以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
なお、図2は、図1に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。また、図2では、便座の他にも、本実施形態にかかる暖房便座装置の要部構成を併せて表している。
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、暖房便座機能部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、暖房便座機能部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
便座200は、図2に表したように、便座200の外形を形成する筐体230を有する。筐体230は、上板231と底板233とを有し、例えば樹脂などの絶縁性を有する材料により形成されている。そして、便座200の内部には、抵抗加熱手段210と、誘導加熱手段220と、磁路安定手段240と、便座温度センサ250と、熱伝導体260と、が設けられている。
抵抗加熱手段210は、熱伝導体260の下面に付設され、通電されて発熱することにより便座200の着座面を保温あるいは加熱することができる。つまり、抵抗加熱手段210は、通電される電流と、抵抗加熱手段210自身が有する電気抵抗と、により熱(ジュール熱)を発生することができる。このような抵抗加熱手段210としては、例えば「シーズヒータ」や、「ハロゲンヒータ」や、「カーボンヒータ」などを用いることができる。また、熱伝導体260は、上板231の下面に付設され、抵抗加熱手段210が発熱した熱を着座面の全体に略均一に広げることができる。
誘導加熱手段220は、通電されて磁界を発生する加熱コイル221と、加熱コイル221から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する加熱板223と、を有する。加熱コイル221は、熱伝導体260の下面に付設され、一方で、加熱板223は、上板231の上面(着座面)あるいは着座面の近傍の上板231内に設けられている。そして、加熱板223は、加熱板223自身が発熱する熱により便座200の着座面を急速に加熱することができる。また、便座温度センサ250は、加熱板223の下面に付設され、加熱板223の温度、すなわち着座面の温度を検知することができる。
加熱板223は、導電体により形成されている。導電体としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体といった金属を用いることができる。便座200の外部に磁界を放出させにくくするためには、電気抵抗が大きい鉄やステンレスなどの強磁性体を加熱板223に用いることがより好ましい。なお、加熱板223は導電体により形成されているため、加熱板223が上板231の上面(着座面)に設けられる場合には、人体と導電体とが直接的に接触しないように、塗装やコーティングなどが加熱板223の表面に施されることがより好ましい。
磁路安定手段240は、例えばフェライトコアなどと呼ばれ、加熱板223以外の空間の磁路を安定にし、加熱板223の発熱効率を上げることができる。また、磁路安定手段240は、加熱板223以外の空間の磁路を安定にし、加熱板223の温度分布を調整することができる。さらに、磁路安定手段240は、便座200の下側、すなわち底板233の側への磁界の漏れを抑制することができる。
また、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、人体を検知することができる人体検知手段を備える。より具体的には、暖房便座装置100は、図1および図2に表したように、便座200への使用者の着座を検知する着座検知センサ420と、便座200の前方にいる使用者を検知する人体検知センサ430と、トイレ室への使用者の入室を検知する入室検知センサ440と、を有する。つまり、本願明細書において「人体検知手段」とは、着座検知センサ420や、人体検知センサ430や、入室検知センサ440などのように、人体を検知することができる検知手段をいう。
着座検知センサ420は、使用者が便座200に着座する直前において便座200の上方に存在する人体や、便座200に着座した使用者を検知することができる。すなわち、着座検知センサ420は、便座200に着座した使用者だけではなく、便座200の上方に存在する使用者を検知することができる。このような着座検知センサ420としては、例えば、赤外線投受光式のセンサなどを用いることができる。
また、人体検知センサ430は、便器800の前方にいる使用者、すなわち便座200から前方へ離間した位置に存在する使用者を検知することができる。つまり、人体検知センサ430は、トイレ室に入室して便座200に近づいてきた使用者を検知することができる。このような人体検知センサ430としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサなどを用いることができる。この測距センサの出力は、被検知体の位置、すなわち便座200の前方にいる使用者の位置に基づいて変化する。そのため、測距センサは、便座200の前方にいる使用者との距離、すなわち、その使用者の位置を検知することができる。
