞の融合方法は、当業者が適宜選択可能な方法を挙げることができる。また、抗体産生細胞に融合させる細胞としては、増殖能力の強い細胞を用いることが好ましく、例えば、一般に入手可能なミエローマ細胞の細胞株を使用することができる。なお、使用する細胞株は、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。
(iv)次に、作製したハイブリドーマから、native−LDLに対しては反応の度合いが小さく、かつ金属酸化LDLに対しては反応の度合いが大きいモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングする。スクリーニングは、ELISA法やイムノブロット法などの常法を用いて、当業者が適宜選択可能な手法により行うことができる。ELISA法を用いてスクリーニングする場合は、例えば、native−LDLを固着させたELISAをハイブリドーマの培養上清について行い、適当な標識をした抗(免疫動物)抗体によりELISAの反応を検出し、native−LDLに対しては反応の度合いが小さく、かつ金属酸化LDLに対しては反応の度合いが大きい培養上清を特定することにより、ハイブリドーマを特定することができる。
上記(i)〜(iv)のステップを有する方法により得られたハイブリドーマを本発明に係るハイブリドーマとすることができるが、クローニングないしスクリーニングをさらに行うことにより細胞を純化し、本発明に係るハイブリドーマとすることができる。そのようなクローニングないしスクリーニング方法としては、例えば、限界希釈法、トリプシン濾紙法、ペニシリンキャップ法などの方法を挙げることができる。
また、このようにして得られたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を本発明に係るモノクローナル抗体とすることができる他、前記方法のステップ(iii)において採取される抗体産生細胞が産生するモノクローナル抗体を本発明に係るモノクローナル抗体とすることができる。ハイブリドーマまたは抗体産生細胞からモノクローナル抗体を抽出する方法としては、例えば、細胞培養法や腹水形成法などの常法を挙げることができる。抽出したモノクローナル抗体は、例えば、硫安塩析法、HPLC、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜選択し、またはこれらを組み合わせることにより精製することができる。
得られたモノクローナル抗体のクラスの判定は、適宜常法に従って行うことができ、例えば、免疫した動物がマウスの場合は、IsoStripマウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Roche社)などを用いて行うことができる。なお、本発明に係るモノクローナル抗体のクラスは、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEのいずれも用いることができる。
本発明に係るモノクローナル抗体は、必要に応じて、ビオチン、放射性同位元素、蛍光物質、酵素などにより標識して用いることができる。また、必要に応じて、ポリスチレン製プレート、ポリプロピレン製プレート、シリコン製プレート、ポリスチレン製マイクロビーズ、磁気ビーズ、ラテックス粒子などの担体に固着させて用いることができる。
また、本発明に係るモノクローナル抗体は、必要に応じて、ヒト免疫グロブリン産生能を有する動物に免疫することにより、ヒト抗体として得ることができる他、遺伝子工学的手法を用いて、免疫動物由来の可変部とヒト由来の定常部とからなるキメラ抗体として得ることもでき、免疫動物由来の超可変部を有し、それ以外の抗体部分はヒト由来であるヒト化抗体として得ることもできる。
なお、本発明に係るモノクローナル抗体として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに2010年3月17日付で受託されており、受託番号がNITE BP−916であるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を挙げることができるが、これに限定されるものではない。同様に、本発明に係るハイブリドーマとして、上記の受託番号がNITE BP−916であるハイブリドーマを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
すなわち、後述する実施例に示されるように、健常者において酸化型のsmall dense LDLと特異的に反応するモノクローナル抗体、NASH患者においてnative−LDLと同様の粒子サイズの酸化LDLと特異的に反応するモノクローナル抗体および脂質異常症患者において酸化型のレムナントリポタンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体も、本発明に係るモノクローナル抗体に包含される。
本発明において、「健常者」とは、障害がなく健康な人(岩波書店 広辞苑 第六版)の他、少なくとも酸化LDLが関与する疾患に罹患していない人をいう。
次に、本発明は、本発明に係る軽度に酸化された酸化LDL検出用キットを提供する。本発明に係るキットは、本発明に係るモノクローナル抗体を含んでなるが、二次抗体、標識物質その他の免疫学的検出手段の実施に有用な物質、緩衝液、器具など、その特徴を損なわない限りにおいて、その構成物として含んでもよい。
さらに、本発明は、被検者から採取した生体試料に含まれる軽度に酸化された酸化LDLを検出する方法を提供する。なお、本発明に係る軽度に酸化された酸化LDLを検出する方法には、本発明に係る軽度に酸化された酸化LDLの検出方法を損なわない限り、インキュベート工程や洗浄工程などを含んでいてもよい。
本発明に係る軽度に酸化された酸化LDLを検出する方法は、被検者から採取した生体試料に含まれる酸化LDLを検出する方法であって、
(i)本発明に係るモノクローナル抗体を、被検者から採取した生体試料に含まれる酸化LDLに特異的に反応させて複合体を形成させる工程(複合体形成工程)
(ii)前記複合体を検出する工程(検出工程)
以上(i)および(ii)の工程を有する。
(i)複合体形成工程において複合体を形成させる方法としては、当業者が適宜選択可能な任意の方法を挙げることができる。そのような方法としては、例えば、本発明に係るモノクローナル抗体を含む溶液と生体試料とを混合させて複合体を形成させる方法の他、生体試料を担体に固着させて本発明に係るモノクローナル抗体を含む溶液と反応させる方法、本発明に係るモノクローナル抗体を担体に固着させて生体試料と反応させる方法などを挙げることができる。
(ii)検出工程において複合体を検出する方法としては、ELISA法、間接抗体法、ラテックス凝集法、比濁法、CLEIA法などの常法の他、例えば、モノクローナル抗体あるいは生体試料に予め標識をし、この標識を検出する方法を挙げることができる。
次に、本発明に係る軽度に酸化された酸化LDLを検出する方法の異なる態様は、被検者から採取した生体試料に含まれる酸化LDLを検出する方法であって、
(i)本発明に係るモノクローナル抗体を担体に固着する工程(固着工程)
(ii)担体に固着した前記モノクローナル抗体を、被検者から採取した生体試料に含まれる酸化LDLに特異的に反応させて複合体を形成させる工程(固着複合体形成工程)
(iii)前記複合体を検出する工程(固着複合体検出工程)
以上(i)〜(iii)の工程を有する。
(i)固着工程において、本発明に係るモノクローナル抗体を固着する担体は任意のものを用いることができ、そのような担体としては、例えば、上述の担体と同様のものを挙げることができる。また、固着する方法は特に限定されず、用いる担体により適宜設定して行うことができる。
(ii)固着複合体形成工程および(iii)固着複合体検出工程における、固着複合体を形成させる方法および固着複合体を検出する方法としては、上述の(i)複合体形成工程および(ii)検出工程と同様の方法を挙げることができる。
本発明に係る軽度に酸化された酸化LDL検出用キットおよび軽度に酸化された酸化LDLを検出する方法は、肝疾患のみならず酸化LDLが関与する種々の疾患の解明、診断、重症度の評価、治療効果の評価の他、リポタンパク質の酸化度の評価などに用いることが可能である。
以下、本発明に係る軽度に酸化された酸化LDLに対するモノクローナル抗体、そのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、軽度に酸化された酸化LDL検出用キットおよび被検者から採取した生体試料に含まれる軽度に酸化された酸化LDLを検出する方法について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
<実施例1>TG−rich LDLを免疫原とするモノクローナル抗体の作製
(1)アガロースゲル電気泳動によるTG−rich LDLの確認
肝疾患末期患者1名および健常者1名から採取した血液を室温で1時間静置した後、3500rpm、4℃の条件下で10分間遠心分離を行うことにより、肝疾患末期患者血清および健常者血清を得た。得られた血清を1.5μLずつアガロースゲル(ユニバーサルゲル/8;ヘレナ研究所社)に塗布し、pH8.6、イオン強度0.06のバルビタール緩衝液中において、100V、150Wで45分間電気泳動を行った後、ドライヤーを用いてゲルを乾燥させた。続いて、0.03%(w/v)のFat Red 7B(ヘレナ研究所社)を含むメタノール20mLにTritonX−100を2滴加え、さらに0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を4mL加えることにより調製した染色液に、乾燥させたゲルを10分間浸漬して染色を行った後、75%(v/v)メタノール水溶液に10秒間浸漬することにより脱色を行った。
図2に示すように、健常者血清(N)ではHDLに相当するα位およびLDLに相当するβ位にそれぞれバンドが検出された。一方、肝疾患末期患者血清(P)ではα位のバンドは検出されなかった。また、健常者血清(N)のβ位のバンドに比して、肝疾患末期患者血清(P)では陽極側に移動した位置でβ位のバンドが検出された。これらの結果から、この肝疾患末期患者血清にはHDLが含まれず、かつTG−rich LDLが含まれることが確認された。
(2)免疫原の調製
[2−1]密度勾配遠心法による総リポタンパク質画分の分離
