以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する模式的斜視図である。
図2は、本実施の形態にかかる暖房便座装置を表す模式図で、(a)は、暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図、(b)は、(a)に表した切断面A−Aにおける模式的断面図である。なお、図2(b)においては、説明の関係上、閉じた状態の便蓋も表されている。
本実施の形態に係る暖房便座装置100は、トイレ装置10における洋式腰掛便器800の上に設置されるもので、便座200と、便蓋300と、便座200及び便蓋300を開閉可能に支持するケーシング400と、を備える。便蓋300は、閉じた状態において便座200の上方を覆うことができる。例えば便座200には、高周波電流を生成する高周波電源装置220が内蔵される。なお、高周波電源装置220は、ケーシング400に内蔵されていてもよい。
便座200または便蓋300には、高周波電源装置220から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイル222が設けられる。便座200には、磁界によって誘導加熱される導電体からなる発熱部231が設けられる。より具体的には、発熱部231は、誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する。
ケーシング400には、入室検知センサ441、立位検知センサ442、機能許可着座センサ443及び着座前動作センサ444が設けられている。
入室検知センサ441は、例えば焦電センサであり、使用者がトイレルームに入ったことを検知する(人体検知部)。ケーシング400内には便蓋300を開閉する便蓋開閉装置(図示せず)が設けられている。すなわち、入室検知センサ441によって使用者の入室を検知すると、一定時間経過後に便蓋開閉装置が動作して、便蓋300を自動的に開ける。
立位検知センサ442は、例えば光電センサであり、使用者までの距離を測定して、洋式腰掛便器800の前方の所定位置に使用者が立っていることを検知する。立位検知センサ442によって使用者が便座200から一定距離(例えば、30cm)以上離れたことを検知すると、便蓋開閉装置が作動して便蓋300を自動的に閉じる。
なお、便蓋300は、上記のように自動的に開閉する場合のほか、使用者の手動や使用者のボタン操作によっても開閉可能である。
機能許可着座センサ443は、例えば光電センサであり、使用者が便座200に着座して、暖房便座装置100の各種機能の動作可能な状態を検知する。機能許可着座センサ443は、例えば立位検知センサ442と同じ投受光窓を介して光を投光及び受光する。機能許可着座センサ443は使用者までの距離を測定して、一定距離(例えば、10cm)以内に使用者が接近したか否かを検知し、検知後に一定のディレイを設けて検知した旨の信号を出力する。すなわち、機能許可着座センサ443は、使用者が便座200に確実に着座したあと、検知した旨の信号を出力する。この信号の有無によって、着座後に使用可能な各種機能の動作の可否が決定される。
着座前動作センサ444は、例えば光電センサであり、使用者が便座200に着座する前の動作を検知する(着座前動作検知部)。例えば、着座前動作センサ444は、使用者までの距離を測定して、一定距離(例えば、10cm)以内に使用者が接近したか否かを検知し、検知後にディレイ無しで検知した旨の信号を出力する。すなわち、着座前動作センサ444は、使用者が便座200に着座する前の動作を行ったタイミングで検知した旨の信号を出力することができる。この信号によって、便座200の暖房モードの切り替えが行われる。
ここで、ケーシング400の内部には、衛生洗浄装置としての機能部が併設されていてもよい。すなわち、ケーシング400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などが内蔵されていてもよい。
また、ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。
これらの各種機能のうち、使用者が便座200に着座したあとで動作可能にすべきものは、機能許可着座センサ443から検知した旨の信号が出力された場合に動作可能になる。
図2(a)に表したように、ケーシング400の内部には、制御部410が設けられている。そして、商用電源から供給される電力(以下、説明の便宜上「商用電力」と称する)は、制御部410及び高周波電源装置220に投入される。高周波電源装置220は、制御部410から供給される制御信号に基づいて高周波電流を生成する。
図2(b)に表したように、便座200は、便座200の外形を形成する筐体210を有する。筐体210は、樹脂などの絶縁性を有する材料により形成されている。なお、筐体210は、複数の部材により形成されていてもよいし、1つの部材により形成されていてもよい。
便座200の筐体210の内部には、高周波電源装置220から供給された高周波電流が通電されることにより磁界を発生する誘導加熱コイル222が設けられている。誘導加熱コイル222は、便座200の内部の上面(着座面に対向する内面)210aに付設されている。なお、誘導加熱コイル222は、支持体によって支持されていてもよい。
誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する発熱部231は、便座200の上面(着座面)に付設されている。あるいは、発熱部231は、便座200の筐体210の内部に設けられていてもよい。あるいは、発熱部231は、便座200の内部の上面210aに付設されていてもよい。
発熱部231の材料としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体といった金属を用いることができる。便座200の外部に磁界を放出させにくくするためには、電気抵抗が大きい鉄やステンレスなどの強磁性体を発熱部231に用いることがより好ましい。なお、発熱部231が便座200の上面に設けられる場合には、人体と発熱部231とが直接的に接触しないように、塗装、コーティング、フィルムなどが発熱部231の表面に施されることがより好ましい。
便座200には、温度センサ240が設けられている。温度センサ240は、例えば発熱部231の温度を検出する。なお、説明の便宜上、発熱部231の温度は、便座200の着座面の温度と等価であるとする。本実施形態では、便座200の着座面の温度のことを、単に便座200の温度ともいう。温度センサ240による温度の検出信号は、高周波電源装置220及び制御部410に送られる。
制御部410と高周波電源装置220とは、給電線415により接続されている。商用電力などの低周波電流と、制御部410から供給される制御信号と、は給電線415を通して高周波電源装置220に供給される。つまり、制御部410は、高周波電源装置220の動作を制御する。給電線415は、高周波電源装置220から出力される高周波電流よりも相対的に周波数が低い低周波電流を高周波電源装置220に供給する。高周波電源装置220は、制御部410から供給される制御信号に基づいて、低周波電流を高周波電流に変換する。すなわち、高周波電源装置220は、給電線415を通して供給される低周波電流を、その周波数よりも高い周波数の電流(以下、説明の便宜上「高周波電流」と称する)に変換する。