また、入室検知センサ440は、トイレ室のドアを開けて入室した直後の使用者や、トイレ室に入室しようとしてドアの前に存在する使用者を検知することができる。つまり、入室検知センサ440は、トイレ室に入室した使用者だけではなく、トイレ室に入室する前の使用者、すなわちトイレ室の外側のドアの前に存在する使用者を検知することができる。このような入室検知センサ440としては、焦電センサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。マイクロ波のドップラー効果を利用したセンサや、マイクロ波を送信し反射したマイクロ波の振幅(強度)に基づいて被検知体を検出するセンサなどを用いた場合、トイレ室のドア越しに使用者の存在を検知することが可能となる。つまり、トイレ室に入室する前の使用者を検知することができる。
図1に表したトイレ装置では、暖房便座機能部400の上面に凹設部441が形成され、この凹設部441に一部が埋め込まれるように入室検知センサ440が設けられている。入室検知センサ440は、便蓋300が閉じた状態では、その基部付近に設けられた透過窓310を介して使用者の入室を検知する。また、着座検知センサ420および人体検知センサ430は、暖房便座機能部400の前方の中央部に設けられている。但し、着座検知センサ420、人体検知センサ430、および入室検知センサ440の設置形態は、これだけに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
また、暖房便座機能部400は、着座検知センサ420、人体検知センサ430、および入室検知センサ440の少なくともいずれかからの検知信号に基づいて、抵抗加熱手段210および誘導加熱手段220への通電の制御を実行する制御部410を有する。なお、本実施形態にかかる暖房便座装置100において、誘導加熱手段220への通電の制御とは、より具体的には加熱コイル221への通電の制御をいう。
なお、制御部410と、抵抗加熱手段210および加熱コイル221と、の接続経路については、適宜変更することができる。すなわち、図2に表した便座200では、抵抗加熱手段210および加熱コイル221のそれぞれの両端と、制御部410と、を接続しているが、これだけに限定されるわけではない。抵抗加熱手段210および加熱コイル221の設置形態については、適宜変更することができ、それらの設置形態に応じて、制御部410と、抵抗加熱手段210および加熱コイル221と、の接続経路を適宜変更することができる。
本実施形態によれば、暖房便座装置100は、誘導加熱手段220を備え、その誘導加熱手段220は、加熱コイル221から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する加熱板223を有する。そのため、暖房便座装置100は、誘導加熱手段220により便座200の着座面を急速に加熱することで、抵抗加熱手段210により便座200の着座面を加熱する場合よりも早く着座面を適温にすることができる。また、暖房便座装置100は、誘導加熱手段220により便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには便座200を保温しておく必要はない。そのため、抵抗加熱手段210により便座200の着座面を加熱する場合よりも省エネルギー化を図ることができる。
しかしながら、誘導加熱手段220により便座200を加熱する場合には、加熱コイル221から発生する磁界が便座200の着座面の外部に漏れ、便座200に着座した使用者に入射する場合がある。これに対して、外部に漏れた磁界の強度の許容レベル(参考レベル)は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP:International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection)によるガイドラインにおいて周波数範囲ごとの磁束密度として規定されている。つまり、ここに規定された許容上限の磁束密度よりも低いレベルであれば、磁界が便座の外部に漏れても問題はなく、人体への影響はないといわれている。
そこで、本実施形態にかかる暖房便座装置100では、制御部410は、人体検知手段の検知結果に基づいて人体の位置を認識し、抵抗加熱手段210および誘導加熱手段220への通電の制御を実行する。より具体的には、制御部410は、使用者が便座200から離間した位置に近づいたと認識すると、誘導加熱手段220への通電量を増加する。すなわち、誘電加熱手段220への通電量がゼロであった場合には、通電を開始する。また、誘導加熱手段220へ通電している場合には、通電量を増加する。続いて、制御部410は、使用者が便座200から離間した位置よりも便座200に近接した位置に近づいたと認識すると、誘導加熱手段220への通電量を低下する。すなわち、誘導加熱手段220への通電量を小さくするか、または通電を停止する。また、制御部410は、誘導加熱手段220への通電量を低下する前に、あるいは、それと同時に抵抗加熱手段210への通電量を増加する。つまり、抵抗加熱手段210への通電量がゼロであった場合には、通電を開始する。また、抵抗加熱手段210への通電がされていた場合には、通電量を増加する。
このようにして、制御部410は、使用者が便座200に近づくまでに、誘導加熱手段220へ通電することにより便座200の着座面を急速に加熱し、使用者が便座200に近づくと、抵抗加熱手段210へ通電することにより便座200の着座面を保温することができる。
さらに具体的に説明すると、制御部410は、離間人体検知手段による人体検知に基づいて誘導加熱手段220への通電量を増加し、近傍人体検知手段による人体検知に基づいて誘導加熱手段220への通電量を低下する。また、制御部410は、離間人体検知手段または近傍人体検知手段による人体検知に基づいて抵抗加熱手段210への通電量を増加する。