本実施例(1)でTG−rich LDLが含まれることが確認された肝疾患末期患者血清について、既報(Chiba H.ら、J.Lipid Res.、第38巻、第1204−1216頁、1997年/Hirano T.ら、J.Atherosclerosis and Thrombosis、第12巻、第67〜72頁、2005年)に従って密度勾配遠心法を行い、総リポタンパク質画分を得た。具体的には、本実施例(1)の肝疾患末期患者血清に5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB;和光純薬工業社)およびEDTA−2Na(同仁化学研究所社)をそれぞれ0.7mmol/Lおよび2.7mmol/L(pH7.4)となるよう加え、さらに適量の臭化カリウム(関東化学社)を加えることにより比重dがd=1.225kg/Lとなるように調整し、サンプル溶液とした。続いて、0.20mol/Lの塩化ナトリウム、0.27mmol/LのEDTA−2Na(pH7.4)および1mmol/Lの水酸化ナトリウムを含む水溶液(d=1.006kg/L)に、適量の臭化カリウム(関東化学社)を加えることにより比重dがd=1.225kg/Lとなるように調整し、比重液とした。サンプル溶液12mLを遠心管(40PA;日立工機社)に入れ、比重液を満たし、超遠心機himac CP60E ultracentrifuge(日立工機社)およびローターRPV−50T rotor(日立工機社)を用いて、40000rpm、15℃の条件下で18時間遠心分離を行って、上層(d<1.225kg/L)を総リポタンパク質画分として回収した。回収した総リポタンパク画分約8mLを、アミコン攪拌式セルModel 8050(ミリポア社)および限外濾過膜アミコンXM50(ミリポア社)を用いて、付属の使用書に従い、窒素ガス雰囲気下で2〜3mLに濃縮した。
[2−2]ゲル濾過クロマトグラフィーによるTG−rich LDL画分の分離
本実施例(2)[2−1]の総リポタンパク質画分について、既報(Chiba Hら、J.Lipid Res.、第38巻、第1204〜1216頁、1997年/Hirano T.ら、J.Atherosclerosis and Thrombosis、第12巻、第67〜72頁、2005年)に従ってゲル濾過クロマトグラフィーを行い、TG−rich LDL画分を得た。具体的には、以下の器具、試薬および条件を用いて、280nmの吸光度を計測しながらゲル濾過クロマトグラフィーを行い、溶出液を3mLずつ分取した。
サンプル;本実施例(2)[2−1]の総リポタンパク画分2〜3mL(カラム負荷量)
カラム ;Sepharose CL−4B(GEヘルスケア社)
緩衝液 ;0.15mol/LのNaCl、0.27mmol/LのEDTA−2Na および3mmol/LのNaNを含む5mmol/LのTris−HCl 緩衝液(pH7.4)200mL
条件 ;クロマトチャンバー 4℃
流速 0.15mL/分
分取した溶出液のうち、吸光度のピークの前後9mL(3mL×3画分)ずつ溶出液を集め、TG−rich LDL画分18mL(3mL×6画分)を得た。
[2−3]TG−rich LDL画分の濃縮および透析
本実施例(2)[2−2]のTG−rich LDL画分18mLを、アミコン攪拌式セルModel 8050(ミリポア社)および限外濾過膜アミコンXM50(ミリポア社)を用いて、付属の使用書に従い、窒素ガス雰囲気下で2〜3mLに濃縮した。その後、リン酸緩衝液(PBS)を透析液として、透析膜(セルロースチューブ20/32;三光純薬社)を用いて、4℃で一晩透析し、TG−rich LDL溶液2〜3mLを得た。透析中、透析液の交換を3回行った。
[2−4]TG−rich LDL溶液のタンパク質濃度測定
本実施例(2)[2−3]のTG−rich LDL溶液について、既報に従い、Lowry変法を用いてタンパク質濃度を測定した(Markwell MA.ら、Anal.Biochem.、第87巻、第206〜210頁、1978年)。具体的には、2%(w/v)の炭酸ナトリウム、0.4%(w/v)の水酸化ナトリウム、0.16%(w/v)の酒石酸塩および1%(w/v)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む水溶液を調製し、この水溶液と4%(w/v)の硫酸銅水溶液とを体積比100:1に混合した溶液を反応溶液として調製した。また、脱イオン水に等量のフェノール試薬(フォーリン・チオカルト試薬;和光純薬社)を混合してフォーリン・チオカルト試薬液を調製した。また、500μg/mLの牛血清アルブミン(BSA)水溶液を標準溶液として調製した。本実施例(2)[2−3]のTG−rich LDL溶液および標準溶液それぞれ1mLに、調製した反応溶液を3mLずつ加えて室温で30分間反応させた。続いて、調製したフォーリン・チオカルト試薬液300μLを強く撹拌しながら加えた後、室温で45分間反応させた。その後、660nmの吸光度をそれぞれ測定した。標準溶液の測定値との比較から、本実施例(2)[2−3]のTG−rich LDL溶液のタンパク質濃度を算出した。
[2−5]TG−rich LDL溶液のタンパク質濃度調整
本実施例(2)[2−4]で算出した結果に基づき、本実施例(2)[2−3]のTG−rich LDL溶液のタンパク質濃度を、PBSを用いて1mg/mLに調整した後、4℃で保存した。
(3)TG−rich LDLを免疫原としたマウスへの免疫およびハイブリドーマの作製
本実施例(2)[2−5]の0.5〜1mg/mLのTG−rich LDL溶液0.1mLを孔径0.45mmのフィルター(DISMIC−25CS;ADVANTEC社)に通した後、常法に従って、百日咳菌アジュバントを注射したBALB/cマウスに3回腹腔内注射することにより免疫を行った。その後、常法に従って、免疫したマウスから脾臓細胞を採取し、50%ポリエチレングリコール1500(Roche社)を用いてマウスミエローマ細胞株P3U1と融合させてハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマは、常法に従って、ペニシリン/ストレプトマイシン、10%(w/v)のウシ胎児血清(FCS)およびHAT溶液を含むRPMI1640培地を用いて、コロニーが確認できるまで約10日間培養した。
(4)TG−rich LDL、native−LDLおよび金属酸化LDLを固着させたELISAによるハイブリドーマのスクリーニング
[4−1]native−LDL画分の調製
本実施例(2)[2−1]、[2−2]、[2−3]、[2−4]および[2−5]に記載の方法に従って、健常者血清からnative−LDL溶液を調製した。
[4−2]金属酸化LDL画分の調製
本実施例(4)[4−1]のnative−LDL溶液1mg/mLに、25μmol/Lとなるよう硫酸銅を添加し、37℃で24時間インキュベートした後、PBSを透析液として4℃で一晩透析を行うことにより、金属酸化LDL溶液を調製した。
[4−3]native−LDLおよび金属酸化LDLを固着させたELISA
本実施例(4)[4−1]のnative−LDL溶液および本実施例(4)[4−2]の金属酸化LDL溶液を、PBSを用いてそれぞれ20μg/mLに希釈した後、96穴プレート(Nunc MaxiSorp;Nalge Nunc International社)に50μL/ウェル入れて4℃で一晩反応させることにより、native−LDLおよび金属酸化LDLをそれぞれプレート上に固着させた。液体を除去して1%(w/v)BSAを含むPBSを150μL/ウェル入れ、37℃で2時間インキュベートすることによりブロッキングを行った後、0.05%(v/v)のTween20を含むPBS(0.05%Tween−PBS)を用いて4回洗浄した。続いて、native−LDLを固着させたウェルおよび金属酸化LDLを固着させたウェルに本実施例(3)の各コロニーの培養上清を50μL/ウェル入れて、室温で1時間反応させた後、0.05%Tween−PBSを用いて4回洗浄した。続いて、PBSで500倍に希釈したビオチン標識ラット抗マウスk鎖(Zymed Laboratories社)を50μL/ウェルずつ入れ、室温で1時間反応させた後、0.05%Tween−PBSを用いて4回洗浄した。その後、0.05%Tween−PBSで500倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識ストレプトアビジン(ALP−SA;Zymed Laboratories社)を50μL/ウェル入れて室温で30分間反応させた後、0.05%Tween−PBSを用いて4回洗浄した。次に、0.5mmol/LのMgClを含む10mmol/LのDiethanolamine溶液を用いて1mg/mLに調整したDisodium p−nitrophenyl phosphate hexahydrate(和光純薬社)を100μL/ウェル入れて、室温で30分間反応させた。続いて、マイクロプレートリーダー(Bio−Rad Laboratories社)を用いて、主波長405nmおよび副波長600nmで吸光度を測定した。native−LDLを固着させたウェルについては吸光度が小さい培養上清を、金属酸化LDLを固着させたウェルについては吸光度が大きい培養上清をそれぞれ特定することにより、コロニーの選択を行った。
[4−4]限界希釈法によるクローニングおよびスクリーニング
本実施例(4)[4−3]で選択したコロニーの細胞を、96穴プレートに1個/ウェルとなるように播き、ペニシリン−ストレプトマイシン、10%(v/v)のFCS、Hypoxanthine、ThymidineおよびHybridoma Fusion Cloning Supplement(Roche社)を含むRPMI1640培地(10%FCS−HT−HFCS−RPMI1640)を用いて培養を行った。これらの培養上清について、本実施例(4)[4−3]に記載の方法に従い、再度ELISAを行い、native−LDLを固着させたウェルについては吸光度が小さい培養上清を、かつ金属酸化LDLを固着させたウェルについては吸光度が大きい培養上清を特定することにより、クローンの選択を行った。その結果、得られたハイブリドーマをG11−6と命名した。
(5)G11−6抗体の精製
常法に従って、2,6,10,14‐テトラメチル‐2‐ペンタデセン酸(プリステン)を注射したマウスの腹腔内に、本実施例(4)のG11−6を接種して培養し、G11−6が産生するモノクローナル抗体(G11−6抗体)を含む腹水を得た。
得られた腹水について、常法に従い飽和硫安(飽和硫酸アンモニウム)沈殿法を行って、粗モノクローナル抗体溶液を得た。具体的には、得られた腹水を氷冷しながら、等量の飽和硫酸アンモニウムをゆっくりと滴下して加えた後、遠心分離を行って上清を除去した。続いて沈殿物に50%飽和硫酸アンモニウム溶液を加えて再度遠心して上清を除去することで洗浄を行い、沈殿物をPBSに溶解して粗G11−6抗体溶液とした。
続いて、粗G11−6抗体溶液300μLについて、以下の器具・機器、溶離液および条件を用いて常法に従ってHPLC法を行い、溶出液を0.5mLずつ分取することにより、80μg/mL精製G11−6抗体溶液を約1.4mL得た。
カラム;Superose 6 10/300 GL(GEヘルスケア社)
