JP5850764B2 - 長尺多孔性熱可塑性樹脂フィルムを用いたイオン交換膜の製造方法 - Google Patents
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本発明の他の目的は、さらに、強度も高められた長尺多孔性熱可塑性樹脂フィルムを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記の長尺多孔性熱可塑性樹脂フィルムを基材フィルムとして用いたイオン交換膜の製造方法を提供することにある。
前記長尺多孔性熱可塑性樹脂フィルムを原反ロールから巻出し、イオン交換樹脂形成用の重合性組成物に浸漬して、該フィルムの細孔内に該重合性組成物を充填してイオン交換膜前駆体を作製し、
得られたイオン交換膜前駆体を前記巻き取りロールで巻き取り、
該イオン交換膜前駆体が巻き取りロールに巻き取られている状態で前記重合性組成物を重合せしめる、
工程を含むことを特徴とするイオン交換膜の製造方法が提供される。
(1)前記巻き取りロールには、前記長尺多孔性熱可塑性樹脂フィルムに形成されている透明ラインが位置する部分に対応して、溝部が全周にわたって形成されていること、
(2)前記巻き取りロールには、前記イオン交換膜前駆体と共に、剥離可能な樹脂フィルムが巻き取られること、
が好適である。
また、本発明の製造方法では、
(3)前記イオン交換樹脂形成用の重合性組成物として、イオン交換基を有する単量体を含有しているものを使用し、前記重合により、イオン交換樹脂が形成されること、
或いは、
(4)前記イオン交換樹脂形成用の重合性組成物として、イオン交換基を導入し得る官能基を有する単量体を含有するものを使用し、前記重合後に、イオン交換基の導入を行うこと、
という手段を採用することができる。
特に、イオン交換膜は、使用される用途によっては、幅広なものが望まれており、本発明では、幅広のイオン交換膜の形成に使用される幅広の基材フィルムも熱溶着による貼り付けによって容易に製作することができ、このようなイオン交換膜の製造にも有利に適用される。
本発明の長尺多孔性熱可塑性樹脂フィルムの概略平面図を示す図1を参照して、このフィルム1(以下、単に長尺多孔フィルムと呼ぶ)には、表面から裏面に貫通する微細な細孔(引照数字は省略)が多数形成されている。例えば、イオン交換膜の基材フィルムとして使用されるものでは、適宜の交換膜特性が得られるように、細孔の平均孔径(表面もしくは裏面で観察)は0.01〜2.0μm、特に0.015〜0.4μm程度、空隙率(細孔が占める面積割合)は、20乃至95%、特に30〜90%、最も好ましくは、40〜60%の範囲にあり、その厚みは、一般に5〜150μm、特に10〜70μm、最も好ましくは10〜50μmの範囲となっている。また、幅は用途によって異なるが、一般に30〜1500mm、特に60〜1500mm、最も好ましくは200〜1500mmである。
本発明の長尺多孔性熱可塑性樹脂フィルムは、透明ラインを有するため、特に、厚みが薄いものであってもよい。具体的には、厚みが薄いフィルム(例えば、厚さ5〜30μm)においても、透明ラインを設けることで、ロール送りを精度よく且つよじれやシワの発生なく、迅速に行うことが可能である。
本発明の長尺多孔フィルム1では、このような高い遮光性の部分に透明ライン3が形成されていることが顕著な特徴である。 即ち、この透明ライン3は、長尺多孔フィルム1の長手方向に沿って延びており、該長尺多孔フィルム1の両側端1a,1aと平行に直線状に延びている。このような透明ライン3の形成により、そのロール送り性が大きく高められる。
さらに、その幅wは、透明ライン3の存在が明確に視認できる程度の大きさであればよく、必要以上に幅wを大きくすると、細孔を閉塞した弊害が生じるようになってしまう。従って、この幅wは、通常、1乃至20mm、好ましくは1〜10mm、最も好ましくは5〜10mmの範囲であることが好ましい。
即ち、先のも述べたが、ヒートバー等による熱溶着、接着剤(例えば糊)の塗布硬化、2枚の長尺フィルムの側端部を重ね合わせての加熱溶着等により、ライン状に細孔を閉塞することができ、透明ライン3を形成することができる。また、接着剤では、漏れの可能性、また厚みを薄くすることはできないが、熱溶着では漏れなどの問題はなく、また厚みを薄くすることができる。
このような手段により透明ライン3が形成された長尺多孔フィルム1は、イオン交換膜用の基材フィルムとして最適である。即ち、イオン交換膜は、一般に幅が広く、従って、その基材フィルムも幅広となるが、重ね合わせにより透明ライン3を形成する場合には、そのフィルム幅を用途に応じた広幅のものに拡大することができるからである。
長尺多孔フィルム1の細孔内に充填されるイオン交換樹脂は、公知のものでよく、例えば、炭化水素系又はフッ素系の樹脂に、イオン交換能を発現させるイオン交換基、具体的には、陽イオン交換基或いは陰イオン交換基を導入したものである。