高周波電源装置220により変換された高周波電流は、誘導加熱コイル222へ流れる。そうすると、誘導加熱コイル222は、磁界を発生する。誘導加熱コイル222が磁界を発生すると、発熱部231は、その磁界で誘起される渦電流により発熱する。そのため、本実施の形態に係る暖房便座装置100は、誘導加熱の原理を利用し、便座200の着座面を急速に加熱することができ、より早く着座面を適温にすることができる。
また、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには、必ずしも便座200を保温しておく必要はない。そのため、例えば「シーズヒータ」や、「ハロゲンヒータ」や、「カーボンヒータ」などの抵抗加熱手段により便座200の着座面を加熱する場合よりも省エネルギー化を図ることができる。
便蓋300には、誘導加熱によって発生する磁界が便蓋300を通過する度合いを抑制する磁界漏れ抑制手段として、例えば強磁性体の磁気シールド310が設けられている。磁気シールド310は、便蓋300が閉じた状態で便座200の少なくとも前方及び側方を覆う位置に配置される。このように便蓋300に磁気シールド310が設けられていると、便蓋300を閉じている間に誘導加熱によって便座200を暖める際、誘導加熱コイル222からの漏れ磁束を低減することができる。特に、使用者はトイレ入室時には洋式腰掛便器800の前方または側方から便座200に近づくことから、使用者が近づく方向である便座200の少なくとも前方及び側方を覆う位置に磁気シールド310を設けることで、漏れ磁束を効果的に抑制することができる。
なお、図2に例示した暖房便座装置100では、便座200の筐体210の内部に誘導加熱コイル222が設けられているが、便蓋300の筐体内に誘導加熱コイル222が設けられていてもよい。便蓋300の筐体内に誘導加熱コイル222が設けられた暖房便座装置100では、便蓋300が閉じた状態において、誘導加熱コイル222により磁界を発生させる。これにより、便座200に設けられた発熱部231は、その磁界で誘起される渦電流により発熱する。また、発熱部231についても、便座200ではなく、便蓋300に設けられていてもよい。なお、以下の説明では、便座200に誘導加熱コイル222及び発熱部231が設けられている構成を例とする。
図3は、本実施形態に係る暖房便座装置の機能ブロック図である。
すなわち、図3に表したように、本実施形態に係る暖房便座装置100においては、便座200に設けられた構成と、便蓋300に設けられた構成と、ケーシング400に設けられた構成と、を備える。
便座200には、例えば高周波電源装置220、発熱部231、誘導加熱コイル222及び温度センサ240が設けられる。
なお、本実施形態では、高周波電源装置220を便座200内に設けているが、ケーシング400内に設けてもよい。
便蓋300には、磁界漏れ抑制手段である磁気シールド310が設けられる。
ケーシング400には、制御部410、入室検知センサ441、立位検知センサ442、機能許可着座センサ443、着座前動作センサ444及び便蓋開閉装置450が設けられる。便蓋開閉装置450は、便蓋300の開閉のほか、便座200の開閉も行う機構を備えていてもよい。また、ケーシング400には、必要に応じて局部洗浄部460が設けられている。
次に、制御部410による誘導加熱の制御動作について説明する。なお、本実施形態では、誘導加熱の制御動作を制御部410が行う場合について説明するが、高周波電源装置220に設けられた高周波電流制御部(誘導加熱コイル222への高周波電流の供給量を制御する部分)によって同様な制御動作を行ってもよい。
図4は、制御部による誘導加熱の制御フローチャートである。
先ず、ステップS101に表したように、制御部410は、入室検知センサ441による使用者のトイレ室内へ入室検知の有無を判断する。入室検知センサ441が使用者の入室を検知すると、ステップS102に表したように、制御部410は、第1の昇温制御を実行する。第1の昇温制御では、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を開始し、その供給を供給開始から高周波電流を第1の時間以内、行う。
次に、ステップS103に表したように、制御部410は、第1の昇温制御による高周波電流の供給が、供給開始から第1の時間経過したか否かを判断する。第1の時間経過していない場合には、ステップS104に表したように、便蓋300が開いたか否かを判断する。便蓋300が開いていない場合には、ステップS103へ戻る。
第1の昇温制御による高周波電流の供給開始から第1の時間が経過した場合には、ステップS105に表したように、便蓋300を開ける。すなわち、制御部410は、便蓋開閉装置450に便蓋300を開く旨の指示を与える。この指示によって便蓋開閉装置450が動作し、便蓋300を自動的に開ける。
便蓋300が自動的に開いた場合、または第1の時間を経過する前に便蓋300が開けられた場合(ステップS104でYes)、制御部410は、ステップS106に表したように、第1の昇温制御から第2の昇温制御へ移行する。第2の昇温制御は、第1の昇温制御よりも単位時間当たりの高周波電流の供給量を低減した昇温を行う制御である。
次に、ステップS107で表したように、制御部410は、着座前動作センサ444によって使用者の着座前の動作を検知したか否かを判断する。使用者の着座前の動作を検知した場合には、ステップS109に表したように、制御部410は、第2の昇温制御から第3の昇温制御へ移行する。
一方、使用者の着座前の動作を検知していない場合には、ステップS108へ進む。ステップS108では、制御部410は、第2の昇温制御による高周波電流の供給が、人体検知から第2の時間経過したか否かを判断する。第2の時間経過していない場合には、そのまま第2の昇温制御を続行し、ステップS107へ戻る。
一方、第2の時間経過した場合には、ステップS109に表したように、制御部410は、第2の昇温制御から第3の昇温制御へ移行する。すなわち、制御部410は、第2の昇温制御を実行しているあいだに、使用者の着座前の動作を検知した場合、または第2の時間を経過した場合、第2の昇温制御から第3の昇温制御へと移行する。
第3の昇温制御は、第2の昇温制御よりも単位時間当たりの高周波電流の供給量を低減した昇温を行う制御である。
次に、ステップS110で表したように、制御部410は、便座200の温度が予め定めた設定温度(例えば、快適温度)に到達したか否かを判断する。すなわち、制御部410は、温度センサ240による温度の検出信号に基づいて、便座200の温度が設定温度に到達したか否かを判断する。設定温度に到達していない場合、制御部410は、第3の昇温制御を続行する。一方、設定温度に到達した場合、制御部410は、ステップS111に表したように、第3の昇温制御から保温制御へ移行する。これにより、便座200の温度が快適温度に保たれることになる。