溶離液;50mmol/L NaPB溶液(pH7.2)
システムコントローラ;CBM−20A(島津製作所社)
送液ポンプ:LC−20AD(島津製作所社)
オートサンプラー;SIL−20A(島津製作所社)
カラムオーブン;CTO−20AC(島津製作所社)
検出器;SPD−20A(島津製作所社)
条件;流速 0.5mL/分
検出波長 280nm
<実施例2>G11−6抗体のクラス判定
IsoStripマウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Roche社)を用いて、付属の使用書に従い、イムノクロマトグラフィー法により実施例1(5)のG11−6抗体のクラス判定を行った。その結果、G11−6抗体のクラスはIgMであることが明らかになった。
<実施例3>G11−6抗体の可変領域の配列確認
(1)RNAの抽出
実施例1(4)のハイブリドーマG11−6を、10mLの10%FCS含有RPMI1640培地を入れた25cmのフラスコに播種し、5%CO雰囲気および37℃の条件下で72時間培養した。続いて、常温、8500rpmの条件下で5分間遠心分離を行って、上清を除去し、細胞ペレットを回収した。Absolutely RNA Miniprep kit(STRATAGENE社)を用いて、付属の使用書に従い、回収した細胞のペレットからRNAの抽出を行った。
具体的には、まず、4.2μLのβ−メルカプトエタノールを600μLのLysis bufferに添加し、これを細胞ペレットに加えた。18G(外径1.2mm、内径0.94mm)のシリンジでピペッティングを行った後、全量をPrefilter Spin Cup(Cup1)に収容して、常温および14000rpmの条件下で5分間遠心分離を行い、濾液約600μLを回収した。ここに600μLの70%(v/v)エタノールを加えて転倒混和し、約1200mLのエタノール混和液を得た。このうち、700μLをRNA Binding Spin Cup(Cup2)に移し、常温および14000rpmの条件下で1分間遠心分離を行った後、濾液を除去し、残りのエタノール混和液約500μLを加えて、常温および14000rpmの条件下で1分間、再度遠心分離を行った。その後、濾液を除去し、600μLのLow Salt Wash Bufferを加え、常温および14000rpmの条件下で1分間、さらに遠心分離を行って濾液を除去した。続いて、常温および14000rpmの条件下でさらに2分間遠心分離を行い、濾液を除去した。DNase Digestion Buffer50μLとreconstituted RNase−Free DNaseI5μLとを混合してCup2に添加し、37℃で15分間インキュベートした。さらにその後、Cup2にHigh−Salt Wash Buffer600μLを添加し、常温および14000rpmの条件下で1分間遠心分離を行った後、濾液を除去した。Cup2にLow Salt Wash Buffer600μLを加えて、常温および14000rpmの条件下で1分間遠心分離を行った後、濾液を除去した。さらに、Cup2にLow Salt Wash Buffer300μLを加えて、常温および14000rpmの条件下で2分間遠心分離を行った後、Cup2を新しい1.5mLエッペンドルフチューブに移した。続いて、60℃に温めたElution Buffer50μLをCup2に添加して、室温で2分間静置した。その後、常温および14000rpmの条件下で1分間遠心分離を行って濾液を回収し、これをRNA溶液とした。NanoDrop1000(Thermo Scientific社)を用いてそのRNA溶液のRNA濃度を測定したところ、128ng/μLであった。そこで、RNA溶液にDEPC水の適量を添加することで、RNA濃度を約100ng/μLに調製した。
(2)cDNAの調製
本実施例(1)のRNA溶液を鋳型として、SuperScriptTM First−Strand Synthesis System for RT−PCR(インビトロジェン社)を用いて、付属の使用書に従い逆転写反応を行い、cDNAを調製した。具体的には、まず、下記の組成の反応液Aおよび反応液Bを調製した。
反応液A;約100ng/μL RNA溶液 8μL、10mmol/L dNTP mix 1μL、50ng/μL Random Hexamers 1μL
反応液B;10×RT Buffer 2μL、25mmol/L MgCl 4μL、0.1mol/L DTT 2μL、40U/mL RNaseOUTTM 1μL
反応液Aを混和して、65℃で5分間インキュベートした後、1分間氷中に静置した。続いて、反応液Aに反応液Bを添加して、室温で2分間インキュベートした後、1μLのSuperscriptTM II RTを添加して、室温で10分間、42℃で50分間、70℃で15分間の順でインキュベートすることにより逆転写反応を行い、cDNAを調製した。得られたcDNA溶液は、4℃で保管した。
(3)G11−6抗体の重鎖可変領域(G11−6−VH)および軽鎖可変領域(G11−6−VL)のDNA配列の増幅
本実施例(2)のcDNA溶液を鋳型として、サーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 2400;Applied Biosystems社)を用いてPCRを行い、G11−6抗体の重鎖可変領域(G11−6−VH)およびG11−6抗体の軽鎖可変領域(G11−6−VL)のDNA配列をそれぞれ増幅した。PCRに用いたプライマー、PCR反応溶液組成およびPCR反応条件は下記のとおりである。
PCRに用いたプライマー{Mouse Ig−Primer Set(Novagen社)}
G11−6−VH(5’プライマー;MuIgVH5’−B);5’−GGGAATTCATGRAATGSASCTGGGTYWTYCTCTT−3’(RはAまたはG、SはCまたはG、YはCまたはT、WはAまたはTを表す。;配列番号1)
G11−6−VH(3’プライマー;MuIgMVH3’);5’−CCCAAGCTTACGAGGGGGAAGACATTTGGGAA−3’(配列番号2)
G11−6−VL(5’プライマー;MuIgkVL5’−B);5’− GGGAATTCATGGAGACAGACACACTCCTGCTAT−3’(配列番号3)
G11−6−VL(3’プライマー;MuIgkVL3’);5’−CCCAAGCTTACTGGATGGTGGGAAGATGGA−3’(配列番号4)
PCR反応溶液組成;10×PCR Buffer(Mg2+フリー) 2.5μL、50mmol/L MgCl 0.75μL、2.5mmol/L dNTP mix 2.0μL、250pmol/L 5’プライマー 1.0μL、250pmol/L 3’プライマー 1.0μL、cDNA溶液 1.0μL、Platinum Taq DNA polymerase 0.25μL、DEPC水 16.5μL
PCR反応条件;94℃で2分の反応の後、94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で2分の各反応を1サイクルとして40サイクル行い、その後72℃で6分の反応を行った。
増幅したG11−6−VHのDNA配列を含む溶液(VH−PCR産物溶液)および増幅したG11−6−VLのDNA配列を含む溶液(VL−PCR産物溶液)は、4℃で保存した。
(4)電気泳動によるPCR産物の確認
本実施例(3)のVH−PCR産物溶液およびVH−PCR産物溶液から5μLずつ分取して、それぞれ2μLのLoading buffer(6×Orange DNA Loading Dye;Fermentas社)を添加し、VH泳動用溶液およびVL泳動用溶液とした。VH泳動用溶液、VL泳動用溶液およびDNAラダー(O’GeneRulerTM 100bp DNA Ladder Plus;Fermentas社)を、0.007%(v/v)エチジウムブロマイド(ニッポンジーン社)を含む3%(w/v)アガロースゲル(NuSieve GTG Agarose;CAMBREX社)にアプライした後、陽極側の泳動用バッファー(1×TAE バッファー;ニッポンジーン社)に2μLのエチジウムブロマイド(ニッポンジーン社)を添加して混和し、100Vで、約40分間電気泳動を行った。その後、UV検出器(Dolphin−View;KURABO社)を用いて、泳動像の観察を行った。その結果を図3に示す。
図3左図に示すように、VH泳動用溶液では約450bpのバンドが、VL泳動用溶液では約400bpのバンドがそれぞれ検出された。この結果から、VH−PCR産物溶液においてG11−6−VHのDNA配列が、VL−PCR産物溶液においてG11−6−VLのDNA配列がそれぞれ増幅されていることが確認された。
(5)PCR産物の回収およびベクターへの挿入
本実施例(3)のVH−PCR産物溶液およびVL−PCR産物溶液から15μLずつ分取して、実施例(4)に記載の方法により電気泳動を行った。続いて、VH−PCR産物溶液を泳動したアガロースゲルからは約450bpのバンドを、VL−PCR産物溶液を泳動したアガロースゲルからは約400bpのバンドをそれぞれ切り出した後、QIAquick gel extraction kit(Qiagen社)を用いて、付属の使用書に従い、DNA断片を含む溶液を回収し、G11−6−VH−DNA溶液およびG11−6−VL−DNA溶液とした。その後、TOPO TA Cloning Kit for Sequencing(Invitrogen社)を用いて、4μLのG11−6−VH−DNA溶液、1μLのSalt Solutionおよび1μLのTOPOベクターからなるVHライゲーション反応液と、4μLのG11−6−VL−DNA溶液、1μLのSalt Solutionおよび1μLのTOPOベクターからなるVLライゲーション反応液とを調製し、室温で5分間静置することにより、DNA断片のベクターへの挿入を行った。
(6)形質転換(トランスフォーメーション)および大腸菌の培養
本実施例(5)のVHライゲーション反応液2μLおよびVLライゲーション反応液2μLに、それぞれ、TOP10 Chemically competent E.coli(One Shot TOP10 Chemically Competent E.coli;Invitrogen社)を添加して混和した後、氷中で30分間静置した。続いて、42℃で30秒間静置した後、直ちに氷中で冷却し、E.coli増殖用培地であるS.O.C.medium(Invitrogen社)を250μLずつ加えて37℃で1時間静置することにより、大腸菌の形質転換を行った。VHライゲーション反応液により形質転換した大腸菌を含む溶液をVH大腸菌液とし、VLライゲーション反応液により形質転換した大腸菌を含む溶液をVL大腸菌液とした。