ここで、離間人体検知手段とは、近傍人体検知手段の検知範囲よりも便座200から離間した範囲に存在する使用者を検知することができる人体検知手段である。一方、近傍人体検知手段とは、離間人体検知手段の検知範囲よりも便座200に近接した範囲に存在する使用者を検知することができる人体検知手段である。例えば、離間人体検知手段が入室検知センサ440である場合には、近傍人体検知手段は、人体検知センサ430や着座検知センサ420である。また、例えば、離間人体検知手段が人体検知センサ430である場合には、近傍人体検知手段は、着座検知センサ420である。また、例えば、近傍人体検知手段が着座検知センサ420である場合には、離間人体検知手段は、入室検知センサ440や人体検知センサ430である。
これによれば、制御部410は、使用者が便座200から離間した位置よりも便座200に近接した位置に近づいたと認識すると誘導加熱手段220への通電を停止または低減するため、使用者が便座200に近づいたときにおいて、便座200の着座面の外部に漏れる磁界の磁束密度を低く抑えることができる。つまり、高い磁束密度を有する磁界が、便座200に着座した使用者に入射することを防止することができる。そのため、本実施形態にかかる暖房便座装置100によれば、人体への磁界の入射を防止しつつ、着座面をより早く適温にすることができる。
なお、抵抗加熱手段210からも磁界は発生し、その磁界は、便座200の着座面の外部に漏れて使用者に入射する場合があるが、その磁界の磁束密度は、誘導加熱手段220から発生する磁界の磁束密度よりも極めて小さい。また、抵抗加熱手段210で使用する周波数の範囲は、誘導加熱手段220で使用する周波数の範囲よりも低い。そのため、抵抗加熱手段210で使用する周波数の範囲における磁束密度の許容上限は、国際非電離放射線防護委員会のガイドラインによれば、誘導加熱手段220で使用する周波数の範囲における磁束密度の許容上限よりも高い。そのため、抵抗加熱手段210から発生する磁界は、便座200の着座面の外部に漏れても問題はない。
なお、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止または低減した後に、抵抗加熱手段210への通電を開始または増加してもよい。これによっても、本実施形態にかかる暖房便座装置100によれば、人体への影響を防止しつつ、着座面をより早く適温にすることができる。
次に、本実施形態にかかる暖房便座装置100の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の具体例を表すタイミングチャートである。
まず、使用者がトイレ室に入室し、便座200から離間した位置に近づくと、人体検知センサ430は、その位置に存在する使用者を検知する(タイミングt1)。そうすると、制御部410は、使用者がトイレ室に入室し便座200から離間した位置に近づいたと認識し、誘導加熱手段220への通電を開始する(タイミングt1)。
続いて、使用者が便座200に着座しようとして便座200の上方に移動すると、着座検知センサ420は、便座200の上方に存在する使用者を検知する(タイミングt2)。そうすると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止する(タイミングt2)。また、これと同時に、制御部410は、抵抗加熱手段210への通電を開始する(タイミングt2)。なお、制御部410が抵抗加熱手段210への通電を開始するタイミングは、図1および図2に関して前述したように、誘導加熱手段220への通電を停止する前でもよいし、誘導加熱手段220への通電を停止した後でもよい。
本具体例によれば、制御部410は、使用者がトイレ室に入室してから便座200に近づくまでの間に、誘導加熱手段220へ通電することにより便座200の着座面を急速に加熱する。そして、制御部410は、使用者が便座200に着座する直前に、誘導加熱手段220への通電を停止し、抵抗加熱手段210へ通電することにより便座200の着座面を保温する。
そのため、本具体例の暖房便座装置100は、抵抗加熱手段210により便座200の着座面を加熱する場合よりも早く着座面を適温にすることができる。これにより、使用者が便座200に着座したときに冷感を感じることをより確実に防止することができる。また、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止した後でも、抵抗加熱手段210へ通電することにより便座200の着座面を保温するため、着座面の温度を低下させることなく適温に維持することができる。
また、本具体例の暖房便座装置100は、誘導加熱手段220により便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには便座200を保温しておく必要はない。そのため、抵抗加熱手段210により便座200の着座面を加熱する場合よりも省エネルギー化を図ることができる。
また、制御部410は、使用者が便座200に着座する直前に誘導加熱手段220への通電を停止するため、高い磁束密度を有する磁界が便座200に着座した使用者に入射することを防止することができる。そのため、本具体例の暖房便座装置100によれば、人体への磁界の入射を防止しつつ、着座面をより早く適温にすることができる。
図4は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の他の具体例を表すタイミングチャートである。
本具体例では、着座検知センサ420が便座200の上方に存在する使用者を検知すると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を低減する(タイミングt2)。つまり、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止(「OFF」に設定)するわけではなく低減する。その他の動作は、図3に関して前述した具体例の動作と同様である。