また、イオン交換基は、水溶液中で負又は正の電荷となり得る官能基であり、陽イオン交換基の場合には、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、一般的に、強酸性基であるスルホン酸基が好適である。また、陰イオン交換基の場合には、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基等が挙げられ、一般的に、強塩基性である4級アンモニウム基や4級ピリジニウム基が好適である。
本発明において、上述した長尺多孔フィルム1を基材フィルムとするイオン交換膜は、イオン交換樹脂を形成するための重合性組成物を用意し(重合性組成物調製)、図3に示されているように、長尺多孔フィルム1が巻かれた原反ロール10から該フィルム1を巻き取りロール20により巻き取る際に重合性組成物を充填し(ロール送り工程)、次いで、細孔内に充填された重合性組成物を巻き取りロール20上で重合し(重合工程)、更に必要に応じて、重合工程で得られた重合体(イオン交換樹脂前駆体)にイオン交換基を導入すること(イオン交換基導入工程)により製造される。
イオン交換基を形成するための重合性組成物は、上述したイオン交換基を導入し得る官能基(交換基導入用官能基)を有する単量体又はイオン交換基を有する単量体(以下、これらの単量体を「基本単量体成分」と呼ぶことがある)、架橋単量体及び重合開始剤を含有するものであり、これらの成分を混合することにより調製される。
陰イオン交換基導入用官能基を有する単量体としては、スチレン、ブロモブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
また、陰イオン交換基を有する単量体としては、ビニルベンジルトリメチルアミン、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリメチルアミン、ビニルベンジルトリエチルアミン等のアミン系単量体、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素複素環系単量体、それらの塩類及びエステル類を挙げることができる。
このような架橋性単量体は、一般に、前述した基本単量体成分100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましく、さらに好ましくは1〜40重量部である。
このような重合開始剤は、基本単量体成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、更に好ましくは0.5〜10重量部である。
このようなマトリックス樹脂としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブチレン等の飽和脂肪族炭化水素系ポリマー、スチレンーブタジエン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリ塩化ビニル、或いは、これらに、各種のコモノマー(例えばビニルトルエン、ビニルキシレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、α−ハロゲン化スチレン、α,β,β´−トリハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマーや、エチレン、ブチレン等のモノオレフィンや、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィンなど)を共重合させたものなどを使用することができる。
これらのマトリックス樹脂は、重合性組成物が、垂れ等を生じることなく、長尺多孔フィルム1の細孔内に速やかに充填保持し得るような粘度となるような量で使用される。
この工程では、図3に示されているように、原反ロール10から長尺フィルム1を巻き取りロール20により巻き取られるが、この間に、前述した重合性組成物が充填された槽25が設けられており、巻き取られる長尺フィルム1は、この槽25内の重合性組成物中に浸漬され、この浸漬によって、重合性組成物が細孔内の充填されたイオン交換膜前駆体1’が得られ、このような前駆体1’の形でロール20に巻き取られる。
尚、図2の例では、重合性組成物の細孔内への充填が浸漬により行われているが、浸漬に代わりに、スプレー塗布などによって行うことも可能である。このような作業をロール送りの間に行う限り、本発明の利点は十分に発揮される。
即ち、上記のフィルムの中から、重合性組成物中の単量体成分の種類に応じて適宜なものを選択して離型性フィルムとして使用すればよい。特に、耐熱性及び剥離性の点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルムが最も好適である。
尚、ここで用いる離型性フィルム50は、前述した離型性フィルム35と同じものである。