1%(v/v)Ampicillin(Invitrogen社)を含む4%(w/v)LB Agar(Invitrogen社)プレートを6枚用意し、3枚ずつ2群に分けてVHプレート群およびVLプレート群とした。VHプレート群の各プレートにはVH大腸菌液を、VLプレート群の各プレートにはVL大腸菌液を、それぞれ10μL、50μLおよび100μLずつ添加して塗布した後、全プレートを37℃で15時間インキュベートした。続いて、プレートに出現したコロニーを、VHプレート群から計8個、VLプレート群から計7個、滅菌済みのつまようじで拾い上げ、拾い上げた各コロニーを、1%(v/v)Ampicillin(Invitrogen社)を含む2%(w/v)LB Broth Base溶液(Invitrogen社)5mLに添加した。これを、BIO−SHAKER BR−15(TAITEC社)を用いて、振盪速度200min−1で浸透しながら37℃で15時間培養することにより、VH大腸菌培養液(計8サンプル)およびVL大腸菌培養液(計7サンプル)を得た。
(7)プラスミドDNAの精製
本実施例(6)のVH大腸菌培養液1サンプルおよびVL大腸菌培養液1サンプルについて、常温および3000rpmの条件下で10分間遠心分離を行った後、上清を除去してVH大腸菌ペレットおよびVL大腸菌ペレットを回収した。その後、QIAprep Spin Miniprep Kit(Fermentas社)を用いてプラスミドの精製を行い、VHプラスミド溶液およびVLプラスミド溶液を得た。具体的には、VH大腸菌ペレットおよびVL大腸菌ペレットのそれぞれにP1溶液を250μLずつ加えて懸濁し、1.5mLエッペンドルフチューブに移した後、これにP2溶液を250μLずつ加えて転倒混和し、数分静置して大腸菌を溶解させた。続いて、N3溶液を350μLずつ加えて転倒混和して中和し、常温および14000rpmの条件下で1分間遠心分離を行った後、それぞれ上清を回収して、カラムに添加した。続いて、このカラムを常温および14000rpmの条件下で1分間遠心分離を行って濾液を除去した後、カラムにPE溶液を750μLずつ加えて、常温および14000rpmの条件下で1分間遠心分離を行って濾液を除去することによりカラムを洗浄した。カラムをそれぞれ新しい1.5mLエッペンドルフチューブに移した後、EB溶液を50μLずつ加えて1分間静置した。その後、常温および14000rpmの条件下で2分間遠心分離を行って濾液を回収し、これをプラスミド溶液とした。VL大腸菌ペレットから得られたプラスミド溶液をVLプラスミド溶液とし、VL大腸菌ペレットから得られたプラスミド溶液をVLプラスミド溶液とした。VHプラスミド溶液およびVLプラスミド溶液は4℃で保存した。
(8)シークエンス
本実施例(7)のVHプラスミド溶液およびVLプラスミド溶液をそれぞれ鋳型DNAとして、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社)およびT3プライマー(ATTAACCCTCACTAAAGGGA;配列番号5)を用いてシークエンス反応を行った。シークエンス反応溶液組成およびシークエンス反応条件は以下のとおりである。
シークエンス反応溶液組成;Ready Reaction Mix 2μL、Sequencing Buffer 1μL、T3プライマー 1μL、DEPC水 5μL、鋳型DNA 1μL
シークエンス反応条件;96℃で10秒間の反応の後、96℃で10秒、50℃で5秒、60℃で3分の各反応を1サイクルとして25サイクル行い、その後4℃で静置した。
続いて、VHプラスミド溶液を鋳型DNAとしたシークエンス反応溶液(VHシークエンス反応溶液)およびVLプラスミド溶液を鋳型DNAとしたシークエンス反応溶液(VLシークエンス反応溶液)に、SAMTM Solution(Applied Biosystems社)45μLおよびBigDye XTerminatorTM Solution(Applied Biosystems社)10μLを添加した後、MicroMixer E−36(TAITEC社)を用いて、室温および遮光の条件下で30分間振盪した。その後、常温および14000rpmの条件下で10秒間遠心分離を行って上清を回収し、シークエンサー(3730xl DNA Analyzer;Applied Biosystems社)にセットしてDNA配列を解析した。続いて、ソフトウェア(MacVector;MacVector社)を用いて、得られたDNA配列からアミノ酸配列ならびに相補性決定領域(complementarity determining region;CDR)のCDR1、CDR2およびCDR3を推定した。その結果を下記に示す。
G11−6−VHのDNA配列
GTTCAGCTCCAGCAGTCTGGGACTGTGCTGGCAAGGCCTGGGGCTTCAGTGAAGATGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACCTTTACCAGCTACTGGATGCACTGGGTAAAACAGAGGCCTGGACAGGGTCTGGAATGGATTGGCGCTATTTATCCTGGAAATAGTGATACTAGCTACAACCAGAAGTTCAAGGGCAAGGCCAAACTGACTGCAGTCACATCCACCAGCACTGCCTACATGGAGCTCAGCAGCCTGACAAATGAGGACTCTGCGGTCTATTACTGTACAAGAGTCTACGGTAGGGCTATGGACTACTGGGGTCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCA(配列番号6)
G11−6−VHのアミノ酸配列(下線は順にCDR1、CDR2、CDR3の領域を示す)
VQLQQSGTVLARPGASVKMSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGAIYPGNSDTSYNQKFKGKAKLTAVTSTSTAYMELSSLTNEDSAVYYCTRVYGRAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号7)
VH領域のCDR1;SYWMH(配列番号8)
VH領域のCDR2;AIYPGNSDTSYNQKFKG(配列番号9)
VH領域のCDR3;VYGRAMDY(配列番号10)
G11−6−VLのDNA配列
GACATTGTGCTGACACAGTCTCCTGCTTCCTTAGCTGTATCTCTGGGGCAGAGGGCCACCATCTCATACAGGGCCAGCAAAAGTGTCAGTACATCTGGCTATAGTTATATGCACTGGAACCAACAGAAACCAGGACAGCCACCCAGACTCCTCATCTATCTTGTATCCAACCTAGAATCTGGGGTCCCTGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACCCTCAACATCCATCCTGTGGAGGAGGAGGATGCTGCAACCTATTACTGTCAGCACATTAGGGAGCTTACACGTTCGGAGGGGGGACCAAGCTGGAAA(配列番号11)
G11−6−VLのアミノ酸配列(下線は順にCDR1、CDR2、CDR3の領域を示す)
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISYRASKSVSTSGYSYMHWNQQKPGQPPRLLIYLVSNLESGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDAATYYCQHIRELTRSEGGPSWK(配列番号12)
VL領域のCDR1;RASKSVSTSGYSYMH(配列番号13)
VL領域のCDR2;LVSNLES(配列番号14)
VL領域のCDR3;QHIRELT(配列番号15)
(9)アミノ酸配列の相同性検索
本実施例(8)のG11−6−VH、G11−6−VL、およびそれらのCDR1、CDR2およびCDR3の各アミノ酸配列について、ソフトウェア(MacVector;MacVector社)を用いて、ClustalW解析およびBLAST解析を行い、既知のアミノ酸配列との相同性を検索した。相同性検索の結果、相同性が高かった最上位のものを図4〜7に示す。
図4〜7に示すように、G11−6−VLのアミノ酸配列と100%一致する既知のアミノ酸配列は検出されたが、G11−6−VHのアミノ酸配列と100%一致する既知のアミノ酸配列は検出されなかった。また、G11−6−VHのCDR1、G11−6−VHのCDR2、G11−6−VLのCDR1、G11−6−VLのCDR2およびG11−6−VLのCDR3のアミノ酸配列とそれぞれ100%一致する既知のアミノ酸配列は検出されたが、G11−6−VHのCDR3と100%一致する既知のアミノ酸配列は検出されなかった。これらの結果から、G11−6抗体は新規の抗体であることが確認された。
<実施例3>肝疾患患者血清に対するG11−6抗体を固着させたELISAの反応性
(1)血清サンプルの調製
肝疾患患者1名および健常者1名からそれぞれ血清を採取し、サンプルとした。
(2)G11−6抗体を固着させたELISA
[2−1]ビオチン標識抗アポリポタンパク質B抗体(検出用抗体)の調製
〈2−1−1〉抗アポリポタンパク質B抗体の精製
抗アポリポタンパク質Bポリクローナル抗体を含むヤギ抗血清(WatPa;Enterprises社)について、実施例1(5)に記載の方法により、常法に従い飽和硫安沈殿法を行って、粗抗アポリポタンパク質B抗体溶液を得た。続いて、粗抗アポリポタンパク質B抗体溶液について、常法に従いアフィニティカラムクロマトグラフィー法を行って、精製抗アポリポタンパク質B抗体を得た。具体的には、まず、粗抗アポリポタンパク質B抗体溶液をPBSで10倍希釈した後、以下の器具・機器および条件を用いてアフィニティカラムに循環して通過させた。
カラム;Protein G Sepharose 4 Fast Flow(GEヘルスケア社)
送液ポンプ;ペリスタルティックポンプ(SJ−1215;ATTO社)
条件;4℃、流速約0.2mL/分
続いて、PBSを用いてカラム内を洗浄した後、流速約0.2mL/分で0.1mol/LのGlycine−HCl(pH2.7)を流してカラムに結合した抗アポリポタンパク質B抗体を溶出させ、溶出液を0.5mLずつ分取した。
分取した溶出液に速やかに1mol/LのTris−HCl(pH8.0)を加えて中和を行った後、各溶出液について波長280nmの吸光度を測定して、タンパク質の存在が確認された溶出液を選択した。選択した溶出液を合わせて波長280nmの吸光度を測定し、タンパク質濃度を算出したところ、4.7mg/mLの精製抗アポリポタンパク質B抗体溶液約3.5mLが得られたことが確認された。続いて、透析膜(セルロースチューブ20/32;三光純薬社)を用い、PBSを透析液として4℃で一晩透析することにより、精製抗アポリポタンパク質B抗体溶液約3.5mLを得た。透析中、透析液の交換を3回行った。その後、PBSを用いてタンパク質濃度2mg/mLに調整した。