このとき、加熱コイル221から発生した磁界は、便座200の着座面の外部に漏れるが、その磁界の磁束密度は、低い。そのため、加熱コイル221から発生した磁界が便座200の着座面の外部に漏れても問題はない。つまり、高い磁束密度を有する磁界が便座200に着座した使用者に入射することを防止することができる。
しかしながら、そうすると、使用者が便座200に着座した後に、その便座200の着座面を保温できるほどの加熱量を確保することができない場合がある。これに対して、本具体例では、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を低減するタイミングと同時に、抵抗加熱手段210への通電を開始する。つまり、制御部410は、抵抗加熱手段210への通電を開始することにより、便座200の着座面を保温するために不足した加熱量を補完することができる。
本具体例によれば、使用者が便座200に着座した後において、誘導加熱手段220および抵抗加熱手段210により便座200の着座面を保温するため、抵抗加熱手段210だけで保温する場合よりも省エネルギー化を図ることができる。また、その他の効果についても、図3に関して前述した効果と同様の効果が得られる。なお、制御部410が抵抗加熱手段210への通電を開始するタイミングは、図1および図2に関して前述したように、誘導加熱手段220への通電を低減する前でもよいし、誘導加熱手段220への通電を低減した後でもよい。
図5は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作のさらに他の具体例を表すタイミングチャートである。
本具体例の暖房便座装置100は、人体位置検知センサを有する。この人体位置検知センサは、例えば測距センサであり、人体との距離を検知することができる。そして、制御部410は、人体位置検知センサが検知した人体との距離に応じて、人体の位置を認識することができる。
まず、使用者がトイレ室に入室し、便座200から離間した位置に近づくと、人体位置検知センサは、その位置に存在する使用者との距離を検知する(タイミングt1)。そうすると、制御部410は、人体位置検知センサが検知した距離(遠方)に応じて使用者の位置を認識し、誘導加熱手段220への通電を開始する(タイミングt1)。
続いて、使用者が閾値の距離まで便座200に近づいたことを人体位置検知センサが検知すると、制御部410は、使用者の位置に応じて誘導加熱手段220への通電を低減する(タイミングt2〜t3)。ここで、「閾値の距離」とは、例えば、前述した国際非電離放射線防護委員会によるガイドラインに規定された許容上限よりも高い磁束密度を有する磁界が人体に入射する距離をいう。すなわち、使用者が閾値の距離よりも便座200に近づくと、その際(タイミングt1〜t2)に加熱コイル221から発生している磁界は、規定された許容上限よりも高い磁束密度で人体に入射する。
そのため、本具体例では、使用者が閾値の距離まで便座200に近づいたことを人体位置検知センサが検知すると、制御部410は、使用者の位置に応じて誘導加熱手段220への通電を低減する(タイミングt2〜t3)。これにより、高い磁束密度を有する磁界が人体に入射しないレベルで、誘導加熱手段220に最大限の通電量を制御することが可能であり、着座面をより早く適温にすることができる。また、これと同時に、制御部410は、使用者の位置に応じて抵抗加熱手段210への通電を増加する(タイミングt2〜t3)。そして、使用者が便座200の近傍に近づいたことを人体位置検知センサが検知すると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止する(タイミングt3)。
なお、制御部410が抵抗加熱手段210への通電を増加するタイミングと、制御部410が誘導加熱手段220への通電を低減するタイミングと、は必ずしも同時でなくともよい。また、制御部410が抵抗加熱手段210への通電の増加率は、人体位置検知センサによる検知結果(人体との距離)に応じていなくともよい。
本具体例によれば、人体との距離を検知することができる人体位置検知センサが設けられている。そのため、制御部410は、人体位置検知センサが検知した人体との距離に応じて人体の位置を認識し、抵抗加熱手段210および誘導加熱手段220への通電の制御を実行する。すなわち、制御部410は、1つの人体検知手段である人体位置検知センサによる検知結果に基づいて、抵抗加熱手段210および誘導加熱手段220への通電の制御を実行することができる。
そのため、暖房便座機能部400を小型化することができ、暖房便座装置100の意匠性の低下を抑制することができる。また、その他の効果についても、図3に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
図6は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作のさらに他の具体例を表すタイミングチャートである。
まず、使用者がトイレ室のドアを開けて入室すると、入室検知センサ440は、トイレ室に入室した使用者を検知する(タイミングt1)。あるいは、入室検知センサ440がドップラーセンサなどのマイクロ波センサである場合には、その入室検知センサ440は、もっと早いタイミングで、トイレ室の外側のドアの前に存在する使用者を検知することができる(タイミングt1)。そうすると、制御部410は、使用者がトイレ室に入室したと認識し、あるいは、使用者がトイレ室に入室しようとしていると認識し、誘導加熱手段220への通電を開始する(タイミングt1)。