図5は、使用者のトイレルームへの入室から着座までの動作と誘導加熱動作のシーケンスとを例示する図である。
図5(a)は、使用者の入室から着座までの動作を例示している。
図5(b)は、(a)の動作に対応した各種センサの動作シーケンスを例示している。
図5(c)は、(a)の動作に対応した誘導加熱コイルへの投入電力のシーケンスを例示している。
図5(d)は、(a)の動作に対応した漏れる磁束密度の遷移を例示している。ここで、磁束密度は、利用者が着座していない状態では暖房便座装置100から一定距離をあけた位置で測定した値であり、利用者が着座している状態では便座200の着座面で測定した値である。
図5(e)は、(a)の動作に対応した便座の温度の変化を表す昇温カーブを例示している。
先ず、未使用の状態では、入室検知センサ441による入室検知のみが行われる。入室検知センサ441によってトイレルームへの入室が検知されていない状態(未使用の状態)では、誘導加熱コイル222への投入電力は、停止制御CT0(電力投入の停止)または待機制御CTr(便座200の温度を待機温度に保つだけの電力投入)である。停止制御CT0では、誘導加熱コイル222から便座200の外側へ漏れる磁束密度B0はゼロである。また、待機制御CTrでは、磁束密度Brは非常に少ない。
停止制御CT0を実行中の便座200の温度THsは、ほぼ室温である。また、待機制御CTrの実行中の便座200の温度は、待機温度THrである。
次に、入室検知センサ441が使用者のトイレルームへの入室を検知すると(時刻t0)、制御部410は、誘導加熱コイル222への投入電力を、第1の昇温制御CT1へ移行する。第1の昇温制御CT1では、誘導加熱コイル222から便座200の外側へ漏れる磁束密度B1は、磁束密度B0及びBrよりは高いが、基準となる磁束密度Brefよりも小さい。
第1の昇温制御CT1は、入室検知の時刻t0から第1の時間が経過する時刻t1まで実行される。時刻t1では、便座200の温度は、第1の温度TH1まで上昇する。
次に、入室検知の時刻t0から第1の時間が経過した時刻t1で、便蓋300を自動的に開ける。また、制御部410は、誘導加熱コイル222への投入電力を、第1の昇温制御CT1から第2の昇温制御CT2へと移行する。第2の昇温制御CT2では、第1の昇温制御CT1よりも単位時間当たりの高周波電流の供給量が低い。しかし、便蓋300が開いているため、便蓋300による磁気シールド効果は減少する。したがって、第2の昇温制御CT2の実行中の磁束密度B2は、磁束密度B1よりも大きい。ただし、磁束密度B2は、基準となる磁束密度Brefよりは小さい。
便蓋300が開いたのち、時刻t’から立位検知センサ442、機能許可着座センサ443及び着座前動作センサ444の動作が開始される。その後、使用者が着座の動作に入ると、時刻tbで着座前動作センサ444から着座前の動作を検知した旨の信号が出力される。制御部410は、着座前動作センサ444から出力された信号を受けて、誘導加熱コイル222への投入電力を、第2の昇温制御CT2から第3の昇温制御CT3へと移行する。第3の昇温制御CT3では、第2の昇温制御CT2よりも単位時間当たりの高周波電流の供給量が低い。
第3の昇温制御CT3を実行中の磁束密度B3は、使用者が便座200に着座した状態でも人体に影響を及ぼさない値である。
第2の昇温制御CT2から第3の昇温制御CT3へ切り替わる時刻tbでは、便座200の温度は冷感限界温度TH2に達している。また、第3の昇温制御CT3の実行によって、便座200の温度は冷感限界温度TH2から快適温度TH3に到達する。
着座前動作センサ444による着座前の動作を検知したあと、時刻tdで着座が行われるか、時刻t0から第2の時間を経過した時刻t2の段階では、すでに第3の昇温制御CT3が実行されている。その後、機能許可着座センサ443によって着座状態を検知すると(時刻tw)、各種の機能が使用可能状態になる。
一方、第3の昇温制御CT3の実行によって便座200の温度が快適温度TH3に到達した段階で(時刻tg)、制御部410は、誘導加熱コイル222への投入電力を、第3の昇温制御CT3から保温制御CTkへと移行する。これにより、便座200の温度は、快適温度TH3に維持される。
保温制御CTkを実行している間の磁束密度はBkである。保温制御CTkでは、快適温度TH3を維持する程度のわずかな電流量で済むことから、磁束密度Bkは磁束密度B3よりも小さい。
本実施形態では、入室検知センサ441による入室の検知から着座前動作センサ444による着座前の動作の検知までの間に行う昇温制御を第1暖房モードといい、着座前動作センサ444による着座前の動作を検知した際に移行している昇温制御を(使用者が着座した状態でも人体に影響を及ぼさない磁束密度になる昇温制御)を第2暖房モードという。
図5に表した例では、第1の昇温制御CT1及び第2の昇温制御CT2が第1暖房モードであり、第3の昇温制御CT3及び保温制御CTkが第2暖房モードである。
また、本実施形態において着座前の動作とは、着座するための動作から着座までの動作のことをいう。具体的には、入室から着座までの動作のうち、着座のために使用者が便座200の向きを変える回転動作に入ってから着座完了までに行う動作である。
また、着座前動作センサ444によって着座前の動作を検知する時刻tbは、着座するための動作のうち、いずれかを検出した時刻である。例えば、着座のために使用者が便座200の向きを変える回転動作に入ってから着座完了までに行う各種の動作のうち、いずれかの動作を検出した時刻である。
なお、第2暖房モードには、誘導加熱コイル222への通電が行われていない状態も含まれる。第2暖房モードに、少なくとも第3の昇温制御CT3と保温制御CTkとが含まれる場合、保温制御CTkは、第2暖房モードを実行する期間における最後に実行される。
このような昇温制御によって、使用者が着座する前まで便座200を暖めることができ、使用者が着座した際に便座200の冷たさを感じさせることなく、不快感をおぼえさせない暖房便座を提供できるようになる。しかも、着座前には第2暖房モードに移行しているため、着座(便座200の着座面に使用者のおしりが触れるとき)の前には、確実に第2暖房モードに移行しており、高い磁束密度を持つ磁界に人体がさらされない環境を提供でき、安心して使用してもらうことができるようになる。
次に、制御部410による具体的な昇温制御について説明する。
図6〜図9は、昇温制御の具体例を説明するタイミングチャートである。
図6〜図9に表したタイミングチャートは、防磁効果を有する便蓋が設けられている場合の制御について例示している。
各図において、(a)は時間に対する便座の温度の変化を表す昇温カーブを例示している。また、(b)は時間に対する磁束密度の変化を表している。
図6は、入室等の人体検知があった後、第2の時間内に便座200への着座があった場合の昇温制御について例示するタイミングチャートである。
先ず、便座200の温度が初期温度TH0の状態で、入室検知センサ441が人体を検知した時刻をt0とする。制御部410は、入室検知センサ441で人体を検知した時刻t0から第1の時間TM1が経過する時刻t1まで、便蓋300の閉状態を検知していることを条件として、第1の昇温制御CT1を実行する。