〈2−1−2〉抗アポリポタンパク質B抗体のビオチン標識
Dimethylsulfoxide(和光純薬社)に、10mmol/LとなるようN−hydroxysuccinimide ester of biotin(EZ−Link NHS−Biotin Reagents;サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を溶解することによりビオチン標識液を調製した。本実施例(2)[2−1]〈2−1−1〉の抗アポリポタンパク質B抗体溶液1mLに、調製したビオチン標識液を27μL添加して、室温で4時間、振盪しながら反応させた後、PBSを透析液として透析を行い、未反応のビオチンを除去することにより、ビオチン標識抗アポリポタンパク質B抗体を調製した。その後、PBSを用いてタンパク質濃度0.01mg/mLに希釈した。
[2−2]G11−6抗体を固着させたELISA
実施例1(5)のG11−6抗体について、PBSを用いてタンパク質濃度5μg/mLに希釈した。これを、96穴プレート(Nunc MaxiSorp;Nalge Nunc International社)に50μL/ウェル入れて、37℃で2時間インキュベートすることによりG11−6抗体をプレート上に固着させた。液体を除去して1%(w/v)BSAを含むPBSを150μL/ウェル入れ、37℃で2時間インキュベートすることによりブロッキングを行った後、0.05%Tween−PBSを用いて4回洗浄した。続いて、PBSを用いてそれぞれ20倍に希釈した本実施例(1)の血清サンプルを50μL/ウェル入れて、4℃で一晩反応させた後、0.05%Tween−PBSを用いて4回洗浄した。次に、本実施例(2)[2−1]〈2−1−2〉のビオチン標識ヤギ抗アポリポタンパク質B抗体を50μL/ウェル入れ、室温で1時間反応させた後、0.05%Tween−PBSを用いて4回洗浄した。続いて、0.05%Tween−PBSで250倍に希釈したALP−SA(Zymed Laboratories社)を50μL/ウェル入れて室温で30分間反応させた後、0.05%Tween−PBSを用いて4回洗浄した。さらに、0.5mmol/LのMgClを含む10mmol/LのDiethanolamine溶液を用いて1mg/mLに調整したDisodium p−nitrophenyl phosphate hexahydrate(和光純薬社)を100μL/ウェル入れ、室温で60分間発色反応を行った後、マイクロプレートリーダー(Multiskan FC;サーモサイエンティフィックフィッシャー社)を用いて、主波長405nmおよび副波長620nmで吸光度を測定した。
(3)抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISA
本実施例(1)の血清サンプルについて、酸化LDLのELISAキット(酸化LDL測定試薬「MX」;協和メデックス社)を用いて、付属の使用書に従いELISAの反応を測定した。具体的には、マウス抗酸化リン脂質モノクローナル抗体が固着されたプレートに反応用緩衝液を100μL/ウェル入れ、付属の検体希釈液を用いて本実施例(1)の血清サンプルを250倍に希釈し、それぞれ20μL/ウェル入れて37℃で2時間インキュベートした後、付属の洗浄液を用いて4回洗浄した。続いて、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトアポリポタンパク質Bポリクローナル抗体を100μL/ウェル入れ、37℃で1時間インキュベートした後、前記洗浄液を用いて4回洗浄した。次に、3,3’,5,5’,−テトラメチルベンジジン溶液を100μL/ウェル入れて37℃で30分間インキュベートし、0.5mol/Lの硫酸を50μL/ウェル入れることにより反応を停止させた後、マイクロプレートリーダー(Multiskan FC;サーモサイエンティフィックフィッシャー社)を用いて、主波長450nmおよび副波長620nmで吸光度を測定した。
(4)抗MDA−LDL抗体を固着させたELISA
本実施例(1)の血清サンプルについて、酸化LDLのELISAキット(酸化LDLエライザ「第一」;積水メディカル社)を用いて、付属の使用書に従いELISAの反応を測定した。具体的には、付属の洗浄液を用いてマウス抗MDA−LDLモノクローナル抗体が固着されたプレートを3回洗浄した。続いて、検体希釈液(HEPES緩衝液)を用いて本実施例(1)の血清サンプルを2000倍に希釈し、それぞれ100μL/ウェル入れて室温で2時間反応させた後、付属の洗浄液を用いて3回洗浄した。続いて、β−ガラクトシダーゼ標識マウス抗アポリポタンパク質Bモノクローナル抗体を100μL/ウェル入れ、室温で1時間反応させた後、付属の洗浄液を用いて3回洗浄した。次に、基質であるo−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド溶液を100μL/ウェル入れて、室温で2時間反応させた後、炭酸ナトリウム液を100μL/ウェル入れて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(NOVAPATH;Bio−Rad Laboratories社)を用いて、主波長415nmおよび副波長655nmで吸光度を測定した。
本実施例(2)、(3)および(4)の結果を図8に示す。図8に示すように、G11−6抗体を固着させたELISAにおいては、肝疾患患者では0.212の吸光度が確認されたが、健常者では吸光度がほとんど確認されなかった。これに対し、抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISAにおいては、肝疾患患者では0.602の吸光度が、健常者では0.094の吸光度がそれぞれ確認された。また、抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAにおいては、肝疾患患者では0.146の吸光度が、健常者では0.179の吸光度がそれぞれ確認された。
これらの結果から、抗酸化リン脂質抗体および抗MDA−LDL抗体が、肝疾患患者血清のみならず健常者血清に対しても少なからず反応するのに対し、G11−6抗体は、肝疾患患者血清に反応するが健常者血清にはほとんど反応しないことから、特異性に優れることが示された。
<実施例4>肝疾患重症度とG11−6抗体を固着させたELISAにおける反応性との相関
(1)アガロースゲル電気泳動による肝疾患重症度の判定
肝疾患患者9名、健常者14名からそれぞれ血清を採取し、実施例1(1)に記載の方法に従ってアガロースゲル電気泳動を行った。健常者血清および肝疾患患者血清の典型的な泳動結果を図9に示す。
図9に示すように、肝疾患患者血清のうち、α位のバンド(HDLに相当)が完全に欠失したものと欠失していないものがあった。そこでこの結果に基づき、健常者の泳動パターンに比して、α位のバンド(HDLに相当)が完全に欠失した肝疾患患者を重度群と判定し、α位のバンド(HDLに相当)が欠失していない肝疾患患者を軽中度群と判定したところ、肝疾患患者9名のうち6名が軽中度群であり、3名が重度群であった。
(2)G11−6抗体を固着させたELISA
実施例3(2)[2−2]に記載の方法に従い、G11−6抗体を固着させたELISAを行った。ただし、サンプルは実施例3(1)の血清サンプルに代えて、本実施例(1)の健常者群14名、軽中度群6名および重度群3名の血清合計23サンプルをそれぞれ用いた。吸光度の測定値を健常者群、軽中度群および重度群の群別に集計し、平均値を算出した。その結果を図10に示す。各群間の比較は、一元配置分散分析およびScheffeの方法による多重比較検定を行い、 P<0.05である場合に、統計学的に有意であるとした。
図10に示すように、健常者群の吸光度は0.052±0.024であったのに対し、軽中度群の吸光度は0.105±0.074、重度群の吸光度は0.699±0.942であった。多重比較検定の結果、重度群と健常者群との間はP<0.05で、有意差が認められた。また、重度群と軽中度群との間はP<0.05で、有意差が認められた。一方、健常者群と軽中度群との間には有意差が認められなかった。
これらの結果から、G11−6抗体を固着させたELISAは、肝疾患患者において肝疾患の重症度診断に有用であることが確認された。
<実施例5>脂質異常症患者血清に対するG11−6抗体を固着させたELISAの反応性
(1)血清脂質項目の測定
健常者1名、脂質異常症患者7名(脂質異常症1、脂質異常症2、・・・脂質異常症7とする)および肝疾患患者12名(肝疾患1、肝疾患2、・・・肝疾患12とする)から血清合計20サンプルを採取し、以下の試薬および日立自動分析装置7170(日立ハイテクノロジーズ社)を用いて、付属の使用書に従い、血清中脂質濃度を測定した。続いて、測定値を健常者、脂質異常症患者および肝疾患患者の別に集計して、平均値を算出した。その結果を表2に示す。
総コレステロール(TC);コレステストCHO(積水メディカル社)
中性脂肪(TG);エクセライザ TG(積水メディカル社)
リン脂質(PL);ピュアオートS PL(積水メディカル社)
高密度リポタンパク質中のコレステロール(HDL−C);コレステストN HDL(積水メディカル社)
低密度リポタンパク質中のコレステロール(LDL−C);コレステスト LDL(積水メディカル社)
Figure 0005854474
(2)G11−6抗体を固着させたELISA
実施例3(2)[2−2]に記載の方法により、G11−6抗体を固着させたELISAを行った。ただし、サンプルは実施例3(1)の血清サンプルに代えて、本実施例(1)の健常者1名、脂質異常症患者7名および肝疾患患者12名の血清合計20サンプルを用いた。その結果を図11のAに示す。また、各サンプルの吸光度の測定値について、以下の式を用いて、本実施例(1)で測定した各サンプルのLDL−Cの血清中濃度で除した。その結果を図11のBに示す。
式;吸光度の測定値×10000/本実施例(1)で測定した血清中LDL−C濃度
図11のAに示すように、健常者の吸光度の測定値はほぼゼロである一方、脂質異常症患者1〜脂質異常症患者7の吸光度の測定値は、概ね健常者の吸光度の測定値と比較して大きい。特に、脂質異常症患者1の吸光度の測定値は、他の脂質異常症患者の吸光度の測定値と比較して大きく、肝疾患患者1〜肝疾患患者10、肝疾患患者12の吸光度の測定値と比較しても同程度あるいはそれよりも大きいことが分かる。これに対し、肝疾患患者1〜肝疾患患者12の吸光度は、健常者の吸光度の測定値と比較して大きく、脂質異常症患者の吸光度の測定値と比較しても、概ね大きいことが分かる。これらの結果から、G11−6抗体を固着させたELISAは、健常者では反応が小さい一方、脂質異常症患者および肝疾患患者では比較的反応が大きいことが確認された。