続いて、使用者がトイレ室のドアから便座200に近づくと、人体検知センサ430は、便座200の前方にいる使用者、すなわち便座200から離間した位置に近づいた使用者を検知する(タイミングt2)。あるいは、使用者が便座200に着座しようとして便座200の上方に移動すると、着座検知センサ420は、便座200の上方に存在する使用者を検知する(タイミングt2)。そうすると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止する(タイミングt2)。また、これと同時に、制御部410は、抵抗加熱手段210への通電を開始する(タイミングt2)。
本具体例によれば、入室検知センサ440が人体を検知すると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を開始する。そのため、図3に関して前述した具体例の場合よりも、すなわち人体検知センサ430が使用者を検知したことにより、制御部410が誘導加熱手段220への通電を開始する場合よりも早いタイミングで、誘導加熱手段220への通電を開始する。これにより、本具体例では、より早く着座面を適温にすることができる。したがって、使用者が便座200に着座したときに冷感を感じることをより確実に防止することができる。
また、入室検知センサ440がマイクロ波センサである場合には、前述したように、その入室検知センサ440は、トイレ室の外側のドアの前に存在する使用者を検知することができる。そのため、この場合には、制御部410は、さらに早いタイミングで誘導加熱手段220への通電を開始する。したがって、さらに早く着座面を適温にすることができ、使用者が便座200に着座したときに冷感を感じることをより確実に防止することができる。また、その他の効果についても、図3に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
図7は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作のさらに他の具体例を表すタイミングチャートである。
まず、タイミングt1における動作については、図6に関して前述した具体例のタイミングt1における動作と同様である。
続いて、使用者がトイレ室のドアから便座200に近づくと、人体検知センサ430は、便座200の前方にいる使用者、すなわち便座200から離間した位置に近づいた使用者を検知する(タイミングt2)。そうすると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を低減する(タイミングt2)。また、これと同時に、制御部410は、抵抗加熱手段210への通電を開始する(タイミングt2)。続いて、使用者が便座200に着座しようとして便座200の上方に移動すると、着座検知センサ420は、便座200の上方に存在する使用者を検知する(タイミングt3)。そうすると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止する(タイミングt3)。
本具体例によれば、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止する前に抵抗加熱手段210への通電を開始する(タイミングt2)。そのため、暖房便座装置100の動作は、より早いタイミングで着座面の保温動作に遷移する。したがって、使用者が便座200に着座したときに冷感を感じることをより確実に防止することができる。また、制御部410は、より早いタイミングで誘導加熱手段220への通電を低減する(タイミングt2)。そのため、高い磁束密度を有する磁界が便座200に着座した使用者に入射することをより確実に防止することができる。また、その他の効果についても、図3に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
以上、図3〜図7に関して前述した具体例では、便座200の着座面が十分に加熱される前に、使用者が便座200に近づいた場合を例に挙げて説明したが、前述したように、制御部410は、誘導加熱手段220へ通電することにより便座200の着座面を急速に加熱することができる。そのため、使用者が便座200に近づく前に、便座200の着座面は、十分に加熱され適温になっている場合がある。以下の具体例では、使用者が便座200に近づく前に、便座200の着座面が十分に加熱され適温になっている場合を例に挙げて説明する。
図8は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作のさらに他の具体例を表すタイミングチャートである。
まず、タイミングt1における動作については、図3あるいは図6に関して前述した具体例のタイミングt1における動作と同様である。続いて、便座200の着座面が適温になったことを便座温度センサ250が検知すると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を低減する(タイミングt2)。また、これと同時に、制御部410は、抵抗加熱手段210への通電を開始する(タイミングt2)。