第1の昇温制御CT1では、第1の時間TM1内に便座200の温度を初期温度TH0から第1の温度TH1まで高めるための高周波電流を誘導加熱コイル222へ供給する。
ここで、高周波電流の供給量は、カレントトランスによる検出値、スイッチングトランジスタのパルス数及びオン時間等によって得られる。
制御部410は、第1の昇温制御CT1において、便座200の温度制御を例えばフィードフォワード制御によって行う。すなわち、便座200の初期温度TH0と第1の温度TH1との差と、第1の時間TM1と、の関係(例えば、関係式やテーブルデータ)から得られる高周波電流の電流量を誘導加熱コイル222へ供給する。
この第1の昇温制御CT1において、便座の昇温カーブの傾斜はθ1になる。
第1の昇温制御CT1では、第1の時間TM1内に便座200の温度が冷感限界温度TH2以下の第1の温度TH1に到達するよう急速加熱が行われる。
ここで、第1の温度TH1は、冷感限界温度TH2以下の温度として予め設定されている。第1の温度TH1が冷感限界温度TH2よりも低くても、便座200が第1の温度TH1に到達していれば、利用者は着座した際にわずかな冷感を受けるだけで済む。
また、第1の昇温制御CT1を実行している間の磁束密度はB1である。ここで、磁束密度B1は、利用者が着座していない状態の条件で測定した値である。磁束密度B1は、誘導加熱を利用する機器の基準となる磁束密度Brefよりも小さい。第1の昇温制御CT1では、急速加熱を行うために比較的大きな高周波電流を誘導加熱コイル222へ供給するが、便蓋300が閉じているため外部へ漏れる磁束密度は小さい。
次に、第1の時間TM1を経過すると、制御部410は便蓋300を自動的に開ける制御を行う。そして、制御部410は、第1の昇温制御CT1から第2の昇温制御CT2へ移行する制御を行う。
第2の昇温制御CT2では、第1の昇温制御CT1よりも単位時間当たりの高周波電流の供給量が低い。すなわち、第2の昇温制御CT2において、便座の昇温カーブの傾斜θ2は、第1の昇温制御CT1の昇温カーブの傾斜θ1よりも小さい。
制御部410は、第2の昇温制御CT2において、便座200の温度制御を第1の昇温制御CT1と同様な例えばフィードフォワード制御によって行う。
第2の昇温制御CT2を実行している間の磁束密度はB2である。ここで、磁束密度B2は、利用者が着座していない状態の条件で測定した値である。第2の昇温制御CT2では、便蓋300が開いている状態で誘導加熱を行うため、第1の昇温制御CT1を実行しているときの磁束密度B1よりは大きな磁束密度B2になる。しかし、第2の昇温制御CT2では、第1の昇温制御CT1よりも昇温カーブの傾斜が小さいため、磁束密度の増加はわずかである。さらに、磁束密度B2は、基準となる磁束密度Brefよりも小さい。
その後、第2の時間TM2(人体検知をした時刻t0から時刻t2までの時間)内に利用者が着座前の動作を行うと(時刻tb)、制御部410は、第2の昇温制御CT2から第3の昇温制御CT3へ移行する制御を行う。すなわち、着座前動作センサ444によって使用者の着座前の動作を検知した場合、その検知結果に基づき制御部410は第2の昇温制御CT2から第3の昇温制御CT3へ切り替える。
第3の昇温制御CT3では、第2の昇温制御CT2よりも単位時間当たりの高周波電流の供給量が低い。すなわち、第3の昇温制御CT3において、便座の昇温カーブの傾斜θ3は、第2の昇温制御CT2の昇温カーブの傾斜θ2よりも小さい。
第3の昇温制御CT3は、利用者が便座200に着座した状態での昇温制御になる。したがって、傾斜θ3による昇温は、利用者が急速な昇温を感じない程度に非常にゆっくりとなる。便座200の温度は、第3の昇温制御CT3を実行している間に冷感限界温度TH2に達し、さらに予め設定した温度(快適温度TH3)にまで到達する。
第3の昇温制御CT3を実行している間の磁束密度はB3である。ここで、磁束密度B3は、利用者が着座している状態の条件で測定した値である。第3の昇温制御CT3では、利用者が便座200に着座している状態での昇温制御になるため、第1の昇温制御CT1及び第2の昇温制御CT2を実行しているときの磁束密度B1及びB2よりも小さくなる。このため、利用者が便座200に着座しているあいだの誘導加熱であっても、漏れ磁束が人体に影響を与えることはない。
制御部410は、使用者が着座した時刻td、または第2の時間TM2を経過した時刻t2、さらには便座200の温度が快適温度TH3に到達するまで第3の昇温制御CT3を実行する。制御部410は、第3の昇温制御CT3を実行する期間の前半では、便座200の温度制御を例えばフィードフォワード制御によって行う。一方、期間の後半では、便座200の温度制御を例えばフィードバック制御によって行う。これにより、便座200の温度が快適温度TH3を超えるオーバーシュートを抑制することができる。
制御部410は、便座200の温度が快適温度TH3に到達すると(時刻tg)、第3の昇温制御CT3から保温制御CTkへ移行する制御を行う。これにより、便座200の温度は、快適温度TH3に維持される。
保温制御CTkを実行している間の磁束密度はBkである。保温制御CTkでは、快適温度TH3を維持する程度のわずかな電流量で済むことから、磁束密度Bkは非常に小さい。ここで、磁束密度Bkは、利用者が着座している状態の条件で測定した値である。
このような昇温制御によって、高い磁束密度を持つ磁界に人体がさらされるのを防止しつつ、利用者のトイレ入室から着座するまでの間に無駄な電力を消費せずに便座を暖めることができる。これにより、省電力でありながら、利用者が着座した際の冷感を最小限に抑制できる便座加熱を安全に行うことが可能になる。
図7は、入室等の人体検知があった後、第1の時間内に便蓋300が開いた場合の昇温制御について例示するタイミングチャートである。
先ず、便座200の温度が初期温度TH0の状態で、入室検知センサ441が人体を検知した時刻をt0とする。制御部410は、入室検知センサ441で人体を検知した時刻t0から、便蓋300の閉状態を検知していることを条件として、第1の昇温制御CT1を実行する。第1の昇温制御CT1における便座の昇温カーブの傾斜はθ1である。また、第1の昇温制御CT1を実行している間の磁束密度はB1である。
ここで、時刻t0から予め設定された第1の時間TM1を経過する時刻t1までの間に、利用者が手動で、または利用者の指示によって便蓋300が開けられたとする(時刻tp)。この場合、制御部410は、第1の昇温制御CT1から第2の昇温制御CT2へ移行する制御を行う。第2の昇温制御CT2において、便座の昇温カーブの傾斜θ2は、第1の昇温制御CT1の昇温カーブの傾斜θ1よりも小さい。第2の昇温制御CT2を実行している間の磁束密度はB2である。
その後、第2の時間TM2内に利用者が着座前の動作を行うと(時刻tb)、制御部410は、第2の昇温制御CT2から第3の昇温制御CT3へ移行する制御を行う。第3の昇温制御CT3において、便座の昇温カーブの傾斜θ3は、第2の昇温制御CT2の昇温カーブの傾斜θ2よりも小さい。第3の昇温制御CT3を実行している間の磁束密度はB3である。