また、図11のBに示すように、各サンプルの吸光度の測定値を各サンプルの血清中LDL−C濃度で除したところ、肝疾患患者の測定値と健常者および脂質異常症患者の測定値との差が大きくなり、肝疾患患者の測定値が大きい一方、健常者および脂質異常症患者の測定値が小さくなった。この結果から、G11−6抗体を固着させたELISAの吸光度の測定値を血清中LDL−C濃度で除することにより、肝疾患特異的に大きな値となることが確認された。
<実施例6>各種疾患患者血清のゲル濾過溶出液に対するG11−6抗体を固着させたELISAの反応性
(1)総リポタンパク質画分のゲル濾過溶出液に対する各種ELISAの反応性
健常者から血清を採取し、既報(Hirano T.ら、J.Atherosclerosis and Thrombosis、第12巻、第67〜72頁、2005年)に従って密度勾配遠心法を行い、リポタンパク質を分離した。具体的には、肝疾患患者1名および若年健常者1名から採取したそれぞれの血清2mLを比重dがd=1.225kg/Lとなるように調整し、超遠心機OptimaMAX ultracentrifuge(ベックマン・コールター社)およびローターMLN−80(ベックマン・コールター社)を用いて、50000rpm、15℃の条件下で20時間遠心分離を行った後、上層(d<1.225kg/L)を総リポタンパク質画分として回収した。続いて、実施例1(5)に記載の方法によりゲル濾過クロマトグラフィーを行って、溶出液を0.5mLずつ分取し、分取した順に溶出番号1、溶出番号2、・・・・溶出番号28とした。その後、溶出番号5、7、9、11、12、13、14、15、16、18、20、22、25および28の各溶出液についてコレステストCHO(積水メディカル社)および日立自動分析装置7170(日立ハイテクノロジーズ社)を用いて、付属の使用書に従い、TC濃度を測定した。
続いて、溶出番号5、7、9、11、12、13、14、15、16、18、20、22、25および28の各溶出液をサンプルとして、実施例3(2)[2−2]に記載の方法によりG11−6抗体を固着させたELISAを、また、付属の検体希釈液を用いて溶出番号5、7、9、11、12、13、14、15、16、18、20、22、25および28の各溶出液を10倍に希釈し、これらをサンプルとして実施例3(3)に記載の方法により抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISAを、さらに、付属の検体希釈液を用いて溶出番号5、7、9、11、12、13、14、15、16、18、20、22、25および28の各溶出液を500倍に希釈し、これらをサンプルとして実施例3(4)に記載の方法により抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAを、それぞれ行った。
TC濃度測定および各種のELISAの、肝疾患患者血清についての結果を図12のAに、健常者血清についての結果を図12のBにそれぞれ示す。
図12のAに示すように、肝疾患患者では溶出番号13においてTC濃度が最大となった。また、溶出番号13において、G11−6抗体を固着させたELISA、抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISAおよび抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAのいずれも吸光度が最大となった。
TC濃度は総リポタンパク質における各リポタンパク質の濃度を示すことから、これらの結果から、G11−6抗体は、肝疾患患者に高濃度に存在するTG−rich LDLに特異的に反応することが確認された。また、TC濃度のピークおよびG11−6抗体を固着させたELISAにおける反応のピークが、抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISAおよび抗MDA−LDL抗体を固着させたELISA、すなわち市販の酸化LDLのELISAにおける反応のピークと一致したことから、TG−rich LDLが酸化LDLであること、およびG11−6抗体は酸化LDLに反応することが確認された。
一方、図12のBに示すように、若年健常者では溶出番号13においてTC濃度が最大となったのに対し、溶出番号14において、G11−6抗体を固着させたELISA、抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISAおよび抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAのいずれも吸光度が最大となった。
これらの結果から、健常者にはnative−LDLと比較して粒子サイズの小さい、酸化LDL、すなわち酸化型のsmall dense LDLが存在すること、G11−6抗体はこのような酸化LDLに対して反応することおよび健常者においては酸化型のsmall dense LDLと特異的に反応することが確認された。
(2)血清のゲル濾過溶出液に対する各種ELISAの反応性
肝疾患患者1名、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)患者1名、脂質異常症患者2名(脂質異常症1、脂質異常症2とする)および健常者2名(健常者1、健常者2とする)から血清合計6サンプルを採取し、実施例1(5)に記載の方法によりゲル濾過クロマトグラフィーを行って、溶出液を0.5mLずつ分取し、分取した順に溶出番号1、溶出番号2、・・・・溶出番号28とした。その後、溶出番号1〜28の各溶出液について実施例5(1)に記載の方法によりTC濃度、TG濃度およびPL濃度を測定した。
続いて、溶出番号1、3、5、8、10、11、12、13、14、15、16、18、21、24および28の各溶出液をサンプルとして、実施例3(2)[2−2]に記載の方法によりG11−6抗体を固着させたELISAを、付属の検体希釈液を用いて、溶出番号1、3、5、8、10、11、12、13、14、15、16、18、および24の各溶出液を500倍に希釈し、これらをサンプルとして実施例3(4)に記載の方法により抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAを、それぞれ行った。
脂質濃度測定および各種のELISAの、肝疾患患者(n=1)血清についての結果を図13に、NASH患者(n=1)血清についての結果を図14に、脂質異常症患者(n=2)血清についての結果を図15に、健常者(n=2)血清についての結果を図16にそれぞれ示す。
図13に示すように、肝疾患患者では、溶出番号13においてTC濃度、TG濃度、PL濃度、G11−6抗体を固着させたELISAの吸光度および抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAの吸光度がいずれも最大となった。
この結果は本実施例(1)の図12のAと同様の結果であり、G11−6抗体はTG−rich LDLに特異的に反応すること、TG−rich LDLが酸化LDLであることおよびG11−6抗体は酸化LDLに反応することが確認された。
また、図14に示すように、NASH患者では、溶出番号14においてTC濃度およびPL濃度が、溶出番号5においてTG濃度が、溶出番号13においてG11−6抗体を固着させたELISAの吸光度が、溶出番号15において抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAの吸光度が、それぞれ最大となった。
この結果から、NASH患者にはnative−LDLと同様の粒子サイズの酸化LDLが存在すること、G11−6抗体はそのような酸化LDLに対して反応することおよびNASH患者においてはnative−LDLと同様の粒子サイズの酸化LDLと特異的に反応することが確認された。また、抗MDA−LDL抗体がnative−LDLと比較して粒子サイズの小さい酸化LDL、すなわち酸化型のsmall dense LDLに対して反応が大きいのに対し、G11−6抗体が酸化型small dense LDLに対して反応が小さいのは、下記の実施例で示すように、NASH患者における酸化型small dense LDLが高度に酸化されているためと本発明者らは考えている。
また、図15に示すように、脂質異常症患者では、溶出番号13においてTC濃度、TG濃度およびPL濃度が、溶出番号11においてG11−6抗体を固着させたELISAの吸光度が、溶出番号14または溶出番号15において抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAの吸光度が、それぞれ最大となった。
この結果から、脂質異常症患者にはnative−LDLと比較して粒子サイズの大きい酸化LDL、すなわち酸化型のレムナントリポタンパク質が存在すること、G11−6抗体はそのような酸化LDLに対して反応することおよび脂質異常症患者においては酸化型のレムナントリポタンパク質と特異的に反応することが確認された。一方、抗MDA−LDL抗体は、酸化型のレムナントリポタンパク質に対し、あまり反応しないことが確認された。また、NASH患者血清の場合と同様、脂質異常症患者血清においては、抗MDA−LDL抗体がnative−LDLと比較して粒子サイズの小さい酸化LDL、すなわち酸化型のsmall dense LDLに対して反応が大きいのに対し、G11−6抗体が酸化型のsmall dense LDLに対して反応が小さいのは、下記の実施例で示すように、脂質異常症患者における酸化型のsmall dense LDLが高度に酸化されているためと本発明者らは考えている。
また、図16に示すように、健常者では、溶出番号13においてTC濃度およびPL濃度が、溶出番号13または溶出番号5においてTG濃度が、溶出番号16においてG11−6抗体を固着させたELISAの吸光度が、溶出番号15において抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAの吸光度が、それぞれ最大となった。
この結果は本実施例(1)の図12のBと同様の結果であり、健常者にはnative−LDLと比較して粒子サイズの小さい酸化LDL、すなわち酸化型のsmall dense LDLが存在すること、G11−6抗体はそのような酸化LDLに対して反応することおよび健常者においては酸化型のsmall dense LDLと特異的に反応することが再度確認された。
また、図13〜16の結果から、密度勾配遠心法による総リポタンパク質画分の分離を行わずに血清を直接ゲル濾過クロマトグラフィーに供して得た溶出液に対しても、G11−6抗体を固着させたELISAは、酸化LDLを特異的に検出するのに十分な感度を有することが確認された。