上記のようにして、長尺多孔フィルム1の細孔内に重合性組成物が充填されたイオン交換膜前駆体1’は、巻き取りロール20に巻かれたまま加熱オーブン等の重合装置内で加圧下で加熱されての重合工程に供される。即ち、基本単量体成分としてイオン交換基を有する単量体が使用されている場合には、この工程の完了により目的とするイオン交換膜が得られる。また、基本成分として、交換基導入用官能基を有する単量体を用いた場合には、この工程の完了後に、イオン交換基の導入が必要となる。
尚、重合時間は、重合温度等によっても異なるが、一般には、3乃至20時間程度である。
先に述べたように、重合組成物中の基本単量体成分として、イオン交換基を有する単量体を用いた場合には、上記の重合工程によりイオン交換樹脂が形成され、この段階で目的とするイオン交換膜が得られるが、基本単量体成分として、交換基導入用官能基を有する単量体を用いた場合には、上記の重合工程で得られる樹脂にはイオン交換基を有していないため、重合工程後にイオン交換基の導入を行う必要がある。
これらの処理は、通常、重合終了後、前述した離型フィルム35を引き剥がした後に行われる。
2枚のポリエチレン製の多孔フィルム(平均孔径が0.01〜2μm、空隙率45%、幅450mm、厚み24μm、長さ90m、全光線透過率29.6%、材質:ポリエチレン)の長手方向の側端部同士を、重なり部分が10mmとなるように重ねた。次いで、重ねた部分の上下から140℃の熱で連続的に圧着した。この圧着部分が透明ライン3となり、該透明ライン3は幅10mm、幅部分厚みdは40μm、全光線透過率89.7%である長尺多孔フィルム1を作製した。
続いて、長尺多孔フィルム1の細孔内に重合性組成物が充填されたイオン交換膜前駆体1’を巻取りロール20に巻き取る際に、原反ロール40から50μmの離型性フィルム35であるポリエチレンテレフタレートを送り出し、ニップロール30を介してイオン交換膜前駆体1’の両側を被覆しながら巻き取った後、3kg/cm2の窒素加圧下、70℃で2h保持後、90℃で3h保持した。尚、巻取りロール20は、50μmの離型性ポリエチレンテレフタレートを、間隔を置いて通常のロールに巻きつけて貼着したものを使用した。50μmの離型性ポリエチレンテレフタレートを巻きつけた部分が剥離性フィルム50である。この実施例で使用した巻取りロール20は、溝20aの幅は3cm、深さは2mmであった。
続いて、上記操作にて得られたイオン交換膜前駆体1’と離型性フィルム35を引き剥がした後、イオン交換基導入用溶液(トリメチルアミン:6、アセトン:25、イオン交換水:69(重量%))に16h浸漬した。その後、0.5N
水酸化ナトリウムに3h浸漬する工程を6回行い、続いて水洗を行うことにより、イオン交換膜を製造した。上記操作にて得られた未溶着部分(透明ライン3以外の部分)のイオン交換膜は、外観、物性共に問題のない良好な膜であることが分かった。
3:透明ライン
10:原反ロール
20:巻き取りロール
Claims (5)
- 多数の微細な細孔が貫通しており且つ長尺である長尺多孔性熱可塑性樹脂フィルムであって、その長手方向に、少なくとも1本の透明ラインが直線状に延びている長尺多孔性熱可塑性樹脂フィルムが巻かれた原反ロールと、該フィルムを巻き取るための巻き取りロールとを用意し、
前記長尺多孔性熱可塑性樹脂フィルムを原反ロールから巻出し、イオン交換樹脂形成用の重合性組成物に浸漬して、該フィルムの細孔内に該重合性組成物を充填してイオン交換膜前駆体を作製し、
得られたイオン交換膜前駆体を前記巻き取りロールで巻き取り、
該イオン交換膜前駆体が巻き取りロールに巻き取られている状態で前記重合性組成物を重合せしめる、
工程を含むことを特徴とするイオン交換膜の製造方法。 - 前記巻き取りロールには、前記長尺多孔性熱可塑性樹脂フィルムに形成されている透明ラインが位置する部分に対応して、溝部が全周にわたって形成されている請求項1に記載の製造方法。
- 前記巻き取りロールには、前記イオン交換膜前駆体と共に、剥離可能な樹脂フィルムが巻き取られる請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記イオン交換樹脂形成用の重合性組成物として、イオン交換基を有する単量体を含有しているものを使用し、前記重合により、イオン交換樹脂が形成される請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
- 前記イオン交換樹脂形成用の重合性組成物として、イオン交換基を導入し得る官能基を有する単量体を含有するものを使用し、前記重合後に、イオン交換基の導入を行う請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
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