なお、制御部410が抵抗加熱手段210への通電を開始するタイミングと、制御部410が誘導加熱手段220への通電を低減するタイミングと、は必ずしも同時でなくともよい。すなわち、図8に表した破線210aのように、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を低減する前に、抵抗加熱手段210への通電を開始してもよい。また、制御部410は、図8に表した破線220aのように、便座200の着座面が適温になったことを便座温度センサ250が検知すると、誘導加熱手段220への通電を停止してもよい。あるいは、制御部410は、図8に表した破線220bのように、便座200の着座面が適温になったことを便座温度センサ250が検知すると、誘導加熱手段220への通電を徐々に低下させてもよい。
続いて、着座検知センサ420が便座200の上方に存在する使用者を検知すると、あるいは、人体検知センサ430が便座200の前方にいる使用者を検知すると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止する(タイミングt3)。続いて、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止してから所定時間が経過すると、着座面を適温に維持するように抵抗加熱手段210への通電を低減する(タイミングt4)。
本具体例によれば、便座200の着座面が適温になると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を低減あるいは停止し、抵抗加熱手段210へ通電することにより便座200の着座面を保温する。そのため、本具体例の暖房便座装置100は、省エネルギー化を図ることができる。また、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止した後でも、抵抗加熱手段210への通電を低減することにより便座200の着座面を適温に維持する。そのため、本具体例の暖房便座装置100は、省エネルギー化を図りつつ、着座面を快適な温度に維持することができる。
また、制御部410は、使用者が便座200に近づく前に、あるいは、使用者が便座200に着座する直前に誘導加熱手段220への通電を停止する。そのため、高い磁束密度を有する磁界が便座200に着座した使用者に入射することを防止することができる。そのため、本具体例の暖房便座装置100によれば、人体への磁界の入射を防止しつつ、着座面をより早く適温にすることができる。また、その他の効果についても、図3に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
図9は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作のさらに他の具体例を表すタイミングチャートである。
本具体例の暖房便座装置100は、図5に関して前述した具体例の暖房便座装置100と同様に、人体との距離を検知することができる人体位置検知センサを有する。つまり、本具体例の制御部410は、人体位置検知センサが検知した人体との距離に応じて、人体の位置を認識することができる。
まず、タイミングt1における動作については、図5に関して前述した具体例のタイミングt1における動作と同様である。続いて、便座200の着座面が適温になったことを便座温度センサ250が検知すると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を低減する(タイミングt2)。なお、図9に表した破線210a、220a、220bは、図8に関して前述した破線210a、220a、220bと同様である。
続いて、使用者が便座200の遠方から近傍へ移動し始めたことを人体位置検知センサが検知すると、制御部410は、使用者の位置に応じて誘導加熱手段220への通電を低減する(タイミングt3〜t4)。そして、使用者が便座200の近傍に近づいたことを人体位置検知センサが検知すると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止する(タイミングt4)。続いて、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を停止してから所定時間が経過すると、着座面を適温に維持するように抵抗加熱手段210への通電を低減する(タイミングt5)。
本具体例によれば、図5に関して前述した具体例と同様に、制御部410は、1つの人体検知手段である人体位置検知センサによる検知結果に基づいて、抵抗加熱手段210および誘導加熱手段220への通電の制御を実行することができる。そのため、暖房便座機能部400を小型化することができ、暖房便座装置100の意匠性の低下を抑制することができる。また、その他の効果についても、図8に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
図10は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作のさらに他の具体例を表すタイミングチャートである。
まず、タイミングt1における動作については、図3あるいは図6に関して前述した具体例のタイミングt1における動作と同様である。続いて、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を設定された時間において一定電力で実行する。このとき、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を開始したときの着座面の温度や、トイレ室内の周囲温度や、暖房便座装置100の加熱履歴などに基づいて、誘導加熱手段220への通電を実行するときの設定時間を決定する。