<実施例7>金属酸化LDLに対するG11−6抗体を固着させたELISAの反応性
(1)native−LDL画分の調製
[1−1]密度勾配遠心法によるリポタンパク質の分離
健常者から血清を採取し、既報(Hirano T.ら、J.Atherosclerosis and Thrombosis、第12巻、第67〜72頁、2005年)に従って密度勾配遠心法を行い、リポタンパク質を分離した。具体的には、健常者血清2mLを比重dがd=1.019kg/Lとなるように調製し、超遠心機OptimaMAX ultracentrifuge(ベックマン・コールター社)およびローターMLN−80(ベックマン・コールター社)を用いて、40000rpm、15℃の条件下で20時間遠心分離を行った後、上層(d<1.019kg/L)をA画分として回収した。続いて、下層を比重dがd=1.063kg/Lとなるように調製し、上記の超遠心機およびローターを用いて50000rpm、15℃の条件下で18時間遠心分離を行った。ここで得られた上層(1.019kg/L<d<1.063kg/L)をB画分とし、下層をC画分としてそれぞれ回収した。
[1−2]ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によるリポタンパク質の確認
本実施例(1)[1−1]の健常者血清、A画分、B画分およびC画分について、市販リポタンパク質分析キット(リポフォー;常光社)を用いて、付属の使用書に従い、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を行った。その結果を図17に示す。
図17に示すように、B画分はA画分およびC画分と異なり、HDLを含まないとともにLDLを含むことから、B画分をnative−LDL溶液とした。
[1−3]native−LDL溶液のタンパク質濃度測定
本実施例(1)[1−1]のB画分すなわちnative−LDL溶液について、PBSを透析液として4℃で一晩透析を行った。その後、実施例1(2)[2−4]に記載の方法によりタンパク質濃度測定を行い、PBSを用いて0.5mg/mLに希釈した。
(2)金属酸化LDLの調製
本実施例(1)[1−3]のnative−LDL溶液(0.5mg/mL)120μLに、下記の濃度および量の硫酸銅を添加し、37℃で0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間および24時間インキュベートすることにより、下記の通り様々な酸化度の金属酸化LDL溶液を調製した。
〈a−〉 250μmol/L硫酸銅1.6μL 透析なし 酸化処理終了直後に使用
〈a−1〉 250μmol/L硫酸銅1.6μL 透析なし 4℃で24時間保管
〈a−1w〉250μmol/L硫酸銅1.6μL 透析なし 4℃で1週間保管
〈a+1〉 250μmol/L硫酸銅1.6μL 透析あり 4℃で一晩透析
〈a+1w〉250μmol/L硫酸銅1.6μL 透析あり 4℃で一晩透析の後、4℃で6日間保管
〈b−〉 500μmol/L硫酸銅1.6μL 透析なし 酸化処理終了直後に使用
〈c−〉 500μmol/L硫酸銅6.0μL 透析なし 酸化処理終了直後に使用
〈d−〉 1000μmol/L硫酸銅6.0μL 透析なし 酸化処理終了直後に使用
上記〈a−〉、〈b−〉、〈c−〉および〈d−〉については、各設定時間のインキュベート後、速やかに使用した。上記〈a−1〉については各設定時間のインキュベートに続き、4℃で24時間保管した後に使用した。上記〈a−1w〉については各設定時間のインキュベートに続き、4℃で1週間保管した後に使用した。上記〈a+1〉については、各設定時間のインキュベートに続き、PBSを透析液として4℃で一晩透析を行った後に使用した。上記〈a+1w〉については各設定時間のインキュベートに続き、PBSを透析液として4℃で一晩透析を行い、続いて4℃で6日間保管した後に使用した。
(3)金属酸化LDLの酸化度の確認
本実施例(2)の〈a+1〉の金属酸化LDL溶液について、実施例1(1)に記載の方法により、アガロースゲル電気泳動を行った。その結果を図18に示す。
図18に示すように、金属酸化LDLでは、native−LDLに比較して陽極側に移動した位置でバンドが検出された。また、陽極側への移動距離は、硫酸銅添加後のインキュベート時間に比例して大きくなった。この結果から、硫酸銅添加後のインキュベート時間が長さに比例して、native−LDLの酸化が進行することが確認された。
(4)金属酸化LDLに対するG11−6抗体を固着させたELISAの反応性(硫酸銅添加量についての比較)
実施例3(2)[2−2]に記載の方法により、G11−6抗体を固着させたELISAを行った。ただし、サンプルは実施例3(1)の血清サンプルに代えて、本実施例(2)の〈a−〉、〈b−〉、〈c−〉および〈d−〉の金属酸化LDLをそれぞれ用いた。その結果を図19に示す。
図19に示すように、〈a−〉では、酸化時間2時間まで吸光度が上昇し、酸化時間4時間以上では吸光度が低下し、酸化時間24時間においてnative−LDLと同程度の吸光度となった。〈b−〉では、酸化時間1時間まで吸光度が上昇し、酸化時間2時間以上では吸光度が低下し、酸化時間8時間以上においてnative−LDLと同程度の吸光度となった。〈c−〉および〈d−〉では、酸化時間0.5時間で吸光度が最大となり、酸化時間1時間以上では吸光度が低下し、酸化時間8時間以上においてnative−LDLと同程度の吸光度となった。
これらの結果から、G11−6抗体を固着させたELISAは、軽度に酸化された酸化LDL(軽度酸化LDL)に対しては反応が大きく、酸化されていないnative−LDLおよび高度に酸化された酸化LDL(高度酸化LDL)に対しては反応が小さいことが確認された。
(5)TBARS法による金属酸化LDLの過酸化脂質濃度測定
本実施例(2)の〈a−〉および〈c−〉の金属酸化LDLについて、TBARS Assay Kit(ケイマンケミカル社)を用いて、付属の使用書に従い過酸化脂質濃度測定を行った。具体的には、等量の酢酸と水酸化ナトリウムを混合し、36.8mmol/LとなるようThiobarbituric acidを加えて溶解することにより発色試薬を調製した。本実施例(2)の〈a−〉および〈c−〉の金属酸化LDL溶液25μLずつに対し、1mLの発色試薬および25μLのSDS溶液をそれぞれ加えて混合し、100℃で1時間インキュベートした後、1分間氷中に置いて反応を停止させた。続いて室温、12000rpmの条件下で10分間遠心分離を行った後、上清を回収して96穴マイクロプレート(住友ベークライト社)に150μL/ウェル入れ、波長550nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(Model680;Bio−Rad Laboratories社)を用いて測定した。〈a−〉についての結果を、本実施例(4)の〈a−〉についての結果と合わせて図20のAに、〈c−〉についての結果を、本実施例(4)の〈c−〉についての結果と合わせて図20のBに、それぞれ示す。
図20のAおよび図20のBに示すように、過酸化脂質濃度は〈a−〉と〈c−〉とで同様の変化が検出された。すなわち、いずれの場合も酸化時間が2時間を経過するまでは過酸化脂質濃度が上昇し、酸化時間が4時間を経過すると過酸化脂質濃度が緩やかに低下した。一方、G11−6抗体を固着させたELISAでは、〈a−〉と〈c−〉とで異なる吸光度の変化が検出された。すなわち、〈a−〉の場合は酸化時間が2時間を経過するまでは吸光度が上昇し、酸化時間が4時間を経過すると吸光度が急激に低下し、酸化時間が24時間でnative−LDLと同程度の吸光度となったのに対し、〈c−〉の場合は酸化時間が0.5時間で吸光度が最大となり、酸化時間が1時間を経過すると吸光度が急激に低下し、酸化時間が8時間でnative−LDLと同程度の吸光度となった。
これらの結果から、G11−6抗体を固着させたELISAの反応性が、軽度酸化LDLに対して大きく、高度酸化LDLに対して小さいのに対し、チオバルビツール酸の反応性が、軽度酸化LDLと高度酸化LDLのいずれに対しても同様であることが確認された。
(6)金属酸化LDLに対するG11−6抗体を固着させたELISAの反応性(金属酸化LDLの24時間保管および透析処理の有無についての比較)
実施例3(2)[2−2]に記載の方法により、G11−6抗体を固着させたELISAを行った。ただし、サンプルは実施例3(1)の血清サンプルに代えて、本実施例(2)の〈a−1〉および〈a+1〉の金属酸化LDLをそれぞれ用いた。その結果を、本実施例(4)の〈a−〉についての結果と合わせて図21のAに示す。
また、本実施例(2)の〈a−1〉および〈a+1〉の金属酸化LDLについて、本実施例(5)に記載の方法により過酸化脂質濃度測定を行った。その結果を、本実施例(5)の〈a−〉についての結果と合わせて図21のBに示す。
図21のAに示すように、G11−6抗体を固着させたELISAでは、〈a−1〉の場合は、酸化時間が1時間を経過するまでは吸光度が上昇し、酸化時間が2時間を経過すると吸光度が低下し、酸化時間が約16時間でnative−LDLと同程度の吸光度となった。また、〈a+1〉の場合は、酸化時間が2時間を経過するまでは吸光度が上昇し、酸化時間が4時間を経過すると吸光度が下降し、酸化時間が約16時間でnative−LDLと同程度の吸光度となった。
これらの結果から、G11−6抗体を固着させたELISAで、〈a−〉および〈a+1〉の場合と比較して、〈a−1〉の場合は、より短い酸化時間の金属酸化LDLに対して吸光度が最大となることから、金属酸化LDLは4℃での保管中に酸化が進むことが確認された。また、〈a−〉の場合と比較して、〈a+1〉の場合は、吸光度がほぼ同値か若干小さい値となることから、金属酸化LDLにおけるG11−6抗体の抗原は、透析により除去される物質ではないことが確認された。また、〈a−〉と比較して、〈a−1〉および〈a+1〉において酸化時間が2時間を経過した場合では、吸光度が若干小さい値となることから、酸化時間が2時間を経過した金属酸化LDLは、透析処理の有無にかかわらず、4℃で24時間保管することによりG11−6抗体に対する反応性が低下することが確認された。
一方、図21のBに示すように、〈a−1〉の場合、過酸化脂質濃度は酸化時間が4時間を経過するまでは上昇し、酸化時間が8時間を経過すると緩やかに低下した。これに対し、〈a+1〉の場合は、〈a−〉および〈a−1〉の場合と比較して、酸化時間にかかわらず過酸化脂質濃度が顕著に低下した。
これらの結果から、〈a−1〉の場合は過酸化脂質濃度の変化が〈a−〉の場合と相似していることから、4℃で保管することにより、チオバルビツール酸への反応性を担う過酸化脂質濃度は変化しないことが確認された。また、金属酸化LDLにおけるチオバルビツール酸反応性物質は、透析により除去され得る物質であることが確認された。