制御部410は、使用者が着座した時刻td、または第2の時間TM2を経過した時刻t2、さらには便座200の温度が快適温度TH3に到達するまで第3の昇温制御CT3を実行する。制御部410は、便座200の温度が快適温度TH3に到達すると(時刻tg)、第3の昇温制御CT3から保温制御CTkへ移行する制御を行う。これにより、便座200の温度は、快適温度TH3に維持される。保温制御CTkを実行している間の磁束密度はBkである。
このような昇温制御によって、トイレ入室から比較的早いタイミングで便蓋300が開いた場合でも、高い磁束密度を持つ磁界に人体がさらされるのを防止しつつ、利用者のトイレ入室から着座するまでの間に無駄な電力を消費せずに便座を暖めることができる。これにより、省電力でありながら、利用者が着座した際の冷感を最小限に抑制できる便座加熱を安全に行うことが可能になる。
図8は、第2の時間と同時に着座前の動作を検知した場合の昇温制御について例示するタイミングチャートである。
先ず、便座200の温度が初期温度TH0の状態で、入室検知センサ441が人体を検知した時刻をt0とする。制御部410は、入室検知センサ441で人体を検知した時刻t0から第1の時間TM1が経過する時刻t1まで、便蓋300の閉状態を検知していることを条件として、第1の昇温制御CT1を実行する。第1の昇温制御CT1における便座の昇温カーブの傾斜はθ1である。また、第1の昇温制御CT1を実行している間の磁束密度はB1である。
第1の時間TM1で第1の昇温制御CT1を行うと、便座200の温度は第1の温度TH1に到達する。第1の時間TM1を経過すると、制御部410は便蓋300を自動的に開ける制御を行う。そして、制御部410は、第1の昇温制御CT1から第2の昇温制御CT2へ移行する制御を行う。第2の昇温制御CT2において、便座の昇温カーブの傾斜θ2は、第1の昇温制御CT1の昇温カーブの傾斜θ1よりも小さい。第2の昇温制御CT2を実行している間の磁束密度はB2である。
第2の時間TM2で第2の昇温制御CT2を行うと、便座200の温度は冷感限界温度TH2に到達する。そして、第2の時間TM2が経過した時刻t2で利用者が着座前の動作を行うと(時刻t2=tb)、制御部410は、第2の昇温制御CT2から第3の昇温制御CT3へ移行する制御を行う。第3の昇温制御CT3において、便座の昇温カーブの傾斜θ3は、第2の昇温制御CT2の昇温カーブの傾斜θ2よりも小さい。第3の昇温制御CT3を実行している間の磁束密度はB3である。
利用者が着座した際には、便座200の温度は冷感限界温度TH2に達しているため、利用者に冷感を与えることはない。
制御部410は、使用者が着座した時刻td、さらには便座200の温度が快適温度TH3に到達するまで第3の昇温制御CT3を実行する。制御部410は、便座200の温度が快適温度TH3に到達すると(時刻tg)、第3の昇温制御CT3から保温制御CTkへ移行する制御を行う。これにより、便座200の温度は、快適温度TH3に維持される。保温制御CTkを実行している間の磁束密度はBkである。
このような昇温制御によって、トイレ入室から自動的に便蓋300が開けられ、平均的なタイミングで着座前の動作を行った場合、高い磁束密度を持つ磁界に人体がさらされるのを防止しつつ、無駄な電力を消費せずに冷感限界温度TH2まで便座を暖めることができるようになる。これにより、省電力でありながら、利用者に冷感を与えない便座加熱を安全に行うことが可能になる。
図9は、第2の時間を経過したあとに着座前の動作を検知した場合の昇温制御について例示するタイミングチャートである。
先ず、便座200の温度が初期温度TH0の状態で、入室検知センサ441が人体を検知した時刻をt0とする。制御部410は、入室検知センサ441で人体を検知した時刻t0から第1の時間TM1が経過する時刻t1まで、便蓋300の閉状態を検知していることを条件として、第1の昇温制御CT1を実行する。第1の昇温制御CT1における便座の昇温カーブの傾斜はθ1である。また、第1の昇温制御CT1を実行している間の磁束密度はB1である。
第1の時間TM1で第1の昇温制御CT1を行うと、便座200の温度は第1の温度TH1に到達する。第1の時間TM1を経過すると、制御部410は便蓋300を自動的に開ける制御を行う。そして、制御部410は、第1の昇温制御CT1から第2の昇温制御CT2へ移行する制御を行う。第2の昇温制御CT2において、便座の昇温カーブの傾斜θ2は、第1の昇温制御CT1の昇温カーブの傾斜θ1よりも小さい。第2の昇温制御CT2を実行している間の磁束密度はB2である。
第2の時間TM2で第2の昇温制御CT2を行うと、便座200の温度は冷感限界温度TH2に到達する。そして、第2の時間TM2が経過した時刻t2で、制御部410は、第2の昇温制御CT2から第3の昇温制御CT3へ移行する制御を行う。第3の昇温制御CT3において、便座の昇温カーブの傾斜θ3は、第2の昇温制御CT2の昇温カーブの傾斜θ2よりも小さい。第3の昇温制御CT3を実行している間の磁束密度はB3である。
第2の時間TM2を経過して、第3の昇温制御CT3を実行している間に利用者が着座前の動作を行った場合、制御部410はそのまま第3の昇温制御CT3を続行する。第3の昇温制御CT3は、便座200の温度が快適温度TH3に到達するまで続行される。
そして、使用者が着座した時刻td、さらには便座200の温度が快適温度TH3に到達するまで第3の昇温制御CT3を実行する。制御部410は、便座200の温度が快適温度TH3に到達すると(時刻tg)、第3の昇温制御CT3から保温制御CTkへ移行する制御を行う。これにより、便座200の温度は、快適温度TH3に維持される。保温制御CTkを実行している間の磁束密度はBkである。
このような昇温制御によって、トイレ入室から自動的に便蓋300が開けられ、平均的なタイミングよりも遅いタイミングで着座前の動作を行った場合でも、高い磁束密度を持つ磁界に人体がさらされるのを防止しつつ、無駄な電力を消費せずに冷感限界温度TH2まで便座を暖めることができるようになる。これにより、省電力でありながら、利用者に冷感を与えない便座加熱を安全に行うことが可能になる。
次に、制御部410による具体的な昇温制御の他の例について説明する。
図10〜図13は、昇温制御の他の具体例を説明するタイミングチャートである。
図10〜図13に表したタイミングチャートは、便蓋に防磁効果がない場合、または便蓋が設けられていない場合の制御について例示している。
各図において、(a)は時間に対する便座の温度の変化を表す昇温カーブを例示している。また、(b)は時間に対する磁束密度の変化を表している。
図10は、第2の時間と同時に着座前の動作を検知した場合の昇温制御について例示するタイミングチャートである。
先ず、便座200の温度が初期温度TH0の状態で、入室検知センサ441が人体を検知した時刻をt0とする。制御部410は、入室検知センサ441で人体を検知した時刻t0から第2の時間TM2が経過する時刻t2まで、第2の昇温制御CT2を実行する。第2の昇温制御CT2における便座の昇温カーブの傾斜はθ2’である。また、第2の昇温制御CT2を実行している間の磁束密度はB2’である。磁束密度B2’は、磁束密度B2よりも大きい。これは、便蓋300による防磁効果を得られないためである。ただし、磁束密度B’は、基準となる磁束密度Brefよりは小さい。
第2の時間TM2で第2の昇温制御CT2を行うと、便座200の温度は快適温度TH3に到達する。そして、第2の時間TM2が経過した時刻t2で利用者が着座前の動作を行うと(時刻t2=tb)、制御部410は、第2の昇温制御CT2から保温制御CTkへ移行する制御を行う。これにより、便座200の温度は、快適温度TH3に維持される。保温制御CTkを実行している間の磁束密度はBkである。
このような昇温制御によって、トイレ入室から平均的なタイミングで着座前の動作を行った場合、高い磁束密度を持つ磁界に人体がさらされるのを防止しつつ、無駄な電力を消費せずに快適温度TH3まで便座を暖めることができるようになる。これにより、省電力でありながら、利用者に冷感を与えない便座加熱を安全に行うことが可能になる。
図11は、第2の時間と同時に着座前の動作を検知した場合の他の昇温制御ついて例示するタイミングチャートである。
先ず、便座200の温度が初期温度TH0の状態で、入室検知センサ441が人体を検知した時刻をt0とする。制御部410は、入室検知センサ441で人体を検知した時刻t0から第2の時間TM2が経過する時刻t2まで、第2の昇温制御CT2を実行する。第2の昇温制御CT2における便座の昇温カーブの傾斜はθ2’’である。磁束密度B2’’は、磁束密度B2’よりも小さい。
第2の時間TM2で第2の昇温制御CT2を行うと、便座200の温度は冷感限界温度TH2に到達する。そして、第2の時間TM2が経過した時刻t2で利用者が着座前の動作を行うと(時刻t2=tb)、制御部410は、第2の昇温制御CT2から第3の昇温制御CT3へ移行する制御を行う。第3の昇温制御CT3において、便座の昇温カーブの傾斜θ3は、第2の昇温制御CT2の昇温カーブの傾斜θ2’’よりも小さい。第3の昇温制御CT3を実行している間の磁束密度はB3である。
利用者が着座した際には(時刻td)、便座200の温度は冷感限界温度TH2に達しているため、利用者に冷感を与えることはない。
制御部410は、第3の昇温制御CT3を、便座200の温度が快適温度TH3に到達するまで実行する。制御部410は、便座200の温度が快適温度TH3に到達すると(時刻tg)、第3の昇温制御CT3から保温制御CTkへ移行する制御を行う。これにより、便座200の温度は、快適温度TH3に維持される。保温制御CTkを実行している間の磁束密度はBkである。
このような昇温制御によって、トイレ入室から平均的なタイミングで着座前の動作を行った場合、高い磁束密度を持つ磁界に人体がさらされるのを防止しつつ、無駄な電力を消費せずに冷感限界温度TH2まで便座を暖めることができるようになる。これにより、省電力でありながら、利用者に冷感を与えない便座加熱を安全に行うことが可能になる。
なお、図10及び図11に例示したタイミングチャートでは、第2の時間TM2の経過と同時に着座前の動作を行う場合を示したが、第2の時間TM2を経過したあとで着座する動作を行う場合も同様なタイミングで昇温制御される。
図12は、第2の時間の経過前に着座前の動作を検知した場合の昇温制御について例示するタイミングチャートである。
先ず、便座200の温度が初期温度TH0の状態で、入室検知センサ441が人体を検知した時刻をt0とする。制御部410は、入室検知センサ441で人体を検知した時刻t0から第2の時間TM2が経過する時刻t2に向けて第2の昇温制御CT2を実行する。第2の昇温制御CT2における便座の昇温カーブの傾斜はθ2’である。磁束密度B2’である。
その後、第2の時間TM2内に利用者が着座前の動作を行うと(時刻tb)、制御部410は、第2の昇温制御CT2から第3の昇温制御CT3へ移行する制御を行う。第3の昇温制御CT3において、便座の昇温カーブの傾斜θ3は、第2の昇温制御CT2の昇温カーブの傾斜θ2’よりも小さい。第3の昇温制御CT3を実行している間の磁束密度はB3である。
制御部410は、第3の昇温制御CT3を、便座200の温度が快適温度TH3に到達するまで実行する。制御部410は、便座200の温度が快適温度TH3に到達すると(時刻tg)、第3の昇温制御CT3から保温制御CTkへ移行する制御を行う。これにより、便座200の温度は、快適温度TH3に維持される。保温制御CTkを実行している間の磁束密度はBkである。
このような昇温制御によって、トイレ入室から比較的早いタイミングで着座前の動作を行った場合でも、高い磁束密度を持つ磁界に人体がさらされるのを防止しつつ、利用者のトイレ入室から着座するまでの間に無駄な電力を消費せずに便座を暖めることができる。これにより、省電力でありながら、利用者が着座した際の冷感を最小限に抑制できる便座加熱を安全に行うことが可能になる。
図13は、第2の時間の経過前に着座前の動作を検知した場合の他の昇温制御について例示するタイミングチャートである。
先ず、便座200の温度が初期温度TH0の状態で、入室検知センサ441が人体を検知した時刻をt0とする。制御部410は、入室検知センサ441で人体を検知した時刻t0から第2の時間TM2が経過する時刻t2に向けて、第2の昇温制御CT2を実行する。第2の昇温制御CT2における便座の昇温カーブの傾斜はθ2’’である。磁束密度B2’’は、磁束密度B2’よりも小さい。
その後、第2の時間TM2内に利用者が着座前の動作を行うと(時刻tb)、制御部410は、第2の昇温制御CT2から第3の昇温制御CT3へ移行する制御を行う。第3の昇温制御CT3において、便座の昇温カーブの傾斜θ3は、第2の昇温制御CT2の昇温カーブの傾斜θ2’’よりも小さい。第3の昇温制御CT3を実行している間の磁束密度はB3である。
制御部410は、第3の昇温制御CT3を、便座200の温度が快適温度TH3に到達するまで実行する。制御部410は、便座200の温度が快適温度TH3に到達すると(時刻tg)、第3の昇温制御CT3から保温制御CTkへ移行する制御を行う。これにより、便座200の温度は、快適温度TH3に維持される。保温制御CTkを実行している間の磁束密度はBkである。
このような昇温制御によって、トイレ入室から比較的早いタイミングで着座前の動作を行った場合でも、高い磁束密度を持つ磁界に人体がさらされるのを防止しつつ、利用者のトイレ入室から着座するまでの間に無駄な電力を消費せずに便座を暖めることができる。これにより、省電力でありながら、利用者が着座した際の冷感を最小限に抑制できる便座加熱を安全に行うことが可能になる。
次に、着座前動作センサの一例について説明する。
図14は、着座前動作センサに用いられる距離センサについて例示する模式図である。
図14(a)は、距離センサの主要構成を例示する図、図14(b)は、距離センサの出力について例示する図である。
図14(a)に表したように、距離センサ470は、発光部471と、位置検出素子472と、を備えている。発光部471は、例えば赤外線を放出する発光ダイオードである。位置検出素子472は、受光位置に応じた電圧を出力する素子である。発光部471の前方には、発光光の角度を絞るレンズLZ1が設けられている。また、位置検出素子472の前方にも、受光光の角度を絞るレンズLZ2が設けられている。
距離センサは、対象物(人体HM)までの距離に応じた電圧を出力する。例えば、人体HMが距離センサから距離L1の位置にある場合、発光部471から放出された光のうち人体HMで反射した反射光C1は、位置検出素子472の位置PS1に入射する。
一方、人体HMが距離L1よりも距離センサに近づいて距離L2の位置まで接近した場合、発光部471から放出された光のうち人体HMで反射した反射光C2は、位置検出素子472の位置PS2に入射する。
位置検出素子472は、反射光C1及びC2の入射した位置PS1及びPS2に応じた電圧を出力する(出力電圧SV1)。
図14(b)では、対象物との距離と位置検出素子の出力電圧との関係を例示している。すなわち、図14(b)に表したように、位置検出素子472の出力電圧SV1は、対象物との距離が近いほど大きく、遠いほど小さくなる。例えば、人体HMまでの距離L1の場合には出力電圧SV(L1)となり、距離L2の場合には出力電圧SV(L2)となる。この関係に基づいて、出力電圧SVの値から対象物までの距離を得ることができる。
図15は、距離センサを用いた場合の昇温制御のタイミングを例示する図である。
図15(a)では、使用者の着座動作の流れを例示している。図15(b)では、距離センサによって検出した人体までの距離の変化を例示している(横軸は時間、縦軸は距離)。図15(c)では、昇温制御による誘導加熱コイル222への投入電力の変化を例示している(横軸は時間、縦軸は投入電力)。
先ず、使用者のトイレルームへの入室を検知した時刻t0から便蓋300が開く時刻t1まで、制御部410は第1の昇温制御CT1による電力投入を実行する。便蓋300が開いたのち、距離センサ470の動作が開始される。入室した使用者は、便座200に接近する。便蓋300が開いた時刻t0から時刻t11まで、使用者の接近とともに、距離センサ470の出力に基づく使用者との距離の値は小さくなる。
制御部410は、便蓋300が開いた時刻t1を経過すると、第2の昇温制御CT2に移行する。使用者は、便座の前に到着し、暖房便座装置100に対して向きを変える回転動作を行う(時刻t11〜時刻t12)。その後、使用者は、脱衣動作を行う(時刻t12〜時刻t13)。回転動作から脱衣動作まで(時刻t11〜時刻t13)は、距離センサ470の出力に基づく使用者との距離の値は小さな大小変化を繰り返す。
次に、使用者は、脱衣動作のあと、着座動作に入る。着座動作は、時刻t13から着座するまでの時刻tdまで行われる。このあいだの距離センサ470の出力に基づく使用者との距離の値は、回転及び脱衣動作での距離から急速に小さくなる。すなわち、使用者のおしりが便座200の上方から下方に向けて急速に接近するためである。
制御部410は、距離センサ470によって着座動作に起因する距離の変化を検知すると、誘導加熱コイル222への投入電力を第3の昇温制御CT3に移行する。本実施形態では、例えば、着座動作中の距離に2つの閾値Lth1及びLth2を設定し、この閾値Lth1及びLth2に基づく時間内で着座前の動作を検知したとする時刻tbを決定している。ここで、閾値Lth1は、閾値Lth2よりも着座した際の距離に近い値である。
制御部410は、この2つの閾値Lth1及びLth2に基づいて、例えば次の2つの昇温制御のうちいずれかを行う。
1つ目の昇温制御としては、閾値Lth1を用いる制御である。この場合、制御部410は、閾値Lth1に基づく時刻tb1を時刻tbとして設定し、距離センサ470の出力に基づく距離が閾値Lth1になった時刻tb1に、第2の昇温制御CT2から第3の昇温制御CT3へ切り替える。そして、快適温度に到達した後は(時刻tg)、保温制御CTkに切り替える。
このような1つ目の昇温制御では、例えばトイレ空間が狭く、入室から着座までの時間が比較的短い場合であっても、着座直前まで便座200を暖めておき、使用者に冷たさを感じさせないようにすることが可能である。また、着座直前に第3の昇温制御CT3に切り替えて、磁界の影響を与えないようにすることができる。
2つ目の昇温制御としては、2つの閾値Lth1及びLth2の両方を用いる制御である。この場合、制御部410は、閾値Lth2に基づく時刻tb2及び閾値Lth1に基づく時刻tb1を時刻tbとして設定する。そして、距離センサ470の出力に基づく距離が閾値Lth2になる時刻tb2から、閾値Lth1になる時刻tb1にかけて、誘導加熱コイル222への投入電力を徐々に低下させる制御を行う(昇温制御CT3’)。投入電力は、時刻tb1移行、第3の昇温制御CT3による電力となる。そして、快適温度に到達した後は(時刻tg)、保温制御CTkに切り替える。
このような2つ目の昇温制御では、例えばトイレ空間が広く、入室から着座までの時間が比較的長い場合に、便座200から使用者までの距離に応じて徐々に投入電力を現象させるようにして、便座200を暖める時間の確保と、磁界の影響を与えない状態の提供とを容易に両立させることができる。
いずれの昇温制御であっても、使用者の着座前の動作を検知して、使用者が着座した際には、人体に影響を及ぼさない磁界になる第3の昇温制御CT3に移行している状態にすることができる。これにより、誘導加熱コイル222から発生する磁界が使用者へ及ぼす影響を確実に無くした状態で、使用者に着座してもらうことができるようになる。
なお、距離センサ470は、立位検知センサ442、機能許可着座センサ443及び、着座前動作センサ444と、のうち少なくとも2つを兼用していてもよい。1つの距離センサ470で兼用することにより、複数のセンサを設ける必要がなくなる。また、便座200に着座する使用者に対して最適な位置に距離センサ470を設けることができ、設置位置の違いによる着座検知制度の違いをなくすことができる。
図16は、着座前動作センサに用いられる電波センサについて例示する模式図である。
図16(a)は、電波センサの概略ブロック図である。図16(b)は、電波センサの出力波形を例示した図である。
図16(a)に表したように、電波センサ480は、発信回路481、分岐部482、送信アンテナ483、受信アンテナ484及びミキサ回路485を備えている。
この電波センサ480は、ドップラー効果を利用したもので、発信回路481で発信された送信信号を分岐部482で送信アンテナ483及びミキサ回路485に分岐し、送信アンテナ483から例えばマイクロ波による電波WV1を送信する。
この電波WV1が人体HMに当たり、反射した電波WV2は受信アンテナ484で受信され、ミキサ回路485に送られる。ミキサ回路485では、分岐部482で分岐された送信信号と、受信アンテナ484で受信した電波WV2による受信信号と、のミキシングにより差分信号を抽出し、増幅回路486で増幅した後、センサ出力SV2としている。
図16(b)では、時間に対するセンサ出力SV2の波形を例示している。ここでは、入室から着座までのセンサ出力SV2の波形変化を示している。図16(b)に表したように、使用者がトイレのドアを開けると、センサ出力SV2は波形SG1になる。次に、使用者が便座(便器)へ接近すると、センサ出力SV2は波形SG2になる。次に、使用者が便座に対して向きを変える回転動作を行うと、センサ出力SV2は波形SG3になる。次に、使用者が脱衣中では、センサ出力SV2は波形SG4になる。次に、使用者が着座動作中では、センサ出力SV2は波形SG5になる。そして、使用者が着座継続中では、センサ出力SV2は波形SG6になる。
使用者の動作に応じた波形SG1〜SG6には、それぞれ特徴がある。すなわち、使用者の動作期間によって、波形の周波数帯が低い場合と、高い場合と、がある。これは使用者の動作速度の変化に起因している。したがって、このセンサ出力SV2の変化を信号処理することで、波形SG1〜SG6の特徴を抽出し、どの波形SG1〜SG6に分類されるかによって使用者の動作を判別することができる。
電波センサ480で用いられる電波は、例えばケーシング400を成す樹脂を透過できることから、ケーシング400にセンシング用の開口窓(例えば、赤外線センサであれば赤外線透過性窓)を設ける必要がなく、センサについての防水性を高められることができ、信頼性向上につながる。
図17は、電波センサを用いた場合の昇温制御のタイミングを例示する図である。
図17(a)では、使用者の着座動作の流れを例示している。図17(b)では、電波センサによって検出した速度を例示している(横軸は時間、縦軸は速度)。図17(c)では、昇温制御による誘導加熱コイル222への投入電力の変化を例示している(横軸は時間、縦軸は投入電力)。
先ず、使用者のトイレルームへ入室すると、電波センサは使用者の入室にともなう速度変化を検知する。トイレルームへの入室では波形SG1に対応した速度変化が発生する。速度変化を検知した時刻t0から便蓋300が開く時刻t1まで、制御部410は第1の昇温制御CT1による電力投入を実行する。
便蓋300が開くと、制御部410は、時刻t1から第2の昇温制御CT2に移行する。使用者は、時刻t11から時刻t12のあいだで回転動作を行い、その後、時刻t12から時刻t13のあいだで脱衣動作を行う。回転動作から脱衣動作まで(時刻t11〜時刻t13)は、波形SG2〜SG3に対応した速度変化が発生する。
入室から回転動作までの波形SG1〜SG3に対応した速度は比較的ゆっくりであるが、微小な速度変化を伴っている。
回転動作を行った使用者は、次に脱衣動作を行う(時刻t12〜時刻t13)。脱衣動作では波形SG4に対応した速度変化になる。脱衣動作での速度は、入室から回転動作までの速度に比べて速い。しかも、速度変化も多い。
本実施形態では、例えば、脱衣動作中の速度に閾値Sthを設けて、この閾値Sthに達した時刻を時刻tbとしている。すなわち、制御部410は、波形SG4に対応した速度変化によって脱衣動作であることを認識し、脱衣動作中の速度が閾値Sthを超えたか否かを判断する。例えば、脱衣動作中の速度が閾値Sthを超える回数及び閾値Sthを下回る回数を計数し、この値が一定の回数を超えたとき時刻tbを認識する。制御部410は、時刻tbを認識した場合、第2の昇温制御CT2から第3の昇温制御CT3へ切り替える。そして、着座動作(時刻t13〜時刻td)から着座(時刻td)のあいだ、第3の昇温制御CT3を続行し、快適温度に到達した後は(時刻tg)、保温制御CTkに切り替える。
ここで、電波センサ480によるセンサ出力SV2から特定の波形を抽出する構成について説明する。
図18は、特定の波形を抽出する構成を例示する概略ブロック図である。
図18(a)に表した構成は、電波センサ480と、制御部410と、のあいだに、特定波形のバンドパスフィルタBPF(SG)を設けた例である。バンドパスフィルタBPF(SG)は、図16(b)に表した特定の波形SG1〜SG6のいずれかのみを通過させる機能を有する。例えば、波形SG4のみを通過させるバンドパスフィルタBPF(SG)を設けることで、制御部410は、波形SG4に対応した脱衣動作を判断し、昇温制御を行う。
図18(b)に表した構成は、電波センサ480と、制御部410と、のあいだに、特定周波数のバンドパスフィルタBPFを設けた例である。バンドパスフィルタBPFは、例えば、低周波帯を通過させるバンドパスフィルタBPF(L)、中波帯を通過させるバンドパスフィルタBPF(M)及び高周波帯を通過させるバンドパスフィルタBPF(H)を組み合わせたものである。
例えば、図16(b)に表したように、入室から接近までの波形SG1〜SG2は、比較的低周波の波形である。また、その後の回転動作での波形SG3は、中波の波形である。また、その後の脱衣動作での波形SG4は、比較的高周波の波形である。制御部410は、バンドパスフィルタBPFを低周波、中波、高周波の順に波形が通過してきた場合には、脱衣動作が開始されたことを認識することができる。制御部410は、この認識によって昇温制御を行う。
このような電波センサ480及び波形抽出の構成によって、使用者の着座前の動作を検知して、使用者が着座した際には、人体に影響を及ぼさない磁界になる第3の昇温制御CT3に移行している状態にすることができる。これにより、誘導加熱コイル222から発生する磁界が使用者へ及ぼす影響を確実に無くした状態で、使用者に着座してもらうことができるようになる。
なお、図16(a)及び(b)に表した構成において、バンドパスフィルタBPF(SG)の通過周波数帯域の設定や、バンドパスフィルタBPFを通過する周波数の順番等の組み合わせによって、波形SG4以外の波形SG1〜SG3、SG5〜SG6を抽出することもできる。
また、上記のような電波センサ480では、入室検知センサ441、立位検知センサ442、機能許可着座センサ443及び着座前動作センサ444の全てを兼用することもできる。すなわち、使用者のトイレルームへの入室から着座までの動作をセンサ出力SV2の波形SG1〜SG6によって判別できるため、各波形SG1〜SG6の抽出によって、これらのセンサに必要な出力信号を得ることも可能である。この場合、電波センサ480のセンサ出力SV2を処理する部分(信号処理回路、信号処理アルゴリズム等)のうち、波形SG1を抽出する部分が人体検知部になり、波形SG5を抽出する部分が着座前動作検知部になる。
また、使用者の速度を検出するセンサとしては、上記の電波センサ480には限定されない。例えば、上記説明した距離センサ470を利用して、時間に対する距離の変化から使用者の速度を求めるようにしてもよい。また、これら以外のセンサによって使用者の速度を検出してもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、利用者のトイレ入室から着座するまでの間に無駄な電力を消費せずに、しかも高い磁束密度を持つ磁界に人体がさらされることなく、便座を暖めることができる。これにより、誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置100であって、暖房開始とともに迅速に冷たさを感じさせない温度まで便座を昇温することが可能になる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。