あるいは、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を設定された電力で一定時間において実行する。このとき、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を開始したときの着座面の温度や、トイレ室内の周囲温度や、暖房便座装置100の加熱履歴などに基づいて、誘導加熱手段220への通電を実行するときの設定電力を決定する。つまり、本具体例では、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を開始したときの着座面の温度や、トイレ室内の周囲温度や、暖房便座装置100の加熱履歴などに基づいて決定した設定時間あるいは設定電力によりフィードフォワード制御を実行する。
続いて、制御部410は、適宜決定した設定時間あるいは設定電力によりフィードフォワード制御を実行すると、誘導加熱手段220への通電を停止する(タイミングt2)。また、これと同時に、制御部410は、抵抗加熱手段210への通電を開始する(タイミングt2)。続いて、便座200の着座面が適温になったことを便座温度センサ250が検知すると、制御部410は、着座面を適温に維持するように抵抗加熱手段210への通電を低減する(タイミングt3)。
本具体例によれば、制御部410は、便座温度センサ250による検知結果に基づいたフィードバック制御ではなく、誘導加熱手段220への通電を開始したときの着座面の温度などに基づいて決定した設定時間あるいは設定電力によりフィードフォワード制御を実行する。そのため、例えば、便座温度センサ250に応答遅れなどが生ずる場合でも、本具体例の暖房便座装置100は、その応答遅れに影響されることなく、より早く、より確実に着座面を適温にすることができる。また、その他の効果についても、図8に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
図11は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作のさらに他の具体例を表すタイミングチャートである。
まず、タイミングt2以前における動作については、図10に関して前述した具体例のタイミングt2以前における動作と同様である。続いて、制御部410は、適宜決定した設定時間あるいは設定電力によりフィードフォワード制御を実行すると、誘導加熱手段220への通電を低減する(タイミングt3)。そして、タイミングt3以降における動作については、図8に関して前述した具体例のタイミングt3以降における動作と同様である。
本具体例によれば、制御部410は、便座温度センサ250による検知結果に基づいたフィードバック制御ではなく、誘導加熱手段220への通電を開始したときの着座面の温度などに基づいて決定した設定時間あるいは設定電力によりフィードフォワード制御を実行する。また、便座200の着座面が適温になると、制御部410は、誘導加熱手段220への通電を低減あるいは停止し、抵抗加熱手段210へ通電することにより便座200の着座面を保温する。そのため、本具体例の暖房便座装置100は、省エネルギー化を図りつつ、便座温度センサ250の応答遅れに影響されることなく、より早く、より確実に着座面を適温にすることができる。また、その他の効果についても、図8に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
以上説明したように、本実施形態によれば、制御部410は、人体検知手段の検知結果に基づいて人体の位置を認識し、抵抗加熱手段210および誘導加熱手段220への通電の制御を実行する。これによれば、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、誘導加熱手段220により便座200の着座面を急速に加熱することで、抵抗加熱手段210により便座200の着座面を加熱する場合よりも早く着座面を適温にすることができる。また、暖房便座装置100は、誘導加熱手段220により便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには便座200を保温しておく必要はない。そのため、抵抗加熱手段210により便座200の着座面を加熱する場合よりも省エネルギー化を図ることができる。
また、制御部410は、使用者が便座200から離間した位置よりも便座200に近接した位置に近づいたと認識すると誘導加熱手段220への通電を停止または低減するため、使用者が便座200に近づいたときにおいて、便座200の着座面の外部に漏れる磁界の磁束密度を低く抑えることができる。つまり、高い磁束密度を有する磁界が、便座200に着座した使用者に入射することを防止することができる。そのため、人体への磁界の入射を防止しつつ、着座面をより早く適温にすることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座200などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや抵抗加熱手段210および誘導加熱手段220の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。すなわち、本実施形態では、誘導加熱手段220の加熱コイル221が便座200の内部に設けられた場合を例に挙げて説明したが、加熱コイル221は、便蓋300の内部に設けられていてもよい。あるいは、加熱コイル221は、便座200の内部と、便蓋300の内部と、の両方に設けられていてもよい。この場合でも、加熱板223は、加熱コイル221から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱し、便座200の着座面をより早く適温にすることができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。