(7)金属酸化LDLに対するG11−6抗体を固着させたELISAの反応性(金属酸化LDLの1週間保管および透析処理の有無についての比較)
実施例3(2)[2−2]に記載の方法により、G11−6抗体を固着させたELISAを行った。ただし、サンプルは実施例3(1)の血清サンプルに代えて、本実施例(2)の〈a−1w〉および〈a+1w〉の金属酸化LDLのうち、硫酸銅添加後のインキュベート時間が0.5時間、1時間、2時間および4時間のものをそれぞれ用いた。その結果を、本実施例(6)のG11−6抗体を固着させたELISAの結果と合わせて図22に示す。
図22に示すように、〈a−1w〉と〈a+1w〉とで同様の吸光度の変化が検出され、いずれの場合も、酸化時間0.5時間で吸光度が最大となり、酸化時間が1時間を経過すると吸光度が低下した。また、〈a−〉、〈a−1〉および〈a+1〉と比較して、〈a−1w〉および〈a+1w〉では、酸化時間が1時間を経過すると吸光度が低下した。
これらの結果から、酸化時間が1時間を経過した金属酸化LDLは、透析処理の有無にかかわらず、4℃で1週間保管することによってG11−6抗体に対する反応性が低下することが確認された。
<実施例8>金属酸化LDLに対するG11−6抗体を固着させたELISAの反応性(各種の抗体を固着させたELISAの反応性との比較)
(1)金属酸化LDLの調製
実施例7(1)[1−3]のnative−LDL溶液(0.5mg/mL)120μLに、3.33μmol/Lとなるよう硫酸銅を添加し、37℃で0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間および24時間インキュベートすることにより、様々な酸化度の金属酸化LDL溶液を調製した。調製した金属酸化LDL溶液は速やかにELISAのサンプルとして使用した。
(2)金属酸化LDLに対する各種のELISA
本実施例(1)で調製した金属酸化LDLをサンプルとして、実施例3(2)[2−2]に記載の方法によりG11−6抗体を固着させたELISAを、付属の検体希釈液を用いて、本実施例(1)で調製した金属酸化LDLを2500倍に希釈し、これらをサンプルとして実施例3(3)に記載の方法により抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISAを、付属の検体希釈液を用いて、本実施例(1)で調製した金属酸化LDLを1000倍に希釈し、これらをサンプルとして実施例3(4)に記載の方法により抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAを、それぞれ行った。
また、各酸化時間の金属酸化LDLにおけるアポリポタンパク質Bの状態を確認するため、抗アポリポタンパク質B抗体を固相化抗体とし、かつ抗アポリポタンパク質B抗体を検出用抗体とするサンドイッチELISAを行った。具体的には、実施例3(2)[2−2]に記載の方法によりELISAを行った。ただし、5μg/mLの実施例1(5)のG11−6抗体に代えて、10μg/mLの実施例3(2)〈2−1−2〉のヤギ抗アポリポタンパク質Bポリクローナル抗体を用いた。また、20倍に希釈した実施例3(1)の血清サンプルに代えて、0.1μg/mLに希釈した本実施例(1)で調製した金属酸化LDL溶液を用いた。また、250倍に希釈したALP−SA(Zymed Laboratories社)に代えて500倍に希釈したALP−SA(Zymed Laboratories社)を用いた。
(3)TBARS法による金属酸化LDLの過酸化脂質濃度測定
実施例7(5)に記載の方法によりTBARS法を行い、本実施例(1)で調製した金属酸化LDLの過酸化脂質濃度を測定した。
(4)金属酸化LDLの共役ジエンの測定
脂質の酸化の指標とするため、各酸化時間の金属酸化LDLにおける共役ジエンを測定した。具体的には、PBSを用いて本実施例(1)で調製した金属酸化LDLを0.04mg/mLに希釈し、分光光度計(V−530;日本分光社)を用いて波長234nmの吸光度を測定した。
本実施例(2)、(3)および(4)の結果を図23に示す。図23に示すように、G11−6抗体を固着させたELISAでは、酸化時間が3時間を経過するまでは吸光度が上昇し、酸化時間が4時間を経過すると吸光度が低下し、酸化時間が8時間でnative−LDLと同程度の吸光度となり、酸化時間が24時間では酸化前より吸光度が低くなった。一方、抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISAでは、酸化時間が8時間を経過するまでは吸光度が上昇し、酸化時間24時間で吸光度がやや低下した。抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAでは、酸化時間が3時間を経過するまでは吸光度が上昇し、酸化時間が4時間を経過すると吸光度が低下し、酸化時間が24時間でnative−LDLと同程度の吸光度となった。抗アポリポタンパク質B抗体を固相化抗体および検出用抗体とするELISAでは、酸化時間が8時間を経過するまでは吸光度が高く、酸化時間が24時間で吸光度がやや低下した。TBARS法においては、過酸化脂質濃度は、酸化時間が4時間を経過するまでは上昇し、酸化時間が8時間を経過するとやや低下した。共役ジエンの測定では、酸化時間が3時間を経過するまでは吸光度が急激に上昇し、4時間を経過すると酸化時間においても吸光度は徐々に上昇した。
これらの結果から、G11−6抗体を固着させたELISAは、軽度酸化LDLに反応が大きく、酸化されていないnateve−LDLおよび高度酸化LDLに対しては反応が小さいことが確認された。また、G11−6抗体を固着させたELISAの吸光度の変化は、抗MDA−LDL抗体を固着させたELISAおよび抗酸化リン脂質抗体を固着させたELISAの、いずれの吸光度の変化とも異なることから、G11−6抗体は酸化LDLにおいて、抗MDA−LDL抗体および抗酸化リン脂質抗体とは異なる部位を抗原として認識することが確認された。さらに、G11−6抗体が抗原とする部位は、チオバルビツール酸および共役ジエンへの反応性を担う過酸化脂質濃度およびアポリポタンパク質Bとも相関するものではないことが確認された。

Claims (11)

  1. 下記(a)の可変領域および(b)の可変領域を含んでなる、酸化低密度リポタンパク質に対し特異的に反応するモノクローナル抗体;
    (a)N末端から順に、相補性決定領域(complementarity determining region:CDR)1として配列番号8のアミノ酸配列CDR2として配列番号9のアミノ酸配列を、CDR3として配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域(VH領域)
    (b)N末端から順に、CDR1として配列番号13のアミノ酸配列CDR2として配列番号14のアミノ酸配列を、CDR3として配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖の可変領域(VL領域)
  2. モノクローナル抗体を固相化抗体とし、かつ抗アポリポタンパク質B抗体を検出用抗体とするELISA(Enzyme−linked immunosorbent assay)において、下記(a)で示される抗原と前記モノクローナル抗体との反応の度合いと比較して、下記(b)で示される抗原と前記モノクローナル抗体との反応の度合いが小となる、請求項に記載のモノクローナル抗体;
    (a)最終濃度0.493g/Lの正常な低密度リポタンパク質(native−LDL)に最終濃度3.29μmol/Lの硫酸銅を37℃で0.5時間反応させて得られる金属酸化低密度リポタンパク質、
    (b)最終濃度0.493g/Lの正常な低密度リポタンパク質(native−LDL)に最終濃度3.29μmol/Lの硫酸銅を37℃で24時間反応させて得られる金属酸化低密度リポタンパク質。
  3. モノクローナル抗体を固相化抗体とし、かつ抗アポリポタンパク質B抗体を検出用抗体とするELISA(Enzyme−linked immunosorbent assay)において、下記(a)で示される抗原と前記モノクローナル抗体との反応の度合いと比較して、下記(b)で示される抗原と前記モノクローナル抗体との反応の度合いが小となる、請求項に記載の脂質異常症患者において酸化型のレムナントリポタンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体;
    (a)脂質異常症患者から採取した酸化型のレムナントリポタンパク質、
    (b)前記脂質異常症患者から採取した正常な低密度リポタンパク質(native−LDL)。
  4. 前記(a)の可変領域が配列番号7のアミノ酸配列からなる請求項から請求項のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
  5. 前記(b)の可変領域が配列番号12のアミノ酸配列からなる請求項から請求項のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
  6. 受託番号がNITE BP−916であるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体。
  7. 請求項から請求項のいずれかに記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
  8. 受託番号がNITE BP−916である、請求項に記載のハイブリドーマ。
  9. 請求項から請求項のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含んでなる、酸化低密度リポタンパク質検出用キット。
  10. 被検者から採取した生体試料に含まれる酸化低密度リポタンパク質を検出する方法であって、
    請求項から請求項のいずれかに記載のモノクローナル抗体を、被検者から採取した生体試料に含まれる酸化低密度リポタンパク質に特異的に反応させて複合体を形成させる工程と、
    前記複合体を検出する工程と
    を有する、前記方法。
  11. 被検者から採取した生体試料に含まれる酸化低密度リポタンパク質を検出する方法であって、
    請求項から請求項のいずれかに記載のモノクローナル抗体を担体に固着する工程と、
    担体に固着した前記モノクローナル抗体を、被検者から採取した生体試料に含まれる酸化低密度リポタンパク質に特異的に反応させて複合体を形成させる工程と、
    前記複合体を検出する工程と
    を有する、前記方法